施設/コロッセオ

  • Life or death
    • 第一試合
  • Life or death
    • 第一試合
      • (コロッセオにおいて血が流れぬ日はない。骨が折れぬ日はない。肉が裂かれぬ日はない)
        (毎日が殺戮であり、野蛮であり、勝利があり、敗北があり、死者がおり、生者がいた)
        (もはやそれは因果であった。コロッセオという一つの巨大な舞台装置がそうさせるのだ。この蛮性そのものが一種の結界と言ってもいい)
        (勝者はいずれ敗者となる。敗北が勝者を生かし、新たな勝利を輝かせる。まさしくそれこそ生死の輪廻、自然の根底に流れる混沌たる法則)
        (それが、ねじ曲げられた)
        -- 2011-12-26 (月) 19:08:12
      • ……なるほどなあ(錆び錆びの両手斧を握る手に、更なる力が籠もる。怒り。バーバリアンの力の源、原始の怒りである)
        (目前には敵影。だがそれはこの上ないほど形容しがたく、邪悪で、ネジ曲がっている。すでに嘔吐する観客も出ていた。殺戮を愛する屑どもでさえ、だ)
        (オークは苦戦を強いられていた。吐き気がこみ上げる、だがこれは嫌悪ではない。怒りだ。原始の怒りが、精霊たちの怒りが彼を唾棄させていた)
        (今回の試合はいわゆる昇格試合に当たるという。それまで昇格に十分なオークをして、あえて試合を設けるという時点で、虫の知らせのようなものはあった)
        (その相手として現れたのが「これ」だ。オークは驚いた、そして怒った。なぜならば、眼前にあるものこそ、己が倒すべき異形存在にほかならないからだ)
        -- カブギ? 2011-12-26 (月) 19:17:53
      • (「それ」とは何か? 刮目せよ! それこそはおぞましき異形の存在、およそ定命の存在では理解し得ぬ狂気の外宇宙、"彼方の領域"より来るもの)
        (その身体は長虫のようにぶよぶよとした皮膚に覆われ、あるべき場所には眼窩さえも存在しない。胴体から生え伸びた名状しがたい触手が、忌まわしいほどに這いまわる)
        (牙まみれの口からは一体なんの作用をもたらすのかさえわからぬ粘液が垂れ流され、時折キイキイと耳障りな鳴き声を漏らすも言語らしいものは発さない)
        (それの名は? 汝の名はなんぞや? この場にいるもので、それがわかるのはカブギともう一体の者のみだった。そいつの名はバルハノス!)
        (外世界から来たりて、地底世界アンダーダークに蔓延るおぞましきもの、存在自体がこの世界のへ挑戦である異形クリーチャーだ!)
        (何よりも恐るべきは、バルハノスの力にある。醜悪な外見にふさわしく、バルハノスはただ在るだけでこの正気世界の現実を歪めてしまうのだ)
        (激昂するオークの眼前から巨体が姿を消した! 世界の狭間を這い進む、理解さえしえない瞬間移動である!)
        -- 2011-12-26 (月) 19:23:49
      • チィッ!!(舌打ち。そして周囲を警戒する。バルハノスが瞬間移動した時、はたしてどこに現れるかはわからないのだ)
        (あるいは魔術師なら、あるいは狂気に智慧を持つ者なら、あるいは天性の閃きを持つ者なら察知できるかもしれない)
        (だがオークにはいずれもない。あるのはただ、この世界そのものに漫然と挑戦を叩きつける異形に対する怒りのみ)
        (オークの奉じる原始信仰において、明らかな敵とされる存在はおおよそ4つに分けられる)
        (一つ。生死の輪廻を逸脱し、悪意をもって生者を己の同胞と引きずり込む不浄なるアンデッド)
        (一つ。この世界を邪悪と混沌によって破壊し、原初のエントロピーへと退廃させんとする忌まわしきデーモン)
        (一つ。文明の名の下、自分たちのゆりかごたる自然の恩恵を忘れ、ただひたすらに世界を切り開く極端な文明主義者)
        (そして最後。外世界より来たりて、この世界そのものをねじ曲げようとする異形存在! バルハノスはまさしくそれに合致する)
        (全高15フィートの巨体はどこに消えた? 世界の狭間だ。己の来たりた外世界と"この世界"の狭間、バルハノスはそこを這う)
        出てきやがれクソ長虫が! 精霊どもにかけてぶった切ってやる!!
        (口角泡を飛ばして威嚇するオーク。それを覆う影……背後だ!)来やがったなァ!
        Waaaagh!!(グァーグ!!) (咆哮!振り向きざまに斧を横向きに薙ぎ払う! はたしてその一撃、異形を切り裂く嚆矢となるか!?)
        -- カブギ? 2011-12-26 (月) 19:32:28
      • (だが斧は届かなかった。空振ったのだ。わずか一寸先、バルハノスはそこに顕現していた)
        (瞬間移動の余波が空間を震わせる。オークの巨体がそれだけでゆらぎ、同時に五本の触手が伸びていく!)
        (バルハノスは視覚を持たない。知能も低く、決して利口とは言いがたい。おおよそ、より高い知能を持つ異形存在などに使役されるものだ)
        (そして今、バルハノスは明らかに知性を持ってオークを狙っていた。では誰が指示を出しているのか?)
        (そんなことを観客たちは気にしない。そもそも気づきさえするかどうか。いずれにせよ、触手の全てがオークを捉える)
        (反撃の斧を払い、足に絡みつき、その巨体を持ち上げた)
        -- 2011-12-26 (月) 20:32:56
      • 外したか!?(驚愕。戦いにおいて思考が中断されることはそれ自体が致命的な隙を意味する)
        (いわんや相手は異形存在。外見や本質は無論のこと、思考もまたねじくれ曲がった異界のものなのだ)
        (丸太ほどもある両足が触手に絡め取られる。これが生娘であれば、観客たちもさぞかし下卑た欲望を歓声に変えただろう)
        (だがこれは緑色の蛮族だ。さらに、今そうして蠢く異形存在の顕現そのものが観客たちに嫌悪と恐怖を与えている)
        (巨体が持ち上がる。そしてバルハノスの頭上より上、20フィートの高さまで持ち上げられ……振り下ろされた!)
        skai! kraltch!!(くそったれ!病気持ちの死体漁り野郎が!)
        (侮蔑の絶叫も虚しく、地面とオークの頭部が激突!)
        Aaaaaaaaaaaacccck!!
        (ぶばっ、と音を立てて頭から流血。さらにもう一撃。もう一撃、もう一撃、もう一撃、もう一撃!)
        (普段オークが敵に対してやる狂乱のように、ひたすらに叩きつける。叩きつける。叩きつける!)
        -- カブギ? 2011-12-26 (月) 20:47:16
      • (バルハノスの攻撃は粘着質というべきか、機械的というべきか、とにかく反復作業の極みだった)
        (一撃によってオークの頭が地面にたたきつけられるたび、苦悶の絶叫ではなく怒りの雄叫びが響く)
        (だがバルハノスは意に介さない、そもそもそんなものを意識するような、我々にとって理解しうる精神がそれには存在していない)
        (ひたすらに叩きまくり、それでも壊れないのを悟るとバルハノスはオークを壁めがけて叩きつけた!)
        (そしてぐったりと動かなくなったのを確認し、けたたましい金切り声を上げるとその場から消失)
        (現実がねじ曲げられ、消え去った瞬間、周囲の空間がぐにゃりと変質する)
        (哀れにも最前列に座っていた屑どものうち、何名かがその「歪み」の余波で絶命。何人かは痴れ狂い、何人かは気絶で済んだ)
        (戦いは、あまりにもねじ曲げられて終わってしまった。興奮ではなく、恐怖と唾棄すべき嫌悪が、コロッセオには存在していた)
        -- 2011-12-26 (月) 21:00:39
      • (壁に叩きつけられたオークはピクリとも動かない。おどろくべきことに命はまだ続いている。精神も捻くれてはいない)
        (怒り。燃え上がるような激怒があった。だが精霊の怒りに、もはやオークの身体は答えない。怒りによって湧き上がる活力さえも、身体を動かすには足らない)
        Gwwwwww……(獣の唸り声のような声を出し、消失したバルハノスを……いや、その先、VIP用の最上席を睨む)
        (そこにいた。バルハノスをこのコロッセオに表し、テレパシーによって操作していたおぞましき真の異形が)
        ……Meda、los……(ぎりり。ぎざぎざの牙を噛み締め、オークは悔しいことに意識を手放した)
        (コロッセオにやってきて。初めての、そして確定的な、敗北であった)
        -- カブギ? 2011-12-26 (月) 21:04:21
    • 第二試合
  • Life or death
    • 第一試合
      • (その日はとにかく嫌な予感がしていたのだ)
        (野生の勘だったのか、それとも…仲間が一人、戻らなかったせいか)
        (だから、試合だと声を掛けられた時 始めて少しだけ、ほんの少しだけ 逃げたいと思った)
        -- 2011-12-21 (水) 22:49:32


      • (コロッセオに立って、割れんばかりの歓声を浴びれば予感は確信に変わる)
        (観客が多すぎる、多すぎるし… なぜこんなに盛り上がっているのだ)
        (自分の立ち位置ぐらい、もう知っている。自分がコロッセオに立ったそれだけで、こんなに盛り上がる訳がない)
        (つまりこれは)

        (…優に、兎の2倍以上ある巨体、まばらに生えた体毛に鼻を突く異臭)
        (今まで何人の命を葬ってきたのか、錆びて歪んだ鉄の棒を右手に携えたトロルを見据え、理解した)
        (つまりこれは、反抗的で退屈な兎を一番盛り上がる形で処分するそのためだけの試合なのだ、と)
        -- ヒメリンゴ 2011-12-21 (水) 22:50:13
      • (それはもう、試合なんてものじゃなかった)
        (速さでは圧倒的に兎に利があったけれど、それしかなく 圧倒的だった脚力もその爪も)
        (分厚い皮膚に僅かな傷しか残すことが出来ない)
        (一度だけ、その首に自慢で必殺の蹴りを食らわせてやることは出来たものの、その巨体は僅か揺らいだだけ)
        (逆に、無理な体勢から蹴りを繰り出したせいで距離を取るのが遅れ、捕まりそうになったぐらいで)

        (それでも、相手はのろまのトロール。捕まらなければ勝機はある)
        (振り下ろされる一撃を避け、一撃一撃ささやかな傷を刻んでいく)
        -- 2011-12-21 (水) 23:05:22

      • (ああでも逃げるのにだって限界がある)
        (もともと持久戦なんて向いていない、檻の中での生活で体力だってすっかり落ちてしまっている)
        (どうせ走るのならこんな胸糞悪い場所ではなくて、いつかの、あの 仲間の居る山で)

        (…何度目かの攻撃を避けて、それで気付いてしまった)
        (懸命につけた傷のいくつかが既に、無くなっていることに。)
        (何だこいつ、再生するのか 再生、なんて難しい言葉を知っていたかと言われれば知らなかったけれど)
        (とにかくそんなふうな事を思って、ほんの一瞬だけ、足が止まった)
        -- 2011-12-21 (水) 23:16:23

      • その後からはよく覚えていない
        視界がひっくり返ったような気もするし、首が引っこ抜けたかと思うぐらい痛くなった気もする
        ただ、一層高くなった歓声と熱狂する人たちの顔だけが焼き付くように頭に残っている。

        -- 2011-12-21 (水) 23:21:01
      • ゴキン、とかそんな 聞きなれたような、聞き慣れたそれよりもっと凄いような音が自分の体が響いて
        自分の喉から出ているのか疑わしいような声が喉から漏れる

        何度目かの『ゴキン』で、もう悲鳴を上げることすら出来なくなった。
        いい加減、意識も薄れてきた頃に体が自由になる。
        -- 2011-12-21 (水) 23:27:17
      • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst076155.jpg -- 2011-12-21 (水) 23:27:28
      • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst076156.jpg -- 2011-12-21 (水) 23:27:42
      • 少しの間を置いて、背中に激しい衝撃。頭にあられの様に降ってくる瓦礫。
        壁に叩きつけられた、と気付いた。
        -- 2011-12-21 (水) 23:29:05
      • 気付いた所で既にもうどうしようもない
        体中の感覚が死んでいる。まるで自分の体のような気がしない。

        定まらない視界、耳だけは不快な音をどんどん拾う。
        笑い声、笑い声、笑い声笑い声、何がそんなにおかしい 腹は立っても体は動かない
        遠いのか近いのか、今闘うべき相手がどこに立っているのかも判断できない…けれど
        ぼんやりと映る、両手を上げて吠える姿は、観客に自分の功績を誇っているようにも見えて

        ──ああくそ、人間なんかに飼い慣らされやがって
        -- 2011-12-21 (水) 23:37:25

      • 腹が立つ
        今生きていることに腹が立つ
        殺せた筈なのに殺さず、観客にトドメをしっかり魅せるために生かされたことに腹が立つ

        開いてるんだか開いてないんだか、鉄の棒を引きずりながらこちらへ向かってくるトロールを睨みつけた。
        引きずられたんだか何があったんだか、惨めに毛は抜け落ちているけれど右足はまだ動く。
        左足は…折れているのか外れているのか
        けれど落ち着いてみればまだ、両手だって動くじゃないか

        これだけ動けば、まだ殺れる
        -- 2011-12-21 (水) 23:44:49
      • アレが直撃したらそれこそひき肉みたいになるだろうな、振り上げられた鉄の棒を目で追う
        右の爪が何度か地面を引っ掻いた。
        それから、ぐっと地面を踏み、枷の嵌められた手が地面に下ろされる。
        振り上げたそれが振り下ろされる前に、バカになった左足引きずるようにして兎が飛んだ。
        トロールの巨体に飛びつくようにして、その腹に両手の爪を食い込ませる。
        ゴムのような皮膚は、避けること無くその爪を受け止め そのお陰でずいぶん登りやすかった。
        -- 2011-12-22 (木) 00:04:20
      • トロールの左腕が、兎を捉える直前、皮膚を爪で押すようにして更にその巨体を登る
        叫び声なんだか鳴き声なんだか、良く分からない声を漏らしながら右足が肩を掴んだ。
        鉄の棒が落ちる音がする。
        引き剥がされて地面に叩きつけられるより、兎の両の手がトロールの柔い両の目を貫く方が早かった。
        足に及ばないまでも鋭く、何より封じられているせいで手入れも出来なかった爪が音を立てて眼孔へ沈む。
        響く絶叫
        大きく開いた口、すかさずに兎の右足がねじ込まれた。
        -- 2011-12-22 (木) 00:12:38
      • 足の爪が舌の根元に触れる
        てんで滅茶苦茶に空を藻掻く両手に、長い髪が掴まれて上半身が引き剥がされる。
        眼孔に埋まっていた両手が粘着質な水音と共に引きぬかれて

        しかし、舌を掴んだ足爪だけは外してなるものか、と声をあげる
        死んじまえとか殺してやるとか苦しんで死ねとかそんな呪詛の鳴き声を上げながら、ぎちぎちと奥にねじ込まれる爪。
        切り裂かれる舌と喉、流石に堪らず巨体が背中から地面に倒れた
        -- 2011-12-22 (木) 00:20:28
      • コロッセオの地面が黒い血で汚れる
        何か千切れるような音が響いて、兎の髪を掴んでいた力が緩んだ。
        ぱっくりと、まるで最初からそうであったように、そういう趣味の悪い入れ物であるかのように
        トロールの顔が、上顎と下顎で泣き分かれている。
        そしてその丁度真中に、今にも倒れそうになりながら立っている兎が一人
        肩で荒い息をして、今にも死にそうな顔で、ゆらりと体を起こし焦点の定まらない目で客席を見た
        -- 2011-12-22 (木) 00:29:45
      • 何だどいつもこいつも楽しそうな顔しやがって
        お前らみんなみんな死んじまえ
        死んだり殺したり殺されたり嬲ったり、そんなのが好きならお前らみんな死んじまえ

