そもそもマシュマロとは、元々は沼地に生える薬草「ウスベニタチアオイ(マーシュマロウ)」の根から採れるでんぷん質の汁から作られる菓子である。
しかし、妖精の生息域には、菓子のマシュマロそのものが結実するという不思議な植物「ヨウセイマシュマロ」が生えていることがある。
この実は人間の大人など免疫の強い者にとっては栄養価の高い食糧となるが、妖精など身体の小さい生物には有害であり、食べると「ヨウセイマシュマロ病」を発症することがある。
ヨウセイマシュマロ病の進行はゆるやかで感染性も低いが、自然に治癒することはない(ゆえに呪いの一種ともとれる)。
病は約1000日の時間をかけてゆっくりと患者の体組織を蝕み、最終的には全身が半植物化し新たなる「ヨウセイマシュマロ」と化してしまうのである。
その過程で、患者の体表や粘膜からは樹液と空気の混ざり物すなわちマシュマロが分泌されるようになり、ちぎったり洗い流したりしても際限なく湧き続ける。
病気進行中に分泌されるマシュマロは無害とされている。湧く速度が早くてベタつくため、服は基本着れなくなる。
身体的特徴も植物に近づいてくる。例えば、体温が低くなる、触覚が鈍る、再生能力が高まる、など。
また、脳も徐々に植物化していくため、思考力や判断力は時とともに失われていく。
「脳みそまでマシュマロ化する」と表現され、思考がまとまりにくくフワフワになっていく。ただしフフリの場合はもともとフワフワした性格だったようだ。
病気が最終段階になり完全にヨウセイマシュマロ化するには約1000日かかると言われるが、実際は500日前後で知的生物としての自我を保てなくなり廃人化、実質的に治癒不可能となる。
それ以前であれば、何らかの強力な魔法的手段、たとえば妖精族の「秘宝」の力を使うなどで治癒する可能性がある。
沼地の近くに住む妖精たちにとってヨウセイマシュマロという植物は禁忌として知られていたが、都市生まれで旅好きのフフリは知る由もなく食べてしまい罹患してしまった。
発症からすでに2ヶ月ほど経過しており、あと1年ちょっとしか猶予はない。
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