ZS/0012

  • 2024年 某月 某日 某所

    http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst090260.jpg 

    夜の屋台町、眼帯がトレードマークの女がひとりメシを食う。
    牛腩麺、煲仔飯、魚蛋…そのほか大量の屋台メシを山積みにして満喫中。そこに相席していいかも聞かずに座り込んでくるうさんくさい女。

    こんばんわ、ひさしぶりですね。

    んな事を言いにわざわざ来たのか。

    まさか、ほうれんそうですよ、ほうれんそう。ジュラ様の…

    負けるワケねえだろ、俺の弟子だぞ。

    二人は知り合いのようで、ほうれんそうといいつつ二人の間ではツーカーらしくなにやら会話が成立している模様。
    話をしにきたついでに山積みの屋台メシから西多士を取り上げて食べていくうさんくさい女と、止めもしないで食事を続ける眼帯の女。

    句芒はともかく、外の世界の存在にも通用するだけの力を身に着けたご様子。あなたよりも完成度は上かもしれませんね?

    それで止まったらそこで終わりだ。

    …と、言いますよね。あなたなら。

    俺はあんたに勝ち逃げされてんだ、止めどこはどこにもねえ。

    ええ、そうでしょうとも。

    現在の力量で言えば眼帯の女はうさんくさい女を遥かに上回っている、『勝ち逃げ』というのはその力量差がつく前にケリをつけられなかったという意味に相違ない。
    『超えようとした相手が全盛期の力を失ったいま、真の意味で超えることはもう叶わない』そんな意味だろう。

    払っとけ。

    もう!あなたまでわたしを財布扱いですか?!…まあ、おしりを蹴り潰されるよりはマシ。ですね…

    話は終わりだ。という意思表示でハシを起き、席を立って夜の街に消えていく眼帯の女。来ることが解っていたからうさんくさい女に金を支払わせるため派手に飲み食いしたらしい。
    振り向きもしないその態度にさすがに声を荒げるうさんくさい女だったが、日本に帰ったところでコワいニンジャさんにボコボコにされそう。というのを思い出し苦笑い…

    …願わくば、これからのみなさんに、幸福を…

    料理の代金を支払い、夜の屋台街の喧騒から天を見上げ誰にともなくつぶやくと…うさんくさい女も行き交う人の中に消えていった。 -- 2023-06-18 (日) 20:44:36
  • -- 2023-06-11 (日) 21:14:04
  • 2023年12月某日夜、 『天狗の抜け穴』

    荒涼とした大地がどこまでも拡がる、地平線の彼方はどこにも続いていない異空間。
    ジュラはひとり、その時を待っていた。

    策士策に溺れるとは言いますが、まさか手ぶらの無策とは…その傲慢さヘドが出ますね。

    『必要ない、お前を潰して、それで終わりだ。』

    どこからともなく発生した黒いモヤのようなものから現れた句芒に短く答えて、さあ始めようか。とばかりに構えるジュラ、
    だが、現れたのはそれだけではなく…句芒が指を鳴らせば周囲の地面を突き破り何かが出現する。

    http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst090245.jpg 
     
    現れたのは近未来的な建造物、まるで背景を書き換えるようにして荒涼とした大地が墓地を連想させるビル街に変貌した。
    生気を感じさせない無機質な黒いビルを紅い月が照らす。日食のようにそれ自体は暗く、円環を描く紅い光。

    どうですか?墓石くらいは用意してあげましたよ。あなた用にしては立派すぎるくらいです。

    『なら、お前が使うんだなッ!』

    御託は沢山だとばかりに仕掛けるジュラ、拳を受け止め怪異に変貌する句芒。
    ビルの屋上を飛び交い、谷間と壁面とを駆け、拳、脚、互いにガードを捨てた応酬。その余波でビル街は破壊され、静寂を裂いて轟音が響く。
    -- 2023-06-04 (日) 18:47:02


    • 『懐かしい…あの時もこうでした、この現世と異界の境目で、蓐収とわたしとで死力を尽くし…

      『いつもお前が負けた。』

      『口の利き方も…ヤツに似てッ!!…ならば、これを見ろッ!』

      さっきから何をしても大して動揺するでもなく、煽るように言葉を続けるジュラに苛立った様子の句芒。ゆさぶりが通じないのを通り越して、この空間の異常性にすら興味を抱かないことに呆れ気味。
      ここは現世でない、『どのような状況、条件でも設定できる異界』であり、そしてこの空間についてジュラよりもよく知っているというアドバンテージを何とも思わないのか?と。
      業を煮やした句芒は天に手を翳し、またもや何かを仕掛ける、すると…月に見えていた物体が怪しく輝く…

      http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst090246.jpg 

      月に見えていたのはふわりと浮かぶ輪状の物体、意味不明な模様が刻まれた巨大な人工物であり、赤く発光して回転しているように見える。
      なんでもありな空間ここに極まれり、ロシュの限界を例に挙げるまでもなく物理法則は無視されているといっていいだろう。

      『この『大黒天鏡』の力によって『五万年に一度の極大日食、赤い月、冬至に仏滅。…etc.etc…』を再現した、いまこの空間は…貴様にとって即死級の異常環境ッ!』

      …!

