ついに俺もここまでか…と血に汚れた腹部を押さえながら思った
倒れていった奴ら、幸せになった奴ら、古くからの付き合いである幼馴染達の顔が脳裏に浮かんでは消えていく
俺がいなくなったらあいつは大丈夫だろうか、最後に兄の姿が浮かんだ
自分があいつの心配をするなんてガキの頃は思いもしなかった
俺も少しは強くなれたんだろうか、兄に近づけたんだろうか
頭にぼんやりと霞が掛かる。身体の力と共に思い出が抜け落ちていく
何も考えられなくなった頭で、近づいてくる熊を眺める
霞んでいく視界の中、突然熊が苦しげな悲鳴を上げた
桃色の髪が風に靡く。苦しむ熊へと追撃を掛ける。そうか、あれは人だ
怒り狂った熊がその人物の腕に噛みつき、桃色は小さく呻いた。動かない身体がもどかしい
しかし次の瞬間、その桃色は噛まれた腕を振り上げると、熊の頭ごと思い切り地面に叩きつけた
動かなくなった熊を前に、白い歯が口から覗く、熊にも負けない獰猛な笑み
ああ…自分はあの笑顔をよく知っている
…お兄…ちゃん…
木に寄りかかり、服を血で汚し、小さく口の中で呟く俺の前にしゃがみこんだ兄は
同じく血で汚れた手で俺の頭を撫でてくれた
心の中に安心感が広がる、瞼が重い、このまま寝てしまおう
お兄ちゃんならなんとかしてくれる
ゆっくりと目を閉じる、そのまま意識は深くへと落ちて行く
…目を閉じる直前、視界に飛び込んだ下着の色は、純白だった
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