蝶の羽
- 黄金暦95年のお届けものでーす。 --
- うーん、随分埃が溜まってるなあ。お盆にはちょっと早いですけど、お掃除に来ましたよー、(背の高い若者が玄関の扉を開けると、掃除道具を持って部屋の中に現れる) -- クリック
- イグさんが亡くなられたのが丁度100年……今が113年ですから、もう13年も経ってるんですね。
(窓を大きく開け放ち、新鮮な空気を部屋の中に入れると、箒を手に丁寧に部屋の中を掃き清めていく) -- クリック
- やっぱり亡くなられてても、清潔な方が良いですよね。あ、僕師匠の弟子のクリックって言います。元々は亀だったんですけど、いまはちょっと人間の格好になってるんですよ、へへへ。
どうぞ宜しくお願いしますね! (無人の部屋に語りかけながら、水雑巾で丁寧に家具や調度品を磨き上げていく) -- クリック
- うーん……こんなもんかな!(満足げに額の汗を拭いて磨き上げられた部屋を眺めまわすと、花瓶に白い花を挿しテーブルに飾る)
今まで来れなくて済みませんでした、これからは時々掃除に来ますね。それでは、どうぞおやすみなさい! (若者がぺこり頭を下げて立ち去ると、住む者のいない部屋に再び静寂が訪れた) -- クリック
- ……この部屋に来るのも久しぶりだな。すっかり遅くなってしまったが…街を出ることになったので、最後に挨拶をしておこうと思ってな。
…覚えてるか?いま私がかけているサングラス…これは君が最初のバレンタインの時にくれたものだ。 あの頃はこんなものかける気はなかったのだが…今では私のトレードマークのようなものになってしまってな。はは…外そうにも外せんよ。 君の応援のおかげか…あの時の娘と…その、結婚することに…違うか、もうしたんだった。 まぁそういった運びになってな。思えば私は君に世話になりっ放しだったな…… (かけていたサングラスを机の上に置く)…これからグリッグのところにも顔を出してくるよ。……では、な。また会おう。そちらでなくこちらで。 -- イグジステンズ
- ただいまイグ。ははは、まいったぜっ!!!お前が守ってくれたのかい?
仲間は全員トカゲに喰われて、生き残ったのは俺一人!笑いたくなるほど運が良いじゃないかっ! おまけに来月もトカゲだとさ。向こうも喰い残しは申し訳ないとでも思ったのかね? ああ……だが今日はクタクタだ!まったく、世の中皮肉じゃないか! おやすみイグ。今は只、泥のように眠るだけだよ……。 -- グリッグ蛙
- (暫くの間目を瞑った後、身じろぎをして躰を起こす)うん……なんとなく気分が落ち着いたぜ。
少しナーバスになっていた。大丈夫、次の依頼も生きて帰るさ。 今日はやらたと円卓に客が来てね、一度に四人も新人が入ったよ!まったく信じられないじゃないか…これも皆熱心に勧誘や広報をしてくれた連中のお陰だな。 -- グリッグ蛙
- 取り敢えず、再編後の出だしは今のところ順調さ。お前も一安心ってところだろ?
