FA/0045
- 森はいつからか人の話題に登ることもなくなり本来の静寂を取り戻し――
そして今も同じ姿のまま霧深く佇んでいる…… いつか刻が来るまで……森の主は森の命とともに在り……
- …とりあえず、手紙を持ってきた訳だが…(さて、あの少女とまず会おうと森の中に入り) -- リッキー
- 思ったより早いですね。
(森に入って少し進めばすぐ、レターがどこかの木の上から舞い降りてきた こちらを向く表情や様子に警戒心は感じられないところを見ると、信用はされているようだ) (苦労して森と同化しようとしたかいはあったのかもしれない) ……ん、違うかしら……あの人なら何も考えずにその場で手紙でも返してきそうです。 (対し、友人に対する評価は相変わらずよろしくない印象のままのようだ……) --
- …そう、か?…もう冬だが…まぁ、この森はそういう意味では…あまり変わりは、しないんだな…
(警戒はされてない辺り、信用されているのは理解するが、それと二人の間を仲介できるかは別問題だからなぁと思いながら) …いや、そういう訳じゃ…ないんだが…まぁ、突拍子のない事も…する奴では、あるんだがな(苦笑いで頭をかき) とりあえず…手紙を渡す、ぞ(受け取ってきた手紙を渡して//) -- リッキー
- (手紙の内容は、まずは謝罪の言葉、早計に善悪を断じてしまった事、それが地図製作者の倫理にも反する事、今も悔やんでいる事などで)
(次に問いの答えが誤解を招いた事、本人としてはリッキーと酷似した趣旨のつもりだった事などもあり) (さらにお互いに理解を深めたい事、取り消す事は出来ないけど、歩み寄りたい事などが綴られており) (最後には、手紙が書かれたのが新年だったのが、年初の挨拶も添えられていて) --
- ……ん……(手紙を読みながら、少しため息をつく)
私も、疑い深くなってしまったようです。以前ならもう少し素直に読めたのでしょうが…… (表情は、暗い)……どうしてでしょう。額面通りに受け取る気になれないのです。 (また1つ、大きなため息をして、近くの木にもたれ、へたり込む) 予測のつかないことが怖いです……さっきまで笑っていた人が次の瞬間怯え、もしくは怒り、私は心をかき乱されるばかり。 何故、人には裏側があるのでしょうか。リュキアさんが悪い人では無いことは分かっています……でも…… あの人の探究心は、叡智へ向かうために必要な意志……ですがそのためならこの森すべての植物を切り倒してでも先へ進むような恐ろしさも秘めているようで…… --
- …まぁ、あれだけ…やりあったなら、そうなってもおかしくない…と言うよりは、普通だろうな…
…何も、最初から…信用することもない…失ったものは、そう簡単に戻らないものだろうしな…(そう言っているとへたり込まれ) …ふむ…まぁ、それが…「人」だからな…(そして目の前の子もそういうもののはずなのだが) …あぁ、まぁ…分からなくは、ない…あいつの根源には、それに近いものは…あるかもしれないしな(顎に手を当て否定はせず) …だからって、それを制御できるのも…また「人」ではあると思うぞ…欲望だけじゃ、今の人の世は…生まれてないはずだ… -- リッキー
- ……今の人の世……ですか。
(意地悪なことを言いますね、とぽつり呟く) 私に分かるのは断片だけ……この森の一歩外から、貴方たち人間がどうしているか……私にはわからないのですから…… ……はあ(少し深くため息をつく)最近……色々ありすぎて……疲れました……お返事、どうしましょうか…… (確かに、元々白い肌だが顔色はことさらよくないように感じる) --
- えっ?(ふと顔を上げて)今……森の者が囁きました。リッキーさんが……この地を去られると耳にした……と……? --
- …そう微妙な顔を、するな…別に、人に交われ、とは言わんさ…だが、事実は事実だからな…
