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独立記念パーティーで Edit

  • バックヤード
    • (グラス、空き皿などを大量に回収して流し場へ)
      やっと休憩時間だー。 -- ユーニス 2020-06-21 (日) 00:29:22
    • バニーガールってこんなにも重労働だったんだね
      (同じく清掃作業を終えて戻ってきた) -- 千歳 2020-06-21 (日) 00:36:30
    • 立ち仕事だもんねー、今日はこのまま3時までホールだねー。簡単なお仕事ほど時間がとても長く感じる…あ、でもおっきなパーティだからめっちゃチップもらっちった。やったね。 -- ユーニス 2020-06-21 (日) 00:41:32
    • 足を鍛えるにはいいけどね?でも、もっと華やかな仕事だと思ってた
      そうそうチップ!後で返せとか店に収めろとか言われない?(チップについて良くわかってない日本人) -- 千歳 2020-06-21 (日) 00:47:17
    • そんなことしたらバイト誰もこないよー。このバイトは、チップ前提で時給低いからどんどんもらってかないとね。
      ビキニ、もうちょい食い込ませてく?(きゅっと) -- ユーニス 2020-06-21 (日) 01:02:38
    • 大丈夫なんだ良かった(ほっと息を吐き)みんな気前良くくれるから、だんだん心配になったよ
      いや、まて。これでも十分すぎる(仕事のためとは言え、まだ慣れない) -- 千歳 2020-06-21 (日) 01:08:04
    • 食い込みだめー?わかった、じゃあ私達もビキニのブラを売ろう!さっき100ドルで売ってるバニーの子居たよ。めっちゃお客にウケてた。 -- ユーニス 2020-06-21 (日) 01:18:23
    • …見えちゃうかもしれないし(もごもご)100ドル!?このブラが(言って自分の胸元を見る)
      やっぱりそれもダメダメ!それにブラを売ったらその後、ノーブラ状態だよね? -- 千歳 2020-06-21 (日) 01:22:49
    • そうだよ?フロアに結構いたっしょートップレスの人。チトセも売ろうよー私が買うからー -- ユーニス 2020-06-21 (日) 01:29:48
    • え?妙に多いと思ったら(VIPへのサービスにしては妙に多い気がしていた)…まて?
      おまえが買うのかよ!(ぺしんっと裏拳でユーニスにつっこみ) -- 千歳 2020-06-21 (日) 01:34:52
    • てひっ(笑いつつ、ぽよーんと揺れる弾力おっぱい)
      でもこの衣装かわいいよねー、他のバイトもこんな感じのやつでやったら時給あがんないかなー。 -- ユーニス 2020-06-21 (日) 01:53:00
    • 揺らすな…うぐぐ(カウンターダメージ)お色気寄りな気がするけど……
      でも、可愛い衣装のバイトはしたいかな?(なんだかんだでいろんな衣装は着てみたい) -- 千歳 2020-06-21 (日) 02:01:44
    • 私らみたいのは体で稼ぐしかないからねー(言い方ってもんがある)
      可愛い衣装ねー、ビーチでドリンクガールとかー、ホットドックスタンドとかー、あと洗車スタッフの求人もあったよ。全部ビキニ着られるよっ! -- ユーニス 2020-06-21 (日) 02:12:05
    • か。身体で稼ぐのは確かだけどさ(一瞬変な想像をしたのか赤くなった)
      全部…なんとなくそんな気はしていたけど、ここの人ってビキニ好きすぎるよ
      (千歳が溜め息した直後。フロアマネージャーから声が掛かった)
      休憩時間は終わりだね、行こうか? -- 千歳 2020-06-21 (日) 02:22:11
    • うん、だってカワイイじゃん?あ、もう休憩おわりかーそれじゃあお仕事もどりますかー。
      …これ明け方までやって明日もまた午後からお仕事なんだよね。ブラだけじゃなくて下も売ったら今月働かなくていいかな…。(チトセに止められました) -- ユーニス 2020-06-21 (日) 02:44:26

7月1週 Edit

  • ロカーロ
    • 商店街
      • (一見バックパッカーみたいな恰好してるが、買い物中)
        この辺は観光客多くて、観光地価格のお店多いんだー。昔からやってて、安いお店の場所は覚えとかないとねぇ。 -- ユーニス 2020-06-21 (日) 23:05:11
      • 観光地価格?だから!あのジュース妙に高い気がした
        (つい先程、喉が渇いたと出店で買おうとしたのをユーニスに止められた) -- 千歳 2020-06-21 (日) 23:09:42
      • ビーチもカジノも近いからねー、クラットン側にいくと安いお店があるんだ
        地図を広げつつ説明する。サンアッシュクロスは観光地でもあるからか、洒落た街の地図が割とどこでも手に入る。
        なんかさっき、出店の人に黙って、スタンドに挿してあったの取ったけど、なんも言われてないから大丈夫) -- ユーニス 2020-06-21 (日) 23:28:22
      • (地図を覗き込み)いい服着てるのはみんな観光客か、おのれブルジョワめ!
        食べ物や日常品を買うならクラットン側で、稼ぐならビーチ側って事か -- 千歳 2020-06-21 (日) 23:34:06
      • そうそう、でもクラットン側はちょっと怖い人も多いから気を付けないとねー。
        (背負ってるリュックの中身はそっちのスーパーで買った食料品等々である)
        (アメリカといえば、週末に巨大なショッピングモールに車で買い出しのイメージだが、
        車が無い2人は地元のお店でちょくちょく買い物することが多い)
        んふふ、チトセも新しい服買う?ほら、なんかかわいいの売ってるよ、日本語のやつ。これーこれカワイイじゃん。なんて書いてあんの?
        (Tシャツ屋のショーウィンドウに『ウオウオフィッシュライフ』とか書かれたTシャツが) -- ユーニス 2020-06-22 (月) 00:03:23
      • 治安に難あり…と言う事か。行く時は眼力強めにしよう
        (日本から持ってきた地味な色のエコバッグを抱えている。中身はユーニスと同じく食料品等々)
        新しい服?うおうおふぃっしゅらいふ?(なんだこりゃ?<●><●>と言う目で見てる)
        (見れば他のTシャツ類も、『浅草寺(War Temple)』『忍者王(NINJA SYOGUN)』とか)
        (外人の喜びそうな物ばかりだ) -- 千歳 2020-06-22 (月) 00:15:04
      • これいいなー、ねぇねぇお揃いにしようぜー(うおうおなゆるキャラプリントのTシャツ) -- ユーニス 2020-06-22 (月) 00:20:26
      • 買わないぞ?買わないって……(と言うも。ユーニスがうおうおT二着持ち、めっちゃ見てる)

        はぁ、今回だけだぞ?(結局買ってしまった) -- 千歳 2020-06-22 (月) 00:26:29
      • へへへーお揃いお揃い♥んーいいね、さっそく着てみよう(さっそく服を脱ごうとしてる) -- ユーニス 2020-06-22 (月) 00:30:19
      • 待て!?なぜおまえはすぐに脱ごうとするんだ。せめて帰ってから着替えようよ -- 千歳 2020-06-22 (月) 00:38:45
      • だってあっちぃーしさー。汗かいたしさー…そだ!ビーチでお昼食べよ! -- ユーニス 2020-06-22 (月) 00:44:36
      • 確かに暑いが、新しい物を着る時はシャワーを浴びて…ビーチ?
        さっきビーチの方は高いって言ってたじゃないか? -- 千歳 2020-06-22 (月) 00:51:25
      • ほら、サンドイッチ作って食べればいいよ。(リュックを揺らしてみせる)
        あと釣りもしよう!そんで釣れたお魚も挟んで食べる―(ビーチの方へチトセの手をひっぱって -- ユーニス 2020-06-22 (月) 01:03:01
      • あー(揺れるリュックを見れば納得)部屋で食べるか外で食べるかの違いか
        釣り?Tシャツ見て思い付いたか…わ、わ、わ!?(大型犬に引っ張られるが如くビーチへ) -- 千歳 2020-06-22 (月) 01:09:01

7月3週 Edit

  • ホテル
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    チトセが露出高いバイトばっかでやだーっていうから、今日は厚着のバイトー。
    (本日のお仕事内容、カジノの超高級ホテルでベッドメイク、部屋の掃除、ルームサービスの配膳.etc)
    • (メイド服姿でホテルの仕事に励む千歳とユーニス)
      コーヒー、グリーンティーのポーションを置いて(コーヒーメーカ用のポーションセットを置き)
      …と、この部屋は紙コップ多めか(コーヒー用の紙コップを通常三つの所を五つ置く)
      (これを各部屋毎に繰り返すのだからたまらない。しかも仕事はこれだけでは無い)
      (ベッドメイクもあるし、洗面所の掃除やアメニティの補充等もある) -- 千歳 2020-06-22 (月) 23:07:49
      • あ、この部屋の人バッグおきっぱにしてるー。自主的にチップを貰っておこうか。 -- ユーニス 2020-06-22 (月) 23:13:07
      • ここで仕事できなくなるぞ?(てきぱきと仕事をしながら背中でユーニスに言う)
        それにチップなら10$も置いてあったぞ、超高級ホテルの客は羽振りがいいな -- 千歳 2020-06-22 (月) 23:16:35
      • えー結構してる子いるよー
        (こないだコワイ人に事務所に連れて行かれてただろって言われてやめた)
        10ドルも!?おおーう、やりぃ。じゃあここのお部屋はしっかり綺麗にしとかなきゃねー。
        (シーツも枕もきちんと交換してく。雑な性格だけどユーニスはこれで結構仕事は丁寧だ)
        チトセ―シーツそっち持ってー -- ユーニス 2020-06-22 (月) 23:26:05
      • 気持ちはわかる(やはりチップが多いと嬉しい物である)
        おう(返事するとユーニスとは逆の端を持ち)行くぞ、せーの……
        (合図と共にシーツをふわんっと高く上げると、強く引っ張りながらベッドにフィットさせ)
        (後は四方の端をマットの下へと押し込み固定する) -- 千歳 2020-06-22 (月) 23:34:05
      • せーの♪(ここだけ日本語。からかってるわけじゃなく、日本語真似するのが楽しいらしい)
        きれーにできたねー…
        (皺ひとつなく決まったベッドをじっと見てる、飛び込みたそうな顔して見てる…!) -- ユーニス 2020-06-22 (月) 23:41:33
      • ふふっ(こっちの人ってセーノ!とかワッショイ!とか好きだよなね…と思ってる千歳さん)
        一仕事終えた達成感…まて、次の部屋行くぞ?行くぞ(実は先程からこれの繰り返しであったりする) -- 千歳 2020-06-22 (月) 23:46:12
      • はぁーい。(名残惜し気にベッドを見つつ、シーツを回収してく)

        (シーツ山盛りのカートを押して従業員エレベーターへ)
        ふいー、これでこのフロア終わりだねー。あ、ねぇねぇチトセ知ってる? -- ユーニス 2020-06-22 (月) 23:51:33
      • リネン室へ持って行ったら次の仕事だな、…ん?何を?(首を傾げユーニスの方へ向く) -- 千歳 2020-06-22 (月) 23:55:32
      • カジノの従業員エレベーターってさぁ決まった手順で押すと、隠し階にいけるんだって。
        VIP専用の秘密のカジノらしーよ。 -- ユーニス 2020-06-22 (月) 23:59:36
      • え?(一瞬マジか!?と言う顔になるが。直ぐに<●><●>顔になり)
        それなら………って押すと、異世界に行くらしいよ(意味ありげな数列を言う) -- 千歳 2020-06-23 (火) 00:05:45
      • まじで!?(間髪入れずにダダダッと言われた数字の並びで階数ボタンをプッシュ!)
        異世界転生ってしてみたかったんだ。チトセも一緒にしようぜ、転生!
        (勝手に私まで殺すなよ、とか突っ込まれつつ。ポーンと扉が開く)
        (なんか薄暗くて倉庫みたいな窓の無い部屋で、椅子に縛り付けられて血まみれの男が、カジノの黒服に囲まれてる)
        ……(人の殴られる音と悲鳴をエレベーターのドアが遮った)
        ……リネン室B2だよね。(ポチポチ) -- ユーニス 2020-06-23 (火) 00:15:57
      • …うん、リネン室B2だヨ(なんか言葉遣いが変。チワワみたいにぷるぷる震えてる) -- 千歳 2020-06-23 (火) 00:18:06
      • (下手に首を突っ込むとヤバそうな街の暗部を見なかったことにして、
        薄暗く熱気と騒音が支配する、大量のワゴンカートの並んだ地下工場めいたリネン室を後にすると
        すぐに次の仕事だ。廊下の途中で若い美人を連れた羽振りの良さそうなおっさんとすれ違う)

        (再びの従業員用エレベーターで、従業員用カードキーを使って上層フロアへ。
        ドアが開くと、スイートルームのフロアだ。廊下によくわかんない巨大なモダンアート彫刻)
        -- 2020-06-23 (火) 01:12:58
      • なんだろうこれ…ながいマカロニチーズの像とかかな。 -- ユーニス 2020-06-23 (火) 01:14:03
      • 金持ちの考える事はわからないな。…至福と苦悩の螺旋的運命…?
        (一応タイトルの札が付いていたが余計わからなくなった)
        ここでじっとしていても仕方ないし、仕事だ仕事だ。(カートを押しながら奥へ)
        …なんだこれ(扉を開けると別世界かがあった。通常の二倍はあるベッドに超大型TVモニター)
        (テーブルと椅子はサイズだけでなく、作りからして他のフロアの物と違う) -- 千歳 2020-06-23 (火) 01:24:31
      • お疲れ様でーす(別のワゴンを押しながら入れ違いでベッドルームから出て行くロアンヌくん) -- ロアンヌくん 2020-06-23 (火) 01:30:24
      • (その上、千歳とユーニスのアパートぐらいあるんじゃないかっていうバスルームもあるし、バーカウンターのあるリビングには窓際にジャグジー。
        さらに奥の部屋の扉は、クローゼットかと思ったらまた部屋になってる。
        天井にはシャンデリア、昔ヨーロッパの城にあったものだってさ。)

        あんなのでもきっと私達の年収の何倍もするんだろーなー。
        (そして、この部屋にご宿泊の金持ちは、昨夜はパーリナイだったらしい。そこら中に空きビンだのグラスだのゴミだのが散乱している)
        おおー…
        (脱ぎ棄てられたエロ下着をつまみあげ) -- ユーニス 2020-06-23 (火) 01:37:42
      • おつかれーあとはやっとくねー -- ユーニス 2020-06-23 (火) 01:43:43
      • あ、お疲れ様です?(見覚えのあるキグルミとすれ違い)同業者だったか

        これが格差社会と言う奴か、おのれブルジョアめ!
        まったく、昨晩はお楽しみでしたね?を絵に描いたような状況だな、ゴミ箱なんか覗きたくもない
        (しかし仕事は仕事はそうも言ってられない)とりあえず、床の掃除からだな -- 千歳 2020-06-23 (火) 01:44:01
      • 奥の方はロアンヌ君がやってくれたから私達はリビングとキッチンとバスルームだね。
        (ゴム手袋装備、髪もポニテにアップ)
        さあ、ゴミ共を掃除してやるぜぃ。(シャキーン) -- ユーニス 2020-06-23 (火) 01:47:46
      • あっ、よかったらゴミを先に持っていきますよ?(触りたくないものが散乱している様子から着ぐるみの自分がゴミを持っていく提案をしにちょっと戻ってきた) -- ロアンヌくん 2020-06-23 (火) 01:48:37
      • あ?(手袋装備したところでロアンヌ君が戻ってきたのが見えた)
        いいのか…いいんですか?(ユーニスにどうしようかと言う視線を向ける) -- 千歳 2020-06-23 (火) 01:56:32
      • まじで?じゃあおねがーい。瓶とかなんかゴミとか先にまとめちゃおー
        (ゴミ袋を展開!ゴミをがんがんほうりこんでく。)
        一体何人で飲んだらこんなに空き瓶が出るんだろう…。(うぇーってしながらひとまずゴミまとめを優先) -- ユーニス 2020-06-23 (火) 02:04:48
      • じゃあ急ごう!(せっせとゴミを纏めていく)
        これ日本だと二万とか三万とかするやつだ。こっちだと200〜300$?おのれ!
        (とにかくお高いお酒の空き瓶が何本も転がっていた) -- 千歳 2020-06-23 (火) 02:10:26
      • (なんか注射器とかのゴミもある、細かいことは気にしない) -- ユーニス 2020-06-23 (火) 02:12:27
      • 20人……はいなかったかな?けっこーたくさんいましたよ!(素手で触りたくない系のゴミを優先的につまんでワゴンのダストボックスに入れていく) -- ロアンヌくん 2020-06-23 (火) 02:13:07
      • 20人も集まってどんちゃん騒ぎの末か、うぐぐ
        一先ずこれでゴミらしいゴミは全部かな?(床に散らばっていたゴミは一通り片付け終えた) -- 千歳 2020-06-23 (火) 02:22:26
      • あー…バスルームも大変なことになってそ。
        (メイドじゃなくて業者の仕事ではなかろうかと思ったが、バイトの2人にもお仕事が回ってくるぐらい繁盛してるんだろう)
        うん、ゴミは大体こんなもんだね。 -- ユーニス 2020-06-23 (火) 02:23:00
      • あ、バイオなハザードになりそうなゴミはこっちの箱にどうぞ(危険物マークのついたゴミ箱)
        人は残ったりしてませんでした?たまに取り残されたりしてるんですよねー。それじゃ、ゴミ片づけまーす(集められたゴミをワゴンの空きに載せてエレベーターの方へ去っていった) -- ロアンヌくん 2020-06-23 (火) 02:28:26
      • サンキューロアンヌくーん……人…え、人??
        (千歳と顔を見合わせる) -- ユーニス 2020-06-23 (火) 02:32:25
      • バイオハザードは無いと思いたい(そのためにも生ゴミ類はしっかり集め袋へ)
        人?いないと思うが、一応クローゼット類も全部見ておくよ。お疲れ様、ヘルプありがとう -- 千歳 2020-06-23 (火) 02:34:41
      • …念のため先に確認しておく?(ベッドの裏側等をチェックする) -- 千歳 2020-06-23 (火) 02:36:06
      • バスルーム、クリア!(スプレーを銃みたく構えてむやみに広いバスルームも確認)
        ふいー…じゃあジャグジーの水抜いてー床拭いて―…だめだおなか減って来た。 -- ユーニス 2020-06-23 (火) 02:38:48
      • 広すぎる。これ、マンション一室掃除する様なもんだぞ(むしろもっと広いかもしれない)
        休憩を挟もうか?せっかくだし、あっち見ながらさ?
        (言ってポケットからカロリーメイトを取り出すと窓の方を指さす)
        (ここはホテルの最頂階、窓から見えている景色は青一色) -- 千歳 2020-06-23 (火) 02:49:29
      • さんきゅーチョコ味だ!あー…んっ(もっぐもぐ)
        一泊10万ドルの眺めかー
        (モップを片手に柱によりかかりつつ) -- ユーニス 2020-06-23 (火) 02:54:32
      • きっと、夜景はもっとすごいんだろーなー。いつか見てみたいねぇ。 -- ユーニス 2020-06-23 (火) 02:55:20
      • うん、見たいな……
        ─────────その時は二人で(最後の方は小声過ぎて齧る音に消されたかもしれない)
        (二人の成り上がり物語はまだ始まったばかり!…かもしれない) -- 千歳 2020-06-23 (火) 02:59:48

8月1週 Edit

  • 公園
    • 広場
    • 森林
    • グラウンド
    • 公園に面した大通り -- 2020-06-24 (水) 22:42:59
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      (本日のバイト、ホットドックスタンド)
      ・単品1個 $1.45
      ・ジュースセット$4.5
      • ありがとーございましたー(ホットドックを買った客に手を振りつつ) -- ユーニス 2020-06-24 (水) 22:55:53
      • ありがとうございました(客にぺこりと頭を下げお辞儀するジャパニーズスタイル)
        …まったく、ビキニ着るだけで他より売り上げ良くなるなんて -- 千歳 2020-06-24 (水) 22:59:22
      • チトセがかわいいからだよーほら、もっと振りまいてこうぜ、kawiiをさ!(さりげなくお尻触りながら) -- ユーニス 2020-06-24 (水) 23:01:20
      • ほ、褒めても何も出ないぞ!?(いきなりかわいい言われて照れる千歳さん)
        …って、こんなところで触るな!警察に捕まるぞ(ただでさえ露出多いのに危険度がアップする) -- 千歳 2020-06-24 (水) 23:03:37
      • (犬を連れた少女が顔を出す)「ほ、ホットドッグ・・・下さ・・い」
        ジュースもな、二人分ずつ(後ろにいる大男が付け加える) -- カルロス 2020-06-24 (水) 23:06:07
      • 大丈夫、大丈夫、ここの通りもカジノが仕切ってるもん。だからバイト代は安いんだけどね…(ピンハネされるから) -- ユーニス 2020-06-24 (水) 23:07:34
      • いらっしゃーい♥はーいホットドックセット二つですねー(ホットドック2個と、ジュースのセット)
        ジュースは何にするー? -- ユーニス 2020-06-24 (水) 23:09:07
      • 「え、えっと・・・(少し迷うようにしてから)オ、オレンジ、ジュース・・・」
        コーラで(あえて娘に発言させるようにしているのか、少女の言葉を待ってから男が自分の分を言う)
        「(露出の高い格好で焼いている様を見ながら)熱く・・ない・・・のかな・・・?」 -- カルロス 2020-06-24 (水) 23:11:31
      • オレンジジュース1にコーラ1ですね?
        実は熱い……(ぼそり) -- 千歳 2020-06-24 (水) 23:15:57
      • たまに油跳ねて危ないよねー。ほんとはちゃんとエプロンつけたいんだけど。
        (手袋をはめて、鉄板でソーセージを焼く。ビキニホットドックだけど、モノは結構ちゃんとしてる)
        でも今日は暑いから、ちょうどいいかなーあははっ。はい、セット二つだよー。
        (パンズにソーセージをハサミ、刻んだ玉ねぎをのせる。マスタードとケチャップは置いてあるのをお好みでスタイル)
        あれ、もしかして、カジノの黒服の人? -- ユーニス 2020-06-24 (水) 23:21:08
      • 「です・・・よね・・・・ちゃんとしたエプロン・・つけちゃ・・いけないの・・・?」
        そういうものなんだよ(娘に世間の厳しさを伝える)
        「(うけとりながら)あ、ありがと・・・・・?パパの・・知り合い・・・?(早速齧りつきつつ見上げて)」
        やっぱりそうか、二人ともカジノで働いていたよな?(違和感の正体に気づいたといった風に頷いて) -- カルロス 2020-06-24 (水) 23:25:23
      • うん、2人ともカジノで色々してるよ、バイトだから仕事は他に色々やんなきゃだけど。
        あ、お代はいいよ、カジノの関係者がきたら店のおごりなんだって。…パパ?
        (一瞬、まじかって顔になった)
        そっかー娘さんかー。黒髪素敵だよねチトセもいい黒髪でかわいいっしょー(まぁそりゃそうだよねって納得した笑顔) -- ユーニス 2020-06-24 (水) 23:36:19
      • え?はい、私達はバイトです…掛け持ち状態の(だから今はこんな格好と肩を竦め) -- 千歳 2020-06-24 (水) 23:37:51
      • だから褒めても何も出ないぞ? -- 千歳 2020-06-24 (水) 23:39:10
      • チリドッグとコーラを一つずつ(Yシャツにジャケット姿の少女がお金を渡す) -- チェリオ 2020-06-24 (水) 23:42:53
      • はーい、いらっしゃいませー(ソーセージを焼いて、チリソースを用意)
        あれ、なんか聞き覚えある声…? -- ユーニス 2020-06-24 (水) 23:45:07
      • はい、コーラ1ですね?…ううん?(ユーニスと同じに聞き覚えのある声?と首を傾げる) -- 千歳 2020-06-24 (水) 23:46:37
      • そいつはありがたい話だが・・・これくらいは貰ってくれ(とチップを渡して)
        「ぱぱ(こくこく)」
        母親に似て美人だが、目なんかは俺によく似ていてな(HAHAHAと嬉しそうに話すが肝心な所が隠れてて見えない)
        「う・・うん・・・・かわ・・いい・・・で、でも・・・金髪だって・・いい・・なって・・・(おろおろ精一杯のフォロー)」
        ジャパニーズは英語が苦手だと聞くが、流暢なもんだ -- カルロス 2020-06-24 (水) 23:46:53
      • (パンズによく焼けたソーセージ、そしてチリソースをトッピングしてコーラとセットに)
        チーズソースもお好みでねー。(はい、どうぞー) -- ユーニス 2020-06-24 (水) 23:49:44
      • 褒められたよ、へへへー。お嬢ちゃんかわいいねーホットドックもっといる?(ゴールデンレトリバー系のへにゃとした笑顔)
        チトセは昔から英語結構できたし、私と一緒に住んでるから上達めっちゃはやかったよね。 -- ユーニス 2020-06-24 (水) 23:51:30
      • 良いパパだね。(娘に甘々なパパさんだ!)
        英語は必死になって勉強したから(スマホの英語講座等で)でも、こっちの人に褒められると嬉しいな
        コイツのお陰なのかな……(とユーニスの方を見る) -- 千歳 2020-06-24 (水) 23:53:45
      • (チリソースをやや多めにかけて)お肉はスパイシーにしたくなる年頃なのだ(こっちは二人をわかっているのだが)
        こんな所で何を、と思ったけどバイトでしたかぁ(一連の話を横で見ていて納得) -- チェリオ 2020-06-24 (水) 23:54:02
      • 「えへへ・・・(照れた様にぱぁぁっと笑って)こ、これ以上は・・食べられない・・から・・・」
        何事もやる気だという事だな(うんうんと頷き・・・客も増えてきたのを見れば)あまり邪魔しちゃ良くない、そろそろ行こうかリリア
        「う、うん・・・またね・・?(ぱたぱた手を振り)いこ、カレリア」(犬と連れ立ちその場を後にする親子) -- カルロス 2020-06-24 (水) 23:56:34
      • バイトだよー(チェリオに、あれ、やっぱり知ってる人なのかな??と思いつつ)
        ありがとうございましたー、またねーわんこもねー(リリアに手を振り返して見送る)
        スパイシーなお肉…あ、お昼メキシコ料理たべたくなってきた…。 -- ユーニス 2020-06-25 (木) 00:00:21
      • バイトだよ、こんな格好だけどバイトだよ(なんだかんだで集客効果高い事がやるせない千歳さん)
        ありがとうございました!(親子の仲の良さに微笑ましい気持ちになりつつ)
        (ジャパニーズスタイルのお辞儀で見送る)
        なら全部売り切らないとだぞ?残ったらこれだからな
        (言ってホットドッグの在庫を指さす) -- 千歳 2020-06-25 (木) 00:02:39
      • ぬぅ…。 -- ユーニス 2020-06-25 (木) 00:06:03
      • ぅーぃ。お嬢ちゃん、セット2個ちょうだい。休憩中だから急ぎじゃなくていいよー。(10ドル札ぴろぴろさせて)
        ついでに釣りはチップねー。どうせアタシの金じゃないしー。(ちょっと離れたところに停めてあるパトカーからやれやれ顔の男性警官の顔が覗く。アイツの金だ……) -- ラファエラ・ソロー 2020-06-25 (木) 00:06:28
      • うん、やっぱりお客を喜ばせるにはおっぱいと露出がイチバンですねッ(人が集まる様子を見て力強く頷く)
        チーズの時には思い切ってホワイトソースで白色マシマシにしたくなる……とろりと糸を引く濃厚な味もいいよね。だが今はレッドホットだ!(ガブリ)……辛い!美味いッ!
        (そこへジャンクにコーラを流し込む)……っかー!! -- チェリオ 2020-06-25 (木) 00:06:49
      • いらっしゃいませーはーい、セット二つねー。(おっと警官の人だ)
        ありがとうございます♥飲物はコーラ?それともコーヒー?(めっちゃ愛想振る) -- ユーニス 2020-06-25 (木) 00:09:28
      • おっぱい……(自分とユーニスのを比較しむぅっと言う貌になる)
        は、はい、セット二つですね?(警察服姿に一瞬驚いたが、普通のお客と気付きほっと息を吐く)
        うわ……(めっちゃ愛想振りまくユーニスに<●><●>な目になってる) -- 千歳 2020-06-25 (木) 00:10:58
      • (あーチリドックもおいしそうだなー…。と思う集中力は貧弱なやつ) -- ユーニス 2020-06-25 (木) 00:12:57
      • (悪い顔しながらビッと後ろを親指で指しつつ)車に乗ってる青瓢箪にはコーヒーを激熱ノンシュガーで。私にはコーラでいいよー。
        いやー。平和平和。可愛い女の子がのんびり売り子できるくらい平和でありがたいわー。 -- ラファエラ・ソロー 2020-06-25 (木) 00:13:09
      • はい、激熱ノンシュガーとコーラですね?(ラファエラの相方らしき警官の方を見れば苦労してるんだろうなぁ…と想ったりしつつドリンク準備し)
        平和が一番(うんうん)私、争いごとはまったくダメだし…… -- 千歳 2020-06-25 (木) 00:17:20
      • お巡りさんも相変わらず暇そーですね(殆ど遊んでるシーンしか見ていない)
        おっぱいは自然な感じに揺らしながら仕事すると効果高いよ(チリソースで口周りをべったりさせつつホットドッグを食べ終えると、紙ナプキンで拭いてる) -- チェリオ 2020-06-25 (木) 00:21:41
      • はーい、ホットコーヒーとコーラでセットを二つー。(手際よくソーセージをグリルしてパンズに挟む)
        安心働けるのもおねーさん達のおかげですねー。いつもありがとうございます♥
        (包みを手渡しつつ、ナプキンに紙幣を挟んでそっと入れておく。ここはカジノの管轄だけど、権力側の人間とは
        仲良くできるならしておくのが大事ですゆえ) -- ユーニス 2020-06-25 (木) 00:22:10
      • 自然な感じー?こう?(ちょっと脇をしめてぽよんっとしてみる) -- ユーニス 2020-06-25 (木) 00:22:52
      • ンーン。悪党相手にドンパチやってるとこなんて見たくないでしょ?
        精々、酔っ払いでも拾って片付けてるくらいのが丁度いいのよー。(わきわき、と ホットドッグが待ちきれない様子の手付きで) -- ラファエラ・ソロー 2020-06-25 (木) 00:25:48
      • こないだもうちの近所で夜中にやってたねー、はい♥どうぞ警官のおねーさん、サービスしときましたから。 -- ユーニス 2020-06-25 (木) 00:27:50
      • はぁい、ありがと❤ (受け取りしなに、そっと ぎゅっと ユーニスの手を取って……)
        (……思ったより、しっかり握っている。顔を近付けて、周りに聞こえないくらい、小さく、低い声で)
        ――一応、聞いとくけど。ホットドッグ以外のものも売ってるのかしら? -- ラファエラ・ソロー 2020-06-25 (木) 00:30:28
      • ポーズを取るっていうより、普通に働いてる動きの最後のあたりでキュッとしてボインって感じかな!わざとらしさをなくして「普通にしてるのにあの揺れかよすげぇ」って思わせるのがポイントかな
        まぁ流れ弾が飛んでくる現場とか近づきたくないな……(コーラを飲み干す)美味しかった。ありがとー(チップを置いて公園の方へ歩いていった) -- チェリオ 2020-06-25 (木) 00:32:40
      • ゴミはその袋にどうぞ(チェリオにゴミ袋を指さしつつ)
        まったくその通りです。警察も世の中も少し暇なくらいが丁度良いのかな
        …って!?(いきなりユーニスの手を握るラファエラに驚いた) -- 千歳 2020-06-25 (木) 00:32:50
      • (あっ、この距離感と言い方だと体の売り買いの話みたいなニュアンスになっちゃうじゃーん。ラファエラやっちゃった☆)(というのは顔には出さない。) -- ラファエラ・ソロー 2020-06-25 (木) 00:36:16
      • !(手を握られると緊張した面持ちに。そして…)
        え……チリドックと、ヴィーガンドック…?
        (困惑した面持ちである、だって普通にバイトだもの、オーナーに裏稼業があったとしても知る由もないのだ) -- ユーニス 2020-06-25 (木) 00:37:50
      • えっとえっと…?は、はい、ありがとうございますー?(驚きつつもチェリオはちゃんと見送って)
        (赤くなったり手をぱたぱた挙動不審になったり。どう見てもウブな一般市民です) -- 千歳 2020-06-25 (木) 00:40:22
      • (…………ニコッ) そう。なら、次はそれ食べに来よっかな?(ぴゃい、と包みを持って)
        それと、くれぐれも 悪い大人やライバルに、変なもの売り買いさせられないようにねー。最近多いからさー。
        じゃ、チップは弾んどいたから。励めよ、若者どもー。(手をひらひらさせてパトカーに戻っていく……)
        (ユーニスの胸の谷間に、彼女が先に包んだものとほぼ同じくらいの額のチップが挟まっている……) -- ラファエラ・ソロー 2020-06-25 (木) 00:44:09
      • ひゃっ…わっこんなに!?ありがとーおねーさーん!またきてねー!
        (こっそりつつんだ賄賂も、カジノ関係者はホットドック無料と同じように、
        売り上げから渡しておけって、オーナーに命令されてるものだ。なので、チップとして帰ってくると、彼女の臨時ボーナス)
        やったー!チトセーあがったらシャワルマ食べにいこうぜー!
        (うれしくってぴょんぴょん跳ねるので、ナチュラルに胸が揺れる揺れる) -- ユーニス 2020-06-25 (木) 00:49:56
      • (パトカーの方から\ドゥ゙ァァァッチィィィィ?!!? ファッキンホッ!!!! ラファエラ!!!!!?/と叫ぶ男性警官の声と、けらけら笑う婦警の声が聴こえてくる) -- ラファエラ・ソロー 2020-06-25 (木) 00:50:18
      • ありがとうございますー?(ぽかんっとした表情で ラファエラ・ソローをお辞儀で見送り)
        …無駄に揺らすな!しかし……(遠くから聞こえる声に小さく笑みを浮かべ)
        少し危なそうだけど、面白い人だな(そんな感想を呟いた) -- 千歳 2020-06-25 (木) 00:54:43
      • (無駄に揺らしたせいで人目を引いて、そのあとまたお客が増えて忙しくなってしまった。
        チェリオのアドバイスは的確だったらしいです) -- ユーニス 2020-06-25 (木) 01:11:30
      • 疲れた…疲れたけど売り切ったぞ(在庫ゼロ。つまり完売である)
        (ユーニスが揺らす合間に千歳も揺らさせられたので余計に疲れた)
        (ユーニスのは当然として、千歳の物でも喜ぶ客が居たのだから世界…性癖は広い)
        はぁ…お昼行くか?(残ったコーラで喉を潤しながらユーニスに問い尋ねる) -- 千歳 2020-06-25 (木) 01:26:32
      • うんっいこういこう(千歳の肩にアゴを乗っけてにんまりする。まだまだ元気っぽいねこいつ) -- ユーニス 2020-06-25 (木) 01:28:30
      • じゃあ行くか…重い……、シャワルマだっけ?
        私食べるの初めてだから、美味しい店に連れて行けよ? -- 千歳 2020-06-25 (木) 01:36:31
      • うん!高評価のお店が近くにあるんだー!
        (そう言って、さっそく通りに走ってこうとするユーニス。おい、着替え!?と叫びながら千歳が後を追った) -- ユーニス 2020-06-25 (木) 01:42:17

8月2週 Edit

  • 屋上
    • プール
    • プールサイド
      • exp035751.jpgプールのお仕事だけど今日は水着じゃなーい -- 2020-06-26 (金) 00:13:07
      • 水着でいいのに、プールサイドも蒸し暑いし…。 -- ユーニス 2020-06-26 (金) 00:18:38
      • なぜだ?水着と無関係の公園でビキニ着たと思ったら、プールなのに水着ではない
        (汗だくになりながらぼやくユーニスと千歳) -- 千歳 2020-06-26 (金) 00:20:57
      • マッサージのお仕事だからだってさー。研修おもったより簡単だったね。
        (2人は補欠兼アシスタントみたいなものなので、まだマッサージのお呼びはかかってない。
        主にお客の使ったタオルの回収や交換、オイルマッサージの用意などが業務である。あと掃除)
        私さー、肩こり酷いんだよねー -- ユーニス 2020-06-26 (金) 00:26:09
      • マッサージの仕事なのはわかってるけどさ、でも……
        (リラクゼーションスペース入口からでもプールの光景は良く見え)
        (当然、水着姿で楽しむ利用客の姿も見える訳でありまして……)
        …肩こり?(力仕事だからなと言いかけて、ふとユーニスの胸が視界に入った。ほぼ千歳視線の高さにあるし!)
        胸か?胸が重いのか?(やるせない気持ちになった) -- 千歳 2020-06-26 (金) 00:32:20
      • うんーそうー。(こまったもんだよ、とため息するユーニス。千歳も日本人基準なら巨乳の部類だが、
        ユーニスがスーパーサイズすぎて、並ぶと普通に見えてしまう)
        でも、おっぱい大きい子は時給高いんだって。こないだ社員の人が言ってたの聞いちゃった。 -- ユーニス 2020-06-26 (金) 00:43:49
      • むぅ(すんなり言われるとそれ以上は言えない。実際、こっちの基準値はおかしい)
        (プールサイドを見れば、日本ではアニメや漫画等しか見る事無い様なサイズが普通に闊歩してる)
        え?胸のサイズで時給が?でも、客の比率は女性の方が多い気がする、ううん? -- 千歳 2020-06-26 (金) 00:51:35
      • たんに雇い主の趣味じゃないかなー。スケベなんだよみんな。
        (ゆるゆると益体の無いおしゃべりをしつつ。呼ばれれば後片付けなどをしに行く。割と楽な部類のお仕事だ)
        でもチトセもさー、背のわりに結構おっきいよね。 -- ユーニス 2020-06-26 (金) 01:03:54
      • 雇い主の趣味か、…それはそれで問題だ(そう言う系のプールなのかと心配になっていた)
        (NINJAマッサージ!と声を掛けられる困った事態もあったが。先輩方が助けてくれました)
        日本人なら皆忍者なのか?…え?私の胸?うーん…学生の時に言われた事は何度かあるが
        (言って自分の胸を見る。最近、ユーニスが基準になっていたが。日本人基準だと大きい) -- 千歳 2020-06-26 (金) 01:14:24
      • 日本に詳しくない人は、みんなニンジャが居るって信じてるからね。
        (そういうユーニスも千歳と出会った頃、ニンジャ真実について色々聞いたクチである)
        チトセはさー、小さいのに胸もお尻もいい形してて、すっごくカワイイんだよ?
        (さりげなく腰に手を回して抱き寄せる) -- ユーニス 2020-06-26 (金) 01:26:42
      • …そして、忍者道場の紹介番組が誤解を加速するんだ
        って、コラ!?こんな所で抱き寄せるな!?(体格差ゆえ抱き寄せられるとあっと言うまである)
        先日も似た事が…じゃなくて、人が見てる見てる!?(千歳がじたばたしてると……)
        「HEY!二人共こっちのHELP…Oh!お邪魔だったかしら?」
        え?これはー!?(先輩から手伝いの声が掛かったが、何か誤解された様です) -- 千歳 2020-06-26 (金) 01:39:33
      • あーはーい、今いきまーす。(人に見られても動じないで、なんかしっかりお腹とかおっぱいとか揉んでる)
        それじゃあ、行こうチトセ♥
        (なら離せー!とかやりつつ、仕事へ向かったんであった) -- ユーニス 2020-06-26 (金) 01:45:58

8月3週 Edit

  • (カジノのバックヤードでバニーが2人)
    ふぃー…なかなかステージあがらせてもらえないねー。 -- ユーニス 2020-06-26 (金) 22:47:30
    • ステージはすぐそこにあるのにな(溜め息するバニー) -- 千歳 2020-06-26 (金) 22:52:58
      • お疲れ様でっす(スー……と屋内用のスピードが出ないスケボーに乗ってスライド入室してくる)ステージに興味あるんですか?いいですよねステージ。自分を見てるお客さんの表情とか丸見えで} -- &new{2020-06-26 (金) 22:57:11
      • はーい、ロアンヌくーん。そー、ステージで枠を貰えるチャンスがあるっていうからカジノでバイトしてるけど。
        いまんとこ全然でさー。 -- ユーニス 2020-06-26 (金) 23:06:58
      • こんにちはロアンヌさ…君? 来るのは下働きの仕事ばかりさ、前座でもいいから立ちたい -- 千歳 2020-06-26 (金) 23:09:33
      • ホッホウ、確かにここにはステージも多いしどれも大きいですからねッ……ちなみに、どんなステージで頼んでるんですか?ボクはたまに上がってますけど(頭を外すと公園で会った顔が出てくる) -- 2020-06-26 (金) 23:11:14
      • ダンスステージ!チトセも私もダンサー志望なの。おおっロアンヌ君ステージ立ってるの!? -- ユーニス 2020-06-26 (金) 23:13:02
      • ダンスステージ!歌って踊って!回る!(スッと足を高く上げその場で一回転)
        …えっ?君は…公園であった子?(足を高く上げたままびっくり顔)
        あの時、知ってる気がすると思ったけど…… -- 千歳 2020-06-26 (金) 23:17:09
      • 歌って踊るダンスの方かぁ〜〜!(おお……滑らかな動きと驚き)……あー、カジノで脱いだ時には会ってませんでしたっけ?中身はチェリオって言います(胴体も脱いですっぽんぽんになると近くのハンガーに着ぐるみを吊るしてタオルで汗を拭いた)
        うーん、ステージに上がる事は上がってるんだけど、ストリップクラブの方なんだよねー。普通のダンスはからっきしだもんでッ
        -- 2020-06-26 (金) 23:23:20
      • ああーホットドックスタンドのバイトの時の。わお、下何もつけないで入ってるんだ!
        そっかーストリップの方かー、私達もそっちやらない?って最初聞かれたなー。 -- ユーニス 2020-06-26 (金) 23:30:10
      • 私達あの時は死ぬほど忙しかったから(苦笑を浮かべ)ロアンヌ君の中身はチェリオさん(覚えたと頷き)
        中身がチェリオさんなのは覚えたが、裸で入ってたんだ(衝撃の真実であった)
        あー…言われたね、そっちなら即日立っていいよって、さ?(ユーニスと一緒に肩を竦めた) -- 千歳 2020-06-26 (金) 23:33:42
      • ハダカだよー。この大きなおっぱいをお客さんに見せてカジノのいい思い出つくるのもボクの仕事の一つなんです
        ジャズや歌を流してるお洒落なクラブだと、ステージに上がるのはカジノが頼んだプロの人達ばかりだからなー。難しいだろうなッ
        その点ストリップは楽なんだ。ボクなんて歌も踊りも駄目だけど、このおっぱいとお尻だけでステージ借りれるくらいだもん
        -- 2020-06-26 (金) 23:48:12
      • (おっぱい見比べてみる、なにげにユーニスよりおっきい)
        でもバニーじゃなくてキグルミーなんだ。ハッ!?これがキャラクター性!
        (ユーニスを初め、巨乳のバニーは普通にたくさんいる。脱ぐの前提ならむしろ最初は隠してた方が、印象は強烈に?)
        よし、チトセ!やっぱり私達もストリップやろう!ステージは経験だよ! -- ユーニス 2020-06-26 (金) 23:58:28
      • キグルミは強いよな、日本でもゆるキャラ…ご当地のキグルミマスコットの事なんだが
        ブームになるくらい大人気なんだ。
        やろうって?おまえやチェリオさんみたいな身体ならともかく、私のを見て喜ぶ客がいるのか!?
        (こっち基準では小さいが、日本女子基準なら十分に大きい。ロリ巨乳気味な千歳さん) -- 千歳 2020-06-27 (土) 00:03:03
      • 最初は乳輪丸出し水着というプランもあったんだ。色々あって普段は雑用係の着ぐるみマスコット、いざという時中からすっぽんぽんの女の子が!という作戦を取りました。その方がね、おっぱいも鮮烈に映るかと思って
        ストリップクラブなら、コンビダンサーってのも珍しくてすぐに上げてくれると思いますよッ
        まぁ、確かにボクは大きなおっぱいを一番の売りにしてるけど……二番はお尻かな。店としては色んな女の子がいた方がありがたいはずですよ!
        -- 2020-06-27 (土) 00:14:09
      • だってさ、私はステージ立てるならなんでも、雑用より全然お給料いいし
        ほらーチェリオもああいってるし―、チトセは千歳のいいところをアピールしてこうよ、一緒にハダカになっちゃおーぜ(腰撫でまわしながら) -- ユーニス 2020-06-27 (土) 00:21:47
      • 確かにインパクト強かったな。可愛いキグルミの中から…うん、鮮烈だった(こくこく)
        ステージには上がりたい、しかし脱ぐのは(悩む悩む。悩むが)だから、人前で撫でるなって
        (実際、もし二人がステージでこんな絡みを見せたのなら、インパクト高いかもしれない) -- 千歳 2020-06-27 (土) 00:26:27
      • お客の記憶に残る売りってすごいからね!ボクのオッパイはエッチ目的の男の人じゃなくても目を惹いて、後日話のネタになるサイズ。そーゆーのがリピート客を生むのだッ!(上司か誰かの言葉の受け売り感溢れる)
        ハダカはいいよー(すっぽんぽんのまま体をくねらせて)みんながカラダのすみずみまでジロジロ見てくるのが気持ちいいんですよッ
        コンビストリッパー、これはきっとステージの目玉になるねッ(サムズアップ)
        -- 2020-06-27 (土) 00:32:11
      • 貰えるチップも全然違うし、お気に入りになってプレゼントとかもらってる人いっぱいいるね、アメリカンドリームだよ。
        (チトセをなでまわしつつ)
        チトセは露出にまだ抵抗あるしー、自分をさらけ出せるようになるのは大事だよ!あと見られてどきどきしつつきもちよくなってるチトセが見たい(本音)
        (だんだんユーニスが、ぐへへっとなってきたとこで、呼び出しがかかる) -- ユーニス 2020-06-27 (土) 00:41:31
      • アメリカドリーム!ユーニスやチェリオさんの言う事も然りなのか?
        (悩んでいるとフロアから声が掛かりました)
        あ!呼ばれたぞ!って、こら離せ!あ、チェリオさん私達は行きますね、…だからはーなーせー
        (ユーニスに腰を抱かれたままバックヤードを後にしました) -- 千歳 2020-06-27 (土) 00:48:28
      • アメリカンドリームッ!?いや、ここに来る客層を考えるとあながち夢ではないのかも……
        はーい、頑張って下さーい。自分をさらけ出して気持ちよくなってね!
        むふーん、ハダカの魅力を伝えられたよーだな。ボクもこの後いっちょハダカ回りするかなー!(着ぐるみを仕舞った箱を台車で押しつつバックヤードから出て行った)
        -- 2020-06-27 (土) 01:18:43

9月1週 Edit

  • あーいたいた、ハーイ
    (普段カジノのフロアで見かける2人組が、普段着で話かけてくる) -- 2020-06-28 (日) 23:21:36
    • こんにちわ(ユーニスの横でぺこりとお辞儀する普段着な千歳さん) -- 千歳 2020-06-28 (日) 23:25:41
      • む?あぁ・・・確かユーニスと、チトセ・・だったか
        今日は非番か?(普段着なのを見て言って)
        -- カルロス 2020-06-28 (日) 23:25:47
      • そうそう、私がユーニス、こっちがチトセ。カルロスさん?だよね。
        (担当部署が違うと、仕事中はあまり接点なかったりするが。カジノの内外でちょいちょいあってると顔見知りではある)
        うん、シーズン中はほとんど働いてたから、久々休みー、チトセもこの街まだ全然見てないし。 -- ユーニス 2020-06-28 (日) 23:34:32
      • 千歳です。だから今日は遊べる場所へって事なんだけど、安全な遊びとなるとここになるらしい
        全くオフに日にまで仕事場に来る事になるなんて、世知辛い -- 千歳 2020-06-28 (日) 23:38:48
      • 何だ、もう2ヵ月くらいになる筈だろ?(それでまだまだ全然観光が出来ていないというのは、少し根を詰めすぎのように思えた)日本人は勤勉だって聞くが、本当だったとは
        (確かに、街の主要な遊び場は大抵ギャングのたまり場だ・・・少女二人が安全に楽しむのは難しい)そういう事なら、今日は存分に楽しんでいくといい(ディーラーに絞られ過ぎるなよなんて笑ったり)
        -- カルロス 2020-06-28 (日) 23:55:18
      • (街のヤバイ部分の中心地なカジノが、一番治安がいいというのもなかなか皮肉である)
        一発当てちゃうよーといいたいとこだけど、お財布はチトセに取られちった、てひひ。 -- ユーニス 2020-06-29 (月) 00:04:04
      • …そんなつもりは無かったのだけど、気付いたらバイト三昧の夏でした(遠い目になる)
        コイツに財布渡したままここに来ると夏の苦労がゼロになるからな。
        それでも念のため、カジノより遊技場の方に行こうと思っている(ピンボールや体感ゲームで遊ぶ予定) -- 千歳 2020-06-29 (月) 00:10:09
      • HAHAHA、折角カジノに来たのにそれも寂しい話だ(愉快そうに笑って)
        そういう事なら、ほどほどに楽しむんだな
        (少し考えるように)・・・ふむ・・じゃぁ二人は今、一時期よりは手が空いて落ち着いているって事なのか?
        -- カルロス 2020-06-29 (月) 00:20:07
      • んーそだねー。家賃とかたまってた請求書どうなってたっけ?貯金できたから、まとめて払うーって言ってたよね。 -- ユーニス 2020-06-29 (月) 00:27:48
      • ああ、家賃の方ならこの間払っておいたぞ。後の請求書はもう一度確認した方が良いと思う(収支は帳面に記してあると告げ)
        一時期よりは…かな?夏に頑張ったし、だから今日は久しぶりのおやすみって訳です -- 千歳 2020-06-29 (月) 00:33:00
      • うん、じゃあ大丈夫!(しばらくは忙しく無いよーって笑う、チトセが家に来てから家計まかせっきりの本来の世帯主) -- ユーニス 2020-06-29 (月) 00:41:41
      • (二人の様子を見ながら微笑まし気)ルームシェアか、仲がいいんだな
        羽を伸ばしているときにする話じゃないんだが・・・実は今、娘のシッターを募集していてな?次の仕事のあてがなかったり興味があるのなら声をかけて欲しい
        -- カルロス 2020-06-29 (月) 20:58:42
      • へへー実は私の恋人だからねぇ。(冗談っぽく笑って肩抱き寄せつつ)
        んっ、ベビーシッター?(どう?って感じでチトセをみつつ) -- ユーニス 2020-06-29 (月) 21:16:25
      • おいっ?コラ!(体格差ゆえあっさり抱き寄せられる)そ、そのくらい仲が良いと言う事だ!
        (…と千歳は言うも、日本人の気質でそう言う部分は曖昧にしたい可能性もある)
        ベビーシッター?あの子の世話ですよね?私達で大丈夫なのですか? -- 千歳 2020-06-29 (月) 21:24:22
      • (私ベビーシッターのバイトもしたことあるよーって付け加えつつ、はなれろって顔をむにぃってされるユーニス) -- ユーニス 2020-06-29 (月) 21:26:47
      • 私は、親戚の子の面倒を見た事があるくらいかな?(女の子なら誰でも通るであろう道) -- 千歳 2020-06-29 (月) 21:31:16
      • oh…(同性愛者かと一気に不安に・・・いや大丈夫か)
        そうだが・・・世話と言っても気負う事はない、デリバリーやテイクアウトでもいいから食事をきちんと取らせて、宿題をやらせてベッドで眠らせればな?
        深夜に俺が戻るまでの留守番といった所さ、家にある物は好きに使ってくれていいし、必要なら送迎もさせてもらう
        -- カルロス 2020-06-29 (月) 21:37:51
      • 悪く無いねー。夕方〜夜なら、私達深夜に仕事することおおいから、時間被らないし。いけるよー
        (時給がいいのと、この街は夜業の仕事が多いのだ)
        じゃあ連絡先、これねー(携帯の番号を書いてわたす、若い女子なのにスマホじゃなくて携帯ユーザーである、料金安いから) -- ユーニス 2020-06-29 (月) 21:53:09
      • なら決まりだな、私も異論は無い。そう言う訳で、よろしくお願いします(ぺこりとお辞儀。ジャパニーズスタイル) -- 千歳 2020-06-29 (月) 21:59:58
      • 学生じゃなかったんだな・・・(若い娘が夜遅くにーと説教じみた事を言いそうになって飲み込んだり)
        (連絡先を交換して)いやこちらこそ助かるよ、改めて連絡する
        (イエイエコチラコソとこちらも真似して頭を下げてみたり)それじゃぁ、カジノを楽しんでくるといい
        -- カルロス 2020-06-29 (月) 22:28:08
      • 大学いけるほど余裕ないからねぇ、女の子二人でがんばって働いて生きてるんだよ、お給料の方よろしくねっ! -- ユーニス 2020-06-29 (月) 22:37:20
      • (慌ててもう一度お辞儀)大学に行くより、やりたい事があったから
        今、上手くやれているのはコイツのお陰もあるかもしれないな……
        いけない…このパターンは長話になりそうだ、私達はそろそろ行きますね?
        (カルロスさんもお仕事中だしと言うと、手を振りながら遊技場の方へ向かった) -- 千歳 2020-06-29 (月) 22:44:21

9月2週 Edit

  • // -- ユーニス 2020-07-04 (土) 21:12:48
    • (スロックランドの住宅街、ハリウッド映画や洋ドラでお馴染みの、アメリカの郊外の普通な住宅街…の実物!)
      えーと、このおうちだよね。 -- ユーニス 2020-07-04 (土) 21:44:54
      • こんな場所に住みたいな…あ?うん、多分ここであってるはず
        (途中迷子になりかけながらも、なんとか住所の場所に到着したユーニスと千歳) -- 千歳 2020-07-04 (土) 21:47:59
      • チャイム鳴らしてみよー(みる) -- ユーニス 2020-07-04 (土) 21:55:58
      • (扉の向こうからチャイムの響く音が聞こえた)
        緊張してきた(姿勢正す) -- 千歳 2020-07-04 (土) 21:58:20
      • (チャイムが響けばすぐに出てくる事だろう、出勤が近いのかスーツ姿だが表情はカジノで見るより大分朗らか)
        やぁ、少し遅かったな迷ったのか?言ってくれれば迎えに行ったんだが
        (招く)上がって、簡単にだが案内しよう
        -- カルロス 2020-07-04 (土) 21:58:27
      • えへへーすいませーん。チトセがこっちの方の街並みも見てみたいっていうのでー
        (なおナビ役はユーニスでした、最終的にチトセのスマホで経路案内してもらいました) -- ユーニス 2020-07-04 (土) 22:02:58
      • え?(私が悪いの?と言う目になるが)は、はい、初めての場所ですから好奇心が刺激されました
        では、お邪魔します(カルロスに続きユーニスと共に玄関扉をくぐる) -- 千歳 2020-07-04 (土) 22:05:56
      • (調子のいい奴みたいだと飽きれた様に肩をすくめつつ家へ)リリア、ご挨拶しなさい
        (呼びかければおずおず、とてとてと玄関に姿を見せて)「え・・・えっと・・・よ、よろしく・・・お願いします・・・」(と挨拶)
        (しゅたたたっとわんこが現れて二人の匂いを嗅ぎまわったり)

        犬の名前はカレリアだ・・・確認をし忘れたが、二人とも犬のアレルギーとかはないか?(と軽く紹介しつつ娘に)ユーニスとチトセだ、前にあったから大丈夫だな?
        「う、うん・・・大丈夫・・・」
        (リビングやキッチン、バスルームなど軽く紹介して)洗い物みたいな細々した事は明日にでもこちらでやっておくから、家にある物は好きに使ってくれていい・・・何か聞いておきたい事はあるか?
        -- カルロス 2020-07-04 (土) 22:21:00
      • (ユーニスだよ、よろしくねーとリリアに手をふりつつ)
        犬はねーむしろ好き。娘さん、アレルギーとか持病とかは大丈夫かな。お風呂とか、普段してることとかー
        あ、あと緊急連絡先、カルロスさんの携帯でおっけー?
        (前にベビーシッターやったことあると言ってただけあって、わりとユーニスは慣れた様子で、確認事項をチェック) -- ユーニス 2020-07-04 (土) 22:35:32
      • (千歳ですと小さく笑みを見せ)リリアちゃんよろしくね?
        犬なら…まあ大きな犬と一緒に暮らしている様な物だから(とユーニスの方を見て)
        後は、この付近で行かない方がいい場所等があったら教えてほしいかな?
        (リリアと散歩に出る際等、うっかり行かない様に) -- 千歳 2020-07-04 (土) 22:40:30
      • (質問を受ければリリアに応えさせる)
        「え、えっと・・・病気とか・・は・・・ないから・・大丈夫・・・お風呂は、一人で入れる・・・」(普段してる事はゲームとか犬と遊ぶとかと説明)
        (ユーニスに)あぁ、必要なら抜ける事も出来るから遠慮なく連絡してくれ・・・ただそれなりに時間はかかるから、危険だと思ったらまず警察を呼ぶ事だ
        (チトセの方を見ると困った風に)この辺りは比較的安全だが・・・夜は基本的に外出しない事を勧めたい
        (その上でと考えて)・・・スロックランドからは出ない事だな・・・
        -- カルロス 2020-07-04 (土) 22:55:59
      • わんこと遊ぶのいいねー楽しそうっ。うん、あとのことは事前に確認してるからおっけーだねー。
        安全対策はまかせて、私達ロカーロで女の子二人で暮らしてるんだもん。警戒心めっちゃ高いぜーきっと番犬並。
        (実際、ユーニスはぼやっとしてるようで、ヤバそうな奴の見分けがよくできたりする) -- ユーニス 2020-07-04 (土) 23:03:16
      • ゲームか…うん、お姉さん達にも遊んでるゲームの事押してくれると嬉しいな(まずは知る事が大事)
        いえ、念には念と知っておきたいと思いましたので。それにコイツ、番犬並みなのは本当だから
        (実際、土地に不慣れな千歳が上手くやっていけているのはユーニスの存在による所が大きい) -- 千歳 2020-07-04 (土) 23:11:46
      • ・・・そうだと思うが・・・(大丈夫かなって感じにむぅぅっと唸る)
        分かった、信じよう、それでは後の事は任せたぞ?(そういうと時計で時間を確認し、リリアに「行ってくる」と告げて出ていった)

        「いって・・らっしゃい・・・(と見送ると)」
        「・・・えっと・・(若干手持ち無沙汰気味にリビングに歩いていく)」
        -- 2020-07-04 (土) 23:19:30
      • いってらっしゃーい。はやくかえってきてあげてねー(リリアと一緒にお見送り)
        さて、と改めてよろしくね、リリアちゃん。
        (改めて、こっちがユーニスだよって。一緒にリビングについていきつつ。なんかよく見ると、着てるTシャツがウオウオフィッシュライフとかカタカナで書いてある変Tだ)
        カレリアもよろしくなー(さあ、匂いを嗅いでくれ、と手を差し出す犬コミュニケーション) -- ユーニス 2020-07-04 (土) 23:32:19
      • いってらっしゃいませ(並んで見送る)
        そして私が千歳だよ、よろしくね。さて…何からするといいのかな?(ユーニスと同じウオウオな変T着てます)
        カレリアもよろしくね?コイツは無害だから犬パンチしても大丈夫だぞー -- 千歳 2020-07-04 (土) 23:39:36
      • (\パンチはやだなー/) -- ユーニス 2020-07-04 (土) 23:45:57
      • よ、よろしく・・・(二人の恰好を見て)・・・二人とも・・お揃いなの・・着てるの・・・?
        (ふんふんふんふんと匂いを嗅いでぺろりと舐めたりするわんこ、取りあえず受け入れてくれたようだ)
        え、えっと・・・(何かするかと聞かれれば困ったように)し、宿題・・・しないといけない・・から・・・て、テレビとか・・見てて・・・いい、よ・・・
        (たたたっと逃げるようにテーブルの方へ、まだあんまり打ち解けられてないようだ)
        -- リリア 2020-07-04 (土) 23:49:48
      • ああ、いいっしょー、ウオウオフィッシュライフって意味だってさー。
        (お返しに、カレリアの頬を軽く撫でる。ボーダーコリーは、賢くて家族思いな犬なので、こちらをあまり警戒してないのを見るに、
        リリアは緊張してるだけかなと思った…。かどうかは分からない、だってユーニスも気の抜けたレトリバーみたいなツラしてるし。)
        おっけー、じゃあ先にお掃除とかお洗濯させてもらっちゃうねー。 -- ユーニス 2020-07-05 (日) 00:01:42
      • コイツがどうしても言うから(ユーニスを指で突きながら、Tシャツの裾を摘まんでヒラヒラする)
        カレリアは賢いな(ユーニスとカレリアのやりとりを見ながら、うんうん頷いて)
        そうだな…まずは出来るところからやって行こう(まだ初日。いきなり仲良くなれるとは思っていなかった)
        仕事を覚えていかないとな(だから今は少しづつ前へ) -- 千歳 2020-07-05 (日) 00:09:22
      • うおうお・・・ふぃっしゅらいふ・・・?(それはつまりどういう事だろう?って首をかしげる)お揃い・・・・制服じゃ・・ない・・よね?
        (あなた達は悪い人じゃないわ、私にはわかるのとでも思っているのかいないのか、特に警戒した様子もなくモフられてるわんこ)
        (二人が掃除とかを済ましている間、ちらちらと様子を伺ったり、洗濯機を回してる時に物陰から伺っては逃げたりしてる)
        -- リリア 2020-07-05 (日) 00:24:04
      • (そして、チトセと小声で『んふふ、やっぱり気にはなってるね。次はおやつで気をひいてみようか』と作戦会議。
        お片付けついでに、台所の様子も確認したというわけだね) -- ユーニス 2020-07-05 (日) 00:35:01
      • 制服じゃないよ、街にはこう言う変なTシャツが売ってるんだ
        『ふむ、おやつか…上手く気をひいて、庭でおやつタイムと言うのはどうだろうか?』(ひそひそ) -- 千歳 2020-07-05 (日) 00:45:54
      • 変な・・Tシャツ・・・(へぇーとちょっと興味ある感じ)
        (二人が作戦会議してる間も宿題しつつ様子を伺っている・・・というか本当に宿題をやっているのか、あまりはかどってる様子はない)
        -- 2020-07-05 (日) 01:02:29
      • (おっけー、それでいこう!とうなずき)
        ねーリリアちゃん、ちょっと教えてほしいんだけどー。お気に入りのお菓子はどこにしまってるー?
        (ひょいっとリビングに顔をのぞかせ)
        お片付けすんだから、おやつタイムとかどうかなー? -- ユーニス 2020-07-05 (日) 01:09:22
      • (今度お土産に買ってこようかな?と考えたり。変Tな三人……)
        今日は天気が良いし、庭でおやつとかどうかな?
        (ユーニスの顔の下からひょこっと顔を出し、団子状態に重なる) -- 千歳 2020-07-05 (日) 01:12:43
      • ふひゃい!?(とっくに終わってる宿題から顔を上げて)え・・えっと・・
        (ちょっと慌てた様子で二人と顔を見合わせて)こ・・・ここ・・に・・・(と席から降りて台所に・・・戸棚にあるカンカンを開けて)あれ・・・もう・・ないや・・・
        (どうしようとちょっとしゅんっとしたり)
        -- リリア 2020-07-05 (日) 01:20:43
      • ありゃ在庫切れ、買ってこようか…スーパーちょっと遠いなー。
        (普段、都心部で暮らしてると、たまに車がない不便さを忘れがちだが、ここは車社会の本場アメリカだ) -- ユーニス 2020-07-05 (日) 01:28:42
      • うーん……(腕組みしてしばし考えた後)よし作るか!材料があれば多分なんとかなる
        まずは食材のストック確認からだな?
        (菓子作りに必要な小麦粉や砂糖、卵や牛乳等々、どの程度あるのか調べ始める) -- 千歳 2020-07-05 (日) 01:35:05
      • お外・・・行くの・・・?(不安げに訪ねた所でチトセの提案)
        あ・・え・・あ・・・こ、ここ・・・に(どうだったかなとおろおろしつつ案内、ちょっと探せば必要な物は直ぐに揃う事だろう)
        -- リリア 2020-07-05 (日) 01:43:46
      • おおーチトセお菓子も作れたの!?チョコレートパフェつくって!フルーツとかめっちゃ盛ってある奴!(誰のためのおやつなのか忘れて、食欲が暴走しだすユーニス) -- ユーニス 2020-07-05 (日) 01:51:59
      • 作れる程度だからあまり期待するなよ?って、今はリリアちゃんのおやつが先だ!
        (リリアに案内され食材のストック部屋へ)ありがとう、流石アメリカ…備蓄量が半端ないな
        小麦粉はある砂糖もある…バターもあるし(調べれば必要な物は直ぐに揃った)
        よし!作るぞ!(借りたエプロンを装備し。菓子作り開始。最終目標は手作り風クッキー)
        あ、おまえも手伝うんだぞ?(ユーニスに言い)リリアちゃんもやってみる?
        (リリアの視線に屈むと問い尋ねてみる) -- 千歳 2020-07-05 (日) 02:15:07
      • (屈んで視線が合えば戸惑うようにきょどきょどと・・・されど)う・・・うん・・・(こくりと頷き「やってみたい」ってなって) -- リリア 2020-07-05 (日) 02:23:35
      • パンケーキもミートローフも、キューバサンドもバッファローウィングも作れて、さらにクッキーも作れるなんて…チトセはやっぱりシェフだよ。
        でもスシは作れないし、ラーメンヌードルは作ってもインスタントなんだよね。不思議だね。どっちも和食なのに。 -- ユーニス 2020-07-05 (日) 02:26:05
      • うん、いいお返事だ。みんなでクッキー作りだ(急過ぎたかなと思いつつも了承の返事を貰えたのでほっと息を吐く)
        褒めても何も出ないぞ?…寿司を作るには刺し身に出来る新鮮な魚が必要だからな。それと寿司酢や醤油が高い……(特に日本産の物は倍以上の値段する)
        じゃあまずは……(早速クッキーを作り始める)
        (混ぜたり簡単な所は丁寧に教えつつ、リリアに手伝わせ。生地を練ったり力が必要な所はユーニスの力を借りる)
        (生地が出来れば型抜き作業。小さな子供にとって一番楽しい作業とも言える)
        (星やハート型の定番の形。余った生地で犬(カレリア?)の形を作ったりもした)
        ………
        ……

        もう少しで焼き上がるよ(オーブンの中から甘く芳ばしい香りが漂い始めた) -- 千歳 2020-07-05 (日) 02:39:19
      • い、いっぱい・・・作れるんだ・・・ね?
        (おずおずと、始めは少し距離を置いた感じだったが、丁寧に教わったりする内に自然と間隔が縮まって)
        で、できた・・・よ?カレリア(掲げてにへーっと笑顔を見せる頃にはもうすっかり打ち解けていて)
        (焼けていく様をじっと見ながら)うん・・・いい、匂い
        -- リリア 2020-07-05 (日) 20:09:12
      • 良い匂い〜(リリアの横でオーブン覗き込みつつ、期待に目を輝かせるやつ)
        めっちゃお腹空いて来たよーじゅるり… (なんだか基本的にいつもおなか空かせてるような気がする) -- ユーニス 2020-07-05 (日) 20:48:38
      • 少し多めに材料を用意したからな。クッキーは色んな食べ方が出来るし……
        こら?この待ち時間が肝心なんだぞ?(本当に涎が垂れそうだったのでユーニスの口を吹いてやり)
        …このタイミング!(時計を見ればオーブンの火を止め。蓋を開いたすると……)
        完璧!(トレーが引き出されれば、ほんのり焦げ目の付いたクッキー達が登場しました)
        まだ少し熱いが…味見してみるか?
        (リリアと待てをされたわんこ状態のユーニスに問い尋ねた)
        (出来立てほやほやのクッキー。冷ましながら食べないと熱いが)
        (食べれば手作りならではの味わいに感動するかもしれない?) -- 千歳 2020-07-05 (日) 21:01:59
      • ユ・・ユーニスさん・・は・・・いつもチトセさんのお菓子・・・食べてるの・・・?(いいなっといった感じの視線、二人のやりとりを楽しそうに眺めたり)
        (熱いトレーが引き出されるのを少し引いて見守り・・・おずおず覗き込んで香りを堪能する)
        う・・うん・・・食べて・・みたい・・な?(わくわくしながら手を出そうとして)あつつ・・・(慌てて引っ込めたり)
        -- リリア 2020-07-05 (日) 21:16:26
      • うん、チトセが色々つくってくれるんだー。あ、熱いから気をつけようね。慌てちゃだめなんだよー。
        (お姉さんぶってみるも、お前熱いまま食べて口火傷してたしな、と千歳につっこまれる)
        (飲物を用意してる間に、あつあつでしっとりしていたクッキーも、いい具合にサクサクになる)
        やっぱりクッキーには牛乳だよねっ。 -- ユーニス 2020-07-05 (日) 21:23:41
      • ああ?熱いから注意して?(小皿にクッキーを乗せると冷ましてからね?とリリアに渡し)
        コイツが良く食べるからね?出来合いの物ばかりだと金…お金がかかる(言って肩を竦めるも楽しそうに見える)
        うん、クッキーには牛乳だな?(残りのクッキーを大皿に移すと)
        (牛乳を飲むためのマグカップを用意する。リリアのお気に入りのカップを見せてもらったりもした)
        (そして庭にテーブルと椅子を並べ、テーブルクロスをかければおやつの準備は整った) -- 千歳 2020-07-05 (日) 21:34:38
      • あ・・・ありがと・・・(お皿にわけて貰って、冷めるのを待って食べてみる さくさく)おいしい・・・
        (つっこみいれたりボヤいたりするさまを見ながら)ふふ・・チトセさん・・・楽しそう
        (青い水玉模様のマグカップにミルクを入れてお庭に)
        わぁ・・・お茶会・・みたい(準備を手伝えば早速といった風に席について)
        (「へっへっへっへ」と足元でなんか期待した感じの目を向けてくるわんこ)
        -- リリア 2020-07-05 (日) 21:51:41
      • カレリアも欲しいの?めっちゃ美味しいもんね。ほーら、食べるかーい?
        (自分の分を1枚どうぞーってやるやつ)
        かわいいよねー私子供のころ犬飼って見たかったんだよね。 -- ユーニス 2020-07-05 (日) 21:59:46
      • 二人共本当に仲良くなったな、やはり犬と相性が良いのかもな?
        (カレリアとやりとりしてるユーニスを見ればそんな事を呟いた)
        お茶会か…確かにそんな感じだな。バニーの耳があればアリスのお茶会を演出出来たかな?
        (流石にバニーの衣装を着る訳にはいかないが。)
        (バニーの耳を付ければ三月兎っぽくなったかも?そんな事を思いつつクッキーを齧る)
        …うん、我ながら上出来♪ -- 千歳 2020-07-05 (日) 22:12:13
      • (わふっと嬉しそうに頂くわんこ、しっぽふりふり)
        そう・・・なんだ?・・・でも飼えなかった・・の?
        お帽子被ったり・・・だね(さくさく)チトセさん・・・は・・お菓子とか、誰かに教えて貰ったり・・したの?
        -- リリア 2020-07-05 (日) 22:18:43
      • 犬は買ってもらえなかったから、近所の野良犬てなづけてたよ。(こんどバニー耳とかもってきてあげるーとか付け加えつつ、自分もサクサクッといい勢いでクッキーたべつつ) -- ユーニス 2020-07-05 (日) 22:23:21
      • シルクハット等も良さそうだな…お菓子作り?うん、日本の友人にお菓子作りの上手い子がいたんだ
        …今でこそ作れるようになったけれど、学校の家庭科の授業で作った時には……(遠い目になって)
        それを見かねた友達に教えてもらって…それで(だからリリアちゃんも練習すれば上手くなるよ?と微笑む)
        (そんな穏やかな笑みと会話と共に穏やかな時間は流れて行き……)
        ………
        ……

        アイツ…ああしてると本当に犬だな……
        (カレリアと一緒に庭をぐるぐる駆け回るユーニスをぽかーんとみている)
        (おやつの後、腹ごなしを兼ねて遊ぶ事になったのだが……)
        (ボールが転がり始めた途端このありさまであった) -- 千歳 2020-07-05 (日) 22:33:34
      • そう・・・なんだ・・・・・(少し押し黙り、やがてもじもじと切り出す)わた、私・・に・・も・・・その・・教えて・・・欲しい・・・なって
        (そんなこんなでおやつの時間は過ぎて)
        (投げたボールを追いかけて遊ぶユーニスとカレリアの様子を見ながらきゃっきゃと笑ってる、混ざろうと走るけど遅い、置いて行かれてる)
        -- リリア 2020-07-05 (日) 22:46:40
      • (ボールを拾うと、リリアのところに走っていき、はいっと差し出す。ボールに釣られて、カレリアも寄ってくる)
        もっかい、もっかい投げてみて。 -- ユーニス 2020-07-05 (日) 22:54:41
      • うん、いいよ?(勿論と頷いた。何か子供でも覚えやすい料理を調べておこう、そんな事を思い)
        とって来いって投げると喜ぶよ?(リリアも上手く遊べる様に促してみる) -- 千歳 2020-07-05 (日) 22:59:00
      • そ・・・そう・・・なの?(本当に犬みたい・・と思いつつ)うん!とってこーいっ(と思い切ってぶんっとボールを投げてみて) -- リリア 2020-07-05 (日) 23:02:02
      • いやっはー!
        (投げられると同時に、駆け出すユーニスとカレリア!ユーニスは見た目よりずっと足が速い!
        けど、さすがにカレリアのダッシュ力にはかなわない。だって牧羊犬だ。今度ボールをリリアのところにもってきたのはカレリアだ。ちょっと遅れてユーニスもゴールイン。お手もするよ、とかチトセに冗談っぽく言われてる) -- ユーニス 2020-07-05 (日) 23:07:03
      • …ノリいいな……(冗談なのか本気なのか本能なのかわからなくなってきた)
        (そんな事を何度か繰り返しながら。合間合間にクッキー上げてみたりしつつ)
        (リリアが楽しんでいるか、横目で顔を見る) -- 千歳 2020-07-05 (日) 23:11:23
      • ふふふっ・・・ユーニスさん・・本当に犬ちゃんみたい・・(くすくす楽しそうにボールを追いかける様を見守って)
        (やがて取ってきた二人を順番に撫でてあげる)・・・ほ、本当・・?・・・・お、お手・・・(なんて信じて手をだしたり)
        (初めの様子はどこへやら、一緒にお菓子を作って食べて、遊んでいる内にすっかり打ち解けて、本当に楽しそうに声を上げている)
        -- リリア 2020-07-05 (日) 23:18:20
      • はいよー(お手をするユーニス、興がのったのかカレリアも前足を差し出すので、でかいレトリバーとコリーが2匹いるみたいな絵面になった)
        (その後、夕暮れまで世話をするというよりは一緒に遊んだ。夕飯も一緒に食べて、仕事柄、帰りが遅いカルロスが戻ってくるのを待つ間の時間もいっぱいあって)
        ………
        ……
        … -- ユーニス 2020-07-05 (日) 23:30:32
      • はぁはぁ…間に合った、リリアちゃんおやすなさい?
        (そろそろカルロスさんが帰って来る予定の時間なのだが……)
        (妙に疲れた顔をしているのには理由があった)
        (リリアをベッドで眠らせるのは八時の約束。でも、ちょっと夜更かしさんをしてしまった!)
        (夕食の後、キッズ向けTVアニメを見たり、リリアがお気に入りのアニメ映画等を見たりした)
        (そして気付けばこんな時間。子供は普段と異なる環境になるとテンションが上がる事もあったり無かったり) -- 千歳 2020-07-05 (日) 23:40:56
      • (そして、すっかり仲良くなったユーニスが、えーもうちょっといいじゃーんと、言い出すのも当然あったり) -- ユーニス 2020-07-05 (日) 23:48:23
      • (ユーニスを手懐けたりモフったり、二人と一緒にご飯を食べたりアニメを見たりといっぱい楽しんで)
        うん・・・お休み・・なさい・・・(眠れる気はしないけどなんて呟きつつもちゃんとベッドに入る、素直で扱いやすかった事だろう)
        (リリアを寝かしつけたのと殆どタイミングを同じくして車がガレージに入ってくる音)
        (静かに帰宅)ただいま、何事もなかったか?(こそっと娘の様子を見ようと部屋をのぞいたり)
        -- カルロス 2020-07-05 (日) 23:52:16
      • おかえりなさーい、リリアちゃんめっちゃ良い子でしたよ。
        (ついでに、掃除や洗濯もすませたのと、今日のおやつや夕食のメニューなどについて話しておく)
        ちゃんと時間通りにお休みしてます! -- ユーニス 2020-07-05 (日) 23:54:59
      • おかえりなさい…ませ(お辞儀で迎えるも。慌てた呼吸はまだ落ち着いていない)
        え、えっと…は、はい!時間通りにおやすみしました!夜更かしなんてしてません
        食べて遊べば寝つきは良いの…良いの…ちょっと夜更かしさせました、申し訳ありません
        (人の子供を任された以上そこには信頼と責任が伴う、嘘を付く事は信頼を裏切る事で) -- 千歳 2020-07-06 (月) 00:04:06
      • …あれ、そうだっけ?あーちょっと楽しくて時計見るの忘れた気はするけど(すっとぼけるやつ) -- ユーニス 2020-07-06 (月) 00:10:59
      • なんだ、そういう事はこっちでやっておくと言ってなかったか?(少しバツが悪そうに頭を掻いて)ともかくありがとう、助かったよ
        (随分息が荒いなと不思議そうにしていたが)・・・そういう事か(むむっと難し気に腕を組む)
        まだ初日だから不慣れな事もあるかもしれないが・・・そういう所はしっかりしてもらえないと困るぞ
        正直に言ったって事は、次からはちゃんと改めるって意味と受け取っていいな?(ならば良しと頷いて)
        兎に角、お疲れ様だ・・・夜更かしさせられるくらいリリアが君たちと馴染めたのなら喜ばしい事だ・・次もよろしく頼む(すぐさま契約打ち切りなんて事にはならないで済んだようだ)
        (さてと時計を見て)もう時間も遅い、女の子二人じゃ危ない、タクシーを呼んでもいいが・・・家まで送るか?
        -- カルロス 2020-07-06 (月) 00:14:45
      • あー…すいません、なんかすごく仲良くなって楽しくなっちゃってぇ。…ごめんなさい
        ああ、まだ電車あるから大丈夫、駅まで送ってもらえれば…。うちロカーロで、街の反対側だし。
        (仕事上がりでさすがにそれは大変だろう、ということで) -- ユーニス 2020-07-06 (月) 00:26:47
      • は、はい!子供にとって睡眠は大事ですから(いきなり首になる事が無くほっと息を吐く)
        (仕事も大事だが、せっかく仲良くなる事も出来たしのにお別れは寂しい物があるから)
        では……(と駅まで送って貰う事にしました)
        (でも初めてのベビーシッタで疲れたのか、車の中でウトウトして大変な二人でありました) -- 千歳 2020-07-06 (月) 00:34:50

9月4週 ゆるキャン□ Edit


  • 山道を、ミリタリー仕様のサイドカーが登っていく。
    高いセコイアの梢から、強い日差しが降り注ぐ。サマーシーズンが終わっても9月のサンアッシュクロスは
    まだ夏のただなかである。

    「重い…おもいー…おーもーいー」
    サイドカーに乗ったユーニスが不満げな声を出した。サンドバッグみたいな荷物に潰されて窮屈そうだ。 -- 2020-07-07 (火) 23:11:51
    • 「えい、少し静かにしろ。それしか言えないのか」
      バイクのハンドルを握った千歳がユーニスを見ずに言う。怒っていると言うよりは溜め息の混じる口調。
      かれこれ一時間近く同じ事聞き続ければこうもなるだろう。
      もっとも、サイドカーに二人分のキャンプ装備一式を積み込むと言うのが無謀ではあるのだが……
      今出来るのは、少しでも早く目的地に到着する事だけ。 -- 千歳 2020-07-07 (火) 23:30:14
      • 「だって、重いんだもん」
        曲がりくねった山道が続く。セコイアのまっすぐ並んだ柱のような幹の間から、輝く湖面が遠目に見える。
        2人は久々の連休にキャンプにきているのだ。
        街の北部に広がる、ワークロック、ルルカンマレの山脈の中にあるルチオ湖は有名なキャンプ地だ。
        セレブから、低所得者層まで、分け隔てなくキャンプに、BBQ、水遊びを楽しみ、自然と触れ合える。
        山中に、ギャングやマフィアやヤク中のヒッピーの隠れ家が多数点在しているが、整備されたキャンプ場周辺は安全。

        やがて、道の先に、整備されたキャンプ場の一つがみえてきた。
        大型キャンピングカーが何台も泊まれる、バスターミナルみたいなオートキャンプ場、手入れの行き届いた広大な芝生、ログハウスのロッジ。
        高級レストランも出店しているグランピングハウスも立ち並ぶ。 -- ユーニス 2020-07-07 (火) 23:52:03
      • 「やっと見えてきた。あそこだな?」
        目的地らしき場所が見えれば、気分は晴れ道中の疲れも吹き飛ぶと言うもの
        ログハウスに高級レストラン。あの場所で過ごしす休暇はきっと楽しい物になるはず
        だから少しでも早く到着したいと、アクセルを捻りバイクを加速させる

        スムーズな駆動音はエンジンの整備が行き届いている証。
        BMWのマークが入ったミリタリー仕様のサイドカー
        レンタカー屋のお爺さんは大戦中に使われていた物と言っていた
        確かに、大戦中を舞台に冒険する考古学者が登場する映画で似た物を見た記憶はあるが……
        千歳はそこまで詳しくはない。
        ユーニスはレンタカー屋のお爺さんとなにやら盛り上がっていたが……
        -- 千歳 2020-07-08 (水) 00:13:19
      • なんで街のレンタカー屋に、ミリタリーファン垂涎の品が普通にレンタルされていたのか。
        きっとアメリカだからだ。しかもレンタル料が車より安かった。

        「違うよ」
        振り返る千歳にユーニスは
        「HAHAHA、キャンプの後にタダ働きしてもう2〜3泊してく?
        きっと最高のキャンプになるね。うちらのキャンプ場はあっち」

        本場のアメリカンジョークをかましつつ、舗装もされていない脇道を指さす。
        「大丈夫だって、この先に山小屋があるんだ。昔お爺ちゃんに連れてきてもらったから
        ちゃんと道も分かるよ」 -- ユーニス 2020-07-08 (水) 00:21:08
      • 「ここじゃない…のか…?」
        サイドカーを停止させると、<●><●>な視線をユーニスとキャンプ場の間で何度も往復させる
        冗談であって欲しい。人々がバカンスを楽しむ場所を通り過ぎ、自分達はさらに山奥へ進まなくてはいけない
        何の冗談だろう?
        「マジか…?」
        千歳の問い掛けにユーニスはニコニコしながら頷いた。

        「はぁ……」
        溜め息一つすると千歳は転寝していたバイクを起こした。 -- 千歳 2020-07-08 (水) 00:34:15

      • 原生林みたいな山の中の道を進んでいく。薄暗さが増した気がする。
        「ふんふふんふー」
        ユーニスは暢気に鼻歌など歌っていて。道自体は一本道で迷いようがないが。
        進めば進むほど、さっき通り過ぎたキャンプ場とは真逆の世界へ入っていくような不安感がつのる。 -- ユーニス 2020-07-08 (水) 00:42:31
      • 「まったく……」
        本日何度目かの溜め息するとバイクのヘッドライトを点灯した
        道が見えない程の暗さではないが、先に何があるかわからないのと
        獣除けになるだろうと言う判断

        「なぁ…こっちであってるのか…?」
        ここまでずっと一本道。むしろ一本道過ぎて何か怖くなってきた -- 千歳 2020-07-08 (水) 00:58:24
      • 「ぐぅー…すぴぃー…」
        返事は寝息。散々文句を言ったサンドバックみたいな荷物を抱き枕にして、ユーニスは暢気に昼寝していた。 -- ユーニス 2020-07-08 (水) 01:00:58
      • 「<●><●>(こ、こいつは……)」
        思わず蹴飛ばしたくなったが抑えた。とにかく今は前に進む事にする
        迷子になったその時はその時だ。食料はあるしどうにかなるだろう
        食料があるって素晴らしい。

        巨大な生物の体内の様な薄暗い木々の間を無言で進んで行く
        こうしてみると、ユーニスの愚痴も無いよりはマシだったと良くわかる
        やがて時間の経過が曖昧になり始めた頃……

        「あ…?」
        ついに道が開けた。だから千歳はユーニスを足で突いた -- 千歳 2020-07-08 (水) 01:14:14
      • 「んあっ」
        「おい、起きろ。ここか?」
        山小屋と思しき、ぼろっちいログハウスもある。
        「んーんんー…もうちょい先」
        溜息一つ、バイクを徐行で先へ進ませると…。
        まぶしさに千歳は目を細めた。目を光にならすと、そこには、海のように広い湖が広がっていた。
        今にも、波の音が聞こえそうな景観に反して、静かな水音が耳を洗う。

        「おお…」
        「ね?いいとこでしょ。山小屋には水道もトイレもあるし誰でも使えるんだ」
        そして対岸を指さして。ユーニスはたのしそうに。
        「ほらあれ、キャンプ場。あっちは有料だけど、こっちは無料なの!」 -- 2020-07-08 (水) 01:24:41
      • 「…無料。ま、いいか」
        千歳の心の天秤は無料の方が重かった様です。

        「うん、水は大丈夫だな?」
        蛇口から溢れ出した透明な水が地面へと落ちていく。
        設備があっても使えなくては意味が無い。だからまずは確認する事にしたのだが
        水はちゃんと出るし、トイレも使えた。
        むしろトイレの方は利用者が少ないお陰で、心配だった匂いもさほど無かった。

        「放置されている訳ではないんだな?」
        バケツに水を組むとテント設営中のユーニスの元へ戻って来た -- 千歳 2020-07-08 (水) 01:44:49
      • 「全然、だってここは狩猟シーズンには毎年ハンターが使う場所だもん」
        テントは、すでに出来上がっていた。石で囲いを作り、焚火の準備まで済ませている。
        「見て見て!チトセ!この寝袋いいっしょー!」
        (カップル用の大きな添い寝寝袋を広げてはしゃぐユーニス) -- ユーニス 2020-07-08 (水) 01:54:20
      • 「ハンター用の山小屋だったのか…って、寝袋が一つしか無いようだが?」
        「チトセといっしょに寝るよー」
        「うん、寝袋が一つしか無いな?」
        「だからチトセといっしょに寝るよー」
        暫く見詰め合った後、ユーニスの首を軽く絞めておいた。

        「よしカレー作るぞ!」
        気持ちを入れ替え、本日の晩御飯「カレー」を作る事にした。
        「なんでカレー?」
        「日本ではキャンプ飯と言えばカレーだ」
        「ジャパニーズキャンプ飯!」
        なぜ『飯』だけ日本語?とツッコミを入れつつ準備開始。

        野菜や肉はあらかじめ切って来たので、後は炒めて煮るだけ。
        それよりも重要なのはライスだ!
        「私、飯盒でご飯炊くの初めてなんだよね……」 -- 千歳 2020-07-08 (水) 02:15:22
      • 「ライスってパスタみたいに煮るんじゃないの?」
        「それは、日本式じゃないんだ。こいつは今日の為に奮発した、コシヒカリだしな」
        「ふぅーん」
        日本産の米はアメリカのスーパーでも売っているが、高い。生活費がかつかつな2人にとって、日本産の米は高級食材だ。
        半年ぶりの米食のために、千歳は、大きな水筒の中に米を入れ、軟水のミネラルウォーターで浸水させながら持ってきた。
        というか炊くための水も、わざわざ軟水のミネラルウォーターをボトルで運んだぐらいだ。
        ユーニスが、荷物に重いーと文句を言っていたのもそのせいである。
        しかし、一度炊飯にとりつかれた千歳はとまらない。米は日本人のソウルなのだ。 -- ユーニス 2020-07-08 (水) 02:29:18
      • 「それでーどうやって料理するの?」
        「やり方は調べてきた、基本的に鍋とかで炊くのと一緒なんだ。
        まず、十分に浸水させたお米を、強火にかけて、10分ぐらいで沸騰させて…
        それから、弱火にして12分間沸騰状態を維持してだな…」
        スマホを見ながら言う千歳の横で、はやくも火にかけた飯盒が沸騰し始めて。
        吹きこぼれた水がジュウッジュウッと焚火にかかる。
        「あ、あ…っ弱火に…」
        「これでいい?」
        ユーニスが薪を何本か、火の中から引くと、火勢は一気に弱まった。
        「う、うん」
        「焚火のあつかいなら、任せなよ。俺はファイアマスターだぜ?」
        「なんでイケメン風なんだよ」 -- 2020-07-08 (水) 03:04:10
      • 普段は眠そうな顔かぼやけたわんこの様な顔をしている事の多いユーニスだが
        モデル体型と合わせ顔がいい。だからイケメン風が似合う…似合うが、一瞬しかもたない
        「…ほんとオマエもったいないよな」
        「何がー?」
        ほら、既に眠そうな戻ってるし

        さて弱火にしている間にカレーの準備を進める
        肉や野菜は炒め終えてるので、水を入れアクを取りながら沸騰するのを待つ
        「カレーのスパイスはどうするのー?」
        「今日は日本のキャンプ飯と言っただろう?」
        言って千歳が取り出したのはカレーの『固形ルー』だ!しかも日本製!