あそこは俺達の大事な居場所だったよ、無くなったり寂れさせたら済まないもんな。 ……うん。もう一度、眠るとするよ。おやすみイグ、二人で良い夢を見ようじゃないか……。 (瞳を閉じて深呼吸をすると、穏やかな表情を浮べながら、再び深い眠りの中に潜っていった) -- グリッグ蛙
- (朝日が昇る頃、頬を擽る柔らかい風と共に一枚の灰色掛かった羽が舞い落ちてきた。まるで何かを告げるかのように) --
- イグ、戻ったよ。今日は疲れた、早めに休ませて貰うよ……(とぼとぼと部屋に入るなり、寝ぼけ眼で恋人のベッドに潜り込む) -- グリッグ蛙
- 次の依頼はトカゲだそうだ…随分前に仲間が三人やられたが、前回は犠牲無しで倒せたからな、今度も多分大丈夫さ。
それから、騎士団の仲間と行ったクルージングの土産話は今度にしよう。 いつも通りの大したドタバタさ!最後の花火はお前にも見せてやりたかったなあ……。 -- グリッグ蛙
- それじゃおやすみイグ。また明日だぜ……。
(呟くように恋人に語りかけると、そのまま眠りの中に落ちていった) -- グリッグ蛙
- (透き通った月明かりが窓から差込み、ベッドを照らし出す。その光景は、彼の無事を祈る抱擁の様にも見えた) --
- (窓から差し込む月明かりの中、夜中にふと目を覚まし顔を擦る)
うーん……ほお、奇麗な月が出ているじゃないか。こんな見事な満月を見るのは、一体いつ振りなんだろうか……。 (ベッドの上で足を組むと頬杖を突き、まるで考え込むように暫しの間月夜を眺めると、やがて目を細めて語り始める) -- グリッグ蛙
- なあイグ、俺はじきにこの街を出るよ。
……と言っても、今日明日って話じゃないし、その前に依頼先でおっ死ぬ可能性はあるけどな。 -- グリッグ蛙
- お前はみんなのためにここに残れと言うかも知れないけど、俺は誰かの為になんて生きられない人間さ。
お前が居なくなってからずっと、俺は漠然とした陰鬱に捕らわれてるよ。 どんなに愉快な事をしてても、心の底から笑えない……そんなんじゃ、生きてて苦しいだけだろう? -- グリッグ蛙
- それにね、この役立たずの躰にも飽き飽きしてるんだ。騎士といっても名ばかりの置物さ、円卓に居る意味だって殆ど無いよ。
だけど、お前無しでは俺は人には戻れない……だからね、誰も知らない街へ往くよ。 -- グリッグ蛙
- そこでのんびり孤独を味わいながら、お前と再会出来る日を待とうと思うんだ。俺は柄にもなく色んな物を背負いすぎたよ。
特に、この小さな躰じゃ荷が勝ちすぎる! 仲間ともう会えなくなるのは寂しいけどね、それしか俺の心の空洞を癒す方法は無さそうなんだ……。 -- グリッグ蛙
- でも、もう暫くはお前と一緒にここで過ごすよ。そして暫しのお別れの後……あの世でお前と再会だ!
なあ、それで良いだろうイグ?だから、もう少しお前に甘えさせてくれ……。 (月を眺めて呟くように恋人に語りかけると、やがて目を瞑り、静かな眠りに戻っていった) -- グリッグ蛙
- (その日、何かを訴え掛けるような風鳴りが一日中響いていた) --
- ただいま戻ったよ。(静かに恋人の部屋の中にはいると、疲れた表情でベッドの上に倒れこむ)
……もう四月なんだなあ…きっと今頃外では桜が満開だろう。 お前が居なくなってからまだ半年しか経ってないなんて、信じられるかい? 俺はもう、一年以上は過ぎてしまった気がするよ……。(力無く呟くと俯せになり、柔らかいマットに顔を埋める) -- グリッグ蛙
- 実はお前に頼まれた遺言、まだきちんと果たせていないんだ。財産を騎士団に寄付するって…なんだか上手く言い出せなくてね。
だからもう少し待ってくれ、まだそんな気持ちにはならないんだよ……。 でも、騎士団の方も少しずつ新人が入ってきてるみたいだし、それ程心配しなくても大丈夫さ。 お前や俺が居なくなっても、きっと皆で上手くやっていける筈だよ……。 (カーテンを締め切った部屋の薄暗がりのベッドの上で小さく躰を丸めると、やがて眠るように瞳を閉じた) -- グリッグ蛙
- (最後の言葉が告げられた時、まるでそれを否定するかの様な冷たい風が吹いていった) --
- そろそろ出発の時間だな。生きて戻れたら、またこの部屋で会おう。そうじゃなければ……俺とお前のハッピーエンドさ!