      『任意の状況、条件を設定して再現する。』これによってジュラの異能を封殺しなおかつ自分に有利な空間を作り出すと、棒立ちのジュラをサンドバッグのように殴る、蹴る。致命傷は避け甚振るためにわざと急所を外して。
      さらには距離を取ってヌンチャク、青龍偃月刀、手持ち掘削ドリル、流星錘、鉄扇、羅漢銭数百枚、さらにそれ以上の物量の爆炎、爆雷符を虚空から召喚し一気に全方位からジュラへと浴びせかける。
      マスターたちから学んだ体術、暗器術、法術、その全てを憎しみに変えてジュラへぶつけ続ける。
      異形に変わり果ててもその表情が歓喜に歪み、下卑た笑みを浮かべ、耳障りな笑い声を出していることが解るほどに句芒の感情は昂っている…勝利を確信したモノの態度。
      -- 2023-06-04 (日) 18:51:28

      • 『…いま、解った。』

        『今ごろっ…身の程を理解したか?命乞いでも…してみせろォっ!』

        死に際の捨て台詞でも吐こうというのか、満身創痍ながらまだ立っているジュラに向けて蒼白い炎を纏った拳、『月光掌』を叩きこみトドメを刺さんとする句芒。
        だがそれはジュラの掌に受け止められ、握りつぶされ。さらには…頭突き。法衣とセットのマスクが割れ。蒼白の異形句芒の顔面を歪ませるほどの威力。

        『あ…ぎィ…⁉』

        『お前は、余計な…ことがっ…!多すぎる…!』

        『なはにひぃ…?!……ごげぇぇっっ!?

        先ほどのお返しとばかりにジュラの連撃、肘打、裏拳、正拳、膝、サンドバッグにすることは変わらないがそのどれもが急所を捉えそのたび悶絶する句芒、下手に自分に有利な状況を作り出したせいで気絶することもショック死することも出来ない。
        痛みを感じる機能が残ったまま、さらにさきほど召喚し辺りに散乱した暗器をジュラは手当たり次第に拾い、連挺乱打、神速槍、回転圏…ただ射出する以上の威力を乗せる腕力でもって叩きつけ肉を抉り細切れにしていく…
        加えてムダにばらまいたことがアダになり、周囲に散乱し地雷状態になった不発の符を周囲の地形を巻き込むように句芒の身体を叩きつけ爆裂させていく。一転して一方的なその光景、力を削がれているはずのジュラはむしろ、いつもよりも力を発揮しているようにさえ見える。

        『だからアテナサンにも、認められない…マスターたちには、憐れまれる、私にも、師匠にも、勝てない…!』

        …トドメを刺せるならさっさとすればいい、目標が目の前にあるならがむしゃらに進めばいい、考えの足りない愚か者とも言えるが何かに真摯に向き合うというのはそういうことだ。拳を交えてその本質を悟ったジュラは吐き捨てる。
        勝ち方にこだわり、余計な行動を増やし、邪念に塗れて見栄ばかりを張り、自分を虚飾で飾り続ける。自ら存在意義としたはずの聖女になるということですら、敗北し続けたことで闘う前から敗北を恐れ、聖女と認められた蓐収との直接対決を避けて逃げだした。
        自分たちのエゴで句芒を生み出した後ろめたさから何も言えない玄冥や朱明にはその立場から被害者であることを隠れ蓑にして哀れっぽく振舞い。内心では性能の良い身体を作れなかった役立たずと見下し続けた。
        自ら逃げたにもかかわらずその目標を捨てきることも出来なかった挙句、回りくどく取り入ってジュラたち次代の聖女候補たちを排除しようとした。そんな本質を半身を削ったアテナサンことマザーには最初から見透かされていた。
        誰かに何かを与えられても、期待をされても、いくら自分に有利な状況を設定しても…そんなヤツが勝てる勝負などない。それを悟った瞬間…

        『ウソだ…嫌だ!また…負けるのは…いやだぁあああぁあああ!!

        句芒の心が折れると同時に偽りの空に怪しく輝く巨大な大黒天鏡にヒビが入り、真っ二つに割れる。次の瞬間、『極大の日食』は『極大の太陽最接近』へと事象が上書きされ通常空間ではあり得ないコラージュめいた天体ショーを映し出す。
        まるで『太陽に墜ちる』かのように吸い上げられる句芒、逃げることも叶わず全身を灼熱の太陽に焼かれる苦痛で悲鳴を上げるそこに、地上からも日輪の輝きが迫る! -- 2023-06-04 (日) 19:00:55


      • 灼熱ッ!日 光 掌(サンシャイン・フィンガー!!)!!

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        灼熱の太陽、その熱風、炎、光を全身に受けてひときわ輝いたジュラの拳が句芒、いや蒼白の怪異の身体を貫き、心臓を捉え、握りつぶすと同時に爆裂!跡形もなく消滅させる。
        …どんな無様でも、劣勢でも、しがみつき、喰らい付き、命懸けで挑む気合と根性。一度は逃げた師匠からの教えによって勝負を捨てぬ原始的な闘争心を養ったジュラは恐れを振り切りついに仇を取った。
        だが、その表情は晴れない。普通の穏やかな、争いのない生活を願って闘いを捨てようとすらしたにもかかわらず、闘いの高揚感と満足感とは増すばかりだったからだ。

        私は、聖女くらいにシカ、なレないの…かナ…。

        激しい戦いの余波が消えれば、でたらめな太陽も、墓石めいたビル街も消え去り、荒涼とした大地が広がって、辺りは何事もなかったかのような静寂が戻る、そこにはひとりの獣が立ち尽くすのみだった。 -- 2023-06-04 (日) 19:09:49
  •   -- 2023-06-02 (金) 22:00:41
  • 2023年 12月某日昼 某所 『住石商会』前

    いーかげん機嫌治してって〜…『だまして悪いが、仕事なんでな。』って日本のことわざにあるでしょ?

