エクシオン王立新聞社は創業100年、エクシオン王国で一番古い新聞社である
王立でありながらも反権力の記事を書き立て
ペンは剣より強しを社訓とするその勇姿はジャーナリストなら誰もが認める名誉ある組織と言えた
しかし先王のご乱心により上層部は一網打尽にギロチン台へ、残った社員は恐れを無し日和った記事を乱発するようになってしまった
魔女の暗躍、王の死亡、内乱に次ぐ内乱。そんな悪夢の日々も若年の女王アスピナの活躍により収まり
エクシオン王国に久方ぶりの平和が訪れたかのように見えた…が
王立新聞社の人材不足は過酷を極め、記事の質は悪化し読者は離れの悪循環を繰り返していた
そんなある、日未来のスーパージャーナリストを夢見る王立新聞社の若き新入社員アニスは上司に呼ばれ部屋へと向かっていた
(コンコンとドアをノックし)「デスクー、着たッスよー」
「ああ、君か。入りたまえ」
声に促されアニスが部屋に入る。何を言われるのかと緊張気味に顔を強ばらせながら
アニスはいわゆるダメ社員である。下っ端仕事は毎回ドジり、取材先では迷惑をかけていた
「そう緊張することはない。何、別に君の仕事ぶりを叱ろうなどという用件ではないのでな」
アニスは一瞬ドキッとし、すぐ後の言葉にそっと胸を撫で下ろした
「そ、そうッスかー…えっと、それでじゃあ用件って何なんッス?」
「ああ…うむ、それがだな」
上司は一瞬言葉を詰まらせ、住所の書かれた紙を見せながら
「君にこの街へ飛んで欲しい、そこでしばらく冒険者として長期取材をだな…
いや、決して厄介払いとかそういった意図ではないぞ!?決してな
ただ君もこっちじゃ実力が出しづらいと…そう思うだろう」
言いながらも上司の眼は宙を泳いでいる、流石のアニスもそれに気づかないわけではなかったが
「や、やっぱりそうッスか!?そうッスよねー。アタシって結構体育会系ッスから
こっちでなあなあやるより、体当たり取材の方があってると思うんッスよね!
あはは…はは…はぁ……」
「そうか、いや君がこの仕事を気に入ってくれたのなら…何も言うことはない
それにな、この街は噂によると記事のネタになるような事件も多いらしいし
君さえ頑張って結果を出せば昇進も夢じゃないぞ、約束しよう」
「うん…わかったッス。アタシ頑張るッスよ!それじゃ行ってくるッス!」
意気揚々と行き先の書かれた紙と支度金を受け取ると、アニスは部屋を出て行った
社の門をくぐるとくるりと方向転換し、社屋を見上げ叫んだ
「デスクのバカー!絶対見返して帰ってきてやるッスよー!」
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