グンマ家出身 クサツ・ニッコウ 230286 †
火が落とされた工房はとても冷たい空気が漂っている
そんな日もある †
そう、そんな日もある。そう思った
日々多くの人々が犠牲になるこの世の中、遅かれ早かれ自分もその犠牲者になる日もあるだろう その日が来ただけだ。皆と会えないのはさびしいけれど何も不思議じゃないし悲しむことでもない もう音も聞こえない、目も見えない、痛みも感じない この後どうなるんだろう、日頃の行いがいいから天国へ旅行かしら? せっかくなら置いてきた二振りの白根持って行きたいんだけどダメかしら …そういえば最期の一振りはどこにあるのかしら こんな日もある †
激戦の痕が色濃く残る遺跡を進む者たちがいた
刀を携え、巨大な体と筋肉でいかにもな怪力の持ち主と感じさせる男が二人 その後ろに蒼ざめた馬に跨る華奢な女性が一人 三人と一頭は草津が倒れている場所へと向かっていた 男達が持っている刀は進むごとに光を増していった その光は草津も気がついていた 既に目が見えないはずなのに 音も聞こえないはずなのに 五感のほぼ全てが失われたはずなのに 見えるのだ、その光だけはちゃんと見えているのだ こんな日になった †
「草津…辛かっただろうに」
男の一人が虫の息状態の草津の上に刀を置いた 「これから先…もっと辛いことが待ち受けているだろうが…許してくれ」 もう一人の男も刀を置いた 何か、暖かくて懐かしい。草津は上に置かれた刀にそんな印象を抱いていた 「コレで?最後のが出来るの?」 女が男たちにいかにも半信半疑な表情で尋ねた 「草津が三国白根を見つけられたのも」 男の片方が目を閉じ、手を合わせた 「足尾白根を見つけられたのも、全て偶然ではなく必然なのだ」 もう片方も目を閉じ、手を合わせた 「最後の一振りは…お前自身だ、草津。この二振りをお前の体に戻し、お前は再び"生きる金属"へと…戻るのだ」 「最後の白根を打つ日は来て欲しくなかったが…俺らの力と経験、お前に託すぞ。草津……」 そしてこんな日を生きていく †
心地よい風が吹いている初夏の草原、そんな場所で二人の女性が地図を見ている
白を基調にした服を着た女性が緑色でチェック柄のスカーフを巻いている女性に尋ねている 「後何か必要な物あるの?道具?ごはん?…それとも武器とか?」 スカーフを巻いた女性はしかめっ面で答えた 「あと1つ…、あと1つ必要なんだけど…なんだっけなぁ…。あと武器はあんな物騒なもの1人で十分だわ…」 スカーフの女性が目線だけ動かした先には野党の一団がのびて倒れていた 「一振りしただけでこんなのとか…名刀も行き過ぎると迂闊に振れないわねぇ…」 と、言いため息を一つついた女性に先ほどまで野党を突いていたラフな格好の女性が元気よく話しかけた 「まぁ…毎回こんな感じだろうけどよろしく頼むわね。伝説の名刀" 自分が刀になるだなんて思いもしなかったけど…まぁそんな日もある……か? 目的は良くわからないけど使われる以上、しっかり仕事だけはしなきゃねぇ…… そんなことを考えていた草津の頬を、初夏の優しい風が撫でていった 最新の10件を表示しています。 コメントページを参照 鍛冶屋ライン †
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