アースス・アースン/79753
冒険日誌 †
黄金歴91年11月 †
これは、僕のこの街に来てからの冒険の記録だ
師匠もつけていたというので、読み書きの練習も兼ねて綴って行くことにした
今回はこの酒場に来て初めての仕事
と言っても、ここまで来る旅の途中何度か簡単な仕事を紹介して貰っていたので、実質的には三回目なのだけど
出発前に前回の仕事で手に入れたモーニングスターを装備
本当は使い慣れた槍が良かったのだけど、師匠に『ヒヨっ子が選り好みするんじゃない!』と怒られてしまった
僕のアイデンティティが…
遭遇した相手は大蝙蝠×1、コボルド×2、コボルドリーダー
経験を積んだ冒険者なら一蹴できるのだろうが、駆け出しの自分にはまだまだ油断は出来ない敵だ
結局依頼は無事成功 途中罠で重傷を負ったのが痛かったけど、まあまあ良い仕事が出来たんじゃないかな
いつか師匠を超える剣士になれる日が来るまでは、この街で生き抜いていこうと思う
黄金歴91年12月 †
今回の相手はゴブリン×3、オーカゼリー×1、狼×1、ゴブリンチーフ
中々の激戦でした
お陰で能力値はトータル35の成長 師匠も「駆け出しはよく伸びるもんだねえ」と感心してましたよ
たしかに、力こぶが少し大きくなった気がするなあ 自惚れですか?
おまけで『質の悪いハンドアックス』も拾っちゃいましたけど、今使ってるメイスの方が威力があるみたいなので~/これは申し訳無いけど、薪割りの時にでも使わせて貰う事にします
師匠は質の悪い槍で何年間も頑張ってたらしいので、それに比べると僕は随分恵まれてるなあ
…え、お使いですか?師匠自分で行ってきて下さいよ
これも修行って、そう言って自分が楽したいだけじゃないですか これ以上怠けると豚になりますよ
もう、いい加減歳なんだし あいたっ!!
黄金歴92年1月 †
新年あけましておめでとう御座います
こっちの冬は寒いですね
僕の故郷は一年中暖かい土地だったので、雪なんて生まれて初めて見ましたよ!
雪だるま作りました 次の日酔っ払いに蹴り壊されてましたけど…
さて、新年最初の仕事は下っ端狼×1とゴブリンチーフ
特に大した罠もなく楽な仕事でしたね
細く長くが僕の信条なので、今年も焦らずマイペースでいきますよ
どうぞ宜しくお願いします!
え、屋根の雪掻きですか? これも体力作りねえ…
いや、行きます!すぐ行きます!
黄金歴92年2月 †
先日はマーダルさんに失礼なことをしてしまいました
自分の未熟さを指摘された気がして、もの凄く恥ずかしくなってしまったのです
やっぱり僕はまだまだ子供だなあ…
さて、今回の敵はオーカゼリー、狼、下っ端ゴブリン、ゴブリンチーフ
いつも通りの相手ですね、勿論依頼は無事成功
最近は駆け出しにもサソリやらワイバーンやら、とんでもない相手が出てくる事があると聞いていたので
ちょっと心配していたのですけど、今のとこは分相応な敵ばかりと言う感じなので一安心です
ところで、今まで半年近く冒険者をやっているのですけど、一度もここの方と組んだ事が無いのがなんだか寂しいですね
次回にはゴッ君?と同じベルモンド家の方らしい名前があったのですけど
名簿には居られないようでした
一体あと何人兄弟が居るんでしょうね…
黄金歴92年3月 †
今回は大爆発×1、下っ端ゴブリン、オーカゼリー、ゴブリンリーダー
順当な仕事でしたね
少しずつ地力が付いてきてるとは思うのですけど、まだまだ油断は大敵
気を引き締めて行きますよ
ところで今日、師匠のお知り合いで、この酒場最強と謳われていた冒険者の方が亡くなられたそうです
残念ながら、僕は直接面識はありませんでしたが、偉大な戦士の魂に冥福を捧げさせて頂きます
黄金歴92年4月 †
段々春めいて来ましたね、寒がりの僕には有り難いことですよ
今回の相手は下っ端オークにオークリーダー 段々依頼が簡単になってきた気がします…
ありふれた指輪を貰っちゃいましたけど、僕は魔法使いを目指すつもりもありませんしね
小箱にしまって冒険の記念にでもしましょう
黄金歴92年5月 †
今回の相手は大蝙蝠×2とゾンビチーフ
初のアンデッド退治でした
その辺のレベルの敵なら、なんとか僕でもこなせるようです
だけど、なんだか情熱が微妙な下降線を描いているのが気になりますね
実は心の中では命懸けの戦いを欲っしてるってことなのでしょうか
黄金歴92年6月 †
今回は狼×1、オークチーフ 油断大敵とはいえ、流石に手応えのない仕事でしたね
おまけで質の悪いクロスボウも手に入れました
そういえば、いつの間にか情熱が500台にまで下がっていました
このペースだと、あと一年と経たず引退してしまいそうな気がしますね…
黄金歴92年7月 †
今回は下っ端オーク×2とオークリーダー
順当に依頼も成功
今回で『一人前』の称号を貰いましたよ!