        叫びたい言葉は山ほどあって、しかしどれ1つとして言葉にならず
        ただ口から出たのは獣じみた咆哮だけだった
        -- 2011-12-22 (木) 00:39:13
      •  ───────────────────────────ッッ!!!!!!!
      • 咆哮は歓声に飲まれて虚しく消える。
        成る程最初聞いてた予定とは違うがこれはこれで面白いじゃないか、そんな賞賛の声を浴びながら
        ── ぐらり、と兎の体が地面に倒れた。
        おおよそ、今までで一番の賞賛と拍手を背中にうけ、ずるずると引きずられて兎がコロッセオから回収される。
        血の匂いに溢れたそこで、この後もまた悪趣味な試合が繰り広げられるのだろう。
        -- 2011-12-22 (木) 00:46:45
      • ─ヒメリンゴが 一般剣闘士 に昇格しました─】 -- 2011-12-22 (木) 00:46:56
    • 第二試合
  • Life or death
    • 第一試合
      • 【獣臭いコロッセオ】 -- 2011-12-16 (金) 01:00:40

      • (噎せ返るような血の匂い。地面を蹴る音が一つする度に、地面が赤く染まって首が一つ増える)
        (コロッセオの壁に叩きつけられて、だらりと落ちる狼の首。)
        (これで何匹目だろう、10は殺したろうか)
        …(散らばる首をぐるりと眺める。どれもこれもだらしなく舌を垂らして、見るに耐えない。)
        (こんなことに何の意味があるのか、同胞がいくらやられても怯まず向かってくる狼の、その足音を耳に捉えながら舌打ちする)

        (ここのところ、もうずっとこんな試合ばかりしている)
        (動物相手の、いわゆる前座試合)
        -- ヒメリンゴ 2011-12-16 (金) 01:01:03
      • (まともな動物ならまだ良い、それならば少しは手応えがあるだろうに)
        (自分に宛てがわれるのは決まって、弱っていたり人間に飼い慣らされていたり)
        (一番最悪だったのは、人間の使う…いわゆる魔法、という奴で頭がおかしくなっていた奴だった)
        (…そういう相手ばかりを充てられて、兎に角辟易する。)
        (つまらない、全くもってつまらない)
        (ただ、無論そんな相手を当てられるのにも充分理由があって)
        -- ヒメリンゴ 2011-12-16 (金) 01:15:47
      • (飛びついてきた狼の牙を、腕の枷で受け止める。ガチン、という鈍い音 狼の呻き声が聞こえるより早く)
        (空を切る音と共にその首が弾け飛ぶ。)
        (飛んだ首が壁に赤い染みを作る前に、地面を蹴って兎が飛んだ。)
        (背後から飛びかかろうとしていた狼は、目標を見失って鼻を鳴らし…次の瞬間首を無くして、地面に崩れ落ちる)
        ……ふっ…
        (首が増えるごとに、観客のあくびが増える)
        (納得行かない、これがお前らの好きな殺し合いだろう 睨む観客席に漂う、退屈が明らかな空気)
        -- ヒメリンゴ 2011-12-16 (金) 01:22:13



      • (この兎の試合はワンパターンでつまらない、それが観客の評価だった)
        (枷で受け止めて首を飛ばすか、避けて飛ばすか、どちらにせよ首を飛ばすだけなら見ても見なくても一緒だろう)
        (そもそもこんなちっぽけな兎に、血沸き肉踊る戦士の試合なんて誰も望んでいないのだ)
        (望まれているのは、無残に嬲り殺されること)
        (まず、そこからこの兎は履き違えていて けれど、その評価を覆すほど魅せる試合は出来ない)
        (剣闘士としての評価は地を這う如く。だから試合の9割が前座試合で動物相手なのだ)

        (首を積むほどにブーイングとため息が増える。)
        (苛立ち紛れに、いつかのように首でも投げてやろうか そう何度目かの舌打ちをして)
        -- ヒメリンゴ 2011-12-16 (金) 01:31:57
      • (観客席に気をやっている隙に、いつの間にか自分を囲むようにして唸る狼を見る)
        (自分たちの種族にとっては少なくとも、天敵である筈のその生き物は…)
        (このコロッセオの中ではなんだか酷くちっぽけに見えた)
        (その唸り声は全く心に恐れを呼び起こさない)
        (その爪を見ても全く心は死を感じない)
        (牙だって)

        (狼が、地を蹴って飛んだ。兎の喉笛を噛み千切ろうと)

        (噛み千切ろうと、して その牙が掴んだのは兎の足。地を蹴りすぎて硬くなった毛に、牙が食い込む)
        (上げた兎の足が狼の牙を受け止める)
        …ああ うん
        (痛い。その感覚に安心した、どうやらこの狼の牙はしっかりと牙の役割を果たしている)
        -- ヒメリンゴ 2011-12-16 (金) 01:47:03
      • (僅かに、観客が沸いた。)
        (何だつまりお前らは、こういうのが見たいのか… 納得して、食い込んだ牙を外すように狼の下顎を切り裂く)

        (悲痛な叫びを上げて、その場でのたうつ狼。下顎を無くした程度では致命傷にならなかったらしい)
        (更に少し、観客が沸く)
        ………
        (楽しいか、こんなものが)
        (首を蹴り飛ばす。大きく一度痙攣して今度こそ狼は絶命した)

        (ああ、なんだそういうことか こういうのが好きなのか)

        (尻尾を巻いて逃げ出そうとする狼の一匹を追う。普段なら跳んで首を狙う距離、しかし狙わない)
        (地面を低く跳んで、逃げるその横っ腹を足の甲で蹴りつける。ギャン、とかそんな声を上げて狼は壁に叩きつけられた)
        (まだ息はある、けれど体のどこが折れたのか不釣合いに可愛らしい声を上げてその場でもがいている)
        -- ヒメリンゴ 2011-12-16 (金) 02:00:49
      • (無理をした足から血が噴き出す。痛みはない、気分が高揚していると痛みを感じないというが、それだろうか)
        (もがく狼に一歩一歩と歩み寄る)
        (こんなのが楽しいか)
        (観客の笑い声が嫌でも耳に入る。そうか、こんなのが楽しいか)
        (客席を見上げる、いつぞやの闖入者を見た気がして目を細めた。お前も、こんなのが楽しいのか、と)

        (パン、と空気が爆ぜる音。狼の首は高く高く跳んで)
        (もがいていた体は首を無くして時期に動かなくなる) お前ら こんなのがたのしいか
        (首を無くした体を足で掴み上げる、遠くで悲鳴が聞こえた。飛んだ首が客席にでも落ちたか)
        お前らこんなのがたのしいか!
        -- ヒメリンゴ 2011-12-16 (金) 02:20:46
      • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst076094.jpg -- 2011-12-16 (金) 02:22:24
      • お前らと同じいきてるんだぞ こんなのが、本当に 楽しいか! -- 2011-12-16 (金) 02:24:54
      • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst076095.jpg -- 2011-12-16 (金) 02:25:04
      • それならお前らが死んじまえ!このくそやろう!!
        いいか お前ら覚えてろよ!こっからでたら こっからでたら お前ら ひとりのこらず
        (ギャン、という悲鳴。 兎の足から狼の胴体が落ちる)
        (首輪に電撃でも流れたか、一瞬体を硬直させて兎の体が地面に崩れそうになる、が踏みとどまった)
        お前ら、ひとり のこらずっ
        (開いたゲートから兵士が向かってくる音がする。ガツン、という衝撃、視界が揺れる)
        (体の自由が奪われていく)
        (それでもこれだけは)
        お前ら ひと、りのこら ずっ ころしてやる…!!!
        そのくび、ぶっとばしてやる!!!

        (覚えてろ!最後にそう叫ぼうとしたが、嵌められた口枷で叶わなかった)
        (殴られた拍子に何処か切れたか、顔面を血に染めながらぎらついた目で観客席を睨む)
        (しかし、後頭部をモールでめいっぱい打たれたのが効いたのか、やがて地面に突っ伏して大人しくなった)
        -- ヒメリンゴ 2011-12-16 (金) 02:34:33


      • (荷物か、さもなくばゴミでも扱うように引きずられて兎がコロッセオから退場する)

        ──今日の前座は、そこそこ楽しめたんじゃない?…早く次の試合始まらないかしら

        (…兎の叫びは誰の心にも恐れを抱かせることは出来なかったらしい)
        (そして今日もまた、悪趣味な殺し合いが始まる…) -- 2011-12-16 (金) 02:38:26
    • 第二試合
  • Life or death
    • 第一試合
      • (その日もコロッセオは血に塗れていた)
        (2つ前の試合では年端もいかぬ少女が血みどろの果てに巨漢を刺し殺し、次の試合では偉丈夫同士の殴り合い。アリーナの砂に新たな歯と骨と血と目玉が加わった)
        (観客たる卑劣漢、あるいは醜悪な殺し合いを好む残酷な貴婦人らは大いに満足していた。だがまだ足りぬ、足りなさすぎる)
        (より多く、より激しい流血を! 醜く、雄々しく、猛々しい武勇を! 凄惨を! 極めよ! 窮めよ! 究めよ!)
        (野蛮で原始的な欲求はもはや一つの大きな潮流となってコロッセオに渦巻く。一人が発した歓声が、場にたゆたう蛮性となる)
        (そのコロッセオ、愛しく忌まわしき血と肉と死と生の乱痴気場に、また一つ愚か者がやってきた)
        (緑の肌の、肉達磨の愚か者が)
        -- 2011-12-07 (水) 17:16:19
      • いい音色だねェ(その愚か者は笑う。二つの牙が突き出した、餓えを示す厚ぼったい口を半月に歪める。嘲り? 否、高揚だ)
        (オークは猛っていた。その身に宿る野蛮な血が原因の一つであることは言うまでもないが、それだけではない)
        (何よりも男を昂らせていたのは、対手となる存在のことだ。此度、オークは何者と闘うかを知らされていない)
        (鎖野郎との一"劇"以降、オークは奴隷剣闘士としては、という前提があるものの、名を上げつつあった)
        (組まれた戦いはどれも凄絶無比。釘付きクラブを構えた凶漢一グループや、同族の暴れ屋とも殺し合いをした)
        (だがオークは生き抜いてきた。時には苦悶し、膝をつくことがあったものの、生来のしぶとさと何よりその怒り、そして戦士の誇りを以て)
        (やがて男はコロッセオの"流儀"に気づき始めた。ここでの剣闘士はすなわち畜生、穢多非人に等しい残酷な扱いを強要される)
        (とはいえ、這い上がるチャンスがないわけではない。「ご近所さん」に芸の一つでも見せてやれば、「飼い主」どもは褒美をくれるのだ)
        (別段オークにとって、その褒美や名声、名誉は興味がないものだった。しかしオークはここに生と死の輪廻を見た)
        (オークが奉ずる原始の精霊たちが教えるところは、すなわち「季節と生死、移り変わる自然の輪廻を守るべし」というもの)
        (生きるものは死に、死が新たな生を呼ぶ。自然の単純な、唯一無二のプロセスを侵すものを原始の精霊は許さない)
        (そしてここにはそのどちらもがある。生きるものは死なないために全力で戦い、相手を殺せば命が繋がる)
        (文明化された中に生まれた野蛮の坩堝は、しかしもっともシンプルな原始のルールを体現した場所なのだ)
        (オークは、その単純明快さを好いてさえいた)
        -- カブギ? 2011-12-07 (水) 17:26:34
      • (一方、オークの対面。ゲートが閉じられたままの入退門から唸り声が響く)
        (人か? 否である。いかに畜生に堕ちようと、人が放つ唸りは所詮人でしかない。生物としての限界だ)
        (ならば亜人か? これもまた否。いかな獣相を持つ亜人とて、これほどまでの餓えには晒されまい)
        (しからば汝は何ぞや。答えは一つ、吠え声一つ!)
        (ガチン! ガチン! 鋼鉄製の格子に何かが激しく体当たりを仕掛ける。一撃ごとに不変の地獄門がたわむ)
        (畜生どもを御するための唯一の出入り口。そこを突破されては沽券に関わると、「飼い主」どもは慌てた)
        (慌てて門を開く。滑車が周り、鎖が音を立て、重厚な格子をゆっくり、重々しく持ち上げる)
        (観客達の視線がそこへと集まる。誰だ? どいつだ? 何者だ? どんな輩が殺し合いを見せてくれる?)
        (期待と不安と殺意と飢えと、言いようもない感情がないまぜになり"そいつ"を待つ)
        (そして、そいつは姿を表した。今さっきまでの荒ぶるさまはどこへやら、自由になったのを本能的に理解したか)
        (ゆっくり、緩やか、威風堂々と。のしりのしりと、己の足音を響かせ歩いてきた!)