    …悪趣味デス、あんナノ。

    アテナサンとグルになって趣味の悪い幻覚を見せた『住石商会』のやとわれ店長アケミさんことマスター朱明と口論になっている様子のジュラ。
    店の前にはトカゲの獣人に似た怪異の死屍累々、軽く数えて4〜50匹以上が山になって重なっていたが致命の一打を喰らうとすぐに雲散霧消、掃除の手間が省ける系怪異だったようだ。
    口論の最中も背中を預けて戦っていた二人は、口ではどうあれすでに打ち解けた様子である。

    ってかアイツ、場所解ってンならザコよこさずにすぐにカチこんでくればいーのに、時間稼ぎでもしてんのかな?

    ……ワタシの、何カ、思い出すノ、待ってる?

    蒼白の怪異ことマスター句芒、幼いジュラの命を狙い孤児院をまるごと焼いた仇といってよい相手。このトカゲの怪異をけしかけている張本人でもある…
    悪趣味な幻覚とは7年前のその場面の再現、それを見たジュラは戦意を失い硬直するほどのトラウマを植え付けられたのだが…
    その場面にこそ、何かの答えでもあるのだろうか。

    ヒントっつーか…もう答えかもしんないけどさ、ジュラちゃんはいつからジュラちゃんなの?

    いつカラ…?

    ラチが開かん、そう見たアケミさんが助け舟を出す。『ジュラはいつからジュラか』とは。
    ジュラは考えた、産まれたその日から?誰かにそう呼ばれて、気が付いたときには、もう?
    本当にそうか…?ジュラは、いつからジュラ・エリー・オルズだったか考えだした… -- 2023-05-31 (水) 22:57:10


    • はい、そこまで。

      まるでおしゃべりをやめない子供にやさしく諭すような、それでいてよく通る声、パンパンと手を叩く音と共に姿を現したうさんくさい女。どこから?もちろん店の屋根に登って。
      登場の仕方といい雰囲気といい、うさんくさいハイパーなエージェントにも似た女は言葉を続ける。

      久しぶりですね、あの夜以来ですか?

      喋り方までアテナサンに瓜二つのその女はジュラに向けて話しかけるが…そこに食って掛かるアケミさん。

      句芒…!いったいどのツラ下げて…ぐえーっ…!玄冥!?

      お前はこっちや。と言わんばかりにアケミさんに投げつけられる何か、それはボコボコにされメガネが割れている玄冥。死んではいないようだが…手当てが必要なのは明らか。
      けが人を抱えて半人前を庇いながら戦えるかな?という意地の悪い笑いを浮かべてアケミさんを嘲笑いながら屋根から地面にジャンプ、ジュラに近づくうさんくさい女こと、句芒。

      …なんの用、デスか?

      決まってるでしょう?他のマスターたちからも聖女になるための指導を受けているのですから、わたしが組み手のレッスンをするのに何か問題が?

      S・H・I・T…!!『ふざ…けるなっ!!』

      挑発に乗ったジュラは異能を発動、全力の一撃『日輪掌』を叩きこむが…その場にはクレーターが残るのみ、消滅したのか?
      上だ!まるで昇竜のごとく、ジュラの力を利用して軽やかに舞い上がった句芒はそのまま急降下キックでジュラを踏み潰し、地面に這いつくばらせる。

      あのころから何も変わっていませんね?あの日もそうやって、わたしのことを睨むばかりでした。

      勝ち誇ったように、それでいて昔のジュラを知っているかのように言葉を並べる。

      エマちゃん、まあやちゃん、マリアちゃんに…まひろちゃん。みーんな、いい子でしたねえ。覚えもいいし、自慢の教え子でした。

      『何を…言ってる…?!』

      ひどいですよ、忘れちゃったんですか?あの場所、聖女の家であなたたちを育てていたのは…わたしなんですよ。
      -- 2023-05-31 (水) 23:00:04

      • 恐怖で忘れたものだと思っていた、一緒に育った姉妹同然の孤児たち、育ててくれたシスターたち…その言葉で全てを思い出し始めるジュラ。
        そんな仕打ちを平気で出来た、親同然に思っていた存在、マスター句芒。いったい、何故そんなことを…ジュラの抱く疑問に答えるように言葉を続ける。

        マザー…いまは溢白アテナと名乗っているのでしたね?その御心を知るには、マザーと同じように聖女を作るための選別をするべきだと思ったからです。

        自分の受けた仕打ちを自分の後釜として集められた存在に向けて行ったのだとその動機を話す、聖女候補として集められ、理不尽にも殺される、それでもしぶとく生き残れるのならそれが聖女なのだろう?と。
        アテナサンやマスターたちとの間で何があったかは知らない、だがそんな理由で殺されていいはずがない。ジュラの怒りは膨れ上がり続けるものの…そのたび踏みつけられ這いつくばらされる。
        怒りに曇っただけの力では逸らし、躱され、いくらでも捌かれる、それは…ただの獣である

        あなたは蓐収や玄冥、朱明たちマスターから…いや、わざわざこんなぬるま湯に浸かって人間ごっこをしてまで、今まで一体何を学んだのですか?

