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修学期間を終えると、ヒメは私に地上へ船を出してくれるよう頼んできた。 研究室長承認の上、降下艇を使用。 降下艇の船内でヒメは卒業証書を開き、静かに撫でていた。 森林地区へ着陸すると我々が来るのを待っていたかのようにヌシがその姿を現した。 ヒメはヌシの元まで歩いて行き、ヌシが咥えてきた蕾のついた枝を一振り取り私のもとまで戻ってきた。 少しのためらいの後、彼女は証書と枝をこちらへ寄越した。 この蕾が花開く頃、再び来て欲しい。 次に咲くのは何年、何十年、もしかしたら百年単位で先の話かもしれない その蕾が花を開く時が新しいヒメの儀式の日だから。 その日までは決して枯れることはないから、と。 ヒメは我々に頭を下げると出会った時同様ヌシに伴われ森へ消えていった。 上記を持って当記録を、蕾が開くその時まで凍結とする。
なあ、ヌシ。お前は私に私だけの人生を歩ませようとしたのか?二度と帰ってこなかったかもしれないのに……。感謝するよ。本当にいい四年間だった。少ないなりに友人も作れたし。恋もした。あの場所に行けたから気付けた。全ての人がこういう気持ちを積み重ねて生きているんだろうって。喜んで、悲しんで、笑って、怒って。恋をして、時には失恋して。それを積み重ねて日常を歩んでいく。お前の役目はこの土地の人間のそれを守ることなんだな。あの場所で過ごせて本当に良かった。もう役目を果たすことに迷いはない。ああでも後悔は少しあるな、はは。……。さ、行こうかヌシ。物語の幕引きだ。ああ、今日は陽が温かいな。なあ、まだ皆は空の上か?それともどこか遠い空の下?百年先か、千年先かもし、ヌシも私達もこの土地に必要がなくなって生まれ変われることがあるならまた、出会ってくれるか?
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