澄み渡る空は青く、中天に輝く太陽は大きく、遮るもの無く目に眩しい。
それはそうだろう、実際に私達と太陽との間に遮るものは何もないのだ。ここでは雲は足の下にあり、
太陽の光を浴びて白く輝く雲海が広がり、私達のいる場所はその上を小舟のようにゆく一機の輸送機の中なのだから。
「……なぁなんで俺らは絵一枚盗むのにお空の上を飛んでるんだろうなぁ」
「ダニエルの旦那ぁ、もう何度も説明したでしょう?今回狙う富豪の館は辺り一帯を勢力範囲にしてる。
 盗人がその範囲に入ったことがバレたら狙いのお宝は仕舞い込まれ、警備は蟻の子一匹入れねぇくらい厳重になっちまう」
「だからその中にある高山の更に裏側に空からエントリーして、山を密かに降りて館へと隠密で接近するんです。
 …これ、もう5回くらい話してますよアルバさん」
アルバさんの言葉を引き継ぎ、そう言う。ダニエルさんだってもう分かっているには違いないのだが、ダダをコネているのだろう。
彼も数々の修羅場をくぐり抜けてきたであろうが、まさか地上からの監視に引っかからないくらいの高高度からの
ダイビングなどはしたこともないだろう。苦虫を噛み潰すような絶妙な表情をしてるのは酒が抜けているからだけではないのは直分かる。
それと似たような顔をしているのは圃人の青年。こちらは更に青ざめている。
「今更だけどさぁ、僕も前線行かなきゃいけないってちょっと無理あると思うんだよね。
 ネットワーク的に孤立してるのは分かる、分かるよ。でもさあ、ギークの仕事じゃないと思うんだよなぁ…!」
「仕方あるまい。中継システムを組めるくらいの余裕があればそうしてやりたいが今回もそれは無理だからな。
 俺たちで守ってやるから安心しろ。だが…もちろん自助努力も怠るんじゃないぞ。お前の超精度カメラが肝だ」
圃人さんを気遣いながらも、油断はさせないように締める所は締める只人さん。その佇まいは現場指揮官として充分な風格を感じさせる。
「…現地付いたらアイス作ってあげる。魔術で」「あ、それならボクも欲しいネ。かき氷でも良いヨ」
などとフォローになってないフォローをするのは森人ちゃん。その横で特に緊張もなく気楽そうに言うのはジェンだ。
このチームを正式に結成した頃に比べたら随分ジェンも背が伸びた。結成当時は森人ちゃんと似たようなものだったのに、
今や普通にその背丈を追い越してしまっている。元からかなり大きめに作ってある外套が小さくなってきて
仕立て直しをしなければいけないと頭を悩ませていたけども。あの独自技術が満載の外套を直せる業者などそうは居まい。
もう三年も経ったのだ、チームに流れる空気も一体感のある心地よい物となっている。
「はいはい!私語はそこまで!」そうするとアルバさんがぱんぱんと手を叩きチームを引き締める。
「もうすぐ空中浮遊旅行の時間だ。改めて言うが俺とアマレットは勢力圏外からこの輸送機で後方支援と指示を担当。
 ちっこいのの魔術支援で山を降りたら、ジェンを斥候兼陽動にして先行させて、お前が隊の先頭及び指揮。
 オタク野郎を中心にして守りつつ、ダニエルの旦那は後方で殿を頼みますわ。
 その後はアマレットは全員のモニタを監視してくれ。比喩無しで毛ほども違和感があったら俺に報告頼む」
そこまでアルバさんが言って全員を確認。皆良い面構えをしている。自身満々に頷けば、
オートパイロットにしていた輸送機のコクピットへとアルバさんが二つの尻尾をふりふり戻って、スイッチオン。
ばかり、と輸送機の後方隔壁が開き、ひゅごう、と機内の空気がもっていかれ、冷たい空気が満ちる。
「GOGOGO!さあ、ミッションスタートだ!今回も完璧に守ってるつもりの間抜け共に吠え面かかせてやろうぜ!」
そうして、皆が次々と大空へと飛び出していく。ダニエルさんと圃人は最後の抵抗をしていたが、
苦労人の只人さんに押されて渋々と床を蹴って飛んだ。なんか二人共カエルが潰されたような声をしてたが忘れよう。