        GURURURURURURURU!!(威容を表したそいつが激しく呻く。ヨダレを垂らした大口を開け、大きく吼える)
        (そいつの名はウォーグ。狼(ウルフ)の邪悪な近縁種にして、身の丈は8フィート以上、全長は10ftを超える巨大な魔獣!)
        (何よりも脅威なのはその餓え。ウォーグは何よりも人型生物の肉を好む。狩りの最中にそれらを見つければ、その鴇時の獲物を見捨てるほどだ)
        (そしてなにより。ウォーグはゴブリンやオークといった、蛮族達に好んで乗騎として用いられている)
        (いわば、オークにとっては「おあつらえ向き」の相手なのだ)
        -- 2011-12-07 (水) 17:39:08
      • ほお(現れた魔獣を見てオークは笑った。はじめの部族にいた頃を思い出す。両手で数えられる年をちょうど超えた頃を)
        (オークはかつて二つの部族に属してきた。一つは生まれ、もう一方は生まれの部族を出て流離いの果てに見つけた"朱染め"の部族)
        (記憶ははじめの部族のものだ。オークとして十分な体躯と野蛮さを備えた時、成人の儀として言い渡された蛮行)
        (いつか「いくさ」で用いるために育ててきたウォーグ、その親を打って殺してみせよというもの)
        (意外なことにウォーグは奈落語、すなわち邪悪なディーモンやその信奉者が用いる聞くだにおぞましい言語を理解する)
        (カブギがはじめにいた、生まれの部族もまたそうした場所だった。悪神グルームシュを奉じ、破壊の顕現たるディーモンと手を組む唾棄すべき蛮族であった)
        (いわば混沌にして悪の、オークとしては珍しからぬ文化である。だが、カブギにとっては忌まわしいものだった)
        (己が育てたとはいえ、ウォーグの本能は替えの親を認めない。己の手足のように使役するには、より単純な方法でもって関係を示さねばならない)
        (すなわち殺せ。血の親を殺し、「俺に従え」と教えねばならぬのだ。オークの部族がそうして酋長を代替わりさせるように)
        (戦いは血みどろであった。カブギが憎む、「無楽なる戦い」とは何かを問われれば、まずそれを挙げるだろう)
        (しかしその苦々しい過去を思い出してなお、男の口元に浮かぶのは凄笑。鮫めいた鋭い笑み)
        (たとえ過去がなんであれ、いや、過去がそうであるからこそ、カブギは今もって誇りを重んじる戦士である)
        (ゆえに。感傷などという「邪魔者」はさっさと捨て、目の前の魔獣と存分に闘わねば礼を失する。それはまた)
        精霊どもも望んでいらっしゃらねえだろうよ(原始の信奉者にとって、疑いようもない事実であった)
        (カブギの前のゲートが開く。ガラクタから引っ張り出したグレートアクスを担いで、オークは悠々歩き出した)
        (己の対手、「ここは俺の狩場だ」と主張するかのように威容を見せた、ウォーグに魅せつけるように)
        Lok'tar ogar! kordobuur!(勝利か、さもなくば死を! 嵐の精霊王のために!)
        (もはや「お決まり」の、オーク語の咆哮をもって)
        -- カブギ? 2011-12-07 (水) 17:49:59
      • GUWWWWWWW……(ウォーグは呻いた。理由は一つ、自分の「なわばり」に邪魔者がやってきたからだ)
        (ここは自分の場所だ。「獲物」ども、高きに座ってこちらを見る軟弱な生き物どもにもそれを示してやったのだから)
        (さっきまで自分を縛っていた枷は邪魔だったが、それももうない。いずれあいつらも喰ってやる)
        FUUUU……GURURURU!!(嗤笑する。この「二つ足」どもを喰ったらどこまで腹が膨れるのか、どんな美味が待っているのかを想像して)
        (あいつは頭から喰ってやろう、そっちのやつは足からだ。あの太ったメスは腕を喰う、そこの男は痩せているから丸呑みだ……そんな風に考える)
        (だがどうだ。大きな大きな暴君の、「お楽しみ」を無粋に邪魔する奴がいる)
        (睨めつける。緑色の肌、見知った「豚達磨」だ。あいつは旨くない、その上背中に乗ろうとする。気に食わない)
        (そいつは刃を持っていた。人間が自分たちより強大なるものどもに対抗するため作り出した文明の利器を)
        GURURURURURURURU!!!(哄笑。片腹痛い、あんな「青まみれ」の棒切れで、あいつは自分をどうにかしようというのか? 面白い)
        (だがそれ以上に腹ただしい。誰も踏み込んではならない縄張りに、自分だけのお山にそいつは堂々とやってきたのだ)
        (そしてそいつは―――笑っている。こちらを見て大いに笑っている。自分と同じように、「喰ってやるぞ」とでも言いたげに)
        (気に食わない。気に食わない、気に食わない気に食わない気に食わない……気に食わない!!)
        GUWWWWWOOOOOOOOOO!!!!!(吼える。そして丸太のような爪でガリガリ赤茶けた土を削り、突進!)
        (横の長さは10ft、重さに至っては計測不能の巨体が、野蛮を毛皮に詰めたような邪悪な魔獣が、オークめがけて駆け出した!)
        -- 2011-12-07 (水) 17:58:43
      • そォだ(オークはなおも笑う。苛立ち、餓えて、こちらに吼えるそいつを見て大いに笑う)
        それでいい。俺らはそういうもんだ。へっへ、懐かしいねえ(思い出す。生まれの部族ではなく"朱染め"の狩りの日々を)
        ("朱染め"のオークは血族ではない。いずれもが、自分のいた部族から離れた「はみ出しもの」であるからだ)
        ("朱染め"に女はいない。なぜなら、"朱染め"に集うオークはいずれもが戦いを愛し、戦いに敬意を払う戦士だからだ)
        ("朱染め"に子供はいない。子供を作るための機能など、戦いに邪魔だからみな捨ててしまうからだ)
        ("朱染め"は奪わない。無為に殺しはしない。ただ挑まれた戦いは見過ごさないし、邪悪なものには自ら打って出る)
        ("朱染め"は戦士の部族である。群雄割拠の"鮫の歯"山を平定し、無法の荒野を鎮めたのもその誇りゆえ)
        ("朱染め"は驕らない。人間どもが「赤き戦士よここにあり」と称えても、決して驕って胡坐をかかない)
        (山に住み着くウォーグの群れを狩った後、カブギが部族のもとを離れた理由のもっとも大きなものは)
        久々にお前と戦ってみたかったとこだぜえ!(もはや狩るべき邪悪がいなかったからである!)

        Waaaagh!!(グァーグ!!)
        (咆哮に咆哮でもって返し、オークもまた突進! 強靭な脚力は140ポンドの巨体を風のように走らせる)
        (無理と無茶と無謀が合わさり、そこに蛮性が加わり生まれる肉の弾丸。まさしく迅速なるチャージ、騎兵も唸らす緑の嚆矢!)
        Waaaaaaaaaaa―――(罪人の心臓を喰らう番犬のように、大きく開かれた顎(あぎと)めがけて斧を振り上げ)
        ―――Aaaaaaaaaaagggghッ!!(振り下ろす! 分厚い舌も顎も牙も、一撃で叩き潰すという意志のもとに!)
        (無論、自分の体がウォーグの口にすっぽり収まっていることなどまったく気にしない)
        (むしろ。「喰ってみせろよ」と、挑発しているかのようでさえあった)
        -- カブギ? 2011-12-07 (水) 18:09:00
      • GURURURURURURURURU!!!(魔獣はさらに苛立った。「予想通り」、そいつはまっすぐ突っ込んできたからだ)
        (そうだ。原始の世界ではそうするものなのだ。「そうしなければ」一体どうするというのだ?)
        (だがそれが気に食わない。相手は自分を恐れていない。「てめえ」が勝つとさえ思っている)
        (気に食わない。気に食わないから「喰ってやろう」。まずはあいつを喰って力をつけよう、お楽しみはそれからだ!)
        GAAAWWWW!!!(大口を開け、そいつを丸呑みにしてしまおうと、ぐん、と体を前に突き出す)
        (あろうことかそいつは突っ込んできた。牙だらけ、ヨダレまみれのその口に!)
        (面白い。ならばこうしてくれる! 斧がたたきつけられる瞬間、ウォーグの口もまた閉じられた)
        GUWWWWWOOOOOOOOOO!!!(吼える。苦悶と狂乱、両方の色をもって吼える。たたきつけられた斧は舌を割り、ウォーグの口内に突き刺さった)
        (だが不十分だ。叩き割られた舌の痛みを怒りに変えて、ウォーグは二度三度と大きく咀嚼する)
        (挟み込まれた獲物の肉に牙が食い込む。心地いい、獲物を喰らう感触だ。久方ぶりのまともな食事だ)
        WOOOOOOOOOO!!!(このまま丸呑みにしては面白くない。さらに四度、五度と噛み付くと、そのまま首を振るいオークを壁に叩きつける!)
        -- 2011-12-07 (水) 18:17:00
      • ハッハァ、どうだこの野郎!(ズンッ! 圧倒的膂力によってたたきつけられた斧はまさに舌に食い込んだ)
        (しかし足りない。オークが思い描いた、預言者めいて海を割るような気持ちのいい叩割は起きなかった)
        チィ! 足りねえかよ、だったらまだまだだ!(ズヌグ、と血と肉を引きながら斧を引っ張り上げる。そしてさらに叩きつけようとした刹那)
        (ガチン! 音を立てて口が閉じられ、鋭い牙の群れが上下から襲いかかる。ガチン、ガチンガチン!)
        Aaaaaack!!!(絶叫。一度二度、三度四度と口が閉じられるたび牙が肉に食い込む。緑の筋肉に剣山のような穴がいくつも穿たれる)
        (ガチン! 五度目の噛撃の直後、己の体が振り回される感触。並の獲物ならとっくに胴体を両断されている)
        (だがオークはそうはいかない。申し訳程度のハイド・アーマーがわずかに牙を防ぎ、そして筋肉の分厚さと燃え滾る活力が致命傷を避けている)
        うおおッ!!(ぶん、ぶんと十分な勢いをつけて牙の拘束が剥がれると、オークの体は真横一直線に空を飛ぶ)
        (地面と平行に吹っ飛んだ巨体が壁に叩きつけられ、コロッセオを揺らす! 最下段席に座っていた観客が悲鳴をあげた)
        ごぶっ……(衝撃で内臓に激痛。二本の牙の間から吐血、がっちりとした顎を赤い筋が伝い新たな隈取りとなる)
        U、UUggghh……(呻く。観客たちはすでに最高潮だ。牙の傷からも血が流れ、意識が遠のく)
        (もはや終わりか? ……否! 咳き込み吐血するオークの口元を見よ! 痛みに歪んだその口を!)
        ぐ、ぶ、ごふ……ふ、くく、くははは!(笑っている。この状況でなお蛮族は笑っているではないか!)
        これだよ、な……がふっ(ゆらりと立ち上がる。砕けかけた壁の破片がぱらぱらと体から溢れて落ち、砂煙を巻き上げる)
        この痛みよ……これがなきゃあ、精霊どももお喜びにならねえ(斧を握り直す。残った血が全身をめぐる。活力が燃え滾る)
        よおし、今度はこっちの番だぜえ。Waaaaaaaaagh!!(再び咆哮。燃え滾る活力と蛮力、それだけを武器にオークは再び吶喊!)
        (狙いはウォーグの巨体を支える四本の脚、そのうち奴にとっての右前足だ!)
        -- カブギ? 2011-12-07 (水) 18:29:40
      • (ウォーグは牙をガチガチと噛み鳴らした。久方ぶりの血と肉の感触による昂りと、なおも募る苛立ちに)
        (高きに座る「獲物ども」はよくわからない声で吼えている。俺を称えているなら気分がいい。だが違う)
        (「あいつ」が死んだと思っているのだ。それで喜んでいる。莫迦どもが、そんなわけがあるはずない)
        (それは五度もその体を食み、思い切り吹き飛ばしてやった魔獣自身が一番確信していた。「あいつはまだ死んでいない」と)
        (そしてその通りに「そいつ」は立ち上がった。しかも、やはりあの不敵な笑みを浮かべてまで)
        GAAWWッ!!(咆哮には咆哮でもって返す。ここは狩場だ、俺の「縄張り」だ。勢いで負けた獣は追い出されるのが宿命だ)
        (そうだ、あいつは獲物じゃあない。狩場を横取りしようとする「敵」だ。敵は殺す、殺してから喰ってやる!)
        GAAAAAAAWWWWWWW!!!(オーク同様、ウォーグも地鳴りとともに突進! 大口をあけ噛み付くも、その一撃はかわされた)
        (巨体が懐に沈んでいる、そう思ったときにはもう遅い。ドズンッ! 満身の力で斧が横薙ぎ、自身の右脚を叩き折る!)
        GAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!(苦悶! 数百ポンド以上の体重を支える強靭な脚は、斧のたった一撃でへし曲がってしまったのだ)
        (そして当然、支えられている巨体の重みがそのままのしかかる。ベキベキベキ! 鈍い音を立ててさらに曲がる)
        GURURURURU!!(こんなことをされて黙っていられる魔獣ではない。両後ろ足に力を込めて立ち上がり、残る左前脚でオークの体を切り裂きにかかる!)
        -- 2011-12-07 (水) 18:36:18
      • へへへへッ! ほぉーれほれぇ!(ベキィ! 一撃で叩き折られた脚にぐりぐり斧を押し付け、さらなる痛みを与える)
        (ウォーグの脚部は筋肉と脂肪、そして毛皮となにより極太の骨によって構成されている)
        (だがオークの斧撃は、関節部を狙うだとかそんな小細工を抜きにして、骨ごと肉を叩き割ってしまったのだ)
        (「肉を切って骨も断つ」。これぞオーク流、バーバリアンの戦い方。その結果肉を切られて骨を断たれようが、最後に立っていればそれでいい)
        おおッ!? 「チンチン」ができるたあお利口だなあ!(両後ろ足で立ち上がったウォーグを見上げてオークは野卑に笑う)
        (左前足が向かってきていることなど知っている。その汚く鋭く危険な爪が自分の肉を抉ろうことなど)
        (考えるべきはそいつをどう捌くかではない。「さっきみたいに無様な姿を晒さない方法」だ)
        (つまるところ……全力で踏みとどまる!)
        Aaaaaaagh!!(ぞぶり、と。爪が大気を切り裂き、鎧を切り裂き、肉を切り裂いた。血の飛沫がウォーグを染め、対面の観客席にまで振りかかる)
        (圧倒的な質量の放った爪撃である。かかる圧力も相当、紙くずのように吹っ飛ばされてもおかしくない)
        ッッぐぅう……ッ!!(だから踏みとどまる。両足に力を込め、「さっきみたいに」やられはしないと)
        (べきん。噛み締めた奥の牙にヒビが走る。全身に縄のような筋肉が浮かび、力を込めたことでさらに血が吹き出す)
        (それでもなお。ずずずず、と音を立てて土を削り、オークの体は後退。だがその膝は土で汚れず、背中は瓦礫に叩きつけられてはいない)
        ッハハァ……! どんなもんだよ、オラァ(笑う。そして睨む。お前の攻撃など、耐えてやったぞと見せつける)
        (しかしもはや満身創痍。全身から流血甚だしく、激痛はもはや正気を奪うほど。斧を握る手は万力めいているが、物理的にちぎれてもおかしくなかった)
        (心臓が鼓動を早める。血が流れ出ることも厭わず循環し、オークの意識を逆覚醒させていく)
        (そしてオークは見た。己の前に屹立し、牙を剥き出す豹の姿を)
        (原始の狩人。精霊たちの一側面たる"源獣"の一にして、迅き狩りを司る大いなるパンサーの姿を)
        (幻影が消えると共に、狂乱して突撃するウォーグが迫る――――!)
        -- カブギ? 2011-12-07 (水) 18:49:29
      • (獲物は立って見せていた。「どうだ、お前の爪など大したことがないぞ」と言いたげにこちらを睨んでいる)
        GAAAWWWWッッ!!(もはや憎悪だ。憎悪が湧いて咆哮になる。あいつは殺す、何が何でもぶち殺す!)
        ……GURUU……?(だがなぜだ? ヤツは立ち尽くしたまま微動だにしない。ようやく狩られることを選んだか)
        (いや違う。ヤツは誰かを見つめている。自分のほうを見ているが、「その間に誰かがいるような」顔をしている)
        (よく分からん。しかし分かる、「あいつはまだ闘うつもりだ」と。気に食わない気に食わない、喰ってやる!!)
        GOOOWWWWWWW!!!(そして吶喊する。へし折れた右脚など知ったことか、こいつを殺して唾でもつけておけばいい)
        (いやむしろ。あいつの肉と血で栄養をとって、それで治すとしよう。そのためにもアイツは狩ってやる)
        (両前足で大地を蹴り、両後ろ足で着地する。両後ろ足で大地を蹴り、両前足で着地する)
        (ズン、ズン、ズンズンズンズン! コロッセオを身動ぎさせ、10ftの肉塊がオークに迫る!)
        GARURURUッ!!(そして大口を開け、捉えた! これまでで最高の力を込めて、顎を閉じる!)
        (ガチンッ!! 完全にかみ合わさった上と下の牙が堅牢な要塞のように閉じられた。だが)
        ……GUUッ!?(口を開く。いない! 今しがた噛み砕いてやったはずのあいつはどこだ!?)
        (どこだ、どこだ! 左を見る。沸き上がる観客だけ。右を見る。沸き上がる観客だけ。どこだ、ヤツはどこだ!)
        (その時。「べきり」と。さっき耳にしたばかりの鈍い音が、ウォーグの後ろ足のあたりから響いてきた)
        -- 2011-12-07 (水) 18:56:24
      • (オークはそこにいた。背筋が凍るほどの激怒、バーバリアンがもっとも精霊と心通わすその熱狂の中にいた)
        (ウォーグの巨体の真下、前脚よりも強壮たる後ろ足のたもと。斧を振るった形でそこにいた)
        (べきり。音の正体は左後ろ足。右前足同様、ウォーグのそれは逆関節めいてへし曲がっていた)
        (ずぬぐ。肉と血を引きながら斧を抜く。そして担ぐ。激怒の只中にあるにも関わらず、オークは吠えすらしない)
        (その目は鋭く、牙は尖り。四足動物のように大きく沈んだ腰は狩猟動物の如くに油断なく)
        (見るものが見れば、オークの姿にパンサーの幻影を見たことだろう。迅き豹、すべての狩人達にとっての守護者に)
        (捕食獣の命は獲物の死によってつながれる。やがて捕食獣が死した時、その腐肉は新たな獣達への糧となる)
        (なれば狩猟者もまた生死の輪廻に従うもの。狩るものはいずれ狩られ、生を以て死を紡ぎ死を以て生をもたらす)
        (文明に生きる者たちよ、見るがいい。ここにおわすは"原始の狩人"の神秘、世界の狭間を音もなく歩むものに愛されし蛮族)
        (迅き豹の激怒(Swift Panther Rage)を体得した怒れる狂戦士である!)
        -- カブギ? 2011-12-07 (水) 19:02:53
      • (ウォーグは驚愕し、そして悶絶し、狂乱した)
        GURURURURURURUッ!!(いつの間にそこにいたのかはわからない。なぜ噛み殺せなかったのかも分からない)
        (凶暴ゆえに愚鈍な魔獣にはわかるよしもない。今そこにいる狂戦士が、すべての捕食獣の祖たる精霊の力を持っていることなど)
        GAAAAAAAAWWWWWWWW!!!(ゆえに暴れる。相手が体の下にいるなら踏みつぶしてやろうと、折れた脚も含めて滅茶苦茶に地団駄を踏む)
        (爪が振り回され、巨大な脚が大地を踏みしめ、地面をかきむしり、土ごと獲物をズタズタにしてやろうと)
        (べきり。あがった土煙と地鳴りの中、新たな鈍い音。見ればウォーグの左前足がへし折れている!)
        GURURURURURURUッ!?!?!?!(驚愕、悶絶、そして絶叫! 四本のうち三本の支えを失い、ついにウォーグは地面に伏す)
        -- 2011-12-07 (水) 19:07:22
      • (オークはいかなる力を用いたのか? 単純なことだ、「豹のように迅く、しなやかに動いた」だけ)
        (今や蛮族の体は、その巨体や戦いのはじめに見せる突進よりもなお俊敏。そう、大地を鋭く走るパンサーのように)
        (そして捕食獣のように無慈悲。自分を地面ごと挽肉に変えんとする狂乱の暴走の尽くを「かわして」みせ、次なる獲物にたどり着く)
        (頭の真横をかする爪をひょいとかわして斧を振るう。横薙ぎ真一文字、左前足がへし折れた)
        (ウォーグの体がズン! と倒れる。すでにその時オークは右後ろ足のたもとにいる)
        (地面に横たわり、ごろごろと転がり、じたばたするしかないウォーグをおとなしくさせるため、斧を振り上げ下ろす)
        (べきり。残された最後の足もまた粉砕骨折。ウォーグの四足はもはやそれぞれが別の方向を向いていた)
        (これこそがあらたなる激怒の形。今のオークは、豹のように迅速な動きと残酷無比な一撃を可能とする狩人なのだ)
        (そしてオークはゆっくりと、末期の瞬間を感じさせるようにウォーグの腹に乗り、片腕を突き上げた)
        (観客たちが静まり返る。「いつものお楽しみ」の時間だ。処刑の時間だ。最期の時だ!)