なに…お節介な人間は、とても多い…色々と教えてくれるさ 迷惑にも、感じる気持ちも…分からなくは、ないがな… …まぁ、そう難しく…考えなくてもいい…どうしても、無理だというなら…こちらから、伝える事も出来る…なに、あいつもどうしても無理なら…強引には、来ないだろう…多分、だが(小さく苦笑いで) ま…マイペースにやればいい…それでも、付き合ってくれる奴は、きっといるさ…ん?あぁ…よく知ってるな…もう少ししたら、旅立ちだな… …あの街は、いい街だが…俺は、色んな国…そして森を見たくなったんだよ…密林、樹海、東は花もないのに色とりどりと聞く…見て見たく、なったんだ… -- リッキー
- ……そう、ですか。貴方はこの森の性質を普通よりずっと理解している……だからこそ頼りにしている部分もありましたが……
仕方が、ありませんね。……(目を伏せる 名残惜しそうではあるが、別れを経験すること自体は何度もしてきた……そんな雰囲気だ) ……もう、殆どの方と別れは済まされたように見えますが……リュキアさんとも? --
- …そう、かもしれない…ただ、だからこそ…俺は…(レターの扱いに関して、どっちつかずになってしまっているのは自覚していて)
…まぁ、そう心配せずとも…リュキア以外も、色んな人がここに…来てるんだろう?…なら、そっちを頼る…そう言う事も、出来るはずだ…頑張ってくれ(ちょっと背中を押す、それくらいならと) あぁ、もちろん…まぁ、あっちも…いいひとができて、いろいろと忙しいみたいだがな… -- リッキー
- ……他の人……(それこそ、リッキーが普段接している樹々と同じ空気を纏うからこそ、素が出やすいのかもしれないが)
(多分、あまり他人にはこういう表情や雰囲気は出さないのだろうな、という表情と雰囲気と声のトーンで、ぼそりと) …… ……うぅー……やだな……人間との付き合いほんと難しい……疲れる……やだぁ……はぁ (らしくない、らしくないが、間違いなく本音であろう言葉を、二十歳過ぎの当主たる女がぼやいた) --
- …全く…仕方がない子、だな…まぁ、気持ちも分かるから…俺も困る訳だが(何せ、未だに自分も疲れる時もあるので)
それなら、正直に…そう示せばいい…語らずとも、森を介して…お前さんは、真正面から…受け止めすぎる… 嫌なら、逃げてもいい…きっと、思っている以上に…人との交流は、いい加減に出来てるもの…だと思うぞ(ぼやきに笑い) …まぁ、こういう俺も…今まさに、人との付き合い方を…学んでる最中、なんだがな -- リッキー
- 逃げた先がこの森なのに……無茶を言いますよね。貴方は……色んな所に行けるから……
それに……逃げたら逃げたでみんな……私に会おうと躍起になるし……秘密を明かせば逃げるし……はぁ…… ……貴方は……鳥……いえ。 (少し寂しげだが、笑いかけて) 種を乗せた綿胞子……ううん。それを運ぶ風のような人ですから。多分、どこにだって咲いて、親しまれます。そこに咲くたんぽぽのように…… そして、また風になって、どこかへ気の向くままに…… (そう言うと立ち上がり、手をゆっくりと掲げる) --
- あー…確かに、逃げたら…追いかける、だろうな、ここの連中は…ただ、明かして逃げるかは…(人にもよるだろうなぁと思い)
…ふむ…なるほど…どこでも咲いて、親しまれるかは…ともかくだが、流れていくのは…その通り、かもな(小さく頷き) まぁ、そういう訳で…置いて、流れてしまうが…レターの今後が、上手くいくよう…祈ってる …森も、無理しすぎない程度に…な(過保護すぎる、ともいえるかもしれない森にも、リッキーらしく別れを告げ) -- リッキー
- ……順序がおかしくなってしまいましたが……
