レパード 十詩
■ 繋いだ手は離さない
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- 「ああン!?やんのかコラ!!俺の猫車で轢いてやろうかボケが!」(毛糸の帽子を被ったもじゃもじゃの髭を蓄えた男が言う)
「上等だやってみろ、俺ァ蒸気機動車にふっ飛ばされたってピンピンしてた男だ!」(それを受けて着崩した作業服の男が吠える。いい体格をしている) (両者に共通するのは、少し離れていても分かる見事な赤ら顔に、浮かべた笑み。そして周囲の何かを期待しているような目の群衆) (二人を囲んでいた野次馬に聞き込みをすれば男たちはどちらからともなく、ふらふらと近寄り肩をぶつけてこうなったのだという…明らかに'遊び'たいだけだ)
はー……(と一つため息)はいはい!警備のモンだ!いい気分なのは分かっけどよ!おっちゃんたちその辺にしてくれねぇか! (群衆に肩から割り込み、既に拳を持ち上げて今にも喧嘩を始めようとしていた男たちの前に躍り出る) 「ンだコラ、警察の出る幕じゃねぇよ」「邪魔すんなら兄ちゃんも怪我すっぞぉ」(お楽しみに水をかけられた男たちが不満そうな顔をし) …ったくしゃーねーな、ほら、コレやるから今日んところは大人しくしてくれよ、めでたい日だろ?(と言って二人の男に小さな酒瓶を渡す) (そして、渡された物を確認するや否や男たちは相好を崩し、一応の義務なのか気の入っていない悪態を相手に放ちながら野次馬の中へ消えていく)
やれやれ、後で二人で飲むかと思ってたんだがな…(面白い見世物が見れるかと思っていた群衆を手で払って散らし、ぼやく) (まあ、浮かれ気分の乗っての殴り合い程度だ、見過ごしても問題なかったろうが今年は出来るだけ騒ぎを起こしたくない) (人通りの戻った道で腰に下げた無線機を取り出して、周波数を合わせる。少々の雑音が走るそれを口元へ持ち上げて) こちらレパード、三雲、応答願う。そっちの様子はどうだ?(白い息を吐きながら、自分と同じ空の下、奮闘しているであろう彼女へと送る) -- レパード
- (高山地帯だからか、今まで味わったものとは段違いの寒さに思わず肩を縮めつつ、手を開いては閉じを繰り返す)
(何かあった時に肝心の手がかじかんで動けないとあっては目も当てられない) (人の流れはいま前方なのか後方なのか、それすらも判別つかない人混みの中、どこからこんなに集まったのかと改めて驚く) (やはりめでたい時が近くなれば、人は自然と寄り添うものなのだろうか) (雑多な人混みと賑やかな声が飛び交っている 人が多ければ多いほど揉め事は増えるもの 警備の仕事ならば今日のような日こそ本領発揮しなければならない)
(ふと、目の前を小さな女の子がこちらに向かって駆けてくる 幼さに満ち溢れたその顔には、いつもより喜びと興奮が入り交じっていた) (その女の子の足が、つともつれて倒れ込みそうになる 足元を注意してみていた彼女はすぐに少女の身体を抱きとめた) はい 気をつけてね(ふわりと優しい仕草で少女の姿勢を整える 終始びっくりした顔の女の子が、すぐに頭をちょこんと下げてまた駆け出していった) (その先には一人の女性 似た風貌だから母親だろう その足にしがみつきじっとその場を離れない少女 今更ながら躓きそうになった恐怖が湧いてきたのだろうか) (母親は彼女に何度もお辞儀をしつつ女の子の頭を優しく撫でている) (だから走っちゃだめと言ったでしょう もう離れちゃだめよ そんな会話が聞こえてきそうだ)
(母娘を見送りまた改めて視線を前に戻すと、腰の当たりから何かが響いてきた 雑音混じりの機械音だが間違いなく彼の声だ) (人混みから少し離れつつ、その声にゆっくりと応える その顔は先程の少女のように喜びが混じっていた) こちら三雲 今のところは大事件は無いわね 小事件はあったけど(くすくすと含んだ笑い声で三雲はそう呟いた) -- 三雲
- (年の瀬が押し迫り、今年も一年が過ぎ往こうとしている。先ほどの男たちに限らず、街には何処か浮いた空気が漂って)
ん、トラブルか…?(と雑音越しの彼女の声を聞いて一瞬眉を潜め訝しんだが、その声に交じる笑い声に静かに笑みを浮かべ) 了解…問題ねーみてぇだな。後もう少しで俺らの任務は終わりだ、うちの近くの公園辺りで待ち合わせしようぜ。 (年の終わりと始まりを祝う街並みの中を歩きながら言う。所々に色鮮やかな公国の旗が飾られ、レンガの壁には造花の花が咲き誇る)
(今の所はこちらも大事なく終わりそうだ。とはいえ引き継ぎまでは少し間がある。最後まできっちりと仕事は済ませねば) (これからの時間を邪魔される訳にはいかない、何しろ彼女と初めて過ごす記念すべき日でもあるのだから) そんじゃ通信切るぜ、くれぐれも油断しねーようにな。俺も気をつける。どーぞ(冷たい無線機を持ちながら、彼女の手の暖かさを思い出して) -- レパード
- ええあの公園ね 了解 そっちも変なことに巻きこまれないようにね
(自然と笑みが浮かぶのはやはり彼の声を聞いているからだろう ぷつりと通信が切れてからもその余韻は暖かく残る) (初めて過ごす彼との年の瀬 いつもと変わらぬ夜のはずなのに、新年を迎えるというだけで特別に清らかに感じられる) (現金なものだがそうやって節目を意識するのは、国が、土地が変わっても人間の本質として根付いているのだろう)
さてと、仕事終ってからも忙しくなりそうね (ふうと一度息をつき、さてもうひと頑張りと辺りを見回す この堅苦しくも無骨な制服のままでは行くのは流石に味気ない) (これほどの人混みなのに、つい目線を追ってしまうものがある 色とりどりの刺繍を施された鮮やかな衣装だ) (それは特別な日を迎える為の物 若い女や若い男、更には子供やお年寄りまで、華やかに着飾る人達で賑わっている) (でも彼はああいうの苦手そうよね と一人苦笑しつつ、自分も早く袖を通したい一心で、最後の仕事にとりかかった) -- 三雲
- …この辺りは酔っ払いが集中してる、あとここは交通規制をかけた方がいいかもしれねぇ。…ん?ああ奢りだろ?忘れてねぇよ。
(苦笑を浮かべて言う。多少の無理を言って時間帯を変わってもらった同僚に引き継ぎを済ませ、公園へ向かう) (彼女もそろそろ引き継ぎを終わらせて向かっている頃だろう、普段の街からは考えられないほどの賑わいを見せる通りをすり抜けるように進む)
さみー……(一人つぶやき、その時目に入ったのは時折警邏の際に寄るカフェの出店。いつもは店頭販売はしていないが、時期が時期だ) あー…、っと。熱いの、2つ頼むわ(立ち止まり、注文する。程なくして湯気を立て香ばしい香りを広げるコーヒーが二杯、厚手の紙のコップに入れられて) っち!(火傷に気をつけながら、じんわりと広がるその熱さで手を解し急ぎ歩く。…彼女も寒い思いをしているだろうから、と) -- レパード
- (ようやく目処が付いた仕事を切り上げ、一旦急いで家に向かう 軽く汚れを落としながら収納棚から一着のドレスを取り出した)
(ふ、と鏡の前で微笑む 今日この日はぜひこの衣装で迎えたかった ようやくその夢が叶う 手早く着替えて指定の公園へと向かった) (外は相変わらずの寒さで、彼が先に待っているかもしれないと思うと自然足は早まる) (どんな夜よりも鮮やかな黒が翻る 赤い縁取りがかろうじてその黒を立体的に見せている) (しかし一番際立つのは、相反するように際立つ白銀の髪だろう) (白と黒を混じらせながら、彼女は縫うように人混みを駆け抜けていった) -- 三雲
- (公園で行き交う人々を見る、子供と手を繋ぎ家路につくのだろう家族連れ、ジャケットに手を収めたまま赤い鼻を啜る男)