でも、僕自身はとても自分を一人前とは思えないなあ…
しばらくは半人前のままにしておこうっと
黄金歴92年8月 †
今回はオーカゼリー、コボルド、コボルドチーフ
いつも通りに順当に成功でした
ですが、次は初めての巨大生物討伐 多くの冒険者が倒れてきた最初の難関ですね
今の僕の力でそれを乗り越えられるのかは判りませんけど
例えここで倒れたとしても
悔いの残らない戦いをしようと思います!
…いや、内心は勿論恐いんですけどね
黄金歴92年9月 †
そういえば今回で丁度冒険者生活一年目だったようです
さり気なく16歳になりました
師匠と出会ったあの日から、もうそんなに経ってたんですね
時間が流れるのも早いモノだなあ…
さて、とうとう初めての巨大生物依頼
気を張って森の中に足を踏み入れたのは良かったのですけど
討伐対象にに辿り着く前に、2度目に出てきた手練れのインプに仲間がやられて
敗走しちゃいました
なんという圧倒的な実力差…
もし最奥まで辿り着けたのだとしたら、一体何が出てきたんでしょうね
師匠が言うには、恐らくトカゲかサソリじゃないかと…勝てるわけないじゃないですか!
先に倒れた仲間には申し訳ない所ですけど、僕はまだここで死ぬわけには行かないんです
もっと強く…師匠を超えるような剣士になるまではね!
それに、まだ恋だってしたことないのに…(ブツブツ
ともあれ、また修行のやり直しです
まずは雑巾がけから始めますか!
あれから酒場で聞いたのですが、僕に剣士としての生き様を見せてくれたジェーンさんが亡くなられたそうです…
相手はワイバーン、何人もの歴戦の冒険者を屠ってきた怪物ですね
今の僕の実力じゃ、とても仇討ちなんてできませんけど
いつかきっと一人前の冒険者になって、あの怪物を仕留めてみせますよ!
それまでどうか、天国から見守っていて下さいね
黄金歴92年10月 †
コーラサワーさんのお墓に師匠と一緒に参ってきました
あんなに強い方が亡くなられるなんて、僕にはとても信じられませんでしたけど
現実にお墓を前にすると、なんとも言えない気分になってきましたね…
その後、師匠の家で酌の相手をした後に僕は宿へ帰ったのですけど
多分、師匠は一人で泣いたのだと思います
それを見た訳ではありませんし、今まで泣いた事なんて無い人でしたが
きっとそうなのだと思います
僕はコーラサワーさんの期待に応えられるような人間では無いかも知れません
それでも、コーラサワーさんや、ジェーンさんや、数多くの先達達の夢を引き継いで
追い続ける覚悟は出来ています
ですから、どうぞ安心してお休みください
本当におつかれさまでした!
黄金歴92年11月 †
もうすっかり秋ですね
また寒い冬がやってくるのかと思うと、今からちょっと憂鬱です…
さて、今回の相手はコボルド×2とコボルドキャプテン
楽な依頼でしたけど、情熱が200近くも下がっちゃいました
…すみませんコーラサワーさん、あなたとの約束を守るどころか引退しちゃうかも知れません
実はあんまり向いてないのかなー…冒険者
それから、僕が時々お世話になっていたマーダルさんがこの街から旅立っていかれました
なんだか飄々とした人で、最初はちょっと苦手でしたけど
色んな事を勉強させて貰えた気がします
どうか、お元気で!
