約束の地を守る巫女 カナン・アポルエ 439921 †
この地に伝えられる予言 †主は申された
「わたしはあなたの子孫にこの地を与えます」 「わたしはこの地をあなたに与えてこれを継がせようと、あなたをカルデアのウルから導いてきたのです」 「この、乳と蜜の川が流れる地クアナンを、この地に住む全ての民草に与える」 「故にあなた達は滅びる。この地を求める意地汚い遠方からの民によって」 「次に、その異民達はそれぞれの悪意により争いを続けることでしょう。やがてこの地には何も、異民もいなくなるでしょう」 「わたしはあなたの子孫にこの地を与えます。何もなくなったこの地を与えます」 クアナン ロワイヤル年表 †&ruby(){}; &color(Red){}; &color(Blue){}; &color(Green){}; &color(Gray){};
約束の地クアナン 最期の風景 †見るが良い、燃える木を、家を、人を
これを受け入れる、と言ったのだ。老人達は これが運命だと、これが予言だと、そう言った老人達の言葉を受け入れたのだ、お前達は 一定のリズムで上下する視界。クアナンの最期、滅びの風景を見ながら 少女は何度も何度も繰り返した思考を、今この時も繰り替えす おかしいであろう? 狂っているであろう? 何故それに気付かなかったのだ? 滅びとは喪失だ。苦痛を伴う。悲しみを伴う。涙と血を伴う そちらで首を掻っ切られている長老も あそこで兄の亡骸を前に泣き喚いている童子も こちらで醜いインプに白い肌に爪痕を刻まれ、貪り犯されている若い娘もだ 先月、戦士の男と結ばれて幸せそうに笑っていたのだぞその娘は…… 酷いとは思わないか。自分達が受け入れた運命に彼女達を巻き込んで、罪の意識は無いのか? たかが神の戯言だ。たかが見ず知らずの者との約束だ それの何がお前達を頑なにしたのか……わらわには到底理解できぬ。いや、理解したくもない どぷっ…… どぷっ…… 視界の上下は止まり、少女の股座は乳のような白い蜜を受け入れきれず流れ落とす。炎よりも赤い血を混じらせて どぷっ…… どぷっ…… わらわだけに聞こえる神の声。わらわだけが知る神 何故そんな下らぬ存在を崇め、敬う? 彼の者は今、何も喋らぬぞ 巫女たるわらわが汚らわしい狼男に陵辱されているこの瞬間も、神は全て承知なのだ これが運命だと。特に言うことは無いと。手を差し伸べるなどという殊勝なことを望んでいるわけではない。もとより何も期待していない ――ああ、わらわの願いは単純なモノだ。ここではない地を見てみたい 約束などほっぽりだして、自由を謳歌したい……子孫など知らん。この地を渡したいなど、わらわは思わないのだ わらわ達は今を生きているのだぞ? 何故、何故、何故…… 狼男が絶頂の余韻を終わらせ、再び腰を運動させようとした時……その身体は両断された 巫女の視界が真っ赤な狼男の血で染まる。両断された獣人の身体が崩れ落ちれば その向こうにはどこぞの国の兵士が立っていた 欲望と興奮と独善と愚昧と傲慢と不浄と 様々なものが混ざり合った汚泥の目。およそ獣のようなギラギラとした表情で立っていた 「くっくっく……次はお前か? 良い。好きなだけ貪るがいい……もしかすれば、それで違う景色が見えるやもしれん」 「わらわは、巫女カナンじゃ。ここには乳が流れる川も、蜜が流れる川も無い」 「そんな物はとうに枯れておる。お前の目の前にあるのはただの女が1人」 「この地と、運命から逃れられなかった弱い女じゃ……さぁ、見せてくりゃれ?」 違う風景を。此処ではない何処かを。知らない何かを 気付けば、貪っていたのは誰だったのかすら 曖昧になっていく…… 黄金暦181年6月 約束の地・クアナン滅亡
国の設定 †豊かな自然を誇る小国。文化レベルが低く、国と呼べるほど発展していない 滅びを共にする巫女カナン †
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