(街の中心部からは少し外れたこの公園にはそこまでの人出はない。しかし皆足早に何処かへ向かっている) (そんな中、一人立ち止まり、手の中のコーヒーの熱さを感じながらとうに日の落ちた暗い暗い空を見上げふと願う) (彼女はもうすぐ来るだろう、いつかドアを叩いたように、幸せの鐘を鳴らしてくれたあの時のように) (待ち続けていたあの日の終りの続き、この幸せな時がいつまでも続いてくれるようにと)
(視線を戻す。その先には彼のかけがえの無いものが、そこに) よう…一度戻ったのか?折角のコーヒーが冷めるとこだったぜ(彼女の姿を認めた瞬間、口ぶりとは裏腹に柔らかい笑顔を向ける) そんなに慌てねーでもゆっくり着替える間くれーあったのによ(纏うは黒、公園のガス灯の朧げな明かりを吸い込むような黒) …良く似合ってるよ。綺麗だ(この世の輝きを詰め込んだかのような白い輝きに目を細めて言う) (手の中のコーヒーは、まだ、少し暖かった) -- レパード
- (寒気が漂う夜の公園で、少し荒くなった吐息が白いもやのように彼女の口から溢れる)
は…はっ(ふう と一つ息をついて、ようやくレパードの元へとたどり着くことができた) ごめんなさい…遅れちゃった 寒かったでしょ(荒い息も彼のその言葉にすぐに穏やかになっていく) (ああその笑顔が見れるのなら、やっぱり着て来て良かった) ありがとう 絶対に今日着たかったんだ(彼の笑顔に応えるように和らぐ笑顔を見せ、ふと、手に握られたカップが目に入り) ……それ、コーヒー? (思わず噴出すのを指で抑える レパードと言えばコーヒーだ こんな所までコーヒーなのかとそれだけでおかしくて仕方なかった) -- 三雲
- (息を切らせる彼女を見て苦笑する、そしてそれを嬉しく、好ましく思う)
(彼女がこの街に来て二人で街を見て回った時、買った晴れ着。きっとそれを一刻でも早く着て、見せたかったのだろう) 三雲に着てもらえてその服も幸せものだよ、感無量なんじゃねぇか?(そう思うほど、その服は良く似合っていて、彼女自身もそれを着ることを喜んでいる) (そして、ん?と口元を抑えた彼女を見て不思議そうな顔をして、次いで少々憮然とした顔をしながらそれを差し出し) その通り、紛れも無く一点の曇りもないコーヒーだよ。おめーが寒いんじゃねーかと思ってな。…まだ暖かいぞ? (渡して、軽くカップを掲げ)本当は酒で一杯と行きたかった所だが、諸事情によりこいつで簡便だ(と彼女に渡したカップと縁を合わせて) お疲れさん、今年も世話になったな。来年も、その先もまた、よろしく(と微笑んで言い) (カップを煽った。今年最後のコーヒーは少しぬるくて…最高に美味いコーヒーだった) -- レパード
- 今日は褒め過ぎじゃないの? でも…ありがと
これからも何かお祝いがあったら着るからね ずっと大切にするんだから (一度くるりと回ってみせる 遅れてふわりと優雅に円を描くドレスの裾 それはまるで小さな女の子が見せるように無邪気であどけない) (お披露目の後に差し出されるカップを両手で大切に握りしめる ぶっきらぼうな言い方だが彼は本当に細かい気配りをしてくれる) コレで充分よ 私も何か暖かい食べ物もってくればよかったわ ごめんね (つ と合わさるカップの縁 まるで私達のようにカップまで寄り添う それもまた嬉しい) レパードもお疲れ様 また来年も…これから先も、ずっと、こうしていましょうね (彼に合わせてカップを傾ける まだ残る温かさが身体の内側を駆け巡る) (その丁度よい温かさが、まさに彼の優しさそのものに思え、ゆっくりと、その幸せに浸っていった)
―きっと来年も、再来年も、ずっと -- 三雲
- (変わりやすい山の天気、行きつけの食材屋の特売日、日頃の巡回警邏ルート、そして…男の良く飲む豆の銘柄)
(そんなものを彼女が覚え、この街の過ごし方にも慣れてきた頃に、夕食も終わり寝るまでの時間を過ごしていた時、ふと男が話しかける) そういや、前に言ってたここの祭り、例年通りなら来週から開催するぜ。…ま、例年通りなら俺らは警備に回るけどな。 (などと言って、一息つき、彼女の様子を伺う。その間には例年通りではない何かが含まれているようで) -- レパード
- (今日の仕事も無事終わり、疲れを癒やすための夕食や入浴も終え、あとはこのままのんびり夜を過ごすだけの一時)
(この時間が一日の中で最高の贅沢な時だと実感するのは、普通の人生を歩んでいるという証拠でもあることを、最近ようやく理解できた) (一日の無事を喜び、今日の日が終わるのを、お茶を飲みながら静かに過ごしているその時、すぐそばの男から声がかけられる) お祭り…来週なの? へぇ そっかぁ (白い髪に白い肌、ひやりとした冷たさを感じるようなその姿から、なんとも似つかわしくない無邪気な笑顔が漏れでた) せっかく初めてのお祭りだから、やっぱり参加はしたいけど… (こちらも彼の様子を少し上目遣いで伺う 白い陶器のカップをゆっくり持ち上げ、口元をみせないようにぽつりとつぶやく) …一緒に、行きたいな -- 三雲
- (ぽつりと漏れ出たその一言を聞き逃すはずもなかろうか。…男にとっても、その気持ちは同じなのだから)
今年の祭りは、確かに例年通りやるが…俺らに取っては例年じゃねぇからな。ちっと苦労したぜ? (そう言って簡単にだが当日の警備側の段取りを話始める。いつもであれば人員を一日交替制でみっちり配置しているのだが…) (祭りの後半については二人のシフトが揃って空いている。ドーナツとコーヒーと酒を駆使した交渉の結果だ) 一日中回るって訳にはいかねーが少しは遊べるぜ。その代わり…警備してる時にドジはしねーようにな?(とからかうような笑顔を浮かべて言った) -- レパード
- (彼の語るスケジュールを、目を輝かせて聞き続ける)
(この仕事に就いたのならば、人が大勢集まるところに駆り出されるのは必然だ それは覚悟していた) (だがその中でも自由時間を得られたのは普通ならば僥倖というものだろうが、きっと彼はそれすらも必然としたのだ その陰でどれだけの事があったのか、聞くのは流石に野暮というものだろう) ええ! もちろんよ せっかく二人でいられる時間ですもの(相手のからかう笑顔に、こちらは実に無邪気な笑顔で答える 純粋に嬉しさが先立ったのだろう) 今から待ち遠しいわ…どんなのが見られるのかしら 私も存分にお洒落して行かなきゃ もちろん、貴方からの贈り物を着てね? (彼が買ってくれたあの素敵なドレス これだけは特別な日に着ていく大切な物として大事に保管してある それがようやく、陽の目をみることができそうだ) -- 三雲
- (日が沈んで暫くたった頃、辺りはすっかり夜の闇に包まれている中、その家の中は暖かな光に満ちていた)
(暖かな明かりと、暖かな夕餉が、その日の疲れをゆっくりと癒してくれる) (トマトやハム、キュウリやコーンを盛りつけドレッシングで和えたサラダ 大豆もやしやニラ、人参、油揚げの入った煮物) (揚げ茄子と豚バラ肉で濃い口タレの炒めもの、キャベツと玉ねぎと卵のコンソメスープ) (並ぶ食事は全部自分の手作りだ 家事は分担にしており、自分は食事担当となった) (料理は抜群に上手い訳ではないが、そこそこは作れると自負している だが喜んでもらえるともっと美味しいものを作りたいと思うものだ) (今日も何とか出来上がった食事を、いつものテーブル、いつもの席で二人向かい合って食べる) (時折相手の様子をちらっと見つめ、彼の反応を確かめつつ、綺麗に揚げられたナスを一口頬張る 味の染み込んだナスは更に美味しく感じた) -- 三雲