(掲げた手から木の葉が舞い上がり、空中でしゅるしゅると廻りだす――そしてそれは、木の葉が作り出した球体となった) 「手紙の一族」として、貴方に最後の手紙を渡しましょう。 手紙は、同じ内容であっても見る者の心の有り様で役割を大きく変える。 旅立つ者の故郷への想いは心の支えとなり―― 帰りし者にはその文面が希望の光となって道を照らし―― 届かぬ心は届く心となり、届く心は届かぬ涙を隠し―― 手紙を届ける人にとっては責務となり―― 手紙を待つ人にとっては期待と不安の種子となる―― (しゅるしゅると球体が回転し、緑色の繭のようなものへと変質していく) 貴方に一つの手紙を渡しましょう。貴方が望むのはどんな手紙ですか? 貴方から誰かへ?誰かから貴方へ?大切に持ち歩くか?破り捨てて断ち切る過去?それとも誰かから誰かへの手紙を託される? ……リッキーさん。貴方が心に宿す手紙は……何ですか? --
- むっ…レターの能力、みたいなものか…ん?手紙、なのか?(球体みたいなソレを見て)
お、おぉ…これはまた、難しい問題がきたな…んー…俺にとって、手紙とは…何か、か… 俺は根なし草…いや、たんぽぽの種、らしいからな?…出すとすれば、俺から…友に、だな 俺の無事を、旅の喜びを…それだけでいい、それだけ伝えられれば…俺の手紙としては、十分だろうな… まぁ…出しても、ギルド経由で…届くかどうか、不安定なんだろうが、な…(それでもきっと、出すつもりでいて) -- リッキー
- ……人は誰もが心に手紙を持っています。
それは「今を生きる目的」と言ってもいい。 旅先で自分の無事を友に伝えるための手紙。 つまりは――「残していった者たちの未来に幸せと安寧を」! そして――「どんな苦難も乗り越え生き抜く意志」! (球体が、リッキーの前に旋風を伴い舞い降りる) (それが封筒を破るように、ジィィと音を立てて破られ、弾ける) (そこに在るのは……レンジャーとしての必須のアイテム)
――守護の風……そのブーメランを貴方に贈ります…… ハァ……ハァ……手に……取って……みてください……中心の……取っ手を…… (レターからの手紙は、リッキーの前でほのかな風を放ちながら浮遊している……) --
- …お、おぉぉ…なんだか…凄い事に、なってるな…(旋風に目を細め、しかし目をそらさずに)
ん?…これは…一体…ブーメラン、これを俺に…くれるのか?(突然の事に、流石に目を丸くして) …良くは分からないが…レターがそれほど、消耗してまで…してくれた事だ(疑う事なく、言われた通り中央を掴み) それで…これは、一体どういうものなんだ?(手に取ったまま、首をひねり) -- リッキー
- ……この森に宿る無数の魂……その中には貴方の魂に近しい性質のものもあります……
その魂が望んだ力……それを森の力を用いて貴方が全く同じかは分かりませんが……きっと…… (中央の取っ手を握るのを見て)それは……貴方を生き抜かせる守護者…… (すると、取っ手を中心に刃の部分が高速回転しはじめる!そしてその回転のままに放出される緑色のエネルギー) (それが美しい円を描き、大きな皿状の形に固着して回転する刃の前に固着する!) 疾風の盾……ある程度なら大きさも意志次第で自由に変えられるでしょう……そしてその回転するエネルギーは…… そのままぶつけても相手を思い切り弾き飛ばす力があります……ハァ……また……その回転の力を地面に向ければ…… 木の葉や砂を巻き上げ、その身を隠すこともできるでしょう……これが……貴方の……守護者…… (膝を付き、息切れを起こしながら)そして……もう一つの願いも……ハッ……ハァ…… --
- …そうか、その魂とやらが…望んだのなら、俺が使うのも…悪くはない、のだろうな(その点には安堵して)
俺を?…ん、お、おぉ…(さっきから驚いてばかりだな、と思うがこればかりは急に回転し始めたら驚かざるを得なく) (さらにそれが射出されて、戻ってくるというのであれば、なるほどこういう性質のアイテムかと理解して) あぁ、そういう使い方も…出来るだろうし…こいつの特性なら…あるいは…(いくつか思いついた使い方があったようだがそよりも) 色々と、臨機応変に…使えそうだな…素晴らしい…が、その…大丈夫、なのか?(見た事もない程弱ったレターを心配して) (ただ、森が何もしないという事であれば、自分が無理やり何か介抱するというのも憚られて) -- リッキー