それじゃイグ、行って来るぜ。あとは運を天に任せてくるよ!(玄関の扉を開けると背負い鞄を担ぎ上げ、陽光の中を歩んでいった) -- グリッグ蛙
- ははは、イグ、今戻ったぜ!
どうやらトカゲ程度じゃ役不足だったらしい!俺も結構力がついてきたのか?(力瘤を作ってみせると、戯けて笑う) ……すまないな。お前の元に行くのは、もう少し後になりそうだ。 もうちょっとそっちで辛抱しててくれるかい? -- グリッグ蛙
- だけど今日は、誰一人犠牲を出さずに無事戻れた事を祝うとしよう!
お前えだってきっとそう言うだろうしなっ。 …でもその前に、ちょっと一休みだ。今日の俺は、何だか凄く疲れたよ……。 (ソファにぽてんと横になると、目を瞑り、やがて穏やかな寝息を立て始めた) -- グリッグ蛙
- うん…少し寝冷えをしたみたいだな、少し体調を崩したようだ。(疲れた顔色でベッドから躰を起こす) -- グリッグ蛙
- 悪い夢を見ていたようだ。少し、疲れが溜まっていたのかも知れないな…。
(流しに登り、グラスに水を注ぐとゆっくりと飲み干した) -- グリッグ蛙
- 今日はね、無性にお前が傍にいないのが寂しくなってしまったよ。寂しくて…そして腹立たしいんだ。
なんなんだろうな、この感じは……まるで昔の自分に戻ったみたいさ。お前に出会う前の、一人だった頃の自分にね。 -- グリッグ蛙
- きっと、体調のせいもあるんだろう、また大人しく寝直す事にするよ。
それじゃおやすみイグ。また明日な……。 -- グリッグ蛙
- (夜が明け、柔らかな朝日が窓から差し込み始めた。励ますかの様に、暖かく柔らかい光が) --
- イグ、只今戻ったぜ!
どうやら次は、ちょっと危険な依頼みたいなんだ。勿論まだ判らないけどな、もしかしたら、案外早くお前の元に行けるかもしれない。 そしたら……お前は俺を温かく迎えてくれるかい? -- グリッグ蛙
- 未練がないとは言わないよ。でもね、お前がこの世に居ないんじゃ、やっぱり俺は心の底から笑えないんだ。
だから、俺がそっちへ行ったときには、笑顔で迎えてやってくれ! -- グリッグ蛙
- 言いたいことはまだまだ沢山あるんだよ。でも、やっぱり直に顔を会わせないとなっ!
それじゃ俺は少し用があるから、また夜中にでも寝に来るよ。 じゃあなイグ、元気で! -- グリッグ蛙
- ただいま、戻ったぜ!ああー、今日は疲れた……。(恋人の部屋に戻るなり、どさりとベッドに倒れこむ) -- グリッグ蛙
- 実はね、赤羊の何人かと一緒に、列車で小旅行に行ってきたんだよ。
トレインに乗ったのは初めてだったが、あれは凄いもんだなあ! 景色がまるで、風のように流れていくんだ…すぐに寝ちゃってあんまり楽しめなかったんだけどさ! その時の記録はここだな。纏まってないんで読みにくいだろうけど、雰囲気だけでも感じ取れれば良いさ。 -- グリッグ蛙
- のんびり骨休めの旅行のつもりが結局いつものドタバタでね、休暇どころじゃなくなっちまったが、あれはあれで楽しかったよ。
でも、出来ればお前も一緒に連れて行ってやりたかったなあ……。 近場を出歩いたりはしたけどさ、ああいう乗り物に乗って遠くへ行く機会は無かったろ? お前の手漕ぎボートは…ちょと雰囲気が違うかな……。 -- グリッグ蛙
- お前は一緒に行くなら何処が良い?北か?南か?船旅?列車?