        Lok'tar ogar.(勝利か、さもなくば死を)
        (観客たちが答える。「Magru!」と。)
        Lok'tar ogar!(勝利か、さもなくば死を!)
        (観客たちがひときわ大きく答える。「Magru!(……を!)」と。)
        Lok'tar ogar!!(勝利か、さもなくば死を!!)
        (観客たちがさらに大きく答える。「Magru!(死を!)」と。)
        Lok'tar ogar!!!
        「Magru!」
        Lok'tar ogar! Lok'tar ogar!! Lok'tar ogar!!!(最期の判決を!)
        「Magru! Magru!! Magru!!!」(死を、厳粛なる死の裁きを!)

        (観客たちの親指が下を向く。斧が振り上げられ、オークが笑った)
        さらばだ友よ。楽しかったぜ、精霊どもによろしくな。
        (そして判決は、くだされた)
        -- カブギ? 2011-12-07 (水) 19:17:34
    • 第二試合
  • Life or death
    • 第一試合
      • \ジャーンジャーン/ \げえっ関羽/ -- 2011-12-02 (金) 20:48:49
      • (呼び出しの鐘が鳴った。私の出番だ。いつも思うがあの鐘は「げえっカンウ」までで1セットなのだろうか? わからない。カンウという単語の意味がまずわからない)
        (アリーナに立つと、いつものようにブーイングを飛ばされる。はじめの頃はこれだけで涙がこぼれたものだが、今となっては逆に心地よくすらある)
        (いわゆる「血沸き肉踊るオトコの晴れ舞台」を楽しみにしている真っ当な剣闘ファンにとって、私の試合は到底受け入れられない下等なものであるらしい。
         ブーイングに交じって飛んでくるヤジは毎回そのような内容だからだ)
        (人が死ぬような思いをして戦っているというのにいい気なものだ。結局、彼らが私の試合が始まっても席を立たないのは、私を見て安心したいからなのだ)
        (つまらない試合しかできない無価値なクソ闘士がボコボコのベコベコにへこまされる姿を見て
         「あんなクソに比べたらオレはまだマシだな!よかったオレあのクズじゃなくて!」と安心する。自分を高みに置ける)
        (つまるところ、私の存在意義とはそんなもので、私の相手をやらされる闘士もいい面の皮だ)
        -- アエスマ 2011-12-02 (金) 21:05:45
      • \おまえはちにくのかたまりだー!あたまねじきっておもちゃにしてやるぜー/ -- 2011-12-02 (金) 21:08:43
      • (ほら、相手のほうもあからさまにやる気がない。全身から「ああはいはいガキの相手なんかやってらんねーよめんどくせえ」と言いたげなオーラが立ち上っている)
        (あいつも観客共と同じだ、頭から私をクズと決めてかかっている。すいませんね殺す価値もないクソガキで)
        -- アエスマ 2011-12-02 (金) 21:15:27
      • 開始(はじ)めぃッッッッッ -- 2011-12-02 (金) 21:16:35
      • (さあ試合開始だ。いつものように敵に歩み寄ろう)
        (私は走らない。早く近づこうがゆっくり近づこうが、私という存在を舐めきっている闘士はニヤニヤ笑いながら私が間合いに入るのを待つだけだからだ)
        (敵さんの棍棒の間合いに入る。私の得物はこれよりもう少し長いが、足を止めての打ち合いをするには多少近すぎるくらいでちょうど)
        ごしゃへぶし -- アエスマ 2011-12-02 (金) 21:23:58
      • (無防備にてってこ歩いてきたガキを親方仕込みのフルスイングでカッ飛ばす。側頭部にクリーンヒットってヤツだヒャッハー!)
        (どうやら近接距離での殴り合いがしたかったみたいだが、あんなナナフシみてえな体で俺様と真正面からガチろうとするなんて、イカレてるとしか思えねえぜ!)
        (ガキは軽く1メートルほど吹っ飛んで頭から血ィ垂らしてビクンビクンしてやがる。シャバでこんなガキブン殴ったら一発でお縄だぜ?これだから闘士はやめられねー)
        (まぁンなこたどーだっていい、目の前には新鮮な肉があって、俺様の手には肉叩き棒がある。つまりどういうことだってばよ? 答えは……)
        \さつじんたいむだぁー!/ -- 2011-12-02 (金) 21:34:12
      • (以下ヒャッハー。そろそろコレ死ぬんじゃね?というところで
         あんまりにもあんまりな結果にいたたまれなくなったグッドシチズンたちが親指を上げてくれたので死にませんでした) -- 2011-12-02 (金) 21:36:33
    • 第二試合
  • Life or death
    • 第一試合
      • (何の変哲もない、とある日のことである) -- 2011-12-01 (木) 23:10:19
      • (もうもうの戦塵が吐き気を催す煙でアリーナを覆う。血糊も埃と混ざりゆくほど乾ききった戦場は、今一応の決着をかこつけた)
        (盥を裏手の川に浮かべた洗濯婦たちがラベンダーの香りに包まれるように、マンネリな血の香りをコロッセオは焚きつけている)

        (一応の勝者よ、ご愁傷様。創を刻まれぶちゃいくなレリーフと化した敗者よ、ご愁傷様)
        (彼らは良い闘いをしたが、いかんせん、観客席に居る血の気の多いクソ野郎共も、毎日が毎日「殺せえ!」なんて叫ばない)
        (涙もアルコールになって蒸発してしまう呑んだ暮れの屑だって、たまに、酒なんてどこ吹く風の様相を呈するもので、)
        (それと同じく、発奮してぐつぐつ煮えた血のスープも品切れというのはあるもので、観客の一人なんか、欠伸を漏らしている)
        (血を見ても白ける、死を見たら溜息をつく。信じられないかもしれないが、コロッセオにもそんな時があるのだ) -- 2011-12-01 (木) 23:11:25

      • (人らしい理性をかなぐり捨てて裸になり、動物的な殺気を撒き散らしていようと、たまあに寒気を感じて理性の服を着るときがあるのだ)
        (この頃、丁度二月でとびきり寒気が多いのも手伝ったのだろう。春の足音はまだ準備運動でもしてる最中で、歩き始めてもいない)
        (でも、「ならコロッセオになんて来なけりゃいいじゃないか」それは難しい注文だ)
        (今、ここに居る奴らは貴賎を問わず、いっさい屑であるためだ。惰性だ。惰性でこいつらは来ているのだ)
        (気乗りしないで帰った奴も、そもそも来なかった奴も居るが、そいつらは屑の中でも救いようのある屑であったのだ) -- 2011-12-01 (木) 23:17:12

      • (ここに来れば少しは気が晴れるとでも思い、そこで思考を停止させる奴らがここに来たのだ。このうじゃけた空気は、畢竟、真理なのである)
        (そりゃあ、多少乗り気の奴だって居た。居たのだ。しかし、この空気に呑まれてもやもやしてしまい、屑の仲間入りをしてしまった)
        (言うまでも無い事だが、主催者も当然、灰干しの蛙みたいにやる気がない。目の前の戦闘よりも経営の方を手に汗握って心配していた程で、)
        (助命の願いも「殺せえ!」の声もないので、主催者は適当に親指を上げやがる。そこに命が係ってるなんて夢にも思わない)
        (親指を挙げた時に彼が思っていたのは「いつも繁盛大入りなんていかんものだなあ」というものであったが、)
        (何はともあれアリーナでいつもの闘いを繰り広げていた戦士二人の命は助かった。「お大事に」と言わせて貰いたい) -- 2011-12-01 (木) 23:25:27

      • (さてまあ、観衆である人の形をした聳え立つ屑も、やっぱり人間だったわけだ)
        (この日とは違った、いつもの熱狂した肥溜め野郎たちを、アリーナから見上げたとある少女は「人でなし!」と思っていたが、)
        (この日に観衆を、アリーナから見上げたとある少女は「人でなし!」とやっぱり思う。それはそうだ。それ以外の何があろうか)
        (しかしながら、「殺せ」「やれ」「死んじまえビチグソ!」などの言葉以外を忘れてしまったかのような、ボケナスの口から)
        (アンニュイな溜息が漏れるのを見ると、どうも「ああ、そんな日もあるんだなあ」と思ってしまうのである) -- 2011-12-01 (木) 23:28:58
      • (次の対戦相手として引っ立てられたからには、年越しのオケラ同様、もう少し焦って然るべきだというのに、)
        (どうもこの娘、緊張感がない。先程までは痰汁混じった坩堝へ放り込まれるというので、歯の根をかちかち言わせていたのに、)
        (気懈い観客席の空気を感じ取るや否や、白けた様子に苦笑を漏らしている)……あははぁ。
        -- ミッシェル 2011-12-01 (木) 23:36:51

      • (一人はいかにも剣闘士然とした男である。描写を省いても、貴方の想像する通りで概ね間違ってはいない程度に剣闘士然している)
        (対するは件の少女である。名をミッシェル=クライン・ニカと言うが、砂利塗れの糞塗れなこんなところで、名前なんて大した意味を持たない)
        (意味を持つのは肉体のみ。土くれを林檎の果汁で捏ね上げた、全くクソに似た屈強な肉体のみなのである)
        (この少女と言えば、なんとも肉体に土気が足らず、林檎の果汁だけを混ぜて固めたような、甘ぁいマスクとプロポーションを持って居る)
        (言ってしまえば、畑の花で、「ここにお前は必要ないよ」と抜き捨てられてしまいそうな、居るべきでない奴である)

        (しかしこの日は様子が違った。細流を眺めているほうがまだ健全で金もかからない、そういう退屈に身を縮こめた)
        (クソったれどもが腐っているのである。アリーナの少女を見れば、ほんの少し、彼らの目ン球に光の彩がかけられる)
        -- 2011-12-01 (木) 23:49:54

      • (こいつらは前述したようにとびきりの屑である。惰性でアリーナを訪れて、惰性で殺し合いを見ている屑共である)
        (屑だから、「女が出てきたから、いたぶられる、あわよくば艶かしい格好を拝見しようと目を剥いたのだ!」と見るのは早計だ)
        (ちょっと頭が回る屑なら、こんな所はさっさと立ち去り、午睡に洒落こみ日を落とし、どこやらで娼妓をさすのが正しいと気づく)
        (こいつ等はそれをしない。何故なら、とびきりの屑だからである。しつこいようだが、こいつらが此処に居るのは他ならぬ惰性なのだ)
        (では、なにゆえ少女が出てきたからと、目に光を入れたのか?)
        (その答えは、「何処か“きりの良い”場所を探していたから」)

        (切っ掛けがないと立ち上がることもままならない、赤ん坊にも劣る弱い回路を持つこいつらは、)
        (錆付いた電流を目に走らせ、「女が出てきたから、いたぶられる、あわよくば艶かしい格好を拝見しよう」と、)
        (「そんから帰れば酒も美味いだろう。よっしゃあ」と思ったのである。呆れ返るのはご自由にどうぞ)
        -- 2011-12-01 (木) 23:57:20
      • あれ、あれ……?(少女はきょろりと瞳を回す。窓が開かれ、空気を入れ替え、爽やかになった部屋に居るような、)
        (居心地の悪さに怯え始めたのだ。小動物の中でも大分抵当な穴倉鼠のような仕草、敵を窺うあの仕草をする)
        (鶏頭がきょろきょろするように、少女の赤い髪の毛は、青い残像を残してゆらりゆらりと揺れている)
        (その様子に会場の気持ちは一つになる。元より、似たような屑共だ。つまりは、その心も似たり寄ったりなのである)
        (ぬるい油に火が灯る。普段の熱狂には遥かに及びはしないものの、これはちょっとしたものだ。小気味良い歓声が響いている)
        -- ミッシェル 2011-12-02 (金) 00:07:50

