別日本史
数多にありし葦原中津国の逸話
また一つ別國の有様なり
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種族 Edit

人間 Edit

葦原中津国の地に生まれ出者共。修理り固め成された大地にて現れ、始めにそこへ住んだ
最も国津神に近くあるものであり、また天津神にも近くあるもの。
何故ならば国津神も人も、伊佐那岐と伊佐那美の修理り固め成した地に等しく生まれた者であり
やはり等しく伊佐那岐と伊佐那美の別孫であることに変わりはないからである。
国津神に次て葦原中津国の事を知るものであり、世の理にもまた近くあるもの。
知るに隔たりなく知の手を伸ばせば、最も貪欲なる種であると言えなくもない。

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最も新しく葦原中津国に足をつけた者共。稲荷神、即ち宇迦之御魂大神が天津神の要請を受け
葦原中津国に使わされし眷属が、そのまま住人としていついたものである
やはり稲荷神を最も崇める種にして稲荷神に近くあるものであり、農耕においては猛き力を振るう
天津、国津に触れるに際し安き力をもっており、各所神社においてその姿を見受けることは多いだろう
豊穣を司る神の眷属であるため、豊かたるためのことについては慧眼を持つ
彼らは人型の狐であり、毛皮におおわれ、人の四肢を持ち、キツネの頭を持つものである
身の丈は人に似て、些か高くも、等しくあるとして差支えなし

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伊佐那岐の禊にて流れし穢が、川岸に着きて生まれし者共。
即ち伊佐那美との間に生まれし神の末子らにして、多くの神々の兄弟でもまたあり
伊佐那美の差し向けし黄泉軍、黄泉醜女の、葦原中津国にて変質した姿でもまたある

崇むるところは伊佐那美尊、八十禍津日、大禍津日、八雷神。そして祓戸の神々である
祓戸の神々世の穢を黄泉へと流す神々なれば、鬼にとっては即ち葬送の神である
死せるものをその故郷へと送り、神の近くへと招くものなれば、崇むるにやすい
穢より生まれたれば、穢祓うに安く。故に天孫の系譜にも手放しがたく、これを駆逐すること成らず
黄泉比良坂への道のりを知ること詳しく、容易く指し示すであろう。

姿形は即ち一丈にも及ぶ背丈を持ち、面相恐ろしく角持つこと一つか二つ
巌のごとき肉の盛り上がり猛々しきこと類なしにして、時に角を有する人の形へと身をやつす事あり
葦原中津国に暮らすにおいては人型の方がなにかと易く、常、彼らは真の姿にあらず
多くの穢に触れれば先祖返りを起こし、黄泉軍の姿を得るとも、また伝えられるところ

黄泉蛆 Edit

鬼とは即ちにして、伊佐那美大神に纏いつく蛆であるという説もある。
黄泉軍、黄泉醜女とは羽化した姿であり、現世における姿は仮初のものに過ぎない
穢れより生まれいでたというのであれば大禍津日、八十禍津日に並ぶものであるといえ
しかして他なることを考えれば、とこの考え方は有力と考えられている
鬼に取ってのまぐわいは女の腹を黄泉比良坂へ連なる穴とし
そこから蛆を引き上げる儀式であるというふうな捉え方も同様に存在するが
結局のところ穢れから産まれたのと大差ないものであるため同一視することも多く
黄泉の蛆は穢れが凝り固まった産まれた存在であるという見方が広く浸透している

鬼と河川 Edit

鬼にとって川は要地であり、故に鬼たちの集落は川側にあること多し
鬼は川下りて漂着した穢より生まれたものにして、その元は黄泉にあることを思えば
川は即ち生命の運ばれてくる場所であると同時に、黄泉へといたる入り口でもまたある
鬼たちは祓戸の神々に祈願して死者を船に載せ、これを下流へと流して葬送とする
船はそれとわかるように装飾され、それを見た鬼たちはまた、祓戸の神々に祈願するのである
産屋もまた川近くに設けられること多く、天候悪なければそこにて子は生まれくるものである
こうして鬼にとって川は要地であるため、姓に河川の字が入るものは力あるものであると考えて良い
河川の名そのものが苗字であれば尚更力強く、そして鬼は河川の神にも敬意を表する

