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ヴェロニカ家出身 ビクトル 408735 Edit

  • パパ上が成り上がり者なので地元では肩身が狭い。
    そしてビクトルは長男ではなくあくまでも爵位継承権を持つ、スペアの一人。
    長男が順調に爵位を継承した場合、居候として暮らしてゆくか、それとも独立するかを選ばねばならぬのだ。
  • 父の計らいにより、コネと賄賂で纏わされた様々な公職を兼務していた。
    しかし、多くのものがそうであるように彼もまた前線に立つことを望んだ。
    高貴なるものの義務として、そして彼自身の信念に基づいて。
    「眉一つ動かさないで困難に立ち向かう。」それが彼らの国の貴族の信念である。
  • 祖母のカティア・ヴェロニカはかつて黄金騎士団に所属していた。
    そして、家庭教師は断罪の剣に身を置いていたサヴァリックでありこの街との縁が深い。
  • なお、冒険報酬は全て国庫にボッシュート。

身に風雲を帯び、馬蹄を進める Edit

 ほんの数代前まで、戦場に身をさらし血の雨をかいくぐってきた彼らである。

一国一城の主として、野望と虚栄に身を任せ野獣のごとく蛮をふるった祖先の血統は、洗練の名の元にそう安々と屈するものではない。

ビクトルとて同じ、剣を佩き「狩り」へと赴くことにためらいはなかった。

 ヴェロニカ家 譚 Edit

ある客人の語り

ビクトル Edit

太陽が丘を紅く染め、その上に立つビクトルの黒い影が草原に墨を引いている。

 日に焼けた浅黒いその肌は、彼がとりわけ狩りをこのむタイプの貴族である事をよく示していた。

灰色の馬に跨り、鹿皮の手袋をしている所を見れば、彼はどうやら鷹狩りの最中らしい。だが、鞍の上にあるその姿は一風かわっている。

まるで砂漠の一族のようなターバン風の帽子、同じく異国風の剣、肌の色も相まって彼を外国人のようだ。しかし、マントに記された紋章は紛れもなくこの地の一族のそれであった。