- ……初めて……ですから。「手紙の一族」の力を……使う……のは……
大丈夫です……そして、それ、は……ブーメランですから当然……投擲として使えます……が……貴方が……念じれば…… 「戻ってきません」……貴方が……念じた人のところへ……飛んでいきます……貴方が使い慣れれば……ですが…… それを上手く使えば……遠くの人たちに無事を伝えることも……遠くの人の無事を護ることも……できる……でしょう…… ……残していった人と……貴方を……両方護る……風……それが……その力……です。風の精霊の力を……どこかで借りれば……もっと…… ぁッ……(汗を噴き出しながら、木にもたれかかる)……初の……私のお役目としては……上等なほうでしょう……? --
- そう、なのか…何だか、無理をさせてしまったみたいで…申し訳なく、なるな…
…ふむ、まぁそれは分かるが…ほぅ、やはりそういう使い方も…出来る訳、か(話の流れから、そうではないかと) しかし…相手に届ける、だけではなく…相手の無事を、守る事も出来るか…なんとも、凄いアイテムを…貰ったものだ あぁ…風の精霊に、あてはないが…なに、長い旅だ…見つけて、助力でも借りるさ…有難う、素晴らしかった(しっかりと頷き) …お返しは…そうだな…また、再びここに戻ってくる…その時にでも…今何か、渡されるより…その方が、いいだろう?(小さく笑い) -- リッキー
- なんか色々とあって来るのがのびのびになってしまったのです…こんにちは、なのです!(挨拶とともに綺麗にラッピングした小さめの箱を抱えてやってきて) -- メリル
- (森はさわさわと音を立て、以前のように霧の道を作る……その先は以前とはまた違い、更にまた奥、別の場所へと続いている) --
- …あれ?こんな道だったのです?……まあ多分大丈夫なのです多分。(包みを持って駆け足で進んでいく足取りは少々危なっかしい) -- メリル
- (森の奥へ、奥へと進んでいく 草木の声が少しずつ聞こえてくると――)
 (開けた場所に、人が生活するためといった様相の場所がある なるほど、ここに案内されたのだ) (……しかし、肝心の森の主の姿が無い) --
- ……あれ?ここって(人が生活するのに適した空間となっていてキョロキョロと見渡しながらも、人の気配が無い事に首を傾げて)
…ちょっと待ってみるのです。(待ちつつ、改めて自分の格好が招かれたのに相応しいのか確認しつつそわそわとして) -- メリル
- (籠を手に現れて・・・あの日、チサさんに教わったようにして森に語りかける)
森・・さん・・な、何度も・・・押しかけて・・私の都合・・ばかりで・・ごめんなさい・・・・その・・レターさんは・・もう・・回復・・されました・・・で・・しょう・・か・・・? -- リリア
――それは、先に貴方に問うべきでしょうか……こちらへ来ていただけますか?リリア様…… (森の少し進んだ場所――立派だがまだ若々しくもある真っ直ぐな巨木から厳格な声が聞こえる……) --
- わ、私・・・に?(戸惑うようにつぶやく)
・・ぁ・・は・・はい・・・(厳格な声に若干緊張の面持ちで導かれる・・そして少し進んだ先、その若々しき巨木へと歩み寄り、跪く・・・敬意を込める意味合いもあるが・・まだまだ集中しなければ声を聴きもらしてしまいそうになるからだ) -- リリア
- (巨木の前に来れば、リリアであってもかなりはっきり聞こえる――声がする)