俺は、お前と一緒なら何処でも良いぜ。でもどうせなら、静かな処が良いなあ……。 そして、二人でゆっくりお喋りをしよう。これからのことや、これまでのこと。 楽しかったこと哀しかったこと、嬉しかったこと寂しかったこと……何でも良いさ! 今ならきっと、物語の種は尽きないぜ。 ……いや、それすら必要ないかも知れないな!俺は黙ってお前の顔を見つめているよ。 -- グリッグ蛙
- ……さて、済まないがそろそろ俺は休むとするよ。来月の依頼は大仕事だ!
お前に会いたい気持ちはあるけどね、むざむざ命を捨てるのだって俺は嫌さ。 だから今日は、ゆっくり休んで体調を整えておくよ…おやすみイグ。また、明日な……。 (すーっと大きく息を吐き出すと、躰を丸めて静かな眠りに入っていった) -- グリッグ蛙
- (その晩、彼の無事を祈るかのように、静かな風鳴りが一晩中響いていた) --
- そろそろ出発の時間だな、戻ったら新年のお祝いをしよう。
…と言っても別に何をする訳じゃない。今まで通り、お前と俺とで静かに酒を呑むだけだけどなっ! それじゃあ行ってくるよ……愛してるぜ、イグ!(玄関の扉を開け、颯爽と小雪の中へと飛び出していった) -- グリッグ蛙
- 只今戻ったよ。明けましておめでとう!101年目の始まりだ。
まあ取り敢えずは乾杯だな!お前が居なけりゃ、俺もこの日を迎えることはなかったよ。 -- グリッグ蛙
- そういえば…お前がお節を作ってくれる筈だったんじゃなかったっけ?
まいったな、俺達には果たせてない約束が多すぎるぜっ!きちんとメモでも取っておかなきゃならないな、全部次会うときに持ち越しだ。 (楽しそうに笑ってワインを口に含む) -- グリッグ蛙
- そういえば、あんなに行きたがってた騎士団の新年会。結局アレが最後だったな…あの時遅れて来たお前に意地悪言っちまって悪かったな!
まだこれからだって機会はあると思ってたし、それにね、皆と一緒にいるとき、俺の態度が余所余所しかったのお前は気付いてたかなあ……。 -- グリッグ蛙
- それはね、恥ずかしかったのさ!俺はこう見えてシャイなんだ。皆に冷やかされたりすると、堪らなく照れちまうんだよ……。
もっと恋人らしくしてやれば良かったと、今では後悔しているよ。 安いプライドさ、何の価値もない。(グイっとワインを喉に流し込む) -- グリッグ蛙
- (ふと、グラスを傾ける手を止める)…そういやお前に呑みすぎだって叱られたっけ…はは、大丈夫。もう潰れる程には呑まないさ。
ついつい一人だと酌が進んじまうけど、こうして話ながらだと平気だぜっ! ……そうか……御免。お前はあの日、『生き延びる事』だって言ってたんだな。ほんの一年、丁度一年前のあの日も、ここでこうして語らってたんだよな。 いや、そうじゃない。俺達が知り合って6年間、毎日のように一緒にさ! よくもまあ、俺なんかと長々顔を突き合わせてられたもんだぜ…それだけでお前は尊敬に値するよ。 -- グリッグ蛙
- だけど…俺のおしゃべりにはお前も驚きだろ?自分でも不思議なんだ、話したい事が次から次へと溢れてくる!
でも、別にお前に届いて無くても構わないんだ。ただ、溢れてくる想いを吐き出したいんだよ! だから、別に返事はいらないぜ?もしも聞こえているなら、笑って耳を傾けてておくれ……。 -- グリッグ蛙
- …うん、大分酔いが回ってきたな。ありがとう、毎日俺の詰まらない話を聞いてくれて。
でも、お陰でお前が居なくなってからの思いの丈を、殆どはき出せた気がするよ。 少し、気持ちが軽くなったぜ。 -- グリッグ蛙
- ああ…これでお前の温かい膝でもあったら、俺は今すぐ天国に駆けていける気になるんだけどなっ!