- (テーブルの上に広がる暖かで湯気を立てる食事。並ぶそれが立てる香りに思わず頬がゆるむのを感じる)
(元々、コーヒーを除いて食事には執着しないタイプだ、仕事が煮詰まってくれば夕食に食べるものがパン一枚と一杯のコーヒーなどということも珍しくない) (それが、彼女が来てからというもの、どんな時でも食欲をそそる、立派な食事をこしらえてくれるようになった) …この肉、ちっと端っこが焦げてるな(ナスの方は細心の注意を払ったのか実に見事な出来栄え、たが肉は合わせるタイミングが悪かったのか、少々火が通り過ぎてるようだ) でも、ま、これはこれはで悪くねぇ(と少し固めの豚肉とナスを食べ、笑って言う。油の旨みがじゅわりと口に広がり、それに濃い目の味付けがよく合っている) (口中のスープの優しい味で濯ぎながら、サラダにも手を伸ばす。カロリーには割と気を使っているが、野菜は余り取っていなかった。これも彼女の功績の一つか) (自分の担当は掃除や片付け。普段あまり使わない筋肉を使った疲労が癒えていくのを感じつつ、こちらを気にしている風の彼女に手を広げ) なかなか堂に入ってきたな、ここの食材の扱いも手慣れてきたもんだわ。少なくとも俺が作るよかよっぽど美味ぇよ(と素直な感想を述べてみる) -- レパード
- (言われてみれば確かに肉を少し焼き過ぎたかもしれない 口の中ではなかなか噛みごたえのあるものに変わり、うっと顔をこわばらせ)
そう言われればそうね…ごめんなさい 豚肉って何となくじっくり焼かないと恐いのよね それでついつい念入りにしちゃうの (しかし肉本来の旨さが損なわれているのは問題だ 今度はもっと注意して焼かねば) (大豆もやしの煮物はなかなか美味しくできたと思う これは炒めものとはまた違う甘めな味付けだが、それが野菜や豆と合わさって丁度良い)
(スープを一口口にしながらも、ちらりと見つめたその先で目が合う彼が、笑顔で手を広げてほめてくれる) (その言葉が、何よりも自分の全てを癒してくれて、思わず緩む頬をそのままにこくりと一言頷いた) ありがと…そう言ってもらえて安心したわ せっかく料理するんだから美味しくしなくちゃ勿体無いもんね (輪切りにしたバゲットを一口かじりながら、ふと、メインの炒めものが目に入る この味付けならこういう淡白なものと合わせるのが一番いい) …このおかずなら、パンよりも御飯がよさそうよね 御飯にのっけて食べるの (ああこの味なら確かに白米がいい 故郷はパンが主食だったが両親の影響かパンと御飯が交互に出されたものだ) お米は売られていたかしら 最近また新しい物が輸入されたらしいわよね (こういう山岳地帯ならば何より大事なのは物質 しかし同じものばかりでは人の活力も停滞してしまう なのでこの地域もご多分に漏れず輸入は盛んなのでは) -- 三雲
- (ぽかん、と呆れたような顔をする)何謝ってんだ?充分うめーつってんだろ。なんだって最初っから完璧に出来る奴ぁいねぇよ、ちっとずつ上手くなってきゃいいんだ。
(そう言ってがつがつと豚肉とナスの炒めものを口へ運ぶ。今後の事も考えて正直に指摘はしたが…不味いはずもあるまい。何よりも彼女が作った料理なのだから) (煮物にもフォークを伸ばし、素朴なその触感を楽しむ。醤油を使い甘辛く煮付けられたそれは酒にもよく合いそうだ)
この煮物もだけどよ、腕前自体は置いといても西のも東のも作れるってのはすげぇよな。 (昔、ここに居た頃には馴染みの無かった東方の料理も学園で大分慣れた。彼女が使うソイソースの味付けも今の舌にはお手の物だ) えらい昔はそうでもなかったみてーだが、ガス機関が発達してからは割とこっちにも色んなもん入ってるぜ。 (この醤油を購入した店に米も扱いがあることを教える。今はこの家には無いが、以前作ったオムライスの米もそこで買ったことを告げ) 三雲としちゃどっちの方が好みなんだ?俺はどっちでもいいけどよ(と言いつつ、ひょいひょいと皿を開けていく) -- レパード
- うん…失敗を重ねて成功するって言うものね 今度はもっと美味しく作るわ
(彼なりの心遣いに感謝しながら、サラダを味わう 新鮮な歯ごたえと共に、野菜の風味がドレッシングと合わさり旨みを引き出す) それは…私の家ではそうだったの お父さんが東でお母さんが西 だから料理も一日おきずつ交互に出されていたのよ だから私もそれが慣れちゃって どちらか一方だけってのも寂しいの (過去を思い出しているか、ニコニコと微笑みながらスープを飲む)だから、これからも混ぜて作っていくわね
(そういえば洋上生の頃もさまざまな料理が食べられたものだ 中でもジローのラーメンが印象深い) (この姿でまた会いに行ったら、彼はどんな顔をするだろうか) (最後の豚肉を口にしながら彼の話に耳を傾け、お米の存在にぴくりと反応した) 醤油があるのもびっくりしたけど、お米もちゃんとあったんだ! あ…そういえばそうよね 前にここでオムライスご馳走になったもんね (米の保存で注意する点は、高湿と酸化と高温だ ここくらい他の国から離れている地域では輸入するのも大変だったろう) じゃあさっそく明日お米買ってこなきゃ! え? どっちかって…どっちもよ どっちもとても美味しいもの どちらかなんて選べないわ (首を横に振り、満足そうに料理を食べていく この料理も、この料理も、私の大切な味だ) でも、食べ過ぎちゃだめよ(最後にいたずらっぽく笑い、最後の一口を食べ終えた) -- 三雲
- (楽しそうに話ながら料理を食べていく三雲を眺めて、思う。彼女がここに来て作った料理、そのどれもが彼女自身でもあるのだ)
(それは、彼女自身が宝石のように大事にしていた今は亡き両親の絆でもあるのだろう) んー…なら、俺もその味を存分に教えて欲しいもんだな。これからも三雲の料理、期待しておくとするわ。 …っと、今日も美味かったわ!ごっそさん!(笑顔で礼を述べ、空になった皿をまとめながら最後の言葉には、苦笑を浮かべ) あー…気ぃつけてるつもりなんだがな…やっぱメシが美味ぇと食い過ぎるのはしゃーねぇわな。その分トレーニング増やすさ。
(と、洗い場にまとめた皿を運びながら言えば)そういや、衛士の仕事の方はどうだ?訓練ならいつでも付き合うぜ? それの方はちっとやそっとじゃ慣れんのも難しいだろうしなぁ…。最大限フォローすっから遠慮すんなよ。 (新入りの仕事は、交通整理や簡単な警邏などそこまで難しいものではない。とはいえ馴染みのない者が直に熟せるものでもあるまい) -- レパード
- (合掌して軽く頭を下げ)ごちそうさまでした…お粗末さま
(こちらも含み笑いを交えて共に食器を片付けていく こういう片付けは一緒にやるのが日課になっていた)
そうね 最初はどんな仕事するんだろうって緊張してたけど、最近はやった緊張もほぐれてきたわ そんな危険なこともないし、町の人の顔も覚えられるし…(と、言葉を濁す) (最近は相手側の緊張もほぐれてきたのは、割りと気さくに話しかけてくれる人も増えてきた) (それは嬉しいことだが、レパードを知る年配の女性辺りから、彼との関係についてさりげなく聞いてくるのには少し困っている) (笑顔を絶やさずそれとなく話しをかわしてしてるのだが、それでも今の状態をなんと説明したものか)
…ま、それでも慣れないこともまだまだ沢山あるからね 少しずつこなしていくわ 大変な時は頼らせてもらうわね その時はお願い (食器を片づけ終え、あとはそれぞれ就寝まで自由に過ごす時間だ 食事も終えた身体に、一日の疲れが急激押し寄せ、少し目元が緩んでくるのが判った) -- 三雲
- (僅かに淀んだ言葉尻に、片眉を上げて反応し)ん?なんだ?何か気になることがあるんならちゃんと言えよ?
