HNH/0021

  • 第二話 そして星は回り出す -- 2019-02-18 (月) 20:34:10
    • 「これで、おっわりぃっ!!」
      呼び出された巨大な拳が蠍の形をしたぬいぐるみを打ち払う。
      内側から発光するように消滅したそれは
      「よっと、また『星のイシ』だ!」
      光の粒子が四散する中、ひときわ輝くそれを空中でスピカがキャッチする。
      「でも、最初の奴より小さいね」
      「ウェズン。ドゥーベと比べたら小さいが、しかし前の奴よりは大きい」
      変身を解き、ポケットに星のイシを放り込むと街への道行きを歩き出す。
      これまでに5体。スピカはガイスターを退けていた。
      季節は廻り、6月。ガイスターとの戦いは、まだ誰にもバレずに行えていて、変身自体もバレずにここまで来た。
      「でもね、流石にこないだ出た課題の討伐リストは……変身しないと難しいと思うんだよ〜…ね?」
      機嫌を伺うように、許しを請う様に、そんな声を上げるスピカ。誰に、とは言うまでもなく
      「駄目だ。人前で変身をしないのは、私との約束の筈だ」
      一刀両断。歯牙にもかけず、カペラはスピカの言葉を拒否する。
      「だよねぇ……わかっていたんですよ? わかっていたんですけども〜」
      ぶちぶちと言葉を紡ぐスピカだったが、カペラはそれどころではなかった。
      現在、5体ものガイスターを倒している。
      そもそもガイスターとは自然発生するような類のものではない。
      『誰か』が力を注ぎ、故意に発生させられているものだ。
      つまり明確な目的があって繰り出されている、いわば刺客。
      今回も街の外での戦闘だった。最初と同じ場所ではない。一見散らばるように敵がやって来ている。
      だが実際は、街を囲むように。力を持つ者の所在を明らかにする様に現れている。
      威力偵察。そうだろう、ここに『星』の力を持つ者が現れたのはイレギュラーだ。
      ゆえにどのような者が現れたか試されているのだ。それは、最初よりも明らかに弱いガイスターを送られている事からも明らかだった。
      「カペラ……カペラ、ねぇカペラってば!!」
      思考の海に落ちていたカペラをスピカの声が無理やり引き戻す。 
      「あれって、もしかして……!」
      途端、先程まで歩いていたスピカが駆けだした。
      「っ……! 急ごう、スピカ」
      夕闇が下り始めた空。星々が瞬きだす紫の世界。
      「遂に……始まった」
      夕闇を引き裂くように三筋の星が街へと降り注ぐ。

      街についた頃には、大きな騒動が起きていた。
      子供、大人、人間、獣人、多様な種族と多様な人がひしめく街だ。
      そこが今、襲撃されていた。何故襲撃されるのか。多くの冒険者が排出されている街だ。
      理由は単純だった。
      『星』の力に対抗するのは同じ力。『星』の力が必要だ。
      獅子、蠍、牡牛、それぞれの姿をもった巨大なヌイグルミが、街で暴れるその姿は喜劇的でもあるが
      その被害は、悲劇と言うほかない。
      建物が焼け、怪我をし悲鳴を上げる人々。その光景は、この光景は
      「スピカ、落ち着いて聞くんだ……今すぐ、ここを」
      「逃げるって、言うの?」
      「スピカ」
      「こんな、こんなのを見て、逃げられるわけないよ!!」
      「スピカ、聞いてくれ」
      「ヒーローになるって決めたんだ。カペラ、僕は約束したよ」
      「スピカ!!」
      「必ず全てを救ってみせるって、ここだっておんなじだ!!」
      「逃げなければいずれ捕まると言っているんだ!! 君は!! 君だけは捕まってはいけないんだ!!」
      「僕は……それでも……!!」

