レパード 十詩

■ 繋いだ手は離さない

編集:一意専心 差分:一意専心
お名前:
  • 「ああン!?やんのかコラ!!俺の猫車で轢いてやろうかボケが!」(毛糸の帽子を被ったもじゃもじゃの髭を蓄えた男が言う)
    「上等だやってみろ、俺ァ蒸気機動車にふっ飛ばされたってピンピンしてた男だ!」(それを受けて着崩した作業服の男が吠える。いい体格をしている)
    (両者に共通するのは、少し離れていても分かる見事な赤ら顔に、浮かべた笑み。そして周囲の何かを期待しているような目の群衆)
    (二人を囲んでいた野次馬に聞き込みをすれば男たちはどちらからともなく、ふらふらと近寄り肩をぶつけてこうなったのだという…明らかに'遊び'たいだけだ)

    はー……(と一つため息)はいはい!警備のモンだ!いい気分なのは分かっけどよ!おっちゃんたちその辺にしてくれねぇか!
    (群衆に肩から割り込み、既に拳を持ち上げて今にも喧嘩を始めようとしていた男たちの前に躍り出る)
    「ンだコラ、警察の出る幕じゃねぇよ」「邪魔すんなら兄ちゃんも怪我すっぞぉ」(お楽しみに水をかけられた男たちが不満そうな顔をし)
    …ったくしゃーねーな、ほら、コレやるから今日んところは大人しくしてくれよ、めでたい日だろ?(と言って二人の男に小さな酒瓶を渡す)
    (そして、渡された物を確認するや否や男たちは相好を崩し、一応の義務なのか気の入っていない悪態を相手に放ちながら野次馬の中へ消えていく)

    やれやれ、後で二人で飲むかと思ってたんだがな…(面白い見世物が見れるかと思っていた群衆を手で払って散らし、ぼやく)
    (まあ、浮かれ気分の乗っての殴り合い程度だ、見過ごしても問題なかったろうが今年は出来るだけ騒ぎを起こしたくない)
    (人通りの戻った道で腰に下げた無線機を取り出して、周波数を合わせる。少々の雑音が走るそれを口元へ持ち上げて)
    こちらレパード、三雲、応答願う。そっちの様子はどうだ?(白い息を吐きながら、自分と同じ空の下、奮闘しているであろう彼女へと送る)
    -- レパード 2013-12-31 (火) 17:23:36
    • (高山地帯だからか、今まで味わったものとは段違いの寒さに思わず肩を縮めつつ、手を開いては閉じを繰り返す)
      (何かあった時に肝心の手がかじかんで動けないとあっては目も当てられない)
      (人の流れはいま前方なのか後方なのか、それすらも判別つかない人混みの中、どこからこんなに集まったのかと改めて驚く)
      (やはりめでたい時が近くなれば、人は自然と寄り添うものなのだろうか)
      (雑多な人混みと賑やかな声が飛び交っている 人が多ければ多いほど揉め事は増えるもの 警備の仕事ならば今日のような日こそ本領発揮しなければならない)

      (ふと、目の前を小さな女の子がこちらに向かって駆けてくる 幼さに満ち溢れたその顔には、いつもより喜びと興奮が入り交じっていた)
      (その女の子の足が、つともつれて倒れ込みそうになる 足元を注意してみていた彼女はすぐに少女の身体を抱きとめた)
      はい 気をつけてね(ふわりと優しい仕草で少女の姿勢を整える 終始びっくりした顔の女の子が、すぐに頭をちょこんと下げてまた駆け出していった)
      (その先には一人の女性 似た風貌だから母親だろう その足にしがみつきじっとその場を離れない少女 今更ながら躓きそうになった恐怖が湧いてきたのだろうか)
      (母親は彼女に何度もお辞儀をしつつ女の子の頭を優しく撫でている)
      (だから走っちゃだめと言ったでしょう もう離れちゃだめよ そんな会話が聞こえてきそうだ)