(以前のように集団の声ではなく、一つの声として) ――まずはありがとうございます。我が声に応えて頂いたこと、そして我らがセキエイの森に足を運んでくれしことを。 私はこの森の中でも特に強固なる樹に宿りし魂。故に『鉄木』と呼ばれております。お見知りおきを。 (ずいぶんとハッキリした、厳格な声はまさに鉄の意志のようなものを感じる) 改めて――お伺い申し上げましょう。リリア様、貴方の御身はいかなる具合にございましょうか。 ……以前、この森でお会いしたときには、ひどく心が消耗しておられた。痛ましいことです。今は、どういったご様子か、まずは伺いたく。 --
- ぁ・・・(聞こえる・・・と呟く)
い、いえ・・・(ふるりと首を振る)テッキ・・さん・・・よ・・よろしく・・お願いします(ぺこりと) 私の・・心が・・・(言われて、はたと気づく・・・言われてみれば・・自分のした事の申し訳なさから潰れそうになっていた・・のかもしれない) ・・・(ふるふると首を振って)ご心配を・・おかけしました・・・一先ずは・・大丈夫・・・だと・・思います(正直に言うと自分の事なのに・・自分の事ゆえに何とも言えない・・でもあの日よりかは・・・比較的落ち着いているように感じる) -- リリア
- ……確かに、あれから幾刻が流れたのでしょうか、我ら森の者にははっきりとは分かりませんが……
大分、心落ち着いて来られたように見えます。恐らくはあなたのご友人のお力もあるのでしょう。人とはそのような力を持ちます。 故に―― (……しばし、間を置いてから、言葉を紡ぐ) ……故に、レター様は人ならざる者であるのかもしれません。御姿は似れど、生命の有り様として、とても違いすぎる…… レター様はそれを苦にされておられるのかもしれません。 質問にお答えしましょう。一度は回復されました――が、レター様は今もまだ疲弊しておられます。御力を多く使わねばならぬ事がありました故。 --
- (ふるりと首を振って)私には・・そんな力・・・もし、あるのだとしたらそれは・・・私が・・一人ではなかったから・・・です
(そう言って首を振っていたが、続く言葉には)・・・?・・そ・・それは・・つまり・・どういう・・・(この森に置いて唯一純粋な人の様に見えた彼女にも、人ならざる・・植物としての側面があるという事だろうかと) ・・・それは・・その・・・一体・・何が・・あったんです・・・か? -- リリア
- ……言葉を急き過ぎぬよう。つまりは、そのように「一人でなく複数で支え合う」ということ。
心を伴った協力をし合うこと。精神の繋がりを重視するもの。それそのものが人の力である……そういう意味です。 その力を森でお一人で育ったレター様はお持ちではない。故に……ということです。 (少し間を置いてから、話を戻しましょう、と前置きして) 我らに変化が起きた、とでも言えば良いでしょうか。 正確には――我らが変化をせねばならぬと判断したのです。以前、私のような樹は「見当たりました」か? (――そういえば そもそもこの森は「特徴的なもの」を探すことが難しい、視覚的に変化の乏しい場所だった……はず、だ) (何故、ここに目に見えて立派な樹があるのだろうか?森としてはまったく不自然ではないが、以前のこの森の有り様からすると、こんな目印になるような樹は……) --
- それは・・・(失礼しましたとこくこく)
いいえ(ふるりと首を振る)個々に・・名前があるのだと・・・少しだけ驚いています・・・(もっと集団その物の様な印象だったというか)・・・つまり・・それが・・変化・・・? -- リリア
- ――その通りにございます。我らは霧と草木とともに在らんとして在る者達の魂。