      「何をしているんだ君!! 早く逃げろ!!」

      会話を遮る様に声が響く。武装をしており、兵士というわけでもなくどうやら冒険者の類だろう。
      「ここは危ない!! 避難しろ!! 今なら間に合う、早く!!」
      「で、でも……!」
      「あれがここに来ないうちに逃げるんだ! 俺達が押さえておく、いけ!!」
      そう言ってガイスターが暴れている方向へと走っていく。
      「スピカ、彼の言う通りだ。この騒動の内に別の国に行く。今ならまだ…」
      「……カペラ、逃げて逃げて、どうするの?」
       逃げた先が壊されて、壊されて壊されて、そんなのヒーローの」
      「スピカ、君はヒーローではない」
      「……っ!!」
      「君はあくまでも私に巻き込まれただけの人間だ。力を譲渡したのだって不本意なものだった
       だから、私の言う事を聞いてる内であればその力を使っていいと言っていた
       だが、君はその力を私に逆らって使おうと言う。わかるね、その力は大事なものなんだ……
       スピカ……行くならその力を置いていってくれ。それならば、先に行く事を許そう」
      それは、もはや引き止める気すらない言葉。『星』の力なしではどうにもならない。
      だが、それがどうだというのだ。
      「うん、わかった。この力…『還す』よ」
      左手の紋章。スピカに刻まれた星の紋章が消える。
      「スピカ!!」
      「僕は、もう逃げない……これって僕の所為なんでしょ? なら、尚更逃げれないよ!!
       戦わないでする後悔なんて、もうしたくないんだ!!」
      カペラの入った鞄をおろし、スピカはこの騒動の大元へと走り出す。
      『星』の力なしでは勝てない。わかっている事だ。それでも、一度した後悔を二度もする気はなかった。
      この二か月で、色んな人に出会った。その人達に向ける顔さえ持てなくなってしまう。
      ヒーローになると言った自分を、肯定してくれた人たちに顔向けできなくなってしまう。
      何より、救いを求める人がいる場にいるのに……背を向けることなどできるわけがない。
      1人でも救う。この手が動く限り、この足が動く限り。

      Apart終了 -- 2019-02-18 (月) 20:35:05
      • 獅子のガイスターとの戦いは混乱を極めていた。
        一見それは巨大ではあるが見た目はただのヌイグルミであり、出現した時はどうということもないものと考えていた者もいたが、それは間違いだった。その巨体から繰り出される攻撃に技術などなく、ただ膂力による暴力。だが、それを止める事ができない。
        それだけでなく、こちらの攻撃もまるで手ごたえがない。ダメージが入らないというレベルではなく、
        もはや干渉することができない。その戦いは同じ場所にいるように見えるのに、ズレている。
        正面に捉えているつもりが当たらない。冒険者側も手出しできず、ただただ被害を抑えることだけで精いっぱいだった。
        混乱極まるその場に、弾けるように飛び出し、ガイスターの前に立つ影があった。
        「もう、何もさせないぞ……!」
        息も切れ切れ、『星』の力なしでは年相応の身体だ。鍛えてはいても、想定外の動きではない。
        「何をやっているっ!! 早く逃げなさい!!」
        「いいか! 俺は子供を助ける!! 道を作って……くそっ!!!」
        冒険者達がスピカを助けようと動き出すが、今まで無軌道に動いていたガイスターがスピカを認識した途端、そちらに向かって巨大なその腕を振り下ろした。

