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切り崩された石畳の上、どさりと一際大きな音を立て、一人の冒険者が地に伏した。 じわりじわりと、波紋の様に広がる血液。泣き別れした自らの半身を横目に、彼女はその生を終えようとしていた。 未だ続く喧騒の最中、既に感覚は乏しく、これまでの道程だけが脳裏に揺らぐ。 思い返せば、羨まれるべきことは何一つ無かった。後悔ばかりの日々。幾度と襲い掛かる絶望を糧に、これまで生きてきた。 されど全ては虚しく、最果てはこのような結果である。灯の無い瞳を称えながら、一人せせら笑う。 立ち上がるべき足も、もう無い。一通り懺悔の言葉を胸中に並べて、彼女は曇天へと手を伸ばす。 「スタッド、私は……」紡ぐべき言葉は何だったのだろうか。最後まで言い切ることは無く……
──黄金暦188年 6月、巨大な怪物討伐依頼にて死亡──