それらが何度もこの森でのみ廻り続け、1000年の時を経て……我らは自我や記憶を薄れさせ、使命と慣習のみで存在する者共でした。 故に……ここ最近の大きな変化に対応しきれなかった。我らが当主は一族の中でも恐らく最も多く人と触れ合った当主でしょう。 しかし我らはあまりにも曖昧になりすぎた。貴方達の疑問や懸念も致し方ないほどに。そしてそれは結果として我らが使命…… 「守護」を果たせなかったことになる。それは、この森の存在意義の崩壊に等しい。 静かな森、故に変化もまた静かではありましたが、革命はとっくに起きていたのです。我らは、それに合わせ変わらなくてはならないと決意しました。 そして……魂を再統合しました。曖昧だった魂を整理し、目的意識の強い魂、古い知識に長けし魂、人心に通じやすき魂、等……それらをかき集め…… それぞれの長所を持つ魂だけで組み合うようにし、それぞれの魂たちの役割や知識や意思を強固なものにする。 それらの中心となる最も濃い魂を、私のように名を持ち区分ごとの長とし、このようにそれぞれ固着しやすい樹々に宿り直したのです。 (少し、間を置いて) 要するに、この森の魂全てを一つ一つ調べ上げ、役割ごとに分類しまとめた……ということです。そしてそれを行ったのが他でもないレター様なのです。 --
- 魂の・・再統合・・・(ふむふむと頷き、「要するに」でなるほどと頷く)
森の整理で‥お疲れ・・なんですね・・・・・その・・大丈夫・・なんです・・か?(事務処理疲れくらいな印象を受けるがその実凄い消耗してるのではと思い至って心配そうに) -- リリア
- ……もちろん無事では済みませんでした。当然です。
この森の魂を全て動かし分離と結合を数え切れぬほど行ったのです。貴方も魔術を嗜むのであればおわかりでしょう。 この森の無数の魂をレター様の眷属たるエレメントとして……それらを全て、同時に操り動かす。しかも、それ全ての魂の性質を、記憶を…… 1000年分の記憶を持つ無数の魂たちの塊を崩し、その記憶を紐解き、理解し、分析し、束ね直す……魔術の感覚でそれを考えてみてください。 どれほどの負荷がかかるか、わかりますか? --
- ・・・・いえ・・すみません・・ちょっとスケールが大きくて・・・(ふるりと首を振る・・・だがそれよりも)
それで・・・無事ではすまない・・レベルでの疲弊・・・というのは・・このままでは・・よくないという事では・・ないでしょうか・・・?(何かしらの治療が必要なのではと) -- リリア
- (森の入口まで足を運び、少し伺うようにその周囲を探っている) -- チサ
- (……しばらく眺めていると、近くの木から声が聞こえてくる)
……流石でございますな。もう森にお慣れになられておる。 この森との精神の波長を自然と合わせておられる……だからこそ私めのような老木の声ぐらいならすぐ届きますな…… (入り口から少し進んだ場所にある他の樹より大きく、古い樹……そこから聞こえる……) --
- (昔からこの手に対面する時は、見るよりも聞く方が得意だったこともある それがこうも幸いするとは思ってもいなかったけど)
(意識を更に集中させ、老木と更に波長を合せるように呼吸を整える)はい…聞こえております そちらに行っても、大丈夫ですか? -- チサ
もちろんですとも……この老木が前までご足労願えますかな? (近づいて見れば、その樹は穏やかな雰囲気を漂わせている 眼前で立ち止まれば、礼を言ってきた) ――わざわざありがとうございますの。……チサ殿でよろしかったでしょうかな。ホホ…… 私めには名乗る名もございませぬゆえ「老」とでも……まあ、この入口付近では最も古い樹の一つでしょうな。 --
- (静かに冬の森へと踏み入れる 落ち葉を踏むカサカサとした音が普通よりも耳に響き渡った)
(言われるままに目の前で歩みを止め、ゆっくりと頭を垂れた)では、老様と …もうすっかり冬ですね 老様は何回の冬を越しましたか? 私はようやく14回目の冬となりました -- チサ
- ――若うございますな……私めはどうでしょうな。難しいことを聞きなさる……ちいとも覚えておりませぬ。
とおく、とおく昔から居りますゆえ……この森が出来たのと同じ年……なのでしょうかな?はて……さて。どうでしたかのう…… 思い出せませぬな……初代様の面影くらいは覚えているような気もするので……いや……老木の勘違いでしょうかな?