        …!!

        仇に怯え、煽られれば怒り狂い、挙句説教までされるのでは情けないなどというものではない。見る見るうちにクールダウンしていくジュラ。
        その様子は玄冥を介抱している朱明も目撃したものの…ジュラの頭を踏み潰されればそれこそ終わり。手を出すことが出来ずにいた。

        『そうだ…私は、あなたの代わりじゃない。できるわけでもないし、なるつもりもない。』

        でしょうね、あなたは聖女じゃないし、なれもしない。せめてわたしの手で引導を渡してあげましょう、出来損ないの…『マコト』ちゃん!

        踏み潰していたジュラを蹴り転がして周囲に乱立する建物のようなオブジェクトに叩きつける句芒、そこに追い打ちで叩きつけられる蒼白い炎の塊
        着弾と同時に火柱が上がり、ジュラは跡形もなく焼き尽くされた…かに見えた。

        ハハハ!御覧になっているんでしょう?マザー!これがいまのわたしの力…聖女にふさわしいの…は…?

        『マコト』とは、洗礼名とは別の、ジュラになる前の、そう名付けられた真の名前。
        真の名前を得たとき、出来損ないは、他の何者でもない、本物になる。
        -- 2023-05-31 (水) 23:07:02

      • 『お前じゃないことだけは、確かだ。』

        天を貫くような蒼白い炎柱を塗りつぶすように異界に陽光が刺すと燃え立つ炎が黄金色に染まる、『真の名前』を思い出し、怒り滾る心を静め、蟠りや疚しさのない澄んだ水面のごとく…
        『太陽』を地上に降ろす器としての水鏡、明鏡止水の心を身に着け…真の意味で太陽をその身に宿す。ジュラであり、マコト。

        號槌・虎嘯砲(ごうつい・タイガーバズーカ)!!

        片膝を突き、周囲に沸き立つ炎を身体に吸収する『タメ』の動作ののち、句芒に目掛けて放たれる猛虎を象った炎。
        着弾と同時に周囲を焼き尽くす灼熱と爆風とが襲い…異界の1区画がまるごと吹っ飛ぶ。

        『未熟ッ…様子見で、こんな…ッ』

        人の姿ではダメージを免れないと判断したのか蒼白の異形となり、それでもダメージを殺しきれなかったことにショックを受けた様子の句芒。
        加えて異界とはいえ今は日中、ジュラの力が最大に発揮できる場面を狙ってハンデキャップとばかりに襲撃したことがアダとなった、そんな呪詛を吐く。

        『納得がいかないなら何度だって戦ってやる、我が師、蓐収のように。』

        『…貴様…貴様よくもほざいたなァァァァ!???!!!よかろう!まずは貴様からだっ…!貴様だけはこの手で、必ず…!!』

        今は逃げるしかない、その場面で一度も勝てたことのない相手の名を出され、さらにはその弟子から敗走する。句芒の憎悪の矛先はすべてジュラへと向いた。
        今すぐにでも。その感情を押し殺してでも待つ『その時』は近い。今は…逃げ延びることが第一だ、黒いもやのようなモノに溶けるようにして句芒は姿を消す。
        辺りには静寂と、破壊の跡が残った。

        残った。じゃなーい!!

        …命があるだけ、見つけもの…だろう?

        これどーすんだよ!?と破壊に巻き込まれた店や、異界の区画の修復に頭を悩ませる朱明と、応急手当で介抱され意識を取り戻した玄冥はその光景を見てため息をついた。 -- 2023-05-31 (水) 23:07:35
  •   -- 2023-05-29 (月) 20:32:19
  • 2023年 9月 某日 エリー・オルズ・ネット京都支部

    京都市内の教団関係者の集まる施設、京都駅周辺のわりとよさげな立地のビル。
    その地下深くの訓練スペース、37m×24mのバスケットコート約二面分。
    そこはいくら暴れても外に衝撃はおろか音も漏れない、周辺住民や街に配慮された作りなのだが…

    ここまでにしよう、これ以上はここが崩落する。

    ご指導、アリガトウございマス…

    いくら暴れても…という割には床にはクレーター状の凹みが数十か所、ひび割れた壁や天井に突き刺さっているのは、ヌンチャク、青龍偃月刀、手持ち掘削ドリル、流星錘、鉄扇、羅漢銭数百枚、etc. etc. …
    その破壊の中心にいたジュラと玄冥の二人は組み手という名の実戦訓練を行い、訓練場を破壊する勢いでもって力と暗器のぶつかり合いで死闘を演じていた模様。
    その二人の組み手?に巻き込まれてはたまらんと訓練中だった修拳道のモブ門下生たちは距離を取って様子を見ていたが、二人の手が止まり礼を交わすのを見ればほっと胸をなでおろし解散していく。

    はい、お疲れ様です。よろしければお二人ともこちらはいかがですか?

