名簿/328981?

  • もう二度と、この世界に帰ることはない -- 2009-07-19 (日) 01:08:23
  • (月だけが私に優しかった)
    (優しく冷たい月の光の中で眠り、厳しく熱い太陽の熱で目が覚めるのが常だった)
    (その日も私は、今までの夢の中で得た、全ての記憶を持って同じように目覚める)
    (現実は、容赦なく、私を物に戻した)
    (笑う事も、泣く事も知らない、国の未来を告げるただの道具という物に) -- 2009-07-18 (土) 20:44:38
    • (私は何も感じない体で、ただ夜まで石牢の壁を見つめ続けていた)
      (そして、その時はやってきた)
      (一人の男が私を立たせ、腕を背中に回して縛り上げ、歩くように促す) -- 2009-07-18 (土) 20:48:47
      • (現実の私は、予言の声を降臨させるただの器だった)
        (余計な意思を持たないよう、知識はおろか言葉さえも教えてもらったことはない)
        (しかし私には夢の中の体験を得ることが出来た 私が夢を見ると、その世界では現実の記憶を無くす代わりに、夢の世界で人間性を持ち、生きるコトを許されたのだ)
        (私は夢の世界で言葉や知識を得て、たとえそこが夢の中であろうとも、人として生きていけた -- 2009-07-18 (土) 20:55:01
      • (それでも、夢はいつか覚める)
        (私は縛られた腕の痛みを表情に出せぬまま、ある大広間まで歩かされた)
        (そこはいつもの、踊りの場だった)
        (上下左右がとてつもなく広く、四方の壁を薄い色とりどりの布が飾り立て、その奥に同じように四方を淡い布で囲む箱のような空間を作り、その中に鎮座する人間がいた、淡い生地で輪郭のみがやっと判別できるその人間が、私に対して何事か言っている)
        (本来ならば私はその言葉を理解できないだろうが、その言葉だけは例外だった)
        (『踊れ』という言葉に、拘束をとかれた腕を脇にだらりと下げたまま、部屋の中央に歩いていく) -- 2009-07-18 (土) 21:04:07
      • (裸足の裏が、冷たい石の床を踏みながら、最初は緩やかな湖の流れのように、ゆっくりとした舞を踊っていった)
        (やがてそれは川の流れのように速くなり、半ばほどから激流のような激しい動きで飛び跳ねるように踊る)
        (しかしそれほど激しい踊りにも関わらず、表情は一切なにも変わらなかった)
        (ただ目を見開き、声をあげる必要の無い口は閉ざされ、ただ踊る機械のように舞い続ける)
        (そして、唐突にぴたりとその動きが止まった) -- 2009-07-18 (土) 21:09:43
      • (それはおよそ、人間が保てるような姿勢ではなかった 飛び跳ねる瞬間を固定したように、右足のみで体のバランスを保ち、最大までしならせた体で顔が逆さまになりながら目の前にいる人物を凝視している)
        (突如ぱくりと口が開いた 口はそのまま開けただけだ 唇も喉も動かない しかしその口から本人のものでは決してない、この世ならざる声が発せられた) -- 2009-07-18 (土) 21:15:05
      • (高くも無く、低くも無く、男とも女ともつかないその声が言葉を発し終えた時、その体はばたりと倒れ、動かなくなった)
        (声を聞いた人物が一言何かを言う 予言の声を私は聞くことは出来ない その時はほとんど意識がないからだ しかし聞こえなくとも私はその答えをすぐに知った)
        (私は元のように後ろでに縛られ、踊りによって立つ力もなくなった私の首を縄で縛り、持ち上げるように立たされる)
        (私は最後の最後まで、予言をかえることは出来なかったようだ)
        (『国の滅亡』私は昨日その言葉を降臨させてしまった 激昂した王は私を殺すことでその予言を成就しないように考え、今日、私は処刑される)
        (処刑が執行される最後の最後に、もう一度舞を踊り予言が違えれば生き残れるはずだったが、それは不可能だと私は最初から分かっていた) -- 2009-07-18 (土) 21:26:05
      • (どこかで猫の泣き声がした)