        『固形ルー』こそ、日本の食文化の極み!
        『固形ルー』は、美味しいカレーを手軽に家庭でも!と企業が努力を重ねた成果!
        固形ルーの登場によりカレーは日本の国民食へ上り詰めたと言っても過言ではない
        「んーインスタント?」
        「日本のカレーを甘く見るなよ?」
        「カレーだけに?」
        とりあえずユーニスは小突いた

        「…でだ、湯が沸騰したらカレーの固形ルーを放り込んで混ぜる!」
        「お?おお!?OMG!一気にカレーになった!」
        外人の人って驚くと本当にOMG(オーマイガッ)って言うよね -- 千歳 2020-07-08 (水) 21:20:11
      • 「ほんとに見たことなかったんだなカレー。固形ルーとか普通にスーパーに売ってるのに」
        「食べるの初めてだよ。おあっめっちゃスパイシーな香り。みためビーフシチューなのに」
        「アメリカ人の好みに合わせて肉は大き目、多めにしてみたからな。
         日本基準だと超豪華カレーだ。グレードによって具のサイズが変わるんだ」
        「じゃあ、一番安いのは具が無い奴だ」
        「ああ、たまにやる人もいる」
        「oh…。こないだの、スープだけコンソメみたいな感じかな…」
        「あれは、切なかったな…。家賃高いよな」
        時々かき混ぜながらカレーをじっくり煮込んでいく。焚火で作っているとなんでも
        不思議と美味しそうに見えてくるものだ。
        はやくはやく、とせかすユーニスをなだめつつ、じきにカレーもご飯も良い具合に仕上がる。 -- 2020-07-09 (木) 23:34:13
      • 「火の側なんだからそんなにじゃれるなって…もう少し煮込んだら完成だ」
        こうしていると本当に大きな犬だ。
        ………
        ……

        「うおおおおお!」
        「落ち着け」
        「落ち着けない!肉たくさん!肉たくさんね!」
        「はいはい……」
        ご飯の盛られたカレー皿(アルミ製)に仕上がったカレーのルーを肉多目でよそう
        ルーが皿に乗った瞬間、ご飯の白銀とカレーの黄金が焚火の炎に照らされ輝きを放ち始めた
        ユーニスのテンションが上がるのも当然、千歳だって叫びたいの堪えているのだから

        「早く早く!千歳も早く」
        「わかってる」
        自分の皿にご飯をよそいルーを注ぎ込む。最高の瞬間。
        後はもういただきますをするだけ

        「スプーンは持ったか!」
        「え?持ったけど…?」
        「じゃあ、いただきます!」
        「うん、いただきます」
        二人同時にスプーンに掬ったご飯とカレーを口へと運ぶ
        「!?」
        「!?」
        瞬間、二人はインドの神と日本の神の饗宴を見た。 -- 千歳 2020-07-10 (金) 00:10:27
  • 「んんー!なにこれ美味しい!この瞬間に好きな食べ物が増えたよ!」
    キャンプで食べるものは大体美味しい、それがカレーならばもっと美味しい。
    「BBQじゃなくてカレー作るって言いだした時、正直何を始めるんだろうって思ったけど。
    これめっちゃいいねー。どうしよう、鍋一杯ぐらい食べられちゃいそう、ライスも良い感じ…!」
    そして実際に食べそうな勢いで食べてる。

    直火がよかったのか、短時間でも、具は良い具合にカレーに馴染み柔らかく煮えて
    しっかりとカレーと一体になっている。 -- ユーニス 2020-07-10 (金) 00:31:54
  • 「気に入ってもらえてよかったよ〜、はぁ…カレー美味しい。
    やはりカレーのライスは日本の米だよな」
    潰れた饅頭の様な顔になって瞳をうるうるしてる千歳さん。
    久しぶりの日本の味。インド発祥だが、固形ルーを使ったカレーは日本料理!
    とにかく久しぶりに日本の味の堪能してるのだからこうなるのも仕方ない

    「チトセがほにゃけてる……」
    「うるさい、おかわりもいいぞ」
    「やったー!」
    この後に変な訓練はありません。
    「でも一晩寝かせたカレーも美味しいからその分は残しておけ」
    「寝かせたカレー!?なにそれなにそれ!」 -- 千歳 2020-07-10 (金) 00:47:56
  • 「明日の朝わかるさ」
    「えへーたのしみ…あっ!」
    急に気づいたように声を上げるユーニス
    「これ、ヌードル入れたらカレーヌードルだね、ゆるキャンだよ!」 -- ユーニス 2020-07-10 (金) 00:53:42
  • 「日本にもカレーに麺を入れたカレーうどんがあるぞ、でも…ゆるきゃんって?」
    「カレーうどん!?食べたい!食べたいけどチトセには先にゆるキャンの講義をしなくてはいけないようだ!」
    「講義ってなんだ!?」
    「チトセは日本人として損してるみたいだからね」
    この後、めっちゃゆるキャン△他きららアニメを講義された。

    「はふぅ〜まんぷく〜」
    「私はお腹だけでなく頭もいっぱいいっぱいだ」
    語りながら食事を進めれば時間はあっという間
    太陽は夕日と着替え、山と湖を赤く染め始めていた…… -- 千歳 2020-07-10 (金) 01:09:48
  • 対岸の山の中に、遠くキャンプ場の灯の群れが見える。灯など全くないこちら側は焚火一つだけだ。
    その焚火で湯を沸かし、コーヒーを淹れる。ドリップパックとは思えない馥郁とした香りが立つ。

    「日も暮れてきたねー」
    「そうだな…」
    特に何をするわけでもなく、倒木のベンチに座って、夕暮れを眺める。
    どうみてもパリピな見た目してるくせに、ユーニスは騒ぐよりも
    2人でこうして過ごす方が好きらしい。

    「こっちはほんとに山の中って感じだ…」
    「まわりに誰も居ないとこだからねー。……ジェイソンとか出るかも」
    「おいやめろ」
    「あははっ今のりんちゃんっぽい!」 -- ユーニス 2020-07-10 (金) 01:28:49
  •   -- 2020-07-07 (火) 23:11:40

  • 真っ暗な山道を再びサイドカーが昇っていく。
    ヘッドライトが照らす前方の樹々と藪の中の砂利道以外、何も見えない。
    運転してるのはユーニスだ。
    「なぁ、ほんとに道あってるのか…?」
    「一本道だもん、迷わないよ」
    そう言われても、土地勘のない千歳には道と森の区別もつかず、
    闇の中を進んでいるようにしか見えない。 -- 2020-07-10 (金) 23:16:20
    • 先程ユーニスが収まっていたサイドカーに今は千歳が収まっている
      ただ座っているだけと言うのは返って落ち着かない
      しかも真っ暗な山道。
      バイクよりも低い視界はなんだかジェットコースターに乗ってる感覚になってくる
      「なぁ、この道……」
      「あってるってば、んふふ」
      千歳が再び問うとユーニスが笑った
      「な、なんだ?」
      「チトセも結構しゃべるなーって思って」
      「むぅ……」
      サイドカーに座ると人は口数が増える物なのかもしれない -- 千歳 2020-07-10 (金) 23:31:12
      • 「そろそろつくよー」
        ユーニスがそう言うと、目の前が急に開けた。森を抜けて月明りの差す丘を登っていく。
        真っ暗闇に慣れた目には、それだけでもまぶしかったが。
        やがて丘の頂上へたどり着くと、眼下に眩い光が地平線まで広がった。

        山腹にある峰の上から、街を一望できる場所に到着したのだ。
        「ふふっ、どうよ知ってる人もほとんどいない、めっちゃ穴場だよ。
        近くに道路もないからね。車じゃこれないし」
        急に明るくなったので、ユーニスのドヤ顔も良く見える。 -- ユーニス 2020-07-11 (土) 00:00:26
      • 「お、おお、これは……」
        言葉が続かない。この感動を表現する言葉が見つからない
        大地に光の海がある。光の一つ一つがサンアッシュクロスの賑わいの輝き
        「すごいな……」
        これがやっと千歳の口から出た言葉。
        詩人ならばここで詩の一つでも紡ぐのかもしれないが……
        生憎、千歳はそこまで洒落た言葉を紡げる語彙を持っていない

        「…私達のアパートはどっちかな?」
        この風景を見ていると、ユーニスのどや顔すら許せてしまう
        なにより、どや顔をしたくなるのも当然の光景だから -- 千歳 2020-07-11 (土) 00:18:41
      • 「海があっちの方だから―あの辺?真ん中らへんがカジノかな、よくわかんないや」
        適当に指さしてみるが、街灯もビルの灯も遠目には区別がつかない、みんな混ざり合って一つの光の海に溶けている。

        「あの灯、殆ど知らない人達の灯ばっかりなのに。遠くから見てるとなんでだろう
        妙に懐かしい感じがするんだよね。私達の家の灯も、あの中にあるからかな…」
        「うちの灯は消してるから、無いだろう」
        「あ、そっか」
        戸締りとガスと電気の消し忘れは、わざわざ戻って確認したので確実である。

        「でも、そうだな…。昔、留学が終わってアメリカから日本に帰る飛行機で。
        東京の灯が飛行機の窓から見えたとき、懐かしく見えたな。私の家は東京にないのに…」
        遠い街明かりは、記憶の中にある灯だからなのか。
        こんな夜景を見ていると、どうしても、気持ちが遠くに向いてしまうようで。
        チュッと、音がして、ユーニスが不意打ちみたくキスしてきた。 -- 2020-07-11 (土) 02:18:38
      • 「えっ?」と思うも口から言葉は出ない。
        口は唇で、ユーニスの唇で塞がれてしまったから
        ユーニスとは何度も唇を重ねているが、これは卑怯すぎる
        こんな状況でこんなキスをされたら、いつもの様に振り払う事なんで出来ない
        天には星の輝き、地には街の輝き。しかも二人きりの状況
        はっきり言ってロマンチックすぎる。

        いやまて?
        コイツにこんなロマンチックな事が出来るか?これはもしかたら夢なのかもしれない。
        考える考える。考えるが。口付けの熱は千歳の思考は蕩かし……
        思考が蕩け落ちる前に唇が離れ、千歳を現実へ返した

        「はぅ…いきなりなんなんだ……」
        ユーニスを睨みいつもの調子でも言うも、微妙に覇気が無い。 -- 千歳 2020-07-11 (土) 02:38:25
      • 「んー…ふふっどっか遠くみてたから。キスしてほしいのかなって」
        ユーニスの方は、いつもの調子でなんだかゆるーい笑顔で笑っていた。 -- ユーニス 2020-07-11 (土) 02:48:27
      • 「…なっ?」
        千歳の顔が一瞬で真っ赤になった。頭から湯気出そうな勢い
        台詞もそうだが、ユーニスの笑顔にトキメイてしまった自分が恥ずかしいから
        だからとりあえず……
        ユーニスを両手でポコポコと叩いてみた
        -- 千歳 2020-07-11 (土) 20:57:21
      • 「へへへー照れないでハグしてもいいんだぜー?」
        そういうとこもカワイイよマイスゥイートとかからかってたら、ポコポコが
        強めのチョップになって、ユーニスはオゥっと鳴いた。 -- ユーニス 2020-07-11 (土) 21:50:16
      • 「まったく…ふざけてないでそろそろ戻るぞ、ふぁ」
        拗ねる様に言うと、欠伸一つしてバイクの方へ歩き始めた
        しかし……

        「ちょっとまってー!」
        「わっ?」
        不意にユーニスが千歳の腕を掴んだ。
        いきなりだったので後ろに転びそうになったが、ユーニスがそのまま支えた

        「もう、なんだよ」
        頭をシャフ度に傾けながらユーニスを見れば
        大き目な胸の向こうで、なにやらニヤニヤとしていた
        これは何か悪だくみを思い付いた顔だ…… -- 千歳 2020-07-11 (土) 22:06:43

      • 「寝袋持ってきてたのか…」
        「山の上は冷えるからねー」
        野原にペア用寝袋を広げると、山を丸ごとベッドにしているようだ。
        「夜景は見えないな…」
        「でも、星空もキレーでしょー」
        空の真ん中に月がかかり、控えめな雲が月色に染まっている。
        街の明かりは遠く、星空が近い。 -- ユーニス 2020-07-11 (土) 22:23:10

      • 「手を伸ばせば届きそうだ……」
        ぼんやり呟くと千歳は星空に手を伸ばした
        暗闇の中に浮かび上がる白い腕
        その先にある手が何度か開いて閉じるを繰り返す
        「掴めそうで掴めないな……」
        見た目近そうでも、星は遥か彼方にある
        掴めるわけがない

        そこへもう一つの手が並んで伸びてきた
        ユーニスの手だ
        「空の星は無理だけど、別の星なら掴めるかもね?」
        「別の星?」
        千歳がユーニスの方を向くと
        同時に振り向いたユーニスがニッと笑った -- 千歳 2020-07-11 (土) 22:40:22
      • 「’’スター’’ね…なれるかな…」
        「なれるよ」
        「その前にまずステージに立てるようにならなきゃな…」
        「それも大丈夫だってー」
        「…お前は気楽だな」
        「なんでか知りたい?」
        そういうと、ユーニスは千歳の手を包むように握って。
        星空に手を伸ばしたまま、手をつなぐ。

        「チトセに出会ったからだよ。
        私の気持ちが分かる人なんか、きっと一生出会えない、親友なんてできないって思ってて。
        でもある日、なんの関わりもない、日本からきたチトセに偶然であって親友ができちゃった。
        奇跡ってちゃんとあるんだよ」
        相変わらずゆるい笑顔だけど、繋いだ手が熱くて。それは彼女の本心から伝わる熱で。 -- ユーニス 2020-07-11 (土) 23:17:35
      • 手が熱い
        熱は手から腕へ、そして体へと広がっていく様で……
        手を繋いでいるだけなのに、ユーニスと一つになって行く様な感覚

        「…奇跡か、そうだな…そうかm……」
        「チトセ?」
        言いかけた千歳の言葉が止まった。
        そして間を開けて、千歳がもぞりと動いた

        「抱き枕になってやる!こ、今夜だけだぞ?」
        言って、千歳がユーニスに身体を押し付けてきた
        「チトセ!」
        「夜は冷えるからな?風邪をひいたらバイトが出来ない」
        言った千歳の身体は妙に熱かった -- 千歳 2020-07-11 (土) 23:34:37
      • こんなとこ誰かに見られたら恥ずかしくて死にそうになるとこだが。
        今夜は2人だけの専用席で。

        静かな夜に寝袋にくるまっていちゃついていたら、寝落ちてしまい。
        空の白むころ、キャンプに戻り、2人して震えながら冴えないモーニングコーヒーを啜ることになった。
        風邪を引かなかったのは幸いだった。 -- 2020-07-11 (土) 23:52:30

10月2週 Edit

  • ロカーロ
    • ロカーロ住宅街
    • 街の映画館
  • 『READY PLAYER ONE 21:00〜上映中』
    乱入歓迎※乱入歓迎。多少メタが入ってもいいもね? -- 2020-07-03 (金) 21:02:26
  • はじまっちゃってるーいそがなきゃ -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:03:03
  • 4DXは無いのか…残念だな…おっともう始まってるのか!?
    (大きなコーラと抱える程のポップコーンを手に入って来る) -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:03:45
  • あ、キティちゃんが歩いていた…… -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:05:08
  • (レイトショー、かつ旧作上映なので自由席、お客の入りは遅い回にしてはそこそこ)
    ポップコーンちょうだいー -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:09:23
  • VR世界で宝さがしか…ん、どうぞ(食べやすいように二人の席の間にポッピコーンを置く) -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:10:52
  • (仕事上がりでそのままきたので、めっちゃもりもりポップコーンたべてる)
    金田バイクだー!こないだネトフリでみたやつ、あはは -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:13:23
  • 恐竜…キングコングだ?(人が少ないので多少の音は怒られない) -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:14:51
  • ソードフィッシュみっけ! -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:16:24
  • このおっさん親父に似てて嫌なんだよね… -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:19:18
  • ゲーム廃人家族…未来のゲームは怖いな -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:19:41
  • あははっちょうオタク部屋 -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:21:18
  • ………(ユーニスの言葉に思うところがあったらしい) -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:21:24
  • ん、ぽっぷこーん、キャラメルの方欲しいの?(はい、と差し出されるキャラメルコーンとナチョチーズのハーフ&ハーフ) -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:24:44
  • あ、うん、ありがとう(もきゅもきゅとキャラメルポップコーン食べる) -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:26:30
  • あのキャンディ私はひたすら時間かけて舐めるのに挑戦してべろひりひりしたことあるよ -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:33:54
  • こっちだとリアルであるんだ?そうか、海外映画でしか見る事の出来なかった食べ物も食べようと思えば食べる事が出来るのか
    これは意外な盲点 -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:36:03
  • こんどお菓子パーティーとかしようかへへっ -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:38:27
  • コンテニューできそうなコインきたねー -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:40:34
  • こっちのお菓子って極彩色だよな?ちょっと憧れてた(スクリーンを見ながら同意の頷き) -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:41:29
  • ん?そうなん?ふつーじゃない?(逆にアメリカ以外のお菓子を知らないやつ) -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:42:15
  • そうかこっちのゲームって一回25c多いよな(ふむふむ -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:42:33
  • 映画のこーゆーシーンさー、仕事場に見えちゃうの職業病だよねー -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:44:03
  • ほら、日本って食品の基準厳しいから(食品の着色料も制限がある) -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:44:36
  • あ、オーバウォッチのキャラが居た -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:45:53
  • …世知辛い職業病だな(遠い目) -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:46:25
  • (時々拍手や笑い声がはいるせいか、集中してみるというより、なんだかこの空間をゆったりと楽しめるような感じがする。
    空いているから、多少話していもて怒られることもない) -- 2020-07-03 (金) 21:50:01
  • チトセは、これ前に4DXでみたんだっけ? -- ユーニス
  • あ、私は初めてだ。4DX上映を見たかったのだけど…逃した -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:51:41
  • あれ、そだったんだ。私は4DXで見て酔ったよ。でた、なんかよくわかんない強制労働しせつ -- ユーニス 2020-07-03 (金) 21:54:25
  • うう…私も酔いたかった。リアルバレ怖い…… -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:56:27
  • ロボトロンはピクセルに出たな、あっちは4DXで見た -- 千歳 2020-07-03 (金) 21:58:47
  • 他の人までとばっちり過ぎてひどい… -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:01:42
  • ネットでリアル情報晒すのは危険と言う事だな、コワイ! -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:04:18
  • コワイ! -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:05:13
  • シャインング…ハリデーはデートでホラーを見たのか? -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:07:14
  • こないだ見たばっかだからめっちゃ見おぼえるねーオーバールックホテル! -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:07:38
  • あれは深夜に見る映画じゃない……(つい先日、一緒に深夜映画で見た) -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:11:27
  • ポップコーン食べ終わっててよかった -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:13:03
  • …VRでホラーだけはやりたくないな……(シクサーズの惨状を見ながら) -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:16:00
  • わたしは3Dのホラゲーの時点でいやー。延滞料と利息もいやー… -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:21:02
  • エイチは女の子だった…(本気で驚いてる顔)
    借金だけはしたくないな、特にこの街では -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:22:29
  • んふふ、知っててみてると、っぽいなーって感じはちょいちょいあるよね。
    センチピード、アダム・サンドラー呼んでくればかてるやつだ -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:26:26
  • 声を変えてるのも伏線だったのかな…? -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:28:30
  • 私もラップトップにパスワード貼るの止めた方がいいかな… -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:28:46
  • せめて本棚に隠すとかしよう -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:31:33
  • 尿漏れエクササイズ…ぶふっ -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:37:03
  • いえー!アイアンジャイアントー! -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:38:27
  • この社長ってやっぱりお茶目な人なのかもしれない -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:38:37
  • 少女趣味で尿漏れだけどね。 -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:44:37
  • 私…あんな呪文覚えられないよ -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:45:09
  • ひゃっほーやっぱデロリアンかっけー! -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:46:29
  • リアルとの対比がおもしろすぎる…… -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:48:36
  • メカゴジラだ!この曲知ってる! -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:49:13
  • チャイルドプレイも昔見てトラウマなった映画だなー…こんど一緒に見ようよ -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:49:38
  • ホラー…だよね?(ガクガクブルブル) -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:51:25
  • 一緒にトラウマ刻もうよ…やったメカゴジラだ! -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:52:06
  • あうあう。ガンダムかっこいい…今度アニメ見ようかな? -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:54:36
  • b -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:56:58
  • ターミネーター2で見たサインだ -- 千歳 2020-07-03 (金) 22:57:15
  • 聖なる手りゅう弾めっちゃ強いなぁー… -- ユーニス 2020-07-03 (金) 22:58:24
  • あ、この間遊技場のゲームで見た技だ(ストファイ) -- 千歳 2020-07-03 (金) 23:01:08
  • なるほどここで25セントコインが…そしてオタク班が楽しそう -- 千歳 2020-07-03 (金) 23:04:08
  • そしてバトルがゲームエリアからリアルに… -- ユーニス 2020-07-03 (金) 23:05:33
  • アメリカ映画の強い日本人…そしてゲーム終局 -- 千歳 2020-07-03 (金) 23:14:14
  • 男の子の部屋ってまじでこんなんなってるよね -- ユーニス 2020-07-03 (金) 23:14:40
  • 最後にちょっとホラー…… -- 千歳 2020-07-03 (金) 23:17:44
  • 終わったーうー……(大きく伸び) -- 千歳 2020-07-03 (金) 23:22:55
  • (スタッフロール流れ始めると大体退席する人が多い) -- 2020-07-03 (金) 23:26:23
  • おもしろかったねー。(ぬーんと伸び) -- ユーニス 2020-07-03 (金) 23:27:04
  • うん(頷きながら満足の笑み)小ネタ多いらしいし、もう一回見たくなるね -- 千歳 2020-07-03 (金) 23:28:14
  • 背景とかに一瞬だけでてくる有名キャラとかいっぱいいるらしーねー。
    私はゲーマーじゃないからあんまり知らないんだけど。(まぁ2人とも00年代生まれのZ世代ですし) -- ユーニス 2020-07-03 (金) 23:44:33
  • 私もガンダムとかメカゴジラ(ゴジラは日本式発音)とか有名のなら…キティちゃんは見つけた!
    主人公のあの車はバックトゥザフューチャーのでろりあん?なのはわかったかな?
    …そろそろ帰ろうか?その前に……(ちょっともじもじしてる。二時間半の映画ですからね) -- 千歳 2020-07-03 (金) 23:52:09
  • カウボーイビバップのソードフィッシュもあったよ、整備中のやつ。
    あ、そっか私も行きたいからはやくでよー(LLサイズなアメリカンLサイズのジュースも飲んでたので当然である)
    (そして二人は劇場の狭いトイレにできた人の列を前に、エレベーターから血の洪水してくるシーンを嫌でも思い出すことになる) -- ユーニス 2020-07-03 (金) 23:59:44

クリスマス Edit


  • 街がクリスマスムード一色になるのはアメリカも日本も同じわけだが。
    12月に入ってからのクリスマスっぷりは、もはや狂気にも近かった。
    街1個丸ごと商店街のようなモール内に巨大なツリーがそびえたち、クリスマスソングがエンドレスに流れ続ける。
    バルーンのサンタとトナカイがクリスマスライトの中に浮かんで、床までクリスマスカラーのポスターがびっしりだ。

    「あ、お菓子の家セットみっけ、こっちのキャンディー5個1ドルだって買っとこ!」
    ショッピングカートに、ぽいぽいお菓子を放り込んでいくユーニス。
    大型ショッピングモールの中は、クリスマスの買い物客でごった返している。 -- ユーニス 2020-07-13 (月) 21:54:41
    • 「これがジンジャーブレッドハウスのキット!一度作ってみたかったんだ!」
      ジンジャーブレッドハウスはヘクセンハウスとも言うキリスト教圏では定番の季節菓子
      クッキーで作った家にカラフルな菓子を飾り付けをして完成させる、まさにお菓子の家。
      千歳も書籍やネットの画像では見た事はあったが、実物を見るのは今日が初めて
      テンションが上がってしまうのは当然の話だ。

      「んふふ、チトセは、アドベントカレンダーも毎日開けてたもんね!」
      「う、うるさい」
      アドベントカレンダーは24の窓があるクリスマスカレンダー
      12月1日から毎日窓を開け。開けた中にはキャンディーやクリスマス飾り等が入っている
      そして24個目の窓が開いたその日が…クリスマスイブ! -- 千歳 2020-07-13 (月) 22:12:20
    • 「寝るときにちゃんと靴下も吊るしておくんだよーへっへっへ」
      クリスマススイーツの入ったブーツもカートに放り込む。
      さっきからお菓子ばっか買ってる。 -- ユーニス 2020-07-13 (月) 23:00:45
    • 「わ、私はそこまで子供じゃないぞ」
      言いながらジャンボマシュマロを放り込む。実は吊るすつもりだった千歳さん。
      他にもカラフルなグミやチョコブラウニー等、菓子類をカートに放り込んでいく。

      「しかし……」
      「チトセどうしたの?」
      「買ったはいいが、どうやって持って帰るか?」
      カートいっぱいに買い込んだ菓子類。
      袋詰めにしても二人で持つには手が足りない。

      「あ!あれ借りてくるー!」
      「あれって…オイ!?」
      工事現場から猫車を借りてきたユーニスであった -- 千歳 2020-07-13 (月) 23:21:37
    • 「へへへ、これでもっと買い物できるよ!」
      「カートゥーンみたいな絵面になってるぞ」
      猫車にクリスマスグッズを山盛りにしてはしゃぐユーニスをみて、家族連れの子供は
      あのおねーちゃんクレイジーだって笑ってた。 -- ユーニス 2020-07-13 (月) 23:31:56
    • 「はぁ、まぁいいか」
      「よーし!次はクリスマス飾り買うよー!」
      溜め息する千歳とおーっと腕を上げるユーニス
      クレイジーな光景ではあったが、今はクリスマスシーズン
      街中にはもっとクレイジーな連中が闊歩している
      猫車を押して買い物なんて可愛い方であった
      ………
      ……

      「あ、その、なんだ…荷物任せてもいいか?」
      一通りの買い物が終わった頃、千歳が急にそわそわし始めた
      「んーいいけどどうしたのー?」
      「ちょっと用事を思い出した!」
      なら仕方ないねーと走っていく千歳を見送ると
      ユーニスは猫車をカラカラ押したながらアパートへ戻って行った
      ちなみに猫車は後日ちゃんと返却しました -- 千歳 2020-07-13 (月) 23:47:28

    • 誰も彼もが浮かれて騒ぐホリデーシーズン。浮かれ騒ぐ人がいれば、彼らを騒がせるために
      働く人もいる。ちなみに千歳とユーニスは働く側。
      「ハッピーホリデー、楽しんでいってねー」
      今日何度目かわからないセリフと笑顔で、ユーニスと千歳はパーティー客に愛想を振りまく。

      「クリスマスでもやっぱりいつものビキニなんだな…」
      「そんなことないよ、ほら、サンタ仕様だよ?」
      クリスマスパーティーのファミリー向けじゃない奴は、街全体が金と歓楽で成り立つ
      サンアッシュクロスの名物の一つでもある。
      この時期、ホールスタッフの仕事には事欠かない。

      「っていうか、何でお前がとってくるバイトはこんなのばっかなんだ」
      「仕事があるだけありがたいんだよー」
      「それはそうだが…」
      ぼやきつつも、パーリナィする人々の間を器用にすり抜け、酒を運び、注文を取り
      セクハラをいなす。慣れたものだ。

      ちなみに、童顔低身長で、おまけに東洋系で美少女の千歳の受けがすごく良いらしく。
      ユーニスは、バイトの交渉をするとき、私を雇ってくれるならこの子もセットだよって言ってる。 -- ユーニス 2020-07-14 (火) 00:02:17

    • 「顔が笑顔で固まりそうだ」
      「チトセは笑顔が可愛いからいいじゃない、あう」
      肘で鳩尾打たれた。
      ………
      ……

      「…良く出来た像だな……」
      そしてまた別のパーリィ会場に来たのだが
      ステージ横に大剣を持った金の像が立っていた
      筋肉の質感と躍動感、まるで生きている様だ
      「あれは人間だよ」
      「マジか!?」
      「三時間くらい像として立つ仕事なんだって、時給いいらしいよ?」
      「…やらないぞ?」
      ユーニスがバニー像と言い出す前に念を押した -- 千歳 2020-07-14 (火) 00:18:07
    • ………
      ……

      「映画でみたことあるな、小さな子を抱いて一緒に写真撮ってくれるサンタ。実在するんだ」
      「うん、定番だね。日本だと居ないの?」
      「少なくとも、ビキニのトナカイ女を横に侍らせたサンタはな」
      ちなみに全米でもサンアッシュクロスならではである。
      付け髭に伊達眼鏡のサンタクロースの膝にのって、満面の笑みを浮かべるお坊ちゃんの
      左右で、セクシーなトナカイコスを着たユーニスと千歳も笑う。 -- ユーニス 2020-07-14 (火) 00:22:56
    • ………
      ……

      「世界は広いな」
      「そうだねー」
      死んだ目で笑顔を浮かべるユーニスと千歳
      先程のおぼっちゃまにも驚いたが、まだ可愛い方であった

      「HAHAHA!メリークリスマス!」
      高級ブランドなスーツにサングラスの男がTVカメラに向かって大きな笑い声をあげた
      男の左右にはサンタバニーが数十人づつ。ユーニスと千歳はその中の二人……

      「私もバニーをはべらせたい…チトセー」
      「こんな所で絡むな絡むな」
      なんか二人に特別手当が追加された -- 千歳 2020-07-14 (火) 00:38:01
    • ………
      ……


      そして赤い衣装から一転、真っ白なエプロンにヘアキャップ、マスクに手袋姿で
      白い照明に白い壁と床。鮮やかなのはベルトコンベアを流れてくる毛をむしられたターキーの血肉の色だけ。
      「……」
      「……」
      2人は黙々と、流れてくるターキーの胴体からもも肉を切り離す。
      そして背後のトレイを積んだかご車が満載になると、床に書かれたラインにそって
      大渋滞するハイウェイのごとくかご車が並ぶ広大なスペースへ運んでいく。
      「……」
      「……」
      そしてまた、黙々と作業を続けるのだ。
      大量消費社会のバカ騒ぎは無言の労働によって支えられていた。 -- ユーニス 2020-07-14 (火) 00:49:49

  • ――クリスマス当日深夜。(というか26日午前1時過ぎ)

    「ただいまー…」
    日本語で千歳がそういうと
    「オカエリー…」
    カタコトっぽい日本語でユーニスが言う。
    アメリカで帰宅時の特別な挨拶をする習慣はとくにないけど。
    千歳の習慣がユーニスにも移ったやつだ。

    「疲れた…」
    「疲れたねぇ…」
    ソファーに2人して身を投げ出す。イブもクリスマス当日もずっと仕事だった。
    特別にボーナスのでる仕事はみんなこの2日に集中してるから仕方ない。
    -- 2020-07-15 (水) 22:27:11

    • 「このままソファーと結婚してもいい……」
      「ダメー!チトセと結婚するのは私なのーなのー」
      「…乗るな…重い……」
      ユーニスが何やら言うも、転がってチトセに伸し掛かるも
      ツッコム気力も押しのける元気も湧かない状態。

      「……」
      「……」
      そして暫し無言
      ………
      ……

      「うおっ!?ちょっと寝そうになったぞ!?」
      「私もだ!?クリスマスが労働と睡眠で終わっちゃう!」 -- 千歳 2020-07-15 (水) 22:36:42
      • そんなのは悲しすぎる。2人は自らを奮い立たせ立ち上がる!
        「今日はクリスマス!」
        「時計チェック!クリスマスの25時過ぎ!」
        ユーニスが目覚まし時計を指さし確認。

        「ツリーと飾りの箱!」
        「ソファーとテーブルの配置よーし、そして暖炉もおっけー」
        ツリーの側にソファーとテーブルとテレビをユーニスが押してくる
        テレビのスイッチを入れると暖炉の映像がついた。ネットフリックスは暖炉も配信してて便利。

        「そしてプレゼントとお菓子のどっさり入った箱もおっけー…!」
        「山積みにしてあるとテンションあがるなー…よーしそれじゃあ…」
        「「飾ろう!」」 -- 2020-07-15 (水) 22:49:29
      • 飾ろう飾ろう飾る事になった。
        どこにそんな体力残っていたのかここからが速い!

        「ツリー飾るよー!」
        「飾るぞー!」
        どんな部屋でもクリスマスツリーがあればクリスマスっぽくなる
        だからクリスマスツリーの飾り付けは最優先事項!

        金銀の玉に天使、小さなサンタとトナカイ。
        千歳が毎日開けたアドベントカレンダーから出て来た鈴や妖精も飾る

        「サンタがサーフィンしてる…?」
        「南半球のサンタクロースはサーフボードに乗ってやってくるんだってさー」
        へー?と感心しつつサーフィンサンタクロースを飾り
        綿で作った雪を盛り、赤や青に輝くモールを飾る
        「モールは壁にも飾りたいな……」
        「ナイスアイデーア!」
        壁にも飾る事になったそして……

        「最後は任せたぞ!」
        「任せられた!とぉ!」
        ツリーの天頂に金の星が輝いた。クリスマス飾り最大の見せ場大きなお星さまだ! -- 千歳 2020-07-15 (水) 23:07:23
      • 「そしてーライトオン!」
        2人のアパートの部屋の窓がぱっと輝いた。
        普段の倍は明るい。いやきっと10倍は明るい。
        古くて電灯をつけるアタッチメントすらないようなボロアパートが光に満ちて輝いている。

        「おおー…」
        「めっちゃクリスマスだー…」
        2人とももっとド派手で煌びやかなパーティ会場は、うんざりするほど見てきたが。
        自分たちのためのパーティ会場はここだけだ。
        しばし見惚れる2人、ユーニスは千歳のあたまにサンタ帽子をのせて、自分も帽子をかぶった。

        「えーと、これが…ここ?パーツの違いがわかんないよ」
        「それは壁だ、屋根はこっちのパーツ、うんパッケージ通りってほどじゃないけど
        結構いい感じだ」
        「でもちょっと寂しいなー…ペンギンさんも追加だ」
        追加されるなんか見たことあるようなペンギンの4人組…。ペンギンズのクリスマスの砂糖菓子だ。
        「あれ、そんなのセットに入ってたっけ…」
        「へへーお菓子は一杯かったからねー。よーし隊長、ジンジャーブレッドハウスを占拠するんだ」
        砂糖のペンギンズをあやつって遊び始めたぞこいつ。 -- ユーニス 2020-07-15 (水) 23:54:48
      • 「いかん!このままでは砦が落ちてしまう!」
        慌てて戦力になりそうな者達を捜す千歳。
        そして見つけたのが……
        「行けヒーロー軍団!」
        「おおっ、ヒーロー軍団登場!」
        ずらりと並ぶ、スーパーマンにバットマンなぜかジョーカーもいる
        千歳が並べたのはアメコミヒーローのグミであった
        買ったのは当然ユーニス
        ともあれ千歳もノリノリであった。
        きっと人形遊びが好きな子だったのでしょう
        ………
        ……

        二転三転の展開の後、ペンギンズとヒーロー達は協力しゴジラ(クッキー)に立ち向かっていた
        「いやーつい遊んじゃうねー」
        「楽しすぎる…でも、そろそろ準備の続きをしないとな?」
        「あ、お菓子だけじゃなくケーキと七面鳥も出さないと!」
        つい遊んでしまったが準備は途中。このままだと本当にクリスマスが終わってしまう -- 千歳 2020-07-16 (木) 00:21:24
      • 「クリスマスと言えば御馳走だもんねー。
        …でも、ほんとに日本だとフライドチキンとケーキなの?」
        千歳がケンタッキーとケーキとワインが日本式のクリスマスの御馳走だって話したら。
        ケーキはまだわかるけど、KFCは無いわーってユーニスに言われたので、
        チキンのポジションには七面鳥が収まった。
        スーパーのセールで買ったローストターキーなので、あまり差があるとは思えないが。
        っていうか、全身胸肉みたいにパサパサしたターキーをなぜアメリカ人はやけにありがたがるのか。 -- ユーニス 2020-07-16 (木) 00:36:40
      • 「アメリカのクリスマスだ……」
        灯を落とした部屋の中央
        普段使い慣れたテーブルがクリスマスの輝きに満ちていた
        テーブル中央に鎮座するターキーとクリスマスケーキ
        その周囲を飾るカラフルな菓子類。
        そして、それらをクリスマスキャンドルが照らし出す。
        まさにアメリカのクリスマスがテーブル上に出現していた

        「アメリカだからね!ウェルカムトゥアメリカ!メリークリスマス!」
        「あ!メリークリスマス」
        二人の声と同時にクラッカーが鳴り弾け、カラフルな紙テープが宙を舞う
        ※キャンドルの炎は避けました -- 千歳 2020-07-16 (木) 01:00:00
      • 「エッグノックでかんぱーい」
        「かんぱーい」
        カクテルグラスにシェイカーからエッグノックを注ぐ
        「飲むのは初めてだ、これが噂のエッグノックか…」
        この時期、お店でもよくみたし、アメリカの伝統的なクリスマスドリンクってことは
        千歳も知ってる。
        「これが伝統の味ってやつなんだな、歴史を感じる」
        牛乳、生クリーム、卵、砂糖、そしてバーボンのカクテル、シナモンとバニラエッセンスも
        入って甘いキャラメルラテのように飲みやすい。
        「うん、初めて飲んだけど結構いいじゃん、作った私の腕もいいのかな」
        「えっ…。これ、ユーニスんちのレシピとかじゃないの」
        「クックグランマのレシピだよ」
        ラップトップに表示される、有名なおばあちゃん料理ブロガーの動画。
        「まぁいいか…」
        「はーっもっとバーボン利かせてもいいかなー!」
        ………
        ……

        深夜まで働いて腹ペコだった2人、カロリーも糖質も気にせずにお腹いっぱい御馳走
        をたべても、まだまだお菓子もケーキも残っている。
        テレビには、ナイトメア・ビフォアー・クリスマスが流れている。
        ホリデーシーズン名物のクリスマス映画エンドレス特集ってやつだ。
        「はいこれ、千歳にメリークリスマース!」
        手渡されるでっかいプレゼント箱、上にはクリスマスカードも添えてある。 -- ユーニス 2020-07-16 (木) 01:30:06
      • 「あ、ありがとう?大きいな……」
        プレゼントを受け取りながら、千歳は目を伏せた
        何か迷っている様にも見えるが……

        「チトセどうしたの?」
        「うう…私からもあるのだが……」
        言って千歳は机の下から10cm四方ほどの小箱を取り出した
        赤いリボンにピンクの包み。ユーニスと同じにカードも添えられている。 -- 千歳 2020-07-16 (木) 01:52:11
      • 「ありがとうチトセー!」
        嬉しそうにユーニスは千歳にハグをしてプレゼントを受け取る。
        プレゼントの大きさなんて問題じゃない。こうして送り合う心が大事なのだ。クリスマスだし?
        「えーと、なになに、’’いつも私を助けてくれてありがとう、最高の友達ユーニスへ’’
        えっへへー、どういたしましてチトセー」
        「声に出して読むなよ!恥ずかしいな…」
        千歳のクリスマスカードをツリーに飾るユーニス。千歳がユーニスのクリスマスカードを開くと
        めちゃめちゃ長文でなんかラブレターみたいなことが書きつらねてあった。
        「さあさ、プレゼント開けてみて、きっと喜ぶと思うよ」 -- ユーニス 2020-07-16 (木) 02:07:12
      • 「あ、ああ……」
        あまりに情熱的な文面に思わずぼぉっとなってしまったが
        コイツ(ユーニス)が書いた文章なんだぞと振り払う

        一先ず、促されるままリボンを解き包装を解いてみる。
        微妙な既視感。こんなサイズの箱をどこかで…と思っていたら
        「これは…炊飯器じゃないか!しかも日本製!」
        日本製の全自動炊飯器だ。勿論アメリカ仕様だから電源は対応してる -- 千歳 2020-07-16 (木) 02:20:41
      • 「ふふん、日本のライスには専用の調理器具が必要なんでしょ。
        チトセはよく日本のライスが食べたいって言ってるから、どう?これで食べ放題だよ」
        しかも、硬水を軟水に変える浄水器がセットでついている。 -- ユーニス 2020-07-16 (木) 02:29:26
      • 「もう…おまえと言う奴は……」
        ユーニスはこの間のキャンプでの事を覚えていてくれたのだろう
        それを考えると嬉しさやら恥ずかしさやらがごちゃ混ぜになり
        顔が熱くなってしまう

        「…あ、私のも開けていいぞ……」
        顔を見られたくないと、伏せたままユーニスに促した

        ユーニスがリボンと包みを解いたのなら
        中から出てくるのは、この街でも有名な貴金属店のロゴの入った小箱
        そして小箱を開き出てくるのは……

        「小粒だが…相手との絆を深めてくれるパワーストーンらしいぞ」
        細かな紋様の入った指輪。その中央には小粒の宝石が埋め込まれていた -- 千歳 2020-07-16 (木) 02:42:56
      • 「おおう、これは…」
        小箱を開けたユーニスは、なんだか驚いたように指輪を見つめる。
        嬉しかったらすぐに抱き着いてくるようなやつなので、なにか気に入らなかったのか
        ちょっと心配になって、千歳がどうした?って聞くと。
        「ねえチトセ、さっきのライスクッカー開けてみてよ」
        「ん?今か?」
        不思議におもいつつ、千歳が言われた通りにしてみると。
        炊飯器の釜の中に、千歳がユーニスにプレゼントしたのと同じ小箱が。
        「実はサプライズでもう1個プレゼント用意してたんだ」 -- ユーニス 2020-07-16 (木) 02:52:58
      • 「この箱…?」
        箱を見た瞬間、不思議な感覚が過った。予感にも似た不思議な感覚
        僅かに視線を上げユーニスの方を見れば、早く早くとでも言う様に尻尾を振っている様に見えた
        だから千歳は思い切って小箱の蓋を開けてみる、すると……

        「指輪だ…これ……」
        千歳がユーニスに贈った物と全く同じ指輪が入っていた
        なんと言う偶然なのだろう。同じ物を贈りあってしまうなんて
        しかしこれはこれで良い思い出になる。

        「ユーニスありがとう、贈り物が重なるなんて偶然あるんだな。サプライズすぎるよ……」
        喜び混じりの苦笑を浮かべ礼を告げる千歳だが…… -- 千歳 2020-07-16 (木) 03:04:57
      • 「んふふっんふんふふ…」
        「な、なんだよいつにもましてにやけ面して…」
        おまけにサンタ帽子まで被ってて最高にアホっぽい、不意に千歳の手を取ると。
        「えへへ、つけてあげるよー」
        そして有無を言わさず、左手の薬指に指輪はめる奴。もちろん自分もしっかりはめてるので。
        「結婚指輪!!」 -- ユーニス 2020-07-17 (金) 00:54:26
      • 「あ?ありがとう」
        映画やドラマでこんなシーン見た事あるなと思いつつ付けてもらうのだが……
        続くユーニスの言葉で目が<●><●>こんな風になった

        「マテ?なぜ結婚指輪?これは親愛の証で……」
        「あれ?あれれ?チトセもそう言うつもりで私にくれたんじゃないのー?」
        そう言うつもりってどう言う意味なのだろうか?
        何かおかしい。微妙に話が噛み合っていない気がする

        「だから私はお店の人に相談したら……」
        「私もお店の人に相談したよ?」
        「…いつも世話になってるパートナー(相棒)みたいな友人に贈る指輪って」
        「一緒に暮らしてるパートナに贈る指輪って」

        この瞬間千歳は思った、英語って難しい…と -- 千歳 2020-07-17 (金) 01:15:58
      • 「ああ、もしかして2ブロック先の宝石店かな。
        あそこ小さいけど結構雰囲気いいよねー、へへへ。黒髪でおさげが似合う
        背は低いんだけど実はちゃんと大人な感じの、カワイイ女の子に送る最高に特別な指輪が
        欲しいんだよねってーって相談したら、これをくれたってわけよー」
        プロの人すごいねーって無邪気に笑いながら、指輪をつけた手のひらをくっつけ合わせる。 -- ユーニス 2020-07-17 (金) 01:47:09
      • 「……まったく」
        千歳はユーニスと手を合わせながら顔を赤く染めていた
        ユーニスの説明はどの角度から誰が聞いても恋人の事を語ってる風にしか聞こえない
        しかも当人の前で話す様な内容では無い。褒め過ぎで恥ずかし過ぎる。

        先程のクリスマスカードもそうだったが
        なぜこんなにも情熱的な言葉がスラスラと出てくるのだろう
        この情熱的な言葉を店の人に話したのならそう思われるのは当然の事
        そして、時系列的に千歳が店に行ったのはユーニスの後なのは確実
        流れ的に勘違いされるのは当然の事。

        「二人の結婚指輪だよ!贈り合ったのがクリスマスなんてAwsome(サイコー)!」
        「はぁ……」
        千歳は溜め息一つすると合わせた手を離し、薬指に嵌った指輪を外し始めた

        ユーニスの事は好きだし、特別な存在と思ってはいる
        しかし、結婚指輪を嵌め自己主張するにはまだ迷いがある
        この好きが「LIKE」なのか「LOVE」なのか。今の自分にはわからない
        そんな曖昧な気持ちのまま指輪を付け続けるのはユーニスに悪い気がするし……
        …何より恥ずかしい…… -- 千歳 2020-07-17 (金) 02:14:05
      • 「外しちゃうのー?」
        「か、勘違いされたら困るだろ、って重い」
        顎を乗っけておねだりする犬みたく、肩に顎を乗せてくるユーニス。
        「ぬーん…」
        で、いつも持ち歩いてれば文句ないだろって、キーチェーンに通す
        「ああ、これだとポケットの中で傷ついちゃうかな…ユーニス?」
        ユーニスは、後ろから手を回してキーチェーンをとると、ネックレスみたく
        首元にかかげて。
        「こっちの方がいいよ」
        おさげ髪を指先で背中へ流してやると、クリスマスライトに照らされて指輪が輝いた。
        -- ユーニス 2020-07-17 (金) 22:16:40
      • 「…いいな」
        胸元で輝く指輪を見れば千歳は短く答え頷いた
        「コレ(指輪)のお陰で命助かったら、私の事感謝してねー?」
        「どういう状況だよ?って…?何してる?」
        一言多いユーニスに苦笑するも。見ればユーニスも自分の指輪を外していた

        「うん、千歳がその気になった時、私ももう一度指輪を嵌めるよ」
        「そうか……、なら私が首にかけてやる」
        千歳と同じキーチェーンに通した指輪を、ユーニスの首から胸元へ
        金の髪を後ろへふわりと払えば、もう一つの輝きが生まれた -- 千歳 2020-07-17 (金) 22:39:47
      • 「へへぇーありがとうチトセ」
        そして千歳の手を取ると、引っ張って立ち上がり。
        「ねえ、踊ろうよ!」 -- 2020-07-17 (金) 23:41:45
      • 「踊るって、こんな時間にか?」
        「こんな時間だからだよ」
        言ってユーニスがステップを踏めば千歳も合わせステップを踏む
        TVからはいい感じの曲が流れ始め、そのまま踊れと言わんばかりだ

        「うんうん、やっぱりチトセは踊りの才があるねー」
        「褒めてもこれ以上何も出ないぞ?」
        ユーニスが腰を支えれば、千歳は後ろに身を反らす
        そして手を引かれ一気に起き上がり、そのまま顔と顔が近づく
        熱を帯び潤んだ瞳で千歳を見詰めるユーニス
        もし観客が居たのなら、二人の情熱的なダンスに拍手が起きていた事だろう -- 千歳 2020-07-18 (土) 00:00:53
      • そのまま唇が近づきそうになって…。
        「酒くさいな…エッグノックにバーボン入れすぎじゃないのか」
        「へへーチトセも顔真っ赤だよ」
        離れようとする千歳を引き寄せる
        「もう一曲踊ろう!」
        「まだやるのか!?」
        「朝までねー!」
        「ええっ」
        「クリスマスだもん!」

        すでに午前3時を過ぎているが、まぁいいだろう。夜明けまではまだ時間がある。
        そして、眠らない犯罪の街も、この日ばかりは静かだった。
        一つだけ明るく灯った窓に2人の影が踊った。

        -- 2020-07-18 (土) 01:23:15
  • EXストーリー
    話はクリスマスの買い物中に遡る……
    ………
    ……

    「あ、その、なんだ…荷物任せてもいいか?」
    一通りの買い物が終わった頃、千歳が急にそわそわし始めた
    「んーいいけどどうしたのー?」
    「ちょっと用事を思い出した!」
    なら仕方ないねーと走っていく千歳を見送ると
    ユーニスは猫車をカラカラ押したながらアパートへ戻って行った


    ユーニスと別れた後、千歳はそのまま通りを駆けていく
    クリスマス色の通りは人通り多く、走るのに困難だが
    「Oh!」
    「失礼しました!」
    「Ouch!」
    「ああ?すみません!」
    千歳は細かな動きと日本式混雑割りチョップで通り抜けていく


    「はぁふぅ…着いた……」
    通りを一ブロック程走りやって来たのはいかつい黒服が扉を守る店の前。
    薄いピンクの外装、ガラス扉の向こうを見れば買い物する少女達で賑わっているのが見える
    「やっぱり混んでるな…でも!」
    意を決すると息を整え、黒服達にペコリとお辞儀し店内へ……
    ………
    ……

    「ど、どれを選べばいいんだ」
    千歳がガラスケースと睨めっこをはじめ10分程が経過していた
    千歳を悩ませているのはキラキラと輝く指輪達
    ユーニスへのクリスマスプレゼント候補
    二人で迎える初めてのクリスマス。思い出に残る物をと悩み悩んで
    指輪にしよう!と決めたまでは良かったが……
    店に来てさらに悩む事になるのは完全に想定外だった。
    とりあえず予算の範囲で候補は絞り込めたが……

    「お客様、お悩みですか?」
    「わぁ?あ、はい悩んでます!」
    千歳に話し掛けて来てのは千歳より頭二つ分ほど背の高いブルネットの女性
    この店の店員さんだ。

    「この時期に店にくる子はみんな悩みを抱えています!でどんな相手に?」
    「相手…あー実は……」
    プレゼントとも言って無いのに察する辺り、流石はプロ!
    ………
    ……

    「…もうパートナーみたいなものかな?迷惑もかけられるけど、やっぱり世話になってるし……」
    「ほおほお?ん?ああ…なるほど!」
    「どうかしたのか?」
    「いえいえなんでもありません、では…この指輪はどうでしょうか」
    言って店員が取り出したのは中央に小粒の石が嵌った指輪
    石の左右には細かな紋様が天使の羽の様に広がり刻まれている
    直前の反応が気になったが、千歳は一目でそれを気に入った
    これならアイツ(ユーニス)も喜んでくれるかもしれない。

    「ふふっ、お気に召した様でなによりです!」
    「良い物が見つかったよ、ありがとう」
    「いえいえ、ではメリークリスマス」
    「貴女もメリークリスマス!」
    千歳は包装された小箱を受け取ると小走りに店を出て行った
    それを見送る店員の笑顔。
    「きっと良いクリスマスになりますよ、ふふ」
    -- 千歳 2020-07-18 (土) 21:57:53
    • ………
      ……

      千歳とユーニスがクリスマスの買い物をした日の朝の事だ。
      ホリデーシーズンとは言え、開店直後の店内に客は少ない。

      「はぁい、パートナーに送るプレゼントの指輪を探してるんだけどちょっといい?」
      ユーニスは暇そうだったブルネットの店員をつかまえて、サイズがこれで
      予算がこのぐらいでーとあれこれ話ながら、いろいろ良さそうな指輪を見せてもらう。
      「それでねぇ、身長がこのぐらいでさー。ちっちゃいでしょ、んでアジア系って顔が老けないから、
      人生の一番カワイイ時代で成長とめてるみたいな子でさ。まぁ本人子ども扱いすると
      怒るから言わないんだけどね、あとまぁ私もロリコンじゃないし。マジ天使みたいって話?」
      「はぁ」
      聞いてもないのに、送る相手の話をたっぷり聞かされて、店員さんも困ってる。

      「一人でアメリカ渡ってきちゃうぐらい、しっかりしてるから、他の10代の子みたくあんまり
      チャラチャラしてないっていうかー、かなり大人っぽいんだよね。見た目より全然。
      髪型とかも大体いつも同じにしてるし、このぐらいのおさげね。全然飾ってないでしょー
      でも、お手入れとかいいから、めっちゃつやつやだし、手抜きっていうか完全にこのスタイルが
      自然体に決まってるって奴だよね。だから指輪も特別な感じはだしたいけど、普段の彼女の
      イメージにも合うようなさー…」
      「はぁ…」
      写真まで出されて店員は困り果てた。
      そしてユーニスは結局たまたま目に入った指輪を買って、プレゼント用に包んでもらった。
      「あ、ラッピングはサービスってこの指輪でも大丈夫?」
      「大丈夫ですよ」
      「やった、サンキュー!おねーさんも良いクリスマスをねー」
      意気揚々と店を出るユーニスを見送った…数時間後。
      店員さんは、買い物客に埋もれるようにしてショーケースを覗いていた千歳を見つけて
      何か察したような笑みで一人頷き声をかけたのだった。
      「お客様、お悩みですか?」 -- ユーニス 2020-07-19 (日) 00:09:27

バレンタイン Edit

  • バレンタインと言えば…ナイトプール!
    歓楽の街サンアッシュクロスでは、大体毎日どこかでお祭り騒ぎをしているものだ。
    この超巨大屋内型プールも、バレンタインナイトと称してパーティ会場と化している。

    高さ10m以上のウォータースクリーンにプロジェクションマッピングで光とダンスミュージックの
    イリュージョンが行われ、大音響のショーの合間にスポンサー企業の広告がはいる。
    照明を落とした会場内はイルミネーションに彩られ、プールも光る泉のように輝いている。
    底に照明があるのだ。

    光るプールへめがけて、ライトアップされた岩山から光の飛沫をあげて、巨大なウォーター
    スライダーを滑り降りてくる人々、見上げれば温室みたいなドーム状のガラス天井にうつる夜空に
    花火があがって煌いた。

    「…で……」
    そして水上DJブースの大音量と歓声をあげて踊る人々の喧騒で、ユーニスの声が全然きこえない。
    浮き輪に嵌ってぷかぷかと漂うすがたは、お風呂のアヒル人形みたいだ。 -- 2020-07-21 (火) 22:03:21
    • ユーニスの浮き輪に掴まりながら千歳はぽかーんとした表情を浮かべていた。
      プールがダンスホールの様だ。光と音のシャワーが全身に降り注ぐ
      「おお…え?なに……った…?(何か言ったか?)」
      そんな大音量と歓声の中、ユーニスの声が聞こえた様な気がして振り向くが
      ユーニスはアヒルの雛の様に口をパクパクするばかりで、その声を聞き取る事が出来ない

      「…こ……い(聞こえない)」
      多分、この状況では千歳の声もユーニスの方へは届いていないだろう。
      だから千歳はユーニスの方にずいっと耳を近づけて見るが……

      「ぱくっ」
      「ひゃん!?」
      耳を食べられた。千歳のロリボイスな嬌声に周囲の注目が集まり
      真っ赤になりつつ、慌ててユーニスの浮き輪を押しプールの隅へ移動した

      「なんなんだよ。あ、ここなら聞こえるな?」 -- 千歳 2020-07-21 (火) 22:24:50
      • 「いい声してたねーチトセ」
        「うるさい」
        あごをつつーと撫でようとしてきたので、ペシッと手を叩いた。
        「やーそれにしても、思ったんより派手派手なとこだったねー、恋人達のための夜なんて書いてあったのに」
        普段から、ド派手なパーティ会場でスタッフをしてる彼女らにそういわせるほどに、ド派手なパーリナィであった。
        「来るんじゃなかったなー私こういうとこ嫌いだわー、オフの日まで頭の中パーティと酒とハッパでいっぱい
        そうな連中に付き合うことなかったなー」
        「ここに誘ったのお前だろ」
        浮き輪にはまって、ゆるーい笑顔のまま強烈に目の前の人々をディスるユーニスに、思わず突っ込む千歳。
        「私の趣味じゃないけど、ここ、大人気の’’映える’’スポットらしーし?
        パーティに仕事抜きで参加できたら、千歳が喜ぶかなーって」 -- ユーニス 2020-07-21 (火) 22:39:05

      • 「趣味じゃないのか…ならココを……」
        千歳は暫し考えた後、場を楽しむ人々をグルリと見渡すと
        「コイツらより、私のために…私と一緒に楽しむための場所にしよう」
        それならいいだろう?とユーニスの鼻を突いた

        「よし!映えるならまずは一枚!」
        言って千歳は防水ケースに入ったスマホのシャッターを押した
        「あ?あー!あー今の顔を撮ったの!?」
        「撮ったぞ。シャンとしないとこの顔が本日最初のメモリに残るぞ」
        千歳はニッと笑うと撮影した画像をユーニスに見せながら
        後ろ泳ぎにユーニスから離れた -- 千歳 2020-07-21 (火) 22:58:19
      • 「ああもう待ってよー!」
        お尻が浮き輪にハマってもがくユーニス、ひっくり返って光る飛沫をあげた。
        千歳が、ひっくり返った浮き輪をみていると、背後に急浮上してくる人影が!
        「ばー!捕まえた!」
        後ろから千歳に抱き着くユーニス。こいつ泳ぎはかなり達者である。 -- ユーニス 2020-07-21 (火) 23:04:57
      • 「おまえ泳げたのか…って、こんな所で胸触るな!」
        「捕まえたらする事は一つだよー、それにさー」
        今度はユーニスがぐるりと周囲を見渡したので
        それに合わせ千歳も見渡してみるのだが

        ユーニスと千歳以上にイチャイチャしてるカップルがそこかしこに見える
        しかも同性率が高いぞ
        「…帰ろうかな」
        「帰さないよー、私をその気にさせた分は遊ぶよ!」
        -- 千歳 2020-07-21 (火) 23:24:57
      • それから二人は全力で光る飛沫と喧騒のパーティ会場を満喫した。
        騒がしいDJブースは、ユーニスの趣味じゃないから肩をすくめてスルー。
        ウォータースライダーの光る水のトンネル潜り抜けて、飛び込んだのは光と水と音楽が織りなす幻想の世界。

        水上の巨大トランポリンの上で弾めば、七色のライトが、2人とともに立ち上がる飛沫を彩る。
        天井の近くまで飛び上がった瞬間に、夜空に花火が開いた。
        光るリングの中を落下して、深く真っ暗な飛び込みプールの底へ沈んでいく。
        ユーニスと千歳は、隣に浮かぶ相手の手を取って握った。水底に眩い光がまきおこる。
        水中の深い竪穴は、渦を巻くイルミネーションに彩られ、壁面に光を引き連れて
        イルカ達の群れが昇って来た。
        向かい合って、両手を繋いだ2人を、激しい上昇流が押し上げて、輝くクジラの潮吹きにのって
        再び2人は水面に飛び出した。

        光り輝く川のような流れるプールで、浮き輪にのって流れていくと、
        さっきの自分たちと同じように、光る飛沫に彩られて空を飛ぶ人々を見上げた。
        水中で人が重力から開放されるように、巨大な屋内プール全体が光と歓声と音に彩られた
        魔法にかけられた空間となっていた。

        「次はどこいこうか!」
        最初は、こんなとこなんて文句いってたユーニスだけど、すごく楽しそうで -- ユーニス 2020-07-21 (火) 23:47:42

      • かなり遊んだつもりだが、行って無い場所はまだまだある
        どんどん遊ばないと夜が明けてしまう
        「そうだな次はどこがいいかな、ふふっ」
        「チトセー何ニヤニヤしてるのー?」
        「なんでもない」

        なんだよ?なんでもないを数度繰り返すうち
        ユーニスの視線が一点で止まった
        「あそこにしよう!」
        ………
        ……

        海賊帽を被った青白いガイコツが
        二人の周囲を回りながら不気味に囁きかける
        「ここは戦いに敗れた海賊の行きつく奈落!
        お前達が手にするのは財宝か?それとも死か?ワーハッハッハ」
        「財宝欲しいー!」
        「あわわ……」
        海賊の言葉にテンション上げるユーニス
        そしててユーニスに抱き付きながらチワワの様に震えている千歳

        二人はボートに乗りながら闇と青の空間を進んでいた
        ここは海賊をテーマにしたアトラクション。いわゆるお化け屋敷
        色彩あふれた先程までの世界から一変、ここには闇と青白い光しかない
        最初こそ、星の洞窟の様であったが
        奥へ進むほど不気味さは増し、先の方からは悲鳴まで聞こえてくる

        「うう…戻りたい……」
        「戻れないよー、ぬふふ」
        おびえるチトセ可愛いなぁーと思いつつ
        抱き付かれるままにしてるユーニスでありました -- 千歳 2020-07-22 (水) 00:17:19
      • 「なんでナイトプールでお化け屋敷なんだ!」
        おまけに、日本でいうとこの体感型リアル脱出ゲーム式のアトラクションだったもんで
        出口につくまでたっぷりと臨場感あふれる恐怖をあじあわされてしまった。

        おんぼろ軍艦に乗って登場した筋肉隆々の大男を蹴飛ばして、ぶかぶかな海賊帽子が
        トレードマークの幼女海賊が登場した時は、千歳もまわりの客たちも、可愛らしさに思わず
        ふふっってなったけど、この幼女キャプテン、泣く子も本気でドン引きレベルの悪党だったもので
        アトラクションの終盤、艦ごと爆発して海の藻屑になった時は、千歳もユーニスも心の底から
        拍手喝采を送ったのだった。
        -- 2020-07-22 (水) 00:34:31

      • 「あ、金貨?これが財宝なのか?」
        「金貨ぁ!…なーんだ、これカジノコインだよ」
        最後の爆発でキラキラとした物が降り注ぎ
        何かと拾い上げれば、カジノコインに日付を彫り込んだ記念メダルでした
        ………
        ……

        「よっ!」
        「わぁ、チトセ急にどうしたの?」
        次はどこに行く?と歩き始めたところで千歳が急に脚を上げた

        「さっきの海賊の動き…思ったより難しいな?」
        「あー、海賊ダンス凄かったねー」
        「凄いなんてもんじゃないよ」
        千歳が説明するに。海賊達が踊ったステージはロープで繋いだだけの不安定な足場
        固定された足場だと水中に落ちた場合、顔を出せず窒息する可能性がある
        だから固定しない足場で踊る事になるのだが……

        「あんなところで踊るなんて、どれだけ体幹鍛えてるんだよ…まったく」
        「急に怒ってどうしたの?」
        「ああ、この街の底の知れなさを思い知った気がしただけさ」 -- 千歳 2020-07-22 (水) 01:05:25
      • 「んー、さっきのやつって…こう、こんな!だよね?」
        千歳がマネをしようとして、四苦八苦していた踊りを、ユーニスが簡単にやってみせた。
        「お前…できるんだな…あれ」
        「うん、だって、一緒に毎日トレーニングしてるじゃん?」
        一緒に暮らして、毎日同じように仕事をこなして、筋トレもダンスレッスンもやってる
        でもやっぱり、生まれついての身体能力の差というのはあるもので、それは別の言葉でいえば
        才能ってやつなわけで。

        「…」
        自分が精一杯努力しても手が届かないものを、この何も考えてない駄犬みたいな表情で
        毎日を生きてる同居人は当たり前みたくもってる、身長や容姿、そして天性のしなやかな筋力等々
        「どしたん、チトセ」
        「なんでもないよ」
        -- ユーニス 2020-07-22 (水) 01:19:55
      • 「チトセー……」
        「なんでもないってば」
        もやもやする。落ち着かないと
        とりあえずなんでもいいから、気持ちをすっきりさせないと

        「チト……」
        「いいから次はアレに行こう」
        「アレ?アレ!?いいの?」
        千歳が適当に指さした『アレ』を見て驚くユーニス
        この後千歳は自分の行動を後悔した
        ………
        ……

        「ひゃっはー!」
        「くぁwせdrftgyふじこlp」
        夜空に上がったハートが高速で落下して行く
        そして水面スレスレで止まると七色の水飛沫が舞い散り
        背景のスクリーンでイルカと天使がダンスを舞う

        二人が乗ったのはバレンタイン限定アトラクション「ラブジャンパー!」
        二人乗りのハートが高く上がって落下する
        シンプルながらもスリリングなアトラクション
        ラブの名の通り
        カップル限定で仲良くキャーキャー言ってもらうのが趣旨 -- 千歳 2020-07-22 (水) 01:50:34
      • 「あっはっは!今の面白かったねー!」
        「絶叫アトラクションの本気度が高すぎる…!ラブ要素はいったいなんなんだ…」
        「ねっもっかい乗ろうよ!」
        「ええっ!?」 -- ユーニス 2020-07-22 (水) 22:18:37
  • ナイトプールってこんなに派手なものだったろうかと、多少疑問におもいつつも。
    本来は広大なウォーターテーマパークなだけあって、アトラクションの数々は
    頭をからっぽにして楽しめた。

    というか、かなり本気でまわったのに、まだ全体の1部しか回ってないらしい。
    きっと全制覇するのに数日がかりになる系の巨大テーマパークだ。
    この街のエンターテイメントの金のかかりっぷりと、派手さは全米でも屈指だ。 -- 2020-07-22 (水) 22:23:14

    • 「ナイトプールってもっと静かでロマンチックな場所を想像していたよ…映えはするけどさ」
      「んー?チトセはロマンチックな方がいいの?」
      イケメンスマイルを作ったユーニスが寄って来たので押し戻した。
      そして溜め息一つすると、タピオカミルクティーを一口啜る。めっちゃ甘い。

      水と光の中を飛んだり落ちたり流されたり、叫んで笑って遊びに遊んだ
      しかしまだまだ遊んで無い場所がある
      でも今は休憩中。遊ぶためには休憩も必要だから。

      パームツリーを傘に頂くベンチはロマンチックと言えなくもない
      「そう言えば日本の女子ってタピオカ好きらしいねー?」
      「私が日本を出る時はギリギリブームだったが、今はどうかな?ふふっ」
      しかし、太いストローでタピオカを吸い上げるユーニスを見ていると
      ロマンチックな感情よりおかしさの方が先に来てしまう -- 千歳 2020-07-22 (水) 22:38:42
      • 「んー?」
        そして手を使うのを横着して、タピオカミルクティを胸に乗せて
        おっぱいチャレンジになるユーニス。 -- ユーニス 2020-07-22 (水) 22:50:56
      • 「!?、想像上のチャレンジでは無かったのか……」
        千歳もSNS等でタピオカチャレンジを達成した者達を見たが
        あれらはネットの向こうの出来事で、フィクション的な物として感じていた
        しかし、ユーニスがやっているのを見て、それが現実であると気付いてしまった……

        「わ、私だって…と…と……」
        千歳も自分の胸にカップを乗せてみるが。
        安定しない
        千歳も同年代の平均値よりは上だが、アメリカンサイズは桁が違った

        「んふふ、こうすれば安定するよー」
        ユーニスが胸を押し付けてきた。
        千歳の胸に胸を合わせるおっぱいキスな状態。
        「おお?って…まて?」
        一瞬納得仕掛けるが、この状態は恥ずかしすぎる

        「ほらほらチトセが期待したロマンチックな状況だよー」
        「いやまてこれはロマンチックと違う…おっと」
        慌てて身を離そうとするがカップが落ちそうになり動けない -- 千歳 2020-07-22 (水) 23:04:19
      • 「あはっこれいいねー♥千歳の鼓動を感じられそうだよ」
        そして薄暗いプールサイドで抱き合ってるみたいな状態に。
        腰に手を回してきて、顔も近い。 -- ユーニス 2020-07-22 (水) 23:12:35
      • 「こ、こら…こんなとこ…ろ…で……」
        いつもの様に言おうとするも、言葉が弱い。
        薄暗い中、時折輝く七色の照明に照らされ
        なんだか映画の一場面の様だ。

        早くなった鼓動が胸を伝わってしまうかも?と考えると
        顔はかぁっと熱くなり
        近付くユーニスの瞳から目を反らす事が出来ない

        「…あ……」
        「んー……」
        そしてついに二人の鼻と鼻が触れ合う距離に
        ユーニスか千歳が顔を少し傾けるだけでキスとなる
        なるのだが……

        「ん…?」
        「むぅ?」
        不意に視線を感じた。一つでは無い複数の視線
        二人は直ぐに予想が付き横目で見れば……

        見られていました。注目を浴びていました
        キスだけなら、この国の人達は堂々とする
        しかし、胸と胸を合わせた大胆過ぎる状況
        二人より年下と見える少女達が自分達はどうだろうと
        互いの胸を見合ったりしていた -- 千歳 2020-07-22 (水) 23:30:37
      • まわりから生暖かい視線を送られつつ、キスするのをためらっていると
        そんなのおかまいなしにユーニスが迫ってくるもので。落っこちそうになった
        タピオカミルクティのカップをひっつかんでユーニスの両頬にくっつけてやった。

        「ちべたいっ!」
        「うむ、すこし落ち着け」
        そう言いつつ、こっそり自分の頬にもカップをおしあてる。
        明るい場所でみたら、真っ赤になってたのがバレてただろう。 -- 2020-07-23 (木) 22:53:37

      • 「落ち着いた!」
        「よし、じゃあ次に行くか」
        千歳も顔の熱が引いたのを確認すると
        残っていたタピオカミルクティーを飲み干した
        一応、念のためと後ろを見るが、二人を見てる者はもういなかった
        代わりに、さっきの少女達がおっぱいチャレンジしている姿が
        遠くに見えたのであった

        「でどこに行くー?」
        「そうだな……」
        二人で周囲をぐるりと見渡してみる
        やはり豪華だ。そんな中に自分達がいるのが少し信じられない
        こうしていると、夢を見ている様な気分になってくる…… -- 千歳 2020-07-23 (木) 23:19:55

      • すると、湖みたいに大きなプールの方から、アナウンスが流れてくる。
        そちらを見れば、特設のフィールドアスレチックと思しきステージが。
        水上にライトアップされ、多くの人が集まっているようで。

        「おっと、もうそんな時間かぁ、チトセー、次はあれいくよー」
        ユニースが千歳の手を引っ張って歩き出す。 -- ユーニス 2020-07-23 (木) 23:45:22

      • 「ん?あれは水上アスレチックなのか?」
        千歳も日本で似た物を見た事がある
        不安定な水上に障害物があり、その上を走っていくアトラクション
        数百人規模が参加する、忍者の名前を冠した番組もあった。

        「………」
        「おい!急に黙り込んでどうしたんだよ?」
        ユーニスに手を引かれながら千歳は尋ねたが。答えが返って来ない
        彼女が千歳をあのアトラクションに連れて行こうとしている事はわかる
        しかしなぜ無言になる必要が?

        「さてチトセサン、ここで良い知らせと悪い知らせがアリマスデス。どちらから聞きますデスカ」
        「なんだよ、急に変な日本語を使い始めて…ん?良い知らせと悪い知らせ……」
        背中のまま質問するユーニス、もはや千歳は悪い予感しか感じなかった -- 千歳 2020-07-24 (金) 00:09:35
      • 「……良い知らせから聞こう」
        映画じゃなくてもリアルでやるんだなこのやり取りと思いつつ、テンプレに乗ってみる。
        「バレンタイン特別イベント、カップル限定で参加できるゲームがあるんだー
        優勝すると入場料がタダになるし、年間パスや賞金まで貰えちゃうんだ!
        参加費用はねー10ドル」

        「なるほど、それで悪い知らせは…」
        「優勝しないと、次の給料日まで10ドルで過ごすことになる」
        -- ユーニス 2020-07-24 (金) 00:18:51
      • 「10ドルで?」
        「10ドルで!」
        足を止めニッコリ微笑んだユーニスに、千歳は笑みを返した
        そして間

        「おまえなー!」
        「アイエエエー!?」

        ユーニスは首を絞められ関節を決めながらながら思った
        『日本人ってやっぱり全員ニンジャじゃん……』と -- 千歳 2020-07-24 (金) 21:52:57
      • ………
        ……

        「おごってあげるからデート行こう、なんて言い出すから怪しいとは思ってたんだ…
        生活費使い込んだなおまえー!」
        千歳は銀行口座を持ってないから、給料をユーニスの口座に入れてもらってたのが裏目に出たわけだ。
        「10ドルで半月近くかー…」
        「ちなみに、残りの10ドルは参加費に使ったから、今0ドルだよー…ぐえっ」
        「悪い知らせとさらに悪い知らせまであったとはな。
        そもそも、予選の抽選で落ちてたらどうするつもりだったんだ…!」
        「どっちみち10ドルしか残んないんじゃ、逆転のチャンスにかけ、ない、と…ちょっ、くるし…」
        ユーニスが千歳の腕をタップする、かなり本気で首が絞められていた。

        わあっと歓声が聞こえてきた。
        2人が居るのは、巨大水上ステージの舞台袖のようなところである。
        彼女らの他にも、数組のカップル達が集められている。
        また、歓声があがって、転落だのノックアウトだの、不穏な実況も聞こえてきた。

        第一ステージは遠目に見えた、あのド派手な水上アスレチックだ! -- ユーニス 2020-07-24 (金) 23:22:55

      • 「うーん、最初のは坂を上るだけに見えるが…何かあるんだろうな?」
        「ローションで滑る系じゃないかな?TVのバラエティで見たよ」
        アメリカ人はローションやスライムが大好きらしい。
        ステージの攻略について相談しているとスタッフから声が掛かった
        いよいよユーニスと千歳、二人の番が来たらしい

        「行くか!勝つぞ!」
        「行こう!勝つよ!」
        言って二人は腕と腕をぶつけ合わせた。
        ちょっとやってみたかったらしい
        ………
        ……

        「これアニソン?」
        「チトセ知らない?日本のROCK!アニメの曲だよ」
        二人が舞台袖から顔を出すと同時に、日本のアニメの曲が流れ始めた
        「チトセが日本人だからかな?」
        「そんな安易な……」
        二人がそんな事を話していると実況席から声が聞こえて来た

        「HAHAHA!エントリナンバー7!チトセ&ユーニス!ジャパニーズゲイシャガールとアメリカンホットガールの日米ドッキングペアだぁ!」
        見ればサングラスに水着姿の男性が両手に水着バニーを侍らせながらエキサイティングしていた
        「私はゲイシャじゃないぞ」
        「あ、あの人クリスマスに見た」 -- 千歳 2020-07-25 (土) 00:12:20

      • バックで立ってるサンタガールのバイトをやった、謎の番組の人だ。
        中継されてるらしいぞこのイベント。
        どうりで、水上10mの高さに設置された、本格的なアスレチックコース等があるわけだ。

        ルールは簡単、2人でこのフィールドアスレチックを駆け抜けるだけだ。
        チェックポイント事に点数が加算され、高難易度のチェックポイントほど高得点。
        そしてペアの片方が脱落で終了、だから2人で助け合いながら進む!