黄金歴92年12月 †
今回の相手は大蝙蝠とボス狼
このところの手応えのない依頼続きで、とうとう情熱が200台まで下がってしまいました
そろそろ真剣に引退した後のこと考えた方が良さそうですね
師匠のようにバニーってわけにも行かないでしょうし
そうなったら故郷へ帰って漁師になろうかな
このへ来て一年以上になりますけど、子供の頃から耳になれてた波の音が
ここでは全く聞こえないってのが、時々無性に寂しくなるんですよね…
さて、今日はクリスマス
今年も一緒に過ごす相手なんて居ませんからね、今年も師匠と二人で過ごしますよ
いえ、別に悲しくなんかないですよ 全然……
黄金歴93年1月 †
先月で友人のゴッ君?が引退しました
万が一にも友達のお墓参りなんて行きたくないですからね
きっとこれが一番善かったんじゃないかなあ
そして僕の今月の相手は大鼠とゴブリンチーフ
…これって、初めての冒険より簡単な依頼だったんですけど……
お陰でとうとう僕の情熱も2ケタ台に!
来月でほぼ引退間違い無しだろうなあ
毎朝起こしに来てくれるナンダローさんにも申し訳ないっ
最後の悪あがきに指輪でも装備していこうかな?
黄金歴93年2月 †
今回の読みは僕の勝ちと言ったところでしょうか
出てきた敵はコボルド×1にコボルドチーフ
通常装備なら即引退でしたでしょうけど、最弱武器の指輪を填めていったので
情熱は減少したもののギリギリ踏みとどまって残40
更におまけで『あれふれた盾』を貰っちゃいました
まさしく首の皮一枚って感じですけど、なんとか望みは繋ぎましたよ!
さて、お次は情報信頼度◎◎◎の人型討伐
この確度だと意外な強敵が出ることもありますので、流石に指輪は無いですね
とは言え、いつも通りの出目では引退間違い無し
うーむ、難しいところです…
黄金歴93年3月 †
とうとうこの時が来てしまいました
今回の相手は下っ端コボルド×2にコイボルドリーダー
デビュー戦レベルの相手でしたね…
依頼の難度が高めに出れば次に望みも繋げたのですけど、結果は逆に出てしまったみたいです
こればかりは仕様のない事ですね
これにて、僕の冒険者としての人生は終わります
この酒場に来て一年半、ほんの短い間でしたが、とてもよい勉強が出来ました
多くの仲間にも恵まれましたし、楽しい思い出も沢山刻むことが出来ました
先に逝かれた方との約束を果たせなかった事だけは、僕の唯一の心残りですけど、それでも、
僕は胸を張って新しい人生に進んでいけると思います
皆さん、今までありがとう御座いました!
黄金歴93年6月 †
眉「さっき酒場で、次は女の子の弟子を取ってくれって言われたよ」
凸「良いじゃないですか 僕も責任のある先輩として、後輩の面倒はきちんと見ますよ!