        (処刑場に向かう私の前を、月が照らして導いている 豪奢な調度品が置かれた廊下を、私を囲むように数人の男がゆっくりと歩いていた)
        (ふと、その前を一匹の猫が横切る 小柄な茶色の毛を持ち、首には小さな青い首飾り ウルミラだった)
        (本来私に名前はない それでも夢の中でその名を名乗ったのは、あの猫を私は心底羨んでいたのだろう)
        (愛され、優しく撫でられるその姿をいつも見て、私は心のどこかであの猫になりたいと願っていたようだ) -- 2009-07-18 (土) 22:21:55
      • (視界の端から完全に猫が消え、私の意識は再び周囲に戻った)
        (占いをする以外部屋から出るコトは決して無い ましてや外に出るなど生まれて初めてだった)
        (現実に戻って、最初で最後の外の景色を眺め、ゆっくりと、ゆっくりと、どこか上の方に登っていく)
        (やがて頂上付近にまでやってくると、そこには一本の巨木が生えていた)
        (木の生えている向こう側はすぐに切り立った崖で、巨木が伸ばすその太い枝は、半分ほど崖に向かっていた) -- 2009-07-18 (土) 22:34:09
      • (おそらくあの崖に面した枝に、私の首をくくる縄の先を結び、吊るす気だ)
        (私の罪状は反逆罪 国の滅亡を図った重罪人として見せしめに処刑されるのだ)
        (崖のギリギリまで立たされ、一人の男が身を乗り出すように縄の先を結んでいく そして私の背中が押されたと同時に、崖に落ちることなく吊るすのだろう)
        (せめて最後に何かに集中しようと思ったとき、目の前に月が見えた) -- 2009-07-18 (土) 22:38:50
      • (月は、とても綺麗だった 青白く冷たく柔らかな光を私に注いでくれた)
        (その瞬間、見開かれていた私の瞳がに力が宿り、もっとはっきりとその月を見つめることができた)
        (一緒だ あの月は一緒だ あの夢で見た、あの人と見た月と一緒だ)
        (あの街はあった みんなもいた あの人もいた)
        ……会いたい(最後の最後に、生まれて初めて私は瞳から涙をこぼし、自分の意思を言葉にした) -- 2009-07-18 (土) 22:46:55

      • ………バチッ

        (その、見上げた月にヒビが入る わずかなヒビが―――) -- 2009-07-18 (土) 22:51:37
      • (何かが起ころうとしている しかし生を諦めた彼女にとって、もう何もかもがどうでも良かった)
        (会えるはずはない 戻れるはずは無い もう終わる ただそれだけだ) -- 2009-07-18 (土) 22:55:58
      • ………バチッ バチバチバチッ
        (電流が迸るような音 それとともに、月に入ったヒビはさらに広がり、夜空にまで―――)
        バッ バチッ バチバチッ ジジジッ
        (違う 空間にヒビが入っているのだ そのヒビはますます広がり、大きさは3mほどまで広がる) -- 2009-07-18 (土) 22:59:27
      • (周りの男達が騒ぎ始めた さすがのウルミラもそれに意識を集中し始める)
        (顔は相変わらずの無表情だったが、それは意思を表現できないだけで、心の中は様々な混乱が膨れつつある しかし目の前の光景からは目を離すことはできなかった) -- 2009-07-18 (土) 23:01:41
      •  バ キ ィ ン ッ
        (ヒビが広がりきったところで、硝子の割れるような音と共に空間がはじけ、大穴が空に開いた)
        (そこから一つの影が現れ、ズゥン、と地面を揺らして降り立つ その瞬間空間が元に戻り、月光がその影を照らした)
         http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst043452.jpg 
        (赤い闘気を身に纏う、見事な肉体を持つ漢が、時空を越えて―――そこにいた)
        ………待たせたな、ウルミラ。 -- 五島一也 2009-07-18 (土) 23:25:03
      • (誰もが身動きが取れなかった 世界にヒビを割り、現れた男にみな恐怖を感じているのだ)
        (その中でただ一人、恐怖ではなく別の何かを感じているものがいる ウルミラだった)