何しろこの仕事に関しちゃ俺のほうが大先輩だからな、どんな難事件だろうと一刀両断に解決してやらぁ。 (けらけらと笑って言うものの、実際に彼女の困っている原因を聞けばその得意げな顔も大いに渋ることになるのだが)
(片付けを終えれば、大きなダブルソファーに腰掛けて、その横に置かれている年季の入った木製で作られたラジオのスイッチを捻る) 「・・ ・・・───地方の明日の天気は晴れ時々曇り、所により雨を見込んでいます。さて、ここでお届けするのは──」 (無線技術の発達していた学園に比べればお粗末なものではあるが、この国の数少ない娯楽の一つであるラジオが微かなノイズを交えて響きだす) (淑やかで落ち着いた曲調のジャズが、夜もふけはじめた二人の暮らす家に満ち満ち、その穏やかな時を彩っていく) -- レパード
- (案外相談した方が面白いことになりそうな気もするが、それはそれで後日の楽しみとして取っておこう)
(今はとりあえず、今日も無事何事なく過ごせたことに感謝しつつ、この静かな時に甘んじる) (静かに流れる音楽が、耳に心地よく響き渡る 音楽は癒やしの効果があるとつくづく実感できる) (隣に座る彼の温かさがそれを助長し、疲れは眠りをより早く誘い込んできた) (心地よい満腹感と安心感のせいか、瞼はいつもより早く落ち込み、隣りの温もりに吸い寄せられるように、身体がゆっくりと横たわっていった) -- 三雲
- (耳に心地よい音色を楽しんでいれば彼女の頭がこちらの肩にもたれかかり、ゆっくりと体重を預けてくる)
(その重みもまた心地良く。撓垂れる光り輝く絹糸のような髪がこちらのシャツの肩をさらりと流れる) (なされるがまま、しばしその暖かさと、彼女が本当にすぐ隣に居るという存在感を噛み締めていたが)
…っと(声にもならぬような呟きを漏らす。完全にこちらに体重を預けすぎて、こてりと膝元に彼女が横たわる) (万が一にもそのまま床に落ちないように彼女の肩を抑えれば、その力の抜け具合からもはや彼女の意識はとうに無いことが分かる) (やれやれといった表情を作るも、そこには喜色がありありと見える。そうやって身を預けてくれるくらいには、気を許されているのだと) (彼女を起こさぬようそっとラジオに手を伸ばし、そのスイッチを切る。そうすれば夜の静寂に聞こえるのは一定のリズムで刻まれる吐息) (安堵に包まれているのだろうか、乱れのないそれを聞きながら、寝転ぶ際に広がり彼女の顔を覆ってしまった銀髪を避けてやり) (いい顔だ) (その横顔には重く張り詰めたもの一欠片とてなく、まるで幼子のよう。そう、まるで彼女がかつて取った姿である金髪の少女のように無垢な表情) (彼女は今、どんな夢を見ているのだろうか?膝の上で甘く軽やかに艶めく銀髪を手の平で優しく撫で付けながらそんなことを考える) -- レパード
- (意識はほぼ落ちていたが、僅かにはまだ覚醒している部分もある 肩に寄りかかった感触が心地よく更に意識は落ちていく)
(顔に感じる温かさは、ずるりと身体が下に移動してもまだ離れることはない いつまでもここにありつづける 私の一番近くに) (その温もりは、確かに父や母と同じ優しさが伝わってくる 自分を愛し、慈しんでくれる存在が醸しだす幸せの温もりを) (もう一度手にしたかった、この確かな温もり それに包まれて眠る幸せは、彼女を幼き童心へと帰らせていく) -- 三雲
- (雪原のような煌めく白銀の髪が、黄金の流れへと姿をかえ、大人びた顔立ちがじょじょに幼く変容していく)
(顔だけではない 身体つきも大人の女性から少女へと手足が縮まり細くなっていく まるで彼女だけ時間が逆に流れてしまったように) (それはかつて、洋上校時代に見せていた彼女のもう一つの姿 皇十詩の一人の姿であった) (かつてその力はガラス細工に封じられ、完全に月白三雲から離れてしまったはずである 再び発動するためには封じられたガラス細工を所持せねばならない) (しかし彼女の手には件のガラス細工は握られていない それらは全て、すでに粉々砕けてしまい、霧散したはずであった) (無垢な笑顔のまま彼の膝の上で身動ぐ その確かに感触からこの姿が幻ではないことが、レパードには伝わったことだろう) -- トシ@少女
- (ただただ、静かに過ぎる時をこの上なく慈しみじわりと胸に暖かく広がる幸せを実感していれば)
(撫で付けていた手の平の髪が見る間に太陽を思わせる黄金色の輝きを放ち始め、それに目を見開く) (膝の上に感じる彼女の重みは幾分か軽くなり、何よりも金髪に包まれた彼女の顔立ちは…まさに先ほど思い出していた少女のものだ) トシ…!?(今となっては懐かしささえ感じさせるその呼び名を口にする。海の香り漂う学園で4年間を過ごした、5人で1人の友の名を) (その力は封じられていたはずであった、その力は消えていたはずだった) (しかし、今ここに。覆しようのない事実として静かな吐息と共に膝の上にある) (なればこそ、異能。条理を超え摂理など無視するのが、異能) (コレクターのガラス細工を破壊したあの時の光景を思い出す。万華鏡の中に居るように、ありとあらゆる色が解放された瞬間を) (あの光は、もしかすればあの時、元の持ち主の元へ帰ったのかもしれない。それとも、彼女の力を封じ切れてはいなかったのかもしれない) (だが、今となってはどうでもいいことだ。そうだ、ひとまずは…) 久しぶり。…元気そうだな?(陽溜りの中寝転ぶ猫のように、自分の膝の上で丸まる'彼女'の鼻の頭を、ぴんと指で軽く弾き…) (とてもとても楽しそうに…微笑んだ) -- レパード
- (ぽつぽつと市場に行き交う人々の姿が少なくなり、通りの賑やかさが落ち着いていく)
(見れば幾つかの店は既に店じまいの準備を始めている。少し前まで空高く上がっていた太陽は山の上に降りてきていた) ひーふーみー…っと。買うもんは大体買ったしそろそろ行くか。最後に寄っとく所もあるしな。 (横合いから照らされる二人の影は長く伸びて。緩やかな傾斜のついた道に寄り添って二つの輪郭を落とす) -- レパード
- (昼間の喧騒が流石に止み始め、帰る人だかりが目につきはじめた頃、改めて結構ながくここにいたことを悟る)
(お互い手に手に荷物を持ちながら、戦利品を確認する 一応今のところはこれで充分だ またその内必要なものが思いつくだろう) そうね これ以上買うと持ちきれなくなっちゃいそうだし 今日はこの辺にしときましょうか その寄る所って何を扱っているの? (寄り添う影と同じく、初めよりも更に距離の縮めて隣に立つ こうやって二人の生活を彩るものを一緒に買うというのも、なかなか楽しい) -- 三雲
- (その影は街の中心部へと進んでいく。建物はより高くなり頑健さを増し、その密度を高くしている)
そうだなー、扱ってるのは…(中でも一際大きく、しっかりとした作りの建物がやがて見えてくる) 国民、かね(夕日を受けて赤色に染まったそれは周りに比べて近代的な作りをしており、見れば石やレンガではなくコンクリートで作られていた) うちの国…カーネルア公国の中央省庁だ。仕事手伝ってくれるならそっちでも来る機会はあるかもな。 -- レパード
- (何気ない日常を謳歌し、平和に満ち溢れた笑顔で彼に着いて行く)
(彼の足に習っていれば、やがて目的地は中央部分に入っていくのが判った 国の中央で立てられるものといえば…) (国民という言葉が、自分の耳に重くのしかかる感じを覚える 他の建物に見慣れた目が、余計この建物の違いを感じさせる) 中央省庁…(彼の言葉をオウム返しに口にして、目の前の門を見つめる) (多くの罪をおかした自分の身体が、その厳格さに恐れをなしているように固くこわばっていた) (いや駄目だ さきほどの決意を不意にしてはいけない 心を奮い立たせ、顔を引き締めながら改めてその建物を凝視した) …私が、この国の人間になる為に必要な所ね (決意を高めるように、レパードに向けてそう微笑んだ その瞳の中の怯えはもう薄らいでいっていた) -- 三雲