私はそれを最後まで見守って事前に決められた自分の持ち場へとすばやくつく。
本日もチームアルバの華麗な仕事の始まりだ。締まっていこう。



「へェ、それで無事、超国宝級の大天才の未公開絵画をゲットしたって?」
幾つもある彼のセーフハウスの一つ、そこで忙しい日々の合間を縫って現れたハローさんに事の顛末を話す。
「元々、その存在を長年噂されてたんですが、実在だけが分からなかった絵でした。私も鑑定士の真似事するために
 その画家さんの絵の勉強すっごくしましたよ…それ自体もアルバさんの指示でしたが」
「やるねェアルバさん。あっちも頑張ってるってことだねェ。うちも見習…うまでもなく働いてるな」
嬉しそうに言いつつ苦笑するハローさん。大金庫の件の時に多くの人員を吸収した彼は、幹部の中でも一際存在感の大きい人物になっている。
幹部になる前から仕事の振り方は人一倍上手かったが、それでも追いつき切れないほど仕事はあるだろうに
実際会ったりするとその余裕の笑みと親しみやすさは変わらず、この人完璧超人か何かなんだろうかという思いは今でも変わらない。
「んでも館にゃ美女は居なかったけどな!一体俺はいつになったら女スパイとのロマンスを味わえるというのか!」
「ボクもちょと暴れ足りなかったネ。身を隠すのはこれ以上なく上手くいったケド、欲求不満ヨ」
「はいはい、ダニエルの旦那にゃ後でおすすめの可愛い子いるお店紹介するからそれで我慢してくださいよ。
 そしてジェンには朗報だ、ちょうど今、こっちでも大きめのヤマがあってねェ。三人を呼んだのもその仕事を頼みたくてさ」
三人に差し出される書類の束、それをさっと目を通せばその依頼主は意外な人物で。
「そう、タウラージの旦那からうちに回ってきた仕事だよ、特に処理する人間を指定された訳じゃないけど、三人に頼みたくてねェ。
 知ってるかなァ?今あの旦那、街の表側の方でも結構な顔になっててね、近々選挙に打って出て政界に出ようって腹さ」
内容自体は一瞬で覚えたが、それを咀嚼すれば、ファミリーと明確に敵対してはいないものの、
お互い触れないようにしていた裏社会の組織が、ちょうどタウラージさんがが出馬する選挙に対立候補を擁立したとのことだ。
そこで、タウラージさんからの依頼はその対立候補の妨害、もしくは背後組織の弱体化とのこと。
背後組織は相当の武闘派であり既にタウラージさん以外の有力な立候補者が不自然な失脚をしていることが分かっているそう。
その手段は、暴力。それでいてその事は表社会の存在には気づかせていない狡猾さもある。一筋縄ではいかない相手だ。
「この仕事を上手くこなせばタウラージの旦那に恩が出来る。そして無事政界の深い所に食い込めばファミリーとしても
 更にこの街でやりやすくなるって訳だねェ。どう?出来そうかなァ?」
「ええ、出来ます。私達なら。それに…タウラージさんにはまだ返しきれてない恩もありますしね」
「その辺は気にしなくてもいいと思うけどねェ。ま、いいか。OK、ならそう返事しとくよ。三人共頑張ってねェ」
頭を下げて私達はセーフハウスのハローさんの部屋を出た。それを笑って見送りながら懐から男が煙草を取り出す。
「あ、残り一本しか無いわ。…まいったな、また煙草値上がりしたってのに。喫煙者にゃ厳しい世情だねェ…」
しゅぼ、と最後の一本に火を付けて煙を肺に吸い込み、ゆっくりと紫煙を吐き出す。
三人に頼んだ仕事が成功すれば表社会に太いパイプが出来て、今でも大きすぎるほど大きい男の影響力は更に広がる。
それはもはや、この街を裏と表から牛耳っているのに等しくもあるような。
「……ボス、目指しちゃおっかなァ……」
また紫煙が吐き出された。男の考え事は…その一本が吸い終わる頃には決まるだろう。



「サーモンサンドとアールグレイのセット、入りました。アマレットさんお願いしますね」
シスター喫茶『クルトゥーラ』の厨房に声がかかる。定番のセットの一つの注文だ。
「はーい!セット頂きました!ちょっとお待ちくださーい!」