        (虚空すら見つめていない瞳が、更にはっきりと力を増していくのが分かる だが表情や声は未だに出すことができず、ただ一也を見つめていた) -- 2009-07-18 (土) 23:30:47
      • 憤ッッッ!!!(地面を蹴りつけ、ウルミラの最も近くにいる男の眼前へ飛ぶ)
        閃 光 崩 落 弾 ッ !!!(その男の鳩尾へ、怒りを込めた鉄拳を撃ち放った)
        呼ッッッ!!!(すぐさま構えなおすと、ウルミラを守るようにウルミラの眼前に立ちふさがった)
        ………言っただろう、貴様を一人にはせんと………貴様の運命など、この俺が打ち砕いてくれるわ!!! -- 五島一也 2009-07-18 (土) 23:36:02
      • (見慣れた姿、しかし闘気をまとうその姿は、自分が知っている人物とは違っていた)
        (しかし自分を守ってくれるその姿がウルミラの空虚な心に響き渡り、無意識の内に涙だけを流していた)
        -- ウルミラ? 2009-07-18 (土) 23:42:01
      • ………(背を向け、ウルミラの涙は見えない だがそれでも、泣いている事だけは判った)
        さあ、どうした………貴様らも男ならかかってこい。俺は逃げも隠れもせんぞ。(周りを取り囲む男達をニヤリ、と挑発した) -- 五島一也 2009-07-18 (土) 23:46:30
      • (恐ろしいほどの形相の男にたじろぐも、国家の存亡をかけてウルミラを葬らないといけない)
        (残った男達は数を武器に一斉に襲い掛かった!) -- 2009-07-18 (土) 23:49:06
      • 閃 光 弾 !!!(まずは、最も最初に向かってきた男の横薙ぎの攻撃を屈んで避けての、突き上げの拳 その男が宙に舞った)
        大 黒 折 り !(すぐさま、背後に向かってきた男の頭を高速の旋回脚で吹っ飛ばす その足を引けば、即座に飛び上がり)
        血 滝 刀 !!!(背を狙っていた男の背後に、手刀を振り下ろしながら着地する 手刀が男の後頭部を斬り、男が昏倒する)
        見 返 り 飛 拳 !!!(そのまま、振り返り様の裏拳が、二人並んでいた男をまとめてぶっ飛ばした)
        シィィッ………(ほんのわずかな時間で、5人もの男が地面に伏せっている)………さあ、次はどいつだ。 -- 五島一也 2009-07-18 (土) 23:57:19
      • (数で敵う相手ではないと判断した残りの人間は、恐怖に陥り散り散りに逃げていく)
        (そして男達が去ったあと、遠くの方から猫が一匹歩いてきた 首に青い飾りをつけた、茶色い小柄な猫)
        (その猫が現れたと同時に、一也の後ろにいたウルミラがその場で崩れるように倒れた 踊りのせいで自力で立つこともできないほど疲弊していたようだ) -- 2009-07-19 (日) 00:02:23
      • ………ッ!!ウルミラ………!!(倒れたウルミラを抱き上げ、頭を撫でる)
        (その涙に濡れた、疲弊しきった顔を見て、唇を噛む)
        よく………よく、頑張ったな………ウルミラよ………
        (強く、抱きしめた)すまなかった………こんなにも待たせて……… -- 五島一也 2009-07-19 (日) 00:05:37
      • ……あ、あ う(抱き上げられ、その瞳に相手を映す 誰よりも見知った愛する人の顔が目の前にあった)
        (声をかけたいのに、嗚咽が邪魔をしてそれも叶わない もどかしい思いで体を震わした)
        -- ウルミラ? 2009-07-19 (日) 00:08:32
      • ………判っている。貴様が、どれほど辛い思いをしたか、どれほどの夢を見てきたか………
        (頭を優しく撫でながら、ゆっくりと話す)俺は………貴様とともに、この世界で目覚めたのだ。
        貴様が「夢」と思っていた世界から、俺と、貴様は一緒にやってきたんだ。俺は、貴様の身体の中に。
        ………直ぐには、出れなかった。
        何故かは判らん………だが、ずっと外の様子と、貴様の心は聞こえていた。
        そして、貴様が………「会いたい」と言葉にしたとき―――俺はその言葉と共に、降り立つことが出来た。