    ひと段落ついたと見るや二人に話しかけるうさんくさいエージェント溢白アテナ、今日のおみやはオハギ!桶型のお重入りのこし餡タイプ…けっこう大粒。

    遠慮しておく。

    あ…ワタシも今日は…

    えっ!ええ…どうしたんでしょうジュラ様?

    玄冥はともかく、こういうものに真っ先に食いついてきそうなジュラがそれを断って足早に駆けていく、どこかに用事でもあるのか?
    -- 2023-05-24 (水) 00:45:58
    • 同日、京都駅付近某所

      というわりには嫌に昭和レトロ感漂う雰囲気の周囲、裏路地を入った先にあるこれまたレトロ感漂う佇まいの店らしき建物。
      もしかしなくても異界の類、迷い込んだ者を罠にハメる気満々にも見えるその店の看板には『住石商会』という店名が記されている…

      お?また来たの?お客さんヒマだねえ〜

      この前買ったお香、とってもよカッタから…また欲しいナ、って…

      店の中で出迎えるのは10代ほど、ジュラよりも年下に見える少女。店員らしい。
      ジュラも来店が初めてではないらしく、顔見知りのように店員に話しかけてこの前買ったお香、白檀の香りのするヤツを注文しようとするものの…

      売っておいてナンだけどぉ、おばーちゃんぽいって言われたりしない?

      うッ…で、デモ…ワタシ、これ…好きだから…

      よしよし、他の誰に何いわれてもコレが好き!っていうのはいい傾向だわよ。毎度!

      ジュラの答えに満足したらしく、代金を受け取ると白檀の香りのお香セットを取り出してジュラに渡す店員さん。
      受け取るジュラもこれでいいのだ、と笑顔になるのだが…

      でも、気を付けな。ポリシーがあんのもいいけど、頑固なのも行き過ぎると身を滅ぼすかんね。…って…聞いてねえし!
      -- 2023-05-24 (水) 00:46:31

      • 人の忠告を聞く前に行動あるのみ、師匠の悪癖まで受け継いだところのあるジュラは夕暮れの異界を駆けて家路を急ぐ。
        きっと明日もこうして、平和で穏やかな暮らしが続くと信じていた…その瞬間、爆発!行く手を阻むかのように蒼い炎の火柱が燃え上がる

        ……!?

        ジュラの目の前に姿を現したのは、蒼白の異形
        幼かったジュラと、家族同然に育った孤児院の人々を襲ったそれがなぜ今?この場所に?
        あの日よりも力をつけ、比べ物にならないほど強くなった自信があった、だが…動けない。恐怖で身体が凍り付く。
        幸福から一気に恐怖のどん底に叩き落され、へたり込むジュラ、そして…『怪異が吹っ飛んだ』

        …し、しょう…?

        こんなところにいらっしゃったなんて…ジュラ様!?お気を確かに!

        動けないジュラにじわじわと近づいて、トドメを刺そうとした怪異をその拳で吹っ飛ばしたのはジュラの師匠、マスター蓐収
        ジュラの言葉が聞こえていないかのように、吹っ飛ばした怪異に追い打ちを喰らわせるために起き攻めを狙うものの、吹っ飛んだ先の瓦礫を吹き飛ばしてきて突っ込んできた怪異との殴り合いに発展。
        一進一退の攻防を続ける両者の姿はだんだんとジュラから離れていき、やがて気配が消えた。
        あの怪異はなぜ今になって自分の前に姿を現したのか?なぜ急に表れた師匠は自分を助けてくれたのだろうか?わからないことが多すぎて脳を普段より多く使った結果…ジュラは気絶した。
        その後、ジュラを追って来たらしいエージェントアテナによって教団京都支部の医務室に運び込まれたジュラは、しばらく治療と事情の聞き取り調査を受けるのだった。 -- 2023-05-24 (水) 00:47:51
  •   -- 2023-05-19 (金) 20:31:04
  • 2023年 某月某日 某所

    外の様子の伺い知れない暗い部屋のなか、結構な規模のPCの多数のモニタをのぞき込む人影。
    着る毛布、ダメ着などと言われる類の服を着てフードを深くかぶっている。その奥の顔は見えず、光を反射するメガネしか見えない。
    そんな人影はチャットツール上で誰かとのチャットを行っている。

    「こんな時間に何の用かと思えば、懲りずにまだ聖女か。」

    「蓐収も、朱明も、僕も。もうあなたにはついていけない、だから離れた。」

    『でもこうやって連絡手段を残している、優しい人、法衣のデータ提供にも協力してくれましたね。』

    「アフターサービスだ、作っただけでおしまいでは発明家の沽券にかかわる。」

    「あんな回りくどいことをしなくても、僕のところに持ってくれば改良くらいした。」

    『そんな義理堅いあなただから、任せたいのです。』

    …あ〜〜〜!!

    いつものように断れないよう誘導されて、不機嫌そうに声を上げ頭をかきむしる人影…
    その人影の正体は…? -- 2023-05-14 (日) 21:39:15
    • 2023年 7月某日 市内某教習所

      高校最後の夏、海に山にとみな様々なイベントがあるなか、ジュラは更なる力を求め修行するべく…合宿免許に挑んでいた。そんなある日、担当教官の玄田冥華との会話中。

      …では確認問題、【問1】青の灯火の信号は、必ず進めを意味している。

      ○!直進あるノミです!