- (彼女が足を止めて門の前に立っているのを見る。やはり公的な機関への苦手意識はまだ残っているのだろう)
ん…そういうこったな、ほら、気ぃ抜け気ぃ抜け。何も取って食おうって訳じゃねぇんだからよ。 (向けられた微笑みに、笑顔を返しその肩にぽん、と手を置いて凝った肩をほぐすように揉む) こんなんで固くなっちまっちゃ後が大変だぜ?(その華奢な肩にどれだけの物を背負っていたのだろうと、思いながら)
(国政の中心部でもある中央省庁だが、同時にここは国民の雑多な事務仕事を処理する役所でもある) (ピッケルを模したオブジェを中心とし、円形に広がる広々としたロビー。その奥へ進み窓口へと) (その窓口に彼女の手を引いて進み、ソファに待たせて自分は受付へ行き、何やら話始める) …ああ、そう、前から言ってるあの件……話は通ってるだろ?……そうだ…それはそっちで確認してくれ…ああ、問題ない (辺りの壁には張り紙が何枚も張られている。"警告!泥酔状態での出歩きはやめましょう" "工房の火事対策、貴方は大丈夫?") ("超高圧ガス取扱講習は来月から開始です" "この国の明るい未来のために<結婚報奨金申込>"などなど) -- レパード
- (励ましの笑顔と肩に触れる温かさのおかげで、身体がふわりと軽くなったのを感じた)
(ああこの人はいつでも、私に笑顔を取り戻してくれる 感謝を込めて、こちらも最高の笑顔を返した)
(外に比べればこちらは静かな方だった それでも先客の声とそれに対応する職員の声が、受付付近から様々に聞こえる) (手続きなどは彼に任せ、自分は静かにソファに座るも、手持ち無沙汰に視線は否応なくあちこちに向けられる) (自然、目に入るのは壁に貼られた宣伝用や警告文や注意書きなどなど、多種多様な文句に綴られた張り紙であった) (それはこの国にまだ不慣れな自分にとって、この国の習慣や行事やマナーの他にも、思わず吹き出してしまいそうなものまである) (これのお陰で退屈せずに済みそうだと、ぼんやりとその掲示板を眺め続けていた)
―結婚報奨金申込…結婚を進めるともらえるのかしら 仲人さんのようなもの?― ―いずれするつもりだけど、こちらでも仲人や立会人はいるのかしら― ―私達がする場合は誰になるんだろう…― (そんなことを思っていたと同時に、レパードの知古としてあの金髪の男の人が思い浮かんだ) ―でも若い人よりもこの場合は年配の人の方が良さそうよね それならレパードの親戚の人? やっぱり一族の人の方が適役よね―
(そして、改めて自分の立場を思い出す) (自分には、そういう人が誰もいないということに) ―…家族― (無意識に、両手をぎゅっと握りしめていた) -- 三雲
- (受付としばらくやり取りをし、話がついたのかレパードが三雲の所へ戻ってくる)
ちっと三雲の場合普通とも違うから色々手を回しててよ、ま、大した苦労でもねーけど。 (などと気楽そうに言いつつも、ふ、と三雲がほんの少し、身を固めていたことに気付く) (彼女が何を見てそうなったのかにまでは気づいていないが…そっと、その握りしめた両手に手を重ね) …三雲には幸せになる権利がある。今までそれを使えなかったんだとしてもこれからは思う存分使っていい。 (そうして彼女の手を引いて、共に受付へと。そこには一枚の書類が既に広げられていた) そのために、俺がいるんだからな。そしてこれが第一歩って訳だ。 (目を通せばそれは住民登録を行う書類であることが分かるだろう、横には一本のペンが添えられている) まあ…その、いずれは違う届け出をすっことになっかもしれねーが…とりあえずこれ、サイン、頼むわ。 -- レパード
- (握りしめられてから、じんわりと彼の優しさが伝わり、硬くなった身体も心もほぐされていくのを感じる)
(先ほどまでの不安も悲哀も何もかもが霧散していく 後に残ったのは、安堵の笑み) (そして握りしめられたままに受付へ 置かれた書類を確認するよりも先に、彼の言葉が耳に入った) 幸せのための…第一歩 (一瞬、目を見開いて思わず彼の顔を見つめる 今の自分の顔を鏡でみたら、きっとこれ以上ないほどに火照った顔をしているのが目に入っただろう) え…あの、その、え (視線をキョロキョロと彷徨わせ、ようやく書類に目をやれば、そこでようやく『住民登録』の文字を確認できた) あ……そ、そうよね! まずはこれからよね! (自分の勘違いをごまかすように、慌ただしくペンを手に取る) (そしてその後、もう一度耳に入ったその言葉に、今度は顔も向けられず、顔を赤くしたままただこくりと頷くのみであった) -- 三雲
- (書類を前にし、途端に挙動不審になり右往左往する彼女に、図らずもぷ、と笑みを漏らしてしまう)
だからこれは違うっつーの。…それとも、もう今のうちに準備だけはしとくか? (なんとも可愛らしく白い肌を桜色に染める彼女に、辺りに張られた張り紙を道化のように指し示しておどける) (焦っているのか幾分雑なものとなってしまっているサインを確認すると、受付にそれを提出し) よし、これで今日からここはお前の国で土地で居場所だ。もちろん故郷の事を忘れろなんて言わねぇが…。 新しく色々始めようぜ、…二人でな。 (そう言って、彼女に向かい立ち、幾分か大仰な仕草で大きく両手を広げて) カーネルア公国、首都ロイトへようこそ!この国は貴方を大いに歓迎する!そして誰よりも…この俺が! (実に嬉しそうに声を張り一息に言い放ち、続けて儀礼めいた動きで腕を折り、礼をする) (──そうして、かつて誰でもなく、何者にもなれなかった女が一人、切立つ山々の合間にある街で) (自らの隣に寄り添う影を伴い、その立つ場所を一人の人間として得ることになる。一歩を踏み出すためのその足場を──) -- レパード
- (時には曲がりくねり、時には真っ直ぐに通りに沿うような形で布を張った簡易的な屋根がいくつも軒を連ねている)
(それは周囲の白茶けた石の色とは違い、鮮やかな赤や、青、緑の目を引く原色の彩りを広げ) (その屋根の元に雑多に陳列された品々も、また色とりどりに) (山のように積まれた果物、切り取られ並べられた肉類、銀色の鱗を輝かせる川魚etcetc)
…ひとまず食い物はこんくらいでいいかね、あとは歯ブラシやらも買っておいた方がいいな。 実際来てもらってみると思ったより要るなモン多いもんだな…。他になんか欲しいもんはあるか? (片手に食べ物が入った紙袋を抱えて食料品が並べられた区画を抜ける。その先は生活雑貨や衣料品を売る一帯) -- レパード
- (坂を下りたその先にある露天市場 自分が知っているのとは違い、そこはカラフルなら色合いのテントが揃い、一層目を引き寄せる)
(ひと通りの食料品を買い揃え、今夜はどの食材で何を作ろうか考えつつ、レパードの言葉に少し首を傾け視線を逸らし) そうね 歯ブラシはやっぱり無いと あとシャンプーやトリートメントもほしいし… (と、そこで少し言葉を濁す 欲しいものは確かにあるのだが、それは彼と一緒にいる時は非常に買いづらいものであった) (これは後々一人で買っておこう…とバレないように心中で呟いていた時、視線が更に色とりどりのものに引き寄せられ…)
あ、服 服がほしいわね せっかくだしこちらの民族衣装なんてのも着てみたいわ どういうのかしら (やはり女性だからか、衣類を見かけると足取りも軽くなり彼の返答を待たずにそのまま向かってしまった) -- 三雲
- (家を出てから今までずっと一人でやってきた。それも潤いのさっぱり無い男一人のむさ苦しい生活だ)
っと、そうだな。俺が使ってんのだと三雲には合わねーだろうしなぁ。綺麗な髪してんだし手入れはきちんとしなきゃな? (なので、続く言葉が口ごもったのには気付かない。そういう細かい所にまで気付くには少々男の気配りと経験が足りなかった)