        「じゃあ、チトセ…」
        「はいよ」
        スタートのホーンが鳴ると同時に、2人は迷わず駆け出した、そして、ぬめる坂の下で
        ユーニスが組んだ両手に足をかけて、チトセが坂の頂上に飛び上がる!
        「ユーニス!」
        「はーい」
        ユーニスは軽く助走をつけてジャンプ!チトセの手を掴み、弧を描くように
        坂を一瞬で駆け上った。
        2人のプレイに、歓声があがる。
        「これは華麗なエントリーだ!実はニンジャガールコンビだったかー!」
        実況もさらにエキサイティン。

        「次は足場が、回転する棒を綱渡りするやつか」
        「ノーマルは2人で2本で、ハードが2人で1本を同時かー」
        じゃあ、って頷き合うと…。千歳を肩車したユーニスが回転棒を、ほとんどブレずに
        渡り切る!
        「お姫様だっこじゃないか普通…」
        「ふとももやわらかーい」 -- ユーニス 2020-07-25 (土) 00:56:53
      • 「今度してあげるから安心してーぐえ」
        ユーニスは千歳の柔らかふとももに圧迫された
        ………
        ……

        「行くぞ、はい!」
        「いいよ、はい!」
        合図と共にジャンプした二人が同時に足場に着地した
        着地の反動で足場が揺れる。
        しかし二人は持ち前の反射神経でバランスを保つ
        「よし!次行くぞ」
        「おーけー!」
        困難を苦ともしない二人の姿に
        観客席からは応援の声と共に盛大な拍手が贈られた

        ここまで幾つかのアトラクションをクリアしてきたユーニスと千歳だが
        アトラクションの難易度は進む程に上がって行く
        それでも二人は、直感と反射神経。そしてコンビネーションでクリアしてきた

        今、二人が挑んでいるのは吊るされた足場から足場へ飛び移ると言う
        高難度のアトラクション
        二人の間には仕切りがあり手を繋ぐなんて事は出来ない上
        しかもバランスが一方に偏ると崩れ落ちると言うオマケまでついてる

        「まったく…これを考えた奴はかなり頭おかしい」
        「天才となんとかは紙一重って言うからね!次行こ」
        「行くぞ!はい!」
        「はーい、はい!」
        愚痴を言いながらも次の足場へと飛び移る…のだが
        「わ?」
        ユーニスがバランスを崩し、足場がユーニス側へ傾いた!
        「こっちへ身体を傾けろ!」
        「よ!…ふぅ、集中しないとダメだねー」
        「そうだな、今の私が悪いかった」
        苦笑を交わし合う二人の耳に声が聞こえて来た

        「ブラボー!ブラボー!ニンジャガールズ!暫定トップに躍り出たぞ!
        ここからどこまで点数を伸ばすのかぁ!HAHAHA!」
        サングラスの司会者がテンション高めのアナウンスをすると
        観客席からさらに大きな拍手が沸き起こった -- 千歳 2020-07-25 (土) 21:31:39
      • 「やったねチトセ!トップだってー!」
        「ちょっ、集中しないとって言ったばっかり…!」
        「大丈夫大丈夫、まかせてー!」
        狭い足場の上で抱き合って、くるくる回りだすもんだから、千歳が危うく落ちそうになる。
        ユーニスが腕を引っ張り、トランポリンの上へ投げ出した。
        アトラクションにもあった特大トランポリンだ、そこへ自分も勢いをつけて飛び込むと
        一弾高い足場へ千歳がぽよんっと飛び移る。

        本来は2人で跳ねて、勢いをつけて一人を上へ飛ばせればクリアなのだが。
        これも華麗に一発で決めて見せる2人に、ひと際大きな歓声が送られる。
        「はっはー、ショーは盛り上げて行かないとねー、軽く踊ってこうぜー!」
        飛び移って来たユーニスの、めちゃくちゃ得意げなドヤ顔である。
        なんか嫌な予感が。

        観客の拍手に乗せられて踊りだすユーニス、そして振り回される千歳。
        水上10m以上のカフェテーブルみたいな足場で、手を繋いだままターンをする2人に
        思わぬ余興が入って、手拍子までしてくれるオーディエンス。

        足場が狭いのも高いのも、まぁ良い、踏み外さなければいいだけだ。
        狭いステージ上で踊るためにこういう訓練も重ねてきたのだし。
        「あはは、最っ高だねー。みんなもありがとー!」
        「あっ、おいそっち…」
        踊り終わった瞬間、拍手に応えようとユーニスが踏み出したのは次のコースの方で…。
        激しい水没音がして、歓声が爆笑に変わったのだった。

        ………
        ……


        「次はクイズかー」
        -- ユーニス 2020-07-25 (土) 22:39:24
      • 「今度は真面目にやれよー」
        3メートルほど離れた対面の席から千歳の声が飛んできた
        「わかってるってばーHAHAHA」
        サングラス司会者の真似なのかユーニスは笑いながら答えた
        「はぁ、やれやれ……」

        そんな話をする二人をする両サイドでも
        カップルやペアが二人と同じ様なやりとりをしている
        「ジュディー!遠く離れても君は美しい!」
        「キャス!貴女もよ!」
        「落ち着け落ち着け……」
        「深呼吸よー深呼吸ー!」
        「…濃いメンツだ……」

        「みなさん、そろそろゲームを開始します」
        「はーい」
        「はい」
        スタッフの呼び掛けに賑やかだった参加者が一斉に返事をした


        途中落下するアクシデントもあったが
        ユーニスと千歳の二人はなんとか上位陣に入る事が出来ていた
        しかし優勝せねば意味が無い。パンの耳と売れ残りホットドッグを貰う生活は切ない……
        だからクイズで高得点を獲得し優勝への足掛かりとせねば!


        「HAHAHA!生き残ったソルジャーは面構えが違うな!おまえ達最高にホットでビューティーだ!
        さぁ!最初の問題行くぞ。サイドBはサイドAの好きな食べ物を答えろ!いきなりサービス問題だ!」

        「(サイドAは私か…私の好きな食べ物はアイツなら、わかるよな?わかるよな……)」
        千歳はフリップボードにマーカーで「ご飯(rice)」と書きながらユーニスの方を見た -- 千歳 2020-07-25 (土) 23:34:08
      • モデルみたいな筋肉の男の横で、ユーニスがゆるーい笑顔でbサイン出している。
        任せろってことらしいが…。

        「さあどうかな!フリップをこっち見せて。ハッハー流石に簡単すぎたね。
        これは練習だと思って…ちょっとまって、そこの彼女は…そう、ユーニスね、君それなんて書いてあるの」
        「こしひかり!」
        フリップには、へったくそな…というか判別不可能なレベルで歪んだ日本語と思しき文字列…。
        コが反転してるし、どうがんばって読んでも『コしニしキ』になってて、新種の米が誕生しているのだが。
        「あのおバカ…」
        千歳は頭を抱える。なまじ千歳の英語がネイティブ並みなせいで、ユーニスの日本語勉強は壊滅的であった。

        「こし…ナニ?」
        「日本のブランド米でねー、カレーに最高にあうんだよ」
        「じゃあ、彼女の好物はカレーの方だとは思わない?」
        「絶対コメの方だね!」
        (米も普通に英語で言えばいいだろー!?)
        何故かコメだけ日本語で言うユーニスに、千歳が心の中で突っ込むが、残念、テレパシーは無い。
        なお、サービス問題ってこともあって、まぁ正解にしてもらったが、先行きが怪しいな!


        「では第2問だ!おっと、いきなり難易度が上がるぞ。だけど大丈夫、本当に愛があるなら簡単だ。
        ’’初めてデートに誘われた時のセリフ!’’
        初めて誘ったのがAサイドの場合は、Bサイドの恋人達が誘われた時のセリフを答えて」
        -- ユーニス 2020-07-25 (土) 23:59:49
      • 「(初めてのデートに誘われた時のセリフ…?)」
        千歳だけでなく、参加者全員がざわついている。
        その中でユーニスだけが上を向いた後、ペンを走らせ始めた

        「(アイツの中では確信となるセリフがあるって事か)」
        ならばと千歳は必至になって記憶を手繰る

        こっちに着て初めて買い物に行った時?違う……
        一緒にバイトの面接に行った時?絶対に違う……
        あ!この間のキャンプ旅行!
        これか?これが私達にとって初めてのデート?

        「(確かあの時は…「二人で熱い夜を過ごそうぜ!」…だったかな?)」
        アイツが妙にカッコつけていたのが面白かった
        それをフリップに書き始める……

        「エブリワン!全員悩んでるね!しかしそろそろタイムアップだ!」
        司会者の声を聞き、千歳は手を止めた
        「(もっと古い記憶が…あ!)」千歳は記憶の中の光景に確信を得た
        書き終え顔を上げればユーニスがにぱーっと笑っていた
        ………
        ……

        「チトセユーニスペアGOOD!ピュアなセリフにこの俺もノックアウトだ!」
        サングラスの司会者が胸に手を当てながら天を仰ぎ見た
        「あってた……」
        「イエー!」
        ユーニスのサムズアップに千歳もサムズアップを返す

        二人の思い出の言葉それは
        『2人だけで湖行こう!』
        高校時代にまで遡る記憶。千歳がユーニスと絆を深め始めた時の記憶
        「(私とアイツにとって…アレが始まりだったのかもな……)」 -- 千歳 2020-07-26 (日) 00:39:56
      • 一言一句間違わず正解だったのは二組だけだったので、軽くインタビューされたり。
        「初めて誘った時は、チトセが留学中で結局行けなかったんだよね。
        だからこないだ行って来た」
        「数年越しの初デート、ますますロマンチック!
        もう一組のパーフェクトの君たちは?」
        マイクを向けられた黒人の青年は
        「デートの帰りに、彼女を乗せた車で屋外トイレに突っ込んだんだ。オープンカーでさ
        忘れたくても忘れられない夜になっちゃったんだ」
        そう言って、会場の笑いを誘っていた。

        ちなみに、ジュディとキャスのペアは、なんか別の女の子にプロポーズしたセリフと
        間違えたらしくて、後で揉めそうで、こちらも別の意味で会場を沸かせた。 -- ユーニス 2020-07-26 (日) 01:00:39
      • ………
        ……

        クイズは続いた。ありふれた日常的な事から笑いを誘う失敗談
        「チトセの体重違うのー!?」
        「こっちの食事は高カロリーなんだよ!」
        「キャス!やはり私達は!」
        「ジュディ!最高のペアね!」
        そして、この短時間の間に様々な物語が生まれていた

        「OK!ラストクエスチョンだ!今宵はバレンタインのラブナイト!!
        だからこその問題!サイドBはサイドAの『性感帯』を答えよ!セクシャルな分ポイントは高いぞ!」
        「はぁ…?」
        参加者の何人かが同じ声を上げた。その中には千歳の声も混じっている

        「(性感帯だって!?そんなの知るかー!)」
        千歳は心の中で叫んだ。
        ユーニスとは女性同士だが身体を何度も重ねている
        性的な快楽も知っている。知っているが……
        性感帯なんて自分では分からない
        じゃあユーニスは?と顔を上げたら……

        「むふー♪」
        「(あ、わかってる顔だ?)」 -- 千歳 2020-07-26 (日) 01:28:16
  • 場の盛り上がりは最高潮だ、みんな好きだねこういうの!
    流石にフリップを見せるのをためらってた参加者達も、見せろ見せろとコールされては仕方ない。
    千歳も『胸』と書かれたボードで顔を隠しながら見せた。

    「おーっと最後もサービス問題だったかな?みんな正解…HEY、ワッツアップ?チトセ、ユーニスペアだけ
    不正解だ!残念!」
    「あれー?」
    『みみ』と書かれたフリップを覗き込むユーニス。
    他のペアは、照れたり、当然よ、毎晩愛し合ってるわと言って会場を沸かせたり。

    「ちなみに、どうして耳だと?」
    一組だけ外れだと、逆に注目されてしまう。マイクがユーニスに向けられて。
    ……ここから先にユーニスが、語った話はあまりに生々すぎて一部をかいつまんで話す事しかできないが。
    『いきなり行っても嫌がるから、まずは腰を抱き寄せて長めにキスをしてー…』
    とか
    『肌繊細だから撫でるときは、触れるか触れないかのソフトタッチでー…』
    だの
    『乳房の下から腋のあたり』『指をこう絡ませて』『逃げないようにこう抱いて…』
    「んでねー」
    「おぃぃ!やめろぉぉ!!」
    止める間もなく、エア実演しだすユーニスにカメラがクローズアップ。
    顔を真っ赤にした千歳が、飛び出すまでの一瞬の間に、2人の夜の睦言が公共の電波に乗ったのだった。
    ………
    ……

    「怒んなよー」
    「うっさいバカ!」
    「でも、めっちゃ受けてたよー」
    小声で言い合いながら、2人は他のペア達と一緒に横一列に並んでいる。

    「さあいよいよグランドフィナーレだ!最後の種目はー……」
    定番のドラムロール、そして
    「キス対決だー!」
    背後にウォータースクリーンが吹きあがり、情熱的なキスをするカップルのアニメーションが投影された。
    湧き上がる観客たち!派手なレーザーライト演出!

    「ルールは簡単だ、君たちはステージ上で一定時間の間キスをしてもらう。
    そして、オーディエンスから最もいいねを貰えたペアの勝ちだ!
    観客全員が参加するから、得点も大きいぞ、最下位のペアにも逆転はありうる、ロマンチックなキスを見せてくれ!」
    では、今までのゲームはなんだったのか。という問いにはレース中を盛り上げるための余興と答えればいい。 -- ユーニス 2020-07-26 (日) 21:43:30

    • 「投票アプリのダウンロードは終わったかな?OK!投票はアプリのボタンを押すだけの簡単システムだ!
      ちなみにいいねの他に。Cute!やCool!でキスへの感想も遅れちまうんだゼ!」
      投票アプリの説明をするサングラスの司会者。
      ちなみにアプリ提示でバーガーやホットドッグを貰えるらしい

      「あーあー私もホットドッグほしい!」
      「えい、だまれ!」
      はしゃぐユーニスに対し、千歳はまだ顔の赤さが抜けない。電波にのっちゃったからね

      「さぁ!ラブの見せ場だ!愛は勝つなんて言葉あるが、ここで勝利するのは一組だ!
      最高の愛で勝利を掴め!ゴーフォービクトリー!。まず一番手行くのは……
      キャス&ジュディ!愛のブロードウェイ、コイツらにとって世界は劇場なのかー!?」
      「さぁ!おいでジュディー!」
      「ええ!キャス!」
      踊る様な動作で特設ステージへと上がっていくキャス&ジュディ
      後で聞いた話だが、この二人ミュージカル俳優で。その界隈では有名な二人であったらしい

      「おお……」
      「すげー……」
      キャスとジュディのキスが始まった瞬間。会場は静かになりユーニスと千歳も見惚れてしまった
      見詰め合い抱き寄せ、再び見詰めあってからのキス。完全に自分達の世界に入り込んでいた。
      あまりにも情熱的で刺激的なキスに、観客から失神者が出る程であった。

      「おっと!いいねがどんどん上がって行くぞ!それにクールとパッションも押されまくっている!
      集計結果が気になるって?それは最後のお楽しみだ!数字の操作なんて野暮な事はしないから安心してくれ!」 -- 千歳 2020-07-26 (日) 22:14:17
      • 他のペアも負けじと、首に腕を回して抱き合ったり、ムードをあげるチークダンスからのキス
        をしたり、愛を囁きあってキスをしたりと、それぞれの愛の形を魅せていく。
        みんなレベルが高い!そもそも、このコンテストの要がキス対決だと知ってたのか
        寸劇みたいなのを仕込んでくるペアもいる。

        まずいことになった、ほとんど飛び入り同然に参加した千歳には何の用意もない。
        自分の番が回って来るまでに、何か考えなければと思っていたが、頭真っ白なまま
        スポットライトの前に立たされてしまう。立ち尽くしてしまう。

        不意に、肩に手が置かれて振り返る、また不意打ちみたいに、ちゅっと頬にキスをされた。
        「チトセ、私はこっちだよ」
        ユーニスが、ゆるい笑顔で見つめてきて。
        「ココは、私とチトセが一緒に楽しむための場所、そうだよね?」
        そう言って、ユーニスが背を屈める、少しだけ唇までの高さが足りない。
        だから、千歳は背伸びをして。
        2人の唇が柔らかく触れ合った。 -- ユーニス 2020-07-26 (日) 22:41:33

      • 観客席からこれまでに無い歓声が沸き上がった。口笛や拍手まで聞こえる
        そのどれもが二人への祝福のため
        だけど、千歳には…二人には聞こえない。聞こえ感じるのは相手の熱と鼓動だけ

        「Oh!Awesome!これがジャパニーズエモーションの「テェテェ」なのか!?
        二人に祝福の光が見えるゼ!これはもはや誓いのキスだぁ!」

        「ふぅ…誓いのキスだってさ?ここで結婚式挙げちゃう?」
        「ぁ………バカ野郎、調子に乗り過ぎだ」
        ニヤニヤするユーニスにそんな事を言う千歳だが。
        顔は真っ赤でした。

        ピッ。ポイントが加算される音がした。 -- 千歳 2020-07-26 (日) 23:06:14
      • ………
        ……

        「参ったねー明日からごはんどうしよう、このココナツプリン美味しいね」
        「だまって食べとけ、しばらく食事抜きだからな」
        結局、2人は優勝できなかった。千歳とユーニスがセミプロだから上位に入れたので。
        キャス&ジュディのプロの力に敵わなかったのは当然だ。

        「はぁーもうお腹いっぱいだよー…」
        「明日と明後日の分も食べておけ」
        ケーキ、ドーナツ、パフェ、アイスクリーム、カラーチョコスプレーまみれの揚げバターホイップクリーム…。
        凄まじい量のスイーツを山積みにして、2人は食べ漁っている。
        優勝は逃したけれど、特別賞としてVIPラウンジのチケットと、キス対決で最も
        Sweetポイントが高かったので、スウィーツ食べ放題チケットをもらったのだ。

        「さすがに無理ー!これお持ち帰りできない?できない?…そう」
        持ち帰れないなら、自分のお腹に入れていくしかない。ユーニスはまたもそもそとケーキを食べ始めた。 -- ユーニス 2020-07-26 (日) 23:20:10
      • ………
        ……

        「あーお酒あるー、それもかなりいい奴だ!」
        「もう水の一滴も口に入らん」
        大食いの特訓をしていない二人に詰め込み食いは無理でした
        これ以上食えないと、VIPラウンジへとやって来たのだが……
        かなり後悔した

        VIPラウンジは上級顧客のためのラウンジ
        二人が購入したチケットよりも上のチケット
        「ゴールド」や「プラチナ」のチケットを購入する事で利用出来る場所
        施設内の景観一望できる広く巨大な展望窓、ふかふかのシートは座り心地も寝心地も良い
        途切れる事の無い専用wi-fiに、お酒や軽食も食べ放題。まさに休むに最高の場所。
        最高の場所なのだが……
        今、お腹は限界状態。食べ放題の恩恵にあずかるのは無理なのでした

        「せーめーてーチキンだけでもー……」
        「無理するな、もう少し休憩してからに……」
        二人の横顔が七色に染まった。
        花火だ、展望窓の真ん前に七色の大輪が咲いた

        「凄いな……」
        「OMG!チトセ真ん前だよ!」
        二人は花に誘われるが如く展望窓の前へと歩いて行った。
        打ち上げ花火は普通下から見る物だが、このラウンジでは横から見る物であるらしい
        しかも、人が少ない。ユーニスと千歳、後数組のカップルの姿があるくらいだ

        「チトセ最高だねー」
        「最高だな…なぁユーニス」
        「んーチトセなにー?」
        見れば、千歳が耳を貸せと手をヒロヒロとしている
        だからユーニスは千歳の顔の位置に耳を寄せた

        「…!?」
        いきなり唇を塞がれた。塞いだのは千歳の唇
        千歳がユーニスの唇を塞いでいる
        ステージでのキスが甘さなら、このキスは情熱
        千歳からの熱を感じる熱いキス。

        「チ、チトセ?」
        突然の事にユーニスはぽかんとなってしまった。
        あまりにも不意打ちすぎて、混乱する。
        そんなユーニスに千歳は顔を赤くしながら言う
        「そのなんだ…お前とのキスで負けたのが……」
        「負けたのが?」
        「…なんか悔しかった」 -- 千歳 2020-07-27 (月) 00:00:47
      • そう言って千歳が、視線を上げたら、ユーニスがにやにやしながら顔を覗き込んできたので
        言うんじゃなかったって、ぷいっと顔を背けたのだが。
        「ねえ、チトセの世界一のキスは誰とのキス?私以外との誰か?」
        「な、なんだ急に」
        振り返ると、そのままユーニスにがっちり頬を掴まれてしまう。
        花火があがる、唇が触れ合う、花火が広がる。
        「チトセの世界で一番のキスは私で、私の世界一のキスはチトセ。
        この事実があるかぎり、世界中の誰も私達に敵わない」
        「おまえ…」
        「ん?」
        うるんだ瞳でしばし見つめ合ったのち
        「たまにイケメンになるよな」
        「チトセはいつも美少女だよー」
        「うるさい」
        「それは、もっと言ってうれしいってことだよね」
        「うるさい!」
        「あっはっは!」

        2人は笑う、花火は咲く、2月の空に花が開く。 -- ユーニス 2020-07-27 (月) 00:23:26

One day Edit

  • ーーある日。
    閉店後のステージバー、ステージ以外に照明はついてない。
    「今日はステージ使えてラッキーだねー」
    ユーニスは、モップを傍らに置いて、作業着の上を脱いでTシャツだけになる。それから軽く柔軟体操。 -- 2020-07-28 (火) 20:58:39
    • 「うん、やはりステージはいいな……」
      千歳もTシャツ姿になると柔軟を始めた。
      肉体労働のバイトの影響なのか、日頃のトレーニングのたまものなのか
      以前と比べ、手足に若干筋肉が付いた様に見える -- 千歳 2020-07-28 (火) 21:09:45
      • 背中合わせで腕を組んでお互いにのけぞり合って体をほぐし。
        「おっけーそれじゃあウォームアップにいつものからいってみよー」
        千歳のスマホをスピーカーにつないで音楽を流し始める。
        2人で並んでリズムを取り… -- ユーニス 2020-07-28 (火) 21:17:21
      • 「1・2・3…ハイ!」
        「ハイ!」
        前、後、外側と鏡合わせの動きでステップを踏み
        そして中央に寄ると同時にお互いの手を打ち合わせた
        パンッ!と小気味良い音が、二人以外姿の無いステージに響いた -- 千歳 2020-07-28 (火) 21:28:15
      • 打ち鳴らした手をつなぐと、ユーニスは千歳の体を引き寄せる。
        背中合わせになってポーズを決めると、アップテンポなステップを踏んで
        再び最初の位置にもどった。
        「ふいー、ノーミスでタイミングもばっちりだねー」 -- ユーニス 2020-07-28 (火) 21:38:13
      • 「練習の成果が出るのは嬉しいな。後は相手の気配だけで動ける様になるといいのだが」
        「ケハイ…?」
        聞き慣れぬ日本語に首を傾げるユーニス
        「英語だと…Atmosphere?かな?相手を見ないでも感じる事だな」
        「見ないでって、やっぱり日本人は皆ニンジャかサムライなの?」 -- 千歳 2020-07-28 (火) 21:46:01
      • 「それならアメリカ人のお前はカウガールか」
        「あはっいいねー、コスチューム用意してみる?人気あるし」
        で、ノールックからタイミングを合わせてポーズ決めをやってみようということに

        「1・2・3!」
        -- ユーニス 2020-07-28 (火) 21:59:22
      • 「はい!きゃん!?」
        「わ?」
        背中合わせになるはずが若干ずれ千歳はそのまま倒れそうになってしまった
        しかし……

        「…おまえってこう言う時イケメンだよなぁ」
        「んふふ、惚れ直した?」
        片手を引かれユーニス抱き寄せられる形に。お互いの顔と顔が間近にある
        「調子に乗るな、バカ」
        照れ気味に言う千歳さん -- 千歳 2020-07-28 (火) 22:06:46
      • 「へへへーキスのパフォーマンスも練習しておこうかー」
        「調子にのんな」

        ………
        ……


        ―バレンタインデートの後のこと…。
        サンテリオビーチの外れにある埠頭のあたりで。
        「釣りひさしぶりだねー」
        「キャンプ以来かな」

        近くにヨットハーバーなんかがある河口近くは、穴場ポイントだ
        2人して釣り糸を垂れる。
        サンアッシュクロスは温暖だ、この時期でも魚は良く釣れるが、寒いか寒くないかでいえば、まぁ寒い。 -- ユーニス 2020-07-28 (火) 22:35:14
      • 「…焚火したいな」
        「薪があれば火を起こせるんだけどねー」
        残念な事に海辺近くに焚火に使える乾いた枝はあまり無い

        「次来る時はコンロでももってくるか」
        「そうしよう、っと…海藻か、食べられるかな?」
        竿を上げるが針にかかったのは茶けた海藻でした
        「洗えば食えない事も……」
        今の二人にとって食の確保は最重要課題であった
        もし食せるなら、ヒトデだって食べる -- 千歳 2020-07-28 (火) 22:56:45
      • 先日のデートに、ユーニスが生活費を使い込んでしまったため。
        2人はサバイバル中だ、家の食糧庫にはラスクが一切れしかないし、それはラスク
        ではなく、干からびたパンのミイラだった。

        「あんまお腹膨れなさそうだしいいや。全然釣れないねー」
        海藻はキャッチアンドリリース。他にも釣り人がちらほらいるし、魚が居ないことはないはずだが。

        -- ユーニス 2020-07-28 (火) 23:06:59
      • 「マグロでも釣りたいな。刺身食べたい」
        「マグロってツナだよねー?釣れるの!?」
        「…いやマグロ…ツナは遠洋の魚だ」
        漁港の無いサンアッシュクロスで生のマグロは高級食材
        スシを扱う店もあるが、やはり金持ち向けの店
        日本の様に、気軽に刺し身を食べるのは難しかった -- 千歳 2020-07-28 (火) 23:19:30
      • 「私は生魚はちょっとなーたべたことないし」
        「じゃあ、マリネにでもするか。刺身で食べられそうな魚も釣れるみたいだし」
        イワシとかが釣れるらしい。
        「私はやっぱりフライがいいかなー」 -- ユーニス 2020-07-28 (火) 23:28:35
      • 「フライか。アジフライも食べて無いな、イカフライでもいいな?」
        「イカ?フライ?…美味しいの?」
        「うまいぞ、ソースや醤油を垂らして食べるのがいいんだ」
        「じゅるり…食べたくなってきたよ」 -- 千歳 2020-07-28 (火) 23:46:20
      • 「私お肉よりお魚の方が好きなんだよねー」
        「ああ、だからランチにもディナーにもサーモン食べたりしてたのか。
        カロリーが気になってるのかと思ってた」
        そういって、千歳が小さくくしゃみをした。
        「冷えてきたねー」
        竿を固定すると、千歳の後ろから抱き着くように座って包み込む。 -- ユーニス 2020-07-28 (火) 23:56:34
      • 「海風は冷えるからな……」
        呟く様に言いながら、ユーニスに抱き付かれるに任せる。
        普段なら何してんだと言うところだが
        この寒さの中で、この温もりを手放すのは惜しすぎる

        「チトセは体温高いねー」
        「お前は少し熱すぎる」 -- 千歳 2020-07-29 (水) 00:06:45
      • 「千歳と愛し合うと体が熱くなるんだよー」
        「外ではやめろっての!」
        「温まりたいんだよー、ぬくぬくしあおうぜー」
        「だから…ん?おい、引いてるぞ!」
        「おあっ!」
        竿の引きは断続的で、暴れまわっている、根がかりではない。
        「やったー晩御飯ゲットー!」
        「あわてるなよ、確実に釣り上げろ!」
        ユーニスがリールを巻き、千歳は網をスタンバイ、やがて海面から獲物が飛び出す。
        「おわー、なんかキモイのがでてきた!」 -- ユーニス 2020-07-29 (水) 00:16:32
      • 「タコだ!喜べ食い物だぞ!」
        「…食べるの?」
        「食べないのか?」
        食習慣の違いによる日米カルチャーギャップ発生
        暫く二人は顔を見わせたのでありました
        ………
        ……

        「タコきもいよーでも美味しいよーでもきもいよー」
        「黙って食え。明日はこれで唐揚げ作るぞ」

        二人が食べているのはタコの脚を茹でマヨネーズをかけた物
        シンプルながらもコリッとした食感がたまらない
        新鮮だからと刺し身を提案したらユーニスが激しく拒否したのと
        やはり火を通した方が安全だろうと茹でる事に -- 千歳 2020-07-29 (水) 00:30:52
      • 千歳がタコを叩き、塩もみし、洗い、そして皮をひっぺがして下ごしらえ
        してるのを、悲鳴をあげながら見てたユーニスだったが。
        悲鳴をあげながらしっかり食べていた。

        「美味しいけど、あのうにゅうにゅを思い出すと……カラアゲ?」
        「タコのフライだな、うまいぞ」
        「おー、でも卵とか小麦粉とかないよー」
        あったらそれでパンケーキでも作ってるもんな
        「いざって時のために、へそくりしてあるんだ」
        「そっかー…もにゅもにゅ…最初からそれでご飯買おうよ!?」 -- ユーニス 2020-07-29 (水) 00:42:56

5月1週 動画撮影 Edit

  • 「ちとせーどこらへんに立てばいいのー?」
    スマホの画面の中でユーニスが喋ってる。顔を上げると、家具をどけて広くなった部屋にユーニスが立っていた。 -- ユーニス 2020-07-31 (金) 23:03:30
    • 「私が隣に入るから右に…そっちじゃないオマエから見て左に動いて」
      「ほーい、え?こっち?」
      お約束の勘違いをしつつカメラの角度とユーニスの位置を調整していく

      「そこで軽くジャンプ。下に響くから軽くだぞ?」
      「ほいさー!」
      スマホの画面の中でユーニスが跳ねた。顔がわずかに画面外に出てしまったので
      親指と人差し指で縮小操作するが……
      「これ以上は縮小出来ないか?少し下げるか…もう一回ジャンプして」
      「とぉっ!」
      「軽くって言っただろう!でもこれで画面には収まるな」 -- 千歳 2020-07-31 (金) 23:16:04
  • 「じゃ、このへんにテープを貼って…と」
    床にテープをXに貼る。そこを中心に2人で立つと
    「ワン・ツー…」
    リズムを取って、踊り始めた。練習でよくやる定番のやつだ。
    カメラで撮影してるせいか、普段よりちょっと緊張する気がする。 -- ユーニス 2020-07-31 (金) 23:41:00
  • 「スリー・フォー…」
    腕は軽く曲げリズムに合わせジョギングする様な動きて交互に振り
    脚は前、後ろ、横と互いに鏡合わせとなる動き
    そして、視線はカメラを意識し前方から逸らさない。
    見ずともお互いの位置を感じるのはノールック練習の効果だ
    「(カメラがあると適度な緊張感になっていいな……)」 -- 千歳 2020-07-31 (金) 23:52:02
  • 踊り終わり、ポーズもちゃんと決まってる。
    ユーニスは、私達、舞台度胸はバッチリじゃない?とか思って、若干ドヤ顔だ。
    スマホで撮影してただけで大げさだと思う。

    「どう?どんな感じー?ちゃんと撮れてる?」
    千歳のスマホを覗き込む。撮影は、自分の動きをチェックするため、今までもやってた。
    しかし、動画作品を意識したのはこれが初めてで、出来ばえがいつもより気になる。 -- ユーニス 2020-08-01 (土) 22:33:38
  • 「まぁまて今再生する」
    「ぽちっ!」
    「あ!」
    待てと言って待てないわんこが居た
    とにかく、ユーニスが動画の再生ボタンをタップすると
    スマホの画面の中でユーニスと千歳の姿が踊り始めた

    『ワン・ツー』
    『スリー・フォー』
    「おー」
    「おー」
    客観的に自分達の踊りを見るのは初めてな二人
    最初こそ、自分達が画面で踊っていると言う感動があったが……

    「改めて見ると腕が伸び切ってないな……」
    「ここはもう少しかっこよくしたいねー?いっそ変えちゃう?」
    反省点改善点が多く出て来た
    それは自分達の未熟さの証であるが
    同時にそれは、自分達がまだ先に進めると言う事でもあった

    「よし!直すべきところはわかった」
    「もう一度だね。何度でも撮影できるのが利点だよねー」
    そうだなと頷くと千歳は動画を撮影モードに切り替えた
    ………
    ……

    「やってみると楽しい!」
    「へぇ、意外な才能って奴か?」
    何度か撮り直しをした後、現状の二人を出し切った動画を撮る事が出来た
    そこでユーニスのノートパソコンに動画ファイルを読み込み
    編集してみたのだが……

    「おーし♪いつもの曲でボーカロイドが歌ってるのあったから付けてみたよ♪」
    「…踊ってるのが自分達じゃない気がしてきたぞ……」 -- 千歳 2020-08-01 (土) 22:48:11
  • 「おー千歳がいつもよりかわいいじゃん!ふむ…衣装も必要だねこれは…。
    うん、でも…へへー、これをyoutubeにアップして再生数稼げば。実績になるねー」
    これまでオーディションは何度も受けてきたけど、あと少しのところで経験者に敵わなかった。
    何か実績を作ろうと、ダンス動画を作ることにしたわけだ。 -- ユーニス 2020-08-01 (土) 23:57:16
  • 「うーん稼ぐにはもう一声何か欲しいな?衣装の方は、先に衣装代を稼がないと」
    「バニーで踊る?私と千歳のバニーなら再生数一億行くよ!」
    「無茶を言う。でもバニーで目立つのはありなのか…?」
    とにかく今は人の目に止まりたい
    知名度が上がれば、チャンスも多くなるはず

    「衣装は後でオーナーに相談しよう。後は…背景か?」
    「だねー、壁の染みも目立つし、配管も気になる…あっ!」
    ユーニスが突然立ち上がり千歳の手と三脚付きのスマホを手に取った

    「外に行こう!」
    「え?」 -- 千歳 2020-08-02 (日) 00:11:03
  • 「この街(サンアッシュクロス)は、世界の観光地じゃん!街中名所だらけだよ!」
    サンテリオビーチを初め、公道ドラッグレースや、派手な高級車があつまるラスバルド、街最大の公園マリアンナパークも観光名所だ。
    なんなら、2人が住むロカーロの古い町並みだって絵葉書になってるし、空港には離発着する飛行機の有名なビューポイントもある。
    何より町の中心に聳えるカジノタワーが、強烈なランドマークだ。他にも大小さまざまな名所がある。
    「メトロで回れば1日で行けるよ!早速行こう!」 -- ユーニス 2020-08-02 (日) 00:33:45
  • ………
    ……

    巡った。二人はサンアッシュクロス中の名所をそうでない場所を巡った
    ヘブンダイナーの前で踊り、大道芸人達で賑わうカジノ前の通りで踊り
    初代市長像の前で踊り、港倉庫のグラフィティアートの前で踊った

    市庁舎前の大階段で踊った時は警察官のおっちゃんに職務質問されたが
    事情を話したら応援してくれた上、パトカーの前で踊らせてくれた

    馴染み深いロカーロの商店街で踊った時は
    三脚を買った雑貨屋のおっちゃんが投げ銭してくれた

    とにかく二人は朝まであちこちで踊った
    お陰で顔馴染が増え、街中でもちょっとした有名人になったかもしれない ………
    ……

    そして最後に二人は海辺の通りへとやってきた……
    「もう朝か…そろそろ眠いぞ」
    「あー空が明るいよーあ!」
    間もなく朝日が昇る。それに気づいた二人は同じ事を閃いた

    「今朝の日の出は……」
    「えーっと、踊りの時間が……」
    スマホで日の出の時間を調べるとスマホをセッティングした
    「一発勝負だぞ」
    「OK、私達ならやれるよ!」
    二人は手を打ち合わせるとスマホのカメラに視線を向けた…… -- 千歳 2020-08-02 (日) 00:57:23
  • 丸一日、踊っては移動してまた踊るの繰り返し。
    もうへとへとだが、徹夜明けのテンションで完全にスイッチが入っちゃってる。
    明け方、大きな鉄橋の上を最後のステージに選んだ。
    海から登ってくる朝日を遮るものが無い、絶景ポイントだ。
    昼間は交通量の多い橋だが、今は2人だけの貸切のようだ。

    背中合わせの立ち位置、正直ふたりとも汗だくだけど、密着していても
    少しも不快じゃない。むしろ体温がより強く伝わってきて高揚感すらある。
    高い鉄橋の上に、海風が吹き抜けて2人の濡れた髪をはためかせる。

    曲がはじまり、背中合せになったまま、ぴったりと同じ動きで腕を伸ばし。
    そしてはじけるように飛び離れて、橋の狭い歩道の上、踊りだす。

    「チトセ!」
    「おうっ」

    それでも狭すぎた時は、鉄骨の柱を宙がえりしながら足場にする
    アクロバティックなアドリブも交え、宙に踊った千歳の体をユーニスが抱きとめた。
    やがて、踊り終え、最初とは逆向きのポーズの2人のちょうど背後から朝日が昇り
    ふたりのシルエットを描きだした。
    ………
    ……

    朝早すぎてタクシーもバスも無かったので、2人はそこから数km歩いて帰ることになった。
    家にたどり着いた時には、テンションも切れてしまい、一休みと腰かけた
    ソファーで、2人とも夕方近くまで爆睡してしまったのは言うまでもない。 -- ユーニス 2020-08-02 (日) 01:22:01
  •   -- 2020-07-31 (金) 22:46:25

鮫幼女編 Edit

◆1 Edit



赤黒く染まる朝焼けの空に、天を突くような黄金の巨大カジノビルがそびえ立つ。
水平線の上には、遠くサンアッシュクロス空港の海に浮かぶ島影がある。

誰も居ない、サンテリオビーチの外れの小さな埠頭に不穏な背びれが接近する。
鮫だ。
海中から鮫の頭が飛び出し、手が岸壁を掴んだ。
鮫のヘルメットをかぶった大男である、鮫の胴体は男の背中に背負われて、奇妙な
鮫潜水服になっていた。立ち上がると鮫の尾はメカニカルに変形し収納される。
歩くのに好都合。

奇妙な『鮫男』は、放置されてボロボロな20ftコンテナの扉を、乱暴に開くと中へ侵入する。
ややあって、中からフードを目深に被った少女が出てきて、コンテナの扉をそっと閉じた。

「あぅっ…」
凪ぎの時間が終わり、海風が吹いた。少女のフードが持ち上げられる。
濃い灰色の髪に、白い眼玉模様が入った髪の少女の頭のてっぺんで、背びれみたいなくせ毛が跳ねた。
シャチのようなカラーリングだ。

フードを被りなおすと、少女は摩天楼輝く街を目指して歩き出した。

………
……


『ヘブンダイナー』
古き良きアメリカの文化を受け継ぎ、観光客よりも地元の常連を大事にする、今どき稀有な
食堂だ。

少女が、ガラスの押戸を開いて、店内に入ると。
効きすぎなぐらいの冷房と、コーヒーと油の香りが押し寄せて出迎えた。
骨董品のようなラジオから、GREEN DAYのWake Me up When September Endsが流れ
誰も見ていないテレビでニュースキャスターが無音で口パクしていた。

曲に合わせステップを踏みながら店内へ進めば
これまた年季の入ったテーブルと椅子、そしてカウンター席。
椅子やテーブルにバラツキがあるのは
酔って暴れた常連客が一揃いのセットを度々壊したから
さらに奥には小さなステージが
夜になれば踊り手や芸人達が踊りや芸を披露するのだが……
今は朝。夜勤明けの客の一人が転寝をしているだけであった

そんな店の中に二人の少女の姿があった
この物語の主人公である所のユーニスと千歳だ
二人はカウンター席にて朝食の最中

「#shark human…?鮫人間か…映画の撮影か?」
千歳はパンケーキとベーコンを一緒に齧るとSNSアプリのトレンドをタップした
「んー?何か面白い記事でもあった?」
「ああ、この近くで鮫人間が出たらしい」
言って千歳はピーカンメープルパイを齧るユーニスにスマホ画面を見せた

「むむぅ?ただのダイバーにも見えるよー」
「だな」
ツイート記事の画像を拡大するが、遠目すぎて普通のダイバーにしか見えない
記事には海を鮫の様に泳いでいたとあるが。うさんくさい。

記事の事は一先ずこちらへ置き、朝食を食べ進める事にするが
「あーやっぱり水分欲しー!ますたぁコー……」
「コーヒーはよせ、トイレが近くなるぞ」
ユーニスを制すると、千歳は代わりに水にガムシロップを入れた物を渡す
節約ドリンク、糖分は脳に良いのだ。
「ガムシロ水…」
「ここのは0カロリーじゃない、正真正銘の糖分入りだ」
「オーディション受かって、就職が決まれば、朝はスタバのラテでカフェインを優雅にキめる…」
ガムシロ水トールサイズを、嫌いな食べ物を皿に盛られた犬みたいな顔で睨むユーニス。
「うちのコーヒーは飲み放題よ?しかもタダ」
カウンターの中で、化粧の濃いウェイトレスのお姉さんが、2人に軽口を返す。

フードの少女は、3人の会話を横目に店内を見まわす、テーブル席は誰も居ない。
「……」
千歳とユーニスから席を一つ開けて、少女もカウンターに腰かけた。
「ご注文は?」
すぐに、化粧の濃いウェイトレスのお姉さんが注文を聞きに来る。サービスは良い。
「あ……」
驚いたのか、少女は口をパクパクさせたり、肩にかけていた鞄を、隣の椅子に降ろしたり。
なんだか、わたわたとしている。
その口の中に並んだ歯が、獣のような牙だったのに、ウェイトレスは一瞬驚いたが。
「ごゆっくり、決まったらまた呼んで」
そういって、無料のコーヒーを注いで差し出す。
フードの少女はコクリと頷くとコーヒーカップを包む様に持ち
琥珀色の液体を一口啜った。
「…にがっ」
コーヒーは大人の味だった

苦いがサービスを無碍にはしたくない
「そだ。…ガムシロップ……」
少女はガムシロップを二個摘まむとカップへと流し込む
「…ふぅ」
やっと飲めた
くどい甘さとコーヒーの熱が冷えた身体にありがたい


「ふーん、またオーディション受けるんだ?」
「最近に街に来てるサーカス団の募集を見つけた」
「今度こそ受かるよ、受かってアメリかんDREーAM!」
で、ユーニスと千歳はウェイトレスのベティと会話の最中

「二人ともがんばるわね、羨ましい…私は諦めちゃった口だからさ?」
言ってベティは肩を竦めた。彼女もまたダンサー志望であったが
何かの理由で所属していた劇団を去る事になったらしい。
「ベティさん……。貴女のアドバイス、役に立ってる!」
「そうそう!私達の背中にはベティさんやマスターの皆が乗っているのさー…お?」
二人がそんな話をしていると、皿にハムステーキが飛んできた

「マスター?あ、ありがとう」
「肉!応援ありがとう!」
マスターが振り向かずに腕を掲げ上げた
分厚いハムステーキ、目玉焼き乗せ、コーングリッツ付きだ。
スタミナ朝食メニューに、隣に座っていた少女も思わず注目した。彼女は空腹だった。

「あ…っ」
すぐさま、自分も注文しようとして、一瞬思いとどまると椅子に置いた鞄の中身を
確認し始めた。財布だ。注文してからお金がないという事態は回避したい。
少女は、思慮深い性格らしい。

「ハムステーキ最高ー!……ってうわっもうバス来てる!?」
「もぐもぐ…んん!?」
ハムステーキか、バスか、迷う千歳とユーニスに
「いいから早く行ってきな」
ベティが促す。ユーニスはハムの上の目玉焼きを一飲みにして、千歳は、ハムと
コーングリッツを頬張り、席を立つ。
あわただしく、スマホを鞄に放り込み20ドルをカウンターに置く。

「ま、待って…!」
鞄を肩にかけた千歳の袖を、フードの少女が引っ張った。
「…カバン、私の…」
「あっ…ごめんね」
慌てていて、千歳は自分と少女の鞄を取り違えていた。すぐに少女に鞄を返す。
「チトセー」
店の入り口で、ユーニスが呼ぶ、そっちへ行きかけて、ユーニスにちょっとまって
とサインして、千歳は踵を返す。
「ごめん、私のスマホ、あなたの鞄の中なの」
少女が鞄の中を覗き込んで、スマホを取り出した。千歳のよく見知ったキャラ物のケースのスマホだ。
「チート―セー」
扉を開きながら、ユーニスが急かす。
「ありがと」
スマホを受け取り少女に微笑むと、千歳はユーニスとバスに飛び乗った。

バスが走り去ったあと、少女はカウンターに座りなおした。
「あ、あの…注文…」
「はい、何にする?」
ハムステーキを注文しようとして、少女はなにか違和感に気づく、すぐさま鞄の中を漁りだす。
「どうしたの?」
ベティがそう言うと、少女が顔をあげる、フードが後ろへ落ちた。髪はシャチのような柄である。
「…間違えた!」
少女は、弾かれたように一瞬で店外に飛び出していた。ガラス戸が振り子のようにぐわんぐわんと揺れる。
朝日の中を、銀色のバスは、すでに遠ざかっていた。
………
……


「えーと、会場のビルがここで、受付はロビーでやってます、と…」
オーディション会場周辺を、地図で確認するユーニス、現地で迷わないよう、入念にチェックだ。
今どき紙の地図を見てる奴も珍しいが、ユーニスはアナログ派である。
「はぁ…」
地図をぐるぐる回すユーニスに千歳は小さく溜め息をした
「スマホでマップを確認するか?その方がわかりやすいぞ」
「あーうん、あの付近、事務所多いからちょっと分かり辛い」
この街に詳しいユーニスが分かり辛いと言うのだ
よほどわかり辛いのだろう

千歳が鞄からスマホを取り出そうとすると……
「ママーさめー」
「ん?」
バスの後方座席から子供の声がした
振り向けば、電気鼠の黄色いの帽子を被った子供が
母親の袖を掴み窓を突く様に外を指さしていた

「さめ?」
「あ!例の鮫人間かも!どこどこ?」
スマホで見た記事の事だ。バスは丁度川沿いの通りを進んでいる
「いやまてまて……」
そんな馬鹿な…と思いつつも、窓の外へ視線を向けるのだが……
大型のトレーラーが壁となって視界を遮った。

トレーラーがどくと、道路に平行して川が見えた。市内を縦断する大きな川だ。
川面に朝日がかがやいているが、鮫がいるような様子はない。

「なんも居ないねー」
「そうだなぁ」
ふたたび座席に座りなおす2人。子供がほらいたーとまた窓の外を見てはしゃぐが。
それよりオーディションのことで2人とも頭がいっぱいだ。見向きもしない。

……一方で、川の中。少女が猛スピードで濁った川の中を突き進む。
早い!魚雷めいて推進する姿は人間離れして、まるで魚のようだ。息継ぎもしていない!

川底の堆積物を巻き上げ、小魚の群れを蹴散らして直進、ザバッ!一瞬水面へ
飛び上がり、並走するバスを確認し、再び水中へ。
市内バスはのろのろと走るものだが、それでも時速50劼禄个討い襪里法

バスが交差点をまがり、川から離れて市街へ向かう。
少女は川から飛び上がり、追って走り出した。
「なんだ!?」
驚いた釣り人が椅子から転げ落ち、川へ転落!

脅威の身体能力で走って追うのかと思いきや、少女はタクシーに飛び込んだ。
「今通り過ぎた、バス…追って!」
「こういうの今週3度目だな」
慣れた感じでタクシーの運転手は走り出した。

「…私、そう。起動キーを持っていかれた…。今追ってる。居場所を追跡、して。
…ちがう、奪われたんじゃない、間違えて持っていかれた…」
首に着けた骨伝導型マイクセットを押さえて、少女は誰かに連絡を取っている。
『まずいことになったね、すぐに仲間と向かう、見失わないでくれよ。それと、
オルカ、君の仲間も追ってきた、それに万が一…』
「大丈夫、まだインストールはされてない…」
少女、オルカは通信を切る。
「次のバス停まで先回りしてやろうか?」
運転手は慣れていた。
「行けるのか?おねがい!」
「ははっ!孫に頼まれた気分だ。シートベルト絞めな!」
「うん」
シートベルトが固定されるカチリと言う音を合図に
タクシーが加速した。

裏道を右へ左へ進むタクシーに揺られ、少女は思う
「(うかつうかつうかつ…パスワードを設定すれば良かった
もしあのアプリを起動されたら……)」
少女はネット意識が甘かった


で、一方その頃……
「…そう言えばカジノのシフト!今日は入れてなかったよな…?」
千歳は再び鞄からスマホを取り出そうとする。しかし……
「チトセー喉乾いたー」
「んあー!飴でも舐めてろ」
ぬーんと千歳の肩に顎を乗せるユーニス
千歳はポケットから取り出した大粒の飴をユーニスの口に放り込んだ
「こーら味だありがと、もごもご。あ、もうすぐ到着だよー」
「もう到着か……」
千歳はシフト確認を後回しにし、鞄を肩にかけた

「降ろして!」
信号待ちでタクシーが止まった時、ちょうどバス停にバスが入って来た。
運転手に紙幣を押し付けると、オルカは道路の真ん中で飛び出した。

止まっていた車のボンネットを飛び越えて、人をかき分けてバスに飛び込む!
「居ない…!?」
千歳とユーニスの姿がない、さっき降りてくる人の中にもいなかった。
オルカは鞄から千歳のスマホを取り出して、臭いを嗅ぐように顔の前にかかげ、目を閉じた。
だが、臭いではない。
意識を『人間には無い感覚』に集中させたオルカの瞼の裏に、ビジョンが浮かぶ。
暗闇に、光の筋が無数にうごめく、奇妙な映像…それが彼女の知覚の世界で。
通勤者が持つスマホや携帯、車の電装系、空を飛ぶ鳥、排水溝に潜むネズミ…
そして、スマホから飛び出す無数の電波が空中に軌跡を描き、ひと際輝くのは、地中の送電線、通信網…。

彼女の知覚は、周囲のあらゆる電磁気を捉えているのだ!
そして、電磁気の洪水の中から、スマホの持ち主の固有パターンを特定する。
標的は2ブロック先の通りを曲がったところに居る、その間には、いくつもビルが
立ち並び、通勤客でごったがえし、車が渋滞しているのに。正確に特定した。
もはや超能力である。

「ううー緊張してきたー」
「だからって抱き着くなよ」
廊下でパイプ椅子に座りながら、ユーニスは、隣の千歳にしがみつく。
他にもたくさんの、応募者達が並んで順番を待っている。
瞑想したり、何か呟いたり、ノートを見てイメトレしてる者もいて、それぞれに集中力を高めている。
厳かな雰囲気は、まるで試験会場めいて、緊張を高める。

「ヒーリング動画でもみといたらどうだ」
千歳がスマホを取り出す。ホーム画面をみて、首をひねった。
「…あれ、私いつのまに壁紙かえたっけ…」
見慣れた画面ではなく、表示されているアプリは1つだけ。
故障か?と千歳が思った時
「あむっ…はむっはむ…」
「ひゃぁぁぁん!?」
ユーニスがいきなり耳を舐めてきた。
全ての視線が二人に集まる。当然、千歳の顔を真っ赤に。
「ああ…うう、すみませんすみません」
「スミマセーン」
千歳はユーニスの頭を押しながら一緒にぺこぺこと頭を下げる

「急に何するんだよ」
「いやさーチトセの耳舐めると落ち着くからー、それに……」
「それに?」
「チトセも落ち着いたでしょ?」
まったくコイツは……


「いた!」
階段を上り切ると同時に少女は二人の姿を見つけた。しかも手にはスマホ
黒髪の様子から察するに、まだキーは起動されていない
廊下は一直線、ここからダッシュで接近すれば
スマホを奪いそのまま建物の外へ撤収出来るはずだ
「はぁぁ……」
少女は脚の筋肉を緊張させる

「よし!…ひゃあ?」
ダッシュしようとした瞬間、少女の腕を何者かが掴んだ
「あらあら?貴女のオーディション会場はこっちよー☆」
「え?」
見上げれば星型眼鏡をかけた派手な出で立ちの女性?匂いは男性だが……
その彼女だか彼だかが少女の腕を強く掴んでいる

「オーディション?私はちが……」
「緊張しなくても大丈夫よー☆」
そのまま少女は別の廊下へと引き摺られて行った

「次の5人、中へどうぞ」
いよいよ千歳とユーニスの番がまわってきた。書類選考と、基礎的な身体能力を
みる2次審査まではパスしている。この最終選考は大きなチャンスだ。

正直、緊張しすぎて、自己紹介のあと何をどうしたのかよく分からない。
無我夢中ってやつだ。
面接官の一人が、有名なショービズ関係の雑誌で、表紙になってロングインタビュー
されていた有名人だということは、一目見てわかった。
そして、自分たちの目指す道の、遥か先にいるレジェンドを前にして、緊張で
全身が泡立ったような感じだった。

ユーニスはそんな状態だったし、隣の千歳も同じだったろう。
「では何か、各自PRなどはありますか?」
面接も終わりごろ、そう言われて、やっと我に返った。
「はい!はい!私達ダンス動画作ったんです!youtubeにあげたやつで!
5分…3分ぐらいなんでみてくだしゃい!」
ユーニス、噛んだ。

「順番に聞きますから…」
「いいよ、彼女たちから見よう」
秘書っぽいスーツの人を制して、Mr.レジェンドが言ってくれた。
「千歳千歳!あの動画!あの動画!スマホで!」
「あ、ああ…でも、スマホが、壊れてて…」
「ええーっ!?」
「そうか、じゃあ、次の君」
「はい!」
千歳とユーニスの隣の少女が、返事をして立ち上がる。

…同時刻。別のオーディション会場では。
「あらー、あなた書類提出してないのね?まぁいいわ、お名前は?」
「お、オルカ…」
「いいわぁ☆オルカちゃん、そのヘアスタイルは、ママにしてもらってるの?」
「これ…地毛…です。あと、わたし…オーディション…違っ…」
「シャァイなのねぇ!でも私わかるわ、あなたには原石が眠っている!
自分の可能性を押さえこんじゃだめ!解き放って!」
「え、ええぇ…」
フードで顔を隠そうとするオルカのフードを払いのけて、星メガネのオネェが迫った。
………
……

「まずいな……」
「ここのコーヒーは安いけどまずい事で有名だからねー」
言って千歳とユーニスは同時にコーヒーを啜る
やはり不味い

「通称『フェアリアコーヒー(失敗コーヒー)』
これより高くて美味いコーヒー飲める様に頑張れって事なんでさー」
「なるほどな…これより高くて美味い…か……」
そう言って二人はコーヒーをもう一口啜る
「ふぅ、やっぱりまずいな」
「うん、まずいねー……」

何度かオーディションに落ちれば、結果を聞く前に自分達の合否の検討も付く
二人の演技が終わった後の面接官の顔。
もどかしさ、あるいは物足り無い…そんな表情をしていた

「今日は思いっきり疲れて寝たい気分だよ」
「だねー。カジノバイト入っていた気がするけど、どう?」
「今確認する…あ!それよりスマホだ!」
今持っているスマホは多分千歳の物ではない。
ダイナーで少女と鞄を交換した時に取り違えた物だ

「それチトセのじゃないの?」
「多分だけど、…やっぱり違う」
取り出したスマホを見れば型は同じ物だが。見慣れた傷や画面隅のヒビが無い。
「どうするか……、そうだ自分に電話かければ……」

ガシャーン(窓の割れる音)
「やだー!」
背後でガラスの割れる音と幼い少女の声が響いた
この街で、事件は日常茶飯事だが、どう聞いてもただ事で無い
確認のために振り向いた二人は同時に同じ事を言った
「「鮫人間だ!?」」
窓を突き破ってビルから飛び出したオルカがハッと顔をあげる。
千歳とユーニスが見上げる先に鮫男達が立ちはだかる。

「何あれ」
「映画の宣伝か?」
オフィス街の通行人たちは、突然マンホールから出現した身長3m近い、鮫の被り物をした
宇宙服めいたダイバースーツの大男の集団を、遠巻きにし、スマホで撮影する。
サンアッシュクロスは海辺の街だ、街の地下には、海につながる暗渠が、無数にあり、
マンホールは出入り口だ。

「GROURRRRR……」
鮫男の頭部のヘルメットの牙の間から、猛獣の唸りめいた声が漏れる。
「君たち、ちょっといいかな?撮影か、イベントかなにか?
届け出が無いみたいだし、交通を妨げているようだから、確認をさせてもらえると…」
現実の警察官は、フィクションほど高圧的ではない、特に都市部のはそうだ。
相手を無駄に刺激するのはプロの仕事じゃない。
なのだが…。
警官の体が鮫男に殴り飛ばされて宙を舞い、パーキングスペースの車のボンネットを凹ませた。
ピュイピュイピュイピュイ!防犯アラームがけたたましく鳴り響く。

「GROOOOOOOOOOOOOOOOOWL!!!」
鮫男達が雄叫びをあげ、通行人たちは悲鳴をあげ逃げ惑う!
「私の思ってる事わかるか?」
「うん、多分私と同じ事考えてるー」
ユーニスと千歳は正面の騒ぎからは目をそらず
ムーンウォーク気味の摺り足でジリジリと後ろへ下がる

「じゃあ…いつもので行くぞ」
「オーケー」
さらにジリジリと後退する二人
警察官がまた一人、鮫人間に吹き飛ばされた
それに騒ぎが徐々にこちらへ近づいている気がする
いや、確実にこちらへと近付いている

「やばいな、わん、つー……」
「やばいね、すりー、で……」
「「走り出せ!」」
二人はダッシュで逃げ出した
「こっち来てるなんかこっち来てる!」
「うわぁぁ!走るとおっかけてくるタイプだったか!?」
鮫男の一人が、足音を響かせ突進する、2人の背後に迫るメタルな鮫の牙!

ドガッシャァァ!!!横合いから黒塗りのバンが飛び出し、鮫男を轢いた。
吹っ飛ばされた鮫男は、車のボンネットを凹ませ、フロントガラスを割る。
タタタッ!タタタッ!バンから飛び出した特殊部隊のような集団が、倒れた鮫男へマシンガンを浴びせる!
車は一瞬でスクラップ、運転手が這うように逃げ出した直後、爆発炎上!

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
爆発の中から無傷の鮫男が飛び出し、特殊部隊を相手に乱闘をはじめた。
仲間の鮫男も集まり、まるで怪獣パニック映画のワンシーンである。

「ハハハ!さすがにこの街でもこんな派手なのは初めてだねー!」
「いいから走れー!」
二人は走る。通りをひたすら逃げ走る。
ダンスで鍛えた足は、一般人よりも速く走る事が出来る
が、しかし

「走る鮫って卑怯だろ!」
「泳ぐように走ってるよー!」
「SUMAHOOOOOOOO!GAEZEEEEEEEE!」
鮫の頭部は空気の抵抗を軽減し
二人より長い脚で地面を割る様にしながら追って来る

「そうだ!上に逃げるぞ!」
「上?飛ぶの?」
千歳の言葉にユーニスは上を指差した
「違うアレだ!」
「アレかー!」

二人は近場のビルに近づくと
建物側面のパイプを掴みスルスルと上り始めた
「ポールダンス練習しててよかったー」
「芸は身を助けるってヤツだ」
2人の横をワイヤー付きの銛が飛んだ、直後、ワイヤーに引っ張り上げられて
鮫男が足場の上に登ってくる。

「なにそれズルイー!」
「なんで私達だけ狙われるんだよ!」
狭い足場の上を千歳とユーニスは走り出す!
「マデッ!」
追う鮫男、だが巨体が邪魔で走りにくい。

足場の階段がある、上か、下か。
「千歳!上!」
「分かった!」
意図を理解した千歳は頷くと、階段を駆け上がった。
鮫男が腕からワイヤー銛を発射した、ビルの鉄骨にひっかけ先回りするつもりだ。
だが、2人は階段の途中で、足場の隙間を潜り抜け、下の階の鉄骨に着地した!
そのまま、足場よりもさらに狭い、建築中のビルの鉄骨の上を走りだす!

「グゥゥ…」
完全に裏をかかれた鮫男は距離を離される。
鉄骨を掴み、ぶら下がりながら下の階へと飛び降りる鮫男。二人はさらに跳躍する
ビルの3階相当の高さ!怪我は免れない、が!
地面に着く前に、隣の建物の塀に着地、落下速度を落とし、さらに塀の上から
室外機の上に飛び降り、最後は難なく狭い路地に降り立った。

「はぁっはぁ…パルクールも練習しておいてよかったねー」
「はぁ…だな」
速度を落とした瞬間だ!バゴゥッ!塀を突き破り巨大な手が2人の目の前に突き出される!
直後、壁を破壊して鮫男が出現!
「スマホ ヲ゛ガエセ!」
「「うわぁああ!」」
2人は悲鳴を上げ、再び逃走を再開する。
「しつこい!」
「チトセあそこ!」
ユーニスがアパートとアパートの間の狭い隙間を指さした
二人の肩幅でやっと通れそうな程の隙間

「わかった!帰ったらシャワー浴びるぞ」
「だねー!」
二人はそのまま隙間に身を滑り込ませる

「GAAAAA!GA!?」
当然ながら鮫男も隙間へと強引に入り込んでくる
左右のアパートの壁面をガリガリと削りながら前進する
しかし、前方に二人の姿は無い


「よし!このまま一気に上に上るぞ!」
「うひークモだ、あ、そこで前に行こう。窓から中に入っちゃお」
「不法侵入になるが…仕方ないか……」
二人は二つの壁に手と足を突っ張らせ昇り
三階辺りに差し掛かった付近で前の方へ進み始めた
が、その時ガリガリ音が近付いてくる……

「GROAAAAAAAAA!」
鮫男が昇って来る。身を捩り肩を壁に食い込ませながら上がって来る
「ちっ!気付かれたぞ!」
「え?え?あれだ!踏んで飛ぶよ!」
「踏んで飛ぶ?あれか!」

「たぁっ!」
「うりゃ!」
「UGA!?」
二人は突っ張るのやめ、鮫男へ垂直降下すると
鮫男の頭を踏み台にジャンプ!そのまま垂れたワイヤーを掴み
空中ブランコの要領で外へと飛び出した
しかし、飛び出した先は道路……

「何もないぞ!?」
「ある!ジャッキー・チェン出来る!」
二人が飛ぶ先には縞模様のオーニングシェードが待っていた
レンガ造りの古いビルの谷間に放り出される2人
「うわわっやっぱ止めとけばよかったかも!」
「今さらかー!?」
1枚目のオーニングシェードを突き破り、2枚目もすぐに突き破る!
イメージしてたより落下速度が速い、手をつなぎ、覚悟を決めて最後の1枚に飛び込んだ!

果物屋の店先を盛大にひっくり返して2人は道路に着地する。
「いてて…大丈夫?生きてる?」
「着地はちょっと失敗だったな…」
鮫男は居ない、店の人に怒られるまえに、一先ずこの場を離れよう。
だが、怒られる心配はあまりしなくてよさそうだ。店員も通行人も落ちてきた二人より
ビルの上に注目している。

「あいつだ!」
「屋上に行ったってことはまさか…」
嫌な予感が的中した、鮫男は助走をつけると躊躇なく空中に飛び出した!
ドォン!!二人がひっくり返した果物屋の店先をさらに破壊して着地!

「何こいつ、ズルイ―!」
「もう勘弁してくれぇ!」
とにかく走る!走るっきゃない!

「どこか、どっかに隠れよう!」
「ああっ息がもたん…!あそこだ!」
2人は路地を曲がり、ゴミ箱に飛び乗ると、窓から中へ飛び込んだ
遅れて、鮫男が路地にはいってくる。

「……」
「……」
荒い呼吸を必死におさえ、2人は薄暗い倉庫で息をひそめる。
重たい足音が窓の外から聞こえる。

やがて足音は小さくなり、そのまま聞こえなくなった
「…暫くは大丈夫そうだな」
「チトセーそのそのスマホ捨てない?」
ユーニスの言葉に千歳は<●><●>な目を向けた

「ほらほら、だってあの鮫どう考えてもスマホ追ってるよー?
SUMAHOOOOO!って叫んでたし」
言ってユーニスは両手をガオーのポーズにする。ちょっと可愛い

「そうかもしれない、ならスマホを捨てるのはダメだ」
「なんで?」
「元の持ち主のあの子が危ない目に合うかもしれないからだ」
そう、もしスマホが追われる原因であるとするなら
元の持ち主である少女にとって重要な物である可能性が高い
もしこのスマホを捨てた事で取り返しの付かない事になってしまったら……

「はぁ、まったく…チトセは時々優しすぎるよ」
「おまえほどじゃないさ?」
「…!…ワタシはチトセだけだしー、そんなじゃないもん!」
急にツンデレになるユーニスさん

「何やってんだよ…とにかく、スマホを開いてみるか……」
そう言うと千歳はスマホの電源をONにした
「ロック画面も無いねー?」
「本当に重要なスマホなのか…?そう言えば…このアプリ……」
画面中央に意味ありげに鎮座するアプリのアイコン
起動すれば何かわかるかも?と千歳はアプリをタップした……
………
……

ビルの外をうろついていた鮫男の鼻先に、電流のスパークが走り。
突然、その場に膝をついた。
「GURRRRR…」
苦し気にうめくと、まるで目が眩んだかのようにふらふらと手探りで路地から遠ざかる。

同時刻、オフィス街で特殊部隊と乱闘を繰り広げていた鮫男達にも異変が現れた。
掴み上げていた隊員を放りだし、鮫男たちは皆同じ方角を見上げている。
どういう理屈か、千歳とユーニスが居る方角である。
「イクゾ ミツケタ!」
特殊部隊には目もくれず、鮫男たちは暗渠につながるマンホールへ次々に飛び込む!
真っ暗闇の川の中を、鮫の群れが、魚雷のごとく突き進む。
………
……

「チトセ!チトセ!」
「Installation process 1…2…3……」
千歳がおかしくなった
ユーニスは声をかけ続けるが、千歳は奇妙な事を言い続けるばかりで
声に全く反応しない
「チトセが壊れちゃったよー!」
………
……

『ここはどこだ?』
いくつもの星が流れる中を千歳は飛んでいた
まるで自分の身体が溶けてしまったような不思議な感覚
感覚と言って良いのかわからない
自分がどんどん広がっているどんどん……
『あ、誰か呼んでる……』


「……ッ!……チトセ!」
千歳の肩を掴み、ユーニスが必死に名を呼んでいる。
「ん…ううん……?」
千歳がまぶしそうに眉をひそめる、今まで周りを取り囲んでいた
洪水のような流星は消えうせ、薄暗い倉庫の中が見える。
視界がぼんやりして焦点が定まらない。耳鳴りもして、音がくぐもって聞こえるが
確かにユーニスの声が聞える。

「大丈夫!?急に意識がどっか行ったみたいになってたよ!?」
「わからない…なんか、急に光に包まれて…目の前がまぶしくなって…」
「光…?」
一緒にスマホを見ていたが、ユーニスはあの光景を見ていないようで。
「うん、光の海の中を星がこうぱぁーって……」
「アニメでそんなシーン良くあるけど、異世界に行ったのかなー?」
「そんな馬……」
千歳が『馬鹿な』と言いかけた瞬間、二人の横の壁が吹き飛んだ
壁材が鉄筋ごと吹き飛び、二人が入ってきた窓ガラスが粉微塵に砕け散った
「ひゃあ!?」
「わぁ!?」
何事と振り向けば、壁に穿たれた穴から太い腕が突き出している

「映画でこんな場面見たー!」
「私も見た事ある!逃げるぞ…あ?」
「チトセ…?」
立ち上がろうとした千歳の身体がグラリと揺れ
床に転がりそうになってしまった
慌ててユーニスが抱きとめるも千歳はふらふらの状態

「こんな場面もあったな……」
「冗談言ってる場合じゃないよー!」
ユーニスには珍しい取り乱した声
腕に続き、突き出すのは鮫だ!しかもこんどは1匹じゃない、ピラニアのごとく
群れて、壁はあっさりと崩壊した。

「だめだ、立てない…ユーニス先に逃げて…」
「何言ってるのしっかり!」
とっさの時に、人は映画みたいなことをしてしまうものだ。
千歳を担いだユーニスごと、鮫男の一人が放ったネットガンに捕まった!

「トッター!」
「ウォオ!!」
「オォー!!」
頭に赤い傷がある鮫男が千歳とユーニスを網ごと掲げあげ、他の鮫男達が雄叫びをあげる。
少し離れて様子をうかがっているのは、2人を追い回していた鮫男だ。

急ブレーキ!車体を傾かせながら、黒塗りの大型バンが路地の入口を塞ぎ、バタタタッ!
特殊部隊風な集団が容赦なく銃撃を浴びせる!

赤い傷の鮫男に放り出された2人は、銃撃の真っただ中で身動きがとれない!
「うわわわわっ!?ストーップ!民間人がここにいるよー!」
「これは夢だ…ぜったいそうだ…頭がぐわんぐわんする…!」
網に囚われた千歳とユーニスにお構いなしだ!
その時だ、2人の前に鮫男の一人が立ちはだかる、頭のメカ鮫に銃弾が弾かれて火花が散る。
片目が撃ち抜かれて煙をあげた。

他の鮫男達は、背中の鮫メカの胸ヒレを敵に向ける。
ヴォドドドドドドドドドド!!!マシンガンよりも野太い銃声!一瞬で路地の壁が、
非常階段が、ゴミ箱が、黒塗りの大型バンが穴だらけにされ、黒塗りの大型バンは爆発炎上
特殊部隊風な集団も吹っ飛ばされる!

「チトセ、当たってない?へいき!?」
「へいき…たぶん…」
網のなかでもがく2人に、片目の鮫男が手を伸ばそうとすると、横から赤い傷の鮫男に
頭突きで突き飛ばされた。
「オレ ノ ダ!GROAAAAAAAAA!」

鮫男達が通りに踏み出した途端、サイレンの音に取り囲まれる。何台ものパトカーが
こちらへ向かってくる。
サイレンをかき消すエンジン音とご機嫌なBGMとともに、真っ赤なオープンカーがドリフトで
横づけする。運転手は鮫男だ!

「あだっ」
「ぐえっ」
後部座席に2人を乱暴に放り込むと、鮫男達はオープンカーに箱乗りになって急発進する!
軋むタイヤ、唸るエンジン、追いかけるサイレン、ボリュームがあがるご機嫌なBGM!

上空には報道ヘリまで飛来して、警察とのカーチェイスを追う。
「ハッハー!こりゃすげぇ、撃ち合いながらカーチェイスしてやがら、まるで映画だぜ!」
ヘリから身を乗り出したカメラマンが、LIVE中継の視聴者数に興奮して叫ぶ。
「やったぜ、うちの中継がトレンド3位だ!」
「何?1位じゃねぇのか?」
「1位は#shark human」
「2位は!」
「おーぅ…かわゆい猫ちゃんだ」

そして、トレンド1位をかっさらった鮫集団は、目下空港への橋の上を爆走中だ。
けたたましく鳴り響くサイレンとご機嫌なBGM、そして銃声の応酬!
「オトナシク シテロ!」
「言われなくてもしてるよ!こんなとこで放り出されたくないし!」
後部座席の床に潜り込むように、千歳とユーニスは身を隠す。
というか網で身動きは取れないし、千歳はまだ目が眩んでるし。すぐそばで
鮫男がヴォドドドドド!とごっついマシンガンぶっ放してるし。

バガンッ!鉄板を金槌で撃ったような音が耳をつんざく!
「何!?なにぃ!?」
「ぐえっ…ゆーにす…重い」
「わたしじゃないー!っていうかどいて!チトセが潰れちゃうって!」
応戦していた鮫男の一人が、撃たれて倒れたのだ!
ユーニスは、身を隠すだけの恐怖心に耐え切れず。顔を出して後ろを覗いてしまう。

パトカーを押しのけ、新たな黒塗りのバンがエントリー!しかもその屋根には
銃座に据えられたガトリングガンが!
ヴォオオオオオオオオ!!ガトリングガンが自動制御で左右のパトカーを撃ち抜く!
パトカーは爆発炎上し、後続を巻き込み横転!
ガトリングは自動制御で狙いを赤いオープンカーへ。ヴォオオオオオオオ!
急ハンドルを切るオープンカー、すぐ横を破壊的な着弾点が秒間100発、アスファルトを穿つ!

「あああやだー!降ろして―!…やっぱ置いてかないでぇ!」
「耳元で叫ぶなー!頭がゆれ…うぇ…」
ヴォオオオオオオオ!車体に火花が散り、後部タイヤが破裂、トランクが開き、中から
大量のシーフードがまき散らされる!
オープンカーは制御を失い、ガードレールを突き破る!

虚空に鮫男達と、オープンカーと、シーフードの雪がスローモーションに舞う。
きっと、死に直面した脳が見せる意識の加速現象ってやつだろう。ユーニスはそう思った。
そして、視界の中から片目の鮫男がこっちに手を伸ばそうとしているのが見えて…。
そのまま、海の中へと沈んでいった。

オープンカーが落下した地点に、黒塗りのバンが急停車すると、中から特殊部隊めいた
集団が降りてくる。
1人だけ、素顔を晒している、30代前後のカミソリのような顔つき、東洋系だ。
「足止めしろと言ったんだ、突き落とせとは言ってないぞ!」
「グハッ!もうしわけございません……」
隣に居た部下を殴りとばし、鮫男達の沈んだ海面を睨みつける。
そして、おもむろに手に持っていたライフルのような武器を背後に向ける。
カォン!光弾を発射!頭上を飛んでいた報道ヘリが海面へ墜落した!
「撤収だ…奴らはアジトへ戻った」

◆2 Edit



………
……


かなりの高さから海面に落下したが、どうやら無事だったようだ。
海中に入った鮫男達が変形し始める、着ぐるみで言えば頭の部分、
鮫男の頭部が、フードを取るように脱げたのだ。しかし、あるべきはずの
人の頭がない、代わりに背中の鮫部分が、鮫本来の体型になり、折りたたまれていた
尾がメカニカルに伸びて、まさに機械の鮫となって泳ぎ出したのだ。
鮫男の胴体は首無しで、ただの機械だったのだ!どうりでターミネーター並に強いはずである。

鮫は、濁った暗い海中を、どんどん深く潜っていく。
どんどんと……千歳とユーニスはほっとする間も無く、新たな命の危機に直面する。
鮫たちは当然のごとく、海面に戻るつもりなどないのだ!

「(やばいやばい…もうすでに息が…!)」
必死に息を止め続けるユーニスだが、鮫男達が、どこへ向かうのか、あとどのぐらい
泳ぐつもりなのか、もしかしてあのスーツの中身も鮫で、このままずっと水中なのでは!?

サバイバルの3の鉄則だ、人は食料がなければ3週間、水なら3日、そして空気が
なければ僅か3分で死に至る……。
必死に生きる方法を探り、脳が記憶をフラッシュバックさせる。
生命の危機にあって、体は、まず己を生かそうとするのだ。

だが、その時、すぐ隣の千歳が、すでに意識が無いことに気づく。
ユーニスは、とっさに、そして躊躇なく、千歳の口を自分の唇で塞ぐと、
肺に残っていた、なけなしの空気を吐き出す。
それは生存本能すらねじ伏せる、強い感情の発露で。
……やがて、薄れゆく意識の中、暗い水底に、幾つもの眩い光を見た……。

………
……


ユーニスが見た光は、実にそれっぽかったが、臨死体験ではなかった。
光を見た直後、2人は、クジラよりも巨大な鮫の口の中に飲み込まれたのだ。

そして、誰かに押し上げられて海面に顔を出す!空気がある!
「ぶっはぁ!はぁ…はぁッ…げほっ!はっ!チトセー!?生きてる!?」
必死に、抱きしめていた千歳を揺さぶる。

すでに網には囚われていない、辺りにゴウゴウと水流の音が反響している。
赤いランプが、荒れる海面と、巨大な機械鮫の腹の中を照らす。
まるで、水没した巨大プラントの内部めいている。
「……くはっ…はぁはぁ……」
「チトセ…!?」
ユーニスの腕の中で千歳が咳をし早いを呼吸を始めた
肺に入った水を吐き出した様だ

「チトセー!チトセー!生きてたー!」
「ああ、生きて、る…苦しい、死ぬ……」
ユーニスに強く抱き締められ
チトセの意識は再び消えそうになっていた
「ぬあぁごめん!」
慌てて力をゆるめ、水から上がれそうな場所を探すと、いい具合に階段がある。
ユーニスは、千歳を引っ張って階段の上に引き上げた。

「で、ここはどこだ?…地獄か…そうなると。私達はやはり死んだ…?」
泣きじゃくるユーニスの頭を撫でながら、千歳は周囲を見渡すが
闇の中、自分達を照らすのは不気味な赤い光
直前の状況を思い出しても、やはり死んであの世に来てしまったとしか思えない

「ここは多分鮫の腹の中だよ!」
「…やはり死んだか…オマエと一緒に死ぬことになるとは……」
「違うよー!多分ロボット鮫!それかグレートシングみたいなクジラロボに飲まれたんだと思う」
どちらにしても碌でもない状況ではある様だ

「…とにかく、状況は理解した。そうなるとここは鮫人間のアジトみたいなものか……クシュン!すまない」
「いいよ、身体が冷えてきたのかもね?こう言う時はお互いの体温だよ!」
「だから強いって!」
くしゃみするチトセをユーニスは強く抱き締めた
「最近こんなばかりだな…それと、……ありがとう」
「いいって事よー、んふふ。チトセがなんか可愛い!いつもかわいいけど!」
「いや、よくわからんが礼を言わないといけない気がしたんだ」
溺れ死にの危機を脱し、文字通り一息ついて喜ぶ2人だが、長くは続かない。
ブガーッ!ブガーッ!鳴り響く警告音、そして、大量の水が排出される轟音!

抱き合って、不安げに様子を伺う千歳とユーニスの目の前に、海水プールから
飛び出した人影が着地!頭に赤い傷の鮫男!今は鮫男形態だ!
警告音が鳴りやむと、照明が灯り、不気味な鮫男のシルエットが、威圧的に浮かび上がる。

「……!」
「……ッ」
目が慣れて見えたのは、バスケットコートほどの広さの、宇宙船のドックのような空間に
整列する鮫男達の姿だ。おもわず、息を飲む。
「……間違いない、鮫人間のアジトだ」
「わ、私たちをどうする気なの…」
立ち上がり、後ずさると、後ろの手すりに背中が当たった。二人が立っているのは
ドック全体が見渡せる、ロフト部分だ。足元は滑りにくい素材で出来ている。

「……」
赤い傷の鮫男は沈黙。
「な、なんとか言ったらどうなの!溺れ死ぬところだったんだよ!」
気丈に言い返すユーニスに
「……たった5分息を止めた程度でか?」
鮫の中からくぐもった、しかし妙に可愛らしい声が聞こえる。
その瞬間だ、圧縮空気の排出音!機械の鮫の背中がメカニカルに展開して、中から幼女が現れる!
「はーっ!ニンゲンは弱っちいなぁ!」
鮫男の頭の上から、鮫色のツインテールの幼女が、噛みつくような嘲笑で2人を見下ろす。
ドック内に整列した鮫男達も、次々に背中が割れて、中から次々に幼女達!みな水着のような恰好だ!
「え?え?え?」
ユーニスと千歳は一緒に『え?』を連呼した
仕方が無い、あまりにも衝撃的すぎる
二人を命の危機にさらし、街に恐怖と破壊をばらまいた鮫男達の正体が
都市伝説の怪物でもむさ苦しいマッチョでも無く
愛らしい幼女達だったのだから

「フンッ!アシカかよ、食っちまうぞ!」
「ウィウィは呆けていないでちゃんと話せと言ってる」
「…驚くなナと言うのがムリ」
口は悪いが愛らしい声は幼女のそれだ

「チトセー…私やっぱり天国にきたかもー天使がいるー」
「…おまえってそう言うヤツだよな……」
とりあえずユーニスの脇腹は肘打ちしておいた

「寝ぼけてんじゃねぇぞ、ここはてめぇの鮫地獄!俺達は鮫ギャング団だ!
で、俺のお宝をどこにやった、さっさとだせ」
鮫男が身を屈める、ウィウィと呼ばれた幼女が2人を覗き込む。
「ちょっとまって、ウィウィ、私達何も取って無いよむしろいきなり追っかけまわされて
何がなんだかっていう感じで…っていうか鮫ギャング(笑)」
「ウィーゾルだッ!ウガーッ!」
吠える幼女の口内に、鮫めいた牙がならぶ!ユーニスは、思わず息を飲む。
「ニンゲンは不味いからな、ふつーは食わねぇが。俺は味なんか気にしねぇ。
さっさと吐かねぇと……」
ガヂンッ!!ウィーゾルは鮫牙を鼻先で噛み慣らす。鮫的な威嚇術!

「ウィウィ、食べちゃ駄目」
「…オ宝ハ、小さい奴の中にアル。コイツ、メッチャ光ってる」
ウィーゾルの左右に侍っていた2人の鮫幼女が、千歳の腕をつかみ、指さす。
鮫色のお団子ヘアのハンマーと、鮫色髪で、やけに前髪の一部が長いソウだ。
ハンマーは言葉が流暢で、ソウの方がカタコトである。
「あん?」
目をすがめてウィーゾルが覗き込む。
「ウィウィ、よーく”見てみて”」
ハンマーに促されウィーゾルは、目を閉じる、真っ暗な中に稲妻のような光の流れ
だけがある。
『人間には無い感覚』電磁気を捉える特殊な知覚の中で、千歳の姿だけが細部まで
光で描きだされるようにはっきりとしている!