鬼の女が妊娠したとき、九ヶ月目に川で禊を行う。ただし肌寒い季節であれば湯殿でも良い
これは伊佐那岐をなぞらえた儀式であり、普段伊佐那美を信仰する鬼としては真逆に位置するものである
しかし如何に伊佐那美とたもとを分かった夫神といえども共に国産みを行った神なれば
一定の敬意は払っている
鬼が伊佐那岐の禊にて流れた穢から産まれたという神話から、この禊は行われる
この禊にて用いられた水は取り置かれ、守り水として産まれた子供が死ぬまで保管され
死した時に船に載せられ共に流されることとなる。羊水も同じ扱いを受ける

伊佐那美信仰 Edit

大母たる伊佐那美をあがめ、その解放を願う信仰。黄泉より千引きの石が除かれることは悲願である
火を遠ざけ、雷を貴しとする考えがあり、特に地から天へと登る雷を喜んで、雷から生まれた火は貴しとする
伊佐那美が産まれた火之迦具土に陰部を焼かれて焼死した神話に倣い
伊佐那美を奉る神棚や、伊佐那美の社殿の近くでみだりに火を熾すことは悪しきこととして扱われ
また出産の際には火を遠ざけなくてはならない。少なくとも、産屋が見える位置にて熾してはならない
伊佐那美を信仰するものにとって死は必ずしも嫌厭するべきものではなく、鬼は穢に帰るだけであり
また大母の膝下へと帰る、帰還の一つの形に過ぎないものとされる

速佐須良姫信仰 Edit

比良坂家主導として行われている信仰であり、國を守る要ともなっている信仰
かつて鬼とその他の種族が別れて暮らしていた頃、時の朝廷は黄泉から漏れる穢に頭を抱え
穢より國を守る祓戸の神々のお力を借り、葦原中津国より穢を取り除く活動を行っていた
だが千引きの石の隙間から漏れる穢の量多ければ、従事する巫女らの体の負担も大きく
遠からずこの状況は崩れてしまうだろうと言うとき、後に比良坂の家となる一派が訪れこの役目を承り
速佐須良姫、並びに祓戸の神々は鬼たちも広く崇めるところであると知られるように成り
穢れ祓いの役目は鬼の一族が行うことと決まって、確執は一応のところ葦原中津国より取り除かれた
この信仰は、その目的は違えども多くの種族が行っている信仰である
鬼は確かに黄泉比良坂へと至れることを祈願し、他の者は葦原中津国より穢の除かれるを願う
遠まわしに鬼を遠ざけるような信仰ではあるのだが、その主導が鬼の一族である以上
その穢と鬼は共通しないものとして扱われている

比良坂家 Edit

鬼と他の種族の間にあった確執を取り除き、また國において重要な地位を獲得したこともあり
平和と融和の象徴的なものとしても、信仰の中心としても、國では極めて高い地位にある名家
独特の家則にて動いている一族でもまたあって、日本の中でも一線を画している

比良坂の家に結婚の文化はなく、穢れ祓いの儀式の中で授かった子を家ぐるみで育てていく
穢れ祓いがまぐわいである以上対象は男であり、こちらは女
女は受け皿として男よりも優れているため、あえて穢れ祓いはせず、まず出来ない
穢は精と共に注がれて、受け止める側である巫女は必然的に子を孕む可能性が極めて高くなる
そして比良坂家はこれを悪しきこととせず、あえて普通のやり方として位置づけることにより
血族を大量に作って日本各地に広まり、ちょっとやそっとでは崩壊しない体勢を作り上げた
そもそもの家柄の高さと、この当主を一定としないやり方により、家は安定している
恋愛感情が生まれないこともないのだが、姻戚関係を結と言うことはまずなく
そうした対象が浮気をしていようがあまり気にしなかったりする