(そうして、顔を輝かせて小走りに服を陳列する区画に向かう彼女の背を追う。思えば、着飾った彼女の姿は見たことがない) (学園では制服だったし、こちらに来てからはシンプルなジーンズ姿だ。それはそれで乙なものではあったが、彼女も女の子ということか) すげー昔はそうでもなかったらしいが、工業が発展してからは普通の洋服着る人が多くなったみたいだぜ。 この地方ならではってんなら…(そうやって道々の店を示しながら歩き、一際鮮やかな衣装が並ぶ店へと案内する) この辺りのがそうだな。祭りの時とかにゃ大体こういうのを皆着てる(大小様々な細工を凝らし、晴れを演出する民族衣装の数々) (黒字に赤を縁取り、同じく赤の大輪が幾何学的に配置されたベストやロングスカート、その隣には白や青を基調とした同じく花が咲き乱れる衣装が並び) -- レパード
- (目を見張るような刺繍に染められた衣裳を飽きずにじっと見つめ続ける 黒地に鮮やかな赤が映え、更に色とりどりの縁取りや花や模様の数々が染め渡る)
綺麗… (素直にそう囁く こんな綺麗な衣裳を見るのは初めてだ ドレスや何やらは見たことはあるが、民族衣装となるとそうそう目にする機会はない) (それを覗いても、ここまで美しい刺繍の施された衣裳など初めてだ お祭りの時に着るということは晴れ着のようなものか) じゃあ…私も一枚は買っておかなきゃね (ここに住むんだし、とにこやかに笑いながら、どれがいいかなと見た目や触り心地を確認する)
(黒地に赤が基本だが、デザインが一つとして同じ物がない それだけ手作りの作品というのが見て取れる) (シンプルな黒のドレスに色とりどりの糸で刺繍をした物、ベストと合わせてデザインされたもの、プーケも羽織るようなデザインまである) いっぱいあって迷っちゃう…ねぇ、レパードはどれがいい? (そう言ってようやく彼の方へと視線を向ける そういえば彼の好みというものをあまり知らなかった) (これを機に少しでも彼のことを知ることが出来れば…そんな期待も込めて彼に判断を委ねた) -- 三雲
- (色々な衣装を手に取り、じ、と見つめまた戻し、そうして次の服をまた手に取り確認する彼女を微笑ましく見守る)
おう買っとけ買っとけ、俺も三雲が着たとこ見てみてーし。次の祭りんときゃそれ着て行こうぜ。 金は俺が出してやっから心配すんな、好きなのを…って(色々と迷っていたようだが、突然、くるり、とこちらを向いた彼女にどうしたのかと思えば) 俺が、か?(問いかけられ、うーん、と首を捻る)てめぇで着るもんだったら大体決まってんだが…うーむ…。 (これは難題だ、と眉を潜めつつも彼女がそう言うのであれば、と自らも手を伸ばし、衣装を手に取る。そしてそれを三雲に向けて、頭の中で着た姿を想像する) むー…あ、悪ぃ手広げてもらってもいいか?…そう、ああ、次は後ろ向いてみてくれ。…んー…(手荷物を店に預け、真剣な顔で今度は自分が手に取り、戻し、吟味する) (赤を基調とし金の花びらが咲く物華やかな物、抜けるような青をベースに白抜きで清廉な爽やかさを持つ物、それらを重ね、外し、重ね、外し) …これ、かな(そして、一着を手にし、色々な角度から見つめしばらく悩み決めたのは黒を基調に赤地で縁取られた一着。その一枚は、彼女の銀髪がそれはそれは美しく映えて) -- レパード
- あ、うん…こう、かな?
(言われたポーズを取りながら、次々と衣装を合わせては返し合わせては返しとする彼の姿に少し驚く) (ここまで真剣に考えてくれる彼に対して感動を覚え、思わず口元が緩むのを抑えた) (そして彼が本当に自分を大切にしてくれているのだと実感し、また身体の内側から暖かいもので溢れていくような幸せを味わう) (私はこれから、どれくらい彼にこうした幸せを味わわせて上げられるだろうか、恩を返すように、この幸せを返していけるだろうか) (そんなことを考えながら、一枚を手にとった彼の言葉に表情が輝いた) それね! うん…綺麗だわ 私もこれがいい! (彼が選んでくれたのだから尚更いいと、抱きしめるように衣装を抱え、少し申し訳ないと思いつつも彼に買ってもらった)
ありがとレパード …早く私も働いてお金稼がなきゃね (綺麗に包んでもらった包装紙を手にして、残りの荷物を持ちながら彼にまた寄り添う) (彼と同等の稼ぎは無理でも、せめて自分専用の日常品が買えるほどの収入はほしい) そうすれば、好きなものいっぱい買えるだろうし (冗談めかして明るく言うも、心の中はなかなか晴れない やはり稼ぎがないというのは中途半端な状態で非常に落ち着かないものだ) (彼に頼るだけの人生はしたくない、自分で出来ることは何でもやりたかった) -- 三雲
- (精算し、畳んで袋に包まれたその衣装は、実のところそれほど安くはない。晴れ着の一種であるそれは細工も粒々、仕立ても良く)
(だが、安いものだ。彼女がこの地に馴染もうと欲したのであれば、この程度の物、喜んで買おう) ははっ!気に入ってくれたみてーでホッとするわ。女の服とかよくわかんねーからな。…サイズ、合ってんよな? (それは彼女が、これからこの地で二人過ごすことを楽しみに、幸せに思ってくれることの証でもあるのだから)
(そうして、彼女が言うのを聞きながら、彼女を待つ間、検討を重ね考えていたいた考えが頭を持ち上げる) そのことなんだけどよ…、三雲、良けりゃ俺の仕事を手伝わねーか?何、三雲なら能力的には充分だ。 (市場を歩きながら、この街での自分の務めを説明する。治安を維持し、問題があればそれに当る警察に似た性格を持つ仕事だ) …もちろん、危険なこともある。三雲には争い事にはもう関わらず生きて欲しいとも思う。けどよ…。 (少し足を止め、三雲を見つめ言う)皆を助けて、守れば…三雲の重荷も、ちょっとは減るんじゃねぇか、って思ってよ。 (彼女がかつて、そうせざるを得ない状況に置かれていたとはいえ、半ば自ら望み、人を害したのは事実だ) (闇から闇へ葬られた過去の罪は在ってないような物なのかもしれない、それでも彼女の背負っていたものが幾分か、軽くなるのであれば) まあ、うちの家計が助かるってのもあるけどな?(彼女が、より前を向いて、より幸せに生きてくれるように) (こちらも冗談めかして付け加えて、荷物を持たない方の手を伸ばし、彼女の手を取ってまた歩き出す) -- レパード
- うん 丈も合ってるし大丈夫よ 次のお祭りの日はいつかしら 楽しみだわ…
(以前欲していた綺麗な服 そして何より彼が選んでくれた服だ 喜びは二重三重に重なりながら深みを増していく) (包みの中の服に思いを馳せていれば、ふいにかけられる彼の言葉にこちらも改めて視線を向け) 貴方の…仕事? (そして説明を受ける 街の秩序と治安を維持する公安の仕事を 確かに自分の力でも彼の助けにはなれるだろう) (しかし、私が、この私が) (思わず自分の片手を見た 仕事をしたいとは思っても、果たしてこの自分の汚れた手で満足に出来るのかと) (動揺を察したようにかけられる、彼の次の言葉にはっと目を見開いた)
(私は、この血塗れの手では誰の助けにもならないと思っていた) (しかし彼はそうではない むしろ人の役に立ってこそ、この重い血の滲みが減っていくと) (そう、捉えていてくれるのだ)
(忘れていた訳ではなかった 忘れようとしていた訳でもなかった) (ただ、その事を顔に出さないように、あくまで普通の暮らしを保って行こうと思っていたのだ) (しかしそれも、彼には見透かされてしまっていたようだ) そうね (きっとおそらく、私の一生をかけても到底償えるものではないだろう) いっぱい頑張らないとね (それでもこれは私がやらなければならないことだ) それじゃあ…仕事の方も、これからも宜しくお願いします