でも、そんな我儘は言わないぜ。あんまりお前を困らせちゃ可哀相だ。 お前は行っちまったけど、俺にはまだ仲間が居る。全然耐えられないなんて事はないさっ! ……でもなイグ、やっぱりそれは、お前の代りにはならないんだよ…やっぱり俺は、お前じゃなきゃ駄目なんだ……。 狡いじゃないか、一人だけ先に行くなんて…あんなに何度も頼んだのに、俺を置いていくなんて!!! やっぱりここは寂しくて冷たいよ……想い出の中の温もりだけじゃ、俺の凍えは収まりそうにないんだよ……。 ……でも、時間は優しくて残酷さ。この虚しさだって、何時かは過去の記憶になるかも知れない。 だから、もう少し俺は堪えてみるよ。 -- グリッグ蛙
- …よし、今日はもう眠るとしよう!そして久々にお前の夢を見るとしよう。
それはきっと楽しい夢だ。叶わない事なんて何もない!俺達はあの頃のように、手を取り合って微笑んでる筈さ! それじゃあおやすみイグ。永遠に愛してるぜ…。 (涙を拭って笑みを浮べると、倒れこむようにベッドに横になり、やがて静かに夢を見始めた) -- グリングルベルド
- (雪雲が切れ、合間から月明かりが差し始めた。まるで彼の傷心を癒そうとするかのように) --
- こんな時にまで遅参してしまうとはな・・・すまぬ、達者でな・・・ -- マサムネ
- イグ。外は今、冷たい雨が降ってるぜ。これがやがて霙になり、雪になれば冬が来る。
時折身を切る冷たさに凍えそうになるけどね、大丈夫。俺はいつでもおまえの温かい眼差しを感じているから、不幸になんてなりやしないさ! それじゃ依頼に行ってくるよ。また後でなっ! (小さな傘を頭に乗せると、土砂降りの中へと飛び出していった) -- グリッグ蛙
- 遅くなったな。メリークリスマス!
(夜更けに恋人の部屋へと戻ると、並べて置いた二つのグラスにワインを注ぎ、今は座る者の無い向かいの席へと語りかける) -- グリッグ蛙
- えーと…お前と一緒にクリスマスを過ごしたのは全部で何度だったっけ…四回?五回?
あの頃は楽しかったなあ…川辺のホテルに行ったり小雪の中を一緒に公園を歩いたり。でっかいツリーを飾ったのは去年だっけ?まるで、遠い昔の事じゃないか……。 毎回プレゼントを用意するのは大変だったろう?きちんとお返しできてなくて、悪かったな! -- グリッグ蛙
- せめて今年は俺の方から何か渡したいと思ったんだけどね、済まない…お前の喜ぶ物が何も思い浮かばないんだ。
だけど、そっちでお前は幸福で居るんだろう?だったら、きっと何も必要ないよな。 お前から貰った物は全部大切に取ってあるよ。もしも俺が死んだ時は、一緒に柩に入れて貰おう。 お前の想い出と一緒なら、きっと道には迷わない。 -- グリッグ蛙
- それじゃ乾杯だ!外は寒いよ。只でさえ俺は凍えやすいんだ、酒でも呑まなきゃ凍死しちまう!
(ニヤリと笑みを浮べると、グラスの酒を一口に呷った) ……こんな風に毎日訊ねるのは、お前に取っちゃ迷惑かい? だが済まない、許してくれ…俺はね、お前が死んでから自分も一緒に居なくなっちまったような気がするんだ。 でも、こうしてお前に話しかけてる間だけは、自分が生きてる気がするんだよ……だから、もう暫くはお前と一緒に居させておくれ。 (少し酔った目で頬杖を突くと、暫しの間天井を眺めた) -- グリッグ蛙
- まいったな……お前との約束、全然守れて無いじゃないか!大丈夫、俺は悩んじゃいないさ。
ただね、自分の気持ちの後始末をしなきゃならないって事なのさ。 俺はまだ、お前がもうこの世に居ないんだって事を、整理できていないんだよ。 だからこうしてお前に話しかけながら、自分の心に踏ん切りをつけようとしてるのさ……。 -- グリッグ蛙
- ふふふ、俺の愛は重いかな?…悪い、お前が生きてるうちにもっと素直になれば良かったぜ!