        「星に願いを……!!」

        ポケットから取り出した『星』のイシを握り、唱える。変身はできなかったが、しかし身体には『力』が循環するのを感じた。
        「メテオ……! ストライクゥゥウウウ!!!」
        振り下ろしてきた腕に星のイシを握り込んだ左拳を繰り出す。
        「ぐぅっ!!」
        アッパー気味に振り抜き、その腕を弾く事に成功はした。だが、身体に掛かる負荷は激しかった。
        本来は変身するつもりで願った。しかし、結果は半々といったところか。
        願いが届かなかったわけではなかったが、叶えるには「星のイシ」に込められた『星』の力が足りていなかった。
        それに、多分ではあるがこれは限りがある力だとスピカは思考する。何故なら技を繰り出した時、何故だか直感した。左拳に漲っていた力が消失した、と。
        すぐにまた循環し、力が巡るがこんなことは一度もなかった。
        原因があるとすれば、おそらく正規の力を使っていないからだ。
        カペラが持つ『星』の力。あの力でなければ駄目なのだろう。
        しかしそれがどうした。と心の中でスピカは叫ぶ。
        「戦えるんだ、なら……今はっ!」
        スピカは獅子のガイスターへと跳躍した。周囲は戦えるものが現れた事に困惑が広がりつつも、戦えるものが現れたため避難誘導とスピカの援護に回っていく。
        「せーっの! 飛んでいけーっ!!」
        獅子のガイスターの胴体に、ドロップキックの要領で両足で蹴りを加える。
        周囲の建物を削りながら、避難を急ぐ人達とは反対側に移動させていく。
        先程の感覚が今度は両足に伝わる。どこまで戦えるのか、流れ星は三つ。
        他の場所にもガイスターはいる。ここで足止めを食ってる場合ではない。
        「サテライトウェポン!!」
        一気にトドメを刺す。そのつもりで叫び、能力を起動しようとした。しかし
        「……出てこない、っく!」
        正面に迫る牙を避ける。今にも噛み砕かんとするその攻勢をいなしながら、スピカは思考する。
        やはり変身しなければ呼び出せないのか、そうするとスピカの手持ちの技はメテオストライクのみ。それも、回数制限がある。まさしく窮地に立たされている現状。だが、負けられない。
        「僕は諦めない、ここで諦めたら……ヒーローなんかじゃない……!!」
        全身に力が入った気がした。『星』の力じゃない。それは、自らの意思。スピカの意思だ。
        あの日根ざした思いが、今の自分を作り動かしていく。
        力のあるなしではない。この状況を許せるのか、であればスピカの答えは一つだ。
        否。否だ。
        理不尽に誰かが踏み躙られる事など許された事ではない。その行いは悪でしかない。
        ならその悪に立ち向かうのは誰だ。決めた筈だった、そう立ち向かうのは
        「立ち向かうのは、僕だ……!!」
        火花が散る音が聞こえた気がした。胸の奥、ずっとずっと奥の方。
        スピカの声に呼応するように獅子のガイスターが襲い掛かる。その両の顎でスピカを砕こうと。
        バックステップでそれを躱し、続く爪による連撃も紙一重で躱していくが、赤い線が少しずつその身に刻まれる。
        「うぐっ……!?」
        痛みに呻いたその隙、身体が硬直したその一瞬。大きく振られた前足がスピカの肩に掠る、それだけで身体は近くの建物まで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
        痛みを感じる暇もなく、怒涛の追撃がそこに加えられる。しかし、それらをなんとか躱していく。
        痺れを切らしたように獅子のガイスターが真っ直ぐ突進してくる。それを、待っていた。
        「メテオストライク!!」
        真っ向から、スピカは左拳を獅子のガイスターの眉間と思しき場所に叩き込む。その反動がスピカの全身を貫き、軋むような痛みが走る。しかし、代償を払った甲斐はあった。
        獅子のガイスターの動きが止まる。見た目はヌイグルミであり、その構造が同じとは思えないがしかし、明らかにダメージが入ったようにグラリとその巨体が揺れた。
        であれば追撃に入るべきだが、スピカもまたたった一撃を与えただけで先程の反動だった。常人であれば動けなかったかもしれない。たった一撃入れるだけで、自らにも同等以上の痛みが走るようなものだ。
        スピカの年齢を考えれば痛みと恐怖で動けなくなってもおかしくなかった。
        だが、止まらない。その言い訳を用意しない。
        「まだ、まだぁあああああ!!」
        右拳で今度はその顎を下から突き上げる。浮かび上がる巨体。二連撃、それはオービタルストライクと名付けられたメテオストライクの連撃。
        今までの彼女であればそれが精一杯だったし、そもそも変身している事が前提だった。
        にも関わらず撃ち抜く。先程の一撃の時よりも大きいその身に走った痛みは想像を絶する。
        しかし身体の痛みでは止まらない、止まれない。
        大きく、引き絞るように左拳を後ろに引いた。
        「三、連撃……! オービタルストライク!!!」
        獅子のガイスターの側頭部を殴りつけ、力任せにという言葉では軽い程の剛力で地面へとそのまま叩き付ける。
        叩きつけられた獅子のガイスターは大きく天に向かって叫びを上げると、糸が切れるように動くなくなり、少しずつ光の粒子となり消えていく。
        その光景をスピカはかろうじて立ったまま見ていた。座ってしまえばもう動けなくなるだろう。そもそも、既に動くだけの体力は残っていない気がした。
        消えていく怪物と、その前で立ち尽くす少女。辺りにいた冒険者たちも眼を剥くような光景。それはそうだろう。子供とも呼べそうな少女が、熟練の冒険者ですら手出しできずにいた怪物を拳で捻じ伏せた。
        通常であれば歓声が起きてもおかしくなかった。しかし、事態は更に深刻さを増していく。
        「ウソだろ! なにかがこっちに……!あれは!!?」
        冒険者の一人が叫んだ。視線を向けた先には、2体目のガイスター。雄牛のガイスターが突進してくる様が見えた。周りがすぐさまスピカを助けようとするが、どう見ても雄牛のガイスターの突撃が当たる方が速いだろう。間違いなく間に合わない、せめて逃げられるならば逃げてくれと願う人々。だが、スピカは違った。
        「………」
        震える身体を無理やり動かし、拳を構えるスピカ。息は絶え絶えで、切り傷に擦り傷や打僕、それでなくとも技を行使し続けた結果見えないダメージが蓄積している。何より、既に『星』の力は消失してしまっていた。
        だが、そうであろうとどうであろうと関係がなかった。
        まだ生きている。まだ自分は動いている。どれだけ身体が砕けそうであっても、どれだけ困難が続こうとも。
        この心が折れる理由には及ばない。
        「僕の心は……まだ、輝いてるよ……カペラ」
        あの日の言葉。そう、あの言葉が支えてくれる。僕をヒーローにしてくれた言葉。