比良坂の女
比良坂の家の主役は女である。穢れ祓いを行うのは女であり、それが柱である以上、変わらぬ場所
子を産み、穢を払い、連綿と続けて行く。主な役目を担い伝えて行くもの。國の平和の要
穢れ祓いは基本的にまぐわい、個人から祓うものもさすが、年に何度か、家をあげての大祭がある
こちらが主に國から穢を祓う大きな要因ではあるのだが、普段の穢れ祓いも広域で行っているため
効果がないと言うこともなし
この技術をのちのちに伝えて行くこともまた、重要な仕事であり
いくらか経験を積んだ女は同じ家の男のもとに行くか、男を呼び寄せ、女に教えることを教える
出産に立ち会うのは全て女に限られ、年若い娘たちが招かれて神社の仕事を代わって行い
比良坂の家の仕事を覚えて行くこととなる
比良坂の男
比良坂家の男は比較的立場が低く、幼少の頃は姉、妹から苦労を掛けられることが多く
基本的に女に対しての幻想を持つものは一人としていなくなり、また興味も極めて薄くなりがち
男の仕事は女に出来ないこと、即ち奉納するための相撲をとったり、男の立場での技術継承がある
彼らにとってはまぐわいも仕事の内であり、招かれた先か、遣わされた同じ家の娘と交わり
その娘の技術を磨くための練習台となるのである。その過程で子が出来ることもままあるが
それも練習の内の一つとみなされて咎められることはなし
衛兵としても期待されるところは大きく、女が仕事をしているのを守ることもまた役目とされ
その姿を見かけることは珍しいものではない
落胤は懸念されるところであるが、これは比良坂の姓を持たぬ女が産んだ子は力なし
という風に定めることによって回避されている。
そもそも比良坂家の男が子を残すとなれば、同家の女に技術を磨かせる最中孕ませるくらいしかない
穢れ祓い
産道こそは黄泉比良坂であり、比良坂者の腹は黄泉に連なるものであると言われている
それを証明するかのごとく、鬼は未通女よりもすでに経験のあるものの方が神の声を聞きやすく
慣れていればいるほどにその傾向が強い
子が生まれ来るは、黄泉にありしかつての生あるものが穢れに新たな肉体を得て浮き上がるからとされ
男から穢れを受け取り落とせばそれが呼び水とも、落とし込んだそここそが岩戸の綻びともされ
だからこそ新たに子が生まれ来るとは、鬼ならではの思想であるといえよう
穢れ祓いはこうした前提の上にあるもので、子供を身ごもることは織り込み済みのことである
朝廷との契約のため過分な穢れは黄泉へと返し、同時に黄泉との繋がりを維持し続ける
父が誰とも知れぬようにすることで血縁の柵を避けつつ、繁栄を維持するための手法が穢れ祓い

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天津神、国津神、その他もろもろ数多の神を纏めし呼び名。
古き神を除けば特に国津神、葦原中津国の民に近くあり。触れ合うことも難しからぬ
天津神は高天原にありて見下ろすも降ることまれであり、天孫の系譜はその意を伝えるものである
黄泉は千引きの石に塞がれて触れ合うことかなわず、罷りならぬ

八雷神と八岐大蛇 Edit

伊佐那美大神の身に纏いつく蛇の姿をした八の雷神と、八岐大蛇は密接な関係にあるといえる
八岐大蛇は即ち八洲に落ちし八雷神の影なるか、力を与えられし蛇であるとも考えられる
伊佐那美の唱えし千殺の使命を帯びていたとも考えられれば、恐るべき力も当然
叢雲を冠していたこともまた、八雷神の近似であることを指し示しているという

天之叢雲 Edit

天之叢雲は本来、鬼が鍛え上げし伊佐那美が為の守刀であった。故によく火を避け、払うものであり
大和尊が火難をまぬがれたのもそれがゆえである
伊佐那美は葦原にて自らの力をよく振るうがために八雷神を送り込むと決めたが、黄泉は葦原に遠く
及ばすに難しければ手を選ぶ必要があった
そのため伊佐那美は天之叢雲に八雷神の力を込め、鬼に葦原へと運ばせることを思いつき
八岐大蛇なる怪物を創り上げることとなった