      不正解…と、【問2】進路変更は、標示により禁止されていたり、後続車などの進路を妨げるおそれがある場合以外は、積極的に行うべきである。

      ○!兵は迅速を貴びマス!

      不正解…では【問3】長時間運転するときは2時間に1回程度休息をとるとよい。

      ×!目的地にたどり着くマデ、闘いは終わリまセン!

      不正解……本当にキミは教習所を卒業したんだよな?僕はまだ信じられないよ。

      こりゃダメだな…という雰囲気を隠そうともしない玄田教官と、やる気だけはあるジュラというコンビ。 -- 2023-05-14 (日) 21:43:28


      • はっきり言っておくがこのまま挑んでもキミが試験に合格することはない、無意味だ。

        や…ヤッてみなケレバ…ワカリマセン!

        学生生活を通じて積極性を身に着け、生来の妙な頑固さで食い下がるジュラを見て玄田教官は提案する。

        ならば…そうだな、あそこにたまたまいる野生の自動車。今まさに暴走しようとしているんだが。アレを手懐けることができたら勝算もあるだろう。

        教官が指さす先には、パトカーに擬態しているくせにロケーション完全無視、京都府警ではなくなんかアメリカーンなPOLICE外装のトンチキな野生の自動車…おそらく怪異?がこちらの様子を見ている
        古来車の類が妖怪変化、怪異に変じて「オボログルマ」などと呼ばれたりする場合もあるが、出来すぎなタイミング、ツッコミどころしかないわざとらしい怪異。
        そう、今回の刺客?はこの玄田教官とアメリカーンオボログルマなのです。さすがにおかしいとジュラも気付くだろうというツッコミ待ちでどこか投げやりな登場にも見えるが…?

        哎呀!日本でハ、自動車、野生動物でスか…?

        そっ…そうとも、都会というコンクリートジャングルでアスファルトタイヤを切りつけ暗闇を走り抜ける。自動車は獰猛な野生動物だ。もちろん。

        ワカリマシタ!コンナコトモアロウカト、正装でキタかいがありマス!…ワタシ…必ず免許皆伝…してみせマス!マスター玄田!

        常在戦場とはいうが、暑くないのか?それ…

        どこの世界に実力行使で野生の自動車を従わせる免許試験がある?とツッコミたいのを抑え、真夏の炎天下に戦闘服を兼ねる暑苦しいマスクと法衣を着てきたジュラの言葉を聞いて教官は目頭に手をやった。
        のちに玄田教官は「バカを騙しているとこっちの方が狂いそうになる。」と語ったという。 -- 2023-05-14 (日) 21:45:25

      • 『大人しく、しろっ…!!』…ニホンゴのほうが、いい?

        暴れ馬を手懐けるにはロデオが一番、さっそくジュラはアクション特撮名物「走行中の自動車のルーフにしがみついて走行を止めようとする。」を試みた。
        オボログルマにいろんな言語で呼びかけてみたものの、日本の怪異なのだから日本語が通じる?などと考えているあたりまだ余裕らしい。

        まったく、結界を張ったとはいえ…彼女は周囲の被害を考えていない。

        暴走を行うオボログルマを力で抑え込もうとすれば周囲に物的人的被害が発生することは避けられない。そのことを考えている様子のないジュラにさっそく減点1、いちおう評価はする気らしい教官。
        結界を張った、という言葉通り周囲は一種の異界、ついさっきまでの場所と似て非なる隔絶された空間となり周囲の被害を気にせず暴れられる…にしても…

        虎嘯回天旋墜(タイガースピン)!!

        佐山聡初代タイガーマスクを彷彿とさせる、相手に組み付いてそのまま高速回転をかけることでいつの間にか相手が地面に叩きつけられているように見えるという投げ技で横転したオボログルマは火花を散らせてアスファルトを滑走。
        結界を張って居なければ教習所の建屋に正面衝突、爆発炎上。壊そうと思ってやってもなかなかここまではできない。と呆れるやら遠い目になるやらの教官。

        ウォォォッ!!…あ…手懐けないト、いケナイのニ…

        雄たけびをあげたあとで試験の趣旨を思い出してやっちゃったー…という顔のジュラに、爆炎の中から飛び出す影が襲い来る!
        なんとオボログルマは昨今の流行りに便乗したのか人型ロボのような形態に変形したのだ!おまけにダメージを負った様子もない

        さあどうする?今見せたように、並みの物理衝撃ではこの特別製の装甲は攻略できない。

        教官の言葉通り、ジュラが殴る蹴るの衝撃を加えても多少怯みこそすれ決定的なダメージは与えられない。
        身長は5メートルほど、体格と体重とに勝り、おまけに強靭な装甲を持つ相手をどう攻略する?
        攻め手を欠くなか、巨体に似合わず意外と素早いオボロ…いや、ロボオボログルマの振り回す手足をかわすのがやっとらしいジュラ。万事休すか…? -- 2023-05-14 (日) 21:48:59