忙しなく厨房を行きかいながら返事をする。その間にもこの間入った新人の子に紅茶の淹れ方の指導をする。
お昼時の忙しい時間帯。注文は飛ぶように舞い込んで、自らの任された厨房という戦場で機関銃のように料理を作り出す。
「ふふ、今日もお客さんがいっぱいです。この大量に集った視線…心躍りますね。
 今日はちょっと派手にラメ入りぱんつを履いてみたんですよ、目立ちますしこれなら注目間違いなし」
「ああ…だからですかティアナさんからの注文が多いのは……。それはいいんですけど注文間違えないでくださいね?」
「大丈夫ですよ、この前は聖水プレイだかをご注文のお初のお客様がいらっしゃいましたが、
 きちんと聖水を頭からかけてあげましたから。…あのお客さん、すごく喜んでましたね。うちじゃタダみたいなものなのに」
不思議そうに首をかしげる彼女に苦笑で答える。そのお客は期待とは裏腹に随分と清められて帰っていっただろう。
元より清楚な色気を持ち合わせていたのに更に大人びた色気を備えた近頃のティアナさんは同じ女性の私から見ても相当に魅力的だ。
このクルトゥーラの事やティアナさんのことをよく知らなければそういう邪念で来店し声をかける気持ちも分からないでもない。
「ちょっと……またボクナンパされたんだけド…あいつら目が腐ってるのネ?あ、ダージリン入ったヨ」
「あらあら、風紀が少々乱れてますね。これはよろしくありません。一応ここ、神の家の一部ですし」
そんな事を一番風紀を乱してる人が朗らかに言う。割と長い付き合いになってるけど、ティアナさんの考えは未だに掴みきれてない所がある。
背が伸びたジェンは私から見れば結構男の子っぽくなってると思うんだけど、中性的な顔つきはまだまだ残っているので、
ジェン用に肌を出さずに、なおかつ可愛らしく、それでいて清楚さを感じられるようにアレンジされたシスター服を着ていると
勘違いする人は多い。大体のお客さんはやっぱりティアナさんに目を取られるのだが、それでも彼女の奇抜な服装に慣れると
他にも目が行くということのようだ。そういう意味では、ある種他のジャンルになっている所はある。
「あん?聖水割りおかわり?駄目だ駄目だ、真っ昼間のこの時間からそんなに呑んでんじゃねぇよ!俺だって控えてんのによ!」
カウンターにも設けられた調理スペースに陣取って、若干他とは客層が違うお客さんを相手しているダニエルさんが言う。
一応ちゃんとシスター服は着ているものの、やってることはほぼバーテンだ。相手をしているのも昼間からお酒を呑んでるような人ばかり。
酒飲みこそ酒を知る、ということなのかダニエルさんの作るお酒は結構評判が良く、昼間の今こそ客は少ないが夜になると
お酒を呑みにくるようなお客が多くなる。そうなるとティアナさんの無防備なお尻に手を出そうとしたりとかするお客さんも居て
そんな時はカウンターを乗り越えてダニエルさんが拳を出したり酷い時には模擬弾を撃ったりしてお仕置きする。
なので呑みの方の常連客の間での合言葉は"酒飲みシスターにすね毛を出させるな"
……そうやって暴れるダニエルさんのスカートから処理してない毛が見える事にげんなりしたお客さんが言い出したらしい。なんともはや。
「ん、サーモンサンドとアールグレイ!あがりました!」
「はい、確かに。もう少しすればランチの時間も終わりです。あと一息ですよ」
そんなこんなで近くの港から直送のサーモンと、聖水を使って育てられた野菜を挟んだサンドが
出来上がったので、紅茶を淹れてティアナさんに渡す。彼女はそれを受け取りホールへと戻っていく。
目にも眩しいお尻と太ももをいつのものように惜しげもなく大公開したまま。
…もう見慣れたけど、よくこの店衛生法とか風俗法に引っかかってないなとか思う。
「っと、ダージリンだっけ?今すぐ淹れるね、まってね!」
ぼんやり考えてる暇は無い。ひとまずはあと15分を乗り切らなければ。
お腹を空かせたお客さんが待っているのだ。