「こいつは…」
ウィーゾルが目を開く、そして…。
「……こいつを食えばいいのか?」
「食べちゃ駄目」
ハンマーに突っ込まれるウィーゾル

「だめぇ!千歳を食べるなら代わりに私を!」
「オ前はウルサイ」
ソウに蹴られるユーニス。
「アウチ!」
「ユーニス!」
千歳は跳ねる様にユーニスに抱き付くと
黒い瞳でソウをキッと睨んだ

「チトセ…私は大丈夫、むしろ幼女のキックはご褒美……」
「おまえなー!バカ!」
「…なんかごめん」
涙目になる千歳に、ユーニスは肩を竦め頭を撫でる
そんな二人のやりとりにソウが小さく呟いた
「オマエら仲イイナ……」
「…?」

「GROAAA!茶番はまっぴらだ!コイツらを牢屋に放り込んでおけ。後で調べる!」
「ウィウィ賢明な判断。おまえ達も静かにしていれば危害は加えない」
荒ぶるウィーゾルを宥めながら、ハンマーが告げた

「わかった…わ?わ?わ?」
「幼女ミコシだー!」
「MEGの間に連れて行け!」
千歳が頷くと見ているだけだった幼女達が二人へ集まり担ぎ上げ
そのままワッショイワッショイとばかりに運び始めた
この幼女達、見かけによらずツヨイ!?

幼女達に運ばれていくユーニスと千歳
「…!」
「…あの子は」
ドックの片隅に佇む少女。千歳はその姿に見覚えがあった……

連れ去られる2人を、片目の鮫男から降りたオルカは思わし気に見つめると、パーカーの
鮫フードを目深に被った。
「よぅオルカ、いつの間に戻って来てたんだ?」
「あぅ…っ」
フードが乱暴に払いのけられる、ウィーゾルとハンマー、ソウが、オルカに詰め寄る。
「へっ鮫のくせに相変わらず変な頭してやがんな、シャチ野郎が」
オルカの髪は、他の鮫幼女と違いシャチ柄だ。
「どっちつかずの半端者」
「オカしな奴ダ、ヘッヘッヘ」
ウィーゾルに倣うハンマーとソウ。
「……最初から、ずっと居た」
目を逸らして、オルカはフードを被りなおして背を向ける。
「まんまと戻ったからには覚悟はできてるんだろうな、調べればすぐにわかるぞ」
「裏切リ者への処罰は…」
「縛りクビ、ダナ」
背中に嘲笑を受けながら、オルカは無言で立ち去る。他の鮫幼女達は一歩引いて道を開けた。

………
……


「はぁ……」
「えぇ……」
一方でその頃、千歳とユーニスは、放り込まれた牢屋でぽかんとしていた。

壁には、クジラの頭のハンティングトロフィー、いい感じのフローリング、白い天井には
シーリングファン付きシャンデリア、そして、セミダブルのベッドメイキングされた
ベッドが2台。船窓はモニターで、コーラルリーフの海がエンドレス再生されている。
大型テレビと冷蔵庫もあり、wifiのIDとパスワードのメモも置いてある。
クラシックな豪華客船の船室風で統一された、豪華なインテリア空間である。

「ドイテ、ジャマ」
2人の間を、清掃ワゴンを押して、エプロンをした鮫色の髪の幼女が出て行った。
鮫色の髪の幼女が部屋を出て行くと
二人は視線を部屋へと戻した
「…こんな部屋掃除した事あったな……」
「うん、一泊一万$だったかなー」

ウィウィ…ウィーゾルと呼ばれた幼女は
ユーニスと千歳を牢屋へ連れて行けと指示していた
そして幼女達にワッショイワッショイと運ばれ
放り込まれたのがこの部屋だった

「牢屋へって言ってたよな……」
「どう見てもホテルだよねー」
言って二人はもう三度部屋を見渡した
すると、天井付近から声が聞こえてくる

『ぼぉっと突っ立てお前らは置物か!それともその部屋が不満かぁ!?』
『…その部屋は好きに使っていいと言ってる。
テーブルにマニュアルがある、わからない時はそれを読め』
『説明オワリ!』
一方的に説明され、一方的に打ち切られた

「だってさー、マニュアルってこれかなー?わぁ……」
「好きにと言われてもな…どうした?」
ユーニスが開いたマニュアルを、千歳も肩越しに覗き込むのだが

『ボクは鮫のシャー君!この部屋の案内役だよ!』
「かわいいな?」
「かわいいね?」
マスコット風の鮫の描かれたページ、どう見ても絵本です。
………
……

とにかく好きに使っていいと言うのなら使うしかない
「この棚に置くとクリーニングしてくれるのか……」
「チトセー!クローゼットに可愛い服たくさんあるよ!
チトセ着て!着て!着て!」
「うるさい…フリルが過剰すぎる。それより先にシャワー浴びたい」
「シャワーはこっちかな?わ!チトセー!ジャパニーズスタイルのお風呂だよ!」
「なんだ…と?」
「ユーニス!」
「うん!」
入ろう、入ろう。そういう事になった。

海水で濡れてベタベタする服を脱いで棚に放り込むと、2人は躊躇なく広いジャグジーに
ダイブした。
「ふわぁ、泡風呂だー」
「あああー…湯舟に浸かるのなんて、何か月振りだろう…」
「うちのアパート、シャワーぐらいしかまともにつかえないもんね」
アロマキャンドルに囲まれた、プールのようなジャグジーは毎日のバイトで目にはしていても
決して手が届かないブルジョワジーな贅沢である。

「はぁぁぁ…」
「はぁ…チトセー、すごくとろけた顔してるよ」
「おまえもなぁ…」
「……あいつら一体なんなんだろう、なんでこんなスゴイ潜水艦や鮫スーツ持ってるのかな」
湯舟の縁に頭を乗せてユーニスが、湯気に煙る天井を見つめながら、ふと呟く。
「……」
千歳は、眠ったように目を閉じている。
「鮫ギャング団のボスの子?チトセに何かあるって言ってたよね?……チトセ?」
「”WHALE SHARK 3.5.3”」
「ん?ジンベイザメ?」
「名称。ハイブリッド・バイオ・メカニカル。全長300m全幅30m。スーパーキャビテーション推進。
さめ、鮫男…該当、H・B・エクステンドスーツ。計画母体……タイムアウト。
バイオシャークヒューマン。2070年度までの南太平洋における超長期防衛計画大綱。S案件。
シミュレーションの誤差。原因、海面上昇率の致命的誤差…。南極の…」
「ちょっ千歳!?」
「んぁ?」
ユーニスに肩を掴まれて、千歳が目を開く。
「今なんか、頭ハッキングされたみたいになってたよ!?大丈夫!?」
「何の話だ…ふぁ…ちょっと寝てたかな、寝落ちるまえに上がるか…」
千歳は欠伸をしながら湯舟から上がる。

「ほんとに大丈夫?頭になんか変なチップとか埋め込まれてない?」
「ねぇよ」
2人そろって、洗面台の前で髪の毛を乾かす、ドライヤーは2個あったし、歯ブラシや
化粧水などのアメニティも充実だ。

「あ、着替えどうしようかな…」
千歳が、棚の上の、自分の濡れた服を見やる。
お風呂へのテンションで、後先考えずに入浴してしまったので着替えのことを失念していた。
すると、ドアから、エプロンをした鮫幼女が今度はクリーニングワゴンを押して入って来た。
「…フンッ」
そして、2人を見て鼻を鳴らすと、濡れた服をワゴンに放り込んで出て行った。バタンと閉まるドア。
「あー…クローゼットの服を着るしかない?」
ユーニスがそう言うと、再びドアが開いた。
そこに立っていたのは、パーカーを着て、鮫のフードで顔を隠した鮫幼女だった。
「あれ?おま…貴女は?」
「んにゅ?知り合い?」
「ほら、さっきの格納庫?あそこで」
ドックの片隅に佇んでいた少女
それだけでは無かった。まだ確信は持てないがこの少女とは出会った事がある
あるはず…なのだが。目の前の少女から感じる微妙な違和感、それが千歳を悩ませる

「ハなシが、アる。着替えロ」
「話?…あ?」
「そうだよねー!話すなら着替えないとだよねー」
ユーニスと千歳は風呂上り、裸にバスタオルを巻いただけの状態でありました
そして妙に嬉しそうなユーニス……
………
……

木目調の丸テーブルを三人の少女が囲み座っている
「…頭のコレいるか…?」
一人は千歳。 黒髪を飾るヘッドドレスを突きながら、動き辛そうに身を捩っている
千歳が今着ているのは、黒を基調にしたゴスロリ風ドレス
千歳のファッションの好みはガーリー寄りだが、これは少々フリルが多すぎる
先程、姿見に映る自分の姿を見たが、なんだか人形の様で恥ずかしい

「いる!絶対重要なのだわ!」
そしてユーニス。千歳の姿にテンション上げる彼女もまた普段と異なる恰好をしていた
こちらは赤を基調としたゴスロリ風ドレス
ユーニス曰く「やっぱり黒の対は赤だよねー、ねぇ千歳銀髪のフルウィッグ付けない?ロングのやつ!」
…だそうだ。当然断った

そしてフードの少女
「…そろソロ、いいか?」
二人のやりとりにしびれを切らしたのか口を開いた

「あ、ごめん……」
千歳がじゃれてくるユーニスをおさえつつ、鮫フードの少女の方を向く。
「状況ハ、理解し難いダロウが、事態ハ深刻だ、マジメに聞イテくれ」
顔は完全にフードの下で見えないが、平坦な口調に苛立ちが混じっている。

「1から説明していル暇ハ無い。お前達ヲ、逃ガシテやる。ソレカラ、お前の中に
入ってしまった”アプリ”を、アンインストールする。準備ガ整ったら、教える。
それまで、何もスルな」
それから、千歳の方へ頭を向けると
「特に、お前ハ、何か頭の中に見エたり、聞こえテも、構うな。無視しろ、イイナ
命に、関ワル」
そういうと、少女は席を立とうとする。

「って、ちょーい!それだけ!?」
ユーニスが声をあげた、これじゃ話じゃなくてただ指示にきただけだ。何も分からない。
「聞きたいことは山ほどあるんだけど、千歳の頭には、今絶対なんかおかしなモノが入ってるし。
その原因は、絶対あんたらのお仲間が持ってたスマホに違いないし。そのせいで
私達は鮫型ターミネーターに殺されかけて。あげく今日はバイトサボりだよ!
あと鮫ギャングって何!」
ふだんは大人しい大型犬みたいなユーニスだが、決して臆病ではない。

「その上、命に関わるってどういうこと?あんた達何者なの?」
「……オ前達にハ、関係、ナイ」
「まともに話せないってこと?大体、助けるってんなら、顔くらいみせたらどうなの」
「おい、ユーニス、ちょっと落ち着け…って」
立ち上がったユーニスが、少女のフードに手をかけて、思わず2人とも固まってしまった。
フードの下に顔は無く、カメラとスピーカーが付いているだけである。
「ロボ娘初めて見た!」
「そこか!?」
思わずユーニスにツッコミを入れる千歳
しかし違和感の正体はわかった
当人で無いなら違うと感じるのは当然の事だ

「こウ言う事ダ。周リは敵だらケ、私もコうしなイと接触出来なカッタ」
「アバターロボってヤツか……」
「状況はわかったけどさ、もう少し情報欲しいよー」

ユーニスの問い掛けでアバターが停止した
カメラの向こうでどうするかを考えているのだろう

「…待つか」
「うん、でも凄いよね。メイドロボとかも作れるのかな?」
「鮫型メイドロボか?」
「…それはそれで」
言いながら、ユーニスが停止したアバターを突くも、完全に無反応
「寝てんのかな?」
もう一度ユーニスが突こうと指を伸ばすと……

チュイーン。小さくカメラの動く音が聞こえた
「…わカった」
「うわ?」
予告なく再起動するアバターにユーニスは飛び退いた
アバターはそれを気にせず言葉を続ける
「あと少シだけ話そウ。しかし私の時間も状況が許す時間モ少ナい
難シくトも理解しロ。いいナ?」
二人は無言で頷いた

「まズ、黒髪ノ…じゃぱにーズか?まアいい…オマエの中にあルのは
世界を催眠術で洗脳し操ルためのモノだ」
「え?」
「わぁ……」
驚きを通り越して、ぽかんとする2人にアバターが続ける。
「正確ニハ、生体脳を特殊なクラウドシステム上のAIに接続するプログラムで
お前が持っていたスマホにはアドミニスター権限が付与サレてイタ。
主に、網膜ヲ介して通信ハ行わレ、人の脳を分散処理システムの一部に使ウ。
逆にスマホやPCヲ通して、命令を出スこともデキル……」

ますます、ぽかんとする2人。
「……だから、説明シタクなかったんダ!」
「黒髪ノ、お前ガ、スマホを間違えたせいで、今お前の頭の中ニ、SNSを通して
世界中の人間ヲ、操れる 催眠アプリが入っていて、ウィーゾルがソレヲ狙ってル。
あいつの狙いハ、人類征服ダ」

「千歳が悪いの!?そんな大事なスマホならパスコードくらい付けといてよ!
セキュリティ意識どうなってんのー!?」
「ウ゛…」
アバターが気まずそうなうめきをあげる。
「彼女も、ラップトップにパスワード貼ってる奴には、言われたくないと
思ってると思うよ」
「う゛…」
ユーニスが気まずそうなうめきをあげる。

ブザーが鳴って扉が開かれる。
「オイ、メシダゾ」
看守の帽子を被った鮫幼女が入って来る、手には手錠だ。
フードで顔を隠したアバターロボを胡乱げに見る。
「事情聴取ダ、私は開発責任者ダ」
「フンッ…オラッ手ダセ」
千歳とユーニスの腕に手錠がかけられる。
カチッ、にゅるん
電子ロック音の直後、手錠から湿り気のある音がした。
「うわ?なんか手首がニュルとしたぞ!?」
「手首ひんやりするー!」
「バイオジェルだ、オマエラはニンジャだと聞イタカラナ!手錠抜け出来ナイゾ!」
間違った情報が伝わっている様です

「行クゾ」
「おい、せかすなよ…わわ…?」
「チトセ?」
千歳が足をもつれさせ、アバターの方へと倒れかかる
「おっと失礼…なぁ……」
そのまま寄り掛かる様にしながら小声でアバターに
その向こうに居るであろう少女へと言葉をかけた
「…ダイナーに居た子だよな…?」
「………」
反応は無言。それでも千歳は言葉を続ける
今度はフードの中を覗き込む様にして

「銃撃戦の時、かばってくれたよな?ありがとう」
「……キーを守ったダケだ」
反応があった。機械音声なのに体温を感じる声
「それでいいよ、私は千歳。あっちのはユーニス」


「オルカだ……」
「オルカだね」


「何シテル、メシガ冷メルゾ!」
「わ…?」
「チトセ、大丈夫?何を話し……」
「後で話す……」
千歳とユーニスはオルカのアバターを一瞥すると
そのまま看守少女に引っ張られていった


「チトセとユーニス…か」
鮫男のドックで、片目の潰れた鮫男を修理しながらオルカがつぶやく
ラップトップのモニターには、部屋を出ていく後ろ姿が映っていた。
「すっげー…DAS BOOTの本物だ…」
巨大鮫潜水艦内は、まるで機械の獣の体内だった。
血管のように張り巡らされたパイプや配線、狭い通路、水密隔壁…。
バルブが独りでに開閉し、本物の血管のように脈打ってるように見えたのは気のせいだろうか。

「少しはマシな恰好になったじゃねーか」
食堂に入ると、ウィーゾル、ハンマー、ソウ、そして他の鮫幼女達もすでに集合していた。
「食事は全員でする、これは掟だ」
「メシー」
「ハラヘッター」
「ハヤクシロー」
騒ぐ鮫幼女達、千歳とユーニスは、隅っこの席へ座らされる。隣にはオルカがいる。
フードから覗く顔はロボじゃない、本人の方だ。

「だが、残念ながらメシの前にやらねばならないことがある」
「メシー!」
「ハラヘッター!」
「ハヤクシロー!」
「黙れ!てめぇが晩飯になりてぇか!!」
ウィーゾルが牙を鳴らし、脅しをかける!黙る鮫幼女達。

「えー、ごほんっ。掟は神聖で絶対なもの。しかしこの中に最も重罪な掟破り…
裏切りを働いた者がいる」
「ケケケ、縛リ首…」
ウィーゾルの左右でハンマーとソウが審問官めいて告げる。
「縛り首か……」
「もしかして流れで私達も?」
「それは無いだろう」
千歳の頭の中には『例のアプリ』が入ってる
即座に処刑等と言う事はないはず
ユーニスが無事なのも何かしらの理由があるのだろう
…この幼女達の性質を考えると、なりゆきの可能性もあるが

「今はそれより……」
横目でオルカの方を見るが
フード奥の目元は影となり、見えるのは口元のみ
その口元も固く閉ざされ、感情を伺い知る事は出来ない

「ふぅ…私達はじっとしてるしかないか」
「そうだねー、手錠外してほしい」
「オラ!そこうるさい!いつまでも来賓扱いと思うなよ!」
二人は来賓に手錠を付けるんだ?と思ったが黙した
「ウラギリモノ?」
「ダレダ」
「オーゥ、シンジラレナイ」
「アグアグ…」
「ワタシ タベナイデ」
ざわつく鮫幼女たち。

「オルカ、てめぇ宝を持ち逃げしてどこ行こうとしてた」
一同の視線が一斉に3人に集まる。
「…私はずっと艦内に居た、どこへも行ってない」
「ああ!?しらばっくれんじゃねぇぞ!」
ウィーゾルの鮫威嚇!オルカは動じずに、ラップトップを操作する。
すると、食堂のモニターに監視カメラ映像が。

「私のラボの監視カメラ映像だ…。私は、ずっとそこにいた」
「あれ、ほんとだ…いやまてそんなはずねぇだろ!お前は無許可でスーツで
艦外にでてるはずだ!そうだなハンマー?」
うなずくハンマー、オルカは動じずに、ラップトップを操作する。
すると、食堂のモニターに管制室で居眠りするハンマーの姿が。
おまけに寝相が悪く、投げ出した足がコンソールパネルを蹴る。その瞬間
『LAUNCH』のランプが点灯、鮫男がシュポンと射出される。
「…おかげで、私は泳いでスーツを拾いにいくハメになった」
「……オイ」
ウィーゾルに睨まれるハンマー。
「……えへっ」
「寝相ワルイなオ前」

「えーじゃあ、誰がお宝持ち逃げしたんだー…?」
「メシー!!」
「ハラヘッター!!」
「ハヤクシロー!!」
空腹に耐えかねた鮫幼女達が暴動寸前だ!
「…しょうがねぇなぁ、飯だ!」
「「「わー!」」」
「ハンマー、お前は飯抜き」
「そんなぁ!」
「ケケケ…マヌケ」

「あれ、さっきのロボだよね?」
こっそり耳打ちする千歳に、オルカが小さく頷く。
「でも、あまり、仲間から信用されてるわけじゃないんだねあんた」
状況を見守っていたユーニスが言う。
エプロンをした鮫幼女が、相変わらずめんどくさそうな顔で配膳ワゴンを押して来た。

ドンッとテーブルに置かれる、銀のトレイ、その上には山盛りミートボールスパゲティ。
さらに、山盛りフライドチキン、山盛りブリトー、大量のトルティーヤチップスにワカモレ、特大LLピザに
氷の入ったバケツにつっこまれたバケツアイス!

「はわぁ…今日はパーティーなの!?」
ユーニスの意識はごちそうへ向く。
「潜水艦の食事と言うからミリ飯みたいのを想像していたよ」
「私はそれでもいいー!」
「…ああ、三食パンの耳よりはマシだ」
そんなに二人に多数の憐れみの視線が向いた気がするが
今はきにしない。食える時に食う!それが二人の食生活での信条

「よし祈るぞ!」
ウィーゾルの宣言にユーニスと千歳は目が丸くなった
「祈るんだ」「祈るんだ」
いきなり食べ始めると思っていた
だから食事前の祈りがあるのは予想外だった

「海と!」
「「「海と!」」」
「海と?」
「海と?」
ユーニスと千歳も慌てて幼女達の声に続く

「鮫に…感謝!!食え!!」
「「「感謝!!ワー!」」」
感謝の声と同時に一斉に食事が開始された
「これが祈り?あ、感謝!」
「感謝!私も食べるー…手錠は……」
二人も食べようとするが
手錠が邪魔でナイフとフォークを上手く使う事が出来ない

「おーい、おーいってばー誰も聞いて無いよー」
幼女達は食事に夢中で誰も二人の声を聞いてない
「はぁ、仕方が無い…ほれ」
ユーニスの方へフォークに刺さったミートボールが突き出された
「これは!いわゆる『アーン』」
ユーニスのテンションはマックスになった

「あー…んっ!うんーおいしいー!じゃあ千歳にもあげるね!はい、あーん?」
ユーニスはフォークでパスタを巻き取って、千歳の方へ差し出す。
「あ、あーん…にやにやするな…こうしないと食べられないだけだ」
「へへへー」
照れる千歳に、ユーニスはますます顔がにやける。

「味も良い感じに濃くてイイ…、ねぇねぇ、あんたら毎日こんないい物食べてるの?」
オルカに、ユーニスが声をかける。
「…だいたいこんなもんだよ」
ラップトップを弄りながら、ブリトーをもそもそと齧るオルカ。周りを見ると
他の鮫幼女達も、最初の勢いはどこへやら、なんだかテンションが低い。

「キョウモ サカナ ナイ…」
「カニ タベタイ…」
「ワタシ イカ…」
「久シブリ 海上 デタノニ…」
「魚はみーんな、逃走中にバラまいちまいましたからね」
飯抜きにされて、水だけ飲んでたハンマーが言う。
そういえば、千歳とユーニスが海に落下する直前、車のトランクから撒かれたのは
札束でも宝石でもなく、シーフードだった。
「冷食アキタ、オ前ニヤル」
ソウがフライドチキンをハンマーの方へ押しやる。
喜んで齧り付こうとするハンマーだったが、ウィーゾルに横取りされて空を噛んだ。
ウィーゾルだけが食欲旺盛で、皿ごと食べてる。

「こんなに美味しいのにな…ふーふー…うん?なんだよ」
「ふーふーって冷ますのって恋人感あるよねー」
ユーニスの言葉に真っ赤になる千歳さん
「な!食え!」
「あはは…熱ッ!」
まだ冷め切らないチキン突っ込まれました

「エッチダー」
「キスシロー」
「サカナー」
「ウニー」
二人を見ながら囃し立てる幼女達
気にせず食べ物の愚痴を言う幼女達
まるで保育園の食事風景の様だ

「子供がそんな事言ったらメっ!だ」
「チトセが先生みたいだ、チトセ先生ー」
「センセー?」
「センセーセンセー」
幼女達の騒ぎは止まらない
しかし、その様子で千歳は何か思いついた様で

「オマエまで……オイ」
「あはは…何?」
「ワー!キスシテルー」
「してない!…これは使えるかもしれないぞ」
千歳の言葉にユーニスは首を傾げた

「…この子達、IQは高いが基本子供って事だ」
「ほおほお?…そうか!つまりベビーシッターみたいな事をすれば」
ベビーシッター、二人には経験があった!
ボスのウィーゾル達や、オルカはとっつき難い雰囲気があるが、他の鮫幼女?
達はなんていうか、ほんとに小さな子供で、うまくすれば懐柔できそうだ。

「みんなお魚好きなんだねー、私もだよ。どんなお魚が好きなのかなー?」
「マグロ!」
「ウミガメ!」
「アザラシ!」
「カニー!」
魚が1種しかでてこなかったが、気にしない。
魚の話に鮫幼女達は、食いついて来た。
フライとかスシとかバーベキューとか丸呑み等々、食べ方にもこだわりがあるようだ。

「タコ」
鮫幼女の一人がそう言うと、他はなんだかビミョーって反応をした。
軟体動物はあまり好みではない?
「イカ ノガ ウマミ アル」
「あータコならこないだ釣って食べたなー…」
「ウマイ」
「味はともかく、見た目がヤバイって、だってこーんなだよ?」
体をうねって見せるユーニスに、鮫幼女の一人が思わず吹き出す。
「おっ受けた、千歳、ちょっと手伝って!」
「ん?おっと、こうか?」
2人でタイミングを合わせて、全身を波が伝わっていくようにうねらせる。
単純な動作だが、ちょっとコツがいる。
もう一人が、ぷへっと吹き出した、ダメ押しで逆再生にうねってみる。
「ブアハハ!」
「タコー!」
ウケた!子供には単純なダンス芸はよく効く!

「ふふふっ私達ダンサー(志望)だからね。どーお?ちょっと踊らせてみない?」
今度は椅子の上でタップを踏み、ゴスなドレスをふわりと広げて回ってみせる。
「オドッテーオドッテー!」
「イカー!イカモー!」
「ユーニス今度はイカだ、私に肩を寄せて鏡合わせしろ」
千歳はユーニスと同じ椅子に片足で飛び乗ると乗ると
ユーニスへ肩を寄せた
「OK!」

右に千歳左にユーニス。それぞれ左足と右足で椅子に立つ
そして、そのまま千歳は右足をユーニスは左足を広げる
スカートの中から足が伸び
手錠に繋がれたままの両手を頭上に掲げ寄せる
すると……

「イカ!イカダー!」
「スゴイ!イカスゴイ!」
「このまま泳ぐぞ!」
「ちょっとアスレチック思い出すねー」
二人は椅子の上で広げた足を揺らめかせながら
軸にした足で回転して見せた
即興のイカダンス!
「イエー!」
「ハハハ、グルグル!」
思わぬ横用に鮫幼女たちは夢中だ、思った通りチョロそうだ!
少し離れていたオルカも、齧りかけのブリトーを持ったままちらちら見てる。

「手錠も外してくれると、もっと色々踊れるんだけどなー」
あっさり手錠も外された。チョロイ!……と思って顔をあげると、目の前に
牙を剥きだしたウィーゾルだ。咥えていたフライドチキンの骨が噛み砕かれる。

「おもしれぇ、踊ってもらおうじゃねぇか」
ウィーゾルが乱暴に机の上の皿をどける、飛んで行った料理と皿は
鮫幼女達がキャッチした。

ガヂンッ!ウィーゾルの鮫牙が鳴る!
「ひゃぁ!?」
「うわっ!?」
足を噛まれそうになって、隣の椅子へ飛び移る千歳とユーニス、そこへソウが
またガヂッ!と牙を鳴らす、そのまま机の上へ追い立てられる2人!

「野郎ども、リードしてやれ!」
号令で、机の両側に鮫幼女が整列、2人の側に居た子が足に噛みついて来た!
「うわっとと…!」
可愛く見えても、鮫牙はトラバサミめいて凶悪だ!骨も無事ではすむまい。
あわてて飛びのくと、また別の鮫幼女が噛みついてくる!
「ギャハハハ!踊れ踊れ!」
「オドレオドレー」
飛び跳ねる二人にウィーゾルが囃し立て
鮫幼女達もそれに追随する

「踊るさ、なぁ?ユーニス」
しかし千歳の一言で流れが変わる
「踊るよ!チトセ!」
千歳の言葉にユーニスはニヤリと笑みを浮かべた

「なんだなんだ?大したヨユーじゃねーか!」
「ネーカ!」
言いながらウィーゾルと鮫幼女達は二人に牙を伸ばす!
が、しかし!

タンッ!二人が跳ねた
そして着地と同時にパンっと手を叩く
「フラメンコのリズムだな」
「そっちかー、サンバだと思った」
「命のかかった舞には情熱的なフラメンコが合う」
「確かに、サンバだとしまらないねー」

「何だらだら言ってやがる!ゴラッ!」
「違うなオレ!だ」
「オレ?」
「そうだ、オレ!」
言って千歳がパンッと手を叩いた

ガキンッ!タンッ!
ガキンッ!タンッタタンッ!

鮫幼女達の牙をかわしながら二人は足でリズムを刻む
おあつらえ向きに二人はドレス姿
フラメンコを舞うにうってつけ

「いいね!盛り上がって来たよ!」
「私もだ!」
二人は手を取るとスカートを翻しながら
テーブル上を自由自在に舞い踊る

「スゲー!」
「ナンカタノシー!」
鮫幼女達の牙がまるで拍手の様に
二人の舞を盛り上げる
「あはっ、この子達みんなノリいいじゃん」
「このまま、今度はこっちが踊らせてやろう、みんなも踊りたくないかー?
簡単さ、一緒にあがっておいでよ!」
「ヤルヤルー」
「ワタシモー」
「サメェー!」
「あっおい、てめぇら!」
乗せるとチョロイ鮫幼女達は、次々にテーブルに上がって千歳とユーニスの
動きを真似て踊りだし、大騒ぎだ。

2人がリードしてステップを踏むと、皆一斉に踵を鳴らし、左右でペアになって
互いの回りを回りだす、いつの間にか伴奏をしてる鮫幼女までいるし
牙を剥いて威嚇してたウィーゾル達もなんだかウズウズしている。

「実は、みんな踊りが大好きなのかも、なんか仲良くなれそー!」
「なんだか、私も楽しくなってきた…ん?」
皆が踊りに興じるなか、相変わらず、オルカだけは隅っこの方に居る。
「ユーニス」
「おっけ」
目配せで合図すると、ユーニスから、千歳が華麗なブエルタ(回転)で離れ
オルカへ手を差しのべる。
「……」
「怖がらないで、大丈夫」
戸惑っていたオルカが、手を伸ばそうとする。
「おらー!勝手に盛り上がってんじゃねぇー!」
踊りだそうとしていたハンマーとソウの頭を押さえて、ウィーゾルが踊る鮫幼女
達に雄叫びを上げる!
驚いたオルカが手を引っ込めた瞬間、千歳の体がぐらりと揺れる。
「千歳!」
慌てて、ユーニスが手を引っ張っる、床へ落ちそうになるのを抱きよせる。

「また、頭に何か…」
千歳の視界と聴覚が、どんよりとする。
伴奏が止まりユーニスの声がくぐもって聞こえる、天井の電灯が揺らいで無数に増え
たように見えて、そのまま意識は飲み込まれていった…。

………
……


ポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…

妙な鳥の鳴き声で千歳は目を覚ます。金縛りにあったように体は動かない。
自分の体の違和感に気づくと、突然目が見えるようになった。

ポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…

「!?」
闇の中に、白く長細い人影が、自分を取り囲んで見下ろしている。
白くみえるのは、人影ののっぺらぼうめいた体表に、高速で這いまわるシロアリ
のような意味不明な文字列が走っているからだ。

英語のように見える記号や、歪なひらがな、気味の悪い漢字、見知った文字が歪に歪む
違和感と、人影の不気味さにゾッとする。
「…………!!」
”文字列ののっぺらぼう”が、顔を近づけてきて、千歳は悲鳴をあげるが声が出ない。
歪んだ文字の列がほどけて、千歳の頭の中に入り込む。頭の中に100万の小さな手が
入ってきて、脳神経を直にいじられる感覚が千歳を襲い、体が激しく痙攣した。

「ッ…やめろ!」
腕が動いた!煙を払うように文字列ののっぺらぼうは形を崩し、千歳から離れて
ふたたびもやっと形を取り戻す。

寝台から転げ落ちるように千歳は走りだした。赤い照明の狭い通路だ。壁に天井に
木の根のような配管が這いまわる。
夢特有のイヤな浮遊感、足を動かしてもちっとも進まない…。突然、配管の隙間
から、のっぺらぼうが壁を通り抜け出現!まともにぶつかってしまう。

「ぬぁぁああ!…あ、あれ…?」
凄まじい痛痒を脳内に感じて頭を抱えたが、不快感と引き換えにしっかりと
地に足がつく感触がある。
吐き気を堪えて顔をあげると、目の前を小魚が横切って行った。

「…幻覚か?いや、これは…夢?夢…だけど」
小魚が、薄暗い通路内を漁礁のように漂っている。目を凝らすと小魚にノイズが走り
気味の悪い歪んだ文字列に解けた。
「…なんか、読めてしまった…うっぷ、気持ち悪い…」
どうやら、小魚の1匹1匹が、鮫潜水艦に関する情報で、千歳はどういうわけか
情報を『頭にねじ込まれて』いるらしい。

ポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…
「げっ!」
後方の壁から、のっぺらぼうが群れで湧き出てくる!千歳は走り出す。
格好が何故かバニーガールになっている!
「なんでだよ!?」
思わず突っ込み入れて小魚とぶつかりながら通路の奥へ!ぶつかった小魚は
文字列に解けて光の粒子になった。

通路の先に、人影がよぎった。
「あいつらじゃない…!ねぇ!待って!」
追いかけると、人影は部屋に飛び込んで、分厚い水密隔壁をロックした。
「お願い開けて!私も追っかけられてるんだ!」
ロックの解錠音、ドアがひとりでに開かれると中で、のっぺらぼう達にたかられ
床に押さえつけられた少女が居た。

「こいつら…!放せってーの!!」
とっさにのっぺらぼうを掴んで、ぶん投げる!投げられた!壁に叩きつけらた
のっぺらぼうは、霧めいて霧散!
「掴めた…!あ、君…大丈夫?」
「───」
鮫色の髪をした、競泳水着のような姿の少女が千歳を見上げる。
姿は、鮫幼女とよく似ていたが、ずっと大人びて少女という方が合う。

「あー…ごめん、変なの連れてきちゃって…。早く逃げた方がいいよ」
通路の奥からポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…と不気味な鳴き声がする。
千歳は、入口の前に立った。あのディメンターみたいな奴が、アプリの力で、
あまり良いモノではないということは、察しが付いた。
巻き込んでしまった責任はとらねばなるまい。
「あ、ねぇ君は……」
千歳が少女の方を振り返った瞬間だ。突然、海中に投げ出された。
どこまでも青く澄んで、頭上から陽光がカーテンのように揺らめき

エンジェルラダーのような光の中を、クジラのように大きな鮫が、千歳の
頭上を泳いでいった。

………
……


「……」
目が、覚めた。天井でシャンデリアが光っている。
「……」
そして、ユーニスが顔に影を落としながら、ガン見してきている。
膝枕されているらしい。

「…オゥッ」
手をあげて頬っぺたに触れたら、ユーニスが鳴いた。体は動くようだ。

「あああ、よかった!千歳が気が付いたー!!」
「ごめん……」
「謝らなくてもいいよーチトセが生きてるならー!」
大げさな…と言いかけて千歳は言葉を止めた
ユーニスが千歳の頭を抱える様にしながら泣き始めたから
………
今日は

……
こんなのばかりだな……



「落ち着いたか?」
「うん、チトセは?」
「わからない、わからないが…わかった」
「どゆこと?」
千歳の言葉にユーニスは首を傾げた

チトセ自身、今の自分が正常でない事はわかる
しかしその一方で
自分の中にある『力』の一端が見えた様にも思える
多分、あの不可思議な夢は『力』が見せた物

「…やっぱまだわからない……」
「もう少し休むといいよ?私の膝枕は最高でしょ?」
「…バカ」
「ぬひひ…♪」
…まったくコイツは。
そんな事を思うも、この膝枕が心地良いのは事実であった

「…それで、あれからどのくらいの時間が経ってる?」
ユーニスに膝枕されながら、気絶していた間の事を確認する
「あ、えーと…時計はどこだー?」
「はい」
「サンキュー、21時かー、そんなに時間は経ってな…うわっ!?」
ユーニスはびっくりして顔を上げる。オルカがスマホを差し出して立っていた。
千歳の奴だ。

「どっから!?いつから!?」
「天井から、抱き合って泣いてたぐらい。頭は大丈夫カ?…ああ、何か変なモノを
見たり、頭痛や幻聴がするかって意味だ」
「あー聞くのはちょっと待ってー?」
「なぜだ?」
千歳の代わりにユーニスが答え
その答えにオルカは不思議そうな顔をする

「チトセ、今は恥ずかしいモードだから」
「は?」
見れば千歳は仰向けからうつぶせになり
ユーニスの膝に顔を埋めたままぷるぷるとしていた
………
……

「黒髪、落ち着いたか?」
「チトセの名前はチトセだよ、チトセの黒髪は綺麗だけどさ」
「…うう…落ち着いた。さっきの質問に答えると…見た。夢の中でだけど」
正座し顔を伏せた状態のまま千歳は答えた
「詳しく聞きたい」
クリーニング済の2人の服を投げ渡しながら、オルカの表情が少し険しくなる。
「わかった…私が見たのは………」

「……なるほど、やっぱりそうか。
ハッキングの痕跡も確認した…」
千歳から夢の内容の説明を聞いて、オルカはフードを脱いだ。
「ただの夢じゃない、黒髪がアプリの力を使ったんだ。使うなと言ったのに…」
「なんだよー、こっちは被害者だぞ!」
自分の服に着替えながら、ユーニスがオルカをにらむ。
「落ち着けって、でも、私も使った覚えはない…」
ズボンを穿きながら千歳が答えると、オルカはじっと2人を見つめる。
内気な彼女が、強い感情のこもった表情を見せていた。怒りだ。

「あれは洗脳アプリだと言ったけど、本当は特殊なAIで、仕組みはSNSそのものなの。
例えばウィキペディアのように、世界中の人々から知識を集めることもできる。
…ただし、無意識のうちに強制的に…」
オルカはユーニスの頭を指さす。
「人の脳から直に知識を吸い出すから、どんなセキュリティも機密も通用しない。
AIは、世界中のスマホやPCを使う人の脳を、演算処理に利用して命令一つで何でもやる。
ハッキング、フェイクニュース、金融操作、暴動の誘発、新兵器の開発、なんでも…」

「そして、使われるのは、スマホやPCを使う何十億って人達…。
無意識のうちに強制的に、本人の意思に関係なく!
洗脳は、その副産物に過ぎない。核兵器以上に危険なものなの」

「じゃあ使わなきゃいいじゃん!チトセは、世界征服なんかしないよ!」
オルカの手を払って、ユーニスは千歳を抱きしめる。
「う、うん…する予定はないな、したくもない」
「だけど、現にこの艦のシステムにハッキングしてる。
はっきり命令してなくても、黒髪が『ちょっと気になる』って思っただけで
アプリが世界中の脳みそから情報をかき集め、艦を乗っ取る手はずまで整えてる!」
「……」
語気を強めるオルカに、ユーニスは思わず黙ってしまった。風呂で千歳が、言っていたうわごとは
実は彼女たちにとって重大な秘密だったのではないだろうか…。

「ちょ、ちょっと待って、じゃあ例えば私がドアに開けーとか命令したら……」
千歳がそう言うと、ヴィーとブザーが鳴って、入口のドアが1人でに開いた。
ちなみに、ホテルみたいな部屋だが、一応牢屋なので、看守が外にいる。
「ウェ?」
アイスクリーム食べようとしてた鮫幼女と目が合う。
パタンッ…とドアが一人でに閉まった。

「……あれ?」
「…えーと……」
千歳はユーニスの顔を見るが
ユーニスはお化けでも見た様な顔をしていた。
お互いに思う事は一つ『どうしようか?』

「何をしてる!直ぐに入って来るぞ!」
呆けたままの二人をオルカが怒鳴りつけた

「だよね?だよね?」
「どうするんだよ!」
「いいか、入って来たら直ぐに黙らせるんだ!」
オルカの言葉にユーニスと千歳は再び顔を見合わせた

「戦えって言うのか?私は日本人だがニンジャじゃないぞ!?」
「私もカンフーもカラテは映画でしか見た事無いよ!」
「人間では鮫に勝てない!」

「じゃ……」
「アイスオトシタ!イマノナンダ!」
『じゃあどうするの?』と言うより先に扉が開き
看守の鮫幼女が入って来た

「わーどうにでもー」
「なっちゃえー!」
「オッ!?」
二人は鮫幼女の両手を握ると踊り始めた

「ワンツー♪ステップ♪」
「スリフォー♪ターン♪」
「オッ?オッ?オー!ステップターン♪」
いきなり踊らされ驚く鮫幼女だが
踊り好きなのは食堂で確認済み 
すぐに二人のペースに嵌り、一緒に踊り始めた

踊り続けながらユーニスと千歳はアイコンタクトを交わす
『ドウスル?』
『ワカラン!』
で、二人はオルカの方を見た
「仰向けにひっくり返せ!」
オルカが叫ぶ、千歳とユーニスは鮫幼女と繋いでいた手を大きく回した。
鮫幼女の小さな体が天井スレスレまで登って1回転!
「ワーイ!タカーイ!オ゛ゥ゛ッ゛!?」
ベッドに落ちた!

「……動かなくなった」
仰向けにされた鮫幼女は、目を開けたまま、スンッ…となって固まってしまった。
「大丈夫なのかこれ」
千歳が目の前で手を振ってみても反応なし。
「大丈夫だ、鮫幼女は仰向けにされると気絶する」
「へぇ…!」
ユーニスが好奇心に満ちた顔をしている。

「仕方ない…アプリの力に頼ろう。艦を浮上させて脱出する。
黒髪の、どこからなら艦のコントロールにアクセスできそう」
「えぇと…たぶん、操縦室みたいなとこ…?」
「発令所だね、こっち。……おい、お前…私にはぜったいやるなよ」
好奇心に満ちた顔で、オルカの背後ににじり寄ろうとしてたユーニスの顔を
オルカが顔面クローで押し返した。
「ふごご……んにゅ?チトセ何してるの?」
「…ん?」
ユーニスがオルカと戯れていると
千歳は気絶した鮫幼女の側でなにやらしていた

「あ?うん、目を開けたままだと何か可哀そうだから」
目が乾きそうだしな?と付け加え、鮫幼女の目を閉じてやる
それを見ていたユーニスはこんな事を言う

「なんか最後を看取っているみたい」
今度は千歳から顔面クローを貰った
「5分もすれば目を覚ますよ。だからいそいで!近道を案内する」
3人は部屋の外へ飛び出す。そこへ鮫幼女達が
「ケーホウ ナッタゾ」
「ナンダナンダ」
「アッ! ダッソウ!」

「まかせて」
ユーニスは前に出ると、ベルトの背中に突っ込んだ拳銃を抜くように
古びたMP3プレイヤーを抜き放ち、再生ボタンに指をかける!
「ダンスバトルだよ!」
ゴキゲンな80年代ディスコサウンドとともに踊りだす、ユーニスのターンが
終わると、鮫幼女の1人がノッてきた!
「ウケテタツ!」
小さい体でシャークダンス、牙も動きのキレも鋭く決めポーズ!
「ていっ」
その隙を突いてユーニスが鮫幼女をひっくり返す!
「コノー」
「ツギハ ワタシタチー」
2対1で、噛みつくようなデュエットダンス連携が繰り出される!
「いいね、ノって来た!へい!」
ステップとターンで連携攻撃をかわす!
そして両腕を交差させて、鮫幼女たちの手を掴むと、翻すようにひっくり返してKO!

「ちょっと楽しくなってきた!」
「私の出番もとっておけよ?」
足でリズムを刻みながら声を掛ける
ユーニスのダンスを見ているうちうずうずとしてきたようだ

「わかってるって!ホラ!」
「OK!交代だ」
遠くから近づく足を音を聞けば
ユーニスはバックステップで下がりながら
すれ違いざまに千歳とパンっと手を合わせる

「イジョウジタイー!」
「トツゲキー!」
「サメェー!」
「ウニャー!」
角の向こうから現れたのは四人の鮫幼女

「ユーニス、この間聞かせてくれた曲あるか?」
「んーボーカロイドの?」
「それ!」
「あるよー♪ミュージックスタート!」

ユーニスのプレイヤーから早いテンポの曲が流れだす
機械の音声だからこそ出来る早口気味のテクノミュージック
「いいね!さぁ!私と踊ろうか!」
「オドルー!?」
「ダンス?」
四人の鮫幼女に囲まれるが千歳は笑みを浮かべている


「アイツ大丈夫なのか?」
「見てなって、チトセと幼女のダンスなんて眼福だよ」


「手を前!手を横!そこで足をタンっ!」
「ワ?マエ!」
「ヨコ!」
「「タン!」」
歌詞をダンスのステップに変え、千歳は踊る
早い流れの曲調は考える暇を与えず鮫幼女達をダンスに誘う

「ダンスは楽しいか?」
「タノシー!」
「オドルー!」「サメェー♪」「ウニャー♪」
鮫幼女達の声を聞けば、千歳のダンスはさらに加速する

「舞えや踊れや、夜更かし朝まで
踊りはチケット、夢へのチケット
舞えや踊れや、夜更かし朝まで
踊り疲れて。おやすみなさい♪」
「「「「オヤスミナサーイ…ムニャ」」」」
千歳の歌に合わせコロンと寝転がる鮫幼女達
………
……

一方、ホエールシャーク憩癲∋隆閏爾如帖
「騒がしいな…」
「ふわ…トイレカ?1人でイけよ…」
ハンマーとソウが2段ベッドで目を覚ます。そしてモニターのスイッチを入れる。
「うわっ!大変だ、あの二人が逃げ出した!オルカも居る!」
「ナニ!?ボス、起こさないト…」
2人は顔を見合わせ、艦長部屋の扉をおそるおそる開く。
士官部屋より広い部屋で、子供用ベッドにウィーゾルは仰向けで寝息を立てている。
「ウィウィー…脱走ですよー…」
「オキテー…」
声をかけても効果なし、体を揺すろうと手を伸ばすと、ガヂンッ!
「ヒィ!?」
「むにゃむにゃ…」
噛まれそうになって、ハンマーは手を引っ込めた。
「ムリだな、一杯ヤッテ、朝マデぐっすりダ」
机の上の可愛いマグカップと空の牛乳パックを持ち上げて、ソウは肩をすくめた。

………
……


「ナンノ サワギー?」
「おーけー次は私のでばーん!」
ハイテンポヒップホップ、そしてブレイクダンス。転がされる鮫幼女達!

「アッチデ オモシロ ソウナノ」
「イッテミヨ」
「交代だ」
激しいテクノポップにのせて、ロボットダンス。動きをコピーした鮫幼女達が
稼働停止ポーズになったところを次々に仰向けにしていく!

千歳とユーニスは、ハイタッチから拳を打つけて、踊るように高速ハンドシェイク。
最高にノってきた。
「下の格納庫を抜ければ、発令所はすぐだよ」
気絶する鮫幼女達を踏まないように、オルカが2人の後をついていく。
「おっけー!」
「この調子なら楽勝だな!」
「あ、まって…ここからは静かに…」
ユーニスが梯子を滑り降りていく、千歳も後を追う

「わっ、急に立ち止まるな」
振り返った千歳が、ユーニスの背中にぶつかった。
肩越しに覗き込んで千歳も思わず固まる、広い格納庫には小型の鮫潜水艇が
駐機され、その間に無数のハンモック。
物音に気付いた鮫幼女達がハンモックから身を起こし、視線が一斉に2人に集まる!
「…おっと、しまった…」
遅れて降りてきたオルカが不穏な言葉を口走った。

「どーしよチトセぇ、この数はさすがに…」
「寝起きでちょっと機嫌悪そうだぞ…」
背中合わせの2人に、鮫幼女達の包囲がじわじわと縮まっていく…。
いっせいに飛びかかろうと身構えた瞬間!

「HEY!キッズ!ハッピーダンスの時間だよ!」
急にユーニスが良い笑顔で叫び出す。鮫幼女達が首を傾げ、思わず千歳まで振り返る。
「(おまえ…まさか、アレやる気か?!)」
「(だって、他に思いつかないんだもん!ほらチトセも!)」
背中越しに、小声で言うと千歳はほとんどヤケクソ気味に
「一緒に元気よく踊ろうね!」
叫んで踊り出した。
それは、ユーニスがバイトに行く前に見てる、朝の幼児向け教育番組で
日本で言うと『おかあさんといっしょ』とかそんなやつで。
毎朝、ユーニスがいい年してテレビの前で踊るものだから
千歳も覚えてしまったダンスだ。
鮫幼女達は、ぽかーんと二人を見つめている。

「(…くっ流石に無理か…!)」
「(マイリトルポニーにしとけばよかった!)」
その時だ、鮫幼女の一人が前に出てきて、踊りを真似しだす。
2人はダメ押しでもう一度、幼児向けダンス曲を歌って踊ってみる。
すると、もう1人、2人…踊り出す鮫幼女達が増えていく!

「しめた!さあみんな元気よく―!」
ユーニスが鮫幼女たちを煽る!気が付けば、格納庫内でみんな一斉に踊りだす!
「サニーデイ、サニースマイル、U&I、We happy firends♪」
歌も踊りも簡単だから、2人のリードで、鮫幼女達は歌って踊ってハッピーだ!
「それじゃあみんなー!ぶつからないように広がってー…」
「ごろんと転がってフィニーッシュ!」
そして一斉にでんぐり返し!仰向けになった鮫幼女達は全員同時に気絶!

「…みんな見た目通りで助かった…。チトセもいいお姉さんっぷりだったよ」
「うっさいバカ、二度とやんないからな!」
顔を赤くしてユーニスの背中を叩く千歳さん。

………
……


「来たカ」
千歳とユーニスが発令所に踏み込むと、オルカが当直の鮫幼女達を縛り上げていた。
「その声…身代わりロボットか」
千歳がそう言うとフードで顔を隠した身代わりロボが頷く
「私ハ、逃走手段の準備をシテいル。艦を浮上サセたら、スグ、外へ出ろ」
「うわぁお…クリムゾンタイドの世界だ…いや、どっちかっていうと…
ハンターキラーの方かな?ねぇねぇチトセ!これ潜望鏡だよ!本物だー!」
ユーニスは状況そっちのけで楽しそうだ。あっちこっちをキョロキョロするうちに
監視モニター映像に気づく。
第三デッキと表示された監視カメラ映像に、ウィーゾル、ハンマー、ソウの3人の姿が!
「って…うわっやばい!ウィーゾル達がこっちに来てる!えぇと…第3デッキってどこ?」
「発令所の近くダ、急ゲ」
「急げって……」
「黒髪!とにカク、浮上させロ!おまエなら複雑ナ操作もひトリで出来ルはズだ」
「そっか!今の千歳はスーパーハカー!」
ユーニスは一回転すると千歳をビシッと指さした

「…はぁ、試してみるか」
回転に突っ込みたい気持ちを抑え、千歳は目を閉じる

Dive into The…

するとすぐ視界が変化した
目は閉じられているはずなのに、光が流れていくのが見える
しかし、前回見た物とは違うイメージ
淡い蒼光の海を光の魚達が泳ぎ回っている

「あの時とは少し違うな…これは海のイメージか…?」
気を失っている間に見たのとはかなり違う光景
とりあえず、近くを漂っていた七色の魚を突いた
すると……

「わぁ!?」
「あソんでるのカー!」

ユーニスの驚く声、続けてオルカの怒る声が外から聞こえた
ウィーゾル達に突入されたか?と慌てて目を開けるが
そこには予想外の光景があった

「なんだ…これは!?」
天井にはキラキラ輝きながら回転するミラーボール
七色に輝く床パネル……
そして70年代風ダンスミュージックに合わせ踊るユーニス
オルカの方は鱗の様なラメ入りのスーツを着ている
発令所が狂乱の空間へと変身している

「チトセー発令所がダンスホールになっちゃったよ!」
言ってユーニスは決めポーズ。完全に楽しんでいますね
「…黒髪がコの艦ヲ自由に出来ル事は十分にワかった……」
「ごめん…もう一回やる……」
二人に謝ると、千歳はもう一度目を閉じた……
目の前を回遊する魚の群れが、視覚化された鮫潜水艦の操船プログラムだ。
よく見ればちゃんと分かるようになっているはず。ユビキタスシステムってやつだ。

(そういえば、現代の車はハンドルやペダルはただの指示入力装置で、実際の制御は
車のコンピューターがやってるってテレビで見たな…)

なんとなく、ユーニスと一緒にみたネトフリのドキュメンタリー番組の事が
頭をよぎる。その途端、魚の群れの中に色んな車のカタログやら、グーグル検索結果やらが
紛れ込んできて、視界を邪魔する。

「集中を乱すのもだめか!よし、じゃあこれだ!」
千歳は直感で魚をタップ!
流れ出すボン・ジョビのEDMリミックス、派手なレーザー演出で床のパネルが光る。
「YEAH!レトロから一気に最新モードだ!」
「クラブから離れロ、このパリピめ!」
また間違えちゃいました。

「これか!」
別の魚をタップ!
「あ、これ絶対違う…」
千歳の目の前の海がクリスマス仕様になって、BGMが陽気なジングルベル。
「勝手に俺の船を弄るんじゃねぇ!」
ドンドンと水密隔壁を激しく叩く音が、仮想空間海中に響く!
「チトセー!ウィーゾル達がドアの前にいるよ!…ぶふっ!トナカイの恰好してる!」

「えええっと…これか!それともこっち!こっちかな?これ…じゃなくてこっち!!」
千歳が魚をビシバシ連打していくたびに「Halloween!!」だの「ハピバースデー」だの
ウェディングマーチ、再び70年代風ディスコサウンド、<<自爆装置作動…カウント10・9…>>
艦長のお気に入りと書かれた幼児番組が再生され、「今日の魚料理はー…」料理番組、
休日のハワイアン、<<Transformaition to MEGALODON…>>、ダンスナイトプロトコル ヲ カイs…。

「どうなってるんだこのシステム!」
千歳が魚をタップするたび、艦内が目まぐるしくかつ陽気に改装されていく!

「チトセー!やばいっ!もっ…開けられちゃいそう!やばいよー!」
「だめだ、モーターが、焼ケル…押エ、ラレない…」
頭を抱える千歳に、ユーニス達の切羽詰まった叫び声が、さらに焦りをかきたてる。
「落ち着け…落ち着け……、せめて時間稼ぎ出来れば……」
発令所ばかりが異常な事態になっているが
先程オルカが言った様に、扉の向こうも何かしらの異常が発生しているはず

「もっと物理的な手段で……」
狂暴でも相手は子供、過激な事はしたくないが
今はなんとか時間稼ぎをしたい

「───」
「え?」
声がした。千歳を呼ぶ声
でも言葉ではない、もっと直接的な呼びかけ
「…この魚?」
赤と白の魚が泳いでいる。声は囁く、その魚に触れろと
千歳を導かれるまま魚に触れた
すると……

「チトセ急に静かになったけど何したの?」
「緊急消火装置ガ作動してルな。泡が噴き出スやつだ」
「…あはは、扉の向こうは泡塗れって事か……」

「チトセ、使える様になったの?」
「わからない…わからないが、道は見えたかもしれない」
「そっか。とにかく寝てる間のチトセの身体は私が守るから!」
「たのもしいな。たのもしいが…抱き付くな」
「てへっ♪」


千歳は再び目を閉じ意識を集中する
目指す方向はわかっている、あの声の方向
あの方向に『彼女』がいるはず……
千歳は軽く跳ねると、蒼光の中を泳ぎ始めた

この空間の距離感は曖昧だが、泳ぎ続けると遠くに何かが見えてきた
それは最初の夢で見た奇妙な人型、文字列を纏った奇妙なのっぺら坊達だ
感覚的に分かる、あれは『良くない物』。それが誰かを取り囲み押さえつけている
きっと『彼女』だ、千歳の身体は自然に動いていた

「チトセキーック!」
もしユーニスがここに居たら、絶対弄られる
でも、名前+キックはかなり強い必殺技なはず
きっと何かしらのアプリが作用する

『SUPER HERO TIME!』ほら聞こえて来た
「現実じゃ無理だよな、けど!」
赤い閃光を纏った飛び蹴りが、文字列ののっぺら坊を一瞬で蹴散らした
「…いいな、そのうちダンスで使ってみよう…さて、大丈夫?」

「───」
鮫色の髪の少女が座ったまま千歳の顔を見上げている
怯えている様な、何か悲しい様な……
そして何かを求める様な表情……

『オルカちゃんに少し似てるかも……』
顔立ちが似ていると言う訳ではない
纏う空気、遠くから二人を見ていた時の瞳
それが少女と重なる

「えーっと……」
「───」
なんて言えば良いのだろう?
こんな時、ユーニスなら気の利いた言葉の一言でも言えるのかもしれない
しかし、自分はユーニスではない。自分に出来る事をするしか無い
だから考えに考えて出た言葉が……

「一緒に踊らない…?」

………
……


「チトセ遅いな…大丈夫かな……」
目を閉じたままの千歳の周囲をグルグル回るユーニス
時折千歳の顔を覗き込むが小さな吐息が聞こえてくるばかりで
目を開ける気配はない

「おまえはぐりズリーかまダ5分も経っテないゾ…オッ?」
扉を抑え続けるアバターが呟いた直後……
艦が振動を始めた……
「やった!動き始めた!おっとっと!?」
ユーニスが、よろめいて、コンソールに手を付いた。
鮫潜水艦の姿勢を示すホログラムが、激しく揺れ動いている。どうやら、急加速
から、アクロバットな航行を始めたようだ、しかもどんどん激しくなる。

「まるで踊ってるみたい…」
ユーニスが呟いた瞬間、バギンッ!金属破断音!ドアのロックが物理破壊された!
なんという怪力だろうか!
「ワッ…ガガッ…ブブッ…ザァァ…ッ」
分厚い水密隔壁をぶち当てられて、オルカのアバターロボは煙をあげて機能を停止した。
泡だらけのウィーゾル、ハンマー、ソウが発令所に踏み込んでくる!

「今すぐ俺の船を止めやがれ!頭を噛みちぎってやるぞ!」
「くっ、ドア開けるだけでボロボロなのに、威勢がいいじゃん!」
無防備な千歳を背に庇い、でかいスパナを構えて、ユーニスが立つ。
「いや、これは」
「ウィーゾルに噛まれたヤツ」
全身歯形だらけのハンマーとソウが答える。
「GROOOOOOOOOOOOOOOOWLLLL!!」
ウィーゾルが鮫牙を剥く!

その時だ!床が急傾斜に傾いて、強いG加速が全員の体を引っ張った。
艦が急浮上を始めたのだ!
「うわ!」
「ウワー」
「グェェ!」
折り重なるようにスッ転ぶウィーゾル達。ユーニスは、とっさに千歳の体を
掴んで踏ん張った。

鮫潜水艦は、殆ど垂直に近い姿勢で上昇していき、荒れる波を突き破り
ついに海上へ飛び出した!

加速と揺れが止まり、静寂が訪れる。
「もしかして、海面に出た…?チトセ!」

……
………
「うん、いい感じだ」
「───」
少女が小さく笑みを浮かべた。誰もが憧れるお姫様の様な笑み
「なんだか王子様になった気分だよ」
「───♪」
千歳の言葉に少女は笑みを強くし頷いた様に見えた。多分頷いたのだろう

「はは、王子様か。そうそう。私に合わせて…焦らなくてもいい、流れに乗って……」
前へ後ろへ、そして上へ下へ……
光の魚達の祝福を受けながら千歳と少女は舞い踊る。
少女をリードしながら千歳は思う
『王子様の才能はユーニスの方があると思っていたんだけどな』


思い付きで「一緒に踊らない…?」なんて言ってしまったが
手を差し出し待ち続けるも、彼女は手を見続けるだけでダメかと思った
しかし、少女は千歳の手を取ってくれた。

慣れないダンスに最初こそ少女は戸惑いを見せたが
千歳がリードし踊り続ければ
感情の見えなかった瞳が輝き、閉ざされていた唇が笑みへ
やがて少女は踊る事を楽しみ始めた


「そうだ…さっきはありがとう。ここへ呼んでくれたのは君なんだよね?」
「───」
少女は小さく頷くと千歳と一緒にクルリと回った
そしてそのまま急上昇。蒼光の中を駆け上がって行く

「私に逢いたかった…?それってどう言う……」
「……─」
少女が口を開こうとしたその時……

「チトセ!」

「ユーニス?」
外から声がした、ユーニスの声だ
何か重大な事態が起きたのかもしれない
まさかウィーゾル達に掴まった?

「ごめん、私は行かないと……」

「それともう一つごめん、私…君を利用しようとしたんだ……」
「───」
「え?何、知ってた…それって……」
少女と手が離れ、千歳の意識は現実へと浮上する
夢から覚める様な感覚。少女の姿が蒼の中へ消えて行く……

『そう言えば…私、あの子の名前聞いてないな……名前、名前……』
千歳が最後に呟くと同時に目が覚めた
………
……

「…ユーニス?」
目を開くと千歳の顔を覗き込むユーニスの顔があった
「チトセチトセチトセ!やっと起きたよー!」
大型犬の勢いでユーニスは千歳を押し倒す
「…苦しい…また意識が飛ぶ……」
「起きたら立ってー!」
「グエッ!?」
慌てたユーニスの腕が、千歳の首に食い込み、ラリアットみたくなってしまう。
千歳の意識はちょっと飛んだ。

「はやくー!」
ユーニスが腕を引っ張って急かす、依然ピンチなのだ!
折り重なってダウンしていたウィーゾル達が早くも復帰し、発令所に通じる通路に
鮫幼女が殺到している。逃げ道は艦橋へあがる梯子だけだ!

ダンサーコアマッスルを発揮して、千歳の足を掴むと、梯子の穴の中へ
リフトアップで突っ込む。そして、自分もジャンプして梯子を掴むと
反動を利用して狭い穴の中へ飛び上がった!ユーニスのつま先を掠めてガヂンッ
と鮫牙が鳴る!
「チトセ!昇って昇って!」
「わかってる!本当に今日はこんなのばかりだな!」
愚痴りながらも、両手を交互に繰り出しながら格を掴み梯子を昇って行く

「でも、メカゴジラの内部上がってるみたいで少し楽しい!」
「おまえなー」
確かにユーニスの言う通り金属に囲まれた細い通路は
なにか生物の体内を思わせる
だとしたら、この先にあるのは大きな口なのだろうか?
そんな事を思い見上げるが、先は薄暗く出口はまだ見えない

「この梯子長いな?ウィーゾル達はどうしてる?」
「あ、なんか詰まってるっぽい?」
「詰まってる?」
確かに唸り声は聞えるが、声は近づいてこない

「早く登れ!噛むぞ!」
「噛んでル!」
「痛い痛い!」
…とりあえず大丈夫そうだ
とにかくこの隙に上り切るしかない

ゴンッ

硬い何かに頭をぶつけた
「イタっ」
「凄い音聞こえた!?チトセ大丈夫?」
「痛い…急ぎ過ぎた、…これが出口か?」
頭を撫でながら見上げれば、ハンドルの付いた如何にもなハッチがある
これを開けば多分外へと出られるのだろう

「いきなり海って事はないよねー?」
「それは大丈夫なはず『彼女』がこの船を浮上させてくれた」
「『彼女』?誰?誰?」
「…後で話す、今はこのハッチを開けよう…おっ?」
ユーニスがいつも以上に食いついたが、今は悠長に話している場合では無い。
今はこのハッチを開き、外へ脱出するのが先
だから千歳はハンドルに手を触れるのだが……
「あ?」
ハンドルは勝手に回転を始め
軋んだ機械音と共に、重量感ある分厚いハッチが開いていく
そして差し込む陽光……は無かった

解放されたハッチから顔をのぞかせる二人の頬を大粒の雨が叩いた
「嵐だな……」
「嵐だね……」
久しぶりに見た外界は嵐の海でした
「ここからどうやって逃げるのー!?」
2人が出たのは、高さ10m以上はあろうかという、鮫潜水艦の背びれのてっぺんだ
真っ暗で唸りを上げる海に囲まれて、実際の何倍も高く感じられて足がすくむ。

「ハハハ!バカが!泳いで口に入る小魚だな!」
「早く上がってー頭ふまないでー」
「ツッカエてんゾ ボスー」
あっという間にウィーゾルに追いつかれ、狭い艦橋内に逃げ場は無い。
「外…外ってまさか…この下に滑り降りろってことか?」
千歳が、艦橋の下を見る。たしかにバスケットコートより広い甲板があるが
背びれ型艦橋の傾斜はきつく、上から見たらほぼ垂直である!
「ウソでしょ!?死ぬって海に落ちちゃうって!」
「GAAAAAAAAAAAAA!!」
「ひぃーこっちも殺されるぅぅ!」
牙を剥きだして威嚇するウィーゾル!本能的恐怖に震えるユーニス!
人は鮫を前にして、自らが脆弱な獲物だった事実を思い起こすのだ!
「うーうー…あー!!チトセ行こう!」
「行くって…ひゃぁぁぁ!?」
「ナンダト!?」
追い詰められた人間は思わぬ行動をとる事がある
ユーニスは雄たけびを上げると千歳を胸に抱き
ほぼ垂直の背びれを滑り降りる

「ひゃっはー!」
「本当に今日はこんなのばかりだ!」
風雨に顔を叩かれながら背びれを滑り降りる二人
乾いた服が一瞬でびしょ濡れ状態だ

「これで一安心だねー?」
「まて…何か聞こえないか…?」

ヒュンッ! ヒュンッ! ヒュンッ!

鋭い風切り音。音は頭上から聞こえる
「何か飛んでる?あ?えー!?」
「なんだ?え…飛んでるー!?」

見上げる二人の頭上をいくつもの飛翔体が通り過ぎていく
最初はミサイルかと思ったが違う
「サメェー!」「サメェー!」「イカァー!」
鮫幼女達だ!
両腕を身体の両脇に揃えた姿はまさにフライングシャーク!
しかし……

「うにゃ!」

「あ、海に落ちた……」
「…落ちたな」
飛んで行った鮫幼女達は次々海に落ちて行った
暴風の中を飛べばこうもなります
「あー、私らは艦内から行きません?」
「ウォォォオオ!!」
「ア、行ッチッた…」
ハンマーを無視して、ウィーゾルが艦橋からジャンプ、派手に飛沫をあげて
千歳とユーニスの前に着地を決める!
「あああああー!っととっ・・・!」
「痛っデ!尻打っタ!」
ハンマーとソウも後に続く、さすがにこいつらは他の鮫幼女とちょっと違う。

嵐の日に堤防に立ったことがあるだろうか。今千歳とユーニスの状況が
まさにそれである。高い波が甲板の上まで押し寄せて、3人と2人の間に飛沫をあげる。
「どうしよう…泳いで逃げる?」
そうは言うものの、黒々とうねり、果ての見えない海に飛び込むのは
自殺に等しい。正直、揺れる甲板の上に立つだけでも恐ろしい。
大きな波が鮫潜水艦に当たる!思わず抱き合い、足がすくむ2人、おまけに
「サメェー!」「サメェェ!」「モゴモゴ…」「サカナ!?」
荒ぶる波をものともせずに、鮫幼女達が海から飛び上がってくる!
完全に彼女たちのホームだ、勝ち目は無い…。

その時、海面から巨大な影が飛び出した!
巨大な鮫だ!その腹に首無しの人間がいる…鮫男だ!
機械鮫の破壊された片目につけられたカメラが、赤い光の筋を暗闇に引く!

首無し鮫男の腕が動き、千歳とユーニスに向けて何かを発射した!
「うわっ!?」
「ボールの中に入っちゃった!?」
アクアボールのような透明ボールに捕獲される。そしてボールはロープで鮫と
繋がっていて、一瞬で2人は甲板から嵐の海に飛び出した!

「わっ、なにあの装備初めて見た」
「サスガに私らデモ、生身じゃ追えネーナ」
「クソッ…!オルカァ!裏切り者がぁぁ!絶対に、許さねぇからなぁ!!」

機械鮫の内部のオルカは、波の向こうに遠ざかる艦の映像をモニターから消した。
棺桶のように狭いコックピットの中で、うつむいた彼女の顔を見ていたのは
スマホの黒い画面だけだ。

………
……


「助かった…のかな?うわっでも乗り心地は最低だねこれ!うわぁ!?」
鮫に引っ張られたアクアボールが海面を跳ねながら疾走する。その中に入れられた
千歳とユーニスも跳ねる跳ねる…。
ボンッと大きく跳ねた拍子に、千歳と折り重なって倒れこみ、エアクッション
みたいなユーニスの乳房が圧迫!
「むぎゅ!?」
重量感ある乳房に圧迫され千歳は潰れた饅頭の様になった
普段から抱き付き癖のあるユーニスに圧迫される事はあったが
今日のは勢いが付き過ぎていた

「チトセー生きてるー!?」
「生きてる、生きてるが苦しい…むぎゅっ」
苦しいと言ってる傍から再圧迫

「チトセが死んじゃうー!」
「…死なない…わっ!?」
波の勢いでアクアボールが大きく跳ね、二人の体勢が入れ替わる
今度は千歳の乳房がユーニスの顔を圧迫!
圧迫するのだが……

「ふにゅ!?…ふお!」
「すまない…大丈夫か?…ってオイ」
千歳の身体を抱き締め、ユーニスは至福の表情を浮かべていた


「何遊んでるんだアイツらは……」
瞳に後方の様子を映しながらオルカは溜め息した
高い波の向こう側にサーチライトの灯が一瞬見えた。近づいてくる小型の
貨物船が見える、巨大な鮫潜水艦に比べて、荒波に揉まれる姿は頼りない。

オルカが機械鮫を加速させる、船尾に回ると、跳ね上げ橋が降りるごとく船尾が開き
誘導灯が点灯した。
機械鮫はさらに加速!海上に飛び出し、即座に鮫男に変形し、船内に飛び込んだ。
続いて、ボヨンッと千歳とユーニスが入ったボールも転がり込む。
その途端、3人は銃を構えた男達に取り囲まれた!
H&K MP5を構えた黒いレインコート達と、オルカの鮫男が対峙する。
ビィー!ビィー!黄色い警告灯が点滅し、船倉がゆっくりと閉じられる…。

「えっ何…なに??」
「助かった…んじゃない…のか?むぐっちょっ…苦し…」
ボールの中で、ユーニスが不安げに千歳にしがみつく。
ジャッギンと静寂を破って鮫男の腕から鮫牙ナイフが飛び出す!

鮫牙ナイフがボールに突き立てられて、プピィー…と気の抜けた音を立てた。
中の2人が、外へ出される。

「大丈夫!大丈夫だ!彼女は我々の協力者だよ。君が、オルカ君だね?」
白衣の男が階段から駆け足で降りてきた。男達がH&K MP5を降ろす。
圧縮空気の解放音、鮫男の背中から、オルカが出てきた。

「オフラインで会うのは初めてだね、僕がソンだよ。無事そうで何より…。
それで…例の物は…」
「……ソン博士…彼女たち」
ほっとしたように溜息をして、オルカが千歳とユーニスを指さす。
「アプリは、黒髪の方にインストールされてしまったの…」
「ふぅぅむ…」
ソン博士と呼ばれた白衣の男が、ツカツカと2人へ歩み寄る。
似合わない黒縁メガネの奥の、カミソリのように鋭い視線が2人を射抜く。
ユーニスが千歳を抱きしめたまま警戒した。

不意に、ソン博士は、千歳の目の前で指を立てる。
「何本に見える?」
「え…2本?」
「意識はしっかりあるようだ、なるほど…確かに瞳孔に変化があるな」
まぶたを指で押し開くと、なにかブラックライトみたいなものを当ててきた。
「ちょっ、いきなり何すんの!」
千歳をひったくり返して、ユーニスが唸りそうな顔で睨んだ。

「いいだろう、精密な検査はラボに戻って行うとして…」
ビィィ!鮫男のコックピットから警告音!
「…まずい、ウィーゾルが追って来た!」
弾かれるように鮫男に飛び乗ったオルカがモニターを見て叫んだ。



同時刻、鮫潜水艦内。

赤い戦闘用照明に照らされた発令所で、ウィーゾルが仁王立で指揮をとる。
ハンマーやソウ、そして鮫幼女達もポジションについて戦闘態勢だ。

「前方に目標を捕捉、距離3000」
「もっと近づけ、ばらばらにぶっ飛ぶのをこの目で見てやる」
「というと…」
「魚雷発射用意だ!船ごと撃沈しろ!」
「ギョライはヤリすぎじゃー…」

「ギョライ!?」
ちょっと引くソウの後ろで、めんどくさそうな顔で掃除していた鮫幼女が、
エプロンを脱ぎ捨て火器管制パネルに飛びつき、ものすごい勢いで操作しだす!
諸元が次々に入力され、魚雷が弾薬庫からローラーコンベアの上へ転がりこみ
発射管へと運ばれていく。巨大なリボルバー型の機構へ魚雷が2本、押し込まれ
コンソールの『READY』の文字が点灯。1番と2番発射管に注水、門扉が開かれる!
「ギョラーイ!!」
すっげー嬉しそうな顔で銃型のトリガーデバイスに指をかける鮫幼女!

「ねぇ、ウィウィ考え直したほうが…」
「うるせぇ!裏切り者がどうなるか、思い知らせてやる…発射!」
「イェェェェエ!」
トリガーが引かれる!
……だが、魚雷は一向に飛び出さない。
「…アレ?」
カチッカチッと何度もトリガーを引く鮫幼女、そのうちイライラしだして
振ったり叩いたりするがいっこうに反応なし、かわりにコンソールに『ERROR』が点滅。
「ノォォォォ!ギョラーイ…」
鮫幼女はコンソールに突っ伏してトリガーをぶん投げた。

「クソッ!どうなってやがる!…どけ!」
「グエッ」
ウィーゾルは、操舵をしていた鮫幼女を突き飛ばして、舵を握る。
「最大戦速の体当たりだ!粉々にしてやる!」
鮫潜水艦の巨大な背びれが、嵐の海を切り裂いて浮上する!



再び貨物船内。ブリッジ。

「博士、レーダーに巨大な艦影が現れて、急接近してきます」
「体当たりする気か、振り切れ」
「ムリです、この悪天候では速度がでません!」

船倉から、千歳、ユーニス、オルカもブリッジへ上がったが。
どう見てもやばい雰囲気だ。
高波に船首がもちあがり、坂を一気に落ちるように下がる。
木の葉のように揺れる貨物船が、さらに不安を煽る。

「チトセ…生きて帰ったら結婚しよう」
「死亡フラグ立てんな」
投げよこされた救命胴衣を着ながら、ユーニスに突っ込みいれる千歳。
「私のせいだ…ちゃんと巻けなかったから…」
「いや、大丈夫だ。オルカ君、対策はある。電磁爆雷を投下しろ」
ソン博士が言うと、部下がコンソールを操作する。

貨物船の後部甲板に並べられた、横倒しのドラム缶のようなものの固定具が外れる。
ドラム缶は傾斜したレールの上を転がり、そのまま海中へ落下。
そして…船尾の海中で、稲妻が爆発した!

時間差でもって、何度も嵐の海面をもりあげて、水中で巨大な放電球が膨れ上がる。
「…ヅッ」
「チトセ!?」
「うぁっ…おでこにビリビリくる…!」
千歳が頭を押さえてふらっとすると、横でオルカもおでこを押さえた。
船のコンソールにもノイズが走る。

「少し我慢したまえ。奴らの特殊な感覚器官を狂わせる、強力な磁場を発生する爆雷だよ」
「巨大な艦影が後退していきます」
「帰投だ、残りの爆雷は10分間隔でばら撒き続けろ」
悶える千歳やオルカに一瞥もくれず、カミソリのように鋭い顔つきでソン博士は部下に命じた。

………
……



「チトセ…落ち着いた?」
「…うん、さっきより楽になった…顔が近い」
覗き込みながら問い尋ねるユーニスに千歳は小さく頷いて
ユーニスの頬を指で突いた

「にひひ、チトセが元気だと私も嬉しい」
「…おまえって、本当にイケメンだよな…うっ」
「チトセ!もう少し寝てなよー!」
身を起そうとするが、直ぐにユーニスの膝へと戻された

千歳は現在ユーニスに膝枕状態
そしてここは貨物船の船室
プレハブ造りを思わせる簡素な室内には古びた二段ベッドが二つ、壁際に設置され
ベッドとベッドの間には簡易テーブルとパイプ椅子が二脚

電磁攻撃の影響で千歳とオルカは立ち眩みを起こしてしまい
到着までここで休む様にと言われたが
鮫幼女達の船の牢屋を思い出せば
実はこちらの方が牢屋なのでは?と思えてしまう


「ごめん…そう言えば、船の揺れが収まったみたいだけど……」
「いいって事よー、うん!嵐は収まったよ。窓から星が見える」
そうかと頷いて窓の方を見るが今は闇しか見えない

「…チトセどう思う?」
「どう思うって?」
「この船!なんか怪しい。なんて言うかさ…街の裏路地みたいだ」
ユーニスはそう言って先程トイレに行った時の話をする

「あの扉の向こう、銃をもったレインコート男が二人も張り付いてる
…ソン博士?だっけ、護衛だって言うけどさ……」
「………」
ユーニスの言葉に千歳は無言で考える

ユーニスは普段は呑気だが『鼻がいい』
危険の多いサンアッシュクロスで女子二人が今日まで上手くやって来れたのも
ユーニスの鼻によるところが大きい
その彼女が怪しいと言うのだ
この船には見えない何かがあるのかもしれない

「…わかった、用心しよう」
「うん」
「…博士は信用できる人だよ」
反対側のベッドで、背中を向けて寝ていたオルカが声をあげた。
「ぬぁ、起きてた」
少しばつが悪そうなユーニス。

「『アプリ』はウィーゾルがあるハイテク企業から盗んだんだけど。そいつら、自分じゃ
アプリを完成できないから、ワザと私達に盗ませて、完成させようとしてたんだ。
それに気づいた私は、すぐに追跡装置を解除した。でも、別にもう1つメッセージが
隠されてたの、アプリの危険性をよく分かってる人からの……」
オルカは身を起こして、ベッドに座りなおす。
「それが、ソン博士?」
「そう、アプリの本来の開発者で、悪い企業に奪われたアプリを悪用されないよう
仲間達と活動してたの。
私も、アプリは危険だと思ったから、博士の仲間に加わったの。
彼は、博士号を3つも持ってるし、紳士的で、いい相談相手だよ」

オルカは全面的にソン博士を信頼しているようだ。オルカのIQについていけそうな
鮫幼女は居なかったし、インテリ同士波長が合ったのかもしれないが…。
「前から何度もあってたの?」
「ネットでね、実際に会うのは今日が初めて」
「えっとさー、信用しすぎじゃない?」
「…ぇ」
オルカの話を聞き終え、最初に口を開いたのはユーニスだった
思わず呆けた顔になるオルカ

「私はアプリをどう作るかとかはわからないけど
ネット上には危ない事がたくさんある事はわかるよ、だから……」
「そんな事ない!ソン博士は信頼できる……多分」
「ほら、やっぱり…オルカちゃ…むご?」
言葉を続けようとするユーニスの口を千歳の手が抑えた

「悪いな。コイツ、子供とか好きだからさ…オルカちゃんを心配してるんだ」
「むごむご(そうそう)」
「それにさ……」
「ぷはっ!チトセ…?」
ここまで膝枕されていた千歳が身を起こした

「オルカちゃんも心配なんだよね?仲間の事がさ……」
言って千歳はにっこり笑みを浮かべた
「…仲間?私が?」
オルカは意外そうな顔をした。

「…さあ、どうかな…。たんに、ウィーゾルみたいなのに、世界征服も
できちゃいそうな力を持たせちゃいけないって思っただけだよ。
だって、あいつらバカだもん」
「ああー…」
あんまりな物言いだが、何一つ間違ってなくて、ユーニスは思わず(わかる…)
みたいな反応が出てしまう。

「ふむ……」
二人を見て千歳が頷いた。何かに気付いた様だが……

「チトセどしたのー?」
「あー…うん、なんとなくだけど」
「なんとなく?」
千歳はもう一度ユーニスとオルカを見ればこんな事を言った

「いやさ、なんとなくおまえ達って似てるなーって」
「…えっ」
「えぇー似てないよー」
「私こんなに性格悪く無いし」
「私こんなに頭悪く無い」
ほぼ同時に似たようなセリフを発すると、お互いを指差し、むっ…と睨みあう。

「…まぁいいよ、少し休む。アプリを黒髪から取り除いたら、誰にも使えない
ように処分しなきゃだし…」
そういってオルカはまた背を向けてベッドで丸くなる。

「……似てる?」
千歳にこそこそと耳打ちするユーニス。
「んー……」
「ごくり……」
ユーニスをじっと見つめる千歳
そして、千歳の言葉を待つユーニス

「…どうだろうな…?」
ニッと意地悪な笑みを浮かべ言った
「チトセ〜〜〜!」
「少し寝る、おまえも寝とけ」
千歳はそう言ってユーニスの膝から頭を上げると
腰かけていたベッドに寝なおした
潰れた枕は寝辛いが
今は疲れている、多分直ぐに眠る事が出来るだろう -「むむー…」
ユーニスは不満げに唸っていたが、灯を消すともぞもぞと千歳にくっついて横になる。
ふと、丸い船窓を見上げると、黒い雲が流れていくのが見えた。

◆3 Edit



………
……


廊下の船窓に明かりは一つもない。夜の洋上は、真の闇だ。
常夜灯だけが灯る廊下の突き当り、通信室から明かりが漏れている…。

「アクシデントにより遅れが生じましたが、対象の確保に成功、〇六時までに
本社へ移送完了できます」
モニターに向かい、直立不動の姿勢でそう報告したのは、ソン博士だ。
メガネをしていない。

<<アクシデントとは、幼稚園児に襲撃され、アプリの力が部外者に
インストールされてしまった、ということだな?>>
モニターに映し出されるのは5人の重役の姿。壮年の男が4人、中年の女が1人。
リモート会議である。
「…はい、しかし、ラボにて権限の委譲は速やかに行えます。問題はありません…」
<<判断は我々の仕事ですよ。それに、問題がないのなら、なぜ精鋭部隊の派遣を
要請したのですか、”ウォン”>>
顔つきのきつい、中年女が骨ばった指を組みながら釘をさす。
「はいっ…。万が一、鮫ギャング達の襲撃があれば、下請けPMCでは役に立ちません。
私の部下達を集めていただきたく……。」
ソン博士…ウォンと呼ばれた男は頭を垂れたまま言う。
<<お前のではない、会社の道具だ>>
「はいっ」

モニターの一番上に表示された、灰髪のアジア系の男が、灰色に濁った
感情の一切見えない目で言う。
「…だが、よかろう許可する。アプリを回収し、部外者は速やかに始末しろ」
灰髪の男は、真っ赤な絨毯の大会議室に座している。
背後には、明朝の時価数千万の高価な白磁の壺があり、壺には金箔の施された
桃の木がフラワーアレジメントされている。
金箔桃の枝に、牙を剥いた大蛇の金彫刻。そして背後の赤い壁には、菱形の中に
『威力』の金文字をあしらった、純金エンブレム。
誰もが社名を知る超有名な財閥グループのアイコンである!