      • (その内容はどれも下卑たもの。気持ち良いくらい最悪で、畑の肥しになるぶん糞のほうが明らかにマシな、屑の歓声が響いている)
        (ところで、対戦相手の剣闘士、こいつもここに居るからには屑なのだが、それなりに自信のある奴だ)
        (冴える剣筋、粗末な剣など刺せば折れてしまうであろう鋼の肉体、そのどちらもが実に泥臭く正しくクソのあるべき姿なのだ)
        (当然のことながらこの仔娘が相手では、シモのほうはどうにか活きり立っても、剣をぶち刺すには軽すぎて物足りなさすぎる)
        (興が削がれ殺がれ、試合の前から勝敗を問うのが馬鹿らしくなっていたのだが、この歓声にはどうしても応えてしまう)

        (普段通りの狂った熱狂が、観衆へ戻ってきた! しばらく口にしていなかった「やれ!」「やっちまえ!」のコールが眩しい)
        (この期を逃す主催者ではない。試合の銅鑼は、少女にとっては不意打つように:それ以外には待ちかねたように、)
        ((がぃいいいん)と鳴り響いて、試合の開始をアリーナ全域に広げたのである)
        -- 2011-12-02 (金) 00:17:12
      • え?(左を向けば焼け狂った観客どもの腐れ爛れ落ちた熱烈な呼びかけが聞こえる)
        ええ?(右を向けば主催者席からの笑顔が見える。天幕の下の白い豚顔がこれ以上ないくらいにっこりしている)
        えええええ!!!(空を見ても、救いようのない青が、水底よろしく広がっている。目の前には当然のこと、例の剣闘士が駆けてきて、)
        (──真横へ向けての、干草刈りの一閃──)
        うゃああわぁああ!!!!(するともう、面に水をかけられた猫のように、後方へ飛び退く)
        (脂汗が顎まで滴り、瞳孔の門戸は広げられて目の前の光景を、恐怖と共にごうごう取り入れる)
        (怯えの項目を辞書に載せるならもってこい、写真を撮る者が居なかったのが残念でもあり幸いでもあり、)
        (しかし、写真機など高尚なものを家に持つならば、持ってこなかったのを確実に悔やむことだろう)
        は、ぁあ、殺される、死ぬ、死んじゃうぅう……ーっ!!!(──少女の背中には、純っ白な翼が生えていたのだ!)
        -- ミッシェル 2011-12-02 (金) 00:32:53

      • (会場の熱気がピークに達したのは言うまでもない! 数量図(グラフ)で表したのなら、きっとそれは直角へ限りなく近いものとなるだろう!)
        (儚げであり線の細らかな美麗の格好と、ふくらかさの足りない胸に乱暴にすれば壊れる細腰の稚拙な女性らしさが、)
        (純白なる綺麗の翼に彩られると、天使とも見紛う、まなこを献上せずにはいられない美しさとなる)
        (硝子の彫像が打ち壊されてきらきらの破片を清らかに散らす様を、そういうのを望んでやまない屑共の濁って灰汁の浮いた心は、)
        (激しく燃え上がり立ち上がり、本日溜まった鬱憤は全てくべられて、冷めやらぬ熱を鉛の身体へ宿していった)
        -- 2011-12-02 (金) 00:41:58

      • (──さて、視点は替わり、よこしまな炎がくべられて煮立つアリーナの中へ──)
        (人型を持って大地が立ち上がったのかと言わんばかりの剛健な剣闘士の心情は、良いようで、悪いようである)
        (この男はベテランだ。一般剣闘士の中でもそれなりの地位を持っている。クソッたれに喜ばしい地位である)
        (観客の連中は実に喜ばしく、美味い料理の出来上がるを見つめる子供のような様子で、食べる前から満足げなのだが、)
        (こいつはそうもいかなかった。なにしろ、相手は翼つきであるにしろ、か弱いか弱い少女なのである)
        (勿論こいつもクソったれなので慈悲や哀憐なんてものはない。しかし、自尊心はクソったれながらにもある奴だったのだ)
        (「血の気だけある野郎の剣を、己の剣筋に圧倒して、血をざくりざぷりと抜いてやって、土気色にして土に混ぜてやりたい!」)
        (そういう心強い気位のある奴だったのである。この場においての主役はなんと、目の前の薄っぺらい少女であり、)
        (この剣の腕なんかなまくらの放つ矢と同じで、少女を仕留めるためのキャラクターとしか見られておらず、)
        (何も期待なんかされちゃいないのである。それが、我慢ならなかった)

        (ここで剣と盾を棄てて気位高く、試合放棄を宣言してやるような侠気を持っているのなら、こいつはここには居ないだろう)
        (そうならもっと全うな人生を歩んでいる。このクソったれな剣闘士は仕方なしに、剣を振ることを選択する奴でしかないのだ)
        (しかしにその斬撃は避けられてしまった。紙切れを叩き斬るのが難しいように、少女はひらり、羽を開いて空を泳ぐ)
        (こうなると今度は意地である。次には少女へ猛烈な突進と、身体ごとぶつかる突き、衝きを放ってやったのだ)
        -- 2011-12-02 (金) 00:59:54
      • (その突きは腰だめで、鍔のない剣を両手でしんと握りしめ、杭を地面に打ちつくように、重くぶんと迫りくる)
        はっ、うわぁ、うわぁああ!! うわぁあああーっ!! あぁ゛ーっ!!
        (半狂乱に陥った少女は、サイケデリックを間近に見た中毒患者とさほど変わらない叫び声を上げる)
        (みっともない姿は、笑えるようではなく眉を顰めてしまうような、気分の悪い様子であるが、それすら客は笑い転けて観る)

        (少女の両足が浮かぶ。宙を舞い、白い影が花咲く姿で翼を打つ)
        (ひらひらひらめき、剣闘士の頭上へ影をつくり、空と地ですれ違うように、猛烈な突きを少女は躱してのけたのだ)

        (その時の観客のどよめきは、示し合わせたかのようだ。何しろ、剣闘士の突きは飛ぶ鳥を落とす勢いであり、)
        (飛び立つ隼も射抜かれようというほどに、冴え渡っていたからである。観客の目は、空を舞う少女へ釘付けられる)
        (羽をばたり、翼を広げて空を打つ。羽毛が光の粒になり散り、オーロラの裾の美しさを醸して、必死で浮かび滑空している)
        (それは長く続かずに、地面へ引かれて着地する。重量に絡まる姿は何か、扇情的ですらもあり、堕天の神話を見るようでもある)
        -- ミッシェル 2011-12-02 (金) 01:14:43

      • (剣闘士の心中は穏やかでない。“偶然”を二度も起こされては、クソ塗れの肉体で唯一輝く鋼の剣筋にクソを塗りたくられる事になる)
        (純白の翼に天使の肌を見れど、覚えるは感動ではない。体の芯から沸き上る、赤黒い情熱が背骨を焼いて焚きつける、)
        (いわば怒り・憤りである。グラディエーター……鍔なしの剣を握る手が、小指から順に力が篭り、血管が浮く、力を示す)
        (もう冗談ではない。話は変わるが、家畜のフンに火を点けて燃料にする国があるらしい。割かし、よく燃えるそうだ)
        (このクソッたれにも火が点いたと見える。何が何でも、負かしてやらなきゃ気が済まなくなってしまい、収まる場所がなくなったのだ)
        -- 2011-12-02 (金) 01:24:14
      • はぁっ、はぁぁあ…………来ないで、来ないで、来たらやぁあ、やめて、やめてよう……。
        (翼で飛んで、空から見下ろし、愚か者を見下してやる。しかしこの娘の翼は飛ぶ力を有していない、鶏の翼なのだ)
        (だから彼女もまた愚か者だ。ぜいぜい息を早くも切らして、喉に息を引っ掛けて呼吸をしている。弱い弱い姿である)
        (そこに来る──踏込の斬撃──なんてのは、特効で、除虫菊で燻された蠅よろしく、じゅくりと倒れてしまうこと請け合いだ)

        ……ぅ、ぁああぁああ……うぁああ。うぁああ。うぁあああああ……うぁ!!
        (迫る、死を運ぶ剣は、鎌よりもっと痛そうで、筋骨隆々とした剣闘士の躰が逆行を浴びて黒い影になり、)
        (恐ろしい死神の演出を天然に作り出していて、ミッシェルの心中へ嵐を巻き起こし、)
        (台詞のレコードを逆回転早回しの、戦慄きに慄きの、叫び声をぱらぱら散らしていく)

        (しかし、しかし。血の花火を上げての盛大なフィナーレは来ない)
        (両端から乱暴に引き千切られるほどの強さで引かれた彼女の神経は、ぷっつり切れる寸前に、自分の手元の武器へ意識を移した)
        (それは無意識の反応である。娘の脳は一等悪いもので、廃棄処分が適当なほど粗悪品なのであるにも関わらず、)
        (脊髄に籠められた反射の動きは全くもって文句の付け所のない最良で、熟練の剣闘士が振り下ろす輝く斬撃を、)
        ……ッ!! ひぃいい!! ひいっ!!(丸いバックラーがその曲面を添えてレールを作るように逸らして、)
        ((ぎゃりん)打たれる剣の行く先をを明後日のほうへ変えてしまったのだ。綺麗に、力ではなく技によって!)
        (パリイの動きは攻撃の弱いところを的確に打つ。踏込ながらで握りの浅い瞬間を、丁度逃さず捉えて流したのだ)
        -- ミッシェル 2011-12-02 (金) 01:43:36

      • (観客席と剣闘士は同じ表情を浮かべる。猫が金貨を肉球に挟み、パンとバターを少々買いに来たのを見た貌と言えば伝わるだろうか)
        (若しくは、くびれを作ってしなを見せ付けるセクシーでビューティフルな真珠をつけた豚が現れたとでも言おうか)
        (「信じられない!」中でも一番その気持ちが強いのは、何を隠そう屈強なる剣闘士その人である)
        (それなりの体格をしてでっぷりの厚い脂肪をつけた、斧持ちの闘士ですらこの斬撃に、切れたハムに変わってしまったというのに、である)
        (腕と躰へ伝わる衝撃は弱く、しかし舵取るように滑らかな手触りを持って、筋肉が命令を無視したように、剣が流れて逸れてしまったのだ)

        (剣闘士はまず、神通力を疑った。成程、神のご加護と言って不思議な力が攻撃を退けたというのなら、それも信じられる)
        (しかしそれは現実逃避であることを、こいつの頭は、よせばいいのに気づいてしまう。“技に因って力を流された”のだ)
        (力にも技にも自信があるからこその、剣闘士としての矜持であり、その自信が、今の“技”に気づかぬ筈もない)

        (だがこの剣闘士はやっぱり阿呆である。屑であり、クソったれの、掃き溜めの、奴隷紛いの、人でなしのロクデナシなのだ)
        (「まぐれだ」「次はなんとかなるだろう」「同じ手で、何も変えなくても良い」「同じようにすれば次は斃せるだろう」)
        -- 2011-12-02 (金) 01:57:06

      • (観客は困惑の一途を辿っていたが、二つのことに気づく)
        (全くもって意中の外、放たれた矢も同じく、声をかける必要ナシのでくのぼうとしてしか見られない、)
        (「“この剣闘士”は強い」が一つであり、それ以上に深く深く印象付けられるもう一つ、)
        (「“この少女”は面白い」が二つ目であり、それは、白い陽射しを裸眼で見つめたかのように、激しく網膜に焼きついた)
        (歓声の色が変わり始める……)
        -- 2011-12-02 (金) 02:07:16
      • ひぃ、は、はぁあ……ぁあああー……!! 生きて、生きて、ひくっ、すぅ。死っ、死ー……!!
        (ファインプレイを魅せ付けて、しかしこの娘は鼻水垂れになる。涙と混じってぐしゃぐしゃの貌で、直視できない格好だ)
        (重い、ひたすらに重い斬撃を受け止めるには、少女の細腕は非常に役不足なので、逸らすだけで百足に刺されたように痺れる)
        (そこへ来るのは、名誉挽回汚名返上のために、新たな気概をくべてごうごう情熱を燃やしている剣闘士である)

        ひうぁああぁああ!!! やめて、やめて、よぉ、やめて、やめてくださぅっ、やめてください、嫌だ、やだ、やだぁあ!!
        (「ひょっとして失禁してしまっているのではないか」そうほど岡目に思える、恐怖の極致に居る少女へ、)
        (──無慈悲なる兜割り──しかし、それは先程と同じく、力もあり技もあるが、全力でしかない、全力以上を引き出すつもりのない、)
        (馬鹿馬鹿しい攻撃であり、また、少女は空へ羽ばたいて、剣闘士が斬るのはただ風の一陣のみで、手応えは毛ほどもありはしない)

        (5分程経過したろうか。コロッセオにおける5分は、もう決着して血糊がデッドの文字を描いた頃、という意味であるが、)
        (剣闘士の攻撃がなぞるは空の文字、掴むのは空虚で、天へ舞う少女を捉えきれずにいた)
        -- 2011-12-02 (金) 02:18:58

      • (クソッたれの剣闘士は学習をせずに、壊れた発条仕掛けの玩具になって攻撃を繰り返している)
        (その斬撃の冴えは、5分間全力で振り続けているにも関わらず衰えずぶれず迷わず、“強さ”がある)
        (しかし先程も述べたように、5分間全力で振り続けられるということは、全力以上を出してはいないのだ)
        (こいつはそれを出来ない。向上心というものがなく、強さの驕りを愚かにも首にぶら下げて、きらきらしているだけなのだ)

        (暴威の体言、観客席はと言うと、興奮のピークを過ぎてはいるものの、静かな情熱が手の中で脂汗になって浮かんで、)
        (度数の高い酒をくっと飲み下すような貌をして、アリーナを見つめる者ばかりになっている)
        (ここで、翼を持つ少女に応援を真っ直ぐ投げかける気持ちの良い気位を、こいつらが持っていないことは承知の通り、)
        (それでは何をしたのかと言うと、応援である。何をかと言うと、クソったれな気持ちいい剣闘士を応援し始めたのだ)

        (「やれ!」「どうした!」「やっちまえ!」「行け!」豚の鳴き声にも劣る応援が剣闘士に浴びせかかる!)
        (それは、剣闘士を発奮させる切っ掛けとなった。流石にへとへとの腕に躰でも、さすがに熟練の様相を見せて力を振り絞る)
        (彼には、勝機がある。「もう一度、ざくりと当ててやれば……!!」)
        -- 2011-12-02 (金) 02:33:56
      • (汗が風と遊び、翼は太陽に引かれて飛び、しかし地に落ち走り避け、縺れる足と神経が、躰を震わせる)
        ひっ、ぜー……ごほっ、げほっ、うぁっ、胸が痛いよぉ、助けて、助けて、怖い、……嫌だよぉ助けて……死ぬ、死ぬー……!!
        (疲れきり、すっかり肺が縮んでしまって動けない。それでも真っ白な翼はぴんと張って、蝋細工よりも透き通る)
        は、っ、ひっ、もうやだ、来ないで……痛い、やめて、ひぃっっ。(剣闘士がにじり寄る、ミッシェルは後ずさる、)
        (翼でさっと逃げれば良かったのに、アリーナの壁の端へ、追い詰り、ざりざりしたさわり心地が背中を襲う)
        ……ー……っ!!(細い、絹糸のような息が途切れそうになる。逃げ場を失くすと、恐怖が足元から、毛の先まで伝わっていく)
        -- ミッシェル 2011-12-02 (金) 02:52:46