(飄々とした喋りで、意を掴み取れないが、からかっているのだろうか) ホホ……要するに、もしかしたら昔話への問いぐらいには応えられるかもしれませぬな、と思いましてのう…… ……お気づきになられておられませぬか?……私めの言の葉は…… (ここの……言葉ではない 故郷……東の国の言葉だ) --
- ふふふ…そうですか? 私たちの国では歳をそう数えるんですよ 桜をこの数だけ見たとか、雪の季節をこれだけ体験したとか
(和やかな空気が静かに流れる 元は人であるその老木の落ち着いた言葉をじっくりと耳にしていたが、言われてみてようやく気づいた) ああ…あなたも、同郷なのですね (ゆっくりと下から上へと視線を向ける 人であったその老木が、果たしてどこまで語ってくれるのだろう) 覚えている限りで良いのです 昔の事を教えて下さい あなた達の魂を賭けた出来事を -- チサ
- なんとも、なんとも……とっかかりが見えませぬな。問いをすることは慣れておられませぬかな?
半分ほど忘れていましょうか、しかしながら半分ほどは昔話も出来るかもしれませぬが……まあ……要するに多くを、多くを、少々は持っておりまする。 それを全てお話しろとは、無理難題をおっしゃられる。一番思い出せるのは、先だって、チサ様とそのお友達がこの辺でめそめそしておった話ですが…… 覚えてる限りもっともはっきりしている思い出からお話しろ、と?ホホ…… (参った これだから定命を外れていると加減が難しいものだ もう少しピンポイントに問いかけねば答えないだろう) そのように大雑把な歩みでは、姫が御心に触れることは難しいでしょうなあ……ホホ…… --
- …少し迷っているのです 何を訊ねて良いのか、何を知りたいのか、自分でもまだ把握できていないのです
それを知って自分がどうしたいのかも、あの人の為になるのかも… (視線が迷い、口が閉じる 娘はそのまま思案に暮れる) (その隙間を埋めるように、娘の背後の白い影法師がゆらりと揺れた) ―老いた者よ 先だって俺が口にした事は知っているか― ―この娘が言ったように、即身仏という方法は禁忌であり忌むべきものだと教え学んだ― ―…だがよその文化を否定するのもまた戒められている― ―命をかけるやり方は個人的にも認めたくもないが……― ―だが、それでもやり遂げた貴方がたに敬意を表しよう― ―その生命をかけてまで守りたいという物はなんだ そもそも手紙とは何なんだ 大勢の命をかけてまで守り続ける意味はなんだ― (娘に比べて背後のそれに遠慮はない 娘が言いよどむ事を端的に訊ねる) -- チサ
- これはこれは……意地悪を申してしまいましたかな……私めとしたことが……ホホ……
……うん……? (老が言葉を止めて しばし思案するようにふうむと唸る) ……幼き「わらべ」ならいざしらず……以前も我らが意に異を唱えた小僧ならば……先に言うておこ……ホホ…… この老に敬意を表すならば名乗りから始めぬか、たわけ。 (重い声で一言、ぴしゃんと言うと、それきり黙る この辺りについては前回のこともある――何かしら折り合いをつけねばならないだろう) (しかしチサにとっては……?「前回のことも」そうだった 無礼な言葉を無意識に口にしてたとしても、この森やこの老木がこうも急に明確に怒りを示すものだろうか) (白い影法師には魂の形が見えるだろう 目の前に座した者は「チサも含め」自分を量ろうと、片眉を上げじろりと睨む老獪な古強者の姿だ) --
- (娘には認識できない背後の男は、目の前の老木の厳かな声を全身に受けたあと、静かに、そして長く長く笑い声を上げた)