      • どう、すレバ…!?……あっ。

        『全方位を覆うドームタイプの結界』という都合のよさは構造的な弱点も孕んでいた、天井部の空間の裂け目を通じて外部から太陽光がスポットライトのように差し込む。
        戦闘用の結界は戦闘の衝撃を外部に漏らさぬことが命題である以上、万が一漏れた場合に最も被害が少ない天井部から衝撃を逃がす構造とも言える。
        すでに結界の崩壊が始まっている証拠であり、時間的猶予がないピンチであるが…それは同時にジュラにとってチャンスであった。

        『……こういうときのための、力…!』

        マスクを脱ぎ、フードを開放、グローブを外す。真夏の炎天下、法衣とマスクの保護を自分から外すように肌を露出する。
        「太陽光を浴びると元気になりすぎる異能」とやらを自らの意思で使おうというのだ。

        『ハァァァッ!!』

        結界の中にあってなお届く太陽光を受けるとジュラの身体が光り輝き、パンプアップ、下腹部の文様が服の下からも発光しているような視覚効果を生む。
        その中でもひときわ光り輝くのが右の拳、固く握られた拳がふわりと柔らかく、しなやかに、鋭く指が伸び…

        あれは…摩利支天太陽掌!またの名を…

        灼熱ッ! 日 光 掌 (サンシャイン・フィンガー)!! 
        qst090203.png -- 2023-05-14 (日) 21:57:08


      • 一瞬、瞬きの間にロボオボログルマの胴体に飛び掛かったジュラの日光掌が突き刺さり、今度こそ跡形もなく爆発四散。
        その余波たるや教官の発生させた結界をも吹き飛ばし、現実空間に帰還。物的人的被害は…ロボオボログルマの残骸くらいか。

        はぁ…はぁ…ハァ…!フウゥゥゥッ…もがっ!?

        なるほど、あの人が夢中になるわけか…合格。

        昂った心を抑え、呼吸を整えるジュラ。そのジュラに声をかけ、フードをかぶせマスクをくっつける教官。刺客ではなかったのか?

        ごうかく…?ワタシ、AT免許皆伝デスか?

        …きみ、まだ気づいてないのか?僕は玄冥、きみの師匠と同じマスターの一人…最初からある人にきみの修行をつけてやれと頼まれていたんだ、合宿の初日から。

        あノ…仰っテル意味が、ヨク…?

        自動車の免許取りに来たら、いつの間にか聖女修行になっていた。びっくりしたんだよね…と鳩が豆鉄砲を食ったような顔のジュラ。
        こうして、マスター玄冥のけしかけたロボオボログルマを撃退し自らの異能をコントロールする感覚を掴んだジュラは後日…
        見事にAT限定免許試験に落ちた。 -- 2023-05-14 (日) 22:04:04
  •   -- 2023-05-14 (日) 21:39:09
  • 現在 2023年某月某日
    深夜 鞍馬山 のどこか

    『見つけたぞ!あの時の恨み…今日こそ…』

    『ごめんなさい。…私と師匠とはもう関係ない。』

    深夜の山中、ひとり身体を動かし修行に励んでいた白いフードの女、ジュラを取り囲んでああでもないこうでもないと恨み言を垂れる集団。
    10人ほどで徒党を組んで文句を垂れているのだが…その文句はジュラではなく師匠へのものだった。
    刺客ひとりひとりが日本語ではない多様な外国語でそれぞれ話すものだから方々で相当な恨みを買ったのだろう。
    その手の恨み言は、「心当たりが多すぎていちいち思い出すのも面倒なので来た瞬間まとめてブッ飛ばす。」
    という対応をしていた師匠は案外正しかったのかもしれない。などと思うジュラ。
    わざわざ夜中、人気のないところに独りでいるジュラのもとへ来て行うことといえば… -- 2023-05-07 (日) 14:15:02


    • 『師匠のやったことは貴様にも責任があるのだ!ゆえに…その命もらい受けるーっ!』

      『…断る。』
       
       
      「師匠を襲うのは怖いから、弟子を襲ってスッキリしよう。」などという魂胆の連中にかける情けなどない。マスクを外し臨戦態勢。
      ジュラへ飛び掛かるそばから、ある者は飛び膝蹴りで蹴り飛ばされ、ある者は拳の一撃で殴り飛ばされ、ある者はすり抜けざまに後ろに引き倒され地面に叩きつけられる。
      ひとりずつ相手するのは面倒だとばかりにあとは強引なドリブルを彷彿とさせるダッシュを行うジュラに、自動車に跳ね飛ばされたかのような勢いで跳ね飛ばされた。
      そのままの勢いで残ったリーダー格の刺客へ向けてダッシュしていき…。

      『バカな…蓐収ならいざ知らず…相手は弟子ひとりだぞ!?』

      新・虎嘯飛脚(ネオ・タイガーショット)!!