        ずっと………辛い思いをしていたのだな………ウルミラ………
        だがもう、そんな思いは………………させるものか。(そう言って笑うと、涙顔のウルミラの唇に、そっと唇を重ねた) -- 五島一也 2009-07-19 (日) 00:21:11
      • (私のように今度は向こうが移動した 信じられないが今こうして自分を抱き上げる温もりがそれを証明している)
        (脱力し、弛緩した体をいだく温もり、唇に落ちる感触 その全てがどうしようもなく嬉しくて、表情の失せた顔が、徐々に泣き顔になっていく)
        カ、ズ……ヤ(たどたどしい口調だが、慣れぬ声帯を震わせ、何度も何度も相手の名を呼んだ)
        -- ウルミラ? 2009-07-19 (日) 00:26:13
      • ………ああ、そうだ………一也だ。ウルミラ………ウルミラ………(呼ばれれば、応えるように名前を呼んだ)
        (それだけで………それだけで、お互いを確認するだけで、こうも幸せを噛み締められるのだと、初めて知った)
        ………帰ろう。あれは夢なんかじゃない………俺たちの世界だ。お前は、夢を見てたんじゃないんだ。
        また………あの世界に帰ろう。(だが、どうすれば―――その疑問だけが消えない) -- 五島一也 2009-07-19 (日) 00:33:01
      • (遠くで、二人の様子を眺めている猫がいる しかしその気配は完全に消えており、気づくことはないだろう)
        (夢ではないという言葉に、しかしウルミラの中で葛藤が芽生える)
        (もっと一也と共にいたいという願いとは別に、自分が今日死ぬというのコトが自然の摂理と認識している)
        帰…る……?(摂理には抗えない)帰…る(でも私は 生きていたい)
        帰り……たい

        (その瞬間、遠くで猫の鳴き声がした) -- ウルミラ? 2009-07-19 (日) 00:42:32
      • いいか………貴様は、ずっと自分が今日死ぬと、そう思い続けていたのだろう。だが、そうじゃない。
        俺が貴様を死なせん。生きて………俺たちの世界に帰るんだ。貴様の、死ぬ運命など、俺の拳で変えてやる。
        だから………そうだ、帰ろう………ム?(甲高く響く猫の鳴き声に、鳴き声のしたほうを見た) -- 五島一也 2009-07-19 (日) 00:46:14
      • (一也の視線の先に、見慣れた一匹の猫がいた よくウルミラが変化するあの猫だ)
        (その猫がトテトテとゆっくり歩みより、ウルミラの顔が見える位置まで寄ってきた)
        (猫の姿が視界に入るのに気づき、思わずその名を呼んだ)ウル…ミラ
        (その優しい顔立ちに、次の瞬間ようやく全てを理解した)貴方よね…私を、あの世界に、夢の世界に…行かせたのは
        夜…寝るときも、夢を見る前に………いつも貴方の声が、鳴き声が聞こえた……(息切れしながらも、ゆっくりと手をあげて、猫の頭をそっと撫でた)
        -- ウルミラ? 2009-07-19 (日) 00:52:35
      • ………そうか。では、貴様が………(そう言うと、ゆっくりとウルミラを地面に寝かせ、猫の前に正座で座りなおす)
        ………ウルミラ殿。(そのまま、ゆっくりと―――頭を下げた 猫に向かって、至極丁寧に)
        頼む………俺と、この愛する人を、俺の世界へと………最後に見た夢の世界へ、帰す手伝いをしていただけないか。
        この五島一也、一生の願いだ。………頼む。(深く頭を下げたまま、敬意を持った言葉で、頼み込んだ) -- 五島一也 2009-07-19 (日) 00:58:09
      • 私からもお願い……あの世界に、戻して
        私の世界は……あの場所なの この人と一緒なら、生きていたい……諦めたく、ない(気を失いそうな意識の中、必死でウルミラも懇願する)

        (二人の言葉を聞き終えて、猫は大きく一声鳴いた その声に呼応するように、二人の体が揺らぎ、霧散した)
        (そして猫も、何事もなかったかのようにその場を後にした) -- ウルミラ? 2009-07-19 (日) 01:04:08

Last-modified: 2011-10-03 Mon 07:54:28 JST (3064d)