(苦笑いを浮べてグラスにワインを注ぎ足す) でも、今年も静かで良いクリスマスじゃないか。心が穏やかになっていくよ。 ……そうだな、確かにそろそろ俺も道を決めなきゃならないな。 出来ればずっとこのまま、いつまでも一緒に居たかったけど、死んだお前に甘え続ける訳にもいかないだろう? -- グリッグ蛙
- ああ……済まないイグ、胸が苦しくなってきた。俺が思いの丈を吐ききれば、きっとお前を悲しませる…それは俺の本意じゃないんだよ。
折角の楽しいクリスマスなんだ、もう少し愉快に呑もうじゃないか! この部屋でお前と一緒に過ごせる時間なんて、後どれ程残ってるのか誰にも判らないんだからさっ。 -- グリッグ蛙
- ……うん、少し空が明るくなってきたかな?それに、俺も大分酔いが回ってきた。そろそろ眠りの時間だぜ。
これで今年のクリスマスもお仕舞いだな……じきに100年目が終わり、新しい年が明けるよイグ。 お前と一緒にそれを迎えられないのは悲しいけどね、せめて見守っていておくれ……。 (酒に酔った真っ赤な顔でベッドにごろんと横になると、夢を見ることもなく、深い眠りに落ちていった) -- グリッグ蛙
- (降り続いていた雨は穏やかな雪へと変わり、やがて地表を覆った。その様子は心の平定を彷彿とさせるものだった) --
- イグニゼム… 安らかに眠ってくれ… どうか、どうかイグニゼムの魂が救われることを… -- セリーヌ
- もう10月か…すっかり秋めいてきたじゃないか!まったくここは恐ろしく時間の過ぎるのが早いところさ。
最近近場に紅葉の見れる良いスポットが出来たらしいぜ?機会があったらお前と一緒に行きたかったよ。 毎日長話でお前を疲れさせるのも悪いしな、そろそろ依頼に行ってくるぜ。 無事戻れたら、また夜に来るよ。それじゃあな!(背負い鞄を担ぎ上げると、静かにドアから出ていった) -- グリッグ蛙
- (彼が去った後、一枚の灰色掛かった羽根が舞い落ちてきた。まるで呼び掛けに応えるかのように) --
- ただいま、戻ったよ。セリーヌ隊長が来てくれたみたいだな…良かったじゃないか。皆がこうしてお前の冥福を祈ってくれてるよ。
(人気の消えた恋人の部屋に戻ると、ぽてんとベッドに寝ころんだ) -- グリッグ蛙
- そういえば…俺の家族の話はしたことがあったかな?多分、きちんと話したことは無かったけどな、暇つぶしにでも聞いてくれ。 -- グリッグ蛙
- 俺はね、母親の顔を覚えてないんだ……。
俺の生まれた家は今では随分凋落してしまったらしいが、随分古い家柄でね、一族は皆誇りを持って生きていたよ。 だが、俺の母は旅の一座の芸妓でね、親父に見初められて妾妻に入ったんだが、窮屈な暮らしに嫌気が差して、幼かった俺を捨てて何処かへ遁走してしまったよ。 元々奔放な旅暮らしだ、冷たい石囲いの生活に息が詰まったんだろう…そんなところは俺に似てるのかも知れないな! -- グリッグ蛙
- そして俺は乳母に預けられ、やがて父の屋敷で義母や他の兄弟達と一緒に暮らすことになったんだが…一族の目は冷たかったよ。
妾妻の子としての侮蔑は勿論、他の兄弟達とは目鼻の顔立ちも違えば、一人だけ髪も真っ黒だ! 俺は見た目からして余所者だったのさ。 父は俺が幼い頃は、随分可愛がってくれたらしいが、母に逃げられてからは俺を疎んじ遠ざけた。 きっと俺の顔に母の面影を見るのが嫌だったんだろう……それでも、一緒の屋敷に棲まわせて息子として育ててくれたんだ。 情はあったんだろうけどな。 -- グリッグ蛙