「はぁーーー、疲れたー…ただいまー…」
遅めの夕刻。そろそろ陽が落ちる時間帯。どやどやっと、私とダニエルさんとジェンが古ぼけたビルへと帰ってくる。
以前は事務所だったそこは、今は別の調度品が備えられ、ロビーにへと変わっている。
そこに備え付けられたテーブルと、椅子。その椅子に座っていた病的を越えて陶器に近いほどの白い肌に、
薄紫色のボリュームのある髪、そしてあの彼女とは違う赤い瞳を眠そうに閉じかけている少女が、は、と私達に気づく。
「おー……お帰りみんなー……カカラちゃんもう少しで二度寝しちゃうところだったわー……」
瞼をこすりこすり、むにゃむにゃとパジャマ姿で言う少女。少し前にいつものようにキカラさんに病院に焼き肉を奢りに行ったダニエルさんが、
『なんか押し付けられた…』といきなり連れて帰ってきたキカラさんの分身、カカラちゃんだ。
最初はダニエルさんがキカラさんを攫ってきたのか、と驚いたがどうにも聞く所によれば魔王になったマートさんの力で
カカラちゃん以外にもキカラさんが増えて、カカラちゃんはその一人…ということ、らしい。理解に苦しむ。
とはいえ、実際、殆どカカラちゃんはキカラさんと一緒の見た目だったけど、最近はマシになってきたとはいえ病的に色が白い
キカラさんよりも肌白く、彼女の瞳と違う色の赤い瞳を持っていて、そして、
「うへへへ……それじゃおはようのカカラちゃんにご飯がほしいなー…おなかぺっこぺこでさー…」
ごめんねー、と謝りながら袖をまくり、腕を差し出しカカラちゃんの口元へ持っていく。私の細い腕を少しの間ぼーっと見ていたが
直にカカラちゃんは口を空けてかぷ、と腕に噛み付く。
「んっ……あっ……」
ちくりとした痛み。注射器よりは痛く、包丁を扱い間違い刺してしまった時よりは全然痛くない痛みが走る。
そしてちゅうちゅう、とこちらが痛くないように気を使って優しくカカラちゃんが血を吸っている。
そう、彼女は吸血鬼のキカラさん。有名な吸血鬼カーミラに因んでカカラちゃんと呼んでいる、正真正銘の吸血鬼だ。
「ぷはっ…ありがとねー。輸血パックも飲んでたんだけどそれだけだと力が出なくてさー」
口元から私の血がつう、と一筋垂れている。まだ眠気が抜けきらないのだろう、それを苦笑して拭いてやる。
そしてジェンも傷だらけの二の腕まで袖をまくり、差し出し、同じ様に彼女に血を与える。
「……ジェンくんの血はちょっと甘い気がするなー。お菓子食べ過ぎじゃない?血糖値荒ぶりすぎじゃない?」
「余計なお世話ネ。…うちだけじゃなくマートにも色々食べさせてもらってるからかネー…なんでもお取り寄せするシ…
 まさか部屋に居ながらにして世界一周お菓子の旅が出来るとハ、このジェンの目を持ってしてモ…!」
控えねば、みたいな顔して袖を戻すジェン。彼女が来た最初は露骨に嫌そうな顔をしていたものの、
肌を見せても構わないというくらいには気を許したようだ。そうしてダニエルさんの腕にもかぷり、と噛み付き、
「おっちゃんの血は相変わらず不味いな!!ってお酒控えるんじゃなかったのかー!アルコールの味するぞ!」
「うっせぇ!デカい仕事片付いた後なんだからそん時くらい飲んでもいいだろ!」
大分血を吸ったのと、時間的に遅くなってきたので元気になるカカラちゃん。
彼女が来て、だいたい皆で傷が消える頃に血をあげるローテーションが始まったその時から、カカラちゃんは
ダニエルさんの血が不味い不味いとずっと言っている。でもカカラちゃんがダニエルさんの番を飛ばしたことは一回も無く、
そんなに不味いならとダニエルさんが輸血パックで済ませようとすると拒否した。なんでだろう。
「こうやってちゃんと定期的にチェックしないとおっちゃん隠れて酒飲むからなー!健康になるだの言ってただろー?
 それなら一足先に健康になっちゃったカカラちゃんが先達として見とかないけませんわー!!」
「え、なにそのパイセン面。つってもお前キカラと同い年じゃねーか!っつーか厳密にはゼロ歳じゃねーか!
