名簿/474322

  • -- 2012-03-15 (木) 01:01:38
  • 闃然とした地下の空間は、寒々としており、そこに人の温かみは存在していない。灰色のソファと、大きな振り子時計、古文書が無数に並んだその地下室は、無機質な空間であった。
    薄暗い証明の下、灰色のソファの上に、黒衣の男が腰掛けていた。黒い髪に黒い瞳、魔術師のマントめいた装束をその男は身に纏っていた。右手には魔術的な紋様が刻まれている。
    その口には一本の煙草が咥えられていた。薄暗い一室を、煙草の光が照らす。
    男は気だるげにソファに座り、煙草をふかしていたが、不意にソファから身を起こし、灰皿に煙草を押し付けた。そして、静かに息を吐く。
    この男こそ、この地下の真上に存在する“コハク古書店”の店主にして、闇の魔術秘密結社『トート=ルギハクス協会』のエージェント――“トートの魔術師”こと、ハスティルであった。
    今の姿は、古書店にて店主をやっているときの雰囲気とは全く異なるものであった。ふざけたような雰囲気はどこにもなく、奇妙な威圧感を放っていた。 -- ハスティル 2012-02-26 (日) 01:16:42
    • 「……仕事か」
      黒衣の男はぽつりとそう呟いた。――ボーンボーンと、振り子時計が鳴る。黒衣の男ハスティルは右手を少し動かした。そうすると、独りでに振り子時計が開き、その中から一つの紙切れが飛び出し、ハスティルの右手に収まった。
      その一枚の紙には、“結社”の上層部からの指令が記されていた。ハスティルはしばらくそれを見つめていたが、それを懐にしまうと、ソファから立ち上がった。
      「新興魔術組織、エメラルド協会との渉外が指令か。……いや、正しくは始末、か」
      ハスティルは指令を受け取ると、黒衣を靡かせ、地下室の出口へと足を向ける。振り子時計の扉は独りでに閉まっていた。
      「エメラルド協会……“結社”と関わりを持とうとしたのが運の尽きだ。今より、漆黒の炎が、お前達を焼き尽くしに往く。……それまで、精々お前達が礼讃する愚神に祈りを捧げるが良い」
      黒き魔術師はそうして地下室から姿を消した。“結社”の上層部の命令に従い、それを遂行するために―― -- ハスティル 2012-02-26 (日) 01:35:36
      • その翌日、エメラルド協会の本部が焼失したというニュースが町中に伝えられた。一夜にして、エメラルド協会の広大な本部全てが炎に包まれ消えたのだという。協会のグランドマスターと幹部は全員死亡したとのことであった。
        ハスティルの存在について、新聞にその存在らしきものをほのめかすことすら書かれることなかった。ハスティルは、誰にも見られることなく、指令を完遂したのである。その手際は徹底したものだった。
        “結社”に近づき、“結社”の勢力を取り込もうとしていた新興魔術結社エメラルド協会はその中枢が崩壊したことにより、一気に勢力を衰えさせ、やがて消滅してしまった。黒衣の魔術師が何度も行ってきた、魔術組織の壊滅の一つであった。そして今日もまた、トートの魔術師は“結社”の指令に従い、暗躍しているのである―― -- ハスティル 2012-02-27 (月) 04:40:17

Last-modified: 2012-03-15 Thu 01:01:38 JST (2875d)