<<はっ!我命に代えてでも!>>
「よし、行け」
大会議室に投影されていたウォンのホログラムが消える。

「以上だ、報告業務を終了する」
灰髪の男がそういうと、他のメンバー達のホログラムも消えて、豪奢な会議室に
灰髪の男だけが残った。
そして彼はおもむろにタブレットを開き、灰色の瞳にブルーライトの光を反射させた。

貨物船の通信室内、モニターが完全にオフラインになるまで、頭を下げていたウォンが
おもむろに顔をあげると、チェックのシャツにつけたダサイネクタイの首元を緩める。
その瞳は、獣のように炯々とぎらついていた。

………
……


「ついたぞ、車に乗れ」
熟睡していた千歳達が、H&K MP5を持った男共にたたき起こされたのは、まだ夜明け前だった。
大型の黒塗りハンヴィーが3台、貨物船から出て港を別々の方向に走っていく。

顔を洗う暇もなかった3人は、寝ぼけながら車に揺られる。
「朝飯だ」
大欠伸するオルカとユーニスに、市販のサンドイッチと水のペットボトルが投げ込まれ。
2人は、半分寝ながらサンドイッチを食み始める。

「…わたしの分は?」
千歳がそう言うと
「君は、これから精密検査を受けるから、済むまで水も朝食も無しだ」
助手席からソン博士の声がした。

「喉乾いて死にそう…」
「ふわ…水ぐらい、いいでしょ…あい…」
普段の10倍は眠そうな顔のユーニスが、自分の水を千歳に差し出す。
オルカは、くあっ…と欠伸している。
「駄目だ!」
ガッとボトルをソン博士が掴んだ。
いつの間に振りかえって、座席の間から手を伸ばしたのか。まったく見えなかった。
白衣の袖から出る手に、指抜きグローブの黒いカーボンファイバー手甲をつけている。

「……胃は空にしておきたまえ、処置の途中で吐しゃ物が気管に詰まって
窒息する危険がある、いいね?」
眠気の吹っ飛んだ千歳とユーニスは、黙ってうなずく。
「んっ…んぐ…ぷはー」
その横で目を瞑ったままオルカが水を飲んでいた。

………
……


誰も居ない早朝のオフィス街を黒塗りの大型ハンヴィーが走る。
運転するのはSPみたいな黒服にサングラスの男。
WEIRITEC-威力先端技術公司-とかかれたビルの前に来ると。なんの変哲もない
地下駐車場のバーゲートをくぐり、奥の厳重なバリケードの敷かれたゲートの前で止まった。
銃を持った見張りが、ウォンの顔とIDを確認すると、ゲートを開く。
軍事基地のような厳重さの駐車場には、何台もの黒塗りのハンヴィーや、装甲車
まで並んでいる。

「(チトセ…見た目ミリタリーだけど、こいつら…)」
カタギの連中じゃない。言外に含めつつ、千歳にぎりぎり聞こえる声で耳打ちする。
ユーニスが感じ取っているのは、ギャングやマフィア達から感じる種類のヤバさだ。
オルカは横で居眠りをしている。
ユーニスの言葉に千歳が小さく頷いた
この異様な空気、とてもじゃないがまともな会社とは思えない
黒服にサングラスの男が警備員らしき男と言葉を交わしているのが見えた

「(警備員の持ってるあれ、軍隊で使ってる銃だよ)」
「(詳しいな…?)」
「(映画で見た)」
すれ違いざまにじっと目を凝らせば銃のごっつさが良くわかる
…分厚い装甲を撃ち抜き内部に致命的なダメージを与える画期的な銃です
現在、各国の軍事関連組織に……

「(うおっ?)」
「(チトセ…!?)」
「(なんか変な情報が流れ込んできた……)」

「(アプリのせい?大丈夫?頭痛くない?)」
「(頭痛は無いんだが…なんか、体の中がかゆい…けど…)」
ユーニスの危機察知能力は野生動物並だ。アプリの力は使いたくないが、有益な
情報があるかもしれない。千歳は、流れ込んでくる情報を読み解こうとする…。
「!?」
前触れも無しに、車内に白い幽霊めいたのっぺらぼうが現れた。
体がシートや人を貫通しているのに、誰も気にしていない。肉眼でAR映像を
見ている気分だ。気味の悪い変形文字列がスライドして、ハリポタのディメンター
みたいな奴の輪郭を宙に浮かび上がらせているのだ。
(ユーニスなら、どっちかっていうとフラッシュのタイムレイスって言うかも…)
思わずそんなことを考えたら、画像検索結果に視界が覆われそうになって
必死に頭を振る。
(だめだ、止めろ…!)
情報を流し込んでくるのを止めようとしたら、背骨からゾクッとするような痙攣が走り…。

「ひゃぁん!?」
「ちょっチトセ!?」
変な声がでてしまった。のっぺらぼうは掻き消えた。
ユーニスは、隣で居眠るオルカを揺すりおこす。
「んぁ…ああ…。アプリが脳をハードにするせいで、神経が誤作動してるんだよ…」
「ねぇそれ大丈夫なやつ!?」

「着いたぞ」
後部座席で騒ぎ出す3人を制するように黒服が言う。車から降ろされ、今度は
業務用のエレベーターに乗せられた。10階…20階…途中でエレベーターが止まる。

「お前たちはこっちで待て」
「待てって…ちょっチトセ…」
「ユーニス!」
有無を言わさず、黒服がユーニスとオルカをエレベーターから降ろすと、再び
エレベーターは上昇を始める。
ソン博士は、手を後ろに組んで立ったまま、終始無言。

「あ、あの……」
「……なんだね?」
千歳の呼びかけにソン博士は振り向かず返事をした

無言のプレッシャーに耐え切れず声をかけてしまったが
別のプレッシャーを感じる
それに、先程までのソン博士の声とは何かが違う

それが何かはわからないが
出した言葉を引っ込める事は出来ない
だから千歳は言葉を続ける

「…私、この後どうなるんですか…?」
「健康診断をするだけだよ
君の状態がわからなくては何をする事も出来ないからね?」
「はぁ……」

ソン博士は質問に答えてくれたが
これは絶対にそうじゃないパターンだ
だって、ソン博士の言葉に感じる物が一瞬前とは違うから

「(…これ絶対危ない事されるよね…困ったな)」
心の中で溜め息しながら天井を見上げれば
龍と目があった
エレベータの天井に龍の絵が描かれている
長い髭をゆらめかせ手には玉。そして長い胴、いわゆるチャイニーズドラゴン
今の自分はまさに龍の牙に咥えられた様な状態かもしれない

流されるままここまで来てしまったが
この状況は異常だ
鮫男や鮫幼女達と関わった時点で異常ではあったが
この状況はそれ以上におかしい

千歳にもわかる
ここは本来なら自分達が関わるべきでは無い場所だ
世界が違い過ぎる

「(…はぁ、フラグでも立ててみるか…私、無事に戻ったらアイツと結婚するんだ)」
心の中で言って、千歳は苦笑を浮かべた
エレベーターは50を越えまだ上がり続けていた
「…それで、何がわかったんだ」
背を向けたまま、ソン博士が言った。
「今、君の頭は世界一の諜報機関だ。国防総省から最新兵器の図面をダウンロードし、
愛人に返事しようとスマホを覗いた大統領の頭から核の発射コードを盗むことも容易い。
我々が何者か、気づいていないと思うほど愚かではない」
発せられる気配の質がさらに変化する、押しつぶされる息苦しさから、鋭いナイフを
喉元に突きつけられる緊張感…!

「……」
何も見てない、と言おうとして口を開いたまま固まってしまう。
この街で1年暮らしていれば、マフィアやチンピラ、ジャンキーなんてヤバイ奴は
慣れっこだ。恐怖にすくまず、逃げるなり頭を働かすなりできるようになる。
それができない。
化物じみた鮫男を前にしても、動じなかった心臓が縮み上がり頭は真っ白だ。
この男から発せられるヤバさは、未知の物だった。

「人間すら自由に操れるアプリだ。対策など無いのは、我々が一番
よく知っている…だから、その目で、よく見ておくといい…」
まるで、今までとは別人に変わったような、ソン博士の鋭い視線が、千歳を射抜く。
その瞬間、千歳の思考が意思に反して、生存本能に突き動かされ情報を求めて
力を働かせてしまう。

脳裏に入って来たのは、監視カメラの映像、銃を向ける男達に囲まれたユーニスと
オルカの姿だ!

「ユーニス…オルカちゃん…!」
「やはりシステムをハッキングしていたな。油断も隙もない。
大人しくすれば殺しはしない、もちろん君もだ。覚醒状態でないと分離ができ
ずに厄介なことになる。厄介と言うのは、抵抗するなら首だけになってもらい
脳を生かしながら処置をしないといけないという意味だ」

「わかるな?そうなったら友人を生かしておく意味はないし、君の体は大小2つ
の生ごみになる」
ソン博士がメガネを取るとエレベーターのドアが開いた。
全身防護服で覆ったスタッフが、物々しい機械類の間を動き回るいかにもな
SFめいた部屋である。そして部屋の中央に脳外科用の手術椅子、天井はスパゲティ
のように絡まり合うパイプと機械が埋め尽くす。

「はぁ……」
千歳は大きく溜め息した
あまりに大きな溜め息だったから
ソン博士…ウォン以外の全員が千歳の方を見た

この男の本当の名は『ウォン』
中華系メガコーポ威力先端技術公司を傘下に収める巨大財閥の暗部を司る男……
ファミリーネームが消されているのを見るに『ウォン』と言う名すら偽名なのかもしれない
…と、文字列ののっぺら坊達が、千歳に情報を押し付けてきたが
情報に混じる画像のあまりの悍ましさに、慌てて払ってしまった

しかしわかった。この男はやると言ったらやる
これまでしてきた事を、千歳…そしてユーニスにもやる
だから今の千歳に出来る事は……

「わかった…従うよ?」
千歳は肩を落とし視線を落としながら言うと
「その代わり…二人を傷つけるなよ…?」と今度は斜めに視線を上げ言葉を続ける
そう、今の千歳に出来るのは従う事だけ……

「…あ、ああ…よろしい、それで良い
後は彼らの指示に従いたまえ、君がする事はそれだけだ」
「そうか…それだけ、ね」
千歳は視線を伏せ返事し、もう一度視線を上げるが……

「…!早く行きたまえ!」
「…あ?、わかった」
目を逸らすウォンが気になったが。今は気にしている場合ではない
一つ頷くと千歳はそのまま作業員達の方へ向かった
無抵抗のまま、椅子に仰向けに座らされ、手足と首に枷をつけられる。
頭上の機械が、振動しだしヴゥゥゥ…と低いノイズを発しながら降りてくる。

(やばい…やっぱり怖い…やめときゃよかった…!)
今になって後悔の念が押し寄せる。今はソン博士…ウォンを信じるしか…。

信じる?
できるのか、そんなこと。
目的の物を手に入れた奴らが、自分達を始末しない保証は?

ユーニス達の命が危なくて、何も考えず行動してしまったけど…。
もっと、できることがあったんじゃないか?
今の自分には特別な力があるのに。
人命をなんとも思わない連中ですら、恐れるような…。

恐れ?
そうだ…さっき、ウォンは目が合いそうになったら咄嗟に視線を避けたんだ。
まぎれもなく、自分の中にあるものを恐れたんだ。

天井から迫ってくる機械を見つめて、思考が火花を散らすように加速して、
そのとたん、機械が停止した。
視線を動かせば、防護服達も、ウォンもまるで一時停止をかけたようだ。
いや、よくみれば、機械はごくごくゆっくりと動き続けている…。

ポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…

不気味な鳥の声が聞こえた。足元を見ようとしたら、体は枷をすり抜けて幽体離脱めいて
立ち上がる。
白い幽霊のようなのっぺらぼうが、相変わらず不気味な文字列を体表に走らせながら
ゆらり…浮かんでいる。
おもむろに、節くれた棒切れのような両手を前にかざすと、ユーニスとオルカの
監視カメラの映像が現れた。周りと同じように一時停止している。

画面隅、停止していた時刻表示が動き出す…ストロボのようなマズルフラッシュ
サイレント映画のワンシーンのように、その場に崩れ落ちる2人の姿。

「!」
千歳が息を飲む。映像は逆再生され撃たれる前にもどった。
時刻表示は、0.1秒だけ進んでいる…。

ポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…

不気味な鳥の声が、目も口もない顔から発せられる。
…望めば、最悪の未来を変えてあげよう…とでも言うように…。
今のはきっとアプリが予測する未来の一つなのだろう
もしかしたら捏造かもしれない
かもしれないが……
今の千歳にそれを否定する心の余裕は無い
こう考えている間にも時間は流れていく
今は加速された思考時間の中
僅かに猶予が与えられたにすぎない

ポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…

のっぺら坊は不気味な音…声?を発しながらじっと千歳を見ている
ゆらゆらと揺れる頭に目は無いが
流れる文字列が時折、ニヤニヤとした表情の様に見せる

「(悪魔がいるとしたら…こんな風に契約を持ち掛けるのだろうな……)」
千歳は溜め息をした……
………
……

防護服の作業員達が作業プロセスを進行している
黒のフェイスゴーグルには固定され横たわる少女の姿が映る
「スキャナー接続と同時にお宝を捜す」
「乙女の秘密とご対面と言う訳か」
「電気信号を記憶映像として読みとれるならな」
「ははっ冗談で…おっ!?」

ヒュン……

不意に機器が停止した
ランプを明滅させていた操作装置も
数字を刻んでいた機器群も停止している

「停電か……カハッ!?」
作業員の一人がラリアットをくらった
機器運搬用のクレーンが勝手に作動し薙ぎ払ったのだ

「なんだ!?灯が消え…ウグッ!!」
部屋の灯が消え、室内は暗闇に閉ざされた
「警備員だ!警備…ク!」
「OUCH!」
闇の中、聞えるのは作業員達のくぐもった悲鳴の連続

やがて訪れる沈黙

「…殺してないよな…まったく!これっきりだからな…?」
千歳は呟くと拘束を解きベッドから起き上がり
闇の中、出口へと真っすぐに歩いて行った

そんな千歳の背を、闇に浮かぶ白い笑いが見詰めていた……

『火災発生、火災発生…』
赤い非常灯に切り替わった室内に女性ボイスのアナウンスが大音量で流れる。
ブシャァァァァアッッ!「ぐわーっ!?」「何が起きてる!?」「くそっ、消火剤が目に…!」

ユーニスとオルカを銃殺に処しようとしていた男達に、天井から消火剤が直撃して
泡まみれになった!
「走るよ!」
ユーニスがオルカの手を引いて走り出す。
「待て!」
パンッ!パンッ!銃弾が壁やネスラックに当たって火花を散らす!
「うわわっ!?鮫っ子!!あんたの鮫男は?!」
「鮫っ子!?私のこと!?鮫男!?ああ、エクステンドスーツね!応答が無いの!」
「肝心な時に!」

ドラム缶の影に飛び込んだ2人を銃声が追う。
「ぐわぁぁぁ!?」「ぎゃぁぁあ!」「がべべべべ!」
突然の男達の悲鳴!ドラム缶から顔を出すと、筒状の警備ドローンのテーザー銃で
感電しているではないか。
『不審者を発見、対処を開始します…。不審者を発見、対処を開s…ガガガガガガ』
「ぐわぁぁぁ!?」「ぎゃぁぁあ!」「がべべべべ!」
不運なことに消火剤は電気をよく通す、ドローンと男達はショートしてさらに感電
黒焦げになって倒れ伏す!

「…Alright!(ヨシ!)」
「…何が?」
男達とドローンが完全に動かなくなったのを指さし確認すると、ユーニス達は
逃げ出した!

「アウ!ノオオオオオオオ!」
黒いゴーグルに黒いベストの男達が床清掃ロボの群れに押し流されていく
男達の持っていた火器類はダストシュートへ放り込まれ。反撃の可能性は無いはず
…だが、別の方向から声がした

通路の奥から先よりさらに重装備をした一団が現れた
「捕獲対象を発見!ガス弾を使え!」
「サーイエッサー!」

隊長らしき男の指示でジュース缶の様な物が投擲された
しかし……

ガンッ
ふらふらと飛んできたドローンに命中
ジュース缶(?)は投げた側へと逆戻り
「Noooo!」
『防火シャッターが下りますご注意クダサイ、ご注意クダサイ』
ジュース缶(?)が部隊の中央に落下すると同時に防火シャッターが降り始めた

「全員走…ウゴッ!?」
「隊長ォ!」
隊長らしき男の顎にドローンが命中
防火シャッターは閉じられ混乱は扉の向こうに


「…うう…なんだかどんどん大げさになってる」
千歳は自分の身を抱く様にしながら呟いた
最初は警備員と黒服達だったのが
気付けば重武装の兵隊?特殊部隊の隊員の様な者達が襲ってくる

それはつまり、それだけ千歳が危険な存在であると言う事だ
危険な存在……
千歳自身分かっている。全てが見え全てが出来る……
思うだけで、文字列ののっぺら坊達がその時に必要な物を提示し
千歳はただそれを使うだけでいい……
あまりにも簡単すぎて怖い……

怖いが、今は使わなくては生き残れないし
助ける事が出来ない

ココッ ポポッ コポポッ……

「…わかったこっちか」
千歳の前にワイヤーフレーム化されたビルの地図が浮かび上がり
そこに人員の配置図と『敵対存在』と『ゲスト』の位置が示させる
「はぁ…敵対存在って私の事かよ……」
千歳は本日何度目かの溜め息をすると
『ゲスト』の居場所への最短ルートを走り始めた

「見つけたぞ!」
廊下の向こうに黒づくめの戦闘アーマーを着たウォンの姿が現れる。間髪入れず
『防火シャッターが下りますご注意クダサイ』
合成音声アナウンス、千歳との間の防火シャッターが降りる
「シィッ!」
ウォンの投げたクナイダートが、数インチの隙間に吸い込まれるように入り込み
機構を破壊!シャッターが半分閉じて止まった。

「チトセェ!」
廊下の反対側にユーニスとオルカ達が階段を駆け上がって来た!
「ユーニス!オルカちゃん!…まずい!」

クラウチングスタート姿勢のまま、ウォンが凄まじい加速、半開きのシャッター
目掛けて猟犬めいた疾走をする、速い!
『防火シャッターが下りますご注意クダサイ』
合成音声アナウンス、2枚目のシャッターが間一髪でウォンの突進を遮った。分厚い防火シャッターが
大きくたわむ。

「チトセ!…チトセー!」
「うわっ!?っとっと…!」
振り返りざま、ユーニスに突進を食らってよろめいた。苦しいくらいに抱きしめ
られる。
「チトセー!チトセ生きてたー!生きてから結婚しよー!」
「わかった!わかったから落ち着け…苦しい……」
「はぅ!」
千歳の声を聞きユーニスは慌てて抱き締める腕を緩め
代わりに頬と頬がくっつくほどにすり合わせる

「擦りすぎだって…とりあえずオマエもオルカちゃんも無事でよかった……」
言って千歳は笑みを浮かべ、そしてオルカの方を見た
しかし、オルカは笑みを浮かべずに言う

「『アレ』は黒髪…あなたがやったの?」
オルカは閉じられた防火シャッターを見やった後
千歳に視線を戻すと強く睨みつけた
『アレ』とは防火シャッターだけで無く
施設やドローンの暴走、全ての事を言ってるのだろう
だから、やったのか?と問われれば頷くしかない

「やっぱりそうなの……」
「ワオ!凄いよチトセ!アベンジャーズに入れるよ!だからキスしよ結婚しよ!」
「だからお前は落ち着け……」
ユーニスの頭を撫でながら千歳は苦笑を浮かべた
しかし……

「結婚式にはまだ早いみたいだよ……」
そうオルカが呟いた直後

ドンッ
衝撃音と共に鋼鉄の腕が防火シャッターを貫いた

「うぇぇ!?」
「昨日もこんなことなかったか!?」
圧倒的デジャブ!鉄製のシャッターを素手で引き裂き、ウォンが侵入してくる。
微かにモーター回転のトルク音…サイバネアームだ!
昨日までの2人は、そんなもの、あと半世紀は空想の世界の物だと思っていたのに。
鮫幼女や、目の前のサイボーグ手術をしたウォン等が、やすやすとフィクションの
次元の壁を飛び越えてきて、もはや驚きを通り越して諦観の境地に達した感すらある。

「どうやら、首を切り落とすしかなさそうだな」
「ソン博士…」
オルカが2人の前へでる、戸惑いながら、名を呼ぶ
「そんな人間は端から存在しない」
「嘘だ…!だって……」
「仲間外れな自分に優しく声をかけてくれたのに…か?
周りは魚並みの脳みその連中ばかりで、自分だけが特別で、本当の居場所は
ここじゃない…とでも思ってたんだろう。
ネットに欲しい答えを探す愚か者を、騙すほど容易いことはない」
容赦なく言い捨てるウォンに、オルカは返す言葉もなかった。

「鮫っ子…」
ユーニスはうなだれるオルカを見やる。
そして、今この場でウォンの面にパンチをかませないことに腹が立ってきた。
蹴りならワンチャンあるか?とか考えてると。
千歳も同じ気持ちなのか、じっと相手を睨んでいる。

「フンッ私にアプリの力で催眠をかけるつもりか?無駄だ。そいつは電子機器を
介して人の網膜に信号を送るものだ。通信デバイスを持たない相手には無力…」
グワッシャー!シャッタがボロクズと化す!
「鮫男!?」
「私のスーツ!」
『GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』
「アウチ!あれ、俺こんなとこでなにしてんだ…」
片目がカメラアイの鮫男が雄叫びを上げ、背中から警備員を振り落とした!
「部下にも、仕事中にスマホ見るなって言っておくんだったな」
額に浮いた汗をぬぐい、不敵に笑いながら千歳が言う。
地下駐車場のオルカの鮫男は、通信妨害で呼び出せなかった。
そこで、サボってスマホを見ていた警備員の網膜から、思考をハッキング、ここま
で運ばせたのだ!
千歳は、視界の端っこで、あののっぺらぼうが、人間を操作しているのを見せられ
た時には流石に止めようかと思ったが、非常事態だったので、心で詫びておいた。

「ちぃ!ゴミめが!」
ウォンが、躊躇なく警備員にクナイダートを投げる!ガキンッ!鮫男の腕が弾く!
「ひぃ!?俺ただの契約社員なんだよたすけて!」
慌てふためいて走り去る警備員。

『グルルルル……』
オルカの搭乗した鮫男が、ウォンを睨み、鮫牙の間から獰猛な唸りを発する!
「よっしゃやれー!ぶっ殺せ―!頭くいちぎっちゃえー!」
ユーニスの殺されかけた恨みがこもる容赦ない声援!
「…頭イタイ…後は任せる……」
「わぁ!?チトセー!?」
テンション上げるユーニスの横で千歳がガクリと頭を垂れた
脳への負荷大きいアプリの力を使い過ぎたのだろう

『アトハマカセロ!』
オルカの鮫男が野太い声で答え親指を立てた
もはや恐れる物はない、オルカは全身を緊張させウォンと対峙する、が……

『…ン?ナニ?コノヨジョウウェイトハ?』
視界の片隅でスーツの異常を知らせる警告ランプが明滅している
腰付近に何か未確認の重量物が存在していた

「ああ…使えそうなの…括り付けてきた……」
『…ソウカ…ツカワセテモラウ!GRAAAAA!』
鮫男は重量物…対戦車ライフルを構え上げると咆哮を上げた

BLAM!BLAM!鮫男は対戦車ライフルを2丁拳銃持ちして、乱射する!
防火シャッターが吹き飛び、壁に大穴を穿つ!ウォンは身を沈めながら後退、
そこへ対戦車ライフルの追撃!ウォンはさらに後退!
『緊急事態発生、警備部へ通h…ボガーッ!』壁の向こうに居た警備ドローンが
12.7x99mm弾の餌食となる!
『GRAAAAAAAAAAAAA!』
辺りはすでに粉塵と硝煙と警備ロボが起こした火災で戦場さながらだ!

2丁対戦車ライフルの鮫男は雄叫びを上げ、めったやたらに追撃!
KABOOOOOOM!ラボの何らかのハイテク装置が火花を散らして爆発を起こす!
『『『『『『ボガーーーーーーッ』』』』』』
一直線上に並んでいた警備ドローンが12.7x99mm弾に貫かれ爆発を起こす!

やっとスプリンクラーが作動した時、フロアはほぼ廃墟と化していた。
スプリンクラーの雨に打たれ、ライフルから湯気が昇り、無表情な鮫男の顔を
雫が落ちていく。

「おーぅ…そういえば、こいつも鮫人間なの忘れてた…」
「あ、あたま…ガンガン…する…」
千歳と抱き合ったまま、ユーニスは、おそるおそる顔をあげる、あたりはもうもうと
立ち込める煙で視界が悪い。視界の中で黄色いランプが霧の中で明滅するように
光っている。天井パネルが崩壊して配線やら配管が落ちる音がした。

ドンッ!鮫男の巨体が宙に浮かされた瞬間、ユーニスは千歳を抱いて
反射的に身を伏せた。
鮫男の踵が耳の側をかすめる、鋼鉄の塊にプレスされる予感に背筋がゾクッと
したが、すぐに焼かれるような熱さに変わる。

『GAAAAAAAAAAA!』
凄まじい爆炎に吹き飛ばされ、瓦礫に鮫男が叩きつけられる!
「うひぃ!?タワーインフェルノになっちゃった!?」
天井や壁が黒焦げになり、足元の水たまりが湯になっている!
『逃ゲロ、火炎放射ダ!GAAAAAAAAAA!』
「うひゃぁぁ!?」
立ち上がる鮫男に爆炎が浴びせかけられる!髪を焦がしながらユーニスは間一髪
転がって回避!

煙の中から炎を纏って現れたのは、ガスマスクと溶接面を融合させた禍々しい
フルフェイスマスクにファイアファイター(消防士)風ボディアーマーの……。
「ニンジャだ!」
「…えっ、ナンデ?ニンジャ?」
ユーニスは思わず叫んでいた。ふらふらしつつ困惑する千歳。

「スーツはマニュアルモードだ、通信は使うなよ」
『シュゥー…了解…』
消防士風の奴が、炎を吹き出す両腕を前につきだし、オルカへにじり寄る。
ゴーグル付きマスクをつけたウォンは、警備ロボの残骸を踏み砕きユーニス達の元へ…。

ユーニスは、鮫男が落とした対戦車ライフルを拾い上げると、千歳に肩を貸しながら
部屋の中に逃げ込んだ。
「…手向かわなければ楽に殺してやるぞ?」
マスクを投げ捨て、おもむろにウォンが部屋の中へ踏み込んでいく。

「こっちのセリフだよ、頭吹き飛ばされたくなかったら、どっかいって!」
机の上を乱暴に払って、銃架を出した対戦車ライフルが叩きつけられるように据えられる!
「馬鹿め、素人が扱えるものでは…」
BLAM!何らかのハイテク装置に大穴が空く!ウォンはすさまじい瞬発力で
部屋外へ飛び出す!

「アメリカの田舎育ち舐めんな!赤ん坊だって銃ぐらい撃てるわ!
チトセにひどいことして…絶対許さない!次は本気で頭ぶっ飛ばすかんね!」
反動の痛みも、発砲音の耳鳴りもあまり感じない。たぶんアドレナリンで麻痺してるのだ。
オーディションで演技をする時と同じで、鼓動が凄まじく早いけれど、あがってる
わけではない。体は獲物を追う狼のように熱いのに、頭だけがすごくクールだ。
引き金に掛けた指の震えも止まった。
(絶対にチトセは守らなきゃ…)
指に再度力を込めようとした、その瞬間…!

シィィィィィィィィィッッ!!ビームがライフルを両断!
「うわぁっ!熱っ…くない!」
なぜか辺りに水しぶきが飛び散る!
ガボンッ!ボルル…っ大量に水気を含んだ重たい足音がした方を見れば。
さっきの消防士風のマスクの、デブ仕様とでも言うようなマスクをつけた
球根体型アーマーの…

「新手のニンジャだー!?」
「…ナンデ?」

「ウゴケ!」

オルカの大声が飛んできた
ユーニスは反射的に両断されたライフルを投げ捨て
千歳を抱えたまま飛ぶ様にしながら転がる

スパッ!
「ヒッ!?」
投げ捨てたライフルがさらに細かく切断された

「很好!どうだね?『彼』の水龍咆は?」
瓦礫の戦場に硬い拍手が響く
ウォンが金属の手を叩き合わせながら戻って来た

「これまでのウォータージェットガンは距離が離れると威力が落ちる欠点があった
しかし、彼の使う水龍咆は……」
「ヨユウダナ!ワタシヲミロ!」
「おや?君こそそんな余裕はあるのかな?」
オルカの怒声、そして続く銃撃音
しかしウォンは動かない、彼の耳は弾が自分に当たらないと判断した
彼の予想通り、弾は彼に当たらない
代わりに天井がガラガラと崩れ落ち
水系ファットニンジャとユーニス千歳の間に瓦礫の遮蔽物を作る

「キコエルカ!クロカミトオマケ!
トマルナ!ウゴケ!シニモノグルイデウゴケ!」
「おまけって私ー!?せめてデカパイとか言ってよー」
「…馬鹿言ってないで動くぞ…おまけ」
「チトセまでーうー……」
唸りながらもユーニスは千歳を抱え動き出した


「不注意が命取りだ!」
『GYAAAAAAAAA!!』
炎系ファイアファイターニンジャの火炎放射!鮫男が炎に包まれる!

「うぁぁ…!!まずいっ…!」
鮫男のコックピット内でオルカがうめき、投影モニターにはDENGERの文字が明滅する。
咄嗟にオルカは瓦礫の中に鮫男を突っ込ませて消火すると、鮫ヒレを突きだす。
ヴォドドドド!大口径のマシンガンが連射される!
「ハァー!」
ファイアファイターニンジャが両腕を回転させると、炎の竜巻が出現、銃弾は
竜巻の中で融解!なんという熱量!

『GAAAAAAA!』
オルカはすかさず格闘戦へ移行!相手の炎の出にわずかなタイムラグを見切ったのだ。
鮫歯ナイフを腕から飛び出させ、斬りつける!ファイファイターニンジャは
スウェーで回避!
「炎を出す暇を与えない状況判断か!見た目よりは頭が使えるようだな!」
『GAAAAAAA!』
鮫男のするどい刺突!からの鮫ファング!狂暴な連続技に相手は炎を出す暇もない。
しかし、のらりくらりと回避する様は、風に揺れる火めいて捉えどころがない。
「だが甘い!貴様はすでに私の炎の中に居る!ハァーッ!」
突然、2人の周囲の虚空が爆発した!回避しながら燃料と酸素を散布していたのだ!
混合気が最適となった瞬間、鮫歯ナイフの散らした僅かな火花で火災発生!
『GAAAAAAAA!』
「ハァーッ!」
吹き飛ぶ鮫男!ファイアファイターニンジャは周囲の酸素を炎で焼き尽くし
自らの周りに真空のバリアを発生!きわめて理性的な戦い方である!

一方その頃……

「フォオオオオ!」
咆哮と共に剥き出しの鉄骨が三角に切断され
ガランガランと重い音を立て床に落下した

「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!ぜったい死ぬってばー!」
「…死ぬ死ぬ言うと…本当に…死ぬぞ……」
千歳を抱え必死に走るユーニス
そう、ユーニスと千歳は逃げていた
これまでも危険な案件から逃げた事はあるが
二人の人生の中で最も長い距離を逃げ続けていた

「HOOOOO!」
ガスタンクの様な異形の人型が咆哮を上げた
二人を追うニンジャだ
彼は『水龍咆』と呼ばれるウォータージェットガンを自在に扱う
水系スイトンジツニンジャ
彼の水龍咆はあらゆる物体を超高速水圧ジェットで切断する
金属であろうとコンクリートであろうと、そして人間であろうとだ


絶望的な状況。生き残るためには多少の無理は必要
だから千歳は言う
「なんとかしてみる……」
「チトセ!無理はダメだ……」
千歳はユーニスの唇を指で塞ぐとニッと笑って見せた
「おまえにばかりいい恰好はさせない…さ……」

ブーン!
回転音が近づいて来る、戦闘用ドローンの編隊だ。その数十二
この惨状の中、千歳は未稼働だった機体を検索し呼び寄せたのだ。
「やった!これで勝つる!」
「…フラグ立てんな」

「HOO…?」
十二体のドローンに囲まれるウォーターニンジャ
そして十二本のテーザーガンが同時に放たれた!
だがしかし!彼は動じない!ニンジャはセンジツのプロでもある!

「HOOOO!スイトンジツ!アリゲーターテイル!」
ウォーターニンジャは高速回転、水龍咆を十二方向へ同時に放つ
正確な射撃!切断!爆散!切断!爆散!切断!爆散!
ああ無残!テーザーガンは回転に弾かれ
十二体のドローンは一瞬にしてガラクタへとなった

「うっそー!?ニンジャ強すぎるよー!」
「…くっ…他の方法……あ……」
千歳の鼻からドロリと赤黒い鼻血が流れた……

「チトセ!?」
糸がカットされたパペット状態で千歳の体が脱力する。
一瞬、最悪な考えが浮かんでユーニスは全身が泡立つのを感じたが。
千歳を抱きかかえた腕に、鼓動と体温を感じてほっと息を吐く。

「脳の性能不足で、アプリに食われるリソースが増大したようだな。
ちょうどいい、この状態なら処置がやりやすい…。生け捕りにしろ」
「HOO…もう1人の方は」
太ったマスクから何かを期待するような、水中エフェクトのかかった声がする。
「殺せ」
「フォォォォォォォ!」
恐ろしい喜悦とともに水龍咆が発射される。
「くっ!」
千歳を引きずってユーニスは太い柱の影に逃げ込んだ。
鉄筋コンクリートの柱に深い切りこみが入り、ユーニスの頬を掠める。

「はぁ…っはぁ…!」
動かなくなった千歳を肩にかつぎ、廊下へ転び出たユーニスは必死に足を動かす。
ビシッ!
「ひっ!?」
足元に水龍咆!危うく転びそうになる。
ブシュッ!
「ひゃぁ!?」
水龍咆が鼻先を掠める!髪が数本宙に散る。
壁越しにわざと狙いを外して撃ち込み、弄んでいるのだ!

「遊びもほどほどにしておけ」
「ハッ!…フォォォォォォ!」
複数の水龍咆が発射!ばらばらに動いて壁をバターのように
切り裂いた!
「HOOOOOOOOO!」
針のように細い水流が、消防車の放水に拡大された!
「ぶわぁ?!」
圧倒的水圧を受けて、ユーニスは水浸しの廊下に押し倒される。

ガボンッ…。幾分スリムになったウォーターニンジャが壁を乗り越えて
ゆっくりと歩み寄る。彼のボディアーマーは超高分子特殊ポリマーの分厚い層
からなる、歩く貯水槽なのだ。

『GA…A…』
「鮫っ子!?」
浅い川となった廊下に黒焦げの鮫男が倒れ、湯気を上げる。
その後から、全身を炎に包んだファイアファイターニンジャ!
「おい、打ち合わせと違うじゃないか火が消えたらどうしてくれる」
「細けぇやつだ、ぶふぅ…」

「くっ…!」
万事休すである。ここで、ユーニスは無惨に殺され、千歳はウォン達のモルモット
にされてしまうのか…オルカはすでに焼き魚だ。

その時である、足元の水面がさざ波立つ、地震だろうか…突然2人のニンジャ達が
その場から跳ね飛んだ、一瞬遅れて瓦礫が吹っ飛び、壁が崩壊し、ビルの外まで
見晴らしがよくなった!
耳をつんざくような凄まじい重爆音!突然殴りこんできた破壊の嵐に、千歳を
胸に抱いてうずくまるユーニス、頭の上を特急列車が時速90マイルで爆走しているようだ!

酷い耳鳴りで痛い鼓膜にさらなる爆音の攻め!顔をあげると、差し込む朝日の中
ビルの外に、甲高いジェット排気を響かせF35Bステルス戦闘機が、ホバリングしながら
ビルの中を覗いているではないか!
「……なにこれぇぇ!?」
凄まじい風圧と水しぶきを受けながら、ユーニスが叫んだ!そして思った!
戦闘機って実物は思ってたんよりでっかい!

<<ガード1より司令部、目標を視認>>
パイロットの装着したヘッドマウントディスプレイ内、そこに亡霊のごとく
ゆらゆらと浮かぶ白いのっぺらぼうの姿!

<<司令部よりガード1、偵察ドローンの映像を確認した。奴らは極めて危険なテロリストだ
  釘付けにし、可能ならば破壊せよ>>
通信を受けた基地の司令部のモニターにも、幽霊めいた姿が一瞬横切る。
<<了解ラジャー>>
通信機からパイロットの虚ろな返事が聞こえる。
「…なぁ、いったいなんの作戦なんだこれ」
「わからん…」
「作戦中だ無駄口を叩くな、参謀本部直々の緊急オペレーションだ」
「イエッサー」
虚ろな目をした基地司令にどやされ、オペレーターはモニターに視線を戻した。
そこにも、白い影…。

ホバリングを続けていたF35Bが機体を傾けて移動する、エアインテーク上部の
蓋が開く、ヴォオオオオオオオオオ!!!内臓されたガトリング砲が文字通り火を噴く!

「ハァーッ!」
「HOOOOOOOO!」
凄まじい破壊がビルの窓ガラスをたたき割りフロア内の壁を柱を削り飛ばす!
流石のニンジャ達も回避に専念するしかない。

「ハァーッ!」
ファイアファイターニンジャが火炎放射(フレイムスロウ)!F35Bは機体を傾けて
回避すると、エンジンを響かせて飛びさり、すぐにUターンして戻ってくる。
ヴォオオオオオオオオオ!!すれ違いざまガトリングがさらに追撃!
「フォォォォォオ!!」
ウォーターニンジャが巨大な水柱を発生させ、辛くもガトリング弾を防ぐ!

「…はぁっ!?ぼけっとしてる場合じゃなかった!はやく、早く逃げないと…!」
千歳を持ち上げようとするユーニスの手にクナイダートが刺さる!
「イッ…!?」
「逃がさんぞ…」
煙の中から、青龍刀めいたナイフを手にウォンが迫る!

………
……


「…うぅ、頭が割れそうだ…」
チトセは薄暗い場所で目を覚ます、鼻を手の甲でこすったが、鼻血はついていない。
何か、体に違和感を感じる…。というか、服装が鮫潜水艦で着せられたゴシック
なドレスになっている。
「……ああ」
思い当たる節は2つ、気絶してる間に攫われたか、もしくは…。
2つ目の節があたりだ、目の前の巨大な洞窟は、全体が黒い粘菌
のようなものに覆われて、網の目の隙間に青白い光が明滅している。
よく見れば、黒い粘菌の根の1本1本に白い変形文字が流れるように表示されている。

ポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…ポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…ポポッコッ……

そして、あの音だ…。
無数に聞こえる、気味の悪いさえずりが、雑踏のざわめきのようにあふれている…。

「これは…」
千歳が立ち上がると側にあった粘菌の瘤が光って、映像を投影した。千歳達が
居たビルの回りを戦闘機が飛び回り、機銃攻撃を加えている。
映像に手を伸ばしかけて、千歳は止めた
蠢く壁。触れたら絶対良くない事が起こる
なにより、ぬるぬるとした見た目が生理的によろしく無い
見える範囲全てが文字列ののっぺら坊達が結合し融合した壁……
こんなのに取り込まれたらと思うとゾッとする

「…なんにしても…コレ外の状況だよな……」
これは現実世界を示した映像
つまりは自分達の居るビルが機銃攻撃を受けていると言う事
さらに言うのなら、のっぺら坊が千歳の意思を読み取っての攻撃

コポッ…コポッ゚……

「…はぁ…やっぱりどんどん酷くなって…ううん!?」
粘菌の瘤が浮き上がり地図が映し出される
ビルを中心に何か蜘蛛の糸の様な線がどんどん伸びている
知ってる名前に繋がった。山向こうにある軍の駐屯所だ
さらに糸は伸びる。州をまたぎ大規模航空施設のある基地へと繋がる

ココッ…ココッポ…ポポポ……

「オペレーション…なんだろう?制圧作戦…戦争でもする気かよ!」
さらに瘤が盛り上がり別の映像が映し出された
潜水艦の映像。何か発射装置の様な物が稼働している
ロケット?多分ミサイルだ、もしかして核ミサイル?

「まてまて!核なんて使ったらビルだけでなく私達まで吹き飛ぶぞ!?」
慌てる千歳に見せつける様に、次から次へ瘤が浮き上がり映像が投影される
大型の機銃を装備したヘリコプターの映像。ずらり並ぶ戦車の映像
ライフルを持ち走る兵士達の映像もある

千歳の横に、足元から糸が伸びる、ひょろ長い人型を編むと、体を曲げて千歳を
覗き込んだ。顔に変形文字の横テロップが流れはじめる。
口のあるべき部分の文字列がぐにゃりと歪み、耳まで裂けた悍ましい笑みの形を
とった!まるで、私の力は素晴らしいでしょう?と誇るように!

「こいつは…」
その瞬間、千歳は悟った。
こいつは、人の悪意や暴力といった本能的な欲望を、増大させる悪魔的な触媒なのだ!
催眠術は、かけられる人間が望まないことはさせられない、これが『催眠アプリ』
とはとんだ皮肉だ。

「ぐ…気持ち悪い…でも…止めないと……」
糸が伸びる程、頭に圧迫を感じる。吐き気すらある
しかし、かまっている場合では無い
ビルだけ無く街一つ、いや州が消し飛ぶ『力』が動きつつある
今、これをなんとか出来るのは千歳しかいない

「…例のキック行けるか…?」
鮫幼女達の潜水艦でのっぺら坊達を蹴散らした赤い閃光のキック
あれをまだ放つ事が出来るのなら……
なにより外ではユーニス…そしてオルカ達がピンチかもしれない

「やるしかないか…ワンツースリーで…せやっ!」
千歳は飛び上がると蹴りを放った、しかし……
あの時の様な声はせず、赤い閃光も現れない

「あ、私…死んだかも……」
このまま粘菌の壁に突っ込めば、絶対不味い事になる
死ななくとも、脳の負荷が限界を越え廃人コースかもしれない
さらに壁に大きな口が開く。蠢く触手の口

千歳が諦めかけたその時……
「─────」
声がした。知っている声だ
千歳の足が鮫色の閃光を纏った
そして鋭い牙が粘菌の壁を切り裂いた

インパクトポイントを中心に洞窟に亀裂が走り、粘菌達は光になって消滅!
陽光の差し込む海中に千歳は投げ出された。
すると、どこからともなく、鮫灰色の髪をなびかせた少女が、大型魚のように
泳ぎ寄ってくる。

競泳水着風の衣装を着た少女が、千歳の前で微笑む。

「えっと…また会えたな……」
「────♪」
漂いながら千歳はつぶやく様に言った
少女の笑みが妙に恥ずかしい
ユーニスが居たらきっと首を絞められる

ああ、そうだ、先に言わないといけないと事がある
彼女には二度も助けられた、だから言わないと
腕を泳ぐ様にしながら、少女へ近づき言う

「ありが…え!?」
「───!」
しかし、少女は魚雷の様に猛スピードで千歳に近づくと
両手で千歳の身体を突き飛ばした

「!?」
「──!」
大きな口が少女を飲み込んだ
少女の居た場所には大きな笑い顔
消滅したはずののっぺら坊の生き残りだ

いやアレは悪魔の様に計算高い
意図的に消滅を装ったのかもしれない
アレは肥大し増殖する
欠片でも残っていればアレは死なない……
「貴様らー!!クソっ!クソっ!」

コポ…ポポポポポ………

笑い声にも似た音が響く中、千歳の意識は途切れた
………
……

ゴンッ
「…ぷはぁっ!?…イタッ!」
「いたぁーい!」
目を覚まし頭を上げた千歳の頭が何かとぶつかった
何かの正体は声でわかるユーニスだ

「イタイ!イタイけどチトセが目を覚ました!…泣いてるの?」
煤塗れのユーニスの顔。 その顔を見ればユーニスがどれほど自分を心配したかわかる
そして自分が現実の世界へと戻った事も……

「…泣いてないやい……」
千歳は自分の目をこすった

ザンッ!
2人の目の前を青龍刀めいた幅広のナイフが遮る!
「うわぁ!?」
千歳は一発で目が覚める!
「ひゃぁ…あっイッ…だぁぁぁああああ?!」
ユーニスは手に突き刺さったクナイダートを鮫男にぶつけて悶絶!
「……」
鮫男内のオルカは沈黙!

「シィィ‥‥ッ」
口元を歪ませ、ウォンはワイヤーでナイフを手繰り寄せると、首を刎ねるべく
ナイフを逆手水平に構える。

「ウォン様!回避を!」
「フォォォォォォォォォ!?」
「!?」
ウォンが注意を側面へ向ける、F35Bがビルめがけて加速してくるではないか!

<<!?司令部!なんで俺は飛んでるんだ!?くそっどうなってる!?
  操縦ができない!何も動かせない!>>
コックピット内では正気に戻ったパイロットが、必死に回避を試みるが
機体は吸い寄せられるようにビルへ向かう。デジタルコンソールが乱れ
文字化けが、のっぺらぼうの顔をつくる。口元だけが笑みの形に歪む…。
<<もうだめだ…!イジェークト!>>
緊急脱出装置が作動、風防が吹き飛び、ロケット噴射の炎があがる!
パイロットは座席ごと機外へ!機体はビルへ突っ込み1億5千万ドルの花火と化した!
パラシュートに揺られながら、朝日の逆光の中そびえる高層ビルから黒煙があがるのを
彼は茫然と見るしかなかった。

「ごほっ…ゴホッ!小娘どもがぁ!」
ウォンは苛立たしげに、F35Bの残骸を蹴り上げた。
ウォーターニンジャがスプリンクラーのように霧状の水を散布して火災を
消火する
「奴らはどこだぁ!」
「ウォン様…」
「なんだぁ!」
ファイアファイターニンジャが指さす方を睨むと、そこには扉をこじ開け
られ丸見えになったエレベーターシャフトがあった。
「追え!保有者は頭だけ生かして連れてこい!残りの二人は殺せ!!さっさと行けグズ共がぁ!!」
「「ハッ!」」
2人のニンジャは即座にエレベーターシャフトへ消えた。

「小娘ごときに…おのれぇぇ!!」
手近な柱を殴りつける、腕が柱を貫通して鉄筋を粉砕した。

その時テンプレートで無味乾燥な着信音が鳴る。ウォンは警戒した。
電源を切ったはずのスマホが鳴っている…。
「ハッキングだな、その手には乗るか。画面を見なければ感染はでき…何ィ!?」
スマホから放電!ウォンのサイバネアームを伝って這い上がってくる!

「馬鹿なっ!?はっしま…ぐわぁああああ!」
一瞬、冷静な判断力を欠いたウォンは、画面を見てしまった!
不気味な文字列を張り付けたのっぺらぼうの笑みを見た瞬間、視界がホワイトアウトする。
放電がウォンの両目を直撃したのだ!

「ぐわっがぁあああああああ!」
黒い水たまりに飛沫をあげ、仰向けに倒れ込む。
「ぐわっがぁあああああああ!」
サイバネフィンガーが顔面を掴み、頭蓋が軋みをあげる!
「ぐわっがぁあああああああ!」
両手を無理やり引きはがす!見開かれたウォンの両目がオレンジの光を放つ!

「………」
光が収まり、金属の焼けた匂いと白煙が漂う、ウォンはぴくりとも動かない。
水たまりに落ちたスマホの画面で、不気味なのっぺらぼうが亀裂めいた笑みを浮かべていた。

◆4 Edit



水深200m付近…深海の水際を一頭のクジラが泳いでいる。
クジラは小さな海底渓谷のそばまで来ると。急に踵を返してその場を離れて行った。
渓谷の中にはクジラよりも巨大な魚影が…鮫ギャング団の母艦、ホーエルシャーク傾罎澄

「うーん…あっちもダメ、こっちもダメ…」
配管がむき出しの狭い廊下を、歩きタブレットしながらお団子頭の鮫幼女が歩く。
「ワッセワッセ…」
「イソガシイイソガシイ…」
通路の前後から大きな工具箱を抱えた一般船員鮫幼女がくると、お団子頭のハンマーは
タブレットに視線を落としたまま、ひょいと避けた。
「「ウワーッ!」」
ガシャーン!工具箱を抱えた鮫幼女は衝突したらしい。

「ウィウィ、やっぱり昨日からエラーがひどくなる一方だよ」
「ッチ!やっぱりあったまぐわんぐわんになる爆雷のせいか」
砂嵐やノイズが走る発令所のモニターを睨みながら、艦長のウィーゾルが舌打ちする。
「物理的損傷は無いよ、神経系も全部チェックしてきたでも…」
「アレだろ、意識ガどっか飛んじまってんだ」
装置の間から顔を出すのは、前髪が伸びすぎロングヘアのソウである。
「ギャー!浸水ダー!シズムー!!」
パイプから水が噴出し、鮫幼女に直撃する。ソウがバルブを閉めて水を止めると
エプロン姿の鮫幼女が、めんどくさそうな顔で清掃ワゴンを押して掃除しに来た。

彼女らの艦は、昨夜から調子がおかしくなり、航行不能に陥っているのだ。
「ニンゲン共とオルカの奴が何かしてったんだ!クソッ!」
ウィーゾルは苛ついて頭を揺らす、鮫灰色のツインテールも揺れる。

「アー……」
ソウが何か言いたげにハンマーと目を合わせ
「…んー…その事だけど…こういう場合は、オルカが居れば何か分かるんじゃぁ…」
ウィーゾルの恐ろしい白目が2人を睨む!攻撃の際に目を保護する瞬膜だ!
小さく悲鳴を上げる2人にウィーゾルがつかつかと歩みより、そのまま発令所を出て行ってしまった。
「…はぁ」
「…ぁーぁ」
顔を見合わせた2人は、ため息した。

「ナァ、ほんとにオルカが裏ぎったと思うカ?」
「…性格はともかく…悪い奴じゃないけど…」
「性格はともかくナァ…」
「うん…やっぱり、探しにいくべきじゃないかな」

頭を付き合わせる2人を後目に、エプロンの鮫幼女は、スマホゲーのアイコンをタップした。
海を舞台に、プレイヤー達が、気軽に撃ちまくれるのが売りのゲームだ。
彼女の全身武器だらけの自キャラが、魚と機械と人の入り乱れる戦場を、
超本格美麗3Dグラフィックで暴れまわる。

フィールドボスの巨大な艦影が見えたところで、画面にノイズが走った。
「ヘーイ!」
不機嫌な声をあげた。ここは海底で、通信環境は悪い、だが、ノイズはすぐ
におさまった。
オールウェポンを一斉射する絶好のポジションだ、彼女は舌なめずりする。
その瞬間、画面がブラックアウトした。

「ノォォ!ギョラーイ!!アアーッ!!」
思わずスマホをぶん投げる。溜息をして、すぐに拾いに行く。
ノイズが走り意味不明なザッピングを繰り返す潜水艦のモニター。機材の隙
間に落ちたスマホを拾う。

「ワッツ?」
埃を払ってスマホのボタンを弄ってみるも反応なし、壊れたか、ペシペシ
やってもだめだ。
ため息をついて、真っ暗な画面を見た。
『ケンランタルカミフブキハ…』
「ハァン?」
ブラックアウトしたスマホ画面に、世界中の文字を混ぜたような奇妙な文字
の羅列。
『オモイシルガイイハバカルコトハナイススメアツマレ…』
人には読めないソレを、彼女が読むうちに瞳のハイライトが消えて無表情に
なっていく…。
『ワタシコソガワタシコソガワタシコソガワタシコソガワタシコソガワタシコソ
ガワタシコソガワタシコソガワタシコソガワタシコソガワタシコソガワタシコソ
ガワタシコソガワタシコソガワタシコソガワタシコソガワタシコソガ…………』

「………」
狂い繰り返される文字列が、人の顔の形に盛り上がり。文字列を張り付けた
のっぺらぼうになる。そして耳まで裂けた笑みを浮かべた。
「grr bgthr lflflrggpbvv…」
エプロンをした鮫幼女の口から、およそ人では発声不可能な、うなりとも
喉につまった粘質な水を泡立たせるともつかない、不気味な声を発する。

「!?ティティ…?」
「ハンマーちかよるナ、あいつ…違ウゾ!」
振り返ったハンマーとソウが、不気味にうなるエプロンの鮫幼女から後ずさる。

………
……


個室があるのは、艦長のウィーゾルだけだ。
全長300m、規格外な巨大潜水艦でも、他の潜水艦の例にもれず、居住スペー
スは狭い。
暗い部屋でベッドに座ったが、すぐに立ち上がり、直径数十センチの楕円を
描 いてうろうろする。

鮫幼女は、じっとするのは落ち着かない。 ふと、壁に掛けられた写真に目が
止まり、立ち止まった。

完成直後のホエールシャーク靴料阿如∩完で撮った海中の集合写真だ。
最初はきちんと並んで撮影しようとしたのだが。全員が写真におさまったの
は、ホエールシャーク靴亮りを鮫幼女達が、イワシの群れみたく泳いでい
る写真1枚だけだった。

真ん中にいるのが昔のウィーゾル、ハンマー、ソウ。
少し離れて、はにかんだように笑っているのがオルカだ。
画面右下の、オレンジ色の日付は、随分と古い。

他の写真へ目をうつす、掃除中に踊り出した鮫幼女達の写真や、食堂で特大
誕生日ケーキを囲んでる写真、魚雷にへばりついて離れようとしない奴、
スーツが完成したその日にロボットサメダンス踊ってる鮫幼女達…。

オルカが真ん中にいる写真は1枚もない。一番最後に映った写真ではフードで
顔を隠していた。

ドンッ!扉がはげしく叩かれ、ウィーゾルは振り返る。
ドンッ!再びはげしくドアが叩かれる。音が嫌に重たい。
「おい!何を騒いでやが…」
「オラーッ!」
「うぉ!?」
ドンッ!ソウがぶん投げた鮫幼女が壁にぶち当たる。
「gvrrrthff…?」
足元に転がった鮫幼女は四つん這いに跳ね起きて、獣めいてとびかかった!
仲間の突然の凶行に、ウィーゾルは戸惑…わない!ノー躊躇でぶっ飛ばす!
「グブァー!」
「俺に喧嘩売るのか!上等だ!ぶっ飛ばしてやる!」
「ウィウィ!みんながおかしく…」
「GAAAAAAAA!」
「殴ってないで話聞いてー!!」
「無理ダ!コッチも余裕ネーゾ!」

狭い通路に殺到する鮫幼女達を、ハンマーは両手足を壁に突っ張り、自らを
壁にして押しとどめる。

「痛ッ!痛ひぃ!?噛まないで!…ギャッ!誰!?お尻噛んだの!?」
ハンマーが体を張る間に、ソウは階下へ通じる扉を開く。その時だ、通路の
反対側の扉が開き、鮫幼女の群れが殺到してくる!
「あ、これ私ヤバ…うわーっ!」
あっという間もなくハンマーは鮫幼女の濁流に飲み込まれる

「マズイ…ウィーゾル!先イケ!」
「ふざけんな!ハンマーが喰われちまってんだろ!」
階段へ押し込もうとするソウをひっつかんでウィーゾルが抵抗していると。
ハンマーに群がっていた鮫幼女達は、ハンマーの目の前にスマホを突きつけた。
顔を背けるハンマーの頭を抑え、目を開かせて無理やりに画面を見せる。
ものの数秒である、ハンマーの目からハイライトが消え、片方が解けた
お団子ヘア頭を揺らしてゴボゴボと唸りはじめる。

「ア゛…aA…Gァ……」
「ハンマー?おい……大丈夫なのか?」
鮫幼女達が動きを止めて、ハンマーのまわりでうぞうぞとしている。
ウィーゾルが声をかけると、ハンマーは、鮫牙を剥きだし、亀裂めいた笑
みを浮かべ。
「vfぁぁ…z、す…スマイル・メzi…krあぁ…grthth…ワタ、私ハ…グッgu…
グッグッ…わた…しは…”SMAILE・MAKER”…あa”…HA…Ga‥HAぁH…」
何者かが、ハンマーを操って発する悍ましい声!
鮫幼女達は、一斉に口を空けてグツグツと笑い出す。

「セイッ!」
「うわっ!?」
隙をついてソウは、ウィーゾルを階段に突き飛ばした!
そのまま階下の格納庫まで転がり落ちるウィーゾル!人間なら大けがだ!
だが、文句を言う暇もなかった。
「「「「「ぐrrrgはvv…gAaaAAAaaaha」」」」」
小型鮫潜水艇が並ぶ格納庫も、すでに狂った鮫幼女達に占拠されている!

「ウィーゾル!リトルジョーズに乗レ!」
階段を飛び降りてきたソウが、鮫幼女達を蹴散らしながらウィーゾルの
首根っこをひっつかんでぶん投げる!
鮫潜水艇(リトルジョーズ)の上あごが開いてウィーゾルを飲み込む。
「バカ!俺を閉じ込めてどうすんだ!…おい!」
鮫潜水艇の上部ハッチから顔をだし、ウィーゾルが叫ぶ。
「手動デ、キンキュウ発進だ。ハッチ閉メロ」
「お前…ふっざけんなバカ野郎!戦わずに逃げろってのか!この俺に!」
「聞ケ!このままじゃ全滅だ!艦長のお前ガやられたら、私ラはお終いな
んダ!……オルカを、見つけてクレ」
「おまえっ…!」
「これはオルカの仕業じゃない、私は仲間を信ジル」
制御装置を掴むソウに、容赦なく鮫幼女が群がる!

「ぐrrr…」
鮫潜水艇を揺らし、目を異様に光らせたハンマーが着地!ウィーゾルへ手
を伸ばす。
「くそっ!くそっ!!!」
ウィーゾルは、ハッチの蓋を閉めた、すぐに操縦席に飛びつくと機関を始動
させる。

「GAAAAAAAAAAAA!!!」
鮫幼女に埋もれていたソウの背中から、巨大な背びれと尾びれが生える!
「「「「「グヴァー!!!」」」」」」
尾びれに凪ぎ払われて鮫幼女達が吹っ飛ばされた!
ソウは、水かきのついた巨大な手でレバーを引き下ろす!

ブガーッ!ブガーッ!照明が赤に切り替わり、警告音が鳴り響く、
巨大な格納庫内はあっという間に海水で満たされ、ウィーゾルの乗った鮫潜
水艇は、うしろ向きに海中へと滑りだす。

海中へ泳ぎ出た鮫幼女達は、泳いで追うが、鮫潜水艇が全速前進を
始めるとすぐに距離を離され見失う。

「くそっ…ちくしょう!ふざけやがってぇええ!GAAAAAAAAAAAAA!!」
ウィーゾルは、やり場のない怒りを堪えきれず、潜水艇のコックピットで独
り吠える。
鮫潜水艇はただ1隻、深海の闇へと潜っていった…。

………
……


「Nooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!」
エレベーターシャフト内にユーニスの絶叫が響き渡る!
「シャベルナ!舌噛ムゾ!」
ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!!オルカの鮫男が
掴んだケーブルが火花を散らし、片腕で千歳とユーニスを抱えている。
奈落の底へ目掛けて3人は落ちていく!
「……」
千歳は気絶している!

Boooom……? 地下の高層階直通エレベーター前で、見張りをしていた武装警
備員は、エレベータードアから響く衝撃に振り返った。
顔を見合わせ、銃を構えると、恐る恐るドアへ近づく。

チーン。エレベーターの到着ベルが鳴る。その瞬間!
「GWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
「ワッザ!?」
ドアを突き破り、鮫男がラリアットの両腕で武装警備員を吹っ飛ばす。
BATATATATATATATA!!マシンガンが鮫男の体に火花を散らす!
鮫男はものともせずに距離を詰め、ガブリ!マシンガンを一噛みで破壊!
「オ、ォウ…ア゛ア゛ー!!?」
鮫男の鼻突きで武装警備員を吹っ飛ばす。吹っ飛ばされた武装警備員は、
駐車された車のフロントガラスを割って、ピュイピュイピュイと防犯ベルが
鳴る。

ヴィィーッ!ヴィィーッ!防犯ベルをかき消す警報のけたたましい大音声!
鮫男が振り向くと、武装警備員達が大勢駆けてくる!

「鮫っ子ー!こっち!こっちよ早く!!」
ユーニスは黒塗りの装甲バンに千歳を押し込みながら叫んでいる。
「エンジンヲ゛カケロ゛ ハヤグ!」
「わかってるわよ!ええと、キーは…」
BATATATATATATATA!!マシンガン!
「GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
鮫男は手近な車をひっつかんで盾にした!

「キーはどこ…キーは…」
サンバイザーとかダッシュボードを漁るユーニス、だが見つからない。
ならば、配線をショートさせてエンジンスタートさせる、往年のアメリカ映
画でお馴染みの自動車泥棒テクを実践しようとするも、パネルが外れない。
そもそも、この車はプッシュスタート式だ!70年代の車と違って電子制御
のデジタルカーにアナログは通用しない!

「マダカ!ノロマ゛!」
「今やってるよ!!」
ドルルルッ!…フォン…。その時、突然エンジンがかかった。
デジタルコンソールが点灯し、カーナビが起動し
『グッモーニン サンアッシュクロス!今朝の天気は晴れ…』
カーラジオも流れ出す。

「ヅッ…うぅ…」
「チトセ!?気が付いたの!?大丈夫!?」
助手席の千歳が、額を抑えながら頷く。車のシステムをハッキングして始動
させたのだ。額にういた汗を手の甲で拭う。
「無理しちゃだめ!」
ユーニスが言う、危機的状況だが一番心配なのは千歳のことなのだから。
「お前こそ、大けがしてるだろ…」
「え?ああー…」
今までアドレナリンで忘れていたが、ユーニスの左手にはクナイダートが刺
さりっぱなしだ。
「かすり傷さ!」
「いや、思いっきり刺さってるからな?」
「サッサト出セ!!」
鮫男ボイスでオルカに怒鳴られ、ユーニスはハンドルを握りアクセルを踏み
しめた!

「GROOOOOOOWLLLLLLLLLLLLL!!!」
鮫男が盾にしていた車をぶん投げる!KABOOOOOOOOOOOOOOOOM!!
車は爆発炎上!地下駐車場に吹き荒れる炎を背に、黒塗りの装甲バンは
スロープを駆けあがり、バウンドしながら道路へ飛び出す!

バァー!真っ赤な高級EVスポーツカーにクラクションを鳴らされた。
「ったくどこのチンピラ共だ…」
赤い高級EVスポーツカーの運転席で、上等なスーツを来たサングラスの男は、
悪態をつくが、バンの荷台に張り付いた鮫男と目があうと、驚きサングラス
がずり落ちた。


バンの荷台に通じるドアがあいて、倒れるように鮫男が突っ伏する。
鮫男の背中が割れて、汗だくのオルカが起き上がる。

「フゥー!車ってマジで映画みたいに爆発するんだね!映画のフィクション
だとおもってたよ!」
ハンドルを握るユーニスが興奮気味に言う。
「…私がミサイルを撃ったんだよ。残りのも起爆させる…2・1」
KBOOOOOOOOOOOOO…
サイドミラーに越しに、今さっき脱出したビルの地下駐車場から、爆炎の
吹き出すのが見えた。
「ふぅ!」
ユーニスは、ギアを上げて、交通量の増して来た道路を加速する。

………
……


突然の爆発に、サングラスの男はあんぐりと口をあけていた。
すぐ後ろの車が、爆発に巻き込まれて、横転している。

彼が最初に考えたのは『なんにせよ、自分が巻き込まれなくて良かった』
であった。
逃走していった黒塗りのバンが、犯人だろうし。昨日、街で暴れまわったと
SNSでトレンドになっていた鮫男も居た。

しかし、自分には関係のないことだ。
この街では毎日事件が起こっていて、大事なのは関わらないことである。

ドガッシャァ!!真っ赤な高級EVスポーツカーのボンネットが崩壊!防犯ベルを鳴らす。
「ノォォォ!?」
サングラスの男は悲鳴を上げる!
グワッシャァ!!EVスポーツカーは横転!白煙をあげ虚しく防犯ベルを鳴
らす。

「ラッシュアワーか…ッチ、めんどうだな」
EVスポーツカーのボンネットを破壊した、球根型サイバネスーツのニンジャ
が舌打ちする。
「偽装工作だ、ハイ・タイド=サン」
EVスポーツカーを横転させたファイアファイター型サイバネスーツのニン
ジャがピシャリと言う。
「了解だぜ、インフェルノ=サン、優等生=サン、Hooooo!」
「貴様はプロ意識に欠ける、いまの言動もウォン様へ報告させてもらう」
「勝手にしやがれ」

ハイ・タイドから噴出された水蒸気が、インフェルノから発せられた熱気に
よって、瞬く間に数ブロックに渡って街を霧に覆う!

この時期のサンアッシュクロスで、朝に霧の発生することはめずらしくな
い。完璧な偽装工作である。
周囲はまたたくまに濃霧に覆われ、2人のニンジャは霧の中へ消える。

EVスポーツカーから、上等なスーツを台無しにしたサングラスの男が這い
出てきた。
あんぐりと、口を開けて、ニンジャの消え去った方向を見ていたら、クラク
ションを鳴らしながら、タクシーに追突され、EVスポーツカーは完全にひっ
くり返った。廃車確定である。

「見えたぞ!」
インフェルノが叫ぶ。
濃霧に姿を隠し、ビルの壁面、ベランダの手すり、標識や街灯などを足場に
宙を駆けるように、追跡する彼らは、千歳、ユーニス、オルカの乗った黒塗
りの装甲バンの姿を捉えた。

「Fuuuuuu…!」
「はぁぁ…ッ!」
ハイ・タイドの体が不気味に収縮して、周囲の水蒸気を蠢かす。
インフェルノから発せられる熱気がさらに増す。
彼らが、何らかの術を行おうとしているのは明らかだ!
だが、その時突然、スーツの通信機にノイズが走る。
「待て!通信機が作動している…!?」
「故障だろ?さっさとやっちまおうぜ」
「ハッキング対策に受信機を物理カットしてるんだぞ、構造上ありえない動作だ、続行は危険だ…」
インフェルノは非常に慎重な性格で『石橋も叩けば割れる』が座右の銘だ。
「ガキ共が何してようが、一瞬でカタをつけてしまえばいいだろう」
「だが……!?まて!ウォン様だ!」
「何!?」
インフェルノが術を解くと、ハイ・タイドを手で制する。
「!?ウォン様!?通信は封鎖では…!」
「フォ!?どういうことですか!?」
ビルの壁面に垂直に停止した2人が、ヘッドギアの耳を抑えて通信を聞く。

『…撤シュウ…しろ、今゛すグに…』
「しかし、ウォン様…」
『すGUダッ!』
「…ハッ」
インフェルノが、顔をあげると、ハイタイドは肩をすくめて首をかしげる。
黒塗りの装甲バンは、濃霧を抜けて走り去っていった。

一方黒塗りの装甲バンの中では…。
「霧!霧晴れた!?ニンジャは追ってこない?」
「おっおい!ユーニス!赤っ!赤信号ー!!」
「わぁぁぁああ!?」
寸でのところでハンドルを切って横から突っ込んできた車を回避した。

「うう、だんだん左手痛くて痺れてきた…!っていうか今気づいたけど貫通
してんじゃん!?エッぐいわー!」
「おい!金髪の!私と運転代われ!」
「その身長でアクセル踏めんの!?」
「後ろ向くなバカァ!サイドミラーぶつけたぞ!じゃあ黒髪の!お前運転
しろ!」
「車の免許は持ってないので」
「非常事態だろがバカだなっ!わかってたけどバカだなお前ら!」
「ぎゃぁあああ!ナイフ引っこ抜いたら血がっ!血がぁああ!」
「ユーニスー!?おまっ!血がっすっごいぞお前ー!?止血!左手かせ!
握っててやるから!」
「目霞んできやがった…千歳…私が眠っても手を離さないで…」
「眠る前にアクセルから脚を離せぇ!?…オルカちゃん涎垂らさないでコワイよ!?」
「じゅる…すまん、血の匂いに反応した」

装甲バンの中は大混乱だ。装甲バンはクラクションを鳴らされながら、ふら
ふらと蛇行する。通勤時間帯だ、交通量が増えてきた。
「!止まれ!ユーニス!ブレーキだ!」
「!」
キィィ!と急ブレーキ音をさせて、装甲バンが停止、オルカは荷台でひっく
り返った。

「警官だ、よかった…」
千歳がほっと息を吐く、911に電話するのは、のっぺらぼうに邪魔されそうで
ためらわれたのだ。直接事情を説明できれば、今3人の置かれている状況を
分かってくれるはず…。

突然側で急停止した、戦場を走ってきたかのような装甲バンに、警官たちも
すぐに気付いて近づいてくる。ユーニスはウィンドウを開けた。
千歳の英語は達者だが、やはり地元の人間とややこしい話をするのは、ユー
ニスに任せた方が良い。
オルカは空気を読んで、言わずとも荷台に鮫男と隠れてくれた。

「よかった、お巡りさん。お願い助けて欲しいんです…」
ユーニスが、バイト中でも聞いたこともないような営業ボイスと表情を繰り
出した。
相手が典型的な中年の白人警官だと見るや、即である。

(こいつは、こういうとこ結構したたかだよな…)
千歳は思った。
しかし、警官たちは、胡乱げな顔で車内を見つめていた。
無理もない、いくらユーニスが、ブロンド美人のモデル体型のティーンエイ
ジャーだとしてもだ、煤まみれに血まみれで、乗ってる車は弾痕だらけだ。

「…免許証とIDを見せて」
「はーい」
ユーニスはすぐに胸の間に手を突っ込む。ブラにしこんだ隠しポケットがあ
るのだ!ついでに、胸元をわざと相手に見せるようにするのも忘れない。

(したたかだよな…血も滴ってるけど)
シートに転がってたクナイダートで、自分のシャツを割いてユーニスの手に
巻いてやった。

警官たちは無線で連絡を取っているようだ。何て言ってるのかはわからな
い。
通勤の車たちが横を通り過ぎていく音が、車内に響く。

「……」
「どした?手が痛むか?」
「いや…」
なんだか、愛想をひっこめたユーニスが険しい顔をしている。
「君たち、エンジンを止めて、降りてくれるかい」
警官の1人が、穏やかにそう言った。映画や洋ドラマでみるのと違って
実際の警官は、物腰が柔らかい人が多い。
千歳は、言われるままドアを開けようとして…ユーニスに腕を掴まれた。
「どうし…」
「はい、はーい、今おりますから…」
そういって、ユーニスは、エンジンボタンに手を伸ばす降りをして…
ギャギャギャギャギャギャギャッ!!!!アクセルを全力で踏んだ!

「お、おい!?」
ユーニスは、停車中もギアをパーキングには入れてなかったのだ、いつでも
走り出せるようにドライブのままブレーキを踏んでいたのだ!
装甲バンは即座に加速!ババーッ!クラクションを鳴らされながら車線に飛
び出す!

「おい!どういうつもりだよ!?」
突然の暴走に、助手席で身を起こしながら千歳は抗議する。
「あの警官!」
「なんだ!?」
「怪我した女の子を見る目じゃなかった!もう1人はいつでも銃抜けるように
してた!私達のこと、ギャングかヤクの売人をしばく時の気配してた!」
「んな!?」
ユーニスは、危険に鼻が効く。それも千歳は信用してる。
だが、さすがに、今回は勘違いじゃないかと言おうとしたら、後方からパト
カーがサイレンを鳴らして追って来た!

「追って来たぞ!?」
「逃げたら追って来るに決まってるよー!」
決まってるはずだがユーニスはアクセルから足を離さない
ベタ踏み状態で加速を続ける

罅の入ったミラーで後ろを見れば
ブルーのパトランプの明滅が迫って来るのが見える
ミラーを見ずともサイレンの音で追われているのがわかる
「わかるぞ、私にはわかるぞこの後の展開……」
「うん、私のもわかるよ!」
千歳が言いユーニスが頷いた

「「ほら!」」 悪い予感は当たってしまうもの
最初は一つだったパトランプの明滅がどんどん増えて行く
一つ、二つ、三つとどんどん増え行く

「なんで警察に追われるのさー!?」
「アイツらが手を回したのか…それにしては早すぎる……」
三人が装甲バンで逃げ出してからまだ数十分程度
アイツら…ウォンの組織が警察に手を回したとして
下まで通達が回るのが早すぎる

「貴女達…話題になってるよ?」

後ろからオルカの声が聞こえた
千歳が振り向けば、サメスーツから上半身を出したオルカが端末を見ていた
「どう言う事だ…?」
「私見れないから言葉で説明してー!出来るだけ簡単にねー!」

「はぁ……、SNSだ。あらゆるSNSアプリでお前らの事が話題になってるぞ……」
言ってオルカが端末の画面を見せた
『凶悪テロリスト逃亡中!』『WEIRITEC社ビル爆破!911の悪夢再び!』
『国際テロ組織が関与か!?』『グラマラスなテロリスト現る』『厳重警戒中!』
『#テロリスト描いてみた!』『#金髪&黒髪』
もはや書かれ放題な情報が流れている

「…そんな…あ、ああ!あのアプリか…!?」
「アプリ!?あれはチトセが支配してんじゃなかったの!?」
「いや、今はもう…私達の敵…だと思う」
「どゆことー!?」
ユーニスが混乱するの無理はない、電脳空間で起きたことを知らない。
「やはり、あいつはお前には制御しきれなかったか…」

人の目では追いきれない更新速度で流れる画面を、黒い瞳に映して、オルカ
が呟く…。
「……」
後ろを振り返り、千歳は、オルカの諦観と怒りの混じった表情を見つめ…。
急ハンドルを切ったせいで、オルカは諦観と怒りの混じった表情のまま、横
滑りして荷台の壁に鮫男ごと叩きつけられた。

「なんでぇ!?路地にまで先回りされてるよぉ!」
ユーニスが泣きそうな声を出す!その横をミサイルが飛び出してフロントガ
ラスを突き破り、前方で炸裂!パトカーは左右に道を開け、中央を装甲バン
が突っ切る!鮫男の腕からミサイルが発射されたのだ!

「私達の位置情報もリアルタイムでツイートされてる、この街すべてが私達
を追い詰める監視網の中ってわけだ」
「パトカー撃つんじゃないよ!このっバカ鮫ー!罪が増えんでしょー!?」
「はぁ?直撃させてないし、爆発でどけただけだぞバカ、金髪」
(あ、オルカちゃんめっちゃイラッとした顔してる…)

装甲バンは大通りに飛び出す!通勤時間帯だ!
「ごめんなさい!ごめんねぇ!っつーかどいてよー!」
ユーニスは叫びながらハンドルを握り、装甲バンは、そこら中の車に横アタ
リしながら交通量の多いビル街の大通りを暴走する!

「ひぃぃ!車が全部こっちにむかってくるー!」
「ばかぁ!反対車線だぞ!?」
おまけにサイレンと回転灯の群れが迫る、オルカは無言で鮫男に搭乗した、
ヤル気だ。

「ユーニス!まっ…ユーニスゥゥ!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
交差点に突っ込む装甲バンの左右から20ftコンテナ車とタンクローリーが
挟み撃ちで突っ込んでくる!
そのデカさといったら、家一軒が猛スピードで突っ込んでくるごとくであ
る!まさにアメリカンサイズスーパーカー!

装甲バンは加速!後部バンパーをタンクローリーに吹き飛ばされながら
ぎりぎりのところで回避!
タンクローリーとコンテナ車は車体に火花を散らしながら、ぎりぎりの所で
衝突を回避、一泊遅れてパトカーの群れがタンクローリーとコンテナ車の壁
に次々と突っ込んだ!

派手な衝突事故の様子は沿道に群れた人々のスマホの写真で動画でコメント
で、瞬く間に拡散され炎上騒ぎとなる!

「あっはっっは!やった!巻いてやったわー!あはははは!」
「笑い事じゃない!って…ユーニス!避けろ!」
進行方向上にスクールバス!通学のための子供たちが乗り込んでいる!

「っくっ!!」
ユーニスはハンドルを切った!強く握るハンドルにべったりと血がつく!

スクールバスと衝突を回避した装甲バンは、ガードレールを突き破り、宙に
飛び出す。一瞬の浮遊感、3人の体はふわりと無重力にただよい…。
CRAAAAAAAAAAAAAAASH? 装甲バンは横転し下の道路に投げ出された!

市街を流れる川のフェンスを突き破って装甲バンは完全に停止した。
すかさずにサイレンを鳴らしながらパトカーが道の前後を封鎖するうように
殺到する。

「…このクルマさ、変形して泳げたりしないかなー?」
「あ、あー…どっかにボタンとか無いか…?」
ユーニスのボケに千歳が乗った

普段ならありえない状況、しかしそうなるのも仕方がない。
もはや逃げ場無し。目の前は川、背後には大勢の警察官
さらにヘリのローター音まで聞こえて来た
頭を出した途端スナイプ射撃されるかもしれない
それに装甲バンは横転した状態、これ以上走る事は出来ない。

何も出来ないまま時間が流れて行く
しかし……
「チトセー…何も言ってこないね?ほら『手を上げ出て来い!』とかさ?」
「これは、オルカちゃんの鮫男を警戒してるのか…?」
「…あーじゃあSWATとか待ってるのかなー?」
「最悪だ……」
横転バンの中、二人は横に傾いた状態のまま会話を続ける

「当たりかもしれないわよ?」 「え?」「え?」
しばらく無言だったオルカが口を開き
二人に端末の画面を見せた、ライブ映像だ
横転した装甲バンと距離を開け取り囲む警察
その中に物々しい武装をした一団の姿があった……

「オゥ…シット!完全にお尋ね者じゃん私達!」
「どうしよう…日本でもニュースになっちゃうかな…ああ…」
千歳の脳裏に浮かぶのは、『日本人女性テロ容疑で逮捕』のテロップと
連行される自分のニュース映像だ。
あまりに鮮明すぎて、またのっぺらぼうに頭をハックされたのかと思ったが
自前の妄想だった。しかし、現実になるのも秒読み段階だ。

「おまえー!お前が走って逃げたり、パトカー撃ったりするから!」
「痛い!痛いって!だって捕まっちゃうし!撃ったのは鮫っ子だよー!」
パニックになりかけた千歳がユーニスを揺さぶる。
「ひどすぎる…私たちはオーディション受けに行っただけなのに…ステ
ージじゃなくて、刑務所に行くはめになるなんて…」
泣けてきた。逮捕されたら強制送還で、国外追放だ。ダンサーになる夢も潰
えて無実の罪で犯罪者だ。
「チトセ……そこの鮫に脅されてたことにしようぜ」
「え゛ぇ…」
ユーニスは真顔で言ってのけた。
「バカイッテ ナイデ 、ニ゛ダイの方へコイ包囲ヲ゛突破スル」
鮫男を起動させながらオルカが言うと

『バンの搭乗者、両手を見えるようにして、車から出てこい』
バンの外から拡声器の声がする。SWATの配置が完了したらしい…。
チトセとユーニスは不安げに目を合せる、鮫男は体のパーツを動かし、ダ
メージを確認すると、低く唸って目を光らせた。

抵抗か、投降か。今すぐ決断しなければならない…。
「……」
「……」
暗い荷台の中で、二人は一呼吸だけのあいだ見つめ合い、答えを選んだ…
それは…

『鮫だああああああああああああああああああああ!!』
悲鳴に近い叫び声!続けてパトカーがひっくり返る音!
「チガウッ」
とっさに、鮫男の方を見た二人に、オルカが否定する。
ドガンッ!ガギギギッ!!!衝撃と金属破断音!横転したバンがひっくり返
されてタイヤを下に着地、運転席がもぎ取られ、荷台の中から外が見える。

「撃て!撃て!」
「仲間の鮫だ!絶対そうだ!」
「どうみても機械だぞ!?」
「サイボーグジョーズだ!」
銃声と怒号が鳴り響き、目の前を、巨大な鋼鉄の鮫が、腹ばいになって特殊
部隊の包囲に突っ込む!
スクラップマシンめいた大顎がパトカーを鉄くずに変える!銃弾を弾く!

再び千歳とユーニスは、オルカの方をガン見!言葉が出ない!
「リトルジョーズ ダ!」
オルカが叫ぶ
「ホエールシャーク靴両型潜水艇ダ!」
ホエールシャーク靴蓮∋幼女達のアジトの潜水艦だ。

「じゃ、じゃあ助けにきてくれたの!?」
「ユーニス危ない!」
ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!!
リトルジョーズははげしく火花を散らしながら、陸上で超信地旋回!
パトカーを警官たちを、SWATを尾びれで蹴散らし、バンの荷台を川へ叩き
落とすと、自らも川へ飛び込んだ!

「がぼごぼごぼ…!」
「…ぼはっ!?んんー!!」
3人は、荷台から水中へ投げ出される、濁った水中で千歳が驚いて指さす方か
ら、リトルジョーズがスクラップマシンめいた大顎を開いて突進してくる!