      • (剣闘士はすっかりご満悦になる。ここまで苦労させられた相手だが、それだけに悦びは至極になる)
        (疲れの果てで乳酸をなみなみに溜め込んでしまった筋肉も漸く報われる時が来た)
        (歓声は最高潮だ。様々の熱気が一緒くたの竈で炎の仲間入りをして、巨大なものになっている。待ち望んでいる)
        (声の枯れた観客も居るし、熱くなり過ぎて失神した馬鹿も居た。ようやっとの最後を見ようと、皆で身を乗り出している)

        (いざ。クソったれの剣闘士は、屑鉄のグラディエーターを掴み、真っ向から振りかぶり、勿体つけて一撃を下す)
        (──無慈悲なる大上段の斬撃──)
        -- 2011-12-02 (金) 02:58:21
      • (そんなことをやっても、やっぱりこいつはクソったれなのだ。“無慈悲なる”斬撃は強いけれど、何も変わっていやしない)
        (身の気を振り絞った精髄を籠めたつもりだろうけれど、そこに考えなんて籠もっちゃいないのだ)
        (このコロッセオに居る奴隷剣闘士の間では名物となりつつある、ダシの効いていない塩味のスープ……)
        (気が抜けていて、でも栄養だけはなんとか取れるような、必要しか満たさないスープ……)
        (そのようなのだ。こいつは、一度弾かれていながらにして、ミッシェルを甘く見て叩き潰そうとしている)

        うぁあ、うぁ、うぁ、や゛っ!! やめで、ごめんなさい、はぁあ、やだ、やあ、うぁあああ゛……ぅうう!!
        ((キイン)非常に高らかなその音は、教会で鳴る鐘に似て、硝子のベルを揺らしたようであり、清く洗われていた)
        (無き咽ぶ不細工な歪んだ声が、断末魔の叫びに変わることもなく、最後の斬撃は振り落とされていた)
        (ミッシェルのすぐ傍の地面が砕かれて掘り返されている。そこへ斜めになって、グラディエーターが突き刺さっている)
        (娘の右掌に握られた剣が、高く掲げられていた。それは勝鬨ではない、それより前に上げられていたのだ)
        (斬光を閃かす突きが、グラディエーターの斬撃を逸らして、地面に逃がした。その光景を見定めた者が何人居ただろうか)
        (何もかも一瞬だった。盾ではなく、剣の咬み合いでこの小さな娘が、土鋼の屈強なる剣闘士を制していたのだ)
        -- ミッシェル 2011-12-02 (金) 03:16:31

      • (見ても信じる奴は居なかったろう。事実、真前で見た剣闘士も、体感するのは二度目であるのに、やはり信じていなかった)
        (“盾で防ごうと、それごと割って叩き潰すやり方”をしたのに、か弱い剣がそれを逸らすなんて誰が想像できようか?)
        (さてさて、“偶然”・“まぐれ”と来たら、次にこいつが考えることも解りやすい。「“何かの間違い”だ」)

        (何度も何度も全力の攻撃を繰り返した腕は、痺れて痛んで攣りそうになっている。地面に刺さった剣が抜けない、しかし、)
        (彼我の距離はもう殆どない。最後までクソったれな剣闘士は、肩口から倒れこむように突進を加えて、クソったれな結末を演出した)
        -- 2011-12-02 (金) 03:25:06
      • ひくっ、嫌だ、ぁあ、うぁっ、ふぅ、はっ、ぜええ……。けほっ、けほっ、けほっ。
        (少女は剣を取り落とした。驚愕と恐怖の入り混じった貌をして、表現もしようのない怯えに顔を戦慄かせていた)
        ……うぁっ……。……え? 何?(肉体の礫が(ずん)と軽い躰を弾いて、その場へあっさりと突き倒す)
        (藁に火を灯しても、もう少し持つだろうというほど呆気なかった。倒れる音は、(ぱさり)と小さい)
        けほっ……うぁ…………? ぐぇっ。(その後、背に足が乗る。大判の本を靴の中敷にすると丁度良い、大きな足だ、)
        (言うまでもなく、剣闘士のものである)
        -- ミッシェル 2011-12-02 (金) 03:34:04

      • (「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」)
        (それで響きあがる大歓声は、かなり自棄っぱちなものだ。それでも勝利は勝利で、それには安酒の酔いがしっかり含まれている)
        (見る人が見れば、この剣闘士は単に醜態を晒しただけなのだろう。しかし、ここは屑の掃き溜め。闘るも屑、見るも屑である)
        (そんなこと気にせず、終わり良ければ全て良しの、朝三暮四の猿共なのだ。なんにしろ、歓喜、歓喜である)
        (「勝利したのだ」「ようやく、やってやったのだ」という気持ちばかり先立つ剣闘士は、少女の背に片足置いて、)
        (格好良くポーズなんぞ決めているが、それはそこらの野良猫を苛めて粋がる餓鬼大将と大差なく、非常に始末が悪い)

        (しかしながら、「殺せ」とかそういうのが出なかったのは、皆、もう満足してしまったからだろう。早々に席を立つ観客がちらほら見える)
        (主催者はキリの良いところでサムズ・アップを綺麗にかまして、この一幕に終止符をちょんと打ってくれた)
        (客の反応が上々なので、この主催者もまたご満悦である)
        (踏まれて息を苦しくして、窒息しかかって青い顔していて、「どうして私がこんなめにあわなきゃいけないんだろう」)
        (と、走馬灯を見ながら心で毒づいているのはミッシェルただ一人だけだった) -- 2011-12-02 (金) 03:43:13
    • 第二試合
  • Life or death
    • 第一試合
      • (高らかに音楽が鳴らされ、四人の剣闘士が鎖を解かれ、コロッセオに出てくる)
        (其々が筋骨隆々な男たちであったが、その中でも一際目を引く化け物のようなでかさの男に、観客たちはニヤニヤと笑いを零した)
        (壊し屋。ここ数か月で殺した人間の数は両手両足の指を以てしても数えきれないほどになっている)
        (そしてその全ての殺し方が残忍で、客を喜ばせる方法であることが、否応にも観客のテンションを高まらせた)
        (戦闘形式は「バトルロイヤル」。最後の一人になるまで殺し合い、生き残る方式は、少なくともこの凶人の宴に三つの死体を約束していた)
        (殺されろ。殺せ。二律背反の欲望が大男に向けて放たれ、コロッセオは目に見えない熱気で温度を高めていく) -- 2011-12-01 (木) 21:42:52
      • (睥睨する、眼前にいる三人には知った顔も知らない顔もいる。だが、こちらの顔を知らない者はいないだろうと口角を上げた)
        (各々の得物を各々の構えで構えたその姿は、流石に何か月も生き延びてきた剣闘士だけはある)
        (最初の一か月、二か月は簡単だった。1VS1の勝負で負けたことはないし、何より最初の時点で覚悟が違う)
        (殺す覚悟というのは、中々に捻出しづらい。特に相手が人間で、人の形をしている場合は)

        ゲシャシャシャ!!

        (大声で嗤うと、ちらちらと伺っていた三人の男の目が、一斉にこちらを向く)
        (ある種打算的な思考の共有が行われたのが見て取れた)
        (――まず最初に、この大男を殺そう。正しい判断だと嗤う。個々の能力でいえば最も優れている存在と、最後まで残るのはその場の三人、誰にとっても得策ではない)
        ――三人一遍にかぁ? おもじれぇじゃねえが。(こちらが好戦を見せると、三人は音もなくこちらに剣を構えた)
        -- ヌヴァル 2011-12-01 (木) 21:49:15
      • (舐めやがって。三人の思考が共有化された。同時に、目の前の敵が明らかな脅威であることも認識として一致した)
        (観客が高らかに「殺せ」「殺せ」と叫ぶ。誰もが三人に蹂躙される化け物の姿を見たがっていた。泥仕合であればあるほど、血なまぐさくあればあるほど、観客は喜ぶ)
        (いかな体格に優れた男であろうとも、三人に同時に襲い掛かられれば敗北は必須。最初の供物を要求する悪魔の笑みが観客席に咲く)
        (醜悪な巨漢が膾にされる姿を、今か今かと待ちわびながら、足を、手を鳴らす) -- 2011-12-01 (木) 21:53:38
      • (3VS1で勝てるかと問われれば否だ。数の脅威というのはそれだけ優位であることは承知していた)
        (窮鼠も三匹集まれば一匹を仕留める間に目なり胎なりを破壊でき、勝利を収めることができる)
        (戦争は数であるとかつてノルニルの神話の中に出てきた主神も言っていたのを今頃になって思い出す)

        ゲシャ……本当に、3VS1ならの話だげどなぁ。
        なあ、でめえ、無防備ずぎやじねえが?

        (一番近くにいた男に向かって話しかける)

        確がになぁ。三人ががりじゃあ、オデも勝ぢ目ねぇげどなあ。
        ぞの場合、一番近ぇオメエが「生贄役」だでよ?

        (男に目に見えた動揺が走った)
        (目的は一致しているが、結末は一致していない。――皆この状況は三人にとって平等ではない)
        (誰か一人が犠牲になれば、三人の足並みが揃えばあるいは勝てるというのが間違っていないように)
        (三人の足並みが揃わない今の状況で、何の犠牲も払わずに勝利を得られるというのも、正しくはない)

        (一瞬の隙に、滑り込むように足を踏み込み)
        (全力で――木槌を下から上へと振り回す)
        -- ヌヴァル 2011-12-01 (木) 22:02:18
      • (肉が拉げる音というものは、何度聞いても吐き気を催す。だがその吐き気さえ恍惚の中にあれば至高の音楽と化す)
        (破裂ではない。破砕でもない。ただ単に折れ曲がり、宙を舞う男の体は派手さこそなかったが、赤い軌跡を空中にまき散らし)
        (――その一撃で確実な死が訪れたことを、誰もに教えた)
        (巨漢が放つ渾身の一撃はアバラをへし折り、心臓に的確にダメージを与え、内臓系を蹂躙して、背中から衝撃を突き抜けさせていた)
        (死後の痙攣に打ち震える大凡生きていたとは思えない姿になった男と、その吐瀉血に塗れ赤く染まった巨漢の姿は)
        (残る二人に確実な恐怖を植え付けた) -- 2011-12-01 (木) 22:06:25
      • (人を殺すのが楽しいかと問われればはっきりと答えることができる。楽しすぎて射精しちまいそうだよ、と)
        (一度やってみればわかる。そんな観客席(ところ)にいねえで出てきてみろよと周囲の殺意に向かって心の中で呟く)

        ああぁ。一人。
        一人殺じぢまっだなあ、おい……。
        いいんがぁ? どっぢが犠牲になっでりゃ、今の攻撃の間に殺ぜだがもじれねえのによぉ?
        オメエらバガばっがりだな。

        (唾棄するように言うと、憤怒に塗れた顔で二人が剣を向けてくる)
        (まだ戦意が衰えていないのは正直に賞賛してやりたかったが、そういう場ではないこともわきまえている)
        (家畜が家畜を褒めて何になる)

        おお? まだ勝でるづもりでいやがんのが?
        ぢゃんど言ってやろうが。

        ――2VS1じゃ、オメエら。オデには勝てねえよ。
        最後のチャンズだっだんだよ、今のぁ。
        なんで三人で一人を殺れるチャンズを無駄にじてんだ、オメエら。
        ……オデぁ頭悪ぃけど、オメエらも相当頭わりぃなあ。
        もう一度言っでやるよ。……二人じゃ、勝でねえんだよ。
        -- ヌヴァル 2011-12-01 (木) 22:14:03
      • (しかしじりじりと輪は狭まる)
        (どの道、この男を倒さない限り、生きては戻れない)
        (この男は交渉するに値しない。倫理や論理の崩壊した化け物であるという認識だけは、二人の中に共通して存在した)
        (しかし……その後を、すでに想像させられている。どちらかが捨て身で攻めに入った後、万一目の前の男を倒せたとしても、その後の勝敗は天秤よりも明確に傷の少ないほうに傾く)
        (協力したうえで出し抜かなくてはならないという最悪の状況が、最初の一歩を進ませないでいる) -- 2011-12-01 (木) 22:18:32
      • (ダメだぁそれじゃあ。それじゃあ、0点だ。採点すらしてやれねえよ)
        (弁えるっていうのは、生き残るために誰もがしなきゃいけない最低限の儀式だ)
        (それすらも怠る怠け者に待つのは、ただの死だぁ)

        なあ……オメエら。
        殺じ合えよ。
        ぞじだら、勝った方だぎゃ死ぬ思いするだげで、時間いっぱい見逃じでやるごともでぎらあ。
        観客は一方的な試合みでえわげじゃねえだろ? だっだら、利用しでやれよ。
        オメエらが盛り上げられんなら、オデが手ぇ出ざなぐでも、興行は成功ずんだろ?
        だからオメエら。
        ……余所見してんじゃ、ねえよ。っでな。
        -- ヌヴァル 2011-12-01 (木) 22:25:05
      • (顔面を掴まれ、男の視界が塞がる)
        (目を逸らしたのは一瞬だったが、そこに迷いが乗った時点で既に勝敗は決していた)
        (土埃を巻き上げて踏み込んでくる男の腕を浅く切り裂く剣撃などものともせずに、巨漢の右腕が男の顔面を掴む)
        (まるで玩具のように胴体から引き抜かれ、脊椎と背骨のおまけのついた首から上が空中を舞う)
        (観客の数人と目があったその死体の表情は苦悶と後悔に塗れていて)
        (力任せに首を引き抜かれた胴体から、冗談のような鮮血が溢れる頃に、ようやく地面に転がることが許された)
        (狂気が狂気を呼び、沈黙をしていた観客たちが狂ったように叫び始める)
        (喝采を、賞賛を、罵倒を、ありとあらゆる感情を織り交ぜた狂気の叫びを) -- 2011-12-01 (木) 22:30:42
      • (愉しい。人を殺すのは、人の心を殺すのは、魂が打ち震える)
        (観客の罵倒や暴言を背に受けながら、一歩一歩、最後の獲物に向かって近寄っていく)

        ――なあ。
        どうずりゃいい。
        オデぁな。別に生ぎ残れんなら、なんだっでいいんだで?
        生き残っで、ごごにぶち込んだバガども皆殺しにじでじまえやぞれでいいんだ。
        なあ。
        どうずればいいどおもう。
        (虚ろな目で、歯の根が合わないようにがちがちと震え始めた男を見ながら言う)
        -- ヌヴァル 2011-12-01 (木) 22:43:41
      • (近くで見ると、威圧感は尋常ではない)
        (言わなくては、請わなくては。殺さないでください、助けてくださいと)
        (死んでしまえば何も残らない)
        (だったら、誇りすら投げ捨てでも生き残らなくては――)
        たす、けっ……! -- 2011-12-01 (木) 22:44:58
      • ああ。わりぃなぁ
        ――オメエに聞いたんじゃ、ねえんだぁ
        -- 2011-12-01 (木) 22:45:46
      • (その言葉が、理解できなかった)
        (ただ、その数瞬、頭がクリアになって、目の前の巨漢の言葉以外の言葉がようやく聞こえてきた)

        (殺せ)
        (殺せ殺せ殺せ)
        (殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ)
        (殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ)
        (殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ)
        (殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ)