      右足でボールを蹴るようにして気の弾を蹴り飛ばす技、「新・虎嘯飛脚」を刺客の土手っぱらに喰らわせて…爆裂!襲ってきた刺客連中をまとめてどこぞへと吹っ飛ばすと…ふうと一息。 -- 2023-05-07 (日) 14:15:18


      • 『ボール遊びしかさせてもらえなかったけれど、こういうことだったのか…』

        趙雲の単騎駆けに代表される突破術は、現代においても一対多数の状況を打破するのに応用できる。
        駆けるスピードを活かした正面突破、相手側から襲い掛かる勢いを利用したカウンター、敵をすり抜けざまに引き落とし地面に叩きつけ、追っ手を妨害するバリケードとして放置するなど。
        そのあまりの早業は常人の目で捉えることは不可能であるがゆえに、「審判の目を欺き一対多数の局面を突破する」近代サッカーのストライカーに求められる必須技能となっていることは
        賢明な読者諸君にはいまさら説明するまでもないことである。

        民明書房刊「ハットトリックヒーローはキミだ!〜Super Soccer Champ〜」より抜粋

        『それにしても…いつもどうやって居場所を調べてくるんだろう?』

        今日初めて『刺客の話を聞いてあげる』ということをしたせいか、刺客はどうやって嗅ぎつけてくるのだろうか?といった疑問も初めて抱いたのだが…問い質そうにも全員どっかへブッ飛んで行ったので後の祭り。
        そしてもう夜も明ける、きょうも授業がある以上は遅刻もできない。取り外したマスクを再度装着して登校するのだった… -- 2023-05-07 (日) 14:17:56
  •   -- 2023-05-01 (月) 19:14:58

  • 7年前 2016年某月某日

    某国某所、孤児院『エリー・オルズ・聖女の家』
    時刻は夜明け前、最も暗いという闇を照らす炎。

    http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst090141.jpg -- 2023-04-23 (日) 23:55:39


    • 『こんなものですか…』


      そこで暮らしていた者たちを引き裂き、磨り潰し、断末魔の叫びごと焼き尽くした張本人。
      その姿を照らし出す炎と対照的な冷たさを感じさせる蒼白の異形
      孤児院を襲った異形は誰にともなくつぶやく、それを見るのはただ一人の生き残り、ジュラ・エリー・オルズ。


      『おや、まだいたのですね。』


      傷だらけで這いつくばり、すでに虫の息だったジュラと異形との目が合った。
      一歩ずつゆっくりと近づく異形、異形を見上げるジュラ、夜が明けて東の空が白む…
      -- 2023-04-23 (日) 23:57:52

      • 現在 2023年某月某日

        南米大陸某所、時刻は夜。

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst090143.png -- 2023-04-24 (月) 00:00:19

      • あの日の事を思い出し夜空を見上げるのは7年後のジュラ。
        あの後、師匠である『マスター蓐収』に救出されたジュラは世界各地を師匠の振るサイコロ任せで放浪し修行することになった。
        以前の生活とはまるで違う修行の中に否応なく飛び込んだジュラ、孤児院を運営していた修拳道に『聖女派』『修験派』といった派閥があるらしいことなど今日のこの日まで知る由もなかった。
        もちろん師匠は何も教えてくれなかった、それを伝えたのは…


        はじめまして『聖女』ジュラ様。わたくしの名は溢白アテナ…見ての通り、ハイパーなエージェントですっ☆

        ……(…うさんくせえ…)……用件は、なんですか…?(新聞の勧誘とかかな…?)

        決まってるじゃないですか!あの粗野で粗暴な不届き者、蓐収に誘拐されたアナタ様を連れ戻しにきたんですっ!

        …は?(は?)


        溢白アテナと名乗った女はこんなクソ田舎を通り越した原始の環境に、さも当然のように、世間話でもしに来たような雰囲気で突然現れた。
        アテナが言うにはこの七年間、アテナたち聖女派は血眼になって修験派のマスター蓐収に誘拐された聖女ジュラを探しており、やっと居場所を突き止めたのでこうして迎えに来たのだという。
        その話が本当なのだとしたら、孤児院を襲った怪物とマスターは最初からグルであり、ジュラは誘拐された事も知らないまま、仇に都合のいいように育てられていたことになる。 -- 2023-04-24 (月) 00:03:36



      • 納得いくように、説明してください。師匠…私は、あなたに、誘拐…されたんですか?


        その話を聞き、確かめずにいられなくなったジュラは思わずそう口走ってしまう。
        ジュラの話を聞いているのかいないのか、そっぽを向いて一服するガタイのいい女、彼女がジュラの師匠、マスター蓐収だ。
        そして、一服し終えた師匠の解答は驚くほど速く、シンプルだった。
        『とびっきりの正拳突きを腹に一発』 以上である。



        ああ〜!ジュラ様〜!大丈夫でしたか〜〜?あの誘拐犯逃げられないと見てアナタ様を置いて逃げたようですね…でもよかったご無事で!

        ……もう…いやだ、こんな生活…


        大事なことを問い詰めれば理不尽な暴力で拒絶され、隕石でも堕ちたのかというクレーターめいた破壊跡のど真ん中でジュラが目を覚ましたのは夜が明けて太陽が真上に昇るころ。
        けしかけておいてその場にいなかった挙句、いまさらのこのこやってきたアテナをうらめしく睨むと、ジュラはアテナの誘いに乗って日本行きのチケットを手に入れた。
        修拳道も、聖女派も修験派もない、普通の、おだやかな生活がほしい。そう望んで… -- 2023-04-24 (月) 00:16:00

Last-modified: 2023-06-18 Sun 20:44:49 JST (312d)