―これはこれは異な事を すでに人としての生を終えたは互いに等しく、さすれば名などこの際何の意味があろうか― ―それでも名を訊ねるのであれば、幾年そのような姿になろうと人として拘り持ち続けて来たという訳か なるほどなるほど― (睨まれるもなんのその、敬意を表する時は表するがそれで全てに敬意を持つような者ではなさそうだ) ―…それが気に食わないのなら、俺からはもう接触はやめて置こう その方が話は早かろうな― (詫びる気もない侘びなど意味がないと言わんばかりに、結局白い影法師はその姿を形作る暇も気も無く、そのまま吸い込まれるように娘の背後に消えていく) (残って困ったのは娘である 今やはっきりと見えるその炯眼の士に、娘は取りも直さず頭を垂れた) ……ええっと…その、申し訳ありません あの、その、ごめんなさい (娘が謝る筋合いはないのだが、このままあの男が出張っていても徒労に終わりそうなのは目に見えていた) -- チサ
- ……ホホ。若造めが……言いよるわ……この老の睨みに不敵に笑い返す胆力は無礼なれど天晴よ。
そこの褒美にそこなたわけの問いには、こちらの「わらべ」に答えてやろか……背に隠れて聞いておくが良かろ……ホホ…… (老が愉快そうに笑うと、チサに意識が向けられる) ご無礼をしましたな、チサ殿。どうも、チサ殿にご執心な坊主の霊がいるようで、なんとも無礼な振る舞いで、つい。 しかもチサ殿には見えてはおらぬ様子。ま……そこらの野良狸の化け霊でしょう……お気になされぬよに。ホホ…… (んん、と咳払いをするように風がざわめき、あらためて真剣な意識をチサに向けてきた) チサ殿の問いかけはその内思いついたらで善いでしょう。そこな豆狸が問うたことについて答えましょうぞ。 即ち――「即身仏なる方法を用いたのは何ゆえか」「我らが護りし『手紙』とは何か」「何ゆえそこまでして護るのか」……ですな。 さて、はて……どれから答えたものやら。いや、気が変おうて一つしか答える気にならぬやもしれませぬ……はてはて。 ……チサ殿。どれについて聞きたきか、選択めしませい。 --
- (驚愕と戸惑いの表情で娘は思わずぐるりと身体を捻じ曲げ背後を見やり確認する 自分が把握できない何かが本当にいるのだろうか)
(その点も問いただしたい所だが、今はその場ではない 聞かなければならない最もな事はただ一つ) …手紙とは、なんですか (思ったよりも小さい問いかけの声であった だが言い直す事は逆に無礼であると判断し言葉をそのまま続ける) 手紙とは、その中に何が書かれているのです これほど多くの人たちが関わり護り続けているという手紙とは一体何なのですか -- チサ
- レター様のことですな。
(あっさりと即答する だがそれは今まで散々言われてきたこと つまりは) なぜレター様が手紙の「一族」と呼ばれているか……簡単なこと。つまりは、かの一族は希少なる一族…… 1000年も前の時既に、絶滅したとされた種族……『チョウジン族』 純粋なる人の身でありながら、突然変異によって生まれた、森と空の民…… 我らがお仕えしたはその最後のお一人だったのです。……手紙に書かれしは、即ち其の「遺伝子」。 レター様はチョウジン族の復権のため、秘匿されざるを得なくなった遺伝子をその身に宿しておられるのです…… (考えてみれば、シンプルな答えではあった つまりは、レターそのものが希少価値が高い、その「純血」の「チョウジン族」というものであるということだ) (殺されれば本当にチョウジン族は絶えてしまう 他の血が混ざればチョウジン族の純血種ではなくなってしまう――だから 隠されたのだ) (そして機を伺い続けた――1000年もの間、チョウジン族がもう一度復権できる機を今でも――) 嗚呼……古い記憶を辿るは……実に苦労致しましたぞ……貴方方が去ってのち、我らも……記憶を再結集させましたからの……ホホ…… --
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- (森はただひたすらに静かだ……) --
- (夜でも昼でも明るさはまるで変わらない)
(……ふとそこに人影が見えたような……気のせいだろうか?) --
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