        (そこに存在したのは、悪意の大合唱。――自分が死ぬには、十分な理由だった)
        (木槌が持ち上げられ、喜悦の表情と共にたたきぶぎゅ――) -- 2011-12-01 (木) 22:48:11
    • 第二試合
  • Life or death
    • 第一試合
      • (《棘付き鎖》(スパイクト・チェイン)がしなる。鎖がじゃりじゃりと音を立てるたび、暴れ狂う猛獣の肌に棘が凄惨な爪痕を残す)
        (只今は獣と闘士の戦いとの真っ最中。だがしかし、その様は闘技というより、ペットをしつける猛獣使いめいて一方的だった)
        (錆びついた棘付き鎖をこともなげに振るうのは筋骨逞しい巨躯のヒューマン。鎖使いとしてそこそこ名が知られた男だ)
        (猛獣が悲鳴を上げる。観客を沸かせるため甚振らせていた男も、獣の体力が限界であることを察し、止めにかかる)
        じゃらりと音を立て、蛇じみた機動で鎖が動く。獣の首に巻き付く。そして、締まる。ざっと10秒弱、決着は呆気無く訪れた)
        (猛獣の四肢が脱力し、ズタズタの死体になるとともに観客は沸き立ち、鎖使いの男はそんな観衆に諸手を挙げてアピールしてみせる) -- 2011-12-01 (木) 01:54:04
      • (さて、その対面。今しがた無残に死に果てた猛獣が出てきた門の向こうに巨影あり。やはり筋骨逞しいが、異なるのは肌の色)
        (蛮族がそこにいた。冒険者に討伐されるモンスターとして一二を争うであろうオークの生まれの男。目元と頬、口元には隈取りのような赤い痣)
        (男は戦いを楽しむ性分である。だが事ここに至って、この狂戦士は苛立っていた。なぜか? 答えは明白、対手があの男だからだ)
        (別に動物を見せ物のように殺されたことに腹を立ててはいない。あの猛獣が不憫だとは思うが、死んだ以上向かう先は原始の諸精霊達の輪の中だ)
        気に食わねぇな(舌打ちする。相手はいかなる理由によってか、この自分と戦う前にあの猛獣との取り組みを持ってきてみせたのだ)
        (実際のところ、あの鎖使いは先月に男が「軽くスキンシップした」相手に他ならない。駄賃にスープを頂いたのだが、ついでに骨の二、三本も貰っていた)
        (腹に饐えかねこの仕打ち。おそらく、「お前など、こいつを相手にしてからでも殺せるのだ」と、そういうアピールなのだろう。鼻につく出し物だ)
        くそったれめ。連戦続きでも俺を殺せるってか? 気に食わねえな、くそったれ(ぶつぶつと呟く。男の苛立ちをよそに、門が開かれた)
        -- カブギ? 2011-12-01 (木) 02:00:35
      • (だが鎖使いの方はといえば。左を見ては手を挙げて、右を見ては棘付き鎖を振り回す。花形役者にでもなったつもりか、沸き立つ観客達にアピールの真っ最中だ)
        (門が開いたことなどお構いなし、オークには目もくれない。気づいていないのか、あるいはわざとそうしているのか。いずれにしても、挑発だ)
        (男が笑う。歓喜の笑みではない、これから自分が殺す「豚っ鼻のゲロ肌野郎」をせせら笑う嘲弄である。もはや準備は整った、それが愉快でたまらないという顔)
        (あとは先月やられたように、「軽くスキンシップして」やればいいだけのことなのだから。徒手空拳ならいざしらず、慣れ親しんだこの武器があるならば)
        (そしてこの万雷の観客の前ならば。怒りを誘った冷静ならざる状態ならば。男は笑う、勝利を確信して、夢想した残虐の中でこの上なく笑う)
        (その時だ。門のほうから、血も凍るような絶叫が響いたのは) -- 2011-12-01 (木) 02:04:39
      • Nooooooooooooograh!!!
        (吼えていた。7フィート310ポンド、畜生以下の「豚鼻野郎」が吼えていた。たっぷり肺の空気を吐き出すように、怒りを知らしめるように吼えていた)
        (遠雷のように、木霊のように咆哮が消えていく。全てを吐き出した蛮族は、静まり返ったアリーナの大気を静寂ごと吸い込むと、再び牙まみれの口を大きく開く)

        skai! Ru'eeg'a jat!(糞野郎が! さっさと黙りやがれ!)
        (対面の男。驚きのあまり笑みが崩せていない鎖使いに向けて堂々と人差し指を向け、先の咆哮に匹敵する大音声で叫ぶ。乱雑なオークの言語を)
        eem Lok-Regar Gol'Kosh!(俺はとっくに準備ができてる! この斧にかけてな!)
        (背中の斧を示す。柄も含めると6フィート前後はあろうかという、しかし錆び果てた両手斧を。両手で握りしめ、地面に突き立てそして掲げ)
        gib ee Klerg! trok'uk trok'uk klergblud tur'lik!(戦わせろ! 俺は戦いたくて仕方ねえんだ!)
        Lut hu'uk! Lut arhm! Lut du'ub!(てめえの首を! 腕を! 足を!)
        uk tiisub! uk Fugruub! uk thuutub!(ぶったぎって! もぎとって! 噛み千切ってやりてえのさ!)
        (これでもかとばかりに、ゼスチャアを交えて殺し方を示してみせ。そして静まった「間抜けな奴ら」に振り返ると、諸手をあげてこう叫ぶ)
        Buubu Ugub siehub,Ogtuuk Klerg!(さあ豚ども、照覧あれ! 戦いの時間だぜ!)
        Lok'tar ogar! kordobuur!(勝利かさもなくば死を! 嵐の精霊王のために!)

        (発音一つで意味が変わるオークの乱雑な言葉を理解するものなど片手の指で足りるかどうか。だが、言いたいことはその場の全員にはっきり伝わった)
        (男は笑っている。あの鎖使いより自信満々に、「殺してみせる」と顔中体中、斧にも鎧にも足の裏にも書いてあるのだから。奴は「殺る気」だと、理解できる)
        (観客が沸き上がる。これから始まる野蛮な戦いに期待と嘲り、そして乗り移った滾りを込めて。鎖使いの「おべっか」なんかより沸いてみせた)
        -- カブギ? 2011-12-01 (木) 02:14:26
      • (鎖野郎の顔? そんなもの、オークが振り返って確認するまでもない。「くしゃみした豚のように」歪んで寄ってキレていた)
        (対抗のつもりか、腰だめに腕を構えて顔中首中に血管を浮かび上がらせ、野郎が吼える。言葉になっちゃいないが意味は一つ、「ぶち殺してやる」)
        (ズパァン! そのまま振り下ろされた棘付き鎖が地を噛んでしなり、音を鳴らす。鎖の一つ一つに鋭利な棘が備え付けられ、両端にはやはり刺々の鋼球二つ。それがこの野蛮な武器の正体だ)
        (両端それぞれ5フィート弱、一本の鞭としてみれば10フィート先まで悠々届くそれは、動物に例えるなら「ハリネズミを飲み込みそこねたヘビ」だろう)
        (ゆえに、棘付き鎖のもっとも得意な間合いは槍に似て中距離である。いかに怒り狂っているとはいえ、男は突撃するほどの愚は犯さない)
        (いつものように足に絡めて引っ張り上げ、倒れたところを打って引き裂いて「しつけて」やればいいだけのことだ)
        (野郎は笑みを取り戻す。ヘビであればしゅうしゅうと息吐くところ、手の中の「棘付きヘビ」はぢゃらりと音立てて殺意を受け止めた) -- 2011-12-01 (木) 02:22:24
      • (だがどうだ。対するオークは斧をしっかと両手で握り、前のめりに構えている。「しつけて」やってる獣どもとは大違いに)
        (牙をむき出しにしているところは同じだ。「食ってやるぜ」と言いたげな目で睨むところもよく似ている。だが違う。それは、そうその姿は)
        (まるでこれから。「番蛇野郎」などお構いなしに突っ込んで。その手に握った、高級チーズのように錆びまくりの無様な凶器を振り上げて)
        (肌が裂けることなど、肉が千切れることなど歯糞ほども気兼ねなく振り下ろし。「ぶち殺してみせる」とでも叫んでいるような、前のめりだ)
        (そしてオークが口を開く。またも空になった両肺に存分に大気を―――今度は戦場の高揚と共に―――吸い込んでみせ)

        Waaaaaaaaaaaaaagh!!!!(グァーグ!!)

        (絶叫走る! 全く同時、意味なんてありゃあしない、蛮性そのままの雄叫びが発されて、音の波が飛ぶより早いかわずかに後か、巨体が駆け出す!)
        Aaaaaaaaaaaagh!!!!(盲滅法なんてものじゃあない、フォームもクソもない。しゃかしゃか短い足を振って、ロケットみたいに大地を蹴る)
        (なんて無様な突進だろう。なんて危険な捨て身だろう! 額に血管が浮かび上がり、喉から血が出るほどに叫ぶ、走る、叫んで走る!)
        Aaaghhh!!(跳躍! 土煙が狼煙のように後に続き、あっという間に鎖野郎の真ん前まで辿り着いた斧が、全体重ごと振り下ろされた!)
        -- カブギ? 2011-12-01 (木) 02:30:57
      • (莫迦という言葉はきっとこいつのためにあるんだろう―――滅茶苦茶に「豚かき」して近づいてくる緑の肉達磨を見て、きっとそいつはそう思った)
        (鼓膜が震えるなんてものじゃあない、野郎の吐き出した唾が、音と一緒に全身ぶちまけられて塗れてるんじゃないかというほどの大絶叫、大突進!)
        (喉の奥から悲鳴が漏れる。給餌場で「軽くスキンシップした」時とも大違い、そうともこれがあの豚鼻野郎の十八番、叫んで突っ込むただそれだけ)
        (だが実際恐れることはない、結局やることは同じだ。一拍遅れて冷静さを取り戻し、手元の「可愛い蛇」をしならせて、無様な足を取りに行く!)
        (結果はご想像の通り。「蛇ちゃん」が舐めたのは地面だけ。それもそのはず、鎖野郎は相手を嘗めていたんだから当然だろう)
        (棘付き鎖が落ち込むように鎌首を一周させたときにはすでに頭上。怒りという単語が木の股から出てきて「殺す」って言葉を貪り育ったような奴がいる)
        (咄嗟に片腕を顔の前にかざす。申し訳程度、ほつれた腕甲が「さあどうぞ」とばかりに斧の前にさらされた)
        (風切り音、粉砕音、絶叫! 今度の叫びは鎖野郎が発したものだ、そしてその色は苦痛、後悔、そして怒り。哀れな片腕は、ささやかな防具ごと折れ曲がっていた)
        (「くの字」どころか「不等号」だ。折れて砕けてへし曲がった肉と骨の付け合わせから、鮮血のソースが何条にも別れて噴き出し飛び散る)
        (ついでにどうやら、鎖野郎の頭に生えてる「大事なもの」もプツリとイッてしまったらしい。オーク顔負けのとんでもない雄叫びで悲鳴を消して、ああなんたることか)
        (無事な片腕だけならまだしも、すっかり「へそを曲げた」もうかたっぽうの腕でまで棘付き鎖を握りしめ、左に右に上に下に振るいまくる!)
        -- 2011-12-01 (木) 02:40:17
      • ハァッハハハ!! 腕ぇ貰いィ!!(ズンッ! さらなる粉塵を巻きあげて着地した狂戦士は笑う。大いに笑う)
        (顔はすでに血まみれ朱染め。その特徴的な赤い隈取りがわからなくなるほどにソースでトッピングされた口元を、舌がべろりと一周してきれいにした)
        (愉快だ。何が愉快かといえば、別にこいつの腕をへし曲げてやったことじゃあない。鎖野郎まで「イッちまった」ことが愉快でならないのだ)
        へへへへ! 暴れん坊の蛇ちゃんだなぁ、おい!(右往左往、上昇下降する棘付き鎖がその緩んだ顔を、隆起した肩を、腕を足を胸を腹を這いまわる)
        (そのたび鎧は千切れて傷つき、そうでない場所もやっぱり千切れて傷つく。大小様々、数え切れない「キスの跡」が嫌なくらいに刻まれる)
        (とんでもなく痛い。そりゃあもう、どんな札付きの猛獣だってのたうちまわって腹を見せ、「御主人様許してください」と媚を売るくらいの痛みだ)
        おぉらよぉ!!(だが男にとってそんなものはどうでもいい。だって、楽しいじゃないか。お互いわけわからなくなって、殺して殺されるために闘っているんだ。よそ見は出来ない)
        (得意げな声と共にオークの手が伸びる。暴れん坊の棘付き鎖に伸びて、手首が肘が赤い傷でデコレートされ、そうしてようやく「掴んだ」。何を? 鎖をだ)
        (林檎くらいはバスケットごと握り潰せる筋力で指が締まり、当然肉に棘が食い込みぶしゃりと血が飛沫をあげる。しかも持ち手はそれを振りまくるのだ)
        力比べと、行こうじゃねえかぁ!!(しかしそんなことは「どうでもいい」。同じく力任せに握って動きを止めると、海賊どもが錨をあげるように思い切り引き上げる!)
        -- カブギ? 2011-12-01 (木) 02:49:15
      • (なんだこいつは? なんで倒れない? どうしてあの可愛い「しつけた奴ら」みたいに倒れて仰向けて媚びて見せないんだ?)
        (そうか、しつけが足りないからだ。だったらこうだ、こうだ、こうだ!)
        (多分そんなことを考えながら、鎖野郎は駄々っ子みたいに腕を振り回す。その度思ったとおりに鎖が獲物を打ちすえるが、そいつはびくともしやがらない)
        (それどころか。自分でも素手で握るなんてとんでもない、防護された持ち手の部分じゃなきゃチャレンジしようとさえ思わないその「蛇の鱗」を、奴は掴んでみせたのだ)
        (なんだこいつは!? きっと頭の中でそう叫んだことだろう。あるいは、もっとキレたか、余計に怯えたかのどれかだ。結果はどれでも同じ、さらに暴れる)
        (けれども当然、思った通り、「思った通りに」なってくれない。引っ張る。肉がそげる。また引っ張る。血がどんどん溢れる。まだまだ引っ張 れない!)
        (綱引きならぬ鎖引きは、始まって三秒しないうちに勝敗がついた。おもいきり棘付き鎖を握っていたため、鎖野郎の体は紙くずみたいに空に舞う)
        (そのまま着地なんてさせてくれるわけがない。山なりに空を飛んだかと思えば、翼はさっさとさようなら。向かってきたのは青い空ではなく赤茶けた土の壁)
        (それが地面だと認識するより先に、鼻がまずこんにちは、続けて額、唇、瞼と熱烈なキスをかわしてしまう。骨が砕けたかひしゃげたか、まあとにかくそんな音がした)
        (ああ、前歯のやつもお見合いしていたようだ。ただでさえくしゃみした豚みたいだったその顔は、鼻をかんだティッシュみたいに滅茶苦茶だった)
        (鼻血と吐血と折れた歯と砕けた骨とあと色々、ついでに苦痛や怒りや他の感情まで混ぜあわせて何かを吠え、男はオークに掴みかかる)
        -- 2011-12-01 (木) 02:57:10
      • 遊覧飛行だ! ハァハハハッ!!(けたたましく笑う。子供をあやす父親のように、虫を踏みつぶす子供のように豪快に笑う)
        (ぐしゃり、めしゃり、どちゃり。どれでもいい、どれでもある衝突音。顔面着地した男の末路は梅干しみたいなダイナマイトな整形手術だった)
        (勿論それで終わらない。いや、ここからが始まりだ。たっぷり血を浴びて、それでも全然満たされないのは蛮勇と闘争心。もっとだ、もっと、もっともっと!)
        (男の心臓が莫迦みたいな音で高鳴る。血がめぐって、頭が赤いジュースで一杯になり、そして男は垣間見る。自然世界にしろしめす精霊達の御姿を)

        Waaaaaaaaaaaaaaaaagh!!!!