      (母娘を見送りまた改めて視線を前に戻すと、腰の当たりから何かが響いてきた 雑音混じりの機械音だが間違いなく彼の声だ)
      (人混みから少し離れつつ、その声にゆっくりと応える その顔は先程の少女のように喜びが混じっていた)
      こちら三雲 今のところは大事件は無いわね 小事件はあったけど(くすくすと含んだ笑い声で三雲はそう呟いた)
      -- 三雲 2013-12-31 (火) 17:57:55
      • (年の瀬が押し迫り、今年も一年が過ぎ往こうとしている。先ほどの男たちに限らず、街には何処か浮いた空気が漂って)
        ん、トラブルか…?(と雑音越しの彼女の声を聞いて一瞬眉を潜め訝しんだが、その声に交じる笑い声に静かに笑みを浮かべ)
        了解…問題ねーみてぇだな。後もう少しで俺らの任務は終わりだ、うちの近くの公園辺りで待ち合わせしようぜ。
        (年の終わりと始まりを祝う街並みの中を歩きながら言う。所々に色鮮やかな公国の旗が飾られ、レンガの壁には造花の花が咲き誇る)

        (今の所はこちらも大事なく終わりそうだ。とはいえ引き継ぎまでは少し間がある。最後まできっちりと仕事は済ませねば)
        (これからの時間を邪魔される訳にはいかない、何しろ彼女と初めて過ごす記念すべき日でもあるのだから)
        そんじゃ通信切るぜ、くれぐれも油断しねーようにな。俺も気をつける。どーぞ(冷たい無線機を持ちながら、彼女の手の暖かさを思い出して)
        -- レパード 2013-12-31 (火) 18:31:43
      • ええあの公園ね 了解 そっちも変なことに巻きこまれないようにね
        (自然と笑みが浮かぶのはやはり彼の声を聞いているからだろう ぷつりと通信が切れてからもその余韻は暖かく残る)
        (初めて過ごす彼との年の瀬 いつもと変わらぬ夜のはずなのに、新年を迎えるというだけで特別に清らかに感じられる)
        (現金なものだがそうやって節目を意識するのは、国が、土地が変わっても人間の本質として根付いているのだろう)

        さてと、仕事終ってからも忙しくなりそうね
        (ふうと一度息をつき、さてもうひと頑張りと辺りを見回す この堅苦しくも無骨な制服のままでは行くのは流石に味気ない)
        (これほどの人混みなのに、つい目線を追ってしまうものがある 色とりどりの刺繍を施された鮮やかな衣装だ)
        (それは特別な日を迎える為の物 若い女や若い男、更には子供やお年寄りまで、華やかに着飾る人達で賑わっている)
        (でも彼はああいうの苦手そうよね と一人苦笑しつつ、自分も早く袖を通したい一心で、最後の仕事にとりかかった)
        -- 三雲 2013-12-31 (火) 19:19:41
      • …この辺りは酔っ払いが集中してる、あとここは交通規制をかけた方がいいかもしれねぇ。…ん?ああ奢りだろ?忘れてねぇよ。
        (苦笑を浮かべて言う。多少の無理を言って時間帯を変わってもらった同僚に引き継ぎを済ませ、公園へ向かう)
        (彼女もそろそろ引き継ぎを終わらせて向かっている頃だろう、普段の街からは考えられないほどの賑わいを見せる通りをすり抜けるように進む)

        さみー……(一人つぶやき、その時目に入ったのは時折警邏の際に寄るカフェの出店。いつもは店頭販売はしていないが、時期が時期だ)
        あー…、っと。熱いの、2つ頼むわ(立ち止まり、注文する。程なくして湯気を立て香ばしい香りを広げるコーヒーが二杯、厚手の紙のコップに入れられて)
        っち!(火傷に気をつけながら、じんわりと広がるその熱さで手を解し急ぎ歩く。…彼女も寒い思いをしているだろうから、と)
        -- レパード 2013-12-31 (火) 19:57:08
      • (ようやく目処が付いた仕事を切り上げ、一旦急いで家に向かう 軽く汚れを落としながら収納棚から一着のドレスを取り出した)
        (ふ、と鏡の前で微笑む 今日この日はぜひこの衣装で迎えたかった ようやくその夢が叶う 手早く着替えて指定の公園へと向かった)
        (外は相変わらずの寒さで、彼が先に待っているかもしれないと思うと自然足は早まる)
        (どんな夜よりも鮮やかな黒が翻る 赤い縁取りがかろうじてその黒を立体的に見せている)
        (しかし一番際立つのは、相反するように際立つ白銀の髪だろう)
        (白と黒を混じらせながら、彼女は縫うように人混みを駆け抜けていった)
        -- 三雲 2013-12-31 (火) 21:48:54
      • (公園で行き交う人々を見る、子供と手を繋ぎ家路につくのだろう家族連れ、ジャケットに手を収めたまま赤い鼻を啜る男)
        (街の中心部からは少し外れたこの公園にはそこまでの人出はない。しかし皆足早に何処かへ向かっている)
        (そんな中、一人立ち止まり、手の中のコーヒーの熱さを感じながらとうに日の落ちた暗い暗い空を見上げふと願う)
        (彼女はもうすぐ来るだろう、いつかドアを叩いたように、幸せの鐘を鳴らしてくれたあの時のように)
        (待ち続けていたあの日の終りの続き、この幸せな時がいつまでも続いてくれるようにと)