        「スピカァァアアアア!!」
        頭上から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
        その叫び声に導かれるように、スピカは左手を掲げる。
        左手の甲に再び、黄金色に輝く星の刻印が刻まれていく。
        来るとは思っていなかった。来てくれればと思っていた。約束を違えた自覚はあった。
        だけど、誓いを違えたとは思っていなかった。だから、もしかしたら、きっと。
        あの、マスコット然とした姿のくせに、まるでマスコットをしない口調の彼が現れるだろう。
        確信はなかった。でも予感があった。期待があった。願いがあった。
        短い付き合いではあるが、それでも信じていた。
        弱く、臆病で、しかし思慮深くスピカのブレーキとなってくれるスピカのヒーローが現れるのを。

        「……星に……願いを……!」

        光の粒子がスピカを包み、そして弾けるように光が辺りへと散らばる。
        その光の中で、自分が置いてきた鞄を抱えながら言葉を投げる。
        「遅いよカペラ。待たせすぎ」
        「無茶をする…スピカ、本当にあなたはどうかしている」
        「ヒーローになるんだよ? どうかしているくらいじゃないと」
        目の前に流れる長くなった髪を振り払うようにスピカが顔を振り、その動作に合わせて拳を突き出す。
        「名乗れないでしょ。常識に囚われてるようじゃまだまだってね」
        「限度があるという話をしている」
        すでに目前まで迫った雄牛のガイスターが止まっている。拳どころか、指先。突き出した人差し指一本でガイスターの動きを止めていた。
        「限度なんてないよ。『私』は全てを救うヒーローになるんだから、ね!」
        鞄を足元に置いて、ガイスターを止めている腕とは反対の腕を掲げ、叫ぶ。
        「…サテライトウェポン!! 君だけじゃないんだ、さくっと終わらせていかないとね!!
         あいつを砕いて、ポリマ!!」
        巨大な腕がスピカの背後から空間を捻じ曲げるようにして呼び出される。雄牛のガイスターとほぼ同等のその拳と対峙したガイスターは感じているだろう。圧倒的過ぎる死の予感。喰らうではなく、触れるだけでも致死。
        先程まで自分の仲間をかろうじて撃退し、風前の灯めいた体でいた少女は、今や先程までの姿はなく漲る光の粒子は『星』の力が滾り、身体から溢れる程となっているその姿はまさしく、天敵とも呼べる彼女らに似ていて。
        轟、と叫び声を上げる。怒りからではなく恐怖から。有りえなかった。有りえないのだ。
        ここでは、あってはならない。その存在を認められない。創星の巫女。ここにいる筈がない。ないのに。
        目の前の彼女からはそれに近しいものを感じた。しかし、近しいだけでその悍ましさは比べようがない。
        散々敵対してきた彼女たちが小さく見える程、目の前の彼女は酷く歪で、ねじ曲がっている。
        存在してはならない。存在しえない者だからだ。
        どこまで思考できたかはわからないが、後ずさろうとしようとするがもう遅かった。
        「どっっっっかあああああん!!」
        圧倒的な破壊を伴い、巨大な腕が雄牛のガイスターを粉砕する。獅子のガイスターとは比べるまでもない瞬殺。
        余波で周りの建物にもヒビが入り、崩れかけていた建物には致命的な一撃だった。
        雪の様に、光の粒子が辺り一面に散らばっていく。

        「……ありゃ」
        「やりすぎだが…………大丈夫だ、スピカ」
        「え、そうなの?」
        「ああ……彼女もいたからな」
        「かのじょ…?」