可愛い子だったら嬉しいなあ♪」
眉「二人も弟子なんか置いておける訳ないじゃないか そしたらあんた、今すぐ田舎に帰るんだよ」
凸「……」
眉「そうだ、良い考えがあるよ! あんた女装して現役復帰しな
今のままじゃあどうせ地味だし、丁度良いテコ入れじゃないか♪」
凸「そんなテコ入れ、全然嬉しくないですよっ!!!」
黄金歴93年7月 †
眉「……あんた、最近調子に乗ってるだろう」
凸「え、別に調子になんて乗ってませんよ? クニクニ(かぼちゃのパイを皮で包みながら)」
眉「それが調子に乗ってるっていうんだよ 師匠に逆らうんじゃないっ!(パシーン!)」
凸「あ痛っっ! いきなりおでこを叩かないで下さいよっ!」
眉「もう良いよ フンッ!!(肩を怒らせながらドシンドシンと大股歩きに立ち去っていく)」
凸「…???」
黄金歴93年8月 †
眉「どうだい、綺麗に落ちたかい?」
凸「いえ…やっぱり染みになっちゃいますね しかしこれだけの血が流れたなんて、もしかして相手の人は死んでるんじゃ…」
眉「死んじゃあいないよ 今日も元気で依頼に出てたし」
凸「さいですか」
眉「しかし、まったく良い迷惑だよ 変な奴に絡まれて、したくもない喧嘩で殺しかけるなんざ……」
凸「そんな事言ってノリノリだったでしょ 師匠基本暴力人間だから」
眉「あんたこそ初心な顔して鼻の下伸ばしてやらしいよ、このエロ餓鬼」
凸「そりゃ、僕だって健全な男子ですし、あんな風に迫られたら……ブツブツ」
眉「うるさいよ(スパーン!)」
凸「あ痛たっっ!」
黄金歴93年9月 †
今日から冒険の荒野へと戻ることに決めました
(出発前にバレちゃいましたけど…)
これは僕が自分なりに考えて出した結論なので、誰に何かを言われたて事ではありません
理由は色々ありますけれど、やはり夢を諦めきれないというのが一番ですね
一度は戦士として生きた身です、やっぱり自分の限界を確かめてみたいじゃないですか!
別にバニー仕事から逃げるためって訳じゃないですよ、本当に!
ちなみに復帰がこの日になったのは、僕の初めての冒険に合わせてです
あの日からもう2年になるんだなあ…
さて、その復帰初回の仕事でしたが、大鼠×5にゴブリンチーフ
初回はいつも戦闘回が数多めですね
勿論無事に依頼達成して、質の悪い護符を手に入れましたけど
前回の反省を生かして、装備するのはすこし様子を見てからにしましょう
それでは、これからあらためて宜しくお願いします!
ええと、それから僕がフォローするのも何なんですけど
最近の師匠は情緒不安定気味のようですね
まあ、元々僕と違って捻くれた性格の人格破綻者ですから
嬉しいときに怒ったり、悲しいときに笑ったりと、なんとも情動が掴みにくくはあるのですけど
もし何か失礼があったら僕から謝っておきます
どうも済みません……
黄金歴93年10月 †
さて、復帰二度目の依頼です
今回の相手はゾンビリーダー、結構な戦いだった気がするんですけど
それでも情熱が減っちゃったのは
やはり前言撤回して護符を装備していったからでしょうか…いや、やっぱり命のほうが大事だなーっと…
今回は半妖ルルーシュ?さんと同行する事が出来ました
前回は一年半やって一度もここの方と御一緒する機会が無かったんですから、ある意味幸先いいですねえ!
黒の騎士団?ですか…格好良いじゃないですか
僕も参加してみたいなー…って、僕は肌が黒いだけですけどね…
それから今月、グレンさんさんがお亡くなりになりました
僕が復帰の挨拶に行った直後でしたので何とも…
どうか、安らかにお眠り下さい
黄金歴93年12月 †
復帰して以来やたらとゾンビづいてる僕なのです
はふー
取り敢ず依頼の方は可もなく不可もなく
次回は一万番台の方と御一緒ですか、思えば遠くへ来たものだ……って、僕には感慨とか別にない筈ですけどね
そして今月はクリスマス
さて、何でお祝いしますかね!
あと、通りすがりの方からポスター貰ったので取り敢ず飾っておきましょうか
しかし、ゴッ君は何処へ行こうとしてるんだろう
黄金歴94年1月 †
あけましておめでとうございます!
今年最初の相手はオークリーダー
というか、途中に罠が4つも仕掛けられてまして、そのうち3つは解除できたから良かったものの
全部引っかかってたらオーク相手とはいえ危なかったかも…
おまけで杖を貰いましたけど、使えませんね
今回は武器運があまり良くないなあ
一年経っても良い得物が手に入らなかったら、ニッパーさんの初期装備同盟にでも入ろうかな?
黄金歴94年2月 †
今回は久々に充実した戦いでしたね……って言っても、相手はやっぱりゴブリンですけど
これが僕の実力なのでしょうか…
ほぼ同時期に冒険者登録したクソ・ダットカフェさんのお嬢さん?のように
いきなりトカゲとか出てきてもそりゃ食べられちゃいますけどね……
早く、強くなりたいな…
黄金歴94年4月 †
えー、例の巨大生物でしたけど、結局のところ巨大蟻でした
なんという……おっかながって損しちゃいましたよ
ですが、情熱は冒険開始以来初めての3ケタ回復!
