燻 る 界 境 街
発刊日 : 黄金歴258年3月 日付 : 9/14 (土)
一 面 広がる就労の闇、農園の実態
西区にある黄衣財団所有の農園が今、過労就役の疑いがあるとして騒がれている。
これまでも企業秘匿ということで取材も断られ続けていたが、とある関係筋の情報により、その実態が明らかとなった。
当初は衣食住の提供を謳った雇用事業だったが運営管理された農園は入ることは出来ても出ることは適わず酷い労働体勢が敷かれている。
労働者たちは農園拡張の為に酷使され、満足な食事すら与えられないまま休む暇なく労働を強要されているとのこと。
又、北区で稼働を始めた工場についても同様の事が起こっており日勤のまま夜勤にシフトするいわゆる24時間労働が日常的に行われているとか。
財団からの発表によれば事実無根であり、労働は尊ぶべきことであり当社はそれを労働者へと提供しているとの説明をした。
教会も財団に対して痛烈な抗議文を送るも、財団の行為を罰する条文はなく
界境街の未熟な法整備の甘さが指摘されている。
三 面 口論からか? 4人を暴行逮捕
騎士団は某日、暴行の疑いで中央区及び西区在住の4名を緊急逮捕した。
逮捕容疑は両者の口論から発生した暴行であり、胸倉を掴み殴り合うといった事態に進展。
止めに入った者を含めての乱闘となって駆け付けた駐在騎士の手によって仲裁が行われた。
騎士の報によれば中央区の人間が獣人を侮辱したのを、近くにいた西区の住人が腹を立てて殴りつけたとのことである。
両者共に容疑を認めており、事件の根底には未だ根深い偏見があると見られている。
社 説 相次ぐ不満、界境街の火種
界境街の住民たちの間にも財団の労働体勢には不満が募っており、これを巡って意見が分かれていた。
背景にはメイトルパのこれまでの事情もあってか召喚師の派閥への反発が根強く、中には武装蜂起を促そうとする部族もいる。
大して帰属化したシルターン住人の間からは事態は静観すべき、事は荒立ててはならないと山と野の領分を分けていた彼らなりの意見を広げた。
ロレイラルやサプレスから転移してきた住人たちの間でも意見は多様化を巡り、中には対立を煽る悪魔の姿も見られる。
多種族によって構成された界境街の地盤は確立されていないが為に脆く、
住民達の文化観の認識や違いによっては諍いや喧嘩が散見されるようになった。
それぞれの主義主張を通そうとする各世界、しかしこれまでは違う世界で暮らしていたのだから意見の衝突は当然であると私は訴えたい。
必要なのは慎重な姿勢での相互理解、住民の落ち着いた言動と対処に同社は期待したい。