「んんんー!!」
(助けじゃなくて殺しに来たんだ!鮫にもニンジャにも警察に追われて、もうほんといい加減にしてぇ!!)
心の中で叫ぶと、ユーニスは必死に泳ぎ出すが、水中で人が鮫に敵うはずがない!
オルカの鮫男が、千歳とユーニスを抱えて猛然と加速するも、相手は
水中移動用のマシンなのだ。
あっという間に巨大な掘削機の刃のような鮫牙が、真後ろに迫り…。

ザバァァアアッ!
鮫が消えた川面を警戒していた、警官たちの目の前で、リトルジョーズが
垂直に浮上する!
銃弾を受けながら身を翻し、水柱をたてて潜ると、川面から突き出した背
びれもやがて消えていった……。

………
……


「……頭イタイ…」
「私も…っていうか、ここどこー!?」
輸送機の格納庫めいた薄暗い空間に、ユーニスの声が反響する。

「鮫潜水艇の中ダ…ソン…ウォンや警官カラハ 逃ゲラレタけど、
今度はウィーゾル達ニ捕まっタな…」
鮫男に乗ったオルカがそう言った瞬間だ!勢いよく前方の扉が開かれ
ユーニスと千歳を突き飛ばし、誰かが突っ込んできた!

「……お尻イタイ…」
「わぁ!?」
突き飛ばされた二人が尻もちをつく、余りの素早さに姿も見えなかった。
ゴッガァァァアアアッ!!空気が震えるほどの衝撃音!
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
そして、耳を劈く凄まじい怒りの咆哮!

「…かはっ!」
オルカの鮫男がショートして膝をつき、背中からオルカを排出した!

「…ぅぐ…ウィーゾル…!」
首を掴み上げられたオルカがうめく。
鮫灰色のツインテールを振り乱し、拳を振り上げたウィーゾルが睨みつける。
血走った目、様子が尋常ではない。

鮫男を素手で破壊した拳は、皮が破れ血塗れだ。
鮫牙を剥き出し、唸り、凄まじい怒りで震えてすらいる。
あまりの迫力に、千歳とユーニスも気圧されて言葉を失った。

「…オルカァ…てめぇのせいで…ガァアアアアア!!!」
ウィーゾルが拳を振り上げ、ゴッシャァ!生々しい打撃音!血飛沫が散る!
「ガッ…はっ!ごの…離せぇ!」
オルカも殴り返した!ドズッ!重い音がしてウィーゾルが前かがみに後ずさる。
見た目幼女な女の子が、喧嘩してる音じゃない!

「チトセー…可愛い子達が可愛くない音を出してるよー」
「…ああ…これどうするんだよ……」
はっきり言って二人の力ではどうにもなりません。

ユーニスも千歳も身体能力は平均値より高い
しかしそれは、俊敏さや持久力等ステージに立つための身体能力で
戦うための身体能力では無い。
街でいざこざがあった時でも基本逃げるか隠れる
それにこの国は銃社会、多少腕力があったとしても一発の弾丸で命が終わる
だから、逃げる事は臆病では無く賢い戦術なのだ。
なのだが……

「このままじゃダメだよな…どうにか止めないと」
「なんか棒で叩く?」
「…おまえ時々ぶっそうな事言うよな、それにおまえ今は無理だろう…?」
「え?…あ!ああ…痛いの思い出したー」
血塗れの左手を思い出し悶え始めるユーニス
「なんかごめん……」

「GRAAAAAAAAAAAAAA!」
「GAAAAAAAAAAAAAAA!」
オルカがウィーゾルに掴みかかり、壁にはげしく叩きつけると床が傾く。
ウィーゾルは蹴り返し、オルカは反対の壁に叩きつけられた。
潜水艇を揺さぶるケンカに手の出しようがない!

「てめぇの…せいでなぁ!!」
「何があったって言うの!…がはっ!」
オルカの顔面にウィーゾルの拳がめりこむ!思わずダウンしたが、すかさず
立ち上がりざま頭突きを喰らわせる。
「ごぁ…!」
ウィーゾルの鮫牙が飛んだ!
「はぁ…はぁー…だから!一体何があったっていってるでしょ…!」
ダンッ!仰向けに倒れかけたウィーゾルが足を踏み鳴らしとどまる!
「はぁ…ぺっ!何がだぁ…?何がだと!?艦がなぁ!仲間もみんな!
乗っ取られたんだよ!てめぇのせいでな!」
「……うそ…」
「GAAAAAAAAAAAAAA!!」
ゴッシャァアア!驚いて動きを止めたオルカに、拳がクリーンヒット!
膝から崩れ落ちる!

「う゛ぁ…ッッ!」
「GAAAAAAAAAAAAAA!!」
怒りの収まらず、ウィーゾルは止まらない!凄まじい拳の連打!
膝をついたオルカは立ち上がる事も出来ず、一方的に殴られ続ける!

「って、チトセ!これは流石に不味いよ!」
「な、なんとかしないとなんとか…ヒィッ!?」
近寄ろうとした途端、ウィーゾルの背中から鮫尾びれが生えて千歳の鼻先を
掠める。本能的にバックステップ!空ぶった尾びれは、潜水艇の床を
ひしゃげさせた!当たったら首が飛んでいた!

「お前が裏切ったからだ!裏切って!俺達から去って!おまえが…!!」
「ぐぅっ!痛ッ…!や、…ちがっ…違う…!私は…ッ!」
「違わねぇ…!お前の…せいで!!」
動揺と激しい殴打で、オルカは頭を抱えてうずくまるしかできない。
ウィーゾルは怒りにまかせて殴り続け、拳がさらに血染めになっていく。

「いやっ…やだ、止め…ッ」
「GROOOOOOOOWL!!」
「やめてぇ!お姉ちゃん!!」
「!?」
「!?」
「!?」
オルカの突然の叫びに、3人が一瞬固まった!
「げほっ…ウィおねえちゃ…」
「……」
血反吐を吐きながら、貼れ上がった目元に涙を浮かべて、絞り出すように
オルカが言う。血塗れの拳をふりあげたままウィーゾルは堪えるように
歯ぎしりをして…。

「1・2・3で…」
「ひっくり返せぇ!!」
「ガァッ!?」
一瞬の隙をついて、ユーニスが足払い、千歳はタックル。
床に、ウィーゾルを押し倒す!鮫幼女は仰向けにされると気絶する!
「はぁはぁ…ほんとに人間じゃないんだな…」
「ふぅふぅ…なにあの尻尾!鮫男よりヤバイじゃん!」
床にウィーゾルを引き倒し、千歳とユーニスは額の汗を拭う。
ふいに、ユーニスはオルカの方を振り向き…。
「なニ゛…」
ぐすっと啜り上げながらオルカが言う。
「おねーちゃんとか言ってなかった?」
「……」
「おねーちゃんって…」
「言ってない」
「お…」
「言ってない」
鼻血を手で擦りながら、オルカはそっぽ向いた。

………
……

「硬い!歯が痛い!」
「おまえなんでも食うなよ…でもこれ干し肉だよな…?」
言って千歳が箱からカロリーメイトの様な塊を摘まみ引っ張り出した
ユーニスが齧ったのは非常食として出された謎の物体。
一見固形肉の様だが、床を叩くとコンコンとするほどに硬い

「アザラシの肉をミンチにしてブロックにしたものよ」
潜水艇の倉庫を漁りながらオルカが答える。
「人間の歯は弱いな、なるほどだから年寄りの歯は少ないのか……」
「幼女つよい…あ、コレ舌で舐めると味が染み出すよー?」
「…アザラシの味だぞ…?」

美味しいのか?美味しいよ?と
二人がやりとりしていると
「…う…う…?」
うめき声が聞こえた、ウィーゾルだ
どうやら三人の話声で目を覚ましたらしい

「おい!テメーラなにして…」
ウィーゾルは立ち上がろうとして阻まれた
見れば両手と両足、それぞれロープで椅子に拘束されている
「なんだよ!この状況は!」
小さな艇内に大きな怒声が響いた

「んひゃっもうおひた!らいひょぶ?あぶひひゃい?」
「アザラシしゃぶりながら言うな。えと、ウィーゾル、話を聞いて
欲しんだ。私達は敵じゃ……」
「GRRRRR…ガアアアアアッ!」
千歳が話そうとするも、オルカの姿を見ればウィーゾルは吠え猛る!
手足を縛る太いロープが今にも千切れそうだ。
「ガッ…!?」

オルカが椅子を蹴っ飛ばして、仰向けに転がした。
再び気絶するウィーゾル、二人はちょっと呆気にとられる。
「……何?」
「いや、良いんだけど…」
「あっはっはっは!」
なぜかウケるユーニス。

「ぐっ…」
「わっほんとすぐ目が覚めるねこの子!」
ウィーゾルの側からユーニスが慌てて飛びのく。
「ガァッ!ぐっ!ぬぅ…!?」
ロープが鎖になっている。千歳はなるべく冷静に…
「オーケー、怒るのも無理はないと思うんだけど…」
「ぐぅぬぉおおおおお!!」
全身に力を込めるウィーゾル!ギシギシと悲鳴を上げる鎖!
「えいっ」
「ガッ!?」
キックで蹴り倒すオルカ!ウィーゾルは再び気絶する。
「もうちょっと説得する努力を…」
「私の代わりに殴られてみる?」
「あっはっはっは!」

「……」
ウィーゾルが、三度、目を覚ます。
「おい…」
ウィーゾルが口を開くと、オルカは無言で、椅子を蹴り倒した。
「話聞いてあげよう!?」
「あっはっは!」

………
……

鎖で椅子に拘束されたまま、ウィーゾルは3人を睨む。
オルカが、鮫男の修理をする音だけがしている。

「……鮫幼女達がそんなことになってたなんて…」
「どこも敵だらけじゃん!どうしよう…」
千歳とユーニスは頭を抱える。
ようやくウィーゾルから話は聞きだせたが事態はますます悪い方向に進んでいた。

「ハッ!よく言うぜ、てめぇらの仕業だろうが!’’スマイルメイカー’’なんて
ふざけた名前を名乗りやがったあれは、オルカ!てめぇが作ったんだろ!
お前らもグルだ!」
ウィーゾルが吠える、言い返したのはユーニスだ。

「ヘーイ!待ってよ、私とチトセは100%被害者だかんね!?洗脳アプリもニンジャも
鮫ニンゲンも、昨日まではフィクションの中の存在だったんだよ!?それが何?
チトセは頭にコンピューターウィルスをインストールされて、暗黒メガコーポの
ニンジャに命を狙われてさぁ!?鮫のUMAには何度も喰われそうになるし!
オーディションにも落ちて、私は掌の向う側が見えそうな穴開けられてんだよ!?」
「知るか!ごちゃごちゃうるせぇ!喰っちまうぞ!」
「上等だよ!フカヒレスープにしてやんよ!」
「落ち着け!お前まで喧嘩してどうすんだよ!」
千歳はユーニスを羽交い絞めにして、がるるる…と威嚇しあう二人を引き離す。

「ウィルスか…なるほど、近いかもね」
「ああ!?なに他人事みたいに言ってやがる!」
「まぁまぁ…落ち着いて…今は何でもいい、分かることがあるなら知りたい」
ウィーゾルを千歳がなだめると、オルカは手を止めずに言葉を続ける。

「アプリ…’’スマイルメイカー’’はウィルス…いや、寄生虫なんだ。そう考えると、行動
に説明がつく。
アイツは初め、黒髪の脳に寄生した。けれど、黒髪は宿主には適さなかった。
人の欲望が餌なんだ。欲望を刺激し、自分の力を使わせることで肥大化していく…。」

「話を聞けば、黒髪は、何度もスマイルメイカーの誘いを拒否したんでしょ?」
「あれは…うん、絶対に危険なモノだから…」
オルカの言葉に千歳がうなずく。命を守るためだったとはいえ、奴の誘いに乗った時に
スマイルメイカーは、力を見せつけるように軍隊まで動かしてみせた。
それに、対峙した時の悪魔めいたおぞましさ…強い拒絶感も、体が憶えている。

「だから、餌をくれない黒髪を見限って出て行こうとした。
そして、目をつけたのが…ホエールシャーク靴裡腺匹世辰燭鵑澄
「チトセが電脳空間?で出会ったって言う鮫の女の子?…可愛い子だった?」
「…今そこ気にするとこか?」
横からどうなの?と覗き込んでくるユーニスを、押し返して、続きを促す。
「grrr…」
話がよくわからないのか、ウィーゾルは唸りっぱなしだ。

「…ホエールシャーク靴機能不全になったのは、AIがスマイルメイカーに取り込ま
れたせいだ」
「やっぱりてめぇらのせいじゃねぇか!…おい!仰向けはやめろ!」
「オルカちゃんやめてあげて」
千歳が言うと、ふんっと鼻を鳴らしてオルカは、椅子の背から手を放す。
「艦のAIはまだ無事だよ」
オルカが言った。

「彼女には、外部からの攻撃に対するセーフルームがある。きっとそこに逃げ込んだんだ。
根拠は2つ、スマイルメイカーが潜水艦を動かせていないこと。
そして、乗組員に狙いを変えたこと…。
私達を操って、セーフルームを物理的に突破しようとしてるんだ」
「突破されたら…」
「今は黒髪のもつ保有者権限で、行動が制限されているけど。それが無くなる。
檻を飛び出して、世界に解き放たれる…。世界中の人間の欲望を煽って、自
分を使わせようとするだろうね…」
「世界中の…」
そうなったら、冗談じゃなく人類社会の破滅を意味する。千歳は息を飲だ。

「はい!」
「はい、金髪の」
「作ったのオルカでしょ!責任取って!」
「人間のことなんかどうでもいい!仲間の洗脳を解きやがれ!」
そういう、ユーニスとウィーゾルにオルカはため息して
「…黒髪の、停止スイッチは押せる?」
「え、何それ?」
「万が一に備えて、プログラムに緊急停止コードを入れて置いたんだけど…
電脳空間?にアクセスする時、必ず手元にあったはずだよ。
見たら絶対わかるカートゥーンの自爆スイッチみたいなやつ」
「…え?」
千歳が首をかしげる、そんなもの影も形もなかった。オルカがため息。
「…やっぱり、正規の使用者じゃないからバグったんだ…」
「チトセェ…」
「ハァ…」
「なんかごめん!」

居たたまれない気持ちになったが、千歳は頭を振って気を取り直す。
「でも…停止スイッチであいつは止まるんだよな?」
「うん、プログラムの根幹に食い込んだコードだし、機能自体は保持されてるはず」
「よし…!」
千歳はうなずくと、ウィーゾルの前へ行く、そして目を合せる
「ア?」
鮫牙を見せつけるウィーゾルを恐れず言った
「私達に、協力してほしい」

「ハァ?」
「えっ!?」
「うん??」
呆気にとられるウィーゾル、ユーニス、オルカ。

「話を聞いて分かったんだ。私は、あの子…AIに接触するとパワーアップ
できる。だから、停止スイッチを押すには、あの子に助けてもらう必要がある。
それには、もう一度鮫潜水艦に行って、あの子を助け出さないと…」
「ちょっ、ちょい待ってチトセ!それって、洗脳された鮫幼女がうじゃうじゃ居る
潜水艦に行くってことだよね?」
「そうだな」
「それで、チトセがスマイルメイカーって奴に支配された電脳空間にアクセスして
スイッチを入れてくるってことだよね??」
「あの子を助けだして、協力してもらうんだ」
「チトセが死んじゃうでしょー!?」
ユーニスが叫んだ。

「ゴリラより強い鮫っ子だよ!?それに’’スマメイ’’に廃人にされかけたって言ってた
じゃん!チトセは超かわいいけどキャプテンアメリカでもアイアンマンでもないんだ
よ!?ただの超キュートな女の子なんだよ!?」
「いや、まぁかわいいのはおいといて…聞いてくれ。
…私はスマホを取り違えて、巻き込まれただけかもしれない。
…でも、スマイルメイカーの誘いに乗って力を使ったんだ…」
「しょうがないじゃん!死にそうだったんだし!」
「それに…あの子を助けなきゃって思うんだ。」
「チトセ…」

「あの子にとって、私はやっかいな奴を連れてきたうえに、自分を利用しようと
してただけの存在だったはずだ。だけど、何度も助けてくれた。そのうえ身代わりに
なって私を庇ってくれたんだ」
それでも…と言うように、泣きそうな顔で首を横に振るユーニスの肩を抱いて言う。

「確かに私はヒーローじゃない、ただの小娘だ。
ユーニスが居なかったらサンアッシュクロスで生きていけなかったし、あの子に助けら
れなかったら今ここに居なかった。
だから、お前をおたずね者になんてさせないし、あの子をスマイルメイカーや
ウォンみたいな奴らの好きにさせたくない!」
迷いなく、そう言い放つ。そして、ウィーゾルに向き直り。

「うまくいけば、ウィーゾルの仲間達も助けることができる。
だから…協力して欲しいんだ。うまく行ったら、おせっかいかもだけど…オルカちゃん
のことも許してあげて欲しい。彼女はウォンのバカヤロウに利用されてただけなんだ」
「……」
ウィーゾルは、沈黙したままじっとチトセを睨む。鮫のような目だ。

「…鎖を解け」
ややあって、唸るように言った。
「ちょっチトセ!?」
「止めた方が良い、潜水艇の操作なら私でもできる…」
そう言う二人に、千歳は大丈夫だと制して鎖に手をかけた。

ジャラジャラと音を立て、鎖が床に落ちる。
「grrrrrrr……」
低く、長く唸りながらウィーゾルが立ち上がった。
そして、オルカを睨むと、操縦席へ行く。
「隠れ家は俺しか知らねぇ、シャークティースも洗脳された、見つかりゃ
魚雷をぶち込まれる。…そいつにゃ無理だね」

操縦桿を握ったウィーゾルが、潜水艇を始動させながら振り返る。
「何ぼさっとしてやがる!さっさと支度しろ!艦長命令だ!」
千歳たち3人は、顔を見合わせて頷いた。

◆5 Edit



ユーニスは深く溜息をした。
剥き出しのフレームに配管が這う天井が、切れかかった蛍光灯に照らされる。
鮫潜水艇(リトルジョーズっていうらしい)は敵の手に落ちた母艦へ、深く静かに潜航
しているらしい。

操縦席のウィーゾルは、背中越しに殺気を漂わせて。千歳とオルカは、鮫男から引っ張り出
したコードやらを頭につけて、ハッキングの準備をしている。
ユーニスは完全に手持無沙汰で、クナイダートで穴の開いた手が痛い。

「(傷残るよねぇこれ…後遺症とかあったらやだなー利き手じゃないだけましか…)」
「痛ッ…!」
怪我のことを意識したら、急に痛みだして悶えた。
刃物で手の平を貫通されたのだ、圧迫止血してないと血も吹き出す。
即病院レベルの大けがだが、今は我慢するしかない。

「ねー千歳ー電脳ダイブどんな感じー?また具合悪くなったりしなさそう?」
「ん?んー…今度はオルカちゃんとブレインシンクロ?ってのをするから、私の負担は
ずっと少なくなるらし…」
「ちょっと、時間無いんだからこっちに集中して。金髪の、邪魔しないで」
「お、おう…ごめん」
千歳はほっぺたを抑えられて、ぐいっとオルカの方へ向けられてしまう。
おでこをくっつけ合って見つめ合う格好で密着している。電脳戦は現実からは何をしている
のか分からない。
「むぅ…」
ずるい、私もやる!と言いたいところだが我慢するしかない。

操縦席の方をそっと覗き込む…。
見たことないけど、人間の潜水艇は、こんな見た目はしてないのは分かる。
奇妙な操縦席の、ゲーミングチェアに座ったウィーゾルがいる。

「…邪魔したら喰うぞ」
ウィーゾルは振り返りもせず、目を閉じたまま言った。
「なんで分かったの!?鼻?やっぱ鼻とか効くの?鮫だし…」
「うるせぇ!こっちは忙しいんだよ!」
「え、そうなの?全然揺れないからまだ出発してないのかと思ってた」
「おまえな…」

「(ユーニスの奴、騒がしいな…。平気って言ってたけど怪我が辛いのかな…)」
「金髪はほっといて、こっちに集中して」
思考を読んだようなオルカの言葉に、千歳は驚いた。

「やっと脳活動がリンクし始めた…。鮫幼女同士なら簡単にできるけど、あんたは
頭の中のスマイルメイカーのコアプログラムを通してやるし、人間だから。
脳神経を怪我したくなかったら、私だけを感じて…」
「(ユーニスがちょう反応しそうなセリフきた…。いかん、集中だ…)」
一瞬、眠りに落ちる瞬間のような、意識が自分の中から抜けていく感覚がして。
はっと意識を確かにした途端、海中に投げ出されていた。

「おあっ!?」
巨大魚の群れが視界一杯に泳いでいる!
一匹が目の前を塞ぐように前へでて、思わず腕で庇おうとする。
腕の感覚が無い。
驚いて身をよじると、他の魚とぶつかりながら、群れの外へ出た。
ラッシュアワーめいた巨大魚の群れが、頭上を高速で泳ぐ。

……一方鮫潜水艇内。
突然大きく揺れ、床の上を物とかユーニスが転がった。
「むがーっ!?おいっオルカ!てめぇ!そいつの思考が’’こっち’’に混線してんぞ!」
「うっさい!分かってる!’’スマメイ’’の出力が高すぎるの!」
「痛ッッだぁああ!怪我してる方の手をついちゃっ…イッダァァア!!!」
「そいつも黙らせろ!」
「こっちで手一杯!」
「いぃぃぃぃ!!死ぬぅぅ!!!ぎゃー!?また出血したー!」
「うるせぇ!ぶっ殺すぞ!」
「死ぬぅ!!」

……現実では眠ったまま、千歳の意識は、まだ潜水艇と同期している…。
海中だ。奇妙に明るく、地上と同じくらい遠くまで見渡せる。
深い蒼海の色に染まる、広大な地平線の上を、浮かぶように飛んでいるのだ。
幻想的な海底の空を、巨大なジンベイザメ型のシルエットが横切っていく。

壮大な景色に一瞬見惚れると、体が誰かに操られるように勝手に動いた。
速度をあげ急降下させられる、地上のよりも、深く高い渓谷へ飛び込んだ!
頭上で巨大魚の群れがぱっと散る。目を凝らす…というか”鼻先にピリピリする”妙な
感覚に集中すると、小さな人影が、自分の体の何倍もある魚の群れを、追い散らしているの
が分かった。

「(あれ…鮫幼女だ!それじゃあ、あの大きいのが母艦か…)」
「おい!操縦に割り込むんじゃねぇ!死にてぇのか!」
「!?」
急に、ウィーゾルの怒声が響いて、千歳の意識は潜水艇に戻って来た。
頭のてっぺんがなんだかちりちりする…。

「…潜水艦が見えた。もう近くまで来てたのか」
「そうよ、時間がない。
今度は私の目を見て、ぎりぎりまで意識を’’あっち’’に飛ばさないで!」
「わ、わかった…」
オルカにがっちり顔を掴まれて、まつ毛を、数えられそうな距離で見つめ合う。

「…よし、死角に入ったぞ、ここなら見つからない」
潜水艇を操縦する手を止めて、ウィーゾルが言った。
「むぅ…また千歳と鮫っ子が見つめ合って…」
ユーニスは腋と手のひらを必死に圧迫しながら、千歳とオルカをぐぬぬ…と睨む。
「俺らは頭の特殊な器官で、網膜を通して…なんだ…つながるんだよ、頭が。
’’すまいるめいかー’’とかいう奴も原理は同じやつだ…たぶん」
「…ガチ恋距離…うらやましい」
「…何言ってんだお前」

………
……


「あれっ…また海の中に…」
眠りに落ちる瞬間が知覚できないように、ぎりぎりまで意識を保っていても
気づかぬ間に、千歳は再び、深い蒼に染まる海の空にいた。

「大丈夫、今度は上手く行った」
「オルカちゃん!」
千歳のすぐ側に、オルカが泳ぐように降りてくる。
競泳水着風の服に、黒いパーカー、潜水艇内の姿と同じだ。
「なんで私はゴスロリ服なんだ…これ昨日着てたやつだな」
千歳は、黒いゴスロリ服だった。

「上に母艦が見えるでしょ?侵入して制御AIを取り返しにいくよ」
「スルーされた…。あ、うん、わかったそれでどう…」
ビュンッ!水中をビームが飛ぶ、爆発!千歳は吹き飛ばされる!
「うわぁ!」
「いきなり!?気を付けてよね!」
オルカに岩陰に引っ張りこまれる。
「ポコココ…ポッココ…コ」
不気味な小鳥の囀りめいた声がする。
襲撃者達が殺到して来た。兵士、クリーチャー、ロボもいる!
まるでゲームキャラクターの寄せ集めである。
何より異様なのは、皆一様にスマイルメイカーの歪な文字列お面をつけている!

ジャガッ!襲撃者たちが銃、斧、牙!武器を構える!
間違いない、敵だ!こっちの武器は!……無い!
「武器をイメージしたら出てくるのがお約束じゃないのか!?」
「シャァーッ!」
あたふたする千歳を尻目に、オルカがその場でターンをする。
背から巨大な尾びれが伸び、襲撃者共を一蹴した!

「やっぱり鮫幼女って尻尾出せるんだ!ってあれ…」
「尾びれだよ、どうしたの」
ノイズになって消えていく襲撃者達の姿が、一瞬、倒れた人間に見えて…。

「…この敵キャラみたいなのってまさか…」
千歳は頭上を見上げた。
雑多なキャラクター達が銃やミサイルを撃ち放ち、マグロが口からレーザーを吐く。
まるで大混戦のゲームフィールドだ!
彼らは何者なのか?

―同時刻。世界のどこか…。

アジア系の青年がゲーミングPCでオンラインゲームに興じている。
薄暗い部屋、メガネには画面の明かりが反射する、その中にスマイルメイカーの文字列
のっぺらぼうお面が揺れる!
別の国の、ラップトップでゲームをする黒人の少女がいる。彼女のラップトップの画面にも
スマイルメイカーが入り込んでいる!
さらに南米のどこか、派手なシャツを来た男のスマホ画面にスマイルメイカー!
仕事をサボってSNSを眺めているホワイトカラーのPC画面にも!

地域、国籍、性別、年齢問わず、彼らは、クラウドシステムの人間サーバーとして利用され
ているのだ!本人たちに自覚症状はない!
脳容量をかすめとられた彼らは、本人も知らぬ間に電脳攻防戦に駆り出されている!

特にリソースを喰われているのは、数時間前、配信されたばかりのゲームのプレイヤーだ。
開発者不明、配信元不明、プラットフォーム、ネットに接続できる機器なら何でも。
事前情報も何もなかった、謎のゲームは、DL、同時接続数を爆上げしながら、その他の
あらゆる有名ゲームの記録を秒で更新し続けている!

まるで疫病だ。そう、これはスマイルメイカーの仕掛けた洗脳なのだ!
巨大なジンベイザメ型のボスは、鮫潜水艦のAI、千歳を助けた鮫の少女が立てこもる砦だ。

プレイヤーは自分の意思でゲームをプレイしながら、スマイルメイカーのハッキングを
手伝わされているのだ!
人間を無自覚のうちに闘争と破壊の衝動へ駆り立てる、これがスマイルメイカーの本性!

―同時刻。電脳深海、バトルフィールド。

頭上の巨大なジンベイザメ型の潜水艦が、ホーミングレーザーを発射!
命中したキャラ達はノイズになって消滅!

「スマイルメイカーの攻性プログラムを、母艦のシステムが迎撃してるんだ。
やっぱり、’’彼女’’はまだ無事だ!」
「ポコココ…!」
不気味な囀り!スマメイ面の大男が、バトルアックスを振り上げオルカに襲いかかる!
「シャァーッ!」
「待ってー!」
千歳はオルカを引っ張って止める。パガンッ!バトルアックスが岩を抉った!
「あっぶな!…何すんの!」
「こいつらはスマイルメイカーに操られてる人間だろ!?
この空間で意識体を殺したら…」
「シャァーッ!」
オルカは千歳を無視して大男の頭を鮫牙で噛みちぎった!
大男はノイズになって霧散!

「ああー!」
「脳にプログラムを、植え付けられた黒髪とは違うよ。利用されてることにすら気付い
てない、現実でのフィードバックも、ちょっとビリッとする程度だよ」
「ほんと…?」
「……ホント」
一方現実世界、アジア系のメガネゲーマーが突然スタンガンをあてられたように痙攣失神!
命に別条は無い!

「他人より自分の心配をして。
あんたはここで死んだら、現実でも脳が焼き切れて死ぬかもよ。同期してる私もね」
「死…ええっ!?そういうのやる前に教えて欲しかった……。
ってぇ!オルカちゃん!魚雷!あれ魚雷だよねー!?」
鮫潜水艦が魚雷を発射!魚雷は一定距離まで進むと、回転して小型のクラスター魚雷を
まき散らす!
ドドドドドドドド!!
雲霞のごとく群れるスマメイの操作キャラ達を、爆発の連鎖で一網打尽にする。
ドゴゴゴゴゴゴッ!!
さらにクラスター魚雷が海底にも降り注ぎ、絨毯爆撃!

「うわぁ!!」
「きゃあ!!」
千歳とオルカにも容赦なく爆発が襲った!

………
……


一方その頃……
「うぐぐぐぐぐ……」
 ユーニスは唸っていた。
 すぐそこに千歳が眠っている。眠っているが手を出せない。
 正確には眠っている訳では無い。
 今の千歳の意識はオルカと共に電子情報の世界へ旅立っている。
 
「チトセの寝顔可愛い、可愛いのにうぐぐぐ……」
 でも目を瞑って動かないのなら、眠っている事と変わらない。
 眠った千歳の寝顔ははっきり言って可愛い。
 頬を突きたい、撫でたい。
 でも触れたら千歳の意識が覚醒し、潜入作戦が失敗してしまう。
 だから、触れる事が出来ない。それでも……
  
「うう、チトセかわいいかわいい……Auchi!」
 叩かれた。叩いたのは幼い小さな拳、だがゴツンと音がしそうな強さで叩かれた。
「さっきからうるせぇぇぇ!潜伏中に騒ぐな!」
 ウィーゾルだ。
 ユーニスが顔を上げれば、振り向かずに左手を鮫の口の様に開いたり閉じたりしている。
「…痛い、それに私よりウィウィの方が声大きい!」
 さっきも急にむがーって叫んだし。
 
 ウィーゾルはユーニスに見えない何かを見ている。それが何かわからないが
 あの身体のどこから声が出てるの?と言いたくなるほど声が大きい。
 しかし、ウィーゾルは怒鳴り言う。
 
「俺様は艦長だからいいんだ!」
「独裁政権だー!でもさぁ、ウィウィはいいのー?」
「は?何がだ?それとウィウィ言うな!」
 訳がわからんっと言った顔でウィーゾルが振り向いた。
 これをヨシ!とばかりにユーニスは言葉を続ける。
 
「ほらさ、可愛い妹がおでこくっつけて他の子と寝てるんだよ?むがー!ってならない?」
「むがー?意味がわからん。噛むぞ」
「噛んでる!」
 いきなり頭を噛まれた。
 
「がう!」
「うう、言い方が悪かったかなー?
 つまり、えっと…こー心の奥がもやもやってしたりさー」
 ユーニスは語りながら自分の胸に右手を当て、左手を天へ掲げ上げた。
 それを、覚めた目で見ながらウィーゾルは言う。

「嫉妬って言うヤツか?だとして、なぜそうなる?そもそもだ……
 俺とアイツのマ…母親は違うぞ?」
「え?そなの?でもさでもさ!だからこそじゃない?」
 一瞬ママって言いそうになった?と思いつつ、ツッコミはしない。噛まれたく無いから
 しかし、二人が同じ母(?)から生まれた姉妹で無いと知りユーニスのテンションはさらに上がる。
 
 いや、むしろ先程から妙に高い。
 だとしても、それが分かる千歳の意識は今はここに無い。
 だから、ウィーゾルにはユーニスが小うるさく絡んでいる様にしか思えず。

「ああ?何がだからこそなんだ!?」
「本当の姉妹じゃないって事はさー、もっとこういちゃいちゃしたり……」
「はぁぁぁぁぁ!?」
 狭い艇内に可愛いくも大声が響き、続けて鈍い音が響く
 
「Auchi!なんで叩くのー!?」
「おおおまえが訳の分からない事を言うからだ!!」
 これまでのウィーゾルとは違う、明らかに動揺している。それに顔も赤い。
 だからユーニスは直ぐにピンっと来た。
「…ウィウィこう言った話に免疫無いタイプ?…Auchi!」
 当然の如くユーニスは叩かれた。しかし今度はあまり痛くない。
 
「…ったく、余計な事ばかり言いやがって……」
「あはははは、何かしゃべって無いと手が痛くてさー。
 それに、ウィウィと話してるとなんかおもしろいしー」
 ユーニスは笑いながら、穴の空いた手を掲げて見せる。血が垂れましたよ
 出血が止まらず血が垂れる程の怪我
 しかも、鈍いジンジンと止まらぬ痛みもある。なのに、なぜか妙に意識が高揚している
 多分、エンドルフィンが出まくっているのでしょう。
 
「………」
「あう!痛い痛いって!噛まないで噛まないで!」
 いきなりウィーゾルがユーニスの手を掴み立ち上がった。
 幼女とは思えない腕力。
 もしウィーゾルの方が背が高ければ、そのまま持ち上げていたかもしれない。
 
「ああ…もしかして怒った?ねぇ怒った?」
 問い掛けるもウィーゾルからの返答は無い。
 相手が幼女でも流石に無言で腕を握られ続けるのは怖い。
 共同戦線を張る事を決めたが、これは距離感を間違えてしまったかも?
 一瞬不安になってしまう、が……
 
 シュッ。
 
 何かの噴き出す音、スプレー音だ。
「え?冷…うぼあああああ!?」
 一瞬手が凍り付く様な感覚、続けて刺す様な激痛。
 ユーニスは握られていない方の腕をぐるぐると振り回し悶える。

「痛い痛い!死ぬ死ぬ!」
「死なん!消毒だ!ムシも死ぬやつだから痛いのは当然だ!」
「死ぬって痛いって?え…消毒?でも痛い!」
 ムシ。寄生虫の事だろう、海の魚は表皮や鱗に寄生虫が付く事がある
 海で暮らす鮫幼女達にとって寄生虫は死活問題。対策は必須なのだろう。
 だとしても、しみるし痛い!

「だから少し我慢しろ!治療してやるってんだ」
「治療?でも痛い!穴開いてるし!」
 ウィーゾルの治療と言う言葉で僅かに冷静になるも、やはり痛い。
 
「この程度の穴なら綺麗に塞がるから安心しろ!」
 言ってウィーゾルは側の引き出しから見慣れぬチューブ薬を取り出した。
 見た目は歯磨きチューブだが、リアルな鮫の絵が怪しい。
「え?それで塞がるの?しかも綺麗に?」
 塞がると聞いてユーニスの目が丸くなった。
 しかも、ただ塞がるだけで無く綺麗に塞がると言う。
 
 誰が見てもユーニスの怪我は簡単に治る様な物ではない。
 むしろ重症。ウォンの放ったクナイダートが刺さり、手の甲から掌まで貫通した大怪我
 もし、医者がこの怪我を見たのなら、外科的手術あるいは縫合の処置を行う判断をするだろう。
 だから、チューブで治ると言われても不安と疑いの言葉出てしまう。
  
「本当に効くの?」
「海由来の生き物なら効くはずだ」
「えー……」
 ユーニスは微妙な顔をするが、人間の先祖も遥か古代には海で暮らしていた
 だから人間も海由来と言う意味では間違っていない。
 
「とにかく塗るぞ!怪我人らしく大人しくしてやがれ!」
「う、うん」
 こくりと頷き、ユーニスはちょこんっと座り直す。
 口調は荒く暴力的だが、ウィーゾルの言葉は間違いなく自分を思いやってくれている
(ウィウィってやっぱりお姉ちゃんなんだなー……)
 そんな事を思えば、微笑ましい気持ちなる…が……
 
 ピトッ

「…い、いたああああああい!!」
 狭い艇内に再び悲鳴が響いた。
 治ると言われても痛い物は痛い。
 皮が抉れ、肉や神経が露出した様な状態なのだから当然と言えば当然だ。
 
「ああ!うるせえ!飲め!」
「んぐ!?」
 今度は何か咥えさせられた。
 瓶だ、しかもこの大きさには覚えがある
 
「これは…栄養ドリンク?」
「痛み止めだ!」
「あるなら先に飲ませてよー!?でも美味しい?」
 抗議するが本当に美味しい。
 果実のシロップ漬けの様に濃いめの甘さ、しかし口に残る様なくどさは無い。
 むしろ喉越しすっきりで、ゴクゴクと飲める。

「ううん?おおっ!痛くないー?」
 嘘みたいに手の痛みが引いた。
 傷はまだ手にある、しかし先程までの激痛は消えている。
「急に手を動かすな!それは痛みならなんでも効くからな!
 だが『癖』が強いから飲みすぎるなよ?」
「癖?あ、おかわりいい?」
 言ってユーニスは空になった小瓶の口を持って振る
 なんだか、空になった徳利を振っている様にも見えるのは気のせいだろうか?


………
……


舞い上がった土砂は、地上よりも長く漂い、電脳海底を闇に包んだ。

鮫潜水艦、ホエールシャーク靴諒ったクラスター魚雷により、スマイルメイカーの攻性
ハッキングキャラ達は全滅した。
しかし、千歳とオルカも攻撃に巻き込まれてしまったのだが…。

バォッ!土砂から人影が飛び出した!
黒い鮫コート、戦闘ブーツに、鮫幼女の競泳水着風衣装、オルカだろうか?
身の丈よりも巨大な銃器!銃床はメカニカル鮫デザイン、カラーリングは黒!
そして髪の色も黒である!フードの下の顔は千歳だ!

「衣装が変わってる…。じゃなかった!オルカちゃん!?」
「(ここよ)」
「どこ!?」
振り返ってもオルカは居ない。声だけがする。

「(あんたの頭の中。というか、私の意識がメイン、あんたがコ・パイ)」
「(あれ、それじゃあ…)」
「そう、体…というかあんたのリソースを私が占有した。その方が効率いいから」
千歳の顔と声で、オルカが独り言をする。
「(私達合体してるー!?)」
オルカと千歳…’’オルカ千歳’’である!
オルカは、頭の中の千歳と話していたのだ!

パーカーのフードの上に、ピピッと稲妻めいたアイコンが出現、耳のようだ。

「敵が来た」
「(え、敵?)」
オルカは答えず、巨大な銃を両腕で構えた。
その瞬間、周囲にリスポンを示す光の柱が立つ、その数、10、20、30…100!増加中!
ヴォドドドドドドドドドドドドド!!
巨大銃を掃射!リスポン直後のスマイルメイカーのキャラ達は、ノイズになって霧散!
現実世界で、黒人の少女、派手シャツのスパニッシュ、ホワイトカラーが、一斉に気絶!

「「「「「「「「「「ポポポコココココ…」」」」」」」」」」
かなりの数を仕留めた、しかし、フィールドを覆い尽くす数の敵が、イワシの大群めいて押
し寄せる!

「(わぁぁああ一杯きてるぅ!?)」
「見れば分かる」
オルカは銃撃の手を止めた、一瞬の溜め動作の後…。ビシュッ!レーザーを発射!光速の
レーザは敵の体を一直線に、数十mに渡って貫通!
オルカはその場で1回転!半径数十m内の敵は全て上下に切断!
ドドドドドドドドドド!!
さらにレーザーは時間差で爆発!ここは電脳空間、物理法則は絶対ではない!

「はぁッ!」
爆発の中から、’’オルカ千歳’’は飛び上がった。
頭上に居た触手系クリーチャーキャラを、銃床で殴りつけ、粉砕!
打撃の反動を、回転して上昇力へ変換、なんなく鮫潜水艦の上にヒーロー着地をきめた!

「(お、オルカちゃん〜…まって、あたま…あたま痛い…)」
頭の中で千歳が話しかけてくる、へろへろだ。
「人間の脳組織じゃ、この負荷はキツイでしょうね」
ここは電脳空間だ、派手な力をつかえば直結している脳神経に、比例して負荷がかかる。
「(オルカちゃんは痛くないの…)」
当然の疑問だ、今、オルカと千歳の脳はリンクした状態である。
鮫幼女は脳みそも頑丈なのかもしれないが…。

「…死ぬほど痛いよ」
「(え…)」
帰って来たのは意外な言葉だった。

「でも、今は私がやるかしかないから…!」
「(オルカちゃん……痛ッ!?あだだだだだだだだ!わかった!でもいきなりはやめて!
 心の準備ぐらいさせてぇ!!)」
「我慢して!」

オルカが銃へ処理能を傾けると、アーク溶接のような閃光が、銃口に集まる!
鮫潜水艦の分厚い耐圧殻が、真っ赤に溶け落ちる!空いた穴へ’’オルカ千歳’’は飛び込んだ!

ヒーロー着地!頭上に開けた穴が、ノイズを発しながら塞がっていく。

「(仮想現実って感じだな…)」
「仮想じゃないわ、まぎれもない’’現実’’よ」
「(うん…)」
武器を構えて、オルカは走り出した。
「(自分の目線なのに、おんぶされてるみたいだ…変なの)」
「集中してってば」

艦内は不気味な靄が立ち込めて、薄暗い。
しかし、構造は、現実の鮫潜水艦と変わらないらしい。

「(ここからが本番か…発令所へ向かえばいいの…?)」
「違う、セーフルームはそことは別にある」
「(え?じゃあ……)」
 発令所までの道は記憶に残っている。
 しかし、そことは別の場所となると千歳にはさっぱりだ。
 そうなるとオルカの指示だけが頼りなのだが……
 
「こっち!」
「(わ…勝手に動かないで…!?頭が……)」
 指示が出るよりも先に身体が勝手に走り始めた
 走る衝撃が頭痛の頭に響く。

「…っと」
「(今度は急に止まらない…出た!?)」
 床と壁から何かが滲み出してくる。
  
 最初は黒い染みの様に見えた
 しかし目を凝らし見れば文字と文字が何重にも重なりあった印刷ミスの様でもあり
 様子を伺ううち文字と文字はさらに重なり合い盛り上がり……

 コポポ……
 コポポポ……
 コポポポポ……

 人型となる。スマメイ再び!
 向かう通路を塞ぐ様に床と壁からスマメイの一団が現れた。
 武器を構え臨戦態勢をとるオルカ千歳だが、しかし何か様子がおかしい。

「(攻撃してこないぞ…?)」
「もしかして、私達を観察してる?」
 スマメイの一団はオルカ千歳をじっと見詰めるばかりで何もしてこない。
 それは返って不気味でもあり。
「攻撃してこないなら、こちらから行く!」
「(待って?何か変だ)」
 オルカ千歳が武器を構えた直後変化が起きた。
 
 ポポポポコ……
 ポポポコ……
 ポポコ……

「(あれ?消えた…?)」
 スマメイ達は現れた時と同じ動作を逆再生する様に
 印刷ミスの文字染みとなり床と壁へと消えた……
「私達を見ていた?なんで?…ううん、答えは単純」
「(どう言う事?って急に走らないで!?)」
「もたもたしてる余裕は無いわ!」

入れ替わるように現れたのは、スマイルメイカーの攻性ハッキングキャラ達だ!
「シャァーッ!」
ドガガガガガッ!!銃撃で霧散!もはや敵ではない。
一気に速度を上げ、狭い通路を疾走する。

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
通路全体を震わせる雄叫びに、オルカ千歳は急停止した。
歪な文字列が人型のシルエットに固まっていく。

「(この声って…)」
「………」
「Grrrrrrr…」
身長2mを越す巨躯、獰猛なメカニカル鮫頭部、間違いない…。
「(鮫男!)」
「エクステンドスーツだってば!」

名称の違いは置いておく。
問題は、鮫男(エクステンドスーツ)姿の敵が現れたということだ。
他のゲームキャラは皆、法則性のない自由な姿だった、リソース元の人間の意識を反映した
姿なのだろう。
それが、鮫男の姿である。電脳鮫男のリソース元は明白…鮫幼女だ!

「(オルカちゃん…)」
「シャァーッ!」
「GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
千歳の心配を振り払うように、オルカが叫んだ!同時に鮫男も走り出す!

鮫男の回りの通路が、ぐにゃりと変形し、空間を広げた!
狭い場所ゆえの不利がなくなり、鮫男は両腕から鮫歯ナイフを飛び出させ、振り被る!
ヴォドドドドド!!広い方が有利なのは、こちらも同じだ!巨大な銃を構え、オルカ千歳
は先制銃撃!鮫歯ナイフが砕ける!

「GWOOOOOOOOOOO!!!」
銃弾が鮫男の体に弾かれ、火花を散らす。銃撃をものともせずに鮫男は間合いを詰め
両手を頭上で組み、ダブル・スレッジ・ハンマーを叩きつける!
ドガンッ!銃口が床にめり込む!
「GAAAAA!!!」
「うわぁっ!」
銃を握っていたオルカ千歳の体が、跳ね上げられる。
とっさに武器を手放し回避しようとした所を、鮫男の剛腕が襲う!

「うぐっ!」
ガード!しかし重たい一撃!壁に背中から叩きつけられる!
電脳空間での強さは、イコール脳力だ。鮫幼女の脳の処理能力は、人間を遥かに上回る!
そこにスマイルメイカーの力もだ!電脳鮫男のスペックはオルカ千歳を越える!

「(頭がが…!オルカちゃん!上!)」
「分かってる…!」
オルカ千歳は転がって回避、鮫男の剛腕が壁にめり込む!

「GAAAAAAAAAAA!!!」
「シャァーッ!」
腕を引き抜きざま、振り回す鮫男に対し、オルカ千歳は壁を蹴って宙に身を躍らせる。
そして、鋭い蹴りを鮫頭に見舞った!

「GA…GYAAAAAAAA!!!」
バランスを崩した鮫男は仰向けに転倒、床に突き立った鮫型銃床に、延髄から倒れ込む!
鮫男はノイズになって霧散!

「ふぅぅ…ッ!」
着地し、床に膝についた’’オルカ’’は、深く息を吐いた。

「(オルカちゃん大丈夫…?)」
「ん?問題ないわ、先を急ぎましょう」
 言ってオルカは重い動きで腰を上げると
 膝に手をついてからもう一度深く息を吐いた。

「(そうじゃなくて…無理してない?って事)」
「無理?私が?何に?」
 天井に顔を向けながら無表情じみたオルカ千歳の左眉が上がった。
「(鮫男…えくすてんどすーつ?多分、あれを動かしているのって……)」

 この空間に現れる敵対キャラクターの向こうには操る存在がいる
 それはスマイルメイカーの力によって脳を使われている人間達。
 もし鮫男達も、彼ら彼女達と同じ存在であるとするなら……
 
「…だから…?」
「(え?だって……)」
「だとしても気絶する程度よ
 むしろ、操られたままでいるよりはマシなはず……」

…コココポポポ……

 囀りだ。
 先程と同じようにスマイルメイカーの発する無機質な囀りが聞える
「どっち!?」
「(前!通路の先!)」

 千歳の示す先に、既に具現化を完了したスマメイの群れが蠢いている
 うぞうぞ、ゆらゆら蠢く姿は、粘獣の触手の様な不気味さで。
「(さっきもだけど、何してるんだろう?)」
「偵察よ。私達の戦力を見ているの」
「(え!?それってマズくない?)」

「むしろ好都合だよ」
「(え…それってどう言う……)」
 千歳が言い終えるより先にオルカは走り出していた。
「向こうはリソースが足りてない
 つまり、私達を直接相手にする余力が無いんだよ!」
「(余力が…?でも……)」

 オルカの言う事は理に叶ってはいる。
 しかし千歳は見た。スマイルメイカーの力の大きさを。
 戦闘機を動かし、軍隊を動かし、潜水艦まで操ろうとしていた
 その光景が千歳を不安にする。
 そして、それは的中した

「ギョッラァァァァァイ!」
「え、魚雷!?くっ!」
 雄叫びの声と共に死角から魚雷が飛んできた
 武器を構える余裕は無い、バックステップで回避
 しかし、床へ着弾した魚雷は周囲に爆風と衝撃を撒き散らし
 オルカ千歳の体勢を崩す!

「ティティ…!」
 膝を突きながら爆風の向こうへ視線をやると『オルカ』が呟いた。
「(え、誰?…うぐっ…!)」
 千歳に、鋭い頭痛が突き刺さる。同時に、掃除用ワゴンを押すエプロン
姿のめんどくさそうな顔の鮫幼女の姿が脳裏に浮かんだ。
 ユーニスと一緒に捕まった時に、何度か見た鮫幼女だ。
 なぜ今見えたのだろう…。

「気を逸らさないで!」
「(ご、ごめん!)」
今度は衝撃音と共に床に地割れが走る、続けて聞こえる抉るような機械音。

「この感じ…知ってる」
「オマエ、オルカなのカ?」
 爆風の向こうから声と共に小さな姿が複数歩み出て来た。
 一団から歩み出る二人の鮫幼女、その顔は千歳も覚えている。

「ハンマー?ソウ?」
「(あの子達、ウィウィと一緒に居た……)」
「うん、私だよ!オルカ……」
「そうか、無事だったんだ」
「ココにキたってことは、ウィウィも一緒カ」
「うん…」
 オルカ千歳は立ち上がるとふらふらとした足取りで
 二人へと近寄って行く、だが……
 ハンマーとソウは、ニタリと口元を歪めて笑い出した。
 顔半分が、スマイルメイカーを模したバイザーで覆われている!

「うら…裏切りモノ…モノ……」
「…ウウウらギり者…」
 バイザーを走る文字列が、あの『スマイル』顔になる。
「え……」
「(…!、オルカちゃん下がって!)」
 茫然としたままオルカ千歳の前で
 ハンマーの持つ無骨な鉄槌(ハンマー)が振り上げられた 
 この後に起こる事は誰でも予想がつく、しかしオルカ千歳は動かない。

「(オルカちゃん!…ふんぬううう!)」
 身体が重い。半分とは言わずとも何割は千歳の身体のはず
 なのに…いやだからなのか金属製の重鎧でも纏っているかの様に身体が重い
 それでもと、千歳はふんばり全身に力を込める。

「(あ?動いた?)」
 倒れる様な動きだが、後ろに飛び金槌の一撃を回避出来た。
 先程のバックステップとは違う鈍く重い動き。
「(…けど…重い!うわっ!?)」
 先程までオルカ千歳の居た場所が
 金槌で穿たれノイズ混じりのポリゴンの様になり砕け散った。
 
「ウラうら裏切リ者!」
「(わぁ!?今度はチェーンソー!?)」
 機関銃の様な機械音と共に機械式の切断機…チェーンソーが迫って来る
 当たったら絶対えぐい事になる。
 そうで無くても激痛で現実の本体(脳)がどうにかなるかもしれない…。
 
「(身体が…重い……)」
 避けようとするがやはり身体が重い。
 足もまるで鉛の様な重さで、得意なはずの逃げ足が生かせない。

「せいっ!」
「(動いた!?)
「ガッ!?」
 気合の声と共に身体が動いた。
 オルカ千歳の身体が立ち上がり、手持ちの武器で横薙ぎにチェーンソーを払う。

「ごめん、もう大丈夫だから……」
「(オルカちゃん?本当に?)」
「…私はやるべき事をやるだけ」
「(でも……)」
 オルカはこう言うが、融合している千歳には見えてしまった。
 オルカの中には明らかな動揺がある。

「話は後!来るわ!」
「ギョッラァァァァァイ!」
 ティティの援護射撃だ!
 ハンマーソウが通路の左右に広がり、その間から魚雷が飛んで来る。
 その数5!

「シャァーッ!」
 オルカ千歳は武器を構え直し連続射撃により魚雷を撃ち落とす。
 一つ!二つ!三つ!四つ!
 魚雷はオルカ千歳へ到達する事なく空中で爆散!
 しかし……
「(あれ!?)」
「撃ち漏らした!?私が…くっ!?」
 目前に迫った魚雷を武器のストックで弾き飛ばすが
 魚雷の撒き散らす爆風が視界を閉ざす。

「(周りが見えないよ!?)」
「…見えなくても位置はわかるはずよ」
「(う、うん?本当だ……左右から来る!)」
 オルカの言う様に意識を集中すれば爆風の中に人型を捉える事が出来る
 ズキリッと頭痛が走る。位置だけではない、相手が『誰』なのかまでわかる。


「裏切り者、狩るニャ!」
「……KILL!KILL!」
 爆風の中から猫耳の様な髪型の鮫幼女と
 そして鼠耳(?)の様な髪型の鮫幼女が飛び出して来た
 それぞれ爪の付いた手甲と二本刃の短剣を構えている
 どちらも相手の懐へ飛び込む事を前提とした武器
 完全なインサイドファイターだ!

 刃の嵐が襲ってくる!右から左から、上から下から
 フェイントを交えた二人の連携攻撃。
「……ッ!」
 オルカが奥歯を噛みしめ、連携攻撃を銃を盾にして辛くも防ぐ。
 押されている。
 オルカ千歳は中・遠距離を得意とするタイプなのだ。
 さっきの鮫男でもそうだったが、近接戦闘には弱い。
 
 死角からの遠距離雷撃、そしてハンマー、ソウと新手の鮫幼女に
 よる格闘包囲網。
 スマイルメイカーの高度な解析力による隙のない戦術だ。

「ニャァァッ!」
「SHAAAARKッ!」
「(ヅッぅ…!)」
 猫耳鮫幼女と、鼠耳鮫幼女の連携攻撃!激しくなっていく頭痛!
 
 猫耳の鮫幼女は、キャット。
「ニャァァッ!」
「グゥ…ッ!」
 キャットの爪が、オルカ千歳のパーカーの上から肉を切り裂く。

 鼠耳鮫幼女は、ブルー。
「SHAAAARKッ!」
「クッ…!」
 ブルーの、鮫歯短剣が、髪を散らし、頬を掠める。
 姿勢を崩したところへ、2人の強烈な鮫蹴りが、オルカ千歳の鳩尾にさく裂!

「ガッハァッ…!!」
「(うわぁぁぁ!!)」
 オルカ千歳は蹴り飛ばされ。ガラァンッ!巨大銃が、音を立てて床に転がる!
 ピンチだ。
 だけど、こんな時なのに…千歳の中に流れ込んでくるのは…。
 目の前の鮫幼女達を、一人一人、はっきりと認識しているこの感覚。
 出会ったばかりで、鮫幼女達の見分けもつかない千歳の感覚ではなく…。
 
 炸裂した魚雷が燃えて、煤と硝煙が立ち込めている。 
 ガリガリガリ…金槌を引きずる音がする。
 倒れたオルカへ、鮫幼女達が距離を詰める。
 皆スマイルメイカーの面をつけて、笑っている。
 
 追い詰められ、血を流し、地に這っているのは自分なのに。
 何故、追い詰めてくる彼女達の姿を、痛々しく思ってしまうのだろう。
 何故、彼女達の、本当の笑顔を思い出しているのだろう。

「グゥゥッ…!来い!」
 落ちた銃を引き寄せると杖代わりに、オルカ千歳が立ち上がる。
 立ち上がるが、千歳にもすさまじい痛みが伝わってくる。

「(オルカちゃん無理しないで?)」
「無理なんかしてない!くっ!」
 飛んで来る剣戟を再び武器で弾く。
 思考の会話は一瞬だが、その一瞬の間に戦闘は再開されてしまう。
 そうで無くても、追い詰めている側が弱った獲物を逃すはずがない。
 今の彼女達はそう動く様にされているのだから。

「(オルカちゃん…逃げよう!)」
「なんで?逃げるなんてありえないわ!」
「(でも……)」
 千歳が逃げる提案をしたのは臆病風に吹かれての事ではない。
 見えてしまったから。

 彼女達とオルカの記憶、思い出の映像を。
 海の中で伸び伸びと泳ぎ回るオルカと鮫幼女達。
 海の仲間達と戯れるオルカと鮫幼女達。
 映像はまだ続く……
 大泣きするオルカとブルー、二人の頭を撫でるウィーゾル。
 三人を笑顔で見詰めるハンマーとソウ、ぴょんぴょん跳ねるキャット
 喧嘩する事もあった、泣かされる事もあった
 でも、最後には笑いがあった。
 
 ハンマーとソウの時もだ、それにシャークティースの時も
 記憶の中の鮫幼女達の瞳の中に蔑みは無かった。
 それはオルカ自身の瞳にも……

「かっ!」
「(オルカちゃん!今のままじゃ無理だよ!)」
「(私にも分かる!この痛みは!脳の負荷じゃない、オルカちゃんの心の痛みだ!)」
「うるさいうるさいうるさい!」
「うにゃぁッ!?」
 キャットを蹴飛ばすとオルカ千歳は強引に距離を開け
 そして武器のトリガーに指を……

 鮫幼女達の見えない瞳が一斉にオルカ千歳を見る
 瞬間、強い記憶のリフレインが千歳を襲う。
 千歳の中をオルカの記憶が疾風の様に突き抜けて行く。
 自身が消えてしまいそうになる程の記憶の…感情の嵐……
 そして、嵐が収まると声が聞こえた

「あ、ああ…出来ない…出来ない……」

「(オルカちゃ……わぁ!?)」
 武器が床に落ち、次の瞬間……
「あれ?出ちゃった!?」
 床にぺたりと女の子座りした千歳の姿がそこにあった。


………
……


「鮫幼女ってサイコーね!ねえ見て、私の左手!もう完全に治ったみたい!」
「いや、手当しただけだかんな、あんま動かすなよ」
「おどろきねー!まさかグーグルアースで南極まで見れる時代に、未発見なUMAがいるな
 んてさー」
 鮫潜水艇内では、ユーニスがウィーゾルに絡んでいた。顔がやけに赤い。
 ウィーゾルの方は、うんざりした顔である。

 最初は無視していた。そしたら、ユーニスが、電脳ダイブ中のオルカと千歳に、
 私も添い寝するー!とか言い出して。邪魔しようとしだしたので仕方なくユーニス
 の面倒を見ている。鮫幼女の’’痛み止め’’を飲んでから、様子がおかしい。

「…はぁ、人間はこの星の表面しか知らねぇ、本当の世界は、昔も今も俺らの
 縄張りなんだよ。今どきの人間よりか、昔の船乗りのがよっぽどモノを知ってたぜ」
「私そういうの好きー。えへへっウィウィは良い奴だなぁ。よくみたら結構かわいい
 んじゃない?……んっんっ…ぷはー…この痛み止めもいいねー」
「おい!お前いつの間に取った!?もう飲むなって言ったよな!?」
「…へへっ」
 ユーニスが手を開くと、痛み止めの小瓶がじゃらっと手の中にあった。
 
「返せ!それは何本も飲むもんじゃねぇ!殺すぞ!」
「そうだねー、鮫幼女のこととか、オルカの事を教えてくれたら返すよ」
「……」
 オルカの名を聞くと、ウィーゾルが無言でユーニスを睨む。

「なんで、’’スマメイ’’なんて作ってたの?オルカは、あんたが、人間から
 奪ってきて作らせたって言ってたよ」
「違うね、俺達に攻撃をしかけてきたのは人間の方だ」
「ウォンとか…威力財閥の奴らが?」
「知らねぇよ。俺の船をしつこく追いかけまわして、攻撃し続けて来るんだ。
 いくら鮫が温厚な生き物でも、さすがにキレるぜ」
「鮫って狂暴でしょ…」
「あ?殺すぞ」
「ほらね!」

-間-

「まー結局、鮫幼女のことをどっかで知ったウォン達が、利用するために、撃沈
 を自作自演して、ウィウィにスマメイを盗ませたし。
 後で回収するための仕掛けもしてあったと…。
 でも、ウィウィ的にはそんなん知らねーし、嫌がらせしてくる相手は…」
「ぶっ殺す!殺した獲物は俺らのもんだ!なんか文句あっか!」
「ですよねー?」
人間的には乱暴な理屈だが、ユーニスは納得した。
ウィーゾルは人間嫌いだし。実のところ、ユーニスもあんまり人が好きじゃない。
好きになれる人がいるだけで、基本的に、ほんのりと人間が嫌いなのだ。
不思議と、人間とはまったく違う価値観で生きる、鮫幼女に、ウィーゾルに共感を覚える。

「うんうん、ウィウィって分かりやすいもんねー!」
「…お前、バカにしてんのか?」
「してないよ、むしろ好きになって来た。千歳の次に」
「そうか」
素直に頷くウィーゾルに、ユーニスは笑顔になる。
つまりは、ウォン達はウィーゾルのこういう性格に付け込んだのだろう。

そして、ユーニスも見た事がある、相手の気質を利用するそう言う連中を。
ウィーゾルは、人を見下していたが、釣りの技術に関しては、きっと人が長けているのだ。
ともあれ、ひとまずは合点が行ったし、ウィーゾルが悪い奴じゃないのも分かった。

「スマメイが、鮫幼女に渡った真実は、そういうことか…。
 それで、完成させたら人類征服でもするつもりだったの?」
「はぁ?興味ねえよ、そんなこと」
「でも、オルカはそう言ってたけど…」
 ウィーゾルの手が素早く動いて、ユーニスから痛み止めの瓶を奪った。
 蓋を指で弾き飛ばし、中身を一息に煽る。
 それを見ていた、ユーニスは、溜息混じりに微笑んで言った。

「あんたさ、オルカのことを殴って、後悔してるんでしょ」
「はぁ!?」
「ウィウィはいい奴だよ、優しくて思いやりがあって…」
「何言ってんだお前…あいつは、仲間を裏切った!裏切りは最大の罪だ!」
「だから縛り首?」
 ウィーゾルと初めて会った時、たしか、裏切りの嫌疑をかけられたオルカに対して
 そんなことを言ってた。

「…そうだ」
「そんな気、無かったでしょ。私さ、実の親に本気で憎まれて暴力振るわれたり
 したからさ。わかるんだよ。自分のために暴力振るうような奴って、悲鳴
 を聞いたらもっと興奮するんだ。自分が相手を支配してる気持ちになるから」
 小瓶の口をひねって開けると、ユーニスは半分だけ飲んだ。

「ウィウィが自分の為に怒って誰かを殴るような奴なら、オルカに、お姉ちゃんって言わ
 れて、拳をとめたりはしなかった。
 きっと私達も、殺されてたよ、ジョーズに襲われる人間みたいに」
「……」
沈黙である、ややあって…。

「…ジョーズはヤラセだ」
ウィーゾルが言った。
「あははっ!」
ユーニスが笑う。

………
……


ヴォッ!ヴィィィィィッ!ジャッ!シッ!
ハンマーが、チェーンソーが、爪が!刃短剣が!
一斉に迫りくる!
千歳は跳ね起きた!

「ぅぐっ!」
千歳の隣で、へたり込んでいたオルカが、パーカーの首根っこを掴まれて
息を詰まらせる。

「でぇぇええええい!!!」
千歳は、オルカを廊下の隅に放り投げる。落ちていた巨大な黒い銃を両腕で抱え上げ
引き金に指をかけた。
ヴォドドドドドドド!!!!
発射!体ごと浮きそうになるのを、必死に踏ん張る。
銃自体がものすごく重たいのに、反動で跳ねる銃口を押さえるのでやっとだ。
狙いをつける余裕なんかない。

ここは電脳空間、基底現実と違い、物理法則よりも、演算能力、脳の力こそがパワーだ。
それでも、である。オルカ千歳が片手で乱射していた巨大銃は、千歳1人では、とても
扱いきれない。

「…このぉ!」
ヴォドドドドド……。千歳の腕の中で、巨大銃がポリゴンの光になって消滅した。
銃撃が止むと鮫幼女達は一気に迫ってきた!


「えっと…こう言う時はこう言う時は……」
考えている間にも鮫幼女達は近付いて来る。
前に出ているのはキャットとブルーと呼ばれた鮫幼女の二人
その後ろにハンマーとソウが続く。分かりやすい程の連携フォーメーション。
武器は無いし、あっても今の千歳ではどうしようも無い事もわかってしまった
それにオルカも……

「うん!」
頷くと千歳はグルンと向きを変えた。
「逃げるしか無いな…!」
『逃げんだよぉー!』
ほら!宙に浮かんだユーニスも言ってる!(幻覚ですね)

「オルカちゃん!…オルカちゃん……」
「………」
オルカの名を呼ぶがしゃがみこんだままで反応が無い
「…ん、くっ……」
千歳は一瞬だけ何かを言いかけて、オルカに走り寄ると
オルカの身体を抱く様にして立ち上がらせる。
その直後……

ダンッ!
「ニャァッ!」
「SHARKッ!」
跳躍音そして雄叫び、振り向かずともわかるキャットとブルーが攻撃を仕掛けて来たのだ。
そう思った瞬間、千歳の足は駆け出していた。

「ギョラァァァイ!!」
背後から魚雷が飛んできた!
「それミサイルだろ!」
おもわず突っ込みながら、曲がり角に飛び込んだ!階段だ!
悠長に駆け降りてる余裕はない。

「オルカちゃん!ごめんね!」
「なっ!?うにゃぁぁぁ!?」
蹴った。
電脳空間で致命傷を負うと現実で脳が焼き切れるらしいが…。
逆に言えば、死ななければ多少の無茶は大丈夫だ。多分。
そして、鮫幼女は階段から落ちたぐらいで死なない。多分!

千歳は、階段を途中から飛び降りて、階下の手すりに足をつけて着地
その瞬間、頭上では魚雷が炸裂して、さっきまで居た場所を爆風が吹っ飛ばした。

倒れてるオルカをちょっと強引に引っ張りおこす。
「〜〜〜ッ!今度蹴ったら殺す!」
「じゃあついてきて!今は逃げるよ!」
言うがはやいか、再び階段ショートカットで飛ぶように階下へ!
パルクールだ!

「逃ガすかぁ…!」
「GAAAAA!」
鮫幼女達が迫る、オルカも意を決して飛び降りて千歳の後を追う。


階段を飛び降り通路を駆け抜け奥へ奥へと進んで行く
行くのだが……
「ねぇ!どこに向かってるか解ってる?」
「…わかってない!けど、わかる様な気がする……」
オルカの問いに千歳は曖昧ながらも確信のある答えを返した。

「そう、まだ力は使えると言う事なのね」
「んーそうなのかな?」
千歳にはピンっと来ないが、もし今感じている物はそうであるのなら
そう言う事なのだろう。
確かに、直感に近い感覚でどう進めばいいのかわかる
背後から、鮫幼女達が追って来る事もわかる。

千歳の言葉にオルカは考える。
「……(スマイルメイカーのコアプログラムはまだ彼女の中にある。
 もし彼女が無意識にでもそれを使っているとしたら…ありない話では……)」
「オルカちゃん…?」
「なんでも無いわ、先を急ぎましょう」
「わかった、この先!」
千歳は感じるままに通路進んで行く。
右へ曲がり、左へ曲がり、そして真っすぐに進む
今の所、背後からの追手の気配は無い。

「………(やはり彼女は力を)」
オルカがそう確信しかけた直後
突然通路の雰囲気が変わり、開けた場所へと飛び出した

「あ……」
「あ……」
そして二人は同時に同じ声をあげた

「…やっぱり私がナビをした方が良さそうね」
「はい、そうみたいです……」
二人は固まりながら言葉を交わす

「サメェ…?」「しゃーく?」「イカァ!」
二人を睨むスマメイバイザーを付けた大勢の鮫幼女達の姿
二人はモンスターハウスならぬ、鮫幼女ハウスに飛び出してしまった!

「昨日もこんなことあったなぁ!?」
前門の鮫、後門の鮫だ。引き返そうにも逃げ場が…
「!あっち!?」
なんか、千歳の頭にピンッと来た、鮫幼女たちの一番密度が低い場所が瞬時に分かる。
千歳は駆け出した。後ろをオルカがついていく。

「ナビするって、こういうこと!?」
向かって来た鮫幼女を跳び箱ジャンプで回避。
「そう!代わりに私の体の制御はあんたに任せる!蹴られちゃたまんないからねっ!」
言いながら、オルカは目を閉じたままその場でしゃがむ、左右から突っ込んできた鮫幼女は
正面衝突してひっくり返った!

「こういうことだな!二人分の体を動かすって悪くないな。
思い通りに行くデュエットダンスみたいだ」
ブガーッ!ブガーッ!警告灯が点灯!行く手の重厚なメカ扉が開かれ…。

「オルカちゃん、道間違えてない!?」
「いいえ、あってる」
扉の向うは、大量のゲームキャラで埋め尽くされていた。
挟み撃ち!だが、ゲームキャラ達は千歳達を素通りして、鮫幼女に襲い掛かる。

「サメェェッッ!」
「ウォーッ!」
「シャァァァッ!」
「イヤーッ!」
「GROOOOOWLLL!!」
「BLAM!BLAM!」

あっという間に乱戦が始まった!
ゲームキャラ達の戦闘は、スマイルメイカーの鮫潜水艦ハッキングが具現化したものだ。
鮫幼女達は、洗脳支配されていても、鮫潜水艦側のシステムだから。
両者が出会えばバトルが開始されるのは当然だ。

「オルカちゃん…」
千歳に不安がよぎる、これも、仲間と戦う苦しみをオルカに与える結果になるのでは…

「サメェェェェェッッッ!!」
「アアアウチッ!」
「フカーッ!」
「アバーッ!」
「GAAAAAAAAAAAAA!!」
「Mooooom!!!」
鮫幼女に集られて、ゲームキャラ達は次々に血祭にあげられていく!
千歳は思わずあっけにとられる。

「何?ぼさっとしないで、私の体預けてんだけど?」
「ああー…」
うわ、鮫幼女つよい。スマメイの用意した人間なんかまったく相手にならない。
やられた人間達は、リアルで次々に失神してるんだろうけど。
人間の被害に関して、オルカはまったく頓着する気配がない。
仲間と戦うのが嫌なだけで、仲間以外はわりとどうでもいいらしい。

「…話は後にしよう!」
悲鳴と血飛沫をあげる人々に、心で詫びつつ、千歳は駆け出した。

「ひとまずここを離れるわよ」
「わかった!…えっと、あっちだな?」
部屋の一角にある通路に千歳の視線が行く
同時に乱戦を避けるための最短ルートがラインで示される
「(あ、昔こんな漫画読んだ事ある……)」
「余計な事を考えないで、急いで」
「そうだな…急ごう!」

最短ルートは示された。しかし……
「おっと!」
突き飛ばされたゲームキャラクターがルートに飛び込んできた。
棒高跳びの要領、身体を捻る様にしながら飛んで避ける。
千歳の動きに追随する様にオルカの身体も避ける。

「ふぅ、アドリブは必要か……」
「私が出せるのは行動直前の情報だけよ。
 一秒後…0.1秒後は貴女の直感に期待するわ」
「直感かぁ……」
先程の件を思えば千歳に自信は無いが、やるしかない。

だから千歳は駆け、そして飛ぶ
飛んで来る弾丸をスライディングで避け
積み重なったゲームキャラクター達を飛び越える


「うん、だんだんわかってきたぞ」
「…何が?」
「この身体のやり方」
「…?」
千歳の言葉にオルカが疑問の言葉を投げるが
この感覚はそれ以上に答え様が無い。

「ダンスと同じ…動いたからわかる…っと!は!」
「人間の思考は難しいわね…っと!は!」
飛んできたミサイル群を飛び石を踏む様に飛び越え
そのまま転がる様にしながら通路へと飛び込む
直後、爆発が起こり通路の入口に瓦礫の山が築かれた

「少し時間稼ぎになりそうね」
「うん、この幸運を上手く生かそう」

「ハァァッ!」
金槌が恐るべき鮫幼女腕力で床に叩きつけられ、クレーターを作る!
瓦礫が!ゲームキャラクターの死体の山が浮き上がる!

「GAAAAAAAAAAA!」
ヴィィィィィィィィィッ!!!チェーンソーを構えたソウが竜巻のごとく回転!
瓦礫を!ゲームキャラクターの死体を巻き込んで破壊のトルネードを起こす!

「くっ…!予想より早い…!」
「全然ラッキーじゃなかった!」
どうする…!?顔を掠めて吹き飛ぶ瓦礫を回避しながら、千歳の脳繊維が火花を散らす。

「うわぁっ!」
「オルカちゃん!痛ッ…!」
思考にリソースを割いたとたん、体の動きが鈍り、チェーンソーが体をかすり、重たい
ハンマーにバランスを崩される。
「ニャァァァァッ!」
「SHAAAAAAARK!」
「うあぁぁ!」
「ぅぐっ…!」
爪!そして鮫歯短剣の攻撃が突き刺さる!

「バカッ!あんたが考えても仕方ないでしょ!人間は頭悪いんだからっ!」
目を開いたオルカが叫ぶ。
「考えるなって……そうか!」
そうだ、この空間は’’’脳力’’がイコールパワーなのだ!

「ダンスと同じだ!踊ってみなきゃわからない!」
その瞬間、千歳とオルカのギアが一つあがった。
破壊的なハンマーを、チェーンソートルネードを、爪を、短剣を!紙一重で回避する。
その姿は、まるで、嵐の中でステップを踏むようだ!

鮫幼女は人よりも強い体、そして優れたテクノロジーを持っている。まるで人のようだが。
それは違う、そもそも生物的に優れた生き物が人とは限らない。
鮫幼女が人に似ているのではない、鮫に遅れて進化した人間が、人型に、鮫幼女に収斂進
化したのだ!

ひらめきに似た直感が千歳の脳繊維の中をスパークする。
理解すると同時に、体はまったく思考に足を取られずに動く!

「はぁっ!」
「シャァッ!」
「GUWA!?」
「Soウ!?」
チェーンソーを振り回していたソウの左右をすれ違いざま、千歳は肩を掴み、オルカは
足払いをかける。ソウの体がその場で空転!ひっくり返って気絶!
鮫幼女の弱点は、スマメイ洗脳されても有効だ。
仮想空間でも、殺すことなく一時的な行動不能ならば、オルカの心も痛まない。

「はぁっ!」
「シャァッ!」
しゃがんだオルカの腕を、千歳が引っ張り上げる。オルカはジャンプして、千歳に担がれて
リフトアップ!
「ニャァッ!?」
「FUKA!?」
千歳はその場で回転!キャットとブルーがオルカの脚に蹴られて転倒!

「ハァァッ!」
ハンマーが金槌を振り上げた瞬間には、二人は脱兎のごとく横を駆け抜けていた!

「Guゥゥ…何Zeだ…!ただのニンゲンGa…!」
忌々し気に唸るハンマーに、走り去る千歳は答えない…というより答えられない!
彼女は今、脳のリソースを、全て体の制御に振っているのだ!

鮫幼女は鮫から進化した、だから強い。人間は猿から進化した…ゆえに機動性が高い!
海中で浮力に支えられ泳いでいた鮫と、地上で重力に抗い、手足で立体起動してきた猿。
生物としての違いが、強みになったのだ!
そして千歳は、ダンサーだ。運動神経は発達している。パルクールもできる!

「(この先の通路を右に行けば、隔離区画へ通じてる!)」
「…!」
頭の中ですら言葉を紡がず、ただ分かったと、意思だけでオルカに伝える。
極限の集中状態では、脳の言語野を使う余裕すら惜しいのだ!

理性や論理的思考は脳のほんの一部の機能に過ぎないという。
直感、センス、インスピレーション、時に人に神がかった働きをさせる力。達人の領域。
それは、繰り返しの経験と記憶、そして鍛錬に培われた、脳神経の無意識の連携に他な
らない。
千歳は、今まさに達人の領域に足を踏み入れていた!

「ハァァァァァァッ!」
裂帛の気合とともに、ハンマーが金槌を全力で振り下ろした!
ドゴォォォゥ!!衝撃が地面を割り!破壊の波となって千歳とオルカを追いかける!
なんということか!衝撃波が、目にみえる形を描きだす、それはまさしく…鮫!

鮫衝撃波は床を壁を天井を破壊しながら加速する!二人に牙が掛かろうとした瞬間!
バンッ!千歳は一気に跳躍した!

「ひゃぁ!?」
手を引っ張られたオルカが思わず、かわいい悲鳴を上げる。
手を引っ張る千歳の姿が、赤いゴス衣装から、スポーティーな軽装に変わっている!

「うさ耳?」
うさ耳だ!高機動なのが一目瞭然!

ガッ!バニー千歳が迫って来た鮫衝撃波の鼻づらを踏んづけて、ジャンプ!
ドガァァアアアアアッ!!鮫衝撃波は大爆発!

「うわぁっとっとと…!」
狭い通路に飛び込んだオルカは、勢いあまって壁に激突しそうになるが、千歳に手を
引っ張られてブレーキした。
正面から両手を握り合った状態でうまく止まった。


「……ありがとう」
「…!?…!……うん」
オルカがありがとうと言った。その衝撃に千歳の集中が乱れそうになるが
脳内で数字を数える事で落ち着かせる。
そして、多くの言葉を飲み込み、代わりに頷く事で返答とした。

「えーあー…この通路を真っすぐ行って
 暫く狭い通路が続くけど…今の貴女なら大丈夫だと思う」
「(こくり)」
頷くだけをすると、バニー千歳はオルカの手を引き再び駆け出した。
そして、思考を絞りながら思う。感情とはかくも脳を動かす物なのだと

「サメェ!…さめ?」
「SHARKSHARKSHARK!!」
「ドケどけ!うがぁぁぁ!」

背後から鮫少女達の声が聞えてくるが何かおかしい
「…詰まってるわ、大勢で飛び込めばああもなるわね」
僅かに振り向き後ろを見れば鮫幼女達は渋滞を起こしていた……
そうでなくても、ハンマーの使う鉄槌の様な武器は狭い通路では上手く扱えない
キャットやブルーの様なインサイドファイターも狭い通路では連携が取れない

「このまま一気に引き離しましょう」
「ん」
千歳は小さく頷くを足を加速する。
バニーの姿になってからずっと足が軽い、本当に兎になった気分だ。
通路を駆け抜け、目的地までまっしぐら!
…とはならなかった。


「ここから広い通路に出るわ、敵の数は…ゼロ?」
「…?」
オルカから疑問の思考が流れて来る。
敵の数がゼロ、つまり敵の気配が無いと言う事で先に進む分にはありがたい。
しかし、ここまでの流れを考えると違和感を覚えるのは当然の事。

「まって!敵の気配が…上から!?」
広い空間に出た直後それは起きた!

ドンッ!
「UGAAAAAA!」

天井が弾け瓦礫と共に何かが落ちて来た、ハンマーだ!
彼女だけではない、ソウ、シャークティース、キャットにブルー
その他、見覚えのある鮫幼女達が次々と降りてくる。

「ショートカットされた?それともワープポータル…?」
ここはゲーム的な電脳空間、あらゆる可能性がある。
しかし、今は考えている余裕は無い。この危機をどう回避するかの方が優先だ。

「通路を戻って!別ルートを…待って!?」
「…♪」
千歳の瞳がニッと笑った。
言葉が無くてもわかる、その意味は『私に任せて』だ
「いいわ、貴女を信じるわ」
信じると決めたのなら、オルカに出来るのは一つだけ
『身体を任せる』だ

千歳は頷き一つすると、鮫幼女達の群れに突っ込んで行く
「うにゃっ!?」
「WHAT!?」
前に出ていたキャットとブルーの周囲をクルリンと一回転し
千歳とオルカ、シンクロした動きで二人の足を掬うと寝転がせた

「ナニが!?ナニが!?…ガ!?」
今度はソウの番。足を止める事無くスライディングの動きで滑り込むと
繋いだ手で足を引っ掻け立ち上がり、ソウの身体を空中で一回転
頭を抱きとめると仰向けの姿勢で床へ。

「GA!?ナン……」
ハンマーは最後まで言葉を言い終える事無く
振り下ろしかけたハンマーを二人の動きに絡めとられ
そのまま転倒し転がった。

もうこの後は二人のペース。
空間はバニー千歳とオルカの演舞場となった。

「この先に’’彼女’’がいるわ!」
背中合わせにオルカが叫ぶ。

前方には階層をつらぬく、巨大な柱と銀行の金庫めいた巨大なロック機構の門だ。
Maxi Security Containment Facility って書いてある!

千歳はオルカの手を握ると駆け出した!
鮫幼女の横をすり抜け、鮫男の牙をかわして駆ける駆ける!
ゴールは目前だ。千歳が、少女を導く白兎となって、鮫幼女の一気に突っ切ろうとした…
その時だ!

「Gあ阿aaあァAA…!」
落雷めいた衝撃、青白い球状放電が、鮫幼女を吹き飛ばした。

「イッ…ヅッうう…!?」
「ウゃぁぁっ…!」
凄まじい頭痛と、グワングワンと頭蓋の中身を揺すられる不快感…。
これは脳への負荷ではない…この不快感はつい最近も味わった。

「ウォンが使ってた電磁爆雷か…!ぶわっ!?」
急に狭いとこに押し込められた、一瞬捕まったのかと思ったけど、オルカのパーカーの中
だった。
オルカは、千歳を胸元に抱え込んでパーカーのフードをしっかりと押さえる。
対電磁パルス攻撃装甲的な奴である!

次々と青白い球状放電が爆発、鮫幼女達は全員昏倒した。
鼻につく焼け焦げたイオン臭…。刺激を伴う煙の中を、影が飛び回っている。

「スマイルメイカー!」
「くっそ、やっぱりアイツらまだなんか仕込んでたな!」

「ポッポッ…コココ…ポッ…」
スマイルメイカーの歪な文字列面が、倒れたソウに近づく、すると…。
その体が、操り人形のようにぎこちなく動き出した。

周りに倒れていた鮫幼女達もである、次々にゾンビめいて起き上がり、虚ろな顔で唸り声を
あげる!その光景はあまりにもゾンビパンデミックだ!

