+
| | ... |
- --
- 二十数年の歳月を振り返ってはみても、劇的でもなく。
大概災禍無く過ごしてきたというのが面白味はなくとも、正直なところだと思う。 --
- 鬱蒼と、暗い森に生まれ落ちたあの時からずっと
親も知らずとも、己の役目だけは知っていた。 森の祠に……意識は常に、其処にある。 --
- 祠を奉るのは「竜」のためだ。その為に居るのだ…その為だけに、要るのだ。
それを知っている。誰に教わった訳でなくとも、奉じなければならない。封じなければ。 --
- それに何の意味があるのか、何の意義があるのか知らず。
唯々漠然と曖昧で、それでいて切迫感にも似たな使命感に抗えず。 祠守としての役目を果たしてきたのは「私」だけではないのだろう。 --
- 果たして何時までこの役割が続くのか……確実なのは成長が、老いが止まって二十年。
終わりは来ないのではないかと、そんな考えが過ぎるのも常だが しかし、だけれどもおおよその見当が付かないわけでもないのだ。 「私」が始まったあの日あの時、終わった「先達」が…きっと恐らくは、居たのだ。 --
- 役目を果たした、或いは役目を果たせなくなった…だから引き継がれたのだろう。
ならば如何すれば……今の「私」は探している。陽も差さぬ真っ暗な森、その「出口」を。 --
|