- そして俺は拗れた餓鬼に育ったよ。欲しい物を指を銜えて眺めながら、斜に構えて唾を吐く、そんな奴さ。
使用人の子供の玩具を取り上げ壊して喜ぶような、そういういけ好かない小僧だよ…イグの周りにも一人くらいは居ただろう? 口元は歪み、いつでも人を睨め付ける目付きの悪い糞餓鬼さ。人はね、誰からも愛を貰えなくなると、自ら余計にそれを遠ざけるんだ。 -- グリッグ蛙
- あの日、お前に『お婿さんが欲しい』と云われた時にね、本当は俺は喜びよりも、困惑や戸惑いの方が大きかったんだよ……
だって家族になるって事は、家を造って子を産み、育てる事じゃないか。 俺の母は幼子の俺を捨て、一人何処かへと去っていったよ。そして父は、血を分けた我が子を顔も見たくないと疎んじ遠ざけた。 あの二人だって、かつては固い愛で結ばれて居た筈なんだ…俺達のようにね。それでも、あんな風に絆は脆く崩れ去るんだ。 ……そんな風に育った俺に、夫となり父となる自信が持てる筈無いだろう? -- グリッグ蛙
- だけど、そうやって皆自分の家族を作っていくんだ…つまり、俺はまだまだ餓鬼だったのさ。
……俺はね、時々ふとこう思うんだ。 もしお前の傍に居たのが俺でなければ、例え運命は変わらなかったとしても、もっと幸福に最後の時を迎えられたんじゃないだろうかとね。 そしてこうも思う。果たして俺が死んだとしても、お前の居る天国に迎えて貰えるのだろうか?とね。 俺は随分悪さをしてきたし、それにこのなりだ、お前や善人ばかりの住む天国には、ちょいとばかし不釣り合いさ。 でも、それでも一向に構わないよ。お前が幸福で居られるのなら、俺は全然構わない。 この孤独がお前を仕合わせに出来なかった咎なんだったら、俺は喜んで罰を受けるさっ!!! -- グリッグ蛙
- …もうすぐクリスマスが来るぜ。今年はツリーは用意できないけど、静かに二人でお祝いしよう。
そういえば、去年のプレゼントのお返しもまだ用意できてなかったじゃないか!まったく、お前には借りが有りすぎるぜ。 今日は詰まらない話をして悪かったな。前にも言ったけど、俺は愉快な話の持ち合わせが滅法少ないんだよ! でも、そのうちお前のために頑張って沢山こさえてくるよ。 -- グリッグ蛙
- さて、そろそろ眠ろうか。それじゃおやすみイグ、また明日な…。
(すーっと大きく息を吐くと、ベッドの中で躰を丸め、泥のような眠りの中に落ちていった) -- グリッグ蛙
- (突如として降り出した小雨は、夜が明けるまで止む事は無かった。それは、誰かが流した涙だったのかもしれない) --
- なあイグ…やっぱり独り寝のベッドは寂しくて冷たいよ。
この街は、どこもかしこもお前の想い出で溢れてる。ふとしたことで昔の事を思い出すとね、胸がぎゅうっと締め付けられるんだ…。 だって記憶の中の俺達は、あんなにも幸福そうに微笑んでるじゃないか! …なあイグ…お前は俺にもっと我儘を言うべきだったよ。贅沢をねだったり、癇癪を起こして怒ったり。 俺はね、本当はそういう風に、お前に困らせて貰いたかったんだ。 だけど、俺も悪かったよ。すっかりお前に甘えきってさ、気持ちを察してやれて無かった。 それに俺自身、捻くれ者の恥ずかしがり屋で、素直に自分の気持ちもきちんと表現できてなかったよ。 