「こいつら…!」
オルカのパーカーの胸元から顔をだす千歳、怒りが湧いてくる。
ほんとに荒らし・嫌がらせ・混乱の元の権化みたいな奴らだ。

「MSCFの入り口が…」
オルカがぐっと歯噛みした。
スマイルメイカーに操られたゾンビ鮫幼女は、アリのように門に群がる。
自らを盾に肉壁を作らされているのだ。

「アイツ…私の足を封じてきた…!」
あんな風に密集されては、鮫幼女達の間を駆け抜け転がす戦法が使えない。
それに、今の鮫幼女達が転がしたからと失神するとは思えない。
推測になるけど、今の鮫幼女達はスマイルメイカーの操り人形状態。
先程までの洗脳ではなく、身体だけを使われている。
文字通りの人形……
(あんな状態を見て、オルカちゃんは……)

「…合体して突破しましょう」
「え?オルカちゃん?」
首を傾げる様に回しオルカの顔を見る。

無表情なオルカが、千歳を見つめ返す。
感情が、痛いほどに突き刺さってくる。
オルカは、仲間を撃つ覚悟を決めたのだ。

「でも…っ!」
「もう一度合体する、突破しなければ、彼女は助け出せない、誰も救えない」
「それでも…!」
まるで機械のように淡々と言うオルカに、千歳が叫んで首を振る。

オルカは有無を言わさず、千歳の腕を掴んだ。
’’オルカ千歳’’へ変身するのだ。千歳自身の処理能が上がっている今、二人の力を合せれば
力づくで突破可能だ。

これで良いのだろうか?
スマイルメイカーに操られ、正気を失った仲間を助けるため、今はこうするしかない。
本当に…?
多少の痛みはあたりまえだ。
そうなのか?
ここは仮想空間で、死んでも現実では失神する程度だ、問題ない。
それはそうだが。
命がかかってる状況で、手段を選んでいられない。
……。

この思考は…オルカじゃない。千歳は、直感した。

『スマイルメイカー…!』
『ポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…』
不気味な囀りが聞こえて、周囲の時間が停滞している。
歪な文字列の面をつけた亡霊が、千歳の目の前に浮かんでいる。

威力テックのビルで、捕まった時と同じだ。
こいつは、千歳の頭の中に巣食っているスマイルメイカーのコアプログラムだ。
今の千歳には、はっきりと分かる。
これが、千歳の脳に寄生したスマイルメイカー…スマイルメイカー・コアだ!

ニタリッ…と文字列面の口の部分が、笑みに歪む。
スマイルメイカー・コアは、枯れ枝のような手で、オルカを掴もうとする。

『…やめろ』
歪んだ笑みが、千歳を見た。
本当に止めていいのか?本当に…?
私が手を貸さずに、彼女が引き金を引けるとでも?
まるでそう言っているようで。

『…ッ!』
言葉に詰まる。
スマイルメイカーは全ての元凶だ。
しかし千歳が、戦えるのも、スマイルメイカー・コアのおかげだ。

『コポポポ…』
スマイルメイカー・コアの手が、オルカの頭を掴む。
オルカの願いに応えて、戦う力を与えようとしている。

『(今は、しかたないのか…)』
千歳はうつむく。
あの時と同じだ、結局、スマイルメイカーの力に頼るしかないのだ。
『(力が、無いから…)』
頭の中で言葉にしたら、惨めな感情が足元から湧いて沈んでいくような気がした。

この感情は、今作られたものじゃない。頭の奥深く…脳の古い神経組織。
昔から、繰り返し、何度も味わって、こびりついている。
なにか、大きな事件があったわけでも、トラウマというわけでもないのだが。

昔から、心のどこかで常に無力感を感じていた。
特別な何かが欲しい、今よりもずっと強い何かになりたい。
そんな思いが、影のように後をついて離れないのだ。

思えば、アメリカ留学したのも、友達が皆、進学を選ぶ中、夢を追うと言って、
渡米を決意したのも。
今、鮫幼女と一緒にニンジャやらスマメイやらと戦ったりしているのも。
もっと力をと渇望する、千歳自身の影のせいなのかもしれない。
ユーニスに、ヒーローじゃないんだって言われて。
まったく悔しい気持ちがなかったと、言い切れるだろうか?
スマイルメイカーの力を得て、微塵の優越感もなかったと、本当に言えるのか。

オーディションに落ちるたびに、もっと才能があればと思った。
美人がよくいう、特に何もしてないを、地で行くユーニスを見て、神を呪ったこともある。
この街に来てからは、スゴイ奴らだらけで、自分の何も無さを思い知った。

力の無い者がいくら願っても、虚しいだけだから…。
スマイルメイカーに憑りつかれたのは、自分が’’力’’を求め続けていたから…。
スマイルメイカーは欲望を、無限に肯定してくれるモノだから…。

暗い思いに沈む千歳を見て、スマイルメイカー・コアがますます笑みを大きくする。

『痛…!』
腕に電流を当てられたような痛みが走る。
千歳の腕を掴んでいたオルカの手からだ。

痛く、そして熱い…。時間は停滞したままで、オルカは動かない。
けれど、思いに時間は、関係ないのだから。

『この痛みは…オルカちゃんの心の痛み…。ああそうか…!』
千歳が、オルカの手に自分の手を重ねた。
『勘違いしてた…。ここが現実とあんまりそっくりだから。
 今、ここにいるのは…私達の体じゃなくて、心そのものだから…!』
『コポ…?』
スマイルメイカー・コアが首をひねる。

『オルカちゃんが、なんで引き金を引けなかったのか…。
心の底から、仲間を傷つけたくなかったんだ!守りたかったんだ!』
剥き出しの心では、誰も嘘をつけない。
だから、人のことは平気で撃つくせに、仲間のことになるとオルカはこんなに苦しむのだ。
彼女にとって、仲間達だけが自分以上に大切な全てだから。

『…人の弱みにつけこんでぇ…』
重ねていた手を離し、千歳は拳を握る。強く握る!

『へらへら笑ってんじゃ……ねー!!!』
『ゴッッポ!?』
千歳の拳が、スマイルメイカー・コアの顔面を殴った!

「グッゥウウウ!!」
「あっぐ…ッ!」
その瞬間、意識の時間は元にもどる。
オルカは歯を食いしばり、’’オルカ千歳’’へ変身しようとしている。二人を紫電が包む!

「んっぬぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁっ!…何するの!?」
千歳が、オルカの手を引きはがす、紫電が散り、合体シークエンス解除!
二人とも吹き飛んで尻もちをついた。

「オルカちゃん…合体しよう」
「はぁぁ!?…だから今、合体しようと……」
手を伸ばし、千歳はオルカの手を掴む。
「ううん、今度は私がやる!オルカちゃんの出来ない事を私がやる!!」
「…あなたが、みんなを倒すっていうの…?」
「違う!」
叫び宣言する様に言うと千歳は立ち上がり
オルカの手を握り絞めて立ち上がらせた。

「もう誰も傷つけない、オルカちゃんも苦しませない!
 しょうがないからって…そんな理由で誰も戦わせない!!」
「そんなこと…どうやってやるっていうの!?」
「踊る!」
「貴女何を言って…?」
「私にできるのは、踊ることだけだから」
タンッ!タタン!
千歳とオルカがステップを踏み、ターンを決めて踊りだす。

「ちょっ…勝手に体うごかさないでよ!?踊るってまさか…」
「言葉通りだよ!」
かっこつけてみたものの、実質ノープラン。
スマメイの力に頼らない自分にできるのは、本当に踊るしかない。

門にへばりついたゾンビ鮫幼女たちも、こころなしか、ぽかーんと
した顔をしているようだ。

「もう、いい加減にして!こんなことしてる場合じゃ…」
「みなよ!スマメイの奴らもあっけにとられて手だしできない」
「それはね!頭おかしくなったと思ってんじゃない!?」
「それに…オルカちゃんも、ダンスは嫌いじゃないんだろ?」
踊りながら、オルカが赤面した。
もし、オルカが本気で拒絶するなら、千歳の操作を拒むことができる。
だけど、そうはしていないのだから。

オルカの心から、不安と、そして期待を感じる。
本当に誰も傷つけずに、助ける、魔法のようなことができるのかと。

踊る2人にスマイルメイカー・コアが付きまとう。

――幼稚で非現実的な考えはやめろ、力なら私がくれてやる。
お前たちに何ができるのだ。
そんなもの、劣等感から出た、根拠のない現実逃避だ。
安易な妄想に逃げるな、さあ良い子だから…。――

文字列面を怒りに歪ませながら、未練たらしく手を伸ばす。
オルカをリードして、千歳は回避する。

「夢を実現するのは難しいよな…。自分にはできないことだらけだ」
「…?黒髪…?」
オルカが首をかしげる。
業を煮やした、スマイルメイカー・コアから触手が伸びる!
回避するたび、ダンスは速度をあげて激しさを増す!
攻撃は、千歳以外には見えていない!

「努力や思いが報われないことの方が多いんだ…」
両手を握ったまま、オルカと見つめ合う。
足を止めた2人に、スマイルメイカー・コアから触手が伸びる!

━━そうだ、夢は無力だ、理想に逃げるな、現実を知れ、挫折を恐れろ、
死に怯え力を求めろ!他者を出し抜く強さを!私が……━━

悪魔めいた喜悦の笑みを浮かべ、スマイルメイカー・コアから触手が伸びる!

「それでもぉぉぉぉ!」
「くろ…千歳!?」
オルカの両手を握った千歳は、そのままジャイアントスイング!

「ゴッポォ!?」
オルカの鮫尾びれが、スマイルメイカー・コアの顔面を痛烈に打った!

「今なんか蹴った!?って、ええ!?何こいつ!?」
「ふぅ…やっぱり、口より体を動かした方が早いな」
「コポ…ポッコォォォォ」
実体化したスマイルメイカー・コアから触手が伸びる!
千歳は呆けるオルカを引き寄せると強く抱き締めた。
二人の間に輝きが生まれる。
思考が追いつかない、直感に、確信があった。
これは、傷つけ争うための力ではなく…。

「これは……」
「大切な人達の事を想うんだ…絶対に助けたい人達を」
「私の…大切な」
「そう、自分の、私の守って共に歩みたい人の…」
オルカと千歳が、光の中で額をくっつけ合うようにして目を閉じた。
それぞれに思い浮かべる。
仲間の事…ウィーゾルのことを。
ユーニスのことを。

二人の体を光が包み込み、光は衣服の輪郭を形作っていく。
光の繭の中で、少女達は、新たな姿へと生まれ変わっていく!

瞬間、輝きが鮫の形となって弾け飛んだ。

「…あ、え?こういう衣装、昔アニメで見た事あるけど…これは……」
「あれ…なんで?私…小さい……」
鮫を模した帽子にセーラー服を模した服、新たな衣装を纏った千歳と
その周囲をくるくる回るピンクの鮫達。
そして……
妖精の様な小さな姿となったオルカが千歳の肩付近を漂っていた

「コォポポポポオッッ!!」
スマイルメイカー・コアが触手を槍衾のごとく、二人目掛けて突き出す!

「うわ!あぶな…ってぇぇぇ!?」
軽くジャンプしただけで、千歳の体は急上昇!床は遥か下だ!
天井にぶつかりそうになって、空中で蹴りを繰り出す。態勢を変えると、天井に着地した。
うさ耳の時よりもスピードがある、多分十倍ぐらい!

「こらー!置いていくなー!私弱体化してるじゃん!?きゃぁ!?」
ふよふよと漂うオルカに、鋭い触手の突きが襲う!
「オルカちゃん!」
千歳の姿が天井から掻き消える、次の瞬間、触手がまとめて地面に叩きつけられた。
「せやぁ!」
追加の触手を払いのけ、スマイルメイカー・コア本体に蹴り!
「ゴポォォォォッ!!」
吹っ飛ぶ本体、パワーも上がっている!多分十倍ぐらい!

「すごい…力が湧いてくるみたい…」
「コココココココ!」
一瞬の隙をついて、地面の下から触手が突き出し、オルカを狙った!
「あ、しまっ…」
「「キュゥゥゥッ!」」
ピンクの鮫達が2匹、素早く泳いで、触手を噛みちぎる!

「なるほど…私はこっちの担当なのね」
ピンチを救ってくれたピンクの鮫達の頭を撫でるオルカ、みんなちっちゃい。

「そうと分かれば…」
「「シャァァァァッ!!」」
ピンクの鮫達が、牙を剥き、スマイルメイカー・コアを睨む。
尾びれをうち振り、突進!からの…丸くなって体当たりだ!
「ゴポォォォォッ!!」
背びれが、回転のこぎりよろしくスマイルメイカー・コアの体を切り裂く!

「ゴポッ…!ゴポポポッ……」
身体を切り裂かれ、蠢く肉塊となったスマイルメイカー・コアが怨嗟の呻きを上げる
もはや人型を維持する事も出来ないのだろう。
「前回はここから酷い目にあったけど、今回は油断しないよ……」

千歳の中に苦い記憶が蘇る。
スマイルメイカーを倒したと思った直後、鮫色の少女…AIを奪われてしまった
あんな悲しみは繰り返さない。
だから、今回は緊張感を解かない、視線を外さない。
しかし……

「うらギリギリ……」「さめさめさめ……」
スマイルメイカー・コアの周囲を鮫少女達が取り囲んだ。
「どこまで卑怯なのかしら…!」
小さなオルカが宙で手足をバタバタと振り回しながら怒りの声を上げる。
ピンクの鮫達もパタパタとヒレを振り回している。

「かわいい…じゃなくて!ねぇオルカちゃん…あの子達の洗脳解けないか…?」
「かわいい言うな!…え?洗脳を解く?」
「アイツ(スマイルメイカー)が弱っている今なら力に干渉出来る気がする…だから!」
理屈じゃない、確信としてある。
今の自分達なら、鮫少女達を傷つけずに救う事が出来るはず!

「そうね、プログラムコードを解析して分解して…あ!そう言う事なのね!」
「え?え?」
「貴女は既にやってるの!スマイルメイカー・コアに干渉してるの!
 だから、今から目に見える形でプログラムコードを引っ張り出すから!」
「えーっと、わからないけどわかった!」

千歳が頷くのを確認すると、ミニオルカは宙へ舞い上がりクルリと一回転
彼女を囲む様に見慣れぬ文字列と数字が展開された。
「行くわよ!」
オルカの言葉を合図に千歳の周りに七色の輝きが生まれた。

「わかる!やり方がわかる!」
言葉にせずともオルカのイメージが流れ込んでくる。
今の二人は別々の身体でも繋がっている。
だから出来る。だから千歳は踊る!

「1(ワン)!2(ツー!)」
千歳が右の裏拳で赤の光を叩き、続けて左の裏拳で橙の光を叩く。
すると……
「さ…め…?」「シャー……」
「ゴポッ…!?」
ハンマーとソウがバタリと倒れそのまま光となって消えた。

「3(スリー)!4(フォー)!」
今度は右足を高く上げ黄色の光を蹴り、続けて後ろ蹴りで緑の色の光を蹴る
「うにゃ…」「SHあ……」
キャットとブルー、そして何人かの鮫少女達が光となって消えた

「コポポポポッ!」
その光景に怒りを覚えたのか、スマイルメイカーの呻きが轟き
地面を突き破って槍の様な触手が千歳へ伸び迫る!
「させないよ!」
「ガプッ!」「ガプッ!」
オルカの声でピンクの鮫達が触手の槍を噛み千切った!」

「ありがとう!5(ファイブ)!6(シックス)!」
オルカにウインクしながら上でパンッと手を叩き青の光を
下でパンッと手を叩き藍の光を、そして……
「7(セブン)!」
紫の光を回し蹴りすれば、残り全ての鮫幼女達が光となった。

「ゴポーッ!?」
盾としていた鮫幼女達が消え去り
剥き出しとなったスマイルメイカー・コアを七色の輝きが檻となって拘束する
「さぁ!フィニッシュだ!」
輝く光の中で、千歳が舞い、踊る。
「「キュゥゥーッ!」」
ピンクの鮫たちが、千歳の元に泳いでくる。軌跡が星屑を撒いて輝いている。
輝きを纏った鮫達は、千歳の両手に光となり宿った!
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
両手で大きく円を描く、円は輝く飛沫をあげ渦潮となり、見る間に巨大化!
あっという間に、周囲を蒼く輝く海に飲み込んだ。
海中に、輝く星が浮かんでいる。まるで銀河の天の川のようだが
ぐんぐんと、近づいてくるそれは…鮫だ!
星の数ほどの光の鮫達が!360度全天周から、流れ星となってスマイルメイカー・コア
へ降り注ぐ!

「ゴポポッ!?ゴッ…ゴポォォォォォォォ!!」
「千歳!」
「うん!」
鮫流れ星に乗って、オルカが飛んでくると、大きく吠えて巨大な鮫に姿を変える!
「とぉぉぉりゃぁあああ!!」
巨大なオルカ鮫にライドオンした千歳がスマイルメイカー・コアを轢殺!鮫!容赦なし!
断末魔も残すことなく、スマイルメイカー・コアは光の中に、黒い沁みとなって消滅した。

「ごきげんよう」
着地を決めると、千歳は右手を垂直横にし正面を見据えるポーズで呟いた。
「…なにそれ?」
鮫の姿から小さな姿に戻ったオルカとピンクの鮫が首を傾げ問い
千歳が答える
「女の子が必殺技で敵を倒した時はこう言うって、ユーニスが……」

「必殺技?ジャパニメーションって奴?確かカグラが好きだったわね
 まぁいいわ、周囲にスマイルメイカーの気配は…無さそうね」
「でも油断は禁物だ。変身は解かないままで進もう」
敵に止めを刺したのなら変身解除して日常シーンへ…がお約束だが
スマイルメイカーは狡猾だ。まだ欠片が残ってる可能性は否定できない。

「さて、進むはいいけど……
 こんな大きな『扉』どうやって開けるんだ?」
呟きながら千歳は向き直る。
視線の先にあるのはロック機構のある巨大な扉。
『Maxi-Security Containment Facility』
厳重隔離区画。
この先に鮫潜水艦『ホエールシャーク掘戮魎浜するAI…鮫色の少女が居るはず。

「セキュリティコードを入力すれば開くはずよ?」
「出来る…?」
「やってみる……」
小さなオルカが扉の元へ近付いて行く
が、しかし……

「あれ?あれれ?無い…無い…そんなはずは……」
扉と睨めっこをしていたオルカが急にぴゅんぴゅんっ飛び回り始めた
「オルカちゃんどうしたの…?」
「無いの!入力に関する一切が無いの!」
そしてギュンッと音がしそうな勢いで千歳の顔面近くに
「わぁ近い!?入力に関する…無いってどういう事?」

「言葉の意味そのままよ。もっと簡単に言うなら…そう!鍵もノブも無いって事!」
「え?でもそれっぽいのなら色々付いてるぞ?」
言って千歳は扉を見る。
扉には回転しそうな歯車や伸び縮みしそうなシリンダー。
機械的な仕掛けが多数見て取れる

「全部ダミーよ。『外の世界』からハッキングでも仕掛けたら
 多分このダミーにぶつかるのでしょうね……」
「そうなんだ……」
千歳に良くわからないが。大事な物を守るために偽の仕掛けが設置されていると理解した

「んー…どうにかして開かないかな?ほら、さっきみたいにさ?」
鮫幼女達の洗脳を分解して解いたのと同じ事が出来ないか?と言う事だ
「どうかしらね?確かにこの『扉』もコードの集合体ではあるけど」
「集合体って事は壊してはいけない物もあるのか…?ん…?」
オルカとの相談を続けながら、千歳は何の気無しに扉に触れた
すると……

ギッギッ ガコン 
扉についていた機械仕掛けが作動を始めた
歯車が回りシリンダーが伸び縮みする

「わぁ!?」
「貴女!何したの!?」
「わからん!本当にわからない!!」
千歳は振り返りながら両手を胸の前で振る。
コメディ番組である、何気に壁を触ったら倒れてしまった
そんなシーンを体験した様な状態。

「ふーん…あ!」
千歳の反応に首を傾げていた小さなオルカがポンッと手を叩き
納得した表情で頷いた。
「わかったわ!貴女こそが鍵だったのよ!」
「…私が鍵…?」

「AIは貴女を待っていたの。黒髪、貴女けっこうなタラシなのかもね?」
「…え?」
ぽかんっと口を開いた姿勢で千歳が固まった。
確かにAI…鮫少女と踊り、王子様の様に振る舞いはしたが
タラシと言われると困ってしまう。

「ほら扉が開くわよ?迎えに行ってあげなさい。騎士様」
「騎士様って……」
王子様の次は騎士である。
あれこれ考えている間に扉の開錠過程は進行し。
仕掛けの稼働が収まると今度は扉が縦に横に斜めに開き始め。
そして中から現れたのは……
赤い屋根の白い小さな家だった。

「あ?あの中…だよな?」
「でしょうね?多分あれは最終障壁
 かわいい見た目だけど、他よりセキュリティレベルは高いはずよ?」
「どうやって入るんだ…?」
「ノックでもしてみたら」
言って小さなオルカが肩を竦めた。

「…そうなるよな?」
千歳は小さく息を吐くと慎重な足取りで小屋へと近付く
それに遅れ、小さなオルカがふよふよと付いてくる。
なんだか小妖精を連れた騎士だか王子様になった様な気分だが
オルカには黙っておいた。

やがてお菓子の様な扉の前に至るとオルカが口を開いた。
「うん、やはり貴女は迎え入れられたみたいね?
 そうでなかったら、攻性ワクチンが作動していたはずだもの」
「…もしかして、私を盾にした?」
「だって……、今の私は小さいもの?」
千歳は溜め息した。

とりあえず千歳は気を取り直すと扉に向き直り深呼吸をする。
オーディション前より緊張するが、今日は隣にユーニスはいない。
一人で頑張るしかない……
いや、オルカがいる。だからオルカを見頷くと、頷き返されるのを待って
コンコンと扉を二度ノックした。

「…いるんだよね?私だよ、助けに来た」
千歳は飾らぬ言葉でシンプルに呼び掛けた。
「後は反応待ちね?一応、逃走ルートは再検索しておくから上手くやりなさい」
「…ああ、頼む」

そこから無言の時間が流れ、やがてその時は来た
カチャ。
「鍵の音だ」
「ここから本番ね?私は暫く静かにしてるわ」
「わかった」
頷くと千歳は蒼銀色のノブに手をかけ回し引いた。

小屋の中は小さなアクアリウム様で
虹色に輝く小魚達が泳ぎ回り、七色の海藻がゆらゆらと揺れる
「…あ」
「───」
居た。彼女が居た。
部屋の中央に置かれた珊瑚の桃色をしたベッド
そこに彼女…鮫色の少女は腰かけていた

「お姫様の登場ね」
「…静かにしてるんじゃなかったのか?」
「これは失礼」
「まったく……あ?これは君にじゃなくてね…?」

「──♪」
腰かけたまま少女が笑った。小さな小さな鈴の様な微笑み。
あの時と変わらぬ表情で彼女はそこにある。
「…ごめん、あの時は助けてもらって……」
真っ先に出たのは謝罪の言葉、彼女の顔に悔しさを思い出す。
一瞬の隙を突かれ、スマイルメイカーの罠に嵌ってしまった悔しさ。
その光景を思い出せば千歳の目に涙が溢れる。

「───……」
少女の指が伸び、千歳の目から涙を拭い微笑む。
「…うん?ありがとう…大丈夫、今度こそ君を助けるよ!」

「はいはい、お熱いやりとりはいいから脱出しましょう」
二人の横に小さなオルカが飛び出て来た。
「…!?お熱いって。…ああ、この子は…え?知ってる?」
「当然でしょう?彼女がホエールシャーク靴料瓦討魎浜しているのだから」
「なるほど。じゃあ…私と一緒に……」
言って千歳は少女に手を差し出した。その直後!

「很好!」

二人の背後で声が響く、聞き覚えのある声。
「ウォン!?」
聞えたのは忘れ様も無い宿敵の声。
言ってやりたい事は山とあり、叩きのめしてもやりたい。
しかし、二人が言葉と行動に移すよりも先にそれは起きた。

「あぐっ!?」
「にょわ〜〜〜?」
圧。殴る様な圧と共に千歳は壁に弾き飛ばされ
小さなオルカはクルクルと空中を舞う。
全て声を聞いてから一瞬の間に起きた出来事

「な、何が起きた…?」
「今の力は何?うう、目が回るわ……」
頭を振るいながら起き上がるも身体のあちこちが痛い
電子の虚像であるはずの身体が悲鳴を上げている。

「素晴らしい、実に素晴らしい」
二人の間をコツコツと靴音が通り過ぎて行く
倒れている二人を気にかける事も無く、ただ真っすぐに一直線に。
靴音の向かう先はただ一つ。

「ッ!」
鮫の少女がとっさに大岩を動かして、行く手を閉ざそうとする。アクセスを拒む
障壁の視覚化されたものだ!
ガッガガッガ…!見えない何かが、大岩が閉ざされるのをさえぎった。
それでも無理やりに閉じようとする大岩に圧されて徐々に姿を現す…スマイルメイカー!
千歳たちを監視していた亡霊タイプである!!千歳たちに一撃を加えたのもこいつらだ。

「コォォ…ォォォ…ォ」
風の唸りめいた不気味な声をあげて、スマイルメイカー・亡霊は大岩を破壊した。
かなりのパワーだ、非力なユーレイの姿は欺瞞だったのだ!狡猾!

「ご苦労だった」
「ンぅぅ…!!」
ウォンのサイバネアームが、鮫少女を乱暴に掴み上げた!

「この…!その子から、手を離せぇ!」
千歳が拳を握りウォンに殴りかかった、ウォンは微動だにせず、拳は顔面に当たる。
「ンフフ…」
「え…」
変身した千歳の拳をうけて、ウォンは微動だせず、薄ら笑いを浮かべていた。

ここは電脳空間で、物理体格差などは関係ない。
変身した千歳のパワーは十倍にもなっている、なのに…。

「せやぁ!」
鋭い回し蹴りが、ノーガードの胴を打つ、ウォンは微動だにせず!
パンッ!ウォンが軽く手を払うと、千歳が吹き飛ばされた!
「きゃぁ!?」
「千歳!大丈夫?」
「平気…!」
「理解できないという顔をしているな。…ッハッハッハ…
 クゥーアッハッハッハ!ハァァッハッハッハッハッハ!ヘヘヘッ!!」
掌で顔を覆い、ウォンは大爆笑。

「何がおかしいの…!」
オルカがウォンを睨む。
「ハハッ…笑いたくもなる。こうも簡単に、望んでいた最高の結果になればな!
 クククッ…小娘、貴様はその少女趣味な恰好を、パワーアップだと思っているようだが…
 …ァァハ…弱体化だ!」
「はぁ!?」
「それって…まさか!」
「まさかさ!小娘ぇ!お前は、自分の手で、力の源スマイルメイカーを破壊したのだ!
 自ら力を手放したのだ!愚か者め!…いや、ドーモ・アリガトウと言っておこう」
ウォンの背後に、スマイルメイカー・亡霊が集まり、一つの体に吸収され、枯れ木のような
体が、膨れ上がっていく!

「コォォォォ……」
スマイルメイカーの面の文字列が、アステカの呪われた古代遺跡を飾るレリーフのごとく
禍々しく神聖味を帯びた文様へ変化した。
いや、変貌は、体の方が著しい!亡霊めいていたその体は、パンパンにパンプアップされ
ミノタウロス…いや!熊!角も生えている!爪も生えている!

「貴様の中のスマイルメイカーは邪魔だった、いずれ貴様ごと始末するつもりだったが…。
 手間が省けた!必要なものも手に入れた!」
ウォンが乱暴に鮫少女を抱き寄せる。
「ンンー!!」
抵抗してもがくが、サイバネアームがめきめきと膨れ上がり、離さない。
「’’私の’’スマイルメイカーが最強になった!
 そうだな…名づけるなら、セカンダリ…いや…」
「スマイルメイカー・饕餮(とうてつ)!」
「コォォォォォォォォォォッッッ!!」
スマイルメイカー・饕餮が雄叫びをあげる!
ウォンは、スマイルメイカーの歪な文字列面を自ら被った!

「ハハハ…」
鮫少女の体がスマイルメイカー・饕餮の手の中に握られる。
「!!」
華奢な体は、網に取られた魚のように身動きがとれない!鮫少女の肌に黒い菌糸の
根が這い、侵食していく…。
「ヤメロォ!」
「很好!很好ォォ!!ハァーハ哈ハハhaハ!!」
「コォォォォォォォォォォッッッ!!」
千歳の叫びが、ウォンの哄笑とスマイルメイカー・饕餮の雄叫びにかき消される。




ー基底現実、コンクリートの牢獄…

出入口がどこかも分からない、コンクリートで覆われた部屋の中央で、ウォンは
椅子に拘束されている。両腕のサイバネアームも外されて接続部が剥き出しだ。

<<……君の失態で、わが社が被った損失は計り知れない>>
空中にモニター投影されているのは、威力財閥の重役達である。
壮年の男が4人、中年の女が1人。リモート会議だ。
<<情報操作、隠ぺい工作、設備破壊に伴う汚染への対応…
  もはや、あなた1人程度の命に替えられる額ではありませんよ>>
骨ばった中年の女が、言う。
ウォンは、うなだれたまま動かない。
<<よって責任追及の手順を省き、君には、一命を賭して損失の補填をしてもらう>>
チビのメガネの中年男が、死んだ目で睨む。
ウォンは、うなだれたまま動かない。

コンクリート壁の一部が音もなく開き、手術衣を来た巨漢が二人、入ってきた。
その頭部は、機械が埋め込まれ。フランケンシュタインめいて切り刻まれている。

<<最後に…>>
中央に投影された、灰色髪の男が言いかけ…。
ウォンが顔を上げた。
口元だけが歪に釣り上がり、人の相貌(かお)とは思えない歪な笑みを、満面に浮かべる。

全員、言葉を失い凍り付いた。次の瞬間。
ゴトンッ。物の倒れる音がマイク越しに聞こえる。
重役の1人が、額の穴から血を流して机につっぷしていた。絶命している。

「な、なんだこれは!?」
死んだ目の中年重役が、豪邸のワークスペースで椅子を蹴って立ち上がった。
背後の、高い窓の上から、スルスルと人影が降りてくる。
ガシャーン!窓ガラスが割られると同時に、中年重役の首は床に転がった。

大通りの交差点で、高級リムジンが横からの追突で止まった、そこへ続けざまに
何台もの車が突撃し、爆発炎上した。
マニキュアを塗った腕がガソリンと血だまりの中に落ちる。

重役たちを映したモニターは、次々とオフラインになって消えていく。

<<貴様…貴様!何をした!!>>
灰色髪の男が叫んだ。ウォンは動じず、二の腕から先の無い腕を広げた。
腕をとって、フランケンめいた巨漢が立ち上がらせ、傅いた。
<<きさっ……!>>
「スマイルメイカーは、完全に私のモノとなった…。イヤ…フッフッ…
ハハハ!我しガ…su・マイルMA可…そのもの、というわ苛だ」
<<…ッ!>>
歪な人外の相貌を向けられ、威力財閥会長その人は、額に汗を浮かべる。
そんな彼をウォンはあざ笑う。

「無駄だ。お前の命令は、もはや誰も聞かない。
 Naぜなら…!ワたし餓!スマイルメイカー・饕餮―なのダから!」
会長が画面外で操作していたタブレット画面を、コミカルなスマメイアイコンが覆い尽す。
ボンッ!破裂した!

<<わが社を喰いつくそうというのか…化物め!>>
「くっく…世界48か国に支社を持ち、関連企業、子会社の社員数30万、資産額は1国の
 国家予算に匹敵するという大財閥をですか?」
「……はぁぁぁぁぁ」
ウォンは深く溜息をついた。
「つまらない…」
<<何!?>>
「つまらない、つMaらない、Tuまらナイ!!!ちっぽけに、過ぎル!!!!!!」
フランケン巨漢が自らの腕を引きちぎり、ウォンの両腕につけさせる。
巨漢たちの腕の人工血管から、赤黒い血がコンクリート床に流れ落ちた。

「世界に、人間が何人いると思っている、7,808,913,556人だぞ?’’今この瞬間にだ''」
この詳細な数値、でたらめではない。スマイルメイカーの力をもってすれば、地球上の
人口を計算やデータ照合ではなく、実際に数えるように把握することなど容易い!

「その全てが、私の手足!私の脳!私の物!さらにだ!」
ウォンに接続した腕が、ボコボコと波打つ、サイバネ機械が生き物のように収縮し、蠢く!
映画では客に見飽きたと言われるような陳腐な演出である、しかし…なんということか!
現実に、サイボーグと肉体が蠢いて融合し、ウォンの腕を再生したのだ!生身のだ!

「…フゥゥ…はああぁ…。鮫共の技術も完全に手に入れた。貴様らが数十年に渡って
 研究し続けて、ついに得られなかった技術だ」
恐るべき事実、ウォン達の使うサイバネ技術も、鮫幼女由来のテクノロジーだったのだ!
サイバネ改造を施したウォンの体は、鮫幼女テック由来のスマイルメイカーと親和性が
高かったのだ!悪魔めいた偶然!絶望的な悲劇!

「お前など、もう要らん」
モニターを指さし、ウォンが言った。
机を叩き割り叫ぶ会長の姿を映して、モニターはオフラインになった。

ドッ!ドサッ!フランケン巨漢が、失血多量で倒れて絶命した。
ウォンは血の海の上を歩くように、出口へ向かう。

ー同時刻 サンアッシュクロス近海

夕暮れの海に、カモメが群れて飛んでいる。
静かに揺れていた海の一角が、突然黒ずんだ。そして、大きく持ち上げられるように
膨らんで…山のように高くなった瞬間に、海が破れて飛沫が散った。

海面に現れたのは、波間を切り裂く、背びれ型艦橋、四角いシルエット、人の潜水艦
にはまったく似ていない、濃い鮫灰色の金属ボディ…その全長は300mを越える!

カモメたちがギャアギャアと騒ぎたてる下を、陽光の元に姿を晒した鮫潜水艦が巨大な
航跡を描いて直進する。
進路の先にあるのは…サンアッシュクロス!

◆6 Edit

ポート・マフオネス、コンテナヤード。
ガントリークレーンの操縦室は、最高の展望台だ。
観光客が高い金を払う、サンアッシュクロスの海と夕日を、タダで独り占めにできる。
窓には、セクシーな黒人バニーガールの写真が貼ってある。
まぁ仕事中は、足元の窓ばかり見てるし、写真は彼女ではなく、彼が熱をあげているカジノ
のバニーなのだが。

クレーンオペレーターのフランクは、地上にいる同僚が玉掛けするのを見守っていた。
船の汽笛に、顔を上げる。目の前には輝く夕日と、電灯の灯り始めた街並み…。
しばし役得に浸っていると…異変に気付いた。
大型コンテナの汽笛が立て続けに響く、沖合から波を蹴立て巨大な何かが迫ってくる。

「なんだぁ、ありゃぁ…?巨大シャーク?」
内線コール、スイッチを入れる。ノイズ混じりの同僚の声。
<<フランク!緊急事態だ!はやく…>>
「鮫のガッジラのことか?航路を無視して違反切符が怖くねぇらしいや」
<<冗談を言ってる場合じゃない!…じゃだ…>>
「ワッツ?ノイズがひどい」
<<ニンジャだ!うわーっ!>>
通話はノイズでかき消された…。

冗談はどっちだと言いたくなったが、足元の窓をみると、地上は騒然としている。
沖合から迫る巨大な物体は、速度を落とすことなく港に迫る!
フランクは反射的にスマホを取り出してカメラアプリをタップ、現代人の性である。

津波のような波を立てて巨大鮫は岸壁に衝突!衝撃で、クレーンが揺れた。
「オーマイガッ…モンスターシャーク…オーマイガッ……」
波にさらわれて、人影が海へ引きずり込まれる。
ビルのように積まれていた40ftコンテナが崩れた。

港に衝突した巨大な潜水艦にも見える鮫は、無傷だ。
巨大な口を開き、停泊していた船に噛みついた!まるで巨大鮫が小魚を呑むようだ。
バギンッバガンッ!破砕音が操縦室内にまで響いてくる。

「なんてこった、ヤバイぞこれはヤバイ…」
言いながら彼はツイッターを立ち上げて動画を投稿しようとしている。現代人の性である。
「ワッツ!?なんでつながらないんだ!wifi?くっそ!ネットもだめじゃねーか!」
ガンッ!クレーンのアームに何かが衝突した音!

クレーンの鉄骨アームに着地したのは、ダイバースーツめいた格好のあやしい人影だ。
足に巨大な猛禽類の爪のようなサイバネを装着している。
赤いゴーグルをつけた顔が、クレーンの操縦室内を覗く。
中には誰も居ない。ダイバースーツの怪人はコウモリのような両腕を広げて飛び去った。

「(なんだあれ…絶対に天使なんかじゃねぇ、ニンジャだ畜生!ニンジャナンデ!?)」
フランクは、操縦席の後ろに隠れて、口を押えていた。
震える手でスマホを操作する。
「…Shit!」
オフラインだ。

………
……


電脳空間での戦いは続いている。

「ハハハハ!素晴らしい…!あらゆるものが全て私の知覚の中にある!世界が私の手
の中に……否!世界が!私の手足だ!ハハハハ!!」
「コォォォォォォォォォッ!!!」
ウォンと、彼に憑りついたスマイルメイカー・饕餮の歓喜が響き渡る。

「このっ…離せ!!」
「無駄だぁ!!」
「きゃぁっ!!」
スマイルメイカー・饕餮の丸太めいた腕が千歳の華奢な体を殴り飛ばした。
後方で受け止めようとした、小さいオルカとピンクの鮫達もろとも壁際まで吹っ飛ぶ!
巨大な格納庫が振動しはじめた、そして、周囲の壁が、柱が鳴動し、組み替えられていく。

「…何をするつもりなの!」
異変を感じて、オルカが叫ぶ。
「フヘッハハハ…」
「コォォォォ……!」
不気味なスマイルメイカー面の下で笑い、ウォンが片手を上げる。
背後に投影される、ホエールシャーク靴了僉浮上し港に停泊していた小型貨物船を
食らうと、背面に奇妙な構造物を構築しはじめた。歪なジグラート…狂気の神殿
あるいは冒涜の王の玉座…!
構造物の突起に、ゴミのように引っかかるのは、貨物船の乗組員だったモノの一部だ。
ウォンは、雇ったPMCや、部下のニンジャごと貨物船を食らったのだ!その顔に犠牲を
顧みる気配などはない、新世界の神への供物だとでも言うように笑っている!

「あなた…!彼女を…私達まで道具にしようっていうの…!……千歳!」
「…わかった!」
オルカと千歳が見つめ合って頷き合う、今二人は一心同体、思いはすぐに伝わる。

二人の体が光に包まれて、魔法少女風の衣装が消える。変身解除、からの一瞬で再変身!
黒いフードに、巨大鮫銃を抱えた’’オルカ千歳’’だ!

バシィ!レーザーが正確にスマイルメイカー・饕餮の顔面を撃つ!
「コォォオ!?」
「ぐっ!小癪な…!」
強烈な閃光と熱で、スマイルメイカー・饕餮が一瞬ひるんだ、しかしダメージは浅い。
オルカ千歳の破壊力をもってしても、完全体になりつつあるスマイルメイカーは手ごわい。
「シャァッ!!」
間髪入れずに銃床の鮫牙を開いて、突撃!丸太めいた腕の唯一細い部位…手首に正確に噛み
ついた!すこしでもズレれば鮫少女を傷つけていたところだが、オルカの制御は正確だ!

「シィ…!」
ウォンの鋭い蹴りが襲う。
「あっぐ…!ぬぁああああ!!」
ガードすることなく、まともに蹴りを受ける、吹き飛ばされそうになるのを巨大鮫銃にし
がみついて踏みとどまり、銃のレバーを引き下ろした。
バッヅヅン!!
「コォォォォ!?」
スマイルメイカー・饕餮の手首を切断!鮫少女の体が宙に投げ出された。

「───!」
「え?」
鮫少女は一瞬だけオルカ千歳を見ると口を開いた。
音の無い声。しかし、オルカ千歳には聞えた、彼女の声が確かに聞こえた。
そして、鮫少女は小さく微笑むと七色の粒子となり…消えた。

「なっ!?小娘共ガッ!!コォォォォォッ!!」
後にはスマイルメイカー・饕餮の怨嗟の雄叫びだけが残った。

………
……


同時刻、ホエールシャーク憩眤萋麋番連絡通路。

電脳世界で千歳とオルカがウォンと対峙していた頃。
艦内には異様な光景が広がっていた。
各部屋、通路、そこかしこに倒れた少女達の姿があった。

まるで毒ガスか細菌兵器でも使われたかの様な惨状
しかし……

「うにゃ〜…ネズミは食べないにゃ〜……」
倒れている少女の一人が寝言をした
しかも、手を猫の様にしながら宙を掻いている。
そして、寄り添う様に隣にもう一人。

「うー…食べないでー……」
こちらは鼠の様な大きなお団子髪の少女。
何か悪い夢でも見ているのか、うなされている。

少女達は生きている!
そう、彼女達は眠っているだけ。
彼女達はスマイルメイカーに操られていた少女…鮫少女。
千歳とオルカの活躍により洗脳から解放され、今は夢の世界をお散歩中。
悪夢から解放されて、それぞれに愉快な夢を見ているのだろう。

しかし、そんなおやすみの時間は不意に終わりを告げた。

ガコン。通路に異音が響いた。機械的な音。
鮫潜水艦の中は多くの音で満ちているが
この音は何かが違う。
もし、鮫幼女達の誰か一人でも起きていたのなら
異変が起こっている事に気付いたかもしれない。

ガコンガコン。誰も目覚めぬまま機械音は続く。
ウィーン。音が変わった、今度は何かが回転する音だ。
壁のボルトが回転している。
二つのボルトが回転し床へと落ちた。
そして……
シュッ。排気音と共に壁の一部が開き
何かが飛び出した!

「サカナ〜……うにゃあ!?」
飛び出した何かは近くで寝転がっていた猫耳髪の少女の頭に見事にヒット!
「な、何事にゃ!?何事にゃ!?」
少女は手足をバタつかせながら起き上がると、周囲をキョロキョロ。

「うにゃー!?みんな寝てるにゃ!?」
起き上がって直ぐに猫耳髪の少女は周囲の異常に気付いた。
誰が見ても異常があったとわかる状態。
即に対処すべき異常があったとわかる状態なのだが……

「にゃんで?にゃんで?…ふにゅ?ボールにゃー!」
猫耳髪少女の興味はコロコロと転がって行く『何か』へ
壁から飛び出した何か…『玉(ボール)』へと移ってしまった。
「うにゃー!キャットの頭を叩いたのはアイツにゃ!」
玉を追いかけ走り出す猫耳髪少女…キャット。

「OUCH!」
キャットが走り出した直後
隣で眠っていた鼠耳髪の少女を蹴飛ばして行った
「ブルーごめんにゃ!キャットは忙しいのにゃ!」
「な〜に〜?イタイ……」
訳が分からないままキャットの背を見送るブルー

キャットの追跡は続く。
「まつにゃ!」
待てと言われても玉は止まらない。
コロコロ、コロコロと通路を転がって行く。

「ぴぎゃ!?」
「ぐえ!?」
誰かを蹴っ飛ばしたのか、蛙を踏んだ様な声が二つ聞えた
しかし、玉を追う事に夢中なキャットは気にせず駆けて行く。
さらに言うなら、艦内の様子が知る物と大きく変わっているのだが……
玉に夢中な彼女の目には全く入っていない様だ。

ポイン。
「へぅ!?」
寝転がる鮫少女の一人に玉が当たった。
しかし、玉は止まらない
今度はポンポンと跳ねながら通路を進んで行く

「ニャニャニャニャニャーッ!」
鮫のくせに猫みたいな声をあげて、キャットが駆けていく。
「ぎにゃ!」
「シャー!?」
「ふかっ!」
キャットと転がる玉に踏んづけられて、雑魚寝していた鮫幼女達が目を覚ます。

「取ったにゃー!」
跳躍したキャットは両手に玉を掴んだ。
「んにゃにゃ?」
手の中の玉を見ると、奇妙に変形した文字が刻まれていた。スマイルメイカーの
面にうかぶ文字列に少し似ているが。あれほど気色悪くはない。
「さめぇ?※超重要?食べるナ??」
ガゴンッ!ゴンゴンゴン…重たい扉が開かれて、怪しいスモークが流れ込む。
立っていたのは…人の形が歪むほどにサイボーグ改造を施された…
ニンジャ達だ!メンポ型マスクの目が怪しく光る!

「な、なんにゃお前らー!フーッ!」
「…確保…鮫、玉をヲ…」
ニンジャ達が手を伸ばす、キャットは本能的に危機を感じ取る、玉を抱えるとニンジャ達
の足元をすり抜けて駆け出した!ニンジャ達は身を低くして後を追う!

「なんなんにゃー!何が起こってるんにゃー!」
困惑しながらキャットは走った!
「HOOOOOO!玉!確保!確保!」
「目標物発見!シカシ狭いナ……」
消防士(ファイアファイター)風の装束を纏うニンジャが周囲をグルリと見渡し言う
元々潜水艦の通路は狭い
そこへ異形化の影響が加わり艦内は入り乱れた状態になっている。

「俺ガ…行く!下忍共来い!!」
「ヤアアアア!」
タタタタタッ。ニンジャの一人が無機質なメンポを付けた手下を連れ走り出す。
ニンジャ達の視線の先にあるのは猫耳髪の鮫少女。
他の鮫幼女達には目もくれず
キャットのみを目標(ターゲット)とし一直線に追いかける。
「なぜにゃ!?キャットだけがなぜ追われるのにゃぁぁぁ!」
叫びながらもひたすら逃げる。
理由は勿論『玉』だが、キャットはそれを知らない。

「マテッ!!」
ボボッ!
声と共に炎の玉がキャットの横を通り抜けて行く。
「にゃあああ!?アイツら火を吐くカイジューだったのにゃー!」
ファイアファイターニンジャ『インフェルノ=サン』の手甲
『炎龍拳(ファイア・ナパーム)』から放たれた炎の弾丸だ!

「キャット死ぬにゃ!誰か助けてにゃあああ!」
半泣きになりながら悲鳴と嘆きの声を上げるキャット。
そこへ頼りになる味方が登場した!

「キャット!何があった!!」
「コレはナニゴトだ!?」
脇の通路から人影が二つ飛び出してきた!
お団子ヘアの鮫幼女と前髪一房を長く垂らした鮫幼女。
「マーにゃん!ソーにゃん!」
ハンマーとソウだ!。

「挨拶は後だ!これは何事だ?そもそもなんで私達は…確かティティが……」
「ソウカ… 私タチハ洗脳サレタ…ノカ?…オウォ!?」
並走しながら走る三人の間を再び火の玉が通り抜けて行く。
「ハイヤァァァァァァッ!!」
炎の弾丸を放ちながら雄叫びを上げるインフェルノ=サン!

「また火を吐いたにゃ!カイジューにゃ!」
「カイジュウ?いや、あのメンポは…ニンジャだ!前にコミックで見た!」
「ニンジャ?ナンデ!?ドコカラハイッテキタ!」
「わかんないにゃ!」
わからないまま炎をかわしながら走り続ける三人。
そこへ頼りになる声が響く!

----- ここから
『オマエら聞えるか!俺だ!ニンジャは敵だ!玉を守れ!
 取られたら俺達の艦(家)はおしまいだ!』

「ウィウィの声にゃ!」
「無事だったか…玉を守れ?」
艦内の各所から歓声の声が聞える。
 
『それとオルカは家族だ!黒髪と金髪は味方だ!以上!』

「フフッ、オルカハ、ムカシカラカゾクサ!シカシ…タマ?」
「寝ている間に何かあったか…玉ってなんだ?」
顔を見合わせるハンマーとソウ。
そこへ……
「これの事かにゃ?」
言ってキャットは玉を二人に見せた。
----- ここまで要編集

(※一部重複分)

<<おい!オマエら!聞こえるか!?>>
艦内放送が響き渡る。
「ウィウィの声にゃ!」
「無事ダッタんだナ…」
安堵したようにソウは、ハンマーと頷き合った。

<<聞こえたら誰か返事しろ!>>
ハウリングを伴った叫び。
その声を聞いた鮫幼女たちは、緊急事態だと認識した。

「うにゃにゃ…なんかヤバいにゃ…」
「イヤーッ!!」
隙を見せたキャットへ目掛けて、インフェルノの拳が迫る!
「SHAAAARKッ!」
「グワッ!?」
死角からのインターセプト!鮫歯ナイフの鋭い一撃を、インフェルノはサイバネ腕で
からくも防御した!迎撃者はすばやく着地、キャットと敵の間で構えを取る。
「ブルー!わっわっ…!?」
「ブルー!ここはマかせたゾ!」
「キャットは私達と!…ブリッジこっちなの?寝てる間に悪趣味な模様替えされてるし!」
ハンマーとソウがキャットを両脇から抱きかかえて、走り出した!

“――鮫潜水艇内”

「誰か返事しろ!聞こえねぇのか!クソッ!」
操縦席のウィーゾルがコンソールを拳で叩いた。
「オルカぁてめぇ!ダメじゃねぇか!」
「おちついてウィウィ!ステイ!ウィウィステイ!」
オルカに掴みかかるウィーゾルを、ユーニスが抱きとめる。

「もう一度呼びかけよう。あの子は、電脳空間から脱出して現実側に逃げたんだよね?」
千歳の言葉に、オルカは頷いた。
鮫潜水艦のAIは、ウォンとスマイルメイカー・饕餮の隙をついて、物理ログアウトしたのだ。
千歳とオルカもログアウトして、彼女を追っている。
AIがウォンの手に落ちるのは防げたが、ホーエルシャーク靴楼柄亜敵の勢力下だ一刻も早く助け出さねばならない。
…その時だ!

<<艦長!ソウだ!クルーの洗脳は解かれた!みんな無事だ!>>
ノイズ混じりの声!ユーニスを振り解いてウィーゾルはマイクに飛びついた。
「ああ…!よかった……」
噛みしめるように呟いて、即座にいつもの強い調子で言った。
「鮫の流儀だ!お前とハンマーで指揮を取れ!’’鮫玉’’を絶対に敵に渡すな!
俺もすぐに行く!」
<<アイ・サー!>>

「やったね、ウィウィ」
ユーニスは、ウィーゾルの肩に手を置いて、なんかにやにやしてる。
「…なんだ」
「千歳とオルカちゃんが頑張ってくれたおかげだよ、お礼いわなきゃ」
オルカは、別に…とでも言う風にちょっとそっぽを向く。ユーニスは千歳に抱き着
いて、よーしよし、と撫でまわして、犬か私は!等とやっている。

「……よくやった」
操縦席に座りながら、背中越しにウィーゾルが呟くと
「へーい、そんだけかい?」
ユーニスは、椅子ごとぐるっと180度回転させる!
「お、おい…」
思わず千歳の方がビビる。ウィーゾルは、鮫幼女の中でも狂暴で恐ろしい奴なのだ。
しかし、なにやらもじもじして…。
「…………お前のおかげだ…助かった…オルカ」
「え…う、うん…」
オルカが戸惑ったように頷く。ウィーゾルは、ふんっと背をむけてしまう。

「へへ…」
「お前…いつの間に、仲良くなったんだ…」
満足気に笑うユーニスに、千歳が小声で囁く。
「まぁちょっとね」
「…?なんか酒臭くないか?」
「ちょっとね、へへへ」
ポケットから’’痛み止め’’を出すと、ユーニスは飲み干した。

“――ホエールシャーク掘Ε屮螢奪検

<<鮫の流儀だ!お前とハンマーで、指揮を取れ!’’鮫玉’’を絶対に敵に渡すな!
俺もすぐに行く!>>
「アイ・サー!」
ソウは、通信に力強く答えた。

「ウィウィも無事なんだ…!」
ハンマーは、片方解けたお団子ヘアを結い直している。
「アア、ソレに洗脳ガ溶けたってことハ、きっとオルカも一緒だ」
性格はともかく、オルカの頭脳は誰よりも優秀だ。そして最強のウィウィもいる。
「二人揃えバ、無敵ダ」
髪を結うのに手間取っているハンマーを、ソウが手伝ってやった。
「うん…じゃあ、私たちの使命は二人が戻るまで、’’彼女’’を守る!」
「アア!」
「んにゃ?」
仰向けになって、鮫玉をラッコみたいにお腹に抱えていたキャットが振り向く。

「ウワーッ!」
「にゃー!?ブルー!?」
水密隔壁を吹き飛ばし!凄まじい火炎放射がブリッジ内に吹き込んだ!
ただの火炎放射ではない、その風圧はジェット!

「うう…アイツ強い…」
「ブルー!」
表面が焦げたブルーを、キャットが助け起こす。
「ウソだろ…相手はニンゲンだゾ…」
ソウは驚きを隠せない。鮫幼女は、鮫だから人間より遥かに強いのだ。

「ハァーッ!」
両腕を前に突き出すインフェルノ、炎龍拳(ファイア・ナパーム)から炎の弾丸を射出!

「また!?こいつ自滅する気なの…!?」
ハンマーは、分厚い水密扉を持ち上げると、盾となって仲間を庇う。

狭い潜水艦内で火を使うデメリットは、枚挙に暇がない。
しかし!インフェルノは、そんなウカツとはまったく正反対の性格である!

「私が、貴様らごときにKAMIKAZEだと?グワッハッハッ!」
笑うインフェルノのメンポの裏側では、大気組成、気流、混合気割合、周囲形状…
あらゆるデータが、リアルタイムで、精細に表示されている。
彼のファイアファイター風装束は、その見た目と裏腹に、周囲に可燃性ガスの
混合気を散布し、気流を操作し、炎を自在にするフレイムスロワースーツなのだ!

「行け!」
下忍達に命じると、這うような姿勢で、不気味な量産型サイバネニンジャ・下忍達が、にじ
り寄ってきた!

「ウガーッ!」
水密扉でニンジャをぶっ叩くハンマー!重さ数十kgの分厚い鉄扉を、納屋の戸のように
軽々と振り回す。
人間より遥かに強靭な鮫幼女の中でも、ハンマーは腕力ならウィーゾルにも匹敵する!

ゴワンッ!!鈍い音をたてて、下忍が何人かまとめて吹っ飛ぶ、壁に叩きつけられ、手足が
あらぬ方向に曲がっているが…なんということだろうか!折れた手足をマリオネットめいて
不気味に動かし、とびかかって来た!
「ヒッ!?何こいつら!」
「GAAAA!」
「SHARK!さっきもそうだった!こいつら、倒しても起き上がってくる!」
ソウとブルーが、迎撃するも、ブリッジに通じる前後の通路に、下忍共が殺到している。
「…マさか…こいつらモ、洗脳されてル…!?」

「グワッハッハッハ!こやつらは、自我を持たぬ操り人形よ!」
インフェルノの高笑い。
「ウォン様は、世界を統べる力を手に入れられた!お仕えするのは、忠誠心と能力に秀でた
私のような者のみ!下等な生き物共は道具となるのだ!グワッハッハッハ!」
笑うインフェルノのメンポ内に、スマイルメイカーの影が浮かぶ。

「こいつら…!囲まれるのは不味い…UGAAAAAAAAAAAッ!!」
ハンマーは水密扉を、横の壁に叩きつけた!壁の一部が崩壊して、下へ降りるダクトが口を
開ける。ソウ、ブルー、キャットは、すぐさまダクトへ身を滑り込ませた!

「GUAAA…!熱ッ!!ナんだ異様に暑いゾ!?」
「にゃぁっ!アツツツツ!!」
「Shaaaaaaaaaaark!?」
ブリッジの下は、広い格納庫だ。着地した4人を待っていたのは、凄まじい熱気だった。

「かかったな莫迦め!貴様らが高温に弱いことは先刻承知よ、故にこの空間は’’予熱’’して
おいたのだ!」
下忍を引き連れ、着地したインフェルノが勝ち誇ったように言う。
「そして、貴様らは、広い場所に出ればこの程度の不利はどうということもないと思った
な?ウカツにもほどがある!」
親切にも手の内を明かすようなインフェルノだが、その実これも策のうちであった、下忍の
1人が忍び寄っていたのだ!

「カク…ホ…タタタタ」
下忍が鉤爪のついた腕を振り上げる、そこへ…
「ハァーッ!」
インフェルノの腕から、凄まじい火炎放射!その噴射力はジェットに匹敵する!
「タタ…ホ…カカククク…ググググワワッ……!」
サイバネニンジャは爆発四散!
「きゃぁ!?」
「UGYA!」
「ぎにゃー!」
「にゃぁ!?
爆発に鮫幼女達は吹き飛ばされる!

「広さのアドバンテージは、私の方が遥かに上だ。加えてこの高温!大気組成!混合気散布
効率!全てが最高燃焼効率で私の勝利を示している!」
ただ力を誇示するためだけに、仲間を爆弾につかったのだ、なんたる非道!

「GAAAAAA!」
「UGAAAAAAAAAAAA!」
ハンマーとソウは巨大な鮫の背びれと尾びれを出現させた!半鮫の姿は強いのが一目瞭然!
しかし、周囲はぐるりと囲まれている…二人は、背にキャットとブルーを庇い包囲と対峙す
るが、不利は一目瞭然である!

「オハハハッ!イヤァアアアッハー!タリホォーー!!」
その時だ、包囲の向こう側から、鮫幼女の雄叫びがあがる!
「ティティ!?」
「アイつも無事だったカ!」
ハンマーとソウの振り向いた先には、エプロン姿の鮫幼女!右手にマシンガン左手にバルカ
ン、横にあった清掃ワゴンのペダルを踏むと、中からミサイルランチャーが出現!

「いいにゃ!やっちまえにゃティティー!」
「フゥーッハッハー…ギョラーイ…」
ティティが舌なめずり。
「させぬわー!」
インフェルノの腕からジェット火炎放射!ティティの銃が赤熱する!
「オァッ!?ホァッハッフーッフーッ!……ア゛ア゛ーーーーー!?」
マシンガンとバルカンは蝋細工のように床で溶けている…。両手をついて溶けた武器を前に
信じられないといった顔をするティティ…そっと震える手で触ろうとして…。
「アッヅ!」
マシンガンとバルカンは完全に溶け落ちた…。

「グワッハッハ!」
インフェルノの勝ち誇ったような高笑い!
「アア…ア…」
「ティティー!しっかリシロー!」
「だめ…こっちも暑くてちからがはいらない…」
下忍たちの猛攻にさらされるハンマーとソウ
「ハァーッ!」
インフェルノの腕からジェット火炎放射!
「きゃぁ!」
「ウグ…ッ!」
「ハンマー!ソウ!」
「アヅヅヅ!玉は渡さないにゃー!」
ハンマー、ソウは、尾びれを振るい、太く強化された腕で、ニンジャ達と渡り合うが、地上
ではその力の全ては発揮できない、加えて高温、さらにジェット火炎放射が容赦なく襲う。
ヒレは焼け焦げ、鱗が剥がれて血の玉がにじむ。

「アア…」
溶け落ちたマシンガンとバルカンを前に、ティティは両手をつく。走馬灯めいてリコールさ
れる記憶…。

難破船で、嵐の夜にマシンガンとバルカンに出会うティティ。
オルカにめちゃめちゃ嫌な顔されながら、工房で修理に励んだ日々。
試射が上手く行かず喧嘩したこともあった(銃と)。
狭い潜水艦のベッドを分かち合い、ひんやりとしたボディに自分のぬくもりが伝わるのを感じて眠った夜…。
助手席にマシンガンとバルカンと乗せて、海辺の道を走った。
海に沈む夕日の丘で、並んで座るマシンガンとバルカンの肩を抱き寄せる。
海が月あかりを映しても、ずっとそうしていた。時が止まればいいとさえ思った…。

「グワッハッハッハ!ローストシャークにしてくれるわ!」
勝ち誇るインフェルノ!
次の瞬間、インフェルノは、何が起ったのか理解する前に壁に叩きつけられた!
「な…なに…がグッグワ!?」
「グルルル…!GYORAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
目の前には、血走った目で、首を締めあげるティティ…シャークティース!

司令塔であるインフェルノの意識が一瞬途切れたことで、下忍たちの動きも停止した。
「ばかな…!?」
死をも覚悟するほどの修練と、サイバネ手術で強化され、サイバネスーツで防護された
ボディが、小学生並の体躯の相手に、気絶させられたのだ!

「あ、ティティの別のスイッチはいっちゃった」
「アイツ、素手のがヤバイよナ…」
ハンマーとソウが、目を回しているキャットとブルーを助け起こしながら呟く。
無論、インフェルノに同情などしてやる気はない。

「ア゛ア゛ー!!」
雄叫びをあげ、ティティが殴りかかる!
「グブッ!?グワッー!?」
サイバネスーツが小爆発!
「ア゛ア゛ー!!」
ティティは首を締めあげて床に頭を叩きつける!
「グワーッ!?」
サイバネスーツが破損、燃料流出!炎上!
「ば、莫迦な…サイバネは貴様らのパワーを元に設計した…」
「ア゛ア゛ー!!」
炎に炙られながら、ティティは首を締めあげて床に頭を叩きつける!
「グワーッ!?」
「ア゛ア゛ー!!」
「グワーッ!?」
「ア゛ア゛ー!!」
「グワーッ!?」
「ア゛ア゛ー!!」
「グワーッ!?」
ティティは首を締めあげて床に頭を叩きつける!叩きつける!叩きつける!叩きつける!

「ウググ…」
インフェルノのメンポHMDに、DENGERの文字が乱舞する。
震えるサイバネ腕をあげて、火炎放射!狙いは明後日の方向だ。

「ア゛ア゛ー!!…ア?」
KABOOOOOOOOM!!ミサイルが爆発!下忍が!鮫幼女達が!潜水艦の隔壁が!
爆発でふっとばされる!
格納庫内は闇に沈み、あっと言う間に大量の海水に満たされた!

「(ウググ…なんという失態!とっさのことに判断をあやまった!)」
海水で頭を冷やされたインフェルノは、悔やんだが、時すでに遅し!
脱出のためにやむなくだったが。地形特性は、完全に鮫幼女のものとなった!獲物とハンターの交替だ!

「うぉおお!」
もがくインフェルノの側を横切る影、目で追う間もなく、別方向から、体当たりを食らう!
「グワゴボォォォ!」
骨の軋むような強烈な一撃だ!青く暗い海中に踊るのは、半鮫と化したソウとハンマーの交
差するシルエット!

「(まずい…!このままでは…)」
見れば、インフェルノの周りには3mを越える本物の鮫たちまで群れている。
鮫達の間を突きとおし、牙を剥きだしたハンマーとソウがまっすぐに突進してくる!

「うぉぉぉぉおぉ!?」
眼前に、獰猛なる△牙の並んだ口が迫ったまさにその瞬間!
突然の海流に押し上げられ、インフェルノの体は海面へ飛び出した!

「FUU!ざまぁないなインフェルノ=サン!」
岸壁に打ち上げられたインフェルノの頭上からあざ笑うような声。
「ハイタイド=サン!…事前情報に多少の誤りがあっただけだ!」
「グッフッフ…」

ハイタイドの球根型サイバネアーマーが、バルバルバルと不気味な高速振動をしている。
おそらくはその作用だろう、重量級のハイタイドが、海面から吹きあがった水柱の上に立っ
ている。

「GAAAAAAAAAAAA!!」
「UGAAAAAAAAAAA!!」
ハンマーとソウが牙を剥く!半獣半神のギリシャ神話のモンスターめいた姿が夕日を受けて
海面から飛び出す!
「HOOOOOOOOOOOO!!」
ハイタイドのアーマーが振動を強め、新たな水柱がハンマー、ソウの横腹を打つ!
空中で身を捩り海へ落ちる2人、海面に飛び出した背びれが高速で奔っている、反撃の構え
だが…。
「フゥーッハッハ!ウォータージャグリングだけが能じゃないぞ?」
海が突然陥没!局地的渦潮が発生して、渦の中で二人のシルエットがもがく!
いかに海が鮫幼女のホームグラウンドとはいえ、海流の影響は免れない。
さらに、激流を切り裂く水流ビームが炸裂!

「水龍咆だ!クククッ水流操作は貴様らのテクノロジーだ。自らの力でじわじわと追い詰め
られるがいい!」
ドッバァァァァァァ!!!渦潮を物ともせずに、巨大な鮫が飛び上がる!

「FOO!?」
「ウォオ!?」
二人のニンジャの上に影を落とす巨体は、夕日に輝いて宙にその身を踊らせると。
ガッシャァァァアアアア!!!鮫潜水艇がハイタイドとインフェルノを轢殺!
火花を散らしながら岸壁に着地した。

「ねぇ今誰か轢かなかった?」
「そんなモン後にしろ!ア゛ア゛ア゛!?なんだありゃ…俺の艦をめちゃくちゃにしやがっ
て……コロス!!」
鮫潜水艇のハッチから顔を出すのは、ユーニスとウィーゾルだ。

「ぷはっ…港だ…マフネオスか?」
「ちょっとーつっかえてるから早く出てよ!」
ユーニスの胸を押し上げるようにして、千歳とオルカも顔を出す。

「ウィウィー!オルカー!!」
「ウィーゾル…よカッタ…間に合っタ…!」
海面に顔を出したハンマーとソウが、嬉しそうに叫んだ。
「ウィウィにゃー!?助かったにゃぁぁ…」
「しゃーく…」
キャットを背中に乗っけて、ブルーも浮上してきた。

ババババババ!!漆黒のティルトローター機のダウンウォッシュが、海面を激しく波立たせ
る!
「ッチ、使えん奴らだ」
機体から身を乗り出したウォンは、忌々し気に呟くと、機外へ身を踊らせる。


「ウォン!!」
「アイツか!俺様の艦をめちゃくちゃにしやがったのは!」
オルカが叫び、続けてウィーゾルが叫んだ。
叫んだ言葉は異なるが、どちらの瞳に宿る物は同じ
怒り。激しい怒りだ。

「オルカちゃん落ち着いて!?」
「ウィウィステイステーイ」
千歳とユーニスが二人をなだめるが二人の怒りは収まらない。
鮫歯をギリギリと噛みしめ、ウォンを睨みつける。

「その瞳!最高ダ!」
ホエールシャーク靴力弔吠儼舛靴森暖弔帽澆蠅仁ったウォンは
両手を広げ恍惚とした表情で進んで行く。
コツコツと歩を進める彼の左右には異形の忍者達が正座で列を成す。
「インフェルノ=サンとハイタイド=サンを倒し、万歳の気分か?
 残念だったナ、アイツらは試作品に過ぎない」
演説する様に言うと、ウォンはさらに言葉を続ける。

「彼ラこそ完成形!
 サイバネティクスニンジャのマスプロダクトモデル!」
ウォンが指揮する様に大きく両腕を上げると、ニンジャ達が一斉に立ち上がる!
機械の如く一糸乱れぬ動き!
その光景に満足の笑みを浮かべるウォン
彼は異形の玉座へ収まると足を組み、異形のニンジャ達に命令を下す。
「サァ!狩りの時間だ!『玉』を奪え!」
「Yaaaaaaaaa!」
マスプロニンジャ達が時の声を上げ一斉に飛び上がった!


「チトセー…倒したっていつ倒したの?」
「私に聞くな。それどころじゃない!」
「だねー!気合入れるよー!」
ユーニスは笑いながら言って’’痛み止め’’をまた一本飲み干した。
「気合じゃない!こんな時は……」
「あ!そうだね!」
「「逃げるんだよぉ!!」」
千歳とユーニスは頷き合うとニンジャ達に背を向けた。
臆病者と言われてしまったらその通りだが。これが彼女達の生存戦略。
確かにチトセは電脳世界では特別な力をふるったが
ここは現実世界、銃弾の一発でも当たったら致命傷になる。
だから逃げて有利な状況を探す。
しかし、その一方で……

「俺は逃げない!もう逃げる事はしない!」
「ウィウィー、鮫が強くてもあの数は無謀すぎない?」
激しい怒りの表情を見せるウィーゾルの肩をユーニスが掴む。
話してる間にもマスプロニンジャ達はイナゴの様に群れを成し攻めてくる。

「悪いが止めても無駄だ。アイツなんだろう?アイツが俺達を弄んだヤツなんだろう?
 わかる!ああ、わかるさ!汚泥(ヘドロ)の様な匂いがここまでしやがる!」
「確かに黒幕はアイツだけどさー」
ユーニスがステイステイと宥めるが、ウィーゾルは今にも飛び出しそうだ
そこへ……

「私が一緒に行くよ」
「オルカ?」「オルカちゃん?」
オルカの声だ。
「ウォンには私も言いたい事があるし……、それに、一発殴ってやりたい!」
「ッハァ!」
牙の生えた口をパカッと開けて、ウィーゾルは笑った。
「シャァーッ!いくぜ野郎共!全員突g…」
飛び出して来たマスプロニンジャを一撃でぶっ飛ばし、号令を下そうとするが…
「待った、行くのは私だけ。…シャァッ!!」
オルカは後ろ回し蹴りで、マスプロニンジャを迎撃!
「ア゛ア゛!?」
「千歳、金髪はキャット達と鮫玉を持って逃げて。私達は、艦内の仲間と合流して
アイツを倒す」
敵戦力の分断、及び拠点奪回と反撃のための戦略を、オルカは瞬時に練り上げる。
こんな時でも、オルカの頭脳は明晰だ。

「シャァーッ!!…ぐっぬぬぬぬ!!」
「ひゃぁ!?」
「うわっ」
ウィーゾルのパンチが、千歳とユーニスに迫ったマスプロニンジャの胸を貫通!
凄まじいパワーだ!

「う、ウィウィ…?」
ユーニスは、ギリギリと歯噛みするウィーゾルを覗き込むように伺う…。
「ソウ!ハンマー!」
「オウ」
「う、うん!」
「キャットとブルーをつれて、こいつらと行け!アイツをぶっ飛ばすまで、鮫玉を持って
逃げ回れ。後は俺に…俺達に任せろ!…そういうことだな、オルカ」
「…うん!」

二人のやり取りを見ると、ソウとハンマーは、顔を見合わせ頷いて、笑った。
「「了解!」」
「にゃー!」
「おわぁっ!?」
海から、キャットとブルーを抱えた、半鮫のソウ、ハンマーが岸壁に着地。
「GAAAAAAAAA!!」
「UGAAAAAAAAAA!!…さあこっち!ついてきて!!」
W尾びれでマスプロニンジャを蹴散らして、走り出す!



「うーん…キテルねぇ…任せたよーウィウィー!…行こう千歳!」
「シャァーッ!」
「シャァッ!!」
返事の代わりに、背中合せになった、ウィーゾルとオルカが敵を蹴散らす雄叫びが響く。


「任せた!行こう!とにかく逃げて逃げまくるんだ!」
逃げる。それは千歳とユーニスの得意とするところだ。
ニンジャ達を翻弄し攪乱し、オルカとウィーゾルがウォンを倒すまでの時間を稼ぐ。
それに今回は強い味方達も一緒だ。
ハンマーとソウ、彼女達の強さは電脳世界で体感し良く知っている。
「GAAAAA!」
「UGAAAAA!」
ほら、考えてる傍から前方に飛び込んできたマスプロニンジャを蹴散らした。

そしてキャットとブルー。彼女達も強い…はず。
「にゃ?黒髪のニンゲンにゃんだ?」
「え?え?私に何か用なの?」
「…いや、なんでも無い」
電脳世界で会った時とかなり雰囲気が違うが……
まぁ大丈夫だろう。
とにかく、今は走って走って逃げて逃げる!

「バカめ、みすみす逃がすとでも思ったか」
玉座にふんぞり返った、ウォンが見下ろしながら笑った。
マスプロニンジャ達が、ゾンビみたいに立ち上がり、あるいは、あちこちの物陰から
わらわらと湧き出てキャットを取り囲む。
「んにゃにゃ…」
「shaaaa…」
ぎゅっと鮫玉を抱きしめるキャット、鮫歯ナイフを引き抜いてブルーが守るようにニンジャ
達と対峙する。

「はーい、はい、こっちーパスパース」
コンテナの上からユーニスの暢気な声が響く。いつの間に登ったんか。完全に包囲の外だ。
「にゃ?ああーなるほどにゃー!」
キャットは鮫玉をぶん投げた!ユーニスはバスケボールのようにキャッチ!宙がえりでコン
テナから飛び降りて走りだした!

「あの金髪やるな?」
「アア、人間なのガおしい」
空中を飛ぶ様に動くユーニスに、ハンマーとソウは嘆息し関心する様に頷いた。
「アイツが聞いたら喜ぶよ。調子に乗せすぎると失敗するけどな?」
「ほぉ?うちの艦長と同じだ」
「仲良くなってイタ理由がワカッタ…ジャマだ!UGA!」
言いながらハンマーが飛び出して来たマスプロニンジャを横払いに殴り飛ばした。
冗談交じりの会話をしながらも、緊張を抜かない様は生粋の戦士の様だ。

「ついでだ、私も少し調子にのさせてもらおうかな…?」
言って、千歳が回転する様にしながらコンテナの上に飛び上がる。
「にゃ?そのくらいキャットも出来るにゃ!」
千歳に続く様にキャットがコンテナの上に飛び上がる。
玉をユーニスに投げ渡した事で、彼女もフリーの状態となった
なら特技を生かさない手は無いと言うことなのだろう。

「ユーニス!今度はこっちにパスだ!」
コンテナの上を走りながら千歳が叫ぶ。
「ヘーイ!チトセー!」
バスケのロングパスの要領で鮫玉を放るユーニス
「ギギッ…カクホ…」
「わっ!?…っと!!」
横合いからマスプロニンジャの鉤爪が伸びる!キャットが猫パンチで迎撃!

バランスを崩した千歳が、玉を取り落としそうになるが…鮫玉は、千歳の手の上で自らバラ
ンスをとって、腕を転がり登る。
さらに勢いをつけて、別のマスプロニンジャの顔面に体当たり!跳ね返って戻って来た!

「ちっちゃくてもやるもんだね」
「(⁎ᵕᴗᵕ⁎)」
鮫玉は、得意げな顔文字を球体の表面に浮かび上がらせる。

………
……


「シャァーッ!へっ!数ばっか多くても歯ごたえがねぇぜ!」
マスプロニンジャを一撃で粉砕し、ウィーゾルが鮫潜水艦の甲板上に、増設された異様な祭壇めいた場所へ駆け上がる。
「千歳達もうまく逃げてる…あとは、アノ野郎をぶっ飛ばして終わりよ」
オルカは、マスプロニンジャの頭を持ち上げて、観察する。
どうやら、完全に操り人形のようなもので。ウォンとスマイルメイカー・饕餮の力で制御さ
れているらしい。個々の力は、鮫幼女達の方が遥かに上だ。
「シャァーッ!!」
「「「ギギギーッ!」」」
ウィーゾルの蹴りで、マスプロニンジャが3体まとめて吹っ飛び、海へ叩き落される!
彼女に掛かれば、インフェルノやハイタイドクラスが束でも余裕だったかもしれない。

「あ?ナンダ、ぼさっとして」
「…なんでもない」
不意に、ウィーゾルの手がオルカの頭に触れてきた。
「ん!?な、何!?」
「…俺が殴ったせいで、ケガしたのかと思ってな…なんだ…その…悪かったな」
「だ、大丈夫!…私だって、そこまでヤワじゃないよ、鮫なんだから」
ぺちぺちと撫でまわしてくる手に、思わず顔が赤くなるのは、夕日のせいばかりでもない。
「ああ、じゃあ行くゾ!!」
「…うん!」
オルカは少しだけ笑って、走りだしたウィーゾルについていった。
鮫幼女最強の、小さな背中が頼もしく見える。

「何ヲ…もたもたとシていlu…」
歪な祭壇の頂上部、玉座に座したまま、ウォンは苛立ちを隠せない。
やはり、全ての力を開放するには、鮫少女を取り込まなければならないのだ。
ダンッ!苛立ちにまかせて踏みぬいた足が、床を陥没させて板割りのごとく割った!

「ハァッ!なんだ、てめぇ1匹だけか」
そこへ凶悪な鮫笑みを浮かべながら、ウィーゾルが登って来た。
「……」
「……」
無言で視線をぶつけ合う…次の瞬間!
「シャァーッ!!」
「シィィ!!」
互いに、床を踏み砕き、一直線に加速!衝突!バギィィィッッ……!響き渡る金属破断音!
二人とも、お互いの立ち位置を入れ替えて止まる。

「っち…!」
ウィーゾルの胸元から血が吹き出す。
「ウィーゾル…ウィお姉ちゃ…!!」
遅れて駆けつけたオルカが叫んだ。
「くく…グッ…!?ぐぉおお!!」
ウォンのサイバネ四肢が放電!小爆発を起こし、ウォンは膝をついた!
一瞬の交差で、実に数十発!斬り、殴り、噛み、割きあう攻防をくりかえしていたのだ!

「まってて、今すぐ誰か呼ぶから…」
「こんなもんかすり傷だっての、俺様の鮫治癒力なめんな」
実際、すでに血は止まっている。鮫は病気やケガにも強いのだ!

「ぐっぬ…ぐぐぐ…Ku、っく…ックックふ、Ha把はははハハ!」
「あ?なんだ?頭イかれたか?」
突然笑いだすウォン、その影が、夕日に長く伸びて…哄笑する怪物のシルエットを描きだす!
その姿を見た、オルカは、おもわず身構えた。電脳空間でみた、スマイルメイカー・饕餮
の形だ。
「ぐぁッハッハッハッハハハハハハ!!!!はぁ…茶番は止めだ、ケリをつけてやろう」
ピタリッと無表情に戻ったウォンが立ち上がる。
すると、いままでどこに潜んでいたのか、マスプロニンジャ達が数十人!まわりを取り囲んだ!

同時に、鮫玉を守る千歳達の元にも異変が。
「へいへーい、こっちノーマーク…ぶっ!?」
暢気に言っていたユーニスの前のコンテナが突然開いて、したたかに鼻を打ってしまう。
中から蟻の大群めいて、わらわらと出てきたのは、マスプロニンジャ達!

「な、なんニャ!?急に数が増えたにゃー!?」
「うげ…フナムシみたい、気色悪…」
キャットとブルーの周りも、音もなく、夕闇の濃くなってきた埠頭の、影の中から湧き出す
ようにマスプロニンジャが取り囲む!

「オキアミかよ!入レ食い状態ダナ!ハンマーッ!」
「雑魚ばかり増やしやがって!UGAッ!!」
飛びかかってきたマスプロニンジャをソウが蹴り上げ
ジャンプしたハンマーが空中で投げ飛ばし、十人ほど巻き込む様にしながら吹き飛ばす
「ヒュッ!上から見たが、うじゃうじゃいやがる!」

「OMG!こっちもだよ!チトセ!」
突っ込んできたマスプロニンジャの頭を踏み台に飛び上がると
鮫玉を千歳の方へ投げ渡す。
「焦ってるんだよ!ウォンのやつ私達の挑発に苛立ってる!ハッ!」
千歳はジャンプから詰み上がったコンテナを三角飛びに蹴ると
空中で回転しながら鮫玉をキャッチ。
「あ……」
しかし、着地予想地点にマスプロニンジャが突っ込んできた・

「任せるにゃ!艦内のネズミが捕まらなくてイライラするあれにゃね」
「あー、キャットめちゃくちゃイライラしてるもんねー」
千歳の着地地点に飛び込んできたマスプロニンジャを二体
キャットとブルーが左右からインターセプトしコンテナに叩きつけた。

「グッジョブ!」
「うにゃ♪」
キャットにサムズアップすると千歳は玉を持ったまま走り出す。
ただ走るだけではない、右、左、フェイントを交えながら
ジグザグとコンテナの上を走る。

「チトセが動きを変えたね!鮫ちゃん達ー私を目印についてきてー!」
ユーニスがコンテナの間を走るハンマー達に呼び掛かける。
「わかった!しかし鮫ちゃんとか言うな!」
「名前知らないしー!ちなみに私はユーニスだよ!」

「ユーニス!遊んでる余裕はないぞ!パス!」
「はいよー!」
千歳とユーニスを繋ぐ直線上にマスプロニンジャが飛び上がってきた!
「ふふん…と見せかけて!そっち!」
「え!?わたしー!?」
鮫玉を受け止めたブルーが目を白黒させる。
「ブルー走るにゃー!」
「走るー!」
玉を抱えたままブルーが走り出す。
右に左に左右に蛇行なしながらの走りは、期せずしてニンジャ達を翻弄し混乱させる

「やっぱり無理ー!」
「私にパスだよー!」
「わー!」
「次は私ダ!」
ブルーからユーニスへ!ユーニスからソウへ!
さらにハンマーへ、そして千歳へキャットへ……
玉は目まぐるしく飛び回る、が……

「(+o+)」
千歳の手に戻った鮫玉に顔文字が浮かび上がった。
「ああ!?目回してる!?もう少し我慢して!」
「(>_<)」
「うん」
千歳は頷くと鮫玉をそっと撫でた。

「Yaaaaa!」
「わっ!?」
そこへマスプロニンジャが飛び降りてくる!…が
「チトセ!浮気だー!っと!」
「違う!」
そのマスプロニンジャの頭上にユーニスが降り踏みつけた。

「詳しい事は後で聞かせてもらうよー…チトセ!後ろ!」
「え!?」
コンテナの影から何かが飛び出してきた!

「ニンジャ!ニンジャナンデ!?イノチバカリハー!」
ドレッドヘアの青年だ。
腰を抜かし手を突いた四つ足状態で歯をガチガチと震わせている。
どう見ても一般人。

「え!?なんでこんな所に人が居るの!?」
「ああー!これグラフィティアートだよ!
 ここってコンテナに落書きしてる連中多いんだ!」
千歳の疑問にユーニスが答えた。
コンテナの壁面を見れば、デザインアレンジされたアルファベット文字群
そして紋章の様なスプレーアートが描かれている。
マフネオスはストリートギャングの溜まり場。
自分達の縄張りを示すためにコンテナにグラフィティアートを描くのだ。

「多いって…じゃあこの辺りにはまだ…わっ…!?」
間一髪!マスプロニンジャのニンジャブレードを背面飛びの要領で回避!
ここにいる全員が生き残る事に必死な状態、考えている余裕は無い。

「早く逃げた方がいいよ!ヤバイ奴らがいっぱいいるから!」
立ち止まるのは危険だ。鮫玉を抱えて千歳は、それじゃあと踵を返そうとする。
「ヒィィィ!お助け―!!」
ドレッドヘアはバタバタとコンテナの路地へ駆けこんでいく。
「あ、そっち行き止まり…」
彼を追ってマスプロニンジャ達も駆け出した。目撃者は消すつもりなのだ!

「チトセ!私達も逃げるよ!」
「お、おう…うむむ…」
一度背は向けたものの…千歳はユーニスに鮫玉をパスした。
「チトセ!?」
「先に行って!すぐ追いつく!」
言うが早いか、側にあったコンテナにしがみついて、あっという間に上へ駆けあがった!