        (視線を戻す。その先には彼のかけがえの無いものが、そこに)
        よう…一度戻ったのか?折角のコーヒーが冷めるとこだったぜ(彼女の姿を認めた瞬間、口ぶりとは裏腹に柔らかい笑顔を向ける)
        そんなに慌てねーでもゆっくり着替える間くれーあったのによ(纏うは黒、公園のガス灯の朧げな明かりを吸い込むような黒)
        …良く似合ってるよ。綺麗だ(この世の輝きを詰め込んだかのような白い輝きに目を細めて言う)
        (手の中のコーヒーは、まだ、少し暖かった)
        -- レパード 2013-12-31 (火) 22:41:35
      • (寒気が漂う夜の公園で、少し荒くなった吐息が白いもやのように彼女の口から溢れる)
        は…はっ(ふう と一つ息をついて、ようやくレパードの元へとたどり着くことができた)
        ごめんなさい…遅れちゃった 寒かったでしょ(荒い息も彼のその言葉にすぐに穏やかになっていく)
        (ああその笑顔が見れるのなら、やっぱり着て来て良かった)
        ありがとう 絶対に今日着たかったんだ(彼の笑顔に応えるように和らぐ笑顔を見せ、ふと、手に握られたカップが目に入り)
        ……それ、コーヒー?
        (思わず噴出すのを指で抑える レパードと言えばコーヒーだ こんな所までコーヒーなのかとそれだけでおかしくて仕方なかった)
        -- 三雲 2013-12-31 (火) 23:07:51
      • (息を切らせる彼女を見て苦笑する、そしてそれを嬉しく、好ましく思う)
        (彼女がこの街に来て二人で街を見て回った時、買った晴れ着。きっとそれを一刻でも早く着て、見せたかったのだろう)
        三雲に着てもらえてその服も幸せものだよ、感無量なんじゃねぇか?(そう思うほど、その服は良く似合っていて、彼女自身もそれを着ることを喜んでいる)
        (そして、ん?と口元を抑えた彼女を見て不思議そうな顔をして、次いで少々憮然とした顔をしながらそれを差し出し)
        その通り、紛れも無く一点の曇りもないコーヒーだよ。おめーが寒いんじゃねーかと思ってな。…まだ暖かいぞ?
        (渡して、軽くカップを掲げ)本当は酒で一杯と行きたかった所だが、諸事情によりこいつで簡便だ(と彼女に渡したカップと縁を合わせて)
        お疲れさん、今年も世話になったな。来年も、その先もまた、よろしく(と微笑んで言い)
        (カップを煽った。今年最後のコーヒーは少しぬるくて…最高に美味いコーヒーだった)
        -- レパード 2013-12-31 (火) 23:27:33
      • 今日は褒め過ぎじゃないの? でも…ありがと
        これからも何かお祝いがあったら着るからね ずっと大切にするんだから
        (一度くるりと回ってみせる 遅れてふわりと優雅に円を描くドレスの裾 それはまるで小さな女の子が見せるように無邪気であどけない)
        (お披露目の後に差し出されるカップを両手で大切に握りしめる ぶっきらぼうな言い方だが彼は本当に細かい気配りをしてくれる)
        コレで充分よ 私も何か暖かい食べ物もってくればよかったわ ごめんね
        (つ と合わさるカップの縁 まるで私達のようにカップまで寄り添う それもまた嬉しい)
        レパードもお疲れ様 また来年も…これから先も、ずっと、こうしていましょうね
        (彼に合わせてカップを傾ける まだ残る温かさが身体の内側を駆け巡る)
        (その丁度よい温かさが、まさに彼の優しさそのものに思え、ゆっくりと、その幸せに浸っていった)

        ―きっと来年も、再来年も、ずっと
        -- 三雲 2013-12-31 (火) 23:42:08

最新の1件を表示しています。 コメントページを参照

+  ログ

Last-modified: 2013-12-31 Tue 23:42:08 JST (3761d)