お前とは、もっと一緒に居たかった。デートだって、まだまだ何度も行きたかった。弁当を持って桜を見に行く約束だってしたじゃないか! 何にもなくて良いんだ。お前が傍にい居てくれれば、何処だってそこが一番の場所さ。 なあイグ、俺はなんて馬鹿だったんだろう。こんな惨めな姿に引き籠もって、お前を仕合わせにしてやることも出来なかった。 今更泣いても仕方のないことくらい判ってはいるけどさ、どうしたって後悔なんだよ。 俺は、お前の居ない明日なんていらないよ。一緒じゃなけりゃ嫌なんだ。 お前はもう、天国で愛想を尽かしてる頃かもしれないけどね、せめて、話しかけることくらいは許しておくれ。 それくらいしか俺にはもう、孤独を癒す方法が見付からないんだ。 もう一度、お前に会いたいよ…触れられなくても、声だけだって構わない。そうしないと俺は、この惨めな気持ちから抜けられないんだよ……。 ……悪いな、逝ったばかりのお前に格好悪いとこ見せちゃって。 本当は安心させてやらなきゃいけない筈なのに、これじゃまるっきり逆じゃないか!!! ……そろそろ出立の時間だな。それじゃあイグ、行ってくるよ。でっかい戦果を上げられるよう、祈っててくれると嬉しいぜっ! -- グリッグ蛙
- (いつかの抱擁のように優しく、そして柔らかい風が吹き抜けていった) --
- 只今帰ったよイグ。……俺はね、お前の返事を期待していた訳じゃないんだ。
やっと平穏を得たお前を、俺が縛り続けるわけにはいかないだろう? ただ俺はね、お前に知っておいて欲しかったんだ。俺がどんなにお前を愛していたのかをさ……。 でも、お陰で大分気持ちが癒されたよ。ありがとうな、イグ。 済まないが、お前の部屋はこのまま残させて貰うよ。二人で過ごした思い出を、一欠片でも失うことにきっと俺は耐えられない。 だから、俺達はいつでも一緒なんだ。再会の日が来るまで、いつでもな。 …これからも今まで通り、お前のベッドで俺は眠るよ。 そうでもしなきゃ、この底冷えは収まりそうにないんだよ……。 (気怠そうに座る者の居ないソファに向かって語りかけると、躰を丸めて小さな蛙は静かに瞳を閉じた) -- グリッグ蛙
- (暫く黙って横になっていたかと思うと、ふと瞼を開いて天井を見つめる)
…そういえば、お前はいつか『自分のどういうところが好きなったの?』と俺に聞いたね。 今なら判る。それは、お前が俺を愛してくれたからさ! だけど済まないイグ、俺は、そんな風に他人から与えられる愛情に馴れていなくて、きちんとお前に愛されてやることが出来なかったんだ……。 「眠りは死に通ずる」と、昔誰かが言ったよ。だから、今日も夢でお前に会ってくるぜ。今の俺が一番天国に近づけるのはきっとそこだろうからさ…。 ……それじゃ、おやすみ。また明日。(安らいだ表情を浮べて再び目を瞑ると、静かに寝息を立て始めた) -- グリッグ蛙
- …イグちゃん…あう…もう、あえないのか………そっか… -- ラズ
- …卿とは余り、話せなかったが…。グリッグを、皆を見守ってやってくれ -- 銀草騎士
- こんなものでどうにかなるほど世の中は甘くないということか(イグドラシルの葉を家の前に置く)
ナイト・イグニゼム、我々の…黄金騎士団の行く末を見守ってくれ… -- アレハンドロ
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