        首を傾げるスピカ。だが疑問を問う余裕もなく、背後の方で目の前で起きた光の爆発と同じものが起こる。
        「カペラ!? 今のって!?」
        「今ので、ガイスターは全部消えたようだ…」
        「そうじゃなくって、一体だれが……」
        「私です」
        声が響く。それだけだった。瞬間、視界がどんどん変わっていく。崩れ落ちていた建物が巻き戻されるように元に戻る。
        建造物だけではなく、この街にいた人達、いや街全てが巻き戻されていく。その力に干渉されないのがスピカとカペラ、そして二人の前にいつの間にか現れた少女。年の頃は元のスピカと同じか少し上に見えた。
        やがて何もなかったように、普段の喧騒が戻ってくる。当たり前の日常風景。
        「君は……一体?」
        「結界を張り、星巡りを行いました。3体分の星のイシと私が持っていたものの半分
         これでなんとかといったところでしょうか」
        「まってまって! 理解が追いつかないよ?! ど、どうなってるの!?」
        急すぎる展開に叫びだすスピカ。それも当然と言えるだろう。さっきまでの悲劇めいた展開が嘘のようになくなっている。何が起きている? なんなんだこれは。
        「事情を、説明します。ついてきてくださいスピカ。貴女には話さなくてはならない
         我々創星の巫女の事、貴女の事、大事な事ですので……本当に……でも……」
        そう言って目の前の少女がスピカに近づく。あまりの情報量に動けずにいるスピカ。しかし、さらにフリーズする。
        「会えてよかった……」
        見知らぬ少女に抱きしめられ、さらにフリーズする羽目になった。
        Bpart 終了 -- 2019-02-19 (火) 22:40:51
  • 第一話 これは私の物語 -- 2019-02-13 (水) 18:51:14
    • 入学式からの帰り道。期待を大きく胸に抱いて寮へ向かう足取りはいつもより軽やかだ。
      「これからどんなことが起こるのかな、楽しみだなぁ!」
      鼻歌交じりでそう呟く。不安がなかったわけではない。
      だがそれを上回る期待があった。希望があった。
      それはきっと、スピカの表情を見れば誰しもがそう思うだろう。
      「だが、これからなにがあるかわからない」
      鞄の中から声が聞こえる。スピカは辺りを見回して誰もいない事を確認してから鞄を開く。
      「心配性だなぁカペラは。なにかあっても、僕は大丈夫。へっちゃら!」
      「根拠のない言葉をありがとうスピカ」
      やや棘のある言葉を返すのは、鞄の中にあった星のぬいぐるみ。
      星に目をつけただけのものだが、表情豊かに、いやある意味では一つの感情だけを発露していた。
      「一度変身した以上、これからあなたには多くの災いが降りかかる
       その困難をまるでわかってない」
      「そうかもだけど、僕はヒーローになるんだ!
       その程度ではへこたれないので!」
      カペラの言葉にも、スピカは動じずにそう答える。出会った時と同じ。
      「無垢だというのも考え物だ」
      「考えすぎたって前に進めないからね」
      どう言われようとスピカが折れる事はない。
      「ようやく一歩進んだんだから!」
      「………」
      希望に満ち満ちたその声に、しかしカペラはなにも答えず。
      正反対の二人の道行。苦難を語ろうと、折れないと答えるそれはもはや会話にもならず。
      そして二人の頭上、夕焼けが紫に変わりつつある空に一筋の星が流れる
      「あ、カペラ見てみて流れぼ……しって事は!」
      「スピカ、街の外に出よう」
      直後、スピカが駆け出す。

