カルドセプト家出身 キギ・ビスティーム 366053 †
ID: | 366053 |
名前: | キギ・ビスティーム |
出身家: | カルドセプト |
年齢: | 182(人間換算:約18歳) |
性別: | |
前職: | |
理由: | |
状態: | |
その他: | ステータス/戦歴 |
魔獣の王の連撃がキギの身体を深く抉った。
地に這い蹲るのを寸でのところで堪え、同道の者が魔獣を屠る様をしかと見届ける。
討伐終えた一行の心配する視線の中、精一杯気丈に振る舞い、一人帰途に付いた。
身体から力が急速に抜けていくのを感じながら。
「ふっ……私は何をしているのだろうな?」
根城にしている冒険者の街近くの森へと辿り着くと、キギは一本の樹の下で長い間座り込んでいた。
故郷のビスティームへ帰れるだけの力は残っていただろう。
にも関わらず、彼女はこの森で最も旧く、大きな樹の下で取りとめも無い思いに耽っていた。
死の影が徐々に徐々に迫ってくるのを知りつつも。
「どの道、手ぶらでは帰れぬか……」
ミストラルを捜す。故郷に将来訪れる危機を救う鍵。
人界にあるというソレを探し当てるどころか、何であるかすらも分からぬ始末。
「未熟……役目果たせず、この身も朽ち果てようとは……何たる無様」
しかし。
「全く……人間と関わるとロクなことには成らぬな……」
だがしかし。
「だが……」
思い起こす。
冒険者としてこの地で過ごした時を。
「ふふっ……」
連れ合いになった冒険者。
初めて同行の挨拶に向かった少女、その縁者であるアンデッドエルフ。長身でいつも笑みを絶やさぬ優男。魔王を自称する少女。寡黙で頼れる大男。
彼女等とは何度も同行した。いわば戦友であった。
アンデットエルフとは別な意味で戦友だったが。
里以外で初めて出会った同種族。
突然訪問して打ち明けた悩みに、嫌な顔ひとつせず親身に応対してくれた彼女。
あの日の言葉は今でも胸に刻み込まれ、決して心から離れることは無いだろう。
森に迷い込んできた彼女。
初めて道案内をし、初めて茶に誘われ、初めて物を贈り合い、初めて……
初めての、友達。おそらく、たぶん、きっと。
天敵であるはずのダークエルフ。
酒臭く、鷹揚にして不敵。かと思えば微細な気遣い。
伝え聞くような邪悪な存在であっただろうか? ……天邪鬼の間違いではないのか?
人の話はあてにならぬ、と改めて感じた出会いであった。
「悪くは無かった」
そこで意識は途切れた。
「人間の言う『死』とは少し違います。魂が眠りについただけです」
酒場のマスターからキギの遺品を受け取りながら、帰らずの森より来たエルフが言った。
「あの子はこの地で眠りにつく選択をしました」
冒険用具や大量の財貨を撫でつけ、周りを見回し、エルフは言葉を続ける。
「ここは良い風が吹いていますね」
無風の酒場であった。
それでもエルフは、吹かぬ風が、見えぬ風が、まるでその場にあるかのように言葉を続ける。
「永い永い時を経て、あの子が再び風を感じ、風を吹かせてくれることを……」
最後に、ふっと微笑んで言葉を結んだ。
「それまで安らかな眠りを」
元ネタ †
キギは2〜4巻に登場します。
ゲーム原作コミックですがゲームを知らなくても充分楽しめる内容なので是非読んでみてください。