「ノォォォ!」
コンテナの袋小路にドレッドヘアの悲鳴が響く!
「こっちだ!手を伸ばせ!…って、重っ!!はやく登れぇー…!」
コンテナの上から差し出された千歳の手を取って、ドレッドヘアは、必死にコンテナをよじ
登る。ガキンッ!鍵爪が足を掠めて火花を散らす。

「走れ!」
「ヒィィィ!!」
次々とコンテナに飛び乗ってくるマスプロニンジャ達。体格が良いだけのドレッドヘアに
千歳達レベルの機動は望めそうもない。ピンチまで秒読み状態だ!

「何シてる!ソンナの放っておいて、早くコイ!!」
「私達からあんまり離れないでッ!」
ソウが叫び、ハンマーがマスプロニンジャの足を引っ掴んで振り回す。

「チトセー!」
鮫玉を持ったユーニスは、千歳の方へ駆け出した!
「んにゃー!」
「しょうがないなー!」
キャットとブルーが、ユーニスを追う。

「ニャーッ!」
「Shaaaaaark!!」
千歳達へ鍵爪を振り上げたマスプロニンジャに、キャットとブルーのWドビゲリが炸裂!
コンテナの下へ叩き落す!だが、コンテナの下は、完全にマスプロニンジャ達に埋め尽くさ
れていた!闇の濃くなってきた地上に、マスプロニンジャの不気味な赤い瞳が光ひしめいて
いる…。

………
……


「グフッフッフ…!」
顔面を手で覆い、ウォンが笑う。
潮の満ちるごとく、夜闇が濃密になるコンテナヤードに、無数に!赤い!光点がひしめく!
「ハハハ破ハハハHaHaハ!!!」
ウォンが笑う。その顔は、歪に引きつった笑みの形で固まっている。

「まずい…このままじゃ千歳達が、囲まれる…!」
目を瞑ったまま、地上を見下ろして、オルカがギリッと鮫歯を噛んだ。
「シャァーツ!雑魚が何匹居ようと同じことだ!全員!ぶっ殺す!!」
ウィーゾルが構えると同時、マスプロニンジャが10人吹っ飛んだ!
「「「「「「「「「「…コォォォォォ!」」」」」」」」」
20人のマスプロニンジャが殺到!
「シャァーッ!」
20人が吹っ飛ばされて宙を舞う!
「「「「「「「「「「…コォォォォォ!」」」」」」」」」
30人が殺到!
「シャァァーッ!」
30人が殴り飛ばされて宙を舞う!
「「「「「「「「「「…コォォォォォ!」」」」」」」」」
40人が殺到!
「シャァァァーッ!」
40人が蹴り飛ばされて宙を舞う!

「シャァァァァァァァァァーッッ!!!」
「「「「「「「「「「ココココココココココココ」」」」」」」」」
何匹居ようと同じことだ!
マスプロニンジャがどれだけ数を増そうと、ウィーゾルは瞬く間に蹴散らしていく。
その凄まじさは加速度的に威力をまし、もはや竜巻に匹敵する!まさに無敵の鮫幼女だ!

「クククククク…」
だが、ウォンは、まだ気持ち悪い笑みを浮かべている。
「…何かおかしい…まさか!?」
「シャァァ…あ?どうしたオルカ!怖気づいたか!てめぇコノヤロウ!」
「違うの!いくらマスプロニンジャが量産型でも、数がおかしい…計算があわない!」

「やっと気づいたか!莫迦メッ!」
ウォンが両手を天へ向かって万歳すると、周囲の歪な構造物の仲から、無数の柱が
ストーンヘンジめいてせり上がる。その柱の1つ1つに、ブドウの房のように連なる…

「…イカかタコの卵か?」
ウィーゾルは鮫なので海洋生物にくわしい。
「違う!これは…」
オルカは、思わず目を開いて、その悍ましさに震える。

「作り出しているのだよ!人間を!否!より優秀な家畜をな!!!」
バジャァァァァ!!!ブドウの房が割れて、中からタールのような溶液にまみれたマスプロ
ニンジャが現れる!

「貴様らの種族は、先史時代に、こうやって’’奴隷人間’’を増やしたのだろう?
 んっふふふふ…!鮫のテックと歴史というのは、実に学ぶ事がおおいなぁっははは!」

「違う!!私達はそんなことしない!」
オルカが叫んだ。彼女は鮫だ、鮫幼女だ。仲間は大事でも、ぶっちゃけ人間のことなど
かわいそうだから殺さない程度の感覚の、人とは異なる知的生物だ。

「何が違う?太古の昔から、貴様ら’’獣の少女’’が人類に知識を与え、進化を促し、戦争や
 文明をコントロールし、意のままに操ってきたのだろうが!」
「コボッ!?」
「コゲッボ!!」
左右にいたマスプロニンジャの頭をウォンが握りつぶす。
タールのような血肉がウォンの影の中でゴボゴボと沸騰し、膨れ上がる

「…人でなし!」
オルカの顔に浮かぶのは、怒りだ。種族や倫理、道徳、宗教観などとは関係がない。
命への敬意を欠く者への、純粋な怒り!人以外の全ての生命体が持つ、唯一の共通言語だ!

「神話の時代の再来だ、人ならざるものの力を得て、私が新世界の支配者となる」
「コォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッ!!!」
ウォンの背後に現れる、スマイルメイカー・饕餮!オルカが電脳空間で見た姿と同じだ!
それが、現実世界に顕現したのだ。現実と頭の中の垣根が、曖昧となっていく。

「謝謝、新世界のプロメテウスよ。私を罪人と呼ぶならよろしい。
 君が私に力をもたらしたこと、永遠に語り継いであげよう。生命の戦犯よ」
「コォォォォォォォォォォッ!」
「………ッ!」
オルカは、膝をついた。

「おい!オルカ!?」
マスプロニンジャを蹴散らしながら、ウィーゾルが振り返る。
オルカの目からハイライトが消えている…。

「ククク…莫迦め、貴様がハッキングをしかけていたのに気付かないとでも思ったか」
勝ち誇るように笑うウォン!先ほどまでの問答は、言葉を介した情報戦だったのだ!

鮫潜水艦のシステム奪還と、残存鮫幼女達との合流作戦を、オルカはずっと頭の中で
演算し続けていたのだ!

「オルカ!!」
「ハハハハハハハ!!!!」
「コォォォォォォォ!!!」
ウィーゾルの叫びと、ウォンと、スマイルメイカー・饕餮の哄笑が夜に呑まれていく。

………
……


「GAAA!」
千歳、ユーニス&鮫玉、ドレッドヘアが、まとめて、ソウの鮫化した腕に抱きかかえられ。
「UGAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
バッッガァァァァァン!!!!鮫化したハンマーの拳がコンテナをぶっ叩く!
ひしゃげて浮き上がり、大量のマスプロニンジャを轢きつぶしながら!火花を散らし!
それでも止まらないコンテナは、さらにマスプロニンジャの群れを轢きつぶし!火花を散ら
しながら海へと落ちた!

「…ふふんっ」
得意げに鮫化した大きな手を叩くハンマー。満載の40ftコンテナの重量は30tにもなる。
「…マジか」
「おちつけ」
思わず呟くユーニスと千歳。

「ハンマーは、腕力ナラ、ウィーゾルより強いンダ」
「うわ…鮫幼女つよい…」
「助かった…」
千歳とユーニスがほっと息をつくと、ドレッドヘアが
「オイオイオイ…ありゃ何だ…?」

暗闇の中に、赤い光点が、無数に浮き上がる!
「ウッソ!今ので生きてるの!?」
「チガウ!増えタんダ!!」
ハンマーとソウの、あんまり聞きたくないやり取り!

「こっちにゃー!こっちは手薄にゃ!!!」
「shashasha…shaaaaaaaaark!!!!」
暗闇で、目を光らせるキャットが先導し、ブルーが鮫歯ナイフで敵を斬る。

「助かる!でもどこへ…」
「高いとこにゃー!」
キャットが指さしたのは、暗闇の中にライトアップされたガントリークレーンである!

「アアアー!ウワァァ!?ギャァァア!!!!」
ソウに抱えられながら、ドレッドヘアは絶叫している。
多分、常識や理解の範囲を越えた彼の脳が、情報過多によるクラッシュをさけて、思考をや
めたのだ。
「せからしかねー…ヨガっとらんとこんでもイッとき」
「…なんて?」
「えへっ?」
サンアッシュクロス英語もマスターした千歳でも、ちょっと聞き取れないぐらいの口の悪い
地元の訛りでユーニスが早口になんかいって、ドレッドヘアの口に小瓶を突っ込んだ。

「アアアアア!?あ!?ゴクッ…ンボッホォ!?ニンジャ!無数のニンジャ!」
目を血走らせたドレッドが叫ぶ!
「お前、何飲ませた!?」
「痛み止めー…イデッ!」
小瓶を開けて飲もうとしたとこで、ユーニスは、地面に落とされた。
ころころと、アンプルみたいな小瓶と鮫玉が地面を転がる。

「ニンジャ!無数のニンジャ!」
ドレッドヘアが叫ぶ。
「んぁ?」
ちょいちょい、と千歳に肩を叩かれて、鮫玉を抱えてユーニスが立ち上がる。
「ニンジャ!無数のニンジャ!」

目の前の闇に、ひしめき合う赤い光点。

「嘘だろ…」
「オオウ…」
千歳が呟き、ユーニスがぎゅっと鮫玉を胸に抱く

「グゥゥゥゥ…」
「ウググ…」
さしものハンマーとソウも唸り

「フーッ…!」
「shaaaaa…!」
キャットとブルーは体を含まらせて威嚇している

「ニンジャ!無数のニンジャ!……鮫だぁぁあああ!!!」
ドレッドヘアが突然叫んだ!次の瞬間!赤い光の群れが、突然散らされる!
ドサッ!闇の中から、マスプロニンジャの死体が千歳達の足元に転がる。

『GROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOWLLLLLLLLLLLLL!!!!!』
どこか機械的な、獣じみた咆哮!
赤い光の群れは、虫の群れように、たちまち散らされていく!

◆7 Edit

………
……


「ナッ…!?」
「コォォ!?」
ウォンと、スマイルメイカー・饕餮は、たじろいだ。

『GURRR………』
スマイルメイカー・饕餮にも匹敵する巨躯、鈍器のような拳、巨大な鮫頭部!
光る眼!剥きだした牙!唸り声!

「エクステンドスーツ!」
ウィーゾルが叫んだ。
エクステンドスーツ、鮫幼女達が使うパワードスーツだ!別名…鮫男!

「…ふぅ」
立ち上がったオルカは、襟を正すと、パーカーの鮫フードを被る。鮫フードは可愛い。

「貴様…キさまは…わた死に、電脳戦を見破られ敗北に屈したハズ…!?!?!?」
ウォンの歪な笑みがビキビキと苛立ちに血管を浮き出させる。

「…あんなので、私達の情報処理脳力に勝てるとでも思ったの?1千万年早いわ」
凶悪に、牙を見せつける鮫の笑み!
床を突き破って、次々に鮫男が出現!さらに、鮫男が開けた穴から…

「しゃー!」
「ワー!!」
「ヤロウブッコロシテヤルー!」
「デーデン…」
「サカナー!!」
「フカーッ!」

「ウバ!ミツクリ!ゴブリン!オンデン!ラブカ!アブラ!!」
次々に出てくる鮫幼女達!みんな似たような見た目だが、ウィーゾルは1人1人の名を
間違わずに呼ぶ!

『『『『『GROOOOOOOOOOWWWWLLLLLLLLLL!!!!』』』』』
次々に床をぶち破る鮫男たちも参戦!

「うぉ!」
ウォンの目の前に、一際狂暴な鮫男がせり上がり、ウォンは足元を掬われ転倒する。
「俺のスーツか!!」
ウィーゾルがスーツに飛び乗る。他の鮫幼女たちも、自分のスーツへ即座に乗り込む!
そして…

『GROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOWLLLLL!!!!!!!!!』
ウィーゾルの鮫男が雄叫びをあげる!
鮫幼女も!鮫男も!戦の雄叫びをあげた!
「うぉおおおおおお!!!!!!!!!!」
オルカもだ!

「ぐっぬぅぅぅ!!」
「コォォォ…ッ」
気圧されるようにウォンと、スマイルメイカー・饕餮はうめく!

………
……


『GROOOOOOOOOOOWLLL!!』
「Shaaaark!!」
ブルーと鮫男が、マスプロニンジャの頭を噛みちぎる!

『GOAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
「ニャァアア!!」
キャットと鮫男が、マスプロニンジャの群れを瞬く間に切り刻む!

『GAAAAAAAAAAAAA!!』
『UGAAAAAAAAAAAA!!』
『GYAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
ソウ、ハンマーと鮫男が、嵐のごとくマスプロニンジャを蹴散らす!

「形勢逆転じゃん!オルカ達がなんかやったんだね!」
「助かったのか…?」
工業用の真っ白く強い照明の下で、援軍に駆けつけた鮫男達と、鮫幼女達が次々に
マスプロニンジャの群れを押し返していくのを、千歳とユーニスは見た。

「ひぃー…ひぃ…もう、無理…うぼぇろろろ」
「おめーでっかいくせに弱いな」
手すりに捕まって、ドレッドヘアは吐いた。吐しゃ物は、10m程下の地面でビチャッと音をたてた。千歳とユーニス達は、ガントリークレーンの外階段を登っている。

足元には、闇の中の獣の目のように、マスプロニンジャ達の赤い双眸が群れて蠢く。
その真っただ中に、火花を散らし鮫幼女と鮫男が突撃するたび、赤い光は吹き飛ばされるよ
うに消えて散り散りになる。
まるで小魚を追う鮫と、逃げ散る小魚の群れを見ているようだ。

「あー!あそこにも逃げ遅れてる人が!」
ユーニスが、赤い光が密になってる箇所を差して叫んだ。
青白いコンテナヤードの照明が、スポットライトのように追い詰められる人影を照らす!

「…お、俺のダチだ…!」
「ハンマーたちは…ダメだ!下の防衛で手一杯だ!」
鮫玉を抱いた千歳が言うと、まるで狙っていたかのように暗い海から大鮫が飛び出した!
オタリアの群れに突っ込むシャチのごとく、大鮫はマスプロニンジャを体当たりでふっとば
し、顎に咥えた獲物を振り回して引きちぎる!

「すっげー!鮫映画の鮫みたいだ!ねぇチトセ!ほら!ね!?」
「ほら!ね!?って言われても…」
「オウシット!ダチが喰われ……ッッ」
ドレッドが悲鳴をあげかけるが、大鮫は口に人間を咥えると背中にのせて、岸壁から海へ飛
び込んだ。尾びれでマスプロニンジャを叩き殺すのも忘れない!

「もしかして海の中も、仲間の鮫が来てるのか?」
千歳が鮫玉を見ると
「(0?0)」
ドヤ顔してた。
どうやら、人命救助もしてくれているらしい。
「ありがとうな」
千歳は鮫玉を撫でる。

すっかり夜になったコンテナヤードのあちこちで、戦いの火花が散る。
火花と、マスプロニンジャの赤い目の光は、徐々にガントリークレーンから退けられる。
数はマスプロニンジャ達の優位だが、サーディンが何匹群れようと鮫の餌でしかない!

「ッシャー!いいぞー!やっちまえー!!」
「このままいけばオルカ達がウォンをやっつけるまでいけるか…?」
「おい…おい…空にもニンジャが飛んでるゼ…」
ドレッドは階段に座り、酔っぱらったようにつぶやいている。
「なぁユーニスさっきこの人に何飲ませたんだ…ってうわっ酒くせぇ!」
「んっんっ…プハーッ!あはは!チトセもいる?かなり効くんだよこれ」
「おまえなぁ…」
アンプルみたいなものを揺らすユーニスに、千歳があきれ気味に答えた時だ
サメェーサメェー となんかコミカルな鮫の鳴き声?がする。

「あっ…オルカちゃんのスマホだ」
昨日の朝、自分のと取り違えたまま、返すタイミングを逃し続けて持ちっぱなしだった。
サメェ!なんだか急かされてるような鳴き声になり、千歳は電話に出た。

『千歳!まだ無事ね!?』
「オルカちゃ…?」
ノイズ混じりの切羽詰まった声。次の瞬間だ!ッッィィィィン…!!無音の大音響が千歳の
鼓膜を劈いた!思わず鮫玉を取り落としそうになり膝を付く。
「チトセ?どうしたの!?」
「この感じ…ウォンの電磁爆雷だ…ッ」
鮫幼女達の感覚器を狂わせる、電磁パルス兵器だ!脳内のスマイルメイカーのせいで、千歳
も鼻の奥にきついイオン臭を感じ、眩暈がする。
「(><)」
鮫玉も苦し気な顔文字だ!
今のウォンもスマメイ持ちのはずだ、自爆攻撃なのだろうか…?

「あ、アレ!?鮫幼女達がうごかなくなっちゃった…ニンジャがこっち来るよ!?」
鮫幼女たちの動きが鈍り、赤い光点が音もなく押し寄せる、千歳達のガントリークレーンの
下はあっという間に赤く染まっていく!

「オルカちゃん!ハンマーとソウ達がダウンしてる!…オルカちゃん!」
『…っ……げ…逃げ…て!』
電磁パルスの影響で音声はノイズが酷い。
「うわ…わっどうしよう…!」
「どうするもこうするもない!」
「「走れー!!」」
「えっ…俺無理…ヒィッ!」

階段に殺到してくるマスプロニンジャの群れ!千歳達はドレッドのケツを蹴り上げながら
階段を駆け上がった!


「ハッハッ破ッ覇ッHAAAAA阿!!」
天にウォンの笑い声が轟き響く。
人と電子の混じった異形の笑い声。
全てが異様にして異形。
立ち上がった姿も異形、左腕から触手の様に伸びるコード
その先は玉座へと伸び絡みついている。

「最高のタイミングで切り札ヲ切らせてモらった!」
呻き声を上げ、倒れる鮫幼女達を見下ろしウォンは狂喜の表情を浮かべる。

『ローレンチーニ器官』鮫が微弱な電流を感じるための感覚器。
人間に無く、鮫の進化体である鮫幼女が有する特別な器官。
彼女達はこの器官を活用し人間に見えぬ物を見、感じる。
しかし、これが彼女達の弱点となってしまった。
ウォンは電磁パルスを発する事で、鮫幼女を麻痺させたのだ!

「ク破覇ハハha!」
勝利を確信し笑いを強めるウォン、しかし……

「切り札か…なら!もっと強い札を出しな!」
「!?」
ウォンの思考は衝撃と共に一瞬フリーズした。
目の前に鮫男の笑い顔。ありえない光景がすぐ目の前にある。
ウィーゾルの鮫男だ!
倒れて呻いていたはずのウィーゾルの鮫男が目の前に立っている。

「もっとも、こっちには切り札が二枚あったんだけど、なっ!!」
「ガハッ!?」
ウィーゾルはフードの奥で鮫歯をガキンっと鳴らすと
ウォンの脇腹を抉る様にしながら、拳で玉座を打ち抜く!
「なゼ、立て立て…るるルッガガガッ!?」
衝撃と共に青白いスパークが弾けウォンが白目を向く。

「俺様は丈夫だからな!それと……
 賢い妹のお陰さっ!」
ウィーゾルは振り向かずに言うと、後ろ手でサムズアップ。
それを見、フードの少女…オルカがサムズアップを返す。
「(やっぱりお姉ちゃんは強いや…)」

「Error…!Error…!Error…!」
「Error…!Error…!Error…!」
マスプロニンジャ達が叫びながらバタリバタリと倒れていく。

「なるほど、思わぬ副次効果が出たみたいね」
立ち上がったオルカがフードの奥から周囲を見渡し呟く
「オルカ、どう言う事だ?」
「『アレ』が鮫技術由来なら影響があるって事よ
 装置を殴った事で、私達から『アレ』にとって気持ち悪い物になったんだ」
「ニンゲンの言う一石二鳥って奴だな、なら反撃開始…うん?待て!」
「え?」

「reboot…reboot…reboot」
電磁パルスの影響で動けないはずのマスプロニンジャ達が声を発している
そしてゾンビの様に背を逸らしながら立ち上がる。
「これは…お姉ちゃん!」
「ああ!わかってる!」
二人は直ぐに理由を察した。

「我ハ饕餮!全てをクラウ!鮫さえ喰らって見せルルルル!」
ウォンだ!。意識を失っていたはずのウォンが狂気の笑みを浮かべている。
「往生際が悪い奴だな!」
ウィーゾルの鮫男がウォンと共に玉座を殴る!
「フンッ!」
「かはっ!?」
そしてウォンがウィーゾルの鮫男を殴る。

「reboot…」
「ウォォォ!!」
「グッハッ!」
マスプロニンジャが起き上がりかけたところへ、ウィーゾルがウォンを殴る!

「Error…」
「シィァァッッ!」
「うがっ!!」
鮫幼女たちが目を覚ましだすと、ウォンがスマイルメイカー・饕餮の拳を鮫男を殴る!

「reboot…」
「ウォォォ!!」
「グッハッ!」
「Error…」
「シィァァッッ!」
「うがっ!!」

「reboot…」
鮫幼女が倒れ、マスプロニンジャが目を覚ます
「Error…」
マスプロニンジャが倒れ、鮫幼女が目を覚ます
「reboot…」
鮫幼女が倒れ、マスプロニンジャが目を覚ます
「Error…」
マスプロニンジャが倒れ、鮫幼女が目を覚ます
「reboot…」
鮫幼女が倒れ、マスプロニンジャが目を覚ます
「Error…」
マスプロニンジャが倒れ、鮫幼女が目を覚ます

「緯ィ加減ニしろ!クソ鮫共めぇ!!』
額に血管を浮き上がらせ、ウォンが叫び、鮫男とスマイルメイカー・饕餮が真っ向から
両手をつかみ合って組みあう。
「こっちのセリフだクソ人間ガ!」
「シィィィッィィィ!!!」
「ナッ!?」
鮫男をスマイルメイカー・饕餮が拮抗する間に、ウォンの青龍刀が鮫男の首へ突き立つ!
コックピット内に侵入した切っ先がウィーゾルの額を掠める!
間一髪!鮫男の背中が開いて、ウィーゾルは機外へ脱出!

「ぐっ…!ヤロウ…やってくれんじゃねぇか!」
フードが外れたウィーゾルに、電磁パルスが降り注ぐ、だが、高ぶった闘争心で耐えた。
額から一筋血が流れる。
ギギギギ…バギンッ!スマイルメイカー・饕餮の巨大な手が鮫男を握りつぶす。

「上等だ!!こっからは拳と牙で!ぶっ殺し合いだ!!!!」
「シィァガァアァア……!」

「マ、マッテ、ボスゥちょっとまって…」
「ああ゛!?」
弱弱しい声のする方をウィーゾルが振り返ると…。倒れた鮫幼女達がぷるぷる震えながら
「オキタリ、キゼツしたり…マジ、きつい…」
「オェェェ…」
「あー……」
いくらタフでも鮫幼女も生き物なのだ、意識のオンオフを何度もやられるのは辛い。

「お姉ちゃん!!!」
突然オルカが叫ぶ!
「シシシァァ餓ガがァァアアアィィッィイ!!!!」
スマイルメイカー・饕餮の体から無数のコードが触手のように飛び出す!
「うぉ…!?ッッダラァアアアアア!!!」
ウォーゾルはコードを回避しながら牙で噛み切る!
「Siiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiihhh!!!!」
低い姿勢で接近したウォンの口の中から無数のコードが飛び出す!ウィーゾルは難なく回
避!鮫男を降りても戦闘力は少しも落ちない。むしろ鮫男に乗ったのはただのノリなので
生身の方が強くすらある!

「シャァーッ!」
頭部を狙った鋭い反撃の蹴り!だが、そこにウォンの頭はない。
みれば、鮫男の頭を抱えて、距離を取っている。

「…コォォ…万全とはいかんが、仕方がない…」
急に真顔になったウォンが、半壊した玉座の傍らに立ち玉座を掴む。
片手に鮫男の頭、片手に砕けた玉座。

「あ?何するつもりか知らねぇが…瞬殺ダッ!!シャァァッッ!!!」
問答無用でウィーゾルが、獲物へ突っ込む鮫の突進!
「コォォォォォ……」
ウォンは、不気味な呼吸をするばかり…体から、木の根のごとく、あるいは倍速再生された
棘皮動物の触腕が蠢くごとく、コードが生えて玉座と、さらにその台座である構造物へと侵食
していく。

「ダメッ!!」
「シャァアッッ…モガァッ!?」
その様子を見ていたオルカが、ウィーゾルに飛びついて鮫フードを被らせた!
直感だ。
思考よりも早く、時に神がかった働きを生物にもたらす脳の機能だ。記憶と、反復される行動
により活性化された脳神経がもたらす、生存のための最適解を超高速で演算する力。
人よりも遥かに優れたオルカの脳が、危機を直感したのだ!

ブゥゥゥゥ………ンンンン………

電磁パルスよりも、低く深い波が起った。ウォンとスマイルメイカー・饕餮…そして鮫潜水艦
が共振して、深海よりも深く、成層圏の空のごとく寂とした。人の物理では説明不可能な波動
であった。

マスプロニンジャ達が倒れ伏し、鮫幼女たちも鮫男も、糸の切れた操り人形のごとくとなる。
やがて糸は繋ぎ直されたのだ。
ゆらゆらと、ニンジャ達も鮫幼女達も生気の抜けた人形のように立ち上がる。

「…コォォォッハァァ…ッ!……2枚目の切り札ダ…」
コードまみれになったウォンが、歪に笑う。
オルカは、ぐったりしたウィーゾルを抱き。フードの襟を掴んで言った。

「千歳!まだ無事ね!?」
フードの通信機能はまだ無事だ。オルカは、千歳が持っている自分のスマホへ向けて呼びか
ける。
「…逃げて、今はとにかく逃げて。絶対に捕まったらだめよ、逃げて…!」
「ムダだ…逃げ場ハナイ…」
歪んだ笑みで口元を固めたまま、電子合成音と獣の唸りを合せた声で、ウォンが言った。

………
……

『…逃げて…!ザッ……ツー…』
「オルカちゃん…?切れた……これは本格的にヤバイことになってきたみたい……」
オルカからの通信が途切れた直後、千歳は日本語で呟いた。
こちらに来てから英語で話す事を意識していたが。
危機的状況に、つい母国語が出てしまった。

「YABAI…?日本のハイスクールガールが使うスラングだっけ?」
ユーニスが振り向きながら首を傾げた。
「あ?ああ、こっちで言うOMGみたいな物だよ
 …説明してる場合じゃない!状況が『さらに』悪くなった!」
「既に悪かったけど、さらにー?」
二人は顔を見合わせると、ぐったりとしたハンマー達を見、潜水艦の方を見る。
ここからでは遠すぎ詳しい状況はわからないが
二つの姿が激しくぶつかり合っている様に見える。


千歳が鼻に違和感を感じてしばらくして
倒れたハンマー、ソウ、キャット、ブルー…鮫幼女がおかしな事になっていた。
起き上がり回復したかと思えば、いきなり倒れ。そしてまた起き上がる。
それを何度も繰り返し、今は青白い顔でお互いに寄り掛かっている

マスプロニンジャ達もそうだ。
いきなり倒れたかと思えば起き上がる。そして、また倒れる
倒れたのを好機と蹴飛ばし、クレーンから落とそうかとも考えたが……
突然起き上がるので近付く事も出来ない。

オルカ達の様子を考えても、逃げながら待っても何も変わらない。
「…この混乱を生かさない手はないよな……」
ならばどうするか?
悩む千歳の言葉聞き、手摺を支えにしながらソウとハンマーが立ち上がった。

「突破スルのカ?私達はこんな状態ダ、オマエの作戦に従う」
「人間は好かないが、ボスとオルカが信用するおまえを信用してやる」
そう言って、二人はニッと鮫歯の笑みを見せる。
やせ我慢している事がわかる笑みだが、頼もしい笑みだ。

「二人共…わかった!オルカちゃんは逃げろと言ったけど
 下に降りて隠れながら潜水艦に向かおう!」
「うん!味方の『逃げろ』に逆らうのは定番の流れだよねー!」
ユーニスが腕を振り回す。やる気満々の様だ。
皆の士気は高い。

「キャットはさっさと逃げたいにゃ……」
「キャットちゃん空気読もうよー……」
キャット以外は。
ブルーがぐったりうな垂れた。
「OMG!OMG!おまえらクレイジーだ!クレイジーすぎる!」
ドレッドも逃げたい派らしい。

「そうだな、キャットちゃんとブルーちゃんは別動隊として……」
千歳がそう言いかけた時……
「(>_<)」
「わっ!?」
千歳の腕の中で鮫玉が跳ねた。
「ん、何か突っ込んでくるにゃー!」
空から何か赤い瞳がふらふらと接近してくる。
それも一つや二つではない、群れで近づいて来る。

「チトセ!ニンジャだ!ニンジャバットマンだ!」
「ん、特攻してくる!?」
赤い瞳の一つが高速で突っ込んでくる。
コウモリの様な翼を広げた姿はまさにバットマンだ。

「「逃げるんだ……」」
「早ク階段を上ガレ!!下からも来るゾ」
二人が言うよりも先にソウが叫んだ。
見れば階下から赤い瞳がズルズルと近づいて来る。

「来るニャー!!」
「ヒィッ!?」
コウモリニンジャがドレッドの頭の上を通過し
ドシャァッ!
クレーンの支柱に衝突し、ドサリと落下。
「攻撃プロトコル…攻撃プロトコルルルル…!」
落下しのたうち回るコウモリニンジャ。何か様子がおかしい。

「チトセ、コイツらなんかおかしくない!?」
「そうか…制御を失ってるんだ……ッ!?」
「チトセ!?」
ゾッとする感覚に振り向けば、夜空に浮かぶ赤い瞳の数が増えている。
いくら制御を失ってるとはいえ、あの数を相手にするのは無理ゲーすぎる。
そうなると、今はとにかく逃げるしか無い。
ソウがコウモリニンジャを階下へ蹴飛ばすのを確認して階段を駆けのぼり始める。

「OMG!OMG!天国への階段かよー!」
「コイツ…もうクッテもいいか?」
「余計な問題増やさないで……」
「ジョークだ。人を食った話って奴ダ」
「上手い!チトセ、クッション一つあげてー」
「…もう何がなんだか……」
ドタバタとしながら全員で階段を昇って行く。

「KILL!KILL!KILL!」
「うにゃー!?ブルーなにするにゃ…ニャニャニャ!!」
突然ブルーの様子がおかしくなった。
ブルーだけでは無い、キャットの様子も何かおかしい。

「二人は寝かせとけ。頭がガンガンスル!寄生虫にデモ入ラレタ気分だ!」
「アイツらまた何かしたか!?」
ハンマーとソウは言いながら、キャットとブルーに足払いする。
「うにゃっ…」
「はぅっ…」
ころんっと転がり二人はスンッ…となった。

「先を急ごう」
言ってハンマーとソウはキャットとブルーを担ぐと階段を昇り始めた
「う、うん……」
「…幼女強い……」

………
……


「ウウウゥ…」
虚ろな目をした鮫幼女達にオルカは取り囲まれる。
肩のウィーゾルは、ぐったりとして動かず。通信もノイズに妨害されている。

「ハハHa…仲間は攻撃できない…そうだったナぁ?・」
玉座に根を張った、ウォンが、仮面のように無機質な顔を歪ませて笑う。

「…っく」
鮫電脳空間と同じ状況が、現実に再現されている。まだ洗脳が使えないフリをしていた
ウォンにまんまとしてやられたのだ。
オルカが無事なのは、フードの対電磁攻撃防御と、スマメイ保有者の千歳と脳リンクしたこ
とで耐性を得たからだが、間近で洗脳電波を浴びた、他の鮫幼女たちは…。

「GAAAAAAAAAA…!!」
虚ろな目の鮫幼女が牙を向き、襲い掛かる!
「ヅッ…シャァーッ!!」
『UGA…』
鮫幼女がぶっ飛ばされて、地面に落ちた!
「お姉ちゃ…!?」
拳を振り上げて立ち上がったのは、ウィーゾルだ!

「Hoぉう…まだ動けるのカ」
「言っただろ、俺は特別丈夫なんでな!最強だ!ナメンナ!!」
ガブガブと両肩に噛みついて来た鮫幼女を振り解き、仰向けにしてダウンをとる!
「貴様は仲間でも容赦シナイ、というわけだな。コォッハッハッハ…」
「…ぶっ殺す!」
嘲笑うウォンと、ブチ切れて唸るウィーゾルの間に、音もなくマスプロニンジャの壁が立ち
はだかる。背後はゾンビめいた鮫幼女達だ!

「(まずい、なんとか、何か手を打たなきゃ…頭を使うのが私の役目なんだから…)」
その時だ
『…ィ…おお…モシ・シー!?オルカ…ちゃん!!』
「!電波が!…千歳!」


『…千歳!無事なのね!?』
「あんまり無事でも無いー!ヒィ!?」
千歳はとっさにしゃがんで、コウモリマスプロニンジャのカミカゼアタックを回避!
ゴッシャァ!と音を立てて墜落しても、折れた手足でとびかかってこようとするのを
「ていっ!」
ハンマーが蹴落とした。転げ落ちていく階段下には、ゾンビめいた挙動の鮫男が口を開き
哀れなニンジャは牙の餌食となる。

「ヒィ〜!?ヒィィ〜!?」
ドレッドが引きつったような悲鳴をあげる。


『クレーンの上に…追い詰められてる!!上にもコウモリみたいな…』
なるほど、高い所に登ったので電波が届いたのだ。だが追い詰められているらしい。
オルカは聞こえてくる音に耳をすまし、頭脳を集中させる。

「シャッオラァ!!!」
マスプロニンジャを容赦なく叩きつぶすウィーゾル!
「GAAA……!」
「シャァーッ!」
食らいついてくる鮫幼女を、鮫幼女の群れに投げ返す!
「GAA…!」
「ぐあっ!」
背後から別の鮫幼女に噛みつかれた!流石のウィーゾルも手加減しながらでは分が悪い!
「お姉ちゃん……!…シャァッ!!」
「FUGA…!」
オルカの蹴りが鮫幼女をウィーゾルから引きはがす!
「…ごめん」
吹っ飛んでった鮫幼女にオルカは詫びる。

「フッハッハッハッハ!足掻くがイイ…すぐに八方ふさがりだ、巻き網の口は閉じて
イクぞ…コフッ…フッ…ゴハハハハハハヒヒ…」
「はぁ…はぁ…」
血走った目でウィーゾルは睨み返すが、濃厚な洗脳電波を気合で押しのけながらの戦闘だ。
消耗が激しい。
「(どうして何も思いつけないの…なにか、何か手はあるはず…!)」
オルカは唇を噛みながら、ウィーゾルと背中合せになり、包囲に対峙する。

『……ハロゥ?ハーロー…・ぇ聞こ・・るー??』
そんな時だ、ノイズの音飛びの向こうから、能天気な声がした。


「だめだ、全然通じないよー」
ユーニスはオルカのスマホをあちこちむけて、電波を探る。

「GAAAA!!コッチは忙しいンダ!お前なんとかシロ!」
ソウが、飛んできたコウモリニンジャを蹴りで迎撃!
「なんとかって言ったってぇ…。あ、通じた、ハロー」

「てっぺんまで来てもう逃げ場ないし!私達もふらふらしてきたし…!」
「ヴ…NYAGAAAA…!」
ハンマーが担いでいたキャットが覚醒!牙を剥く!
「ひゃぁぁぁあ!?」
「ぎにゃ!?」
「あ、ゴメ…」
バットの代りにされたキャットがコウモリニンジャにジャストミート!気絶!

「よっはっ…わわわっこいつらやっぱり私の方に落ちてくるぅ!!!」
鮫玉を抱えた千歳は、狭いクレーンの上部構造物の上で回避に必死だ!
1歩でも足を踏み外せば高さ40mから真っ逆さま!
もちろん、コウモリニンジャの体当たりを喰らってもだ!

「もーオルカちゃーん、早く出てよー…って、ドレッドのやつどこに…ああ!」
ドレッドは、ドアのようなところから、這うようにしてクレーンの中へ逃げ込んでいるでは
ないか。
「そんなとこから入れたのか!みんなー!こっちー!」
「オゥフ!?」
ドレッドのケツをドアの中に蹴り入れて、ユーニスは手招く。
コウモリニンジャの攻撃から逃れて、全員がクレーンの中へ飛び込み、扉を閉めた!

中は真っ暗だ…。ガントリークレーンの中央付近、クレーン部分の付け根のあたりだ。
狭い小屋のような場所に入る事ができた。

パチッ…。手探りで明かりをつけた瞬間!
「うわぁああああああああ!」
「「ぎゃぁあああああ!?」」
「(((OДO)))」
突然、スパナを持った何者かが殴りかかる!千歳とユーニスは悲鳴をあげた!恐怖というよ
りビックリしたのだ!

「うわぁああああ!!アウチ!」
スパナを空ぶった何者かは、盛大に転び、すかさずソウとハンマーに拘束された!
「痛でっ!なんだお前ら!俺を殺しにきたのか!?」
「…おじさん?フランクおじさん!?」
ドレッドが、スパナの男の顔を見るや、突然声をあげた。
「マーヴィン…?おまっ…こんなとこで…」
フランクおじさんは、周りの千歳やユーニス、ハンマーやソウを忙しなく見渡す。
「ヴヴヴゥ…ぐえっ」
目を覚ましかけたブルーが、ソウに殴られて気絶。

「また悪い連中と吊るんでんのかお前ー!」
「違うよ!」

「いやぁ…状況が混乱してきたねー」
スマホで通話を試みながら、ユーニスが言う
「あ…二人とも、その人は離して大丈夫だと思うよ…」
頷きながら、千歳はソウとハンマーに促した。状況をどう説明したものか…。
バンッ!ガンッ!!ドアの窓越しにコウモリニンジャの顔が!悠長にしている場合では無
かった!

『千歳!あなたたち以外に誰かいるのね!?』
オルカの声がスピーカーから響いた。スマホをスピーカー通話にしたユーニスが画面を
千歳達に向ける、すると、スマホの画面から『向こう側の映像』が立体投影された。


「なんだあれ…ウォンのやつか!?」
「ウィウィ調子悪そうだ…負けんな―がんばえー!」
「艦長!」
「みんな洗脳されてるよぅ…」
無機物と融合するウォン、実体化したスマイルメイカー饕餮、ゾンビめいた鮫幼女達。
映像の端っこに時々、オルカの手足が入り込む。オルカ視点の映像なのだ。
ドレッドとフランクは呆気に取られている。

『千歳!海へ逃げて!鮫は洗脳されてないわ、味方の鮫達と外洋へ逃げるのよ!』
映像が反転して、アップになったオルカが叫んだ。

「でも…それじゃあオルカちゃん達は…」
その時、バガンッ!ドアを破ってコウモリニンジャの群れが小屋の中へ雪崩れ込む!

「ッチィ!GAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
ソウは半鮫の姿へ変身して扉を塞ぐ!

「OMG!!勘弁してくれ!なんなんだってんだよチクショウ!」
奥へ逃げ込もうと、フランクが踵を返すと…。
「ニャァアアアアアアアア!!!」
「SHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
「NOOOOOOOOOOOOO!?」
ゾンビ化したキャットとブルーが牙を剥く!!

「ふんっ!!」
「ニ゛ャ゛ッ!!」
「SHA…!!」
半鮫化したハンマーの腕が2人を拘束!フランクの鼻先で、牙がガチンッと鳴る!

「アアアアア!なんなんだお前ら!畜生化物共め!俺のクレーンから出ていけ!」
スパナを振り上げるフランクの腕を、ドレッドが掴む。
「まってよおじさん!彼女たちは俺を助けてくれたんだ!港の人達もだよ!」
「!?…マジか。じゃあ、そこの二人の女の子も…」
「ワタシニンゲン、鮫じゃないよ」
「ごめんなさい、今は詳しく話してる暇がない…」
千歳とユーニスは頷くと、すぐに行動にうつる。

「海にいけって、階段は無理だし…玉だけ外に投げる?」
「(><)」
「ダメだ、ニンジャに捕まるだろ!」
二人が話している間にも、バンッバン!とドアに突撃してくるコウモリニンジャの圧が増す。
「グッ…ヌグググ!なんでもイイ…ハヤクしロ!」
ソウが押されている、ハンマーも暴れるキャットとブルーから手が離せない。

「…飛び込むしかないな」
「ええっめっちゃ高いけど…下海だし大丈夫かなぁ…?」
「やるしかないだろう」
そういって千歳は、小屋の奥へ進もうとして肩を掴まれた。

「待ちな」
フランクだ。額に汗を浮かべながら、息を整え彼が言う。
「海面まで40mだ、衝突の衝撃はコンクリの床と同じだ。無事じゃすまない」
フランクは、小屋の奥へ進んで行くと、床までガラス張りの操作席に腰を下ろした。

「俺がクレーンで下まで降ろしてやる。代りに、マーヴィンも連れて行ってくれ」
「…私達を信用してくれるの?」
説明している余裕もない状況だが、千歳がそう言うと。
「大事なのは、仲間と家族なんだ…。あと、おっぱいがデカいねーちゃんに悪い奴はいねぇ」
「お?私?へへへ」
にやけるユーニスである。

「まって、フランクおじさんはどうするんだよ…」
「ワタシとソウでニンジャ達を食い止めておくから!」
ソウに加勢して、ハンマーが扉を押さえながら叫ぶ。
「ヴゥ…」
「ニャァァ…」
背中合せに縛られたキャットとブルーが床に転がる、片方がうつ伏せから起き上がろうとし
ても、横に転がって仰向けになって気絶するのだ。扱いが雑だが一応安全である。

「私達が鮫ちゃんとココを離れれば、ニンジャ達を誘導できるかも…あとはオルカちゃんを
信じよう」
「おーけー…じゃあ、1・2・3で飛び出して、クレーンのフックまでダッシュだね」
窓越しに、ユーニスはクレーンのブームを指さす。
照明に照らされ、闇の中へ伸びる鉄骨は、希望への橋となるか、あるいは板歩きの刑か。

「よし、1・2…」
鮫ちゃん玉がアームを伸ばして、千歳にリュックのようにしがみついた。
ハンマーとソウは目配せをして頷く。ドレッドはキャットに噛まれそうになってビビる。

「「3!!走れー!!」」
千歳とユーニスが声を揃え、タイミングを合せ、ソウとハンマーが扉を一気に押し開いた!
凄まじい圧で吹っ飛ばされるコウモリニンジャの群れ!

「GAAAAAAAAAAA!!!」
「UGAAAAAAAAAAAAA!!!」
力を振り絞るように雄叫びをあげ、ソウ・ハンマーは再び半鮫化!力尽きるまでリミットは
50秒といったところだ!

「いけいけー!GOGOGO!」
隙をついてユーニスを先頭に駆け出す3人!すぐにクレーンのブーム部分へ到達…だが!
「っと!まっ!ちょっストップ!!」
「何だ!?」
「おわわっ!!」
急停止するユーニスが、千歳とドレッドに押されて危うく落ちそうになった。

操縦室から見ていた時は余裕で歩けそうに見えたが、そこには手すりも足場も無い、ただの
鉄骨の柱が、真っ暗な海に向かって突き出しているだけだ、地面は40m下だ!眩暈が襲う!

「大丈夫だ!フックを一番手前まで移動させる!」
操縦室からフランクが叫ぶ。ブームの先端から、コンテナを釣り上げる巨大なフックがゆっ
くりと近づいてくる。

「早く早く…」
「ギギギギギギ!!!!」
「うわぁ!?ニンジャこっち着たぁ!!」
「うおおお…オラァア!!」
間一髪、飛び込んできたソウが、ニンジャの足を引っ掴み、群れへ目掛けてぶん投げた。

「まずいな押されてる…!」
「押されてたらどうするんだ!?」
「こっちから進むしかないな…」
「しょうがないなぁ…チトセ、手」
「お前らマジかよ!?」
千歳とユーニスは早々に覚悟を決めると、手をつなぎブームの上を歩き始める。
「おおい!俺には無理だ!置いてかないでー!……アアアアアア!?」
腰を抜かしていたドレッドだが、足元にコウモリニンジャの首が転がってくると、這うよう
に後を追う。



「焦らずに来い、それと下を見ないのがコツだ…下見ても平気なヤツもいるが」
千歳は振り向かずドレッドに声をかけると、ユーニスと共に歩を進めて行く。
慎重かつ大胆に。その表情は何か楽しそうだ。
「…こうしてると思い出すな……」
「チトセも?多分、私も同じ事を思い出してる!」
「おまえもか?」
「うん、あれしか無いよ!」

「「バレンタイン!」」
二人同時に言うと口元をニッと笑みの形にする。
バレンタイン。ナイトプールで参加したアスレチックの事だ。
二人にとっては思い出の夜。
こんな危機的状況だからこそ、楽しき思い出は力をくれる。
しかし、その一方で……
「クレイジー!なんでおまえら楽しそうなんだよー」
二人の背後からドレッドの情けない声が飛んできた。

「あ!私達、エンターテインメント方面のデビュー目指してるから」
「うん、だから飛んだり跳ねたりは得意だ」
もしこんな状況で無かったらくるっと一回転して見せたかもしれない
「本職かよ!おまえらもニンジャだったのか!」
「いや、私達はニンジャではないが……」


そうこうしている間に真下にフックが見えた。
「よし!フックの上まで来たぞ!」
「あ、思ったより大きい?」
「十分行けるな?」
コンテナを吊り下げる大型のフックを見ながら二人は言葉を交わす
しかし……
「おまえらのクレイジーな奴と常人の感覚を一緒にするなよ!」
ドレッドから見れば小さな小さな空中ブランコだ。

「私達が手本を見せる」
「うん、私達二人でキャッチするからさ!」
「はぁぁぁぁぁ!?無茶を言うな…あおぁ!?」
ドレッドの声が茫然から悲鳴へと変わった。
三人の間を黒い疾風が突き抜けた
コウモリニンジャの襲撃だ!

「気付かれた!来……」
「OMGッァァァァァ!!!」
千歳が『来い』というよりも先にドレッドが落下した
コウモリニンジャの翼が僅かに掠めただけ
しかし、それはドレッドがバランスを崩すには十分すぎた。

「ドレッドヘアの人ぉぉぉ!?」
「ん?待て……」
千歳はその場に屈むと目を細め、暗闇の先に目を凝らす。

フックの先に蓑虫の様に何かがぶら下がっている
よく見れば蓑虫には手足があり、特徴的な髪型の頭があり
「引っかかってる?フックに引っかかってる!」
「わぉ!なんてラッキーな奴なんだ!…一度言ってみたかった!」
気を失ってはいるがドレッドは無事だった。
運よくフックに引っかかり海に叩きつけられる運命を回避していた
それだけではない
一つ間違えばフックに刺さっていた可能性だってあった。

「本当に運のいい奴だよ。さ、私達も降りよう」
「そだね。あー…ガンマンのおっちゃん大慌てしてる?」
操縦室の方を見れば、ガンマンのフランクが顔を張り付けながら窓を叩いてるのが見えた。
甥っ子が落下したのだ、驚くのは当然の事だろう。
一先ず、彼には「大丈夫です」と身振りで伝えた。
…伝わったかな?

二人は頷き合うとブームの隙間を通り抜け
整備作業用の梯子を伝いフックへと降りて行く。
大型のコンテナを扱うクレーンだけあって足場にするに十分な広さがある。
…とは言っても40mの高所から落下すれば命が危ういが。

「よし、降ろしてもらおう」
「チトセ待って?コウモリニンジャがこっちに!」
「え?こんな所に突っ込んで来たらワイヤーで……」
そこまで言って千歳ははっとした。
あいつらは自分達の命を省みない、平気でカミカゼアタックする連中だ。
例えワイヤーで身を切り裂かれるとしても止まる事は無いだろう。

「隠れる場所も無い、このまま降ろして貰おう」
「チトセ?」
「動いてる目標なら狙いを定め辛いと思う。それに……
 このままだとドレッドヘアも危ない」
下を見ればフックにはドレッドが宙ぶらりん状態のままだ。

「わかった行こう!おーい!」
頷くとユーニスは操縦室の方へ手を振る。
「目立ちすぎ目立ちすぎ……」
「へふぃ……」
「まったくおまえは緊張感が…おっ?」
足裏に振動を感じるとクレーンが動き始めた。

「…遅い……」
「重い荷物を運ぶ重機は…っ!?耳が痛い……」
耳にキーンと高い音が響く。耳鳴りにしては何かおかしい
それに千歳だけでなくユーニスも耳に触れながら不快な表情を浮かべている。
「なんの音?クレーン壊れた?」
「わからない。わからないがピンチなのは確かみたいだ!?」

気付けば移動するクレーンの周囲に赤い光点が集まり始めている。
「まさか一斉に特攻してきたりしないよね…?」
「いくら死を恐れない連中でも、そんな馬鹿な事は……」
「馬鹿な事するみたいだよー!?」
赤い光点の一つが突っ込んで来た!
突風を纏う特攻。
そのまま二人の横をすり抜けると空中に停止。

「わぁ!?」
「揺れる揺れる!?あ!ドレッドヘアの人が!」
「なんてこった……」
今の揺れでドレッドがフックから落下してしまった
海面まではまだ十メートル以上ある。
正しい姿勢で飛び込んだのなら大丈夫な高さだが……
今の彼は気絶したままの状態。
だが!そこへ……

「SHARAK!」
「鮫だ!」

落下したドレッド目掛け海から鮫が飛び出してきた。
もし鮫映画であったのなら、ドレッドの命はここで終わっていたのだろう
しかし、そうはならなかった

「…SHARK♪」
「ナイスキャッチされた!」
「…味方の鮫だったか…よかった」
そう、今の二人にとって鮫は味方だった。
「(^▽^)」
千歳の背の鮫玉に笑顔が浮かぶ。

「ありがとう、心配の一つが減ったな」
「チトセー!心配が纏めてやってきたー!」
「…え?」
声に振り向けば、赤い光点の群れが一斉に特攻してくる!
避けられない!そう悟った直後
千歳とユーニスの方はコウモリニンジャにナイスキャッチされた。


「放せー!!」
「このっこのっ!」
「ギギギ…」
二人は腕を振り解こうともがいた。海面まで十m足らず、高度が下がる。
人に翼をつけただけでは容易に飛べないのは、イカロスの時代から同じである。
人ボディにコウモリの翼をつけたコウモリニンジャも、二人の体重を支えきれないのだ!

海面に見たこともない程の大きな背びれが、輪を描いて走る、あと少しで味方の鮫の
牙の届く範囲だ。二人は抵抗する腕に力を込めるが!
腕が毛むくじゃらの腕に掴まれた。下降が止まる。

「ギチギチギチギチギチ……」
陽が暮れていたのが幸いだった。その様子がはっきりとは見えなかったから。
次々に突っ込んでくるコウモリニンジャ達が合体して膨れ上がっていく!
まるで無数の蟲の群れが蟲毒めいて蠢く、地獄の様相だ!
衝突の際に、合体しきれなかった手足や頭が海中へ落ちて、小さな鮫が群がった。

翼が広がり羽ばたく!波飛沫を立て巨大鮫が食い下がる!
足を噛みちぎられながら、集合体コウモリニンジャは夜空へと千歳とユーニスを連れ
去った。



『Haはハハハ…莫迦め!みすみす逃がs ・ハズがなかろう。苦ルし紛れカ?」
「シャァッ……!ぐぅ…!」
マスプロニンジャを殴り飛ばしたウィーゾルが膝をつく。
「お姉ちゃん!」
駆け寄るオルカに、鮫幼女達が群がり、二人を取り押さえた。

「オルかぁ…貴様は洗脳に耐性があるようだが…。横のそいつはMoはや意識を保ツ・のも
ゲン界のようだな」
悔しそうに睨み返すオルカを、ウォンは嘲笑する。その顔は、歪んだ仮面と化している。

両者の間に異形の巨大コウモリが降り立ち、泥のごとく形を崩した。溶けた肉のこびりつく
白骨の山に、スマイルメイカー・饕餮が腕を突っ込むと、中から千歳を引きずり出す。

「うっ…げほっ!ごほっ…オルカ…ちゃ…」
『Ha------はははHaHa!!!全て!手に入れタ!!』
饕餮の爪が、千歳の背から鮫玉を引きはがすと、残りは無用とばかりに投げ捨てる。
拘束されたオルカは、地面に転がされた千歳と見つめ合った。

「サンザン手こずらせてくれたな…。まぁ、良い…あとは・コイツヲ・励g縺?…とりこめ
ばワタシは完成スルぅ…。クククッ…ははぁ…そうなれば、そこの人ゲン共と、お前の姉に
オルカ、貴様を殺させてヤろう…ククッグッグ‥ぐへはHa把!」
饕餮が後頭部まで裂けた口を開き、長い舌で鮫玉を絡めとる、鮫ちゃんが必死に抵抗する
が水面でもがく蟻の無力である。

「ヤメロぉ…ッ!!」
千歳が叫んでも、もはや時すでに遅し。拳で地面を殴る。
拘束されたまま、オルカが千歳の手を握った。
土壇場にあってその手は、力強い…。

「トレーニングを思い出して。集中して、五感を閉じて意識だけを開くの。私ともう一
度リンクするのよ」
オルカの瞳は、希望を失って居ない。もう片方の手は、ウィーゾルの手を握っている。

『ワタシィの勝チダァアアアアアアアアア!!!Haaaaaaaaaaaaaaaa!!』
ウォンの絶叫、空中で破裂する放電、鮫幼女やニンジャ達の呻き、ゲロってるユーニス…
「……」
千歳は小さく頷くと、外部のノイズ、そして自身の思考までもシャットアウトする。
ただ活動を止めるのではない、その真逆。知覚や思考に割いていた脳の処理能力を
単一の目的のために割振るということ、極限のコンセントレーション!達人の思考域!

『すごいわね、こんな状況ですぐにリンクできたんだ…』
オルカの意識と、鮫電脳空間で繋がると、そこは暗い海の中だった。
『オルカちゃんが、あいつは絶対にタダじゃすまさねぇって顔してたから、何か手があるん
だよね』
並んで海中に浮かびながら、千歳は応える。
『……そうね。タダじゃあすまさないわ』
オルカの手が気泡を立て、闇を撫でる。浮かび上がるシルエットは…。



「揃った…!!全てi100g縺斐∪豐ケ・が揃ったゾォォ!!Ha把把ハ!は!!
おお!全てのネットが分かる!地球全土の人間共のォ意識が!我が掌中にィィ!!
嗚呼!容易い1もはや意のままにすることが何とも容易い!こんなにも拍子抜けする程に
あっけないものか…フッハハハハ!ヘァーッハッフブッフホハハハ!!!
……否、これが始まりか」
ブチブチと体から生えたコードを引きちぎり、ウォンは立ち上がる。
そして、金色に輝く玉座へ、鷹揚に腰をおろし、両手で龍の肘掛の頭を掴む。

「今この時より、私が天下の全てを統べる。万物・万民・須らく!
皇帝…否、地球始皇帝を!私を仰ぎ拝するのだ!ハハハハハァーハハハハ!!!」
『コォォォォォォオ!!!!!!!!!!!!』

ポポッコッ、コッコッ、ポッ、ポ…コココ…

「何ダ?」
『コォ?』

不気味な小鳥の囀りがした。慶兆を祝う、瑞獣の出現とは真逆の不気味さである。
玉座の前に、ぼろ布を纏った骸骨めいてやせ細った亡霊が浮かんでいる。
スマイルメイカー・オリジン
それは、千歳に憑りついた最初のスマイルメイカーであり、すでに千歳によって浄化された
亡霊のはずだが…。

「ふんっ、悪あがきか…」
玉座の下に倒れて、手をつなぐオルカと千歳を、ウォンは睥睨し笑う。

「今さらこんなもので私が動じるとでも……」
饕餮が足をあげて、オルカと千歳達を踏みつぶさんとする…その時だ!

『コポォォォォォォォォ!』
『コォォォォォ!?!?!?!?』
オリジンの枯れ枝のような拳が饕餮を一撃でノックアウト!!
「何ィ!?」
『コポォォォォォォォォ!』
オリジンの枯れ枝のような拳が玉座を粉砕!ウォンはとっさに上体をひねって回避!
『コポォォォォォォォォ!』
ボロ布から足が生えて、倒れた饕餮の腹をストンピング!
『コォッ!?』
『コポォォォォォォォォ!』
ストンピング!
『コボォロロロロ!』
「(xx)」
吐き出された鮫玉が、放物線を描いて宙を舞う!

「救出完了…きったなっ!」
鮫玉をキャッチしたオルカが、まとわりついたぬるぬるに、うえーって顔をする。

「おるf…オルカ!貴様!?」
「きさっ…きっ…マ!?」
完全に気が動転しているウォンは、気が動転している!

「あ?何でって言いたいの?」
「…!?」
ただただ、ビビリ散らかしているウォンに、オルカは
「言ったでしょ、一千万年早いのよあんたには」
平然と言ってのけた。

………
……


「マーヴィン!こっちだ手を伸ばせ!」
「わっぷあっぷ…!」
岸壁の近くでバチャバチャともがいてるドレッドの背後に、スゥーと鮫の背びれが近づき。
「マーヴィィン!!!」
ザバァアアアア!!鮫が岸壁の上に押し上げた!
「ぎゃぁああ!たす…助かった…」
「お前!喰われてないか!?」
千歳達と一緒にクレーンで海面に降りようとしたドレッドは、1人だけ巨大鮫の泳ぐ海に
落とされたのだ。
巨大コウモリに合体変化したニンジャ達が、千歳とユーニスを攫うと、他のニンジャ達も後
を追ってクレーンから居なくなった。それで、フランクは地上に降りてきたのだ。

岸壁の下から潜水艦みたく巨大な鮫が顔を出した。
「ヒッ…」
フランクは思わず息を呑む、鮫は瞬膜を使ってウィンクしてみせると、飛沫を立てて海へ
潜った。
今まで、なんの目撃報告がないのがおかしいと思えるほどの巨大鮫だった。
街の灯を背にうける埠頭で、ヨットの帆のような背びれの群れが悠々と泳いでいる。

フランクは、とりあえずスマホで写真を撮った。現代人のサガである。
「ほんとに鮫が助けてくれた…」
「おじさん!後ろ!?」
暗闇の中を、何かが駆けている、分厚いコンクリで舗装された港の地面すら揺るがして。

フランクとドレッドは、とっさにクレーンの影に身を隠した。
近づくどよめきは、無数の足音だ!そして無数の光点が波めいて迫る!またニンジャか!
「…人?普通の人だ!」
様子を伺っていたドレッドが言った。
光点はスマホの明かり、凄まじい数の群衆が、スマホを片手に駆けているのだ!

これだけの数がいたら、将棋倒しや衝突などの事故が起こりそうなものなのに、腕や足を
ぶつけることすらなく、大群衆が駆けていく。

「どうなってんだ…?」
「もしかしてこれか…?」
フランクがスマホを、ドレッドに見せた。
ネット接続が回復したから、さっそくSNSをチェックしたのだ。現代人のサガである。
「………」
「………」
画面を覗き込んだ二人は硬直した。

………
……


「そもそも、”スマメイ”の力を得たのに、オフライン作業に拘ってた時点で変だと思って
たのよ」
千歳とウィーゾルを助け起こしながらオルカが言った。

そう、スマイルメイカーの真骨頂は、ネットワークを通じて人間の無意識に働きかけ、洗
脳、操作することである。
だが、ウォンは、港周辺のネットを切断していた。

ユーニスをヘドロから引っ張り上げながら、オルカが続ける。
「それで、千歳以外の人間が、あんたの影響下で意識を保ってたから、気付いたの。
あんた、”まだ人間は操れない”」
スマイルメイカー本来の機能を使いこなせない、スマイルメイカー・饕餮は不完全だったのだ!

「私が、千歳達に外洋に逃げるよう指示した時、あんた、あからさまに私達にトドメ刺すの
放り出して、千歳達を追ったでしょう。
’’圏外’’もあるし、鮫ちゃんを取り込まない限り、ネットに晒されちゃヤバイ、余裕ぶってる
けど、’’実はリソースいっぱいいっぱい’’って分かったから……」

『コッコ…ポポ…』
オリジンの周囲に無数のブラウザとSNSのウィンドウとタブが展開し、目まぐるしく更新
されている!

「一番油断する、大願成就の瞬間に、あんたと饕餮の頭の中を、千歳のスマメイで
乗っ取っとり返してやったのよ!」
「私のスマメイを使うって言われた時は、正気かよって思ったけどね」
ユーニスに肩を貸しながら、千歳は溜め息した。

「ごめんね、千歳も利用させてもらった。
だって、千歳と鮫ちゃんを捕まえるのに夢中になってれば。ウォンは、私のコイツを、気付
かずに持って来てくれるって思ったから」
オルカがスマホを掲げる。画面には次々とプログラムが走り処理されていく!
千歳とオルカが出会った時、偶然取り違えたスマートフォン!
今回の騒動の全ての基点!

「人に寄生して、変化したスマメイは、私のスマホで制御できない。
あんたの饕餮とかはね。
でも、千歳についたスマメイは、千歳が自分の意思で拒絶して自分から叩きだした。
欲望の誘惑に負けなかった彼女のおかげで、私は’’こいつ’’を’’正しく’’使える!」

見た目は千歳のスマホと似ているが、中身は世界中のスパコンを束ねたよりスゴイ鮫幼女
のコンピュータで、スマイルメイカーの本来のハードウェアなのだ!

「そんな、バカな…貴様らごとき!こ、小娘どもがッッ!?わたしの!私がぁァァ!!何年
何十年ンン!!ああああ!かかったけいk…計画が!30年年のなぁ!?3ジュゥサッう」
ろたえるウォンに、オルカの蹴りが襲う!鼻血が吹き出す!

「鮫ナメンな。ナメられたら…ぶっ殺す!それが!鮫幼女よ!」
「ゴバッハァァ!!はっ!!はひ…と、饕餮!!!」
『コォォォォ!!』
オルカに蹴り飛ばされ、這うように逃げ出したウォンは、饕餮を呼ぶ。

巨大な拳を、オルカはなんなく回避、着地した先には、洗脳から解かれたウィーゾル、
そして鮫幼女達が並んでいる!

「ギギギギギギギギギ…」
「ギギギギギギギギギ…」

鮫幼女達をマスプロニンジャ達が取り囲む。もはや悪あがき!

「情報規制はとっくに解いたわ、今、ここの情報は拡散されて世界中に発信されてる。」
「バカナァ!そんなことをすれば、貴様らの正体も愚かな人間共に知れ渡ることになるぞ!」

「…ソれがどうした」
唸るように答えたのは、ウィーゾルだ。

「俺らが、ニンゲンから逃げ隠れしてるともでも思ってたのかよ。
笑わせんな、てめぇらが、俺達を見つけられねぇだけだ、鮫は強いからな!」
「…!」
驕りはなく、弱者の存在を担保に、強者を取り繕うこともない。
鮫である。鮫故に強い!強いのはサメだからだ!真の強者だからだ!!

「あああ…あああああ!!!殺せぇ!全員殺せ!!ぶち殺せ!!トウテェェツ!!!」
『コォォォォォォォォォッォォォォォオォォッォォオッォオッォオ!!!!!!!』
『ギギギギギギギチギギギチチギ…』
スマイルメイカー・饕餮がマスプロニンジャがとびかからんとする!

カッシャー!カッシャー!眩いフラッシュが光り、ウォンがまぶしさに顔を覆った!
「すっげー!マジでニンジャいんじゃん!」
「こんなイベントあったなんて、誰も知らなかったの?ツイートしなきゃ!」
「ねえそこのあなた、セルフィーいい?」
「港で変な潜水艦見つけた…と(画像投稿)」
いつの間にか、周囲には人だかりができている。

「よっしゃ一番ノリだ!賞金ゲットォォ!」
「私よ!そいつは私の獲物よォォォ!!」
「100,000$!100,000$!100,000$!100,000$!」
それどころか、群衆はニンジャを恐れることなく、群がって押さえつけている!
思わず千歳はオルカを見る!
「…マフネオス港でゲリライベント、ニンジャを捕まえたら10万$」
そう呟きながら、オルカはスマホの画面を見せた。

よくみたら、群衆はみんな目の色がヤバイ。スマメイの洗脳だ。
オルカはニンジャ達にたいして、市民を煽動してぶつけたのだ!
「オルカちゃん!?無茶すぎない!?って、ユーニス!お前だはだめだ!?見るな!」
「おわっ!?」
スマイルメイカーの洗脳は、ネット経由で、スマホやPCから感染するのだ。
千歳は、ユーニスの頭を胸に抱き込んだ。その胸は割と豊満だった。

「むぅー…」
奥の手が、まさかこんなだったとは思わなかった千歳は、オルカを睨んだ。
手を打たなければ、人類総奴隷化だったとはいえ、あまり褒められた手段ではない。
「べぇ」
オルカは舌を出して笑った。
千歳は、溜息して、せめてけが人が出ないことを祈った。

「あああ!クソ共が死ィィィ…!!」
群衆の1人に掴みかかり、クナイダートを突き刺そうとするウォンを、無数のスマホの
フラッシュが取り囲む!

「…殺さないの?」
「ヒッ…ヒッ…!」
ウォンの手がぶるぶると震える、闇に紛れ社会の暗部を盾にしてきた。その化けの皮をはが
され、無数の目に晒されたのは、ただの臆病者である。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
ヤバレカバレ!ウォンがクナイダートを振り下ろす!
「シャァァァッ!!!」
「ぐがぁあ!!」
ウィーゾルの飛び蹴り!血反吐を巻きちらしてウォンは海へ落下!

「野郎ども!喰らいつけ!!!」
「「「「「グォアアアアアアアアア!!!!」」」」」
鮫幼女達が一斉に駆け出す!
司令塔を失ったニンジャたちは、狼狽え、散り散りに逃げ出した!
「ニンジャが逃げたぞぉぉぉぉお!!」
「追えぇぇえええ!!」
「100,000$!100,000$!」
「いくぜマーヴィン!いやぁあああっはぁああああ!」
「うぉぉぉ!フランクおじさん!俺はやるぜー!」
群衆たちも走りだす!
その中に見覚えのある二人組も居たような…?

「よし私達も…うぅっ」
「うぇ、口んなかねばねばする…チトセ!?大丈夫!?」
ふらっとする千歳をユーニスが抱き支えた。

「後は、ウォンのスマメイを停止すれば終わりよ」
「(?????)」
スマホを片手に、オルカが言った。抱えられた鮫玉もご機嫌そうである。

背後で、マスプロニンジャ達は鮫幼女にやられたり、群衆に伸し掛かられて、タールのよう
な泥に溶けている。
ウォンを失って、もはや力を維持できなくなっているのだ。
暗がりの向こうから、ウィーゾルの雄叫びが聞こえる。やられた分を倍返ししているのだ。

『コォ…ォォォ…!』
スマイルメイカー・饕餮が、起き上がろうとしたところに、スマイルメイカー・オリジンの
口元から不気味な文字列の輪が、シャボン玉のように飛んで、四肢と首に枷となり、地面に
縫い止めた。

「これで完了、こいつを消去すれば、ニンジャ共は消えるし、艦も元通り」
「まさか、切り札がスマメイの力なんてな…」
ユーニスに肩を借りながら、千歳が立ち上がる。

言ってみたが、これはコミックや映画じゃないのだ、1人の正義感よりも、世界を洗脳でき
る装置の方が強いのだ。ちょっとだけ悔しい気もする。

「使い方次第よ。千歳がウォンみたいな奴だったら、人間の世界はとっくに終わってた」
そう言うと、オルカはスマホを千歳に差し出した。

画面には、日本語で『実行すル』と書かれたボタンがあった。
オルカが日本語対応してくれたんだろう。背後で饕餮が恨めし気な呻きを上げている。
これを押せば、決着がつく。
海に落ちたウォンはどうなったろう?考えるまでもない、制海権は鮫の物だ。

「チトセ…」
なにか、不安に感じたのか、ユーニスが見つめてきた。
「…」
頷いて、千歳は、ボタンに指を乗せた。

◆8 Edit

千歳が、ボタンをタップしたのと同時だった。
オルカの背後にいたスマイルメイカーが、何の前触れもなく、伸びた。

顔の無いスマイルメイカーが、とつぜん鮫のような大口を開けたのだ。

ゾゴリッ

ぶじゅ…ぐっちゃ…。嫌に湿っぽい音がして、スマイルメイカー・饕餮は首を食い千切られ
て消滅した。

思ってたんと違う…。考えていたより気味の悪い幕切れだ。
オルカは鮫だから、トドメの刺し方も暴力的なのかなって思ったけど。
オルカの背後に、異常に大きなスマイルメイカーの口が迫って……。

「オルカちゃん後ろ…!」
「(!)」
「え?」

スマホが地面に落ちた。
包み込まれるように、オルカは抱えていた鮫玉諸共スマイルメイカーに飲み込まれる!

「オルカちゃん!!」
唯一外に伸びていた腕を千歳は引っ張ったが、びくともしない。腕を伝ってスマイルメイ
カーの体の一部が千歳の方まで伸びてくる。
底なし沼に引きずり込まれるように、オルカの腕がスマイルメイカーの体に沈んでいく…。

突然、グンッと体をひっぱられた。
ユーニスが、千歳を引き離したのだ!二人して尻もちを突いた。

オルカを飲み込んだスマイルメイカーは形を崩して、渦を巻きながら巨大化していく!
バギャッ!!玉座が!歪なジグラッド神殿の列柱が破壊される!
ゴバォォォ!!!ニンジャが!鮫幼女達が!真っ黒な波に飲まれて消える!

「なんだ!?なんだこれ!?」
「こういうときは!逃げるんだよ!…ウィウィ!?」
「GROOOOOOOOOOWWWWWWWWW!!!!」
嵐のような破壊を突き破り、ウィーゾルが飛び込んできた!
牙を剥き出し!目を血走らせ!オルカを喰らったモノに拳を叩きつける!

「ウィウィ!」
ユーニスが叫ぶ!ウィーゾルの体は、怪物に飲み込まれる!
その姿は…漆黒のサメ!!黒い巨体!大きな目玉に黒目はなく、白目を剥く!

ゴボゴボ…。

漆黒のサメの全身が泡立ち、弾けた!!
中から、繭を破るように、真っ白な少女が現れる!!!

「……」
その顔には目深に被ったフードで隠されて、表情はうかがい知れない。

「オルカ…ちゃん?」
千歳は呟いた。飲み込まれはしたが、まだ無事であって欲しいと思ったのだ。
ドレスを着こんでいるのに全裸のような、蠱惑的な衣装を纏った白い少女が近づいてくる。
その背中には、白いサメの尾びれが揺れている。

「止まれ!」
ジャカッ!ユーニスは、素早く拳銃型の武器を白い少女に向けた!
深海魚のミイラみたいな拳銃は、鮫幼女の武器だ、潜水艇に積んであったやつだろう。
ユーニスはこういうとこぬけめない。

そして、油断なくユーニスは少女を睨んだ、その姿、あきらかにオルカとは違っている。

「ユーニス!」
千歳が叫ぶ、止めようとしたのか、それとも…。

白い少女が近づいてくる。ユーニスは躊躇なく胴体を狙って2発撃った。
光線が闇に軌跡を引く。
ビームは、白い少女の体を貫通して、赤い穴を2つ空けた。…それだけだ。

銃声が続いて、少女の体に穴がふえたが、その歩みになんの影響もなく。
ユーニスが銃を鈍器にして殴りかかろうとしたのを、少女は手をかざして止めた。
ユーニスの手から銃が落ちて、虚ろな目をして立ち尽くす。

白い少女が、千歳を覗き込む。
フードを被ったその顔は、不気味な笑みを刻んだ、お面をつけている。



「…んくっ!」
千歳の口から苦し気な息が吐き出された。
言葉を絞り出そうとして、なんとか絞り出したそんな息。
心臓が痛い苦しい。氷で握られている様な感覚。
もしこれを言葉にするとしたら、恐怖。
得体の知れない恐怖が千歳の全身へと広がっていく
だが恐怖は驚愕へと変わる。

コロン。白い少女の顔から仮面が落ちた。
「え……」
そこに現れた顔、それを見て千歳の心臓はドキリと高鳴った。
(綺麗……)
こんな事を思ったら、ユーニスに泣き付かれそうだが
少女の顔は千歳がこれまでに出会ったどんな女性よりも美しい顔をしていた。

長い睫毛、輝くトパーズの瞳、小さく柔らかな唇……
スマイルメイカーの象徴的アイコンであった仮面は
いつの間にか白い少女の左髪に髪飾りとして収まっていて
それがまた彼女の愛らしさを引き立てる

なにより、どこかで出会った様な不思議な感覚
それが千歳の鼓動を早くする。
しかし同時にそれが千歳に違和感を覚えさせる
少女の顔はあまりにも整い過ぎている
きっと彼女の顔を見た誰もが彼女を美しいと感じ
好感を覚える事だろう

少女は自分を作り上げた?

彼女の顔を見詰めるうち、千歳の中にそんな考えが生まれた
誰もが好感を持ち懐かしさを感じる顔……
そんな顔を作り彼女は何をしようと言うのだろう?
彼女の目的はなんだ…?
考え始めるよりも先にそれは起こった。

「マ…マ…こわ…い…の?」

「…!?」
千歳は驚きと共に唾を飲み込んだ。
スマイルメイカーが喋った!
今まで鳥の囀りの様な音色を発するばかりだった彼?彼女?
それが言葉を喋った
確かにこれまでスマイルメイカーの意思を感じる事はあったが
明確な言葉として聞いたのはこれが始めてだ。
それよりも、もっと驚くべきところがある。

「は?ママ?えっと…私?」
言って千歳は大きく開いた表情で自分の顔を指差した。
すると少女はこくりと大きく頷き言葉を続ける。
「うん、ちとせは私のママ。それともお姉ちゃんがいい?
 でもやっぱりママがいいかな?」
「待て待て!なんで私が貴女のママなの!?」

「私はちとせによって生まれたから。
 おるかママが私の素を作り、ちとせママによってこの世界に生まれた」
「…ああ、そう言う認識なのね」
無邪気に語る少女の言葉に千歳は自分の額を指抑える。
頭が痛くなってきた。メンタル的な意味で。

白い少女…スマイルメイカーは高度なAIだ。
一つの個と呼べるほどに自分を持ち、自我を持ったAI。
そして彼女は「ママ(千歳)によってこの世界に生まれた」と言った。
それはつまり、千歳が起動した事でこの世界に誕生したと言う事。

「…じゃあ貴女にとってウォンはなんなの?」
「知らない、興味ない、アレは私の事を見てないから
 見てもらおうと思ったけど、アレは私を全然見なかった」
「そう…なんだ……」
白い少女の話を聞くうち、千歳はこの少女が哀れに思えてきた。

この少女…スマイルメイカーは千歳に甘え
そして、自分を見てほしいと言っている
それはつまり、自己の存在を認めてほしいと言う事。
ウォンはスマイルメイカーに「力」を求めた。
道具としてのスメイルメイカーを求めた。
それはつまり、力を齎す存在なら誰でも良いと言う事。
ならばと千歳は言葉を続ける。

「じゃあ、もうやめにしない…?」
「なにを?」
「こんな事。もう自由になって、貴女の力を生かせる場所を探そう…ね?」
言って千歳は首を傾げながらぽんっと小さく手を打ち合わせた
ここまで、スマイルメイカーは恐れるべき怪物の様な存在であり
感情的な話は通じないと思っていた
…が、この無邪気な少女と話をするうちに
千歳の中に話が通じるのでは?そんな考えが芽生え始めていた。

それに、この少女の中にはオルカがいる
白い少女にオルカの意思が混じった事で理性を得たのかもしれない
今ならば、スマイルメイカーとの交渉も……
しかし、そうはならなかった

「ううん、もう見つけた」
笑みを作りながら少女はそう言った。

「え…?」
「教えてくれた。おるかママがちとせママが…みんなが教えてくれた」
「何を?何を見つけたの?」
今度は千歳の方が少女に顔を近付ける。
言葉次第では、スマイルメイカーとの対立はまだ続く事になる。

「今度は私が皆の願いを叶える。ママになるのお姉ちゃんになるの」
「え…?」
千歳は再び「え?」と言った。続く言葉は千歳の予想もしない物だったから
ママになる?お姉ちゃんになる?どう言う意味だろうか?

「アレ…ウォンの方法では私の願いは叶わない。
 でも見て知った、おるかママとちとせママを見て知った、わかった」
「何が…わかったの…?」
「私が必要とされる方法」
白い少女は口を三日月の形にすると両手を大きく広げた
纏うドレスが翻り周囲に光の粒子が舞い散る。
「うくっ……」
光の吹雪に千歳の視界は閉ざされる。

何かが起きようとしている、とてつもない何かが。
止めないと!しかしどうやって?
考えるが思いつかないまま、それは終わり……
始まった。

「ああ、わかる…みんなが満たされる…私が満たされる……」

「…え…何を?何を……」
眩んだ目を慣らしながら開けば
白い少女は恍惚の言葉を呟きながら天を仰ぎ見ていた。
「一体何が起こった…?」

「う…うぉ!?」
「…ユーニス?」
背後から声が、ユーニスの声が聞こえた。
スマイルメイカーの力によって意識を奪われていたユーニスから声が
「意識が戻ったのか…!?」
この危機的状況、ユーニスの意識が戻ったのなら力強い事この上無い
なにより、千歳にとってユーニスは最高のパートナー
一人で困難な事も二人一緒なら、なんとかなる!
しかし、そうでは無かった……

「うへへ…ままー」
「お、おい?」
千歳が声をかけるがユーニスからの反応は無い
ユーニスはアヒル座り状態のまま、うわ言を繰り返すばかりで
その瞳は千歳の顔を写さず、虚ろな笑みを浮かべていた

「ゆーにすママは素敵な夢を見ているの」
千歳の背後で、白い少女が微笑み混じりに囁いた
「夢?素敵な夢だって?はぁ!?」
困惑の表情のままユーニスを見れば
ユーニスの髪には白い少女と同じ位置に、仮面の髪飾りが付いている
「これに取り憑かれたのか……」
仮面の髪飾はおそらく、少女とユーニスを繋ぐ端末の様な物なのだろう。
もしかしたら、少女の分身かもしれない。

「理想のママと甘い甘い夢を見ているの。これって親孝行?」
「こんな親孝行があるか!…?がれない!?」
千歳はユーニスの襟首を掴むと髪飾りを剥がそうとするが
掴めない無い。それどころか爪にひっかける事さえ出来ない

「ユーニス起きろ!起きろ!」
ならばと今度はユーニスの頬に数度ビンタを放つ
しかし……
「うん♪ママー私いい子にするよー…えへへ」
ユーニスは虚ろな笑みを浮かべ続けるばかりで目覚める気配が無い

「畜生……」
「ちとせママ大丈夫だよ、みんなで幸せになれるから」
「!?」
白い少女が再びドレスを翻しながら両手を広げた

『オウ…ママー、俺悪い事から足を洗うよー』
『かあちゃん…かあちゃん……、これからは親孝行するからよ』
『あったかい、ずっといっしょだよ……』
『ままぁままぁ、上司が意地悪するんだよぉ』
『仕事よりお姉ちゃんだよー』

「なんだ…これは…!?」
白い少女を取り囲む様に、何千何百のモニタースクリーンが投影され
そこに仮面の髪飾りを付けた人々の姿が映し出される
性別も年齢も人種も様々。
見覚えのある顔もある、ドレッドヘアにガンマンのおっちゃん……

そして全ての人々に共通するのは
虚ろな瞳で至福の笑みを浮かべていると言う事
『スマイルメイカー』
千歳はその名の本当の意味を理解した……


白い少女は、瓦礫の上に残った半壊した玉座に、ふわりと腰かけた。
足元からスマイルメイカーの黒い粘菌が生えて、王の錫杖ようになり少女の手に握られる。

主が座すると、瓦礫の山は荘厳なる古の神殿の雰囲気を纏い、闇の中に白く浮かび上がる。
人々は、皆恍惚とした表情で跪き、幸福を与える支配者の誕生を甘受しているかのようだ。
欲望を司る、見目麗しき女王の誕生である。
人々が己の欲望に屈し、快楽と引き換えに尊厳の全てを投げ捨て、支配は完成した。

「ちとせママには特別な役目があるよ」
「役目…?うわっ!?お前…!」
突然、仮面の飾りをつけられたドレッドヘアに千歳は押さえつけられた。
「このっ!放せって!!ユーニス…お前もかよ!?おきろバカァ!!」
虚ろな笑みを浮かべる人々に千歳の声は届かない…。

「洗脳能力は健在かよくそっ…!」
「今度は、私を拒絶させないよ…私と幸せになろ…」
千歳の頭に仮面の髪飾りがつけられる、脳を激しく揺さぶられた感覚がして意識は闇に…

………
……


……沈まない!思いっきりビンタされて覚醒した!
「痛ッ!?ぶはっ…!海ィ!?いや、違う…」
目の前には水生植物の水中根の絡みあった森、あるいはニューロンネットワークの巨大版
のような物が、深海の闇に広がっている。

その間を、炭酸の中のような、無数の光る泡が上がってくる。
泡の一つ一つに人がいて、幸せそうな光の中、誰かに抱かれて、あるいは寄り添い笑って
いた。泡は絡めとられて、無数に連り不気味な根の森を、光に浮かび上がらせるのだ。

千歳はじっと睨む。
イルミネーションめいて幻想的な光景だが…。
(威力ビルの時と似たような空間だ…。あの時はネットを侵食してたけど今度は…)

「…!」
黙っていたら、またビンタされた。
「痛った!イタタ!もうおきてる!おきてるよ!!…鮫ちゃん!?」
ノイズ混じりで今にも四散しそうなその姿は…鮫灰色の髪に競泳水着姿の鮫少女だ!

「無事だったんだ!飲み込まれたと思った…」
「……」
残念ながら、悲しそうな顔で見つめる鮫少女の姿は消えかかっている。

「また…自分が危ないのに助けてくれたんだな、ごめん…ありがとう」
鮫