      「敵が来た」

      Apart 終了
      -- 2019-02-13 (水) 18:52:44
      • 「ここまで来ればいいかな……?」
        「多分、大丈夫だろう。だが気は抜けない……スピカ、来るぞ」
        駆けて駆けて街の外。街道からも外れた荒野。
        場所としては申し分ない、とカペラは言うがスピカは少しだけ不満そうで
        「ヒーローなのに、隠れて戦うのってちょっと違う気がする…」
        「街での戦闘は極力避ける。2人で話し、了解した事だ」
        「そうだけど…」
        「承認欲求でヒーローにはなれない」
        「わかってるよ! 被害も出せれないのもわかってる!!」
        戦闘する事で起こるであろう二次被害。それを避けたいのはスピカとて同じだ。
        「ヒーローは、ままならな」
        「スピカ、来るぞ」
        「まだ台詞の途中なのに!!」
        巨大な音と振動を伴って光の塊が目の前に降ってくる。
        「GAAAAAAA!!」
        それは、5mはゆうに超える巨大な熊のヌイグルミ。しかし、一見してもそれをヌイグルミと認識はできないだろう。
        何故ならそれは自分で動き、吠えている。そもそもが既存のヌイグルミのような可愛い外観をしていない。
        それは怪物。モンスターとも呼ばれているそれに似ていた。大きく違うのは、その胴体に刻まれた星のマーク。
        遒だ韻離沺璽が刻印されたその姿こそが「ガイスター」と呼ばれるヌイグルミの特徴だった。
        「カペラ! なんか前よりおっきいのが来たよ!!」
        「ドゥーベ……どうやら、補足されてしまったようだ」
        「カペラ!!」
        「前と同じだスピカ。大きくとも小さくとも、あれらは変身した君にしか倒せない」
        「君だけしか頼れない。だから、願ってほしい。スピカ、君の希望を願ってほしい」
        「……うん!! 僕の、願いは!!」
        とびっきりのヒーローに、誰かを守れる人になりたい。

        「星に、願いを!!」

        周囲を先程よりも強い光で溢れる。それはスピカを中心として溢れ、収束していく。
        スピカの身体に温かなものが流れていく。やがて内から外へ。身体が光と共に変質する。