        (絶叫! これこそが男の本懐、本番、本気本能本分本性。原始の精霊に愛された狂戦士、バーバリアンの激怒(Frenzy)である)
        (そうら、獲物が起き上がった。「食べてください」と健気にやってきた。だったらどうする? こうするだけだ、こうして、こうやって、こうしてやる!)
        (まず頭突く。血まみれ骨まみれの男の喉から何か呻きらしいものが漏れでて、お互いの額が裂けてぶしゃりとタンカスのような血が吹き出る)
        (獲物がのけぞる。オークが叫ぶ。斧を振り上げて、下ろす。上げる、下ろす。上げる下ろす上げる下ろす上げる下ろす上げる下ろす!)
        (肩を腕と額を頭を土手っ腹を股ぐらを、錆びきった斧が噛んで、裂いて、叩いて、割ってしまう)
        (もはやそれは暴力の雪崩だ。一切防御も考えず、回避もせず、容赦もせず、そして怒るだけの大激怒。血を求めるバーバリアンの原始の本能)
        (暴力装置と化したそいつが止まる時があるとすればそれは二つ)
        (殺すか)
        (殺されるかだ)
        -- カブギ? 2011-12-01 (木) 03:05:04
      • (さて、哀れな獲物は痛ましいことにまだ生きていた。とっくに血は2000cc以上も流れでて、骨という骨、筋肉という筋肉が裂かれているにもかかわらず)
        (とっくに理性とかいう「邪魔者」がどっかに行ってしまった男は、それでも反撃を試みる。動かない腕を振って、多分鎖をぶちこもうとしている動きをする)
        (そこに斧。さらに斧。あそこに斧、ここにもあっちにも斧が降ってきて叩く/割る/裂く/ぶったぎる)
        (驚かないでほしい、こいつはまだ生きている。かくんと糸切れ人形みたいに膝から落ちて、べしゃりと潰れた顔をオークの胸板に押し付けながら生きている)
        (そして生きている以上、結末は一つだ)
        (赤々と染まった髪をオークが掴んで、男を地面に引き倒した)
        -- 2011-12-01 (木) 03:08:38
      • (それまで機械のようにひたすら上げて下ろしていたオークはぴたりと動きを止めていた)
        (引き倒した獲物を見下ろす。わずかに上下している肩を見る。そして斧を見る。もはや「鉄のこびりついた木の棒」になってるそいつは、あと一回ぶち切れる)
        (それでいい。オークは笑う。そしてゆっくりと観衆を睥睨する。多分、虚無的な瞳でそれを見る少女のことも)
        (ゆっくりと、人差し指を突き立てた拳を掲げる。そして静かに言う)
        Lok'tar ogar.(勝利か、さもなくば死を)

        (反応しない豚どもを急かすようにもう一度)

        Lok'tar ogar.(勝利か、さもなくば死を)

        (さあ、ざわめいた。もう一度だ)

        Lok'tar ogar!(勝利か、さもなくば死を!)

        (ようやく答えてくれた。もう少しだけいってみよう)

        Lok'tar ogar!!(勝利か、さもなくば死を!)

        Lok'tar ogar!!!(勝利か、さもなくば死を!)

        Lok'tar ogar! Lok'tar ogar!! Lok'tar ogar!!!(勝利か、さもなくば死を! 最後の判決を!!)

        (観客たちの答えは一つだ。親指が一斉に下を向く。オークは笑う、「精霊どももそうしろとおっしゃっている」からだ)
        (突き上げられた片手が斧にそえられ、両手でしっかとそれを握る。ゆっくり振り上げる。狙いを定め、一呼吸)
        精霊どもにかけて、友よ。楽しかったぜ。

        (判決は振り下ろされ。獲物は生き絶え、原始のエントロピー、生と死の輪廻、大いなる精霊たちの輪に新たな生命が加わった)
        -- カブギ? 2011-12-01 (木) 03:16:01
      • (そのあとは。言葉通りに「してやった」獲物の首を掲げて叫び、たっぷり沸かせたあとにそいつは帰っていった)
        ああ……やっぱいいなあ、戦いはよお(満足気な笑みと共に。邪悪でもなく、醜悪でもなく、真に戦いを楽しんだ戦士の顔で笑い)
        (鉄くずと化した斧を放り捨て、怒号にも似た歓声の中、オークは静謐へと帰っていった) -- カブギ? 2011-12-01 (木) 03:18:25
    • 第二試合
  • Life or death
    • 第一試合
      • (コロッセオに立つ少女 閨の仕事の際に、珍しく相手の金持ちに一つ注文をした 特例で、ある相手との剣闘を行わせてほしい、と)
        (戦いに飢えた剣闘場はすぐにそれを許し、エキシビジョンとして用意された闘いの場に、キャスカは腰枷を外して立っている)

        (現れた相手は、先日に獣人に寄って屠られたのと同じ種類の猛獣――若い獅子であった) -- キャスカ? 2011-11-30 (水) 01:02:32
      • (客席は大いに沸き立っている 目の前の手枷を施された少女がどのように獅子に噛みつかれ、引き裂かれ、叫びをあげるのか 下卑た野次が幾つも飛ぶ)
        (コロッセオに降り立った獅子もまた、目の前の相手の脆弱さに舌舐めずりをしていた 今の所この獅子が喰い殺した剣闘士は十数人、彼の中では自分こそが最強であった)
        (今度も同じように、爪で殴り牙を立て、餌を味わう――そんな御馳走を思い浮かべつつ、獅子は目の前の餌に疾走を始めた) -- 2011-11-30 (水) 01:05:50
      • (何故自分はこのような対決を求めたのか?別段、獅子を殺したくなったわけでもない、目の前の相手に恨みがあるわけでもない)
        (目的は唯一つ―――あの獣人と戦いたい。彼女は自らの内に生まれたその願望に気付き、そしてそれを達成しようと、自分で考えた最良の答えがこれである)
        (すなわち、相手と同じ相手を、「同じように」倒せば―――きっと、あの獣人と組まれることもあろうと そう、何処までも不器用な答えを導き出して)

        (迫る獅子の体躯に、なんの畏怖も絶望も感じない ”この程度のお遊びはかつて何度も味わっている” そう、子供の頃の奴隷の時代に)

        (跳躍によって獅子の隙をついたヒメリンゴとは、対極――身を伏せ突撃することで、獅子の虚を突き、初撃である前脚の爪撃を寸で回避する)
        -- キャスカ? 2011-11-30 (水) 01:12:40
      • (目前10cmの、驚愕に包まれている獅子の顔面に、全身の体重と、捩じりと、捻りをかけて、自らの膝を獅子の顎に叩きこむ)
        (その一撃は少女が見舞ったにしては異様に重く、獅子の胴体が一瞬跳ねて宙に浮く ――この瞬間、少女の勝利が決定した)
        (獅子の体勢が戻る隙を与えず、自らの胴の回転力をそのまま流用し、喉に一撃、鼻腔に一撃、右目に一撃、重い蹴りを見舞う その動きは余りにも早く、瞬きほどの時間に三連撃)
        -- キャスカ? 2011-11-30 (水) 01:20:24
      • (『旋』と呼ばれる回転胴回し蹴りの三連撃を叩きこみ―――観客が大いに沸く 最後の一撃で獅子を吹き飛ばし、お互いの距離は5mほど開いている)
        (キャスカはとどめを刺さんと、獅子に向かい突貫する―――が、ここで想定外の事態が起きた 対戦相手との絶対的な力量差を感じ取った獅子が、背中を向けて逃げ出したのだ)

        ……ふざけるな(眼前を疾走する百獣の王を、鋭い眼光で睨む それは怒りにも近い感情――私の目的を、阻むな)

        (頭蓋骨をネリョチャギで潰す予定だったが、最早殺せれば何でもいい 二の脚で獅子を追い始める アリーナの石畳にひびが入るほど強く地を踏み、跳躍の連打の様な走法で瞬く間に走る獅子に追いつき――その背、首に脚を掛けるように飛び乗った)
        (獅子が暴れ始めるその前に、がっちりとホールドした脚をそのまま、獅子の首を軸に、ぐるんっと一回転 『転蓮華』と呼ばれる奥義により―――べきり、と嫌な音がアリーナにこだました)
        -- キャスカ? 2011-11-30 (水) 01:27:37
      • (獅子がアリーナの床に伏し、倒れる 観客席からの大喝采と大ブーイングの中、獅子の首から脚を外し、アリーナに佇んだ)
        (アナウンサーによって、自分の勝利が告げられる…だが、自分の本当の目的は、これからである あの獣人と同じ行為を、ここでしなければならない)
        (獅子の首に向かって、自らの鍛え上げた足刀を、すさまじい切れ味で何度も繰り出す 一撃ごとに獅子の血肉が裂け飛び散り、何度目かでズバッ、と首が斬れ落ちた)
        -- キャスカ? 2011-11-30 (水) 01:31:47
      • (控えていた兵士たちが、見覚えのある光景を目前にしてざわめき立ち急いでコロッセオに駆けこむ だが、もう遅い)
        (足でむんずと獅子の首を掴み、それを観客席、一番ブーイングが大きかった所に――――投げ込む)
        -- キャスカ? 2011-11-30 (水) 01:33:40
      • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp013138.jpg -- キャスカ? 2011-11-30 (水) 01:33:57
      • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp013139.jpg 
        (これで、自分の目標は達した 首が落ちた所はどうやら獣人の時と違い、ただのごろつきの上だったようで、そこまでの騒ぎにはなってないが――意志は示した)
        (あとは、あの獣人と自分の剣闘が組まれるのを待つのみ――――そう思った辺りで、思いっきり衝撃が後頭部に走る 思い切り警棒で殴られた 自分の目的の遂行のためには仕方ない被害と言える)
        (そのまま、妙に満足した気持ちのまま――意識は闇へと落ちていった)
        -- キャスカ? 2011-11-30 (水) 01:36:33
    • 第二試合
  • Life or death
    • 第一試合
      • (コロッセオに老いた獅子が放される。)
        (その鬣に艶は無く、しかし長い間食事を与えられていなかったのだろう…)
        (瞳だけはギラギラと輝いて、目の前の貧相な獲物を見つめていた。) -- 2011-11-29 (火) 22:55:37
      • (獅子に相対するのは長い耳を持つウサギ)
        (戦いの心得など無いのか、その場に立ち尽くしている)
        (老いた獅子が相手とはいえ、こちらは両手を塞がれている上にその体はあまりに小さく 武器らしい武器といえばその足に見える爪ぐらいか)
        -- ヒメリンゴ 2011-11-29 (火) 22:57:59
      • (観客席を見上げる。)
        (観客席の一番上等な席、着飾ってこの悪趣味な見世物を愉しむ貴族の姿を)
        (それから、野次を飛ばす民衆の姿を)
        (存分に見渡して、それから不快そうに眉を顰めた。)
        (彼らが望んでいるが何かは察しがつく。獅子にいたぶられる兎の姿が見たいのだろう、長く楽しめれば楽しめるほど 良い)
        (つまり、自分にこの老いた獅子が充てられた理由は そういうことだ)

        ばかにすんな

        (小さな呟きは歓声に飲まれて消えた)
        -- ヒメリンゴ 2011-11-29 (火) 23:08:56
      • (獅子が唸りをあげて地面を蹴る)
        (衰えているとはいえ、なかなかどうしてその姿は迫力があった)
        (未だ構えるでも無くそこにいる、愚鈍な兎を噛み殺そうと牙を剥く。前足が地面を一際強く蹴る)

        (あと数秒もしないうち、そこには獅子の鋭い爪に引き裂かれ地面に伏す兎の姿がある筈だ)
        (大凡観客の誰もがそう思って疑わなかっただろう -- 2011-11-29 (火) 23:19:10
      • (獅子が自らに向かって躍りかかってくるのと、ほぼ同時)
        (一瞬その体が沈む。その目が見るのは獅子ではなく、上)
        (それから両足で強く地面を蹴った。爪が地面を抉って土煙が舞う)
        (兎が跳んだ、とどれだけの人間にわかっただろうか。少なくとも、獅子の行く先だけを注視していた人間には消えたように見えたはずだ)
        (それ程に高く。跳んだ兎は、遙か下に見える獅子にようやっと目をやる)
        -- ヒメリンゴ 2011-11-29 (火) 23:29:40

      • ばかにしやがって

        (勢い良く空へ舞ったあとは落ちるだけだ。獲物が何処へ消えたのか、未だ分かっていない愚かな獅子へ向かって)
        (ぐるんと一回転して勢いをつける)
        (爪は空気を切り裂くようにして、正確に獅子の首を掴んだ)
        (何が起きたのか獅子が理解する前に、一気にのしかかってきた衝撃に鈍い音が響く。)
        (声を上げる間すらなかった。首の骨をへし折られたのだから当然といえば当然か)
        (見世物としてはあまりに呆気無く、早すぎる決着)

        ばかに しやがって

        (つまらない試合に観客が罵声を浴びせるより早く ゴキン、とかそんな不穏な音が響いた)
        -- ヒメリンゴ 2011-11-29 (火) 23:43:10
      • (瓶の蓋のように、獅子の首が呆気無く回る)
        (それを成したのは獅子の上に降りた兎の一蹴り。地面を蹴るように獅子の頭を蹴った)
        (それだけで、折れていたとは言え獅子の首が捩じ切れた)

        (捩じ切れた首が地面に落ちる前に、兎の足がその首を掴む)
        (見据えるのは観客席)

        (控えていた兵士達がそれを止めるより早く 獅子の首が観客席へと舞った)
        -- ヒメリンゴ 2011-11-29 (火) 23:50:59
      • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst075859.jpg -- 2011-11-29 (火) 23:54:14
      • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst075860.jpg -- 2011-11-29 (火) 23:54:24
      • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst075861.jpg -- 2011-11-29 (火) 23:54:37
      • (一瞬、客席が静まり返る)
        (それから直ぐに絹を裂くような悲鳴。)
        (鍛えられた脚力は獅子の首を随分遠くまで飛ばして、不運なことにそれを受けたのはうら若い貴族のご令嬢であった)
        (すっかり錯乱して騒ぎ立てるその声と、それを受けて湧く観客席)

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst075862.jpg
        ざまあみろ

        (兎が笑う。ようやくすっきりした、というように笑って) -- 2011-11-30 (水) 00:01:09
      • がっ…

        (背後からの雷撃、次いで鞭の手痛い一撃を背中に受け地面に倒れ込む)
        (最初の電撃で意識など吹っ飛んでいたが、そんな事は問題ではないのだろう)
        (蹴られ殴られ、小さい体がごろごろ地面を転がる)
        (それからその足に鎖のついた枷がはめられ)

        (ボロ雑巾のようになった兎は、引きずられながらコロッセオから退場した)
        (恐らくこの後件のご令嬢の前で、今より酷い折檻が待っているだろう) -- 2011-11-30 (水) 00:14:41
    • 第二試合
  • / -- 2011-11-24 (木) 13:56:19

Last-modified: 2011-12-26 Mon 21:04:21 JST (2977d)