(握る手が、いつにもまして頼もしく感じる) (一生償えない、途方も無い道であっても、彼が応援してくれるのなら頑張れる) (その期待に応えられるように、私はこれからも前を向いて歩いて行けるだろう) (この明るい世界の下で 輝かしい未来に向かって) -- 三雲
- (石造りの建物が立ち並ぶ石造りの道、どこを取っても角度の付いた坂道になっている街並みをのんびりと歩く)
(洋上都市のように広い土地を伸び伸びと使い、計算された都市計画に基いて作られた街とは違い、雑多で過密な光景が行く手にはある) (建物はどの建物も縦に高く、3階より低い建物はほぼ存在せず、二人の行く路地も日陰に落ちて) (道沿いには元からの自然を生かした木が青々と茂り、ともすれば白茶けた壁と赤茶けた屋根の石材の色だけで染まりそうな風景に彩りを与えている) (そうしてその間から山肌に近い方角を見れば小さな塔のような建物や、それに併設された巨大な鉄の櫓がちらほらと白いガスを上げている)
…でよ、この街、結構ごちゃごちゃしてっから、最初のうちは気をつけてな。それとほぼ全部坂道になってるからそれも注意だ。 (身振り手振りを交えがら語りかけつつも、時折、横に並ぶ彼女に視線をやり、その歩みに気を配る) おまけに空気も下に比べりゃ大分薄い。疲れたら小まめに休むのは忘れずにな。特に頭痛がし始めたら無理は禁物だぞ。いいな? (普通の人間に比べれば比較にならないような動きを見せる彼女でも、土地が違えば勝手も違おう。きちんと念には念を押しておく) -- レパード
- (初めてこの国に足を踏み入れた時は、とにかくレパードに会うことだけを念頭にしていたせいか、今ようやく町並みを確認した気分だった)
(彼と会いたい一心でこの坂を駆け上ったのだろう 今は手をつなぎながらその傾斜に注意しつつ歩いている) (自分の故郷は土地は広いし平野だったからか、そこまで傾斜は酷くなかった 建物も一階建ても多くこことは正反対だ) (こんなにも違う世界があったとは…洋上もそれはそれで広かったからか、ここまで高い建物ばかりではなかったから尚更だ) (建物の間を通るというよりも縫うように歩いて行きながら、少しずつこの街の全貌を把握していく)
ええ、今のところは割りと真っ直ぐだから大丈夫 でも入り組んだ所に入ると危なそうね (こちらに気を配りつつペースを合わせてくれる気遣いに感謝しつつ、手をしっかりと握りしめてその言葉に応える) (道もだが、確かここは標高がある 鍛えているとはいえこの空気の薄さには別の意味で参ったものだ) (本当はもっと早く着たかったが、無理をして高山病になっては目も当てられない 逸る気持ちを抑えながら慎重にここまでやってきたのを思い出す) 判った 無理はしないから これからはずっとここにいるんだもん ゆっくりとだけど慣れていくわ (ニコニコと微笑みながら頷く 暮らしていた気候や環境が違う所でもっとも注意することは体調だ) (彼を心配させないように、そして確実に慣れていくように、この土地に染めてもらおう)
そういえば、今日はどれくらいの買い物するの? 一度に買っちゃうと運ぶのも大変よね (ちらりと今まできた道を見返す、この坂を重い荷物を背負って登るのは少し辛いものがある) (新鮮な生物なら使う分だけその日に買えばいいが、安かったり保存が効くものはつい色々買ってしまいがちだ) (先ほどの肉屋しか見ていないが、ここの市場がどういう風になっているのか確認するのも、これから生活する上で必須となろう) -- 三雲
- (しばらく観察していたが、彼女の足取りは危なげない。これならさほど心配しなくとも直に慣れるだろう)
ま、焦るこったねーよ。ここの空気吸ってここのもん食べてここで寝てりゃいつの間にか慣れてっだろうさ。 (そうして、この土地の一員となっていくだろう。それは自分にとっても嬉しいことだ)
んー?ああ、そうだなぁ、当面の間食える分だけでいいんじゃねぇかな。別に冬を過ごす訳でもねーし貯めこんでも腐っちまう。 それよか、日用品とかの方を差し当たって揃えといた方がいいかもな…食器やらなんやらは二人分あるんだけどよー (あー、と苦笑しつつ、一拍間を置き)ほら、女の服とかは分からねーからな。流石にサイズ合わない俺のシャツで過ごす訳にもいかねーだろ? (今はこちらに来た時の旅装がまだあるだろうが、本格的に居着くとあればそれらも必要になるだろう) 他にも細かく要るもんもあるかもしれねーしなー……っと!
(道を見返すために後ろを振り向いた彼女の手を突然、ぐい、と引き、その体をしっかりと抱き留めた) (それは二人が丁度建物の角が作る影から出て、少し広めの通りに出ようとしていた時) (と、と、と、と一定のリズムを刻んでガスを吹き出し、人が歩くよりは早い程度の低速で走るトラックが目の前に迫っていた) (運転手の日に焼けた老人が、二人を見て目を開いてブレーキをかける。その瞳は起きようとしていた事故ではなく明らかに好奇心に支配されている) おいコラ、ハンスの爺さんよ、前方不注意で切符切んぞコラ(凄む。凄んではみたが…時既に遅し) (老人は旧知の仲のレパードが腕に抱く三雲の姿を見て、好色そうなからかいの声をあげ、何やらレパードとやり取りをして)
……とまあ、こっちもに車はあっからそれも注意な。うん。トルク重視で町中じゃ速度出さねーけどよ。 (荷台に色とりどりの果物を載せた車が坂を登って行くのを見送りながらげんなりした顔をして言う) ま、ちょうどあっちが市場だ。俺らも行ってみっか(気を取り直して歩みを向ける。その表情に少々の照れを浮かべながら) -- レパード
- あ…そうね 食材もだけど日用品か
(女性特有の日用品はさすがに彼では用意出来ないだろう 服や下着などもこれから揃えていかなければならない) でも、小さい訳じゃないんだから、貴方のシャツも時々貸してね? (ふふ、と小さく笑いながら視線が彼から逸らしたと同時に、予想外の方向に身体を引かれて、とっさに反応できず彼に身を委ねる形に) (一瞬止まった息が、迫る車の音と共にゆっくり戻っていく 彼の胸の中に収まりながら、なんだろうと視線だけ向けていれば) (いかにもレパードの知り合いらしい老人が、こちらを物珍しげに見つめている) (純粋に見慣れないこちらの存在が珍しいのもあるだろうが、やはりこの体勢が一番目を惹かれているようだ) (老人の好奇な視線から逃れようと、人見知りのように顔を俯かせあとは彼に任せる 彼の感情を感じるようにそのやり取りを耳にしながら) (またくすりと、二人から見えない角度で小さく微笑んだ)
ここ建物の陰も多いから気をつけないとダメね (いつの間にか身体は離されていたものの、つなぐ手はしっかりそのまま 二人で老人の車を見送りつつ、こちらは面白そうにクスクスと笑っている) うん 色々じっくり見て回りましょう さっきの果物もいいかもね (再び並んで歩きながらも、視界の端に彼の照れくさそうな表情はしっかりと見える こちらも照れくさいがそれ以上に何か嬉しくなり) (そっと、身体を寄り添わせ、もう片方の手をそっと彼の腕に沿わせる) 色々、ありがとう レパード (こうやって安心して身を寄せられる幸せ それを肌で感じつつ、ゆっくりとその先へと向かっていった) -- 三雲
- (小鳥の鳴き声が優しく耳に響く 瞼の裏側からでも判るほど部屋が明るくなっているのが判った)
(目覚めると最初、自分がどこにいるのか認識できなかったが、すぐにここは彼の家だと思い出す) (いや…もう'二人'の家だ) (そう確信すると、自然と笑みがこぼれた)
(隣の部屋でまだ彼が寝ている気配を感じ、起こさないようにそっと立ち上がる) (二人の生活の第一日目に相応しい朝食でも作ろうか 何がいいかと考え、そして、ああと小さく呟いた) (取っておきのメニューがあった あれなら朝食に相応しいだろう 甘いモノだが朝に食べる分には大丈夫) (材料を確認しに、足音を立てないよう静かに歩き、ドアを開けてそのまま階下へ降りた)