 そんな赤ん坊に偉そうな面されっほど俺ぁ落ちぶれてないんですけぉーー?ばぶばぶー?」
「そ、そういうとこだぞおっちゃん!!カカラちゃんの真心を無碍にするとは…アラフォー死すべし!天誅ー!!」
「ぎゃーーー!?」
あ、ダニエルさんが死んだ。思いっきり血を吸われてちょっとしなびてるけどお酒飲んどけば大丈夫だろう。たぶん。
「ふっ…また虚しい勝利だった…敗北を知りたい。敗北の味ってなんだ。ビターチョコレート味か」
などとカカラちゃんが勝ち誇りつつ仁王立ちをしていれば、ふと気付いたように|
「あ、今度はみんなどんなお仕事してきたん?ビックリドッキリ大冒険?」
その赤い瞳を好奇心いっぱいにして聞いてきた。吸血鬼となり健康?になって、ベッドに縛られることはなくなった
彼女だけども、その代わり日の光には弱くなってしまったし、食事も主に血と制限がついてしまった。
誰にも止められることはなくなったし、食べ物も元から制限されてたしと彼女は笑っていたが、
そんな彼女の好奇心だけでもと満たしてあげられるよう、こうして仕事の話などは良くしてた。
「………でね、すっごい細かい所まで見れるカメラ越しに、贋作の絵を見破ったりとかしてー」
「マジでかアマレットちゃんパないねー!あー私も何か仕事したいなー!今の私に向いてるような夜のお仕事!
 …待って待って今の無し!響きが悪い!それになーカカラちゃんが夜の衣装を身に纏ったら皆を魅了しちゃうしなーー!」
「没有」「ないわ」
「ゲフゥ!!」
「あ!カカラちゃんまた血吐いた!!お、落ち着いて落ち着いてね、ハローさんに今度何か仕事貰ってきて
 カカラちゃんに合うようなお仕事探してくるからね、最初は簡単なやつからー、慣れてきたら私達と一緒にお仕事しよ、ね?」
慌ててタオルを持ってきてカカラちゃんが自分のパジャマにぶち撒けてしまった血を拭こうとする。
カカラちゃんは皆に貰った血がもったいないってパジャマからちゅーちゅー吸ってたけど止めておいた。また吸えばいいのだと。
「オイ大丈夫かカカラよ。お前さん明日ガアラとジェロームん所のガラガラ組だかでキカラ定例会とかに行くんじゃねぇっけ?」
「いっけね!そういやそうだったわー!元気ちょっとは残しとかないとな!!」
「それじゃとりあえずカカラちゃんの部屋行って着替えようっか。
 ふふふふふ…カカラちゃんに似合うと思って買っておいた服があるんだぁ……」
ねっとり笑う。カカラちゃん微妙な笑み浮かべる。私がっつり肩を掴む。逃さないよ?
「アマレットもアマレットで銀河のトコでケーネ呼んデ第何回だかの良い女とは会議するんじゃなかったッケ?」
とジェンが聞いてくる。が、それには自信有り気な微笑みを返す。
「……ふふーん、もうその会議、私には必要なくなりそうだからねー」
そう、それはつまりそういうことで。
「はぁ!?初めて聞いたぞそれ!!おい何処の馬の骨だ!下手な骨だったらぶち折ってやる!」
「フフ…おめでト。そこの飲んだくれは黙るネ。うるさいネ」
ジェンが気を利かせて?ダニエルさんを鉄ハリセンで沈めておいてくれた。
「あははっ、今は秘密です」
桜色のルージュを引いた唇に指をあて、内緒のポーズでその場を納め、ロビーからカカラちゃんを部屋に連れて行く。
階段を登る途中、途中の窓で夕日が完全に沈んだのが見えた。今日が終わりの準備を始めるのだ。
そうしてしばらくすれば、明日が始まり、朝が来る。今まで来たように、明日も、明後日も同じ様に、いつだって。
今日みたいな騒ぎが始まっては終わり、また始まるのだろう。それを思い、微笑みを漏らし階段を上がる。
さあ、昨日は終わった、明日への準備を始めよう、今を楽しむための準備を。

陽はまた登り繰り返していくのだから。






+  『アンダーワークSS』

Last-modified: 2018-12-22 Sat 23:16:22 JST (1082d)