この男流の洒落だ。

狩りの時くらい勝手にさせろと言わんばかりである。

 男は黒髪をなびかせ、口元にわずかにくずし空を仰ぎみた。

大きな翼を広げた一羽の鳥が、獲物を求めて急降下を始めた。と、同時に「それ」が確信へと変わる、彼をのせた馬はいななき、駆け出す。従者たちもそれに付き従う。

「兎か、ビクトル。」

「ああ。」

ビクトルと呼ばれた男の腕には一羽の鷹が丸い瞳を輝かせ、その足に野うさぎを捕らえていた。

まるで、友であるかのような口ぶりの男はビクトルの従者である。

 実際、彼、ディエゴは乳母子という友以上の深い絆で結ばれ、常にビクトルを影から支えていた。

「そろそろ腹が空かないか?もうそろそろ辺りも暗くなる。」

ディエゴは自分の主が昼食も摂らずに狩りに夢中であったことを思い出して言った。

「ここら辺りからなら、とばせば街道の居酒屋で間に合う。…そらっ。」

まるで、一〇歳の童子の様な笑顔で狩りを続けようとする主の背をみながら、ディエゴはそっとため息をついた。

「じゃあ次で最後だ。」

言うやいなや、もう一人の忠実な僕が再び空より急降下をはじめていた。

「賭けだ!獲物がオスなら切り上げる!!」

手綱を切り返しながらビクトルは叫んだ、というのも既に馬は駆け出し、ディエゴを振り切ろうとしていたからだ。

「わかった、だが俺はメスの兎を狩るなら二本足の方がいいな!」

同じくディエゴも彼の後に続つづく、二人の笑い声が空に溶けていった。

僧衣の下 Edit

「では、課税を強化せよ、と仰られる訳ですか。」

 僧服をまとったビクトルの言葉に司教は頷いた。

「日毎に僧院の熱狂党の勢いが増してゆくのを感じています。『原初に立ち戻れ』という標語に正面から咎め立てするのも気後れするものですから。」

フン、と鼻を鳴らしビクトルは部屋に備え付けられた聖人の像に目をやった。大理石に刻まれたそれは、俗世の悩みとは無縁の穏やかな笑みを浮かべている。

「お父上に何とか執り成しを、我らの押さえつけに不満が高まっています。」

「いっそ岩山へ追放させてしまえ。贅沢は彼らにとって敵なのでしょう。」

ビクトルの瞼の裏に熱狂党の姿を思い浮かべた。

装飾や大食は罪であると言わんばかりに、ボロ布をまとい、度重なる断食から身体はやせ細り衰えている。

「彼らは貴族の財産を根こそぎ炎の中に投げ込みたいのですよ。岩山へ篭るのはその後でしょう。」

そう吐き捨て司教はワインを飲み干した。

ここは何時ものように召使いが酒が注いでくれるビクトルの館ではなく、司教の私室である。

「それで、妥協案として僧院への税を強化、貴方にも都合の良い話だ。」

ビクトルの口元がわずかに歪む。

「貧しき人々への施しとなるのです、やんごとなき方々も喜んで協力してくれましょう。」

司教は自らの手でワインを注ぎなおし、極めて平坦な口調で言った。

(まるでヴァンパイアだな。)

血にも似たその酒の色を見つめながらビクトルは思った。

「課税には賛同出来ない。私の口添えと父上の力量もってしても諸侯を動かすのは骨が折れる。」

 ヴェロニカ家は姻戚関係と財力によりその家名を貴族に連ねた比較的新しい部類の貴族であり、古くから名を響かせる旧家の権威にはまだ及ばない。

「では、いかがしましょうや。」

「新たな聖堂の建築を行う。」

ビクトルは即座に答えた。

「ほう、それではお父上のお名前で?」

「いや…。」

矢面に立つにはまだ時期が早い、とビクトルは口に漏らさず思った。

「それは本来のそちらの意向通り各諸侯の浄財でもって行う、一律の課税強化よりも目に見えて家名を知らしめる分まだマシだろう。この聖堂も手狭になってきた事だ、筋は通る。

工事監督者、石工職人、装飾をおこなう芸術家の選出はこちらで行おう。」

その方がよっぽど経済を刺激する、ボロをまとった自惚れの強い熱狂党には忙しく汗をかき走り回る職人の事など頭にないのだろう。

彼らは神と自分さえ見つめていればそれでよく、、他人のことなどお構いなしだ。

「あまり派手な作りは彼らの反感を買いませんか。」

芸術家と聞いた司教が尋ねた。

「諸侯の面子を正面から潰すほど彼らも盲目的ではない、と期待しようか。」

実際のところ、どちらに転がろうが聖堂の建設には時間がかかる、事態が紛糾すれば彼らの内部にも揺さぶりを掛けることも可能だ。

その間にやかましい口元を塞いで置くことが出来ればそれで充分であった。

「新教区の人事に関しましては私に一任させて頂いて宜しいかな?」

「お任せいたします、司教。」

一枚この狸に乗せられたか、ともビクトルは思った。

 今のところ敵ではないが、貴族と僧侶の間で甘い汁を啜るこの男も油断がならない。

「お話は済みましたか。」

ディエゴが薄闇から声を掛けた。

「では司教、私はこれで失礼をいたします。」

ビクトルはうやうやしく挨拶をすませた。

「今からおかえりか?夜道はあまりよろしくない。」

「ご心配なく、私の腕はともかく部下は優秀です。」

そう言い残して彼は馬に跨った。

 カビ臭い聖堂の臭いを振り払うかの様に松明一つを携え、闇夜を灰色の愛馬が風を切っていった。

 先の見えぬ運命を恐れずに突き進むが如く、馬は走る。


Last-modified: 2010-06-12 Sat 17:39:29 JST (3442d)