        僕が、「私」になる。

        「さぁ、輝くよ!! 私!!」
        光の粒子を纏いながら、成長したスピカが姿を現す。
        「星の力」を使う事でおよそ20歳前後まで強制的に年齢を引き上げる。
        それは、現在のスピカでは「星の力」充分に使う事が出来ないからだ。
        どれだけ全力で戦おうと、目の前のガイスターを倒す事は出来ないだろう。
        だが、未来のスピカは違う。
        「メテオ、ストライクゥ!!」
        星の力を込めてただ殴る。それを技と呼ぶにはあまりにも暴力的だが
        「GYEEEEEEEAAAA」
        その一撃は目の前のガイスターを一蹴。近くの岩にぶつかっても勢いは止まらず吹き飛び続ける。
        ガイスターを追ってスピカが駆ける。見る者によってはまるで目の前から消えたかのような加速。
        吹き飛び続けるガイスターに追いつき、追撃する様にメテオストライクを今度は踵落としでもするかのように浴びせる。
        浴びせられたガイスターは地面と激突し、轟音とも呼べる激突音を響かせ地面にぶつかる。
        衝撃で地面は砕け、クレーターのような穴が出来上がる。
        ガイスターは別に弱いわけではない。冒険者の基準で考えても歴戦の猛者ですら苦戦を強いられる。
        この巨大さでは、1パーティだけでは全滅すらありうる。攻撃自体も弱いわけではなく、凶暴に振るわれるその腕がぶつかるだけで人間の身体など木端微塵となるだろう。
        「AAAAAAAA!!」
        倒れながらもガイスターが更なる追撃を加えようとするスピカに人にとっては猛威となるその腕を振るう。
        だが、それを意も介さず受け止める。ボールでも受け止めるかのように、避ける事もせず、むしろその腕を掴んでガイスターごと持ち上げる。
        「でいやぁああああああ!」
        持ち上げたガイスターを大きく頭上へと投げる。軽々と真上へと飛んでいく体躯はそれこそヌイグルミと呼ぶに相応しいものだったかもしれない。
        「これで終わりだよ。来て、サテライトウェポン・ポリマ!!」
        左腕を大きく引き、力を溜めるような構えを取る。事実「星の力」は急速にスピカに集まり、その左手に集中していく。
        「きらめく星にぃぃ還れえええぇえええええ!!」
        大きく頭上に拳を振り上げる。拳の先の空間が歪み、ガイスターをも超える巨大な腕が空間を突き破って現れ、 落ちてくるしかないガイスターは避ける事も出来ず成すすべなくその拳と激突する。
        「GAAAAAAAAA!!」
        その巨体が内側から光を発して消えていく。スピカの召喚した巨大な腕、サテライトウェポンも役目を終えたかのように光の粒子となって消える。
        「ああっと、と!」
        消えるばかりではなく、ガイスターの中から宝石の如く輝く石が落ちてくる。手のひらに収まるほどのそれを スピカはキャッチして
        「カペラ、なぁに?これ」
        「星のイシ。「星の力」を込められた宝石だ。ガイスターはそれに願いを込める事で生み出される」
        「だが、それはよくない願いだからだ。正しい願い事で身の丈にあったものであれば、必ず願いが叶うものだ」
        「持っておくといい、何かがあった時に助けてくれるかもしれない」
        「ふぅん、なら!持っておくよ!」
        そう言ってスピカは左手に軽く口を付ける。先程変身した時のような光が辺りに広がる。
        「でも、前のヌイグルミにはなかったよねこれ?」
        「以前のものはガイスターになっただけで消費しきっていた。今回はそうではなかった」
        「そういうものなの?」
        「そういうものだ。さぁスピカ、もう夜になる」
        「うん、帰ろっか。お腹も空いちゃったし、寮のご飯楽しみだなぁ!」
         笑顔で元来た道を戻っていく。そんな二人を、遠くから見ている影が一つあった。

        「……なんで、あなたが……スピカ」

        Bpart 終了 -- 2019-02-13 (水) 18:53:12

Last-modified: 2019-02-19 Tue 22:40:51 JST (295d)