「オハヨウ、オハヨウ」
「オハヨウゴザイマス、オハヨウゴザイマス」
「グッモーニン、グッモーニン」
「ハロー、ハロー」
「コンニチハ、コンニチハ」
5つのやかましい声で私は目覚めた
上半身を持ち上げると、そこには生活観に溢れた部屋と、ちぐはぐに喋る5匹の鳥の姿があった
私は布団から起き上がると、足の向くままに歩いていく
そこには鍋があり、蓋を開くとスープが入っていた
そこで私は気づいた
此処は、私の部屋なのだと
スープを飲みながら、私は窓の外を見る
知らない街の風景が広がっていた
何故私は此処に居るのだろうか
空の皿を台所に運ぶと、手は自然な動きで食器を洗い始めた
それが私がこの部屋の主である事を確信づけた
胃が満たされると、やる事が無くなった
いや、違う
やるべき事は沢山あったはずだ
そんな気がする
でも
自分が何をすればいいのかを
思い出せない
私は服を外に出れるものに着替えると、布団の近くに置かれた刀を手にした
何をすればいいのか分からないけど、何かをしなくちゃいけない気がした
じっとしていても、時間は過ぎていくのだから
私の中には、沢山のカードがある
そしてそれは二種類ある
一つは心
私と、私の大事な人達を繋ぐ心
もう一つは力
私の中に存在するらしい、もう一人の私の力
二つは全く別の物だけど、それは共に私の一部
そして今、私の手の中には一本の刀と、新たな後者のカードがある
私の中にある、沢山のカード
それが何であるかを私は知っているけど、何故存在するかを私は知らない
それでも私は迷わない
私は一人じゃないから
私は立ち止まらない
じっとしていても、時間は過ぎていくのだから
その剣は、私の刀と同化した
確かに分かる、刀から溢れる力の感覚
そして、それと共に現れる新たなカード
私は確実に強くなっている
それをどう生かすか
決めるのは、私
これは、私の力なのだから
歩こう
私は止まっていられない
じっとしていても、時間は過ぎていくのだから
その時、まだ私は生きていた
二人の死体と、コボルド達の死体がぼんやりとした視界に写る
帰らないと
まだ私には沢山やらなきゃいけない事があるのに
刀を杖に、立ち上がる
生きていると言っても致命傷
街までの距離は馬車で3日
歩いて帰るのは絶望的だろう
それでも、私は諦めなかった
一歩一歩
血を零し、体液を吐き出し、這いずる様に歩き続けた
でも
運命は残酷で
私の目前に、見覚えのある花が見えた
知っている花だ
これは、死を呼ぶ花
そして周囲の空間が歪み、それは現れた
それは悪魔
今の私には、到底勝ち目の無い絶望そのもの
私は刀を杖に、片手で脇差を取った
帰りたいから
皆の元へ
愛する人の所へ
でも
想いだけじゃ
現実は変えられなくて
その拳で私の身体は軽々と吹き飛ばし
助からない量の血を噴き
私は倒れた
帰りたい
帰れない
帰りたい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい
帰りたい
何をしても
「私」じゃなくなってもいいから
私の手にはカードがあった
使わないと決めていたカード
でも
私は
最後の力で、カードを傍らの霊魂に押し当て
─── SpellCard "Genseizan"
これでもう、私は只のヨウムじゃなくなった
もう、何も知らないヨウムじゃ居られない
私は
ヨウム・コンパク
私は知らねばならないと思った
この力の意味を
そして、その先にあるものを
そうしなければならないと、強迫観念にさえ駆られた
だから、私は危険と知りつつ「それ」を使った
─── SpellCard "Meisouzan"
消えた
今、確実に
私には分かった
今、私の
「ヨウム」の一部が、消えた
そして、その隙間に
何かが入り込んだ
これは、記憶
私じゃない私の記憶
違う
こんな場所、私は知らない
こんな人、私は知らない
でも、知ってる
私は「知ってしまっている」
怖い
怖い怖い怖い怖い怖い
私は
私が、怖い
………揃った
今、私の手の中には全てのスペルカードが揃っている
これで、終わり
そう、これで私は………
………………本当に?
………まだ、何かある気がする
終わっていない気がする
モヤが晴れない
………もう少し、続けてみよう
答えが見えるかもしれないから
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