とうとう情熱微減の引退ループからは脱したようですね
師匠が居ない生活にもだんだん慣れてきましたけど、やっぱり心細いなあ……
なんて、いい歳した男が言ってらんないんですけどね!
今回の相手はオークでした
結局情熱が100以上下がって、前回稼いだ分が吹っ飛んじゃいましたよ、トホホ……
さて、昨日はボル・テッカさんと、実践形式の戦闘訓練をしました
中々師匠のように、武器を自在に使いこなすレベルまでには行けませんね
もちろん結果は完敗でした
思い切り背中を打ち付けちゃって、未だに痛みが引きませんよ
受け身の練習もしなきゃなあ
所で、最近ファイターズ・ストリート?という施設が出来たので、時々覗きに行くのですけど
いや、戦闘スタイルも人それぞれですね
武器、能力、戦法など、出てくる人ごとに多種多用!驚かされる事ばかりですよ
傭兵部隊の演習場?も、そのうち試合に使われるとか
たしかにあそこなら、どれだけ暴れても誰にも迷惑かかりませんからね!
黄金歴95年1月 †
明けましておめでとうございます
あれから人型ばかり相手にしていたせいか、情熱もどんどん下がっていって
いつのまにやら300台!
うーん、これはマズイですねえ…
取り敢えずは前回同様、最弱武器に装備を変えて様子を見ようと思います
適正装備とか言ってる場合じゃないですよっ!
黄金歴95年10月 †
故郷を旅立ち、英雄となる夢を追った少年は
一度は手に入れた平穏を捨てて、再び冒険の荒野へと戻り
そして死んだ
彼にとってそれが幸福であったのか、不幸であったのか
あたしはその判断をしようとは思わない
人生の価値とは、その当人以外が決められるものではないからだ
でも、望みうるのなら、あたしはもう少しこの幸福な師弟関係を続けていたかったよ!!!
…あんたの小言も、甘ったるい焼き菓子も、もう二度と見ることはないのかと思うとあたしは寂しい
きっとあんたは「僕のために泣く必要なんてないんですよ!」と、笑って応えるのだろうね
ありがとう…済まない あたしは駄目な師匠だった
槍術中級者・アースス・アースン ID:99010
──黄金暦95年 10月、巨大な怪物討伐依頼にて死亡──
そして、実際には記されない追記
………うーん、なんとも師匠らしいお節介ですねえ
自分の人生の幕引きくらいは、自分でやらせて下さいよっ!…と言ったところでしょうか
はい、ここで僕の物語はお仕舞いです
これは、実際には語られざる言葉 風のうねりや葉擦れの音に紛れ込んだ死者の呟き
魂魄が地上を離れる僅かな間に許された、ほんのささやかな別れの挨拶
ですから、本当は皆さんには聞こえません
僕の人生は幸福でした
ええ、勿論ですとも!
師匠は勝手に自分を責めてますが、そんなことは無いのです だって僕が自ら選び、自ら進んだ道なのですから
もしも最初に引退したときに、そのまま平穏の人生を選んでいたとしたら、僕は故郷へ戻って魚を獲って暮らしたでしょう
もしかしたら、妻を娶り子を産み育て、満ち足りた老後を送ったかも知れません
でも、それはあくまで『もしか』の話
そうならなかったかも知れないし、それに、その後のここでの皆さんとの出会いや交流も無かったでしょう
ですから、誰も僕のために悲しまないで下さいね? だって、そんな必要はないんですから!
……それでは、短い間でしたが、僕の人生に物語に関わってくれた全ての皆さんに感謝します
僕はこれから、先に行った両親や妹の元へと会いに行きます
向こうに着いたら『何でこんなに早く来たんだ!』なんて、怒られちゃうかも知れませんね!
僕の墓に見舞ってくれた皆さんには、ちゃんと言葉は返せませんが、心から感謝しております
それでは改めて………ありがとう御座いました!!!
(やがてその囁き声は、雪を巻き上げる突風にかき消され、最後には何も聞こえなくなった)