別歴史 Edit

天之叢雲 Edit

建速須佐之男、十拳剣振るいて計略に落ちし八岐之大蛇の首を落とせしとき。
八頭八尾なる葦原の大蛇は尾の一つを最後の首となさしめ、剣となりて生きながらえることとなった。
天之叢雲とは即ち大蛇の最後の首であり、天津神に征されながらも雌伏する祀ろわぬものである

葦原の大蛇 Edit

ある時、これなる神剣は時隔ててなされし新たなる鵺の襲来に乗じて、盗人共の手に落ちたり
天の叢雲は神々の目より遠く離れ逃げ果せ、再び大蛇の首としての本性を表せば盗人の一人に成り代わり
他の盗人に大蛇の手力を授けるとそのまま葦原中津国を漂泊する身となった

無残やな 兜の下の きりぎりす Edit

葦原の大蛇、成り代わりし盗人の名を螽斯 無残と言った。風体、落ち武者と変わりなく不気味であり
しかして腕の立つこと比類なくば、人の身にして鬼を容易く屠りうることから鬼殺しと呼ばれるに至った
それは全て、自身の無聊を慰めんとする葦原の大蛇の所業であり
成り代わられしもの、螽斯 無残はあくまでただの悪漢に過ぎぬ

天照大神と須佐之男 Edit

建速須佐之男、根之堅州国に蟄居して母なる伊佐那美の無聊を慰め、大国主に葦原の主権 を譲りし後
姉、天照大神のことかつては慕いたるも、天孫降臨を機として相争う事となる
葦原中津国の主権が自身より大国主に譲られ、御しやすくなるとみるや邇邇芸を高天原よりおろし
その主権を己に連なるものへと握らせしこと、腹に据えかねるものあった

月読と天之岩戸 Edit

天照大神、天の岩戸に隠れしとき。即ち天の岩戸とは弟神、月読であった。
月読は天之手力雄にてのけられ、以後長く天に御座し、今もまだ葦原中津国を見下ろしている

鬼と速佐須良姫 Edit

時の朝廷はのさばりし穢の数々に頭を悩ませ、いかにしてこれを駆逐せんか
日々をそのやりとりに費やせども妙案なく、速佐須良姫はじめ、祓戸の神々に縋るも
速佐須良姫に属する巫女は穢を一身に受けることとなり、人も狐も、巫女は朽ちる定めとあった
そこへ鬼の一団が訪れた
人々は剣を抜きて刃を向けるが、鬼たちは笑みながらも跪き、帝に臣下の礼をとる
曰く、速佐須良姫の巫女、その役目を我々が司れば穢にて生まれし我ら朽ちず
帝も朝廷もこれ以上の犠牲を得ることなしに、葦原中津国の平安を保つこと叶えば
我ら朝廷に列席し、葦原中津国にて安らかなる日々の約束と引換に、これを承ろう、と
時の帝これを認め、かくて鬼は朝廷の席と葦原中津国での平安を手にした

伊佐那美の御業 Edit

伊佐那美、千の子を縊り殺さむとのたまいてより、千引きの石にて黄泉は塞がれしも
その隙間から漏れ出た黄泉の穢れは葦原中津国を徐々に犯して行くこととなった
伊佐那美はその霊大きく出ことかなわなかったが、穢にて千を縊り殺す事は容易いこと
かくて葦原中津国には穢が忍び寄ることとなった

比良坂 Edit

朝廷に席を得、葦原中津国出の平安を得た鬼たちの中でも、朝廷に出た一族の者たちは比良坂の姓を名乗った
比良坂の者は日向の橘の小門の阿波伎原下流に大社を建立し、ここを総本宮とし葦原中津国のあちこちに散っていった
ここを大社の建立地に選んだのは、無論のこと伊佐那岐がこの上流にて禊ぎ数多の神を生み
その流れた穢が漂着して鬼たちが生まれたのはここだからである
こうして比良坂は鬼たちの中でも特に力持つ一族となり、多くの頭を務めることとなった

人物 Edit

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+  その他

別時代の人々 Edit

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大日本帝國 Edit

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Last-modified: 2017-02-23 Thu 05:32:47 JST (2581d)