(再会辺りは興奮と歓喜で気づかなかったが、この家は結構広い2階建てであった) (しかし広いの家の中で一人きりで待っていてくれた彼の気持ちを思うと、今すぐに寝ている彼の元へ駆け寄りたくなる) (それをぐっと押し込めながら、キッチンの中に入り食材を確認していった) (一人分だからそこまで大量にはない むしろ少ない感じもする ちゃんと食べているのか心配になった) (目当てのメニューの材料は何とか確保しつつ、明日は東国のご飯と味噌汁も良いかもしれないと一人呟いた)
(まずはボウルに牛乳と卵と砂糖を混ぜ込み、浅型のバットに流し入れる) (次に食パンの耳を切り、パンの部分を八つ切りにする もう一枚はそのまま耳つきで縦半分に) (バットに浸し、液をじっくりしみこませる その間に食器などを用意しつつ、野菜などを細切りにして塩を振って軽く揉んでおく) (野菜を一度水で洗い、水気を切っておく間に染み込んだパンを確認する) (充分に染み込んだようだ 真っ白なパンが黄色くしっとりと重みをましたのが目でみて判る) (フライパンに火をかけ、熱されたらバターをじっくりと溶かし、少しずつパンを焼いていく) (バターの香りに、卵と牛乳と砂糖の焼ける甘い匂いがゆっくりと部屋中を漂っていった) (―ああこんな感じ… こんな風に作ってもらってたなぁ―) (甘い香りを嗅ぐとどうしても子供の頃のことを思い出す 昔はその度に胸が苦しくなったものだが、今はもうその苦しみは襲って来なかった) -- 三雲
- (階下で何事かが動いている気配に、すぅ、と目が覚めた)
(窓からはカーテン越しに太陽の優しい日差しが差し込み、朝が来たことを教えてくれる) (目覚めは実に好調。しかし随分と深く寝入ってしまっていたようだ、時計を確認してみればいつも起きる時間より遅い) (それも当然だろう、心より安心できる存在が今はすぐ側に居るのだ、少々の寝坊をした所で無理もない)
…まあ、それはそれとしても目覚ましは買っといた方がいいか(今日が非番で良かった、と思いつつもぎしり、とベットを軋ませ起きる) (彼女には隣の部屋を使ってもらっている、元々彼女に居てもらうつもりで寝具、家具は揃えておいた) (本音を言えば、少々迷ってはいたのだが。今自分が寝るこのベットをシングルにするか…ダブルにするか) んーーー!(と、伸びをしてベットから降り、寝室を出、階段を降りる。彼女はもう起きているようだ)
(丁度、階段を半分ほど降りた時、ふわりと香ばしい匂いがしたのが分かった。そしてその香りは、少々甘く) お、メシ作ってくれてたのか?ありがてぇな(リビングに降りて嬉しそうに言い、その真中の四角い大きめのテーブルについた) お前が料理すんのは初めて見るな…なかなか手馴れてんじゃん(顎に肩肘を突いて、テーブルからキッチンの彼女を見る) (その様子がどこか楽しそうに見えたのは自分の気のせいだろうか?少なくとも、そうしている彼女を見ることには胸に暖かい物を感じて) -- レパード
- (階段を降りる音を耳に入れながら、トーストに注意しつつ彼が現れるのを待つ)
おはよ(姿を見せたレパードに向かって明るく挨拶を送る そしてまた、幸せを噛み締めた) うん これ作りたかったのよ だって貴方が食べたいって言ったものでしょ? (彼は私の希望を叶えてくれた それも何度も ならばこちらも叶えるのが道理というものだ) (そうでなくとも、彼のためならば何でもしてあげたかった お礼というのではなく、やはり愛情というものだろうか) あ、パン半分使っちゃったけど大丈夫だった? 他に使う予定なら今日また買ってくるけど… (事後報告になり申し訳なさそうに言いつつ、粗方焼いたパンをそれぞれの皿に乗せながら、最後の仕上げに濃厚な色のシロップをかける) (その後に水が充分切れたサラダを皿に盛って、ドレッシングも添えて)
飲み物はコーヒーがいいかしら それとも紅茶? ミルクもいいわよね… (色々作業しながら飲み物の準備も淡々とこなしていく そしてカップが二つ分あるのにも気づき、そっとそれを取り出した) -- 三雲
- (淀みなく設えられていくテーブルに微笑みを漏らす。ここまでしっかりとした朝食を食べるのはいつぶりだろうか)
(いつもはコーヒーを一杯、余裕のある時でトーストを一枚食うか食わぬか、という所だった) 覚えてくれていたとは有難いね。ま、どっちにしろ近々食い切るつもりだったから問題ねぇよ。 でももう食材あんま無いだろ?そろそろ買っといた方がいいのは確かだな、何しろ二人分だ(笑って言い) (牛乳瓶を取り出してきて)朝はコーヒーと決めてんだが…こういうのもたまにゃいいわな(と一揃えのカップにそれを注ぎ)
ん…それじゃ、いただきます(軽く黙祷をし、短い祈りを捧げる。それは彼女と共に朝餉を迎えられることへの感謝でもある) おー…!美味ぇな!俺やっといつも焼き過ぎになんだがこりゃ丁度いいわ。サラダもうめぇ(次々と朝食を口に運んで感心の声をあげた) (程よい硬さの表面にさく、と心地よく歯を立てれば、しっとりとしてて、かつふわりとしたパンの食感が適度な甘さを伝えてくれる) -- レパード
- 覚えているに決まってるでしょ ずっと作りたかったんだから…
(貴方が私に与えてくれたものに、少しずつ応えたくて 貴方の望むものを、少しでも多く叶えたくて) (私の望むものを、沢山与えてくれた貴方のために) (真っ白な牛乳に満ちたカップをそれぞれ前に置いて、パンにサラダと用意が出来たら、後はもうやること一つ)
ご飯食べたら、さっそく買い物に行きましょう 二人分だから重くなっちゃうかも (ふふふと微笑み、合掌をしたあと手を組んで祈りを捧げる 彼と共に朝食を食べられることに感謝を) 頂きます(はむっとパンを噛み締めれば、中からあふれる甘い味わい それをシロップともに噛み締めれば噛み締めるほど、まるで子供のように破顔して満足そうに喉をならす) これくらい柔らかい方がやっぱりいいわね 今日のは大成功よ (牛乳と共に流し込み、サラダで口の中をさっぱりとさせる そしてまたパンを噛み締め…とずっと繰り返していたいループに陥る) そんなに気に入ったのならこれからいくらでも作ってあげるわよ 朝なら甘いもの食べても大丈夫でしょ (美味しそうに食べてくれるレパードを満足そうに、微笑ましく見守りながら呟く やはり自分が作った料理を美味しく食べてくれるのは何より嬉しい 作ったかいがあったというものだ) -- 三雲
- (出来合いの材料でもきちんと作ればここまで味も変わるものか、と思いながら穏やかな朝のひと時を過ごす)
(彼女と共に味わうその味は、どんな高級なホテルの朝食よりも美味しく感じられて、瞬く間に胃の内へと消えていく) 大いに気に入ったが…これが毎日だとちとつれーな。もっと食べたくなりそうで任務に支障が出ちまう。 (にかっ、と笑いつつ、半ば冗談交じりに言う。いつもより大分多めに食べてしまっているが、十分許容範囲だ) でも…ま、作ってくれるなら有り難く遠慮無く食わせてもらうけどな? (その分、トレーニングの時間を多く取るようにするか、とでも思いながらミルクを飲んで一息つく)
(朝日差し込むある日の食卓。そこにはパンがあり、ミルクがあり、そして彼女の笑顔があり、自分がいる) (そのことがとても幸せに思える。何気ないこのテーブルの上にこそ、幸せがあるのだと思う) (いつもの黒いコーヒーで満たされたカップではなく、白いミルクで満たされたカップを軽くちん、と彼女のカップとうち合わせ) (一人過ごした日々と違うそんな光景へ、それをささやかな祝杯の合図として…静かに噛み締め飲み干したのだった) -- レパード
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Last-modified: 2013-12-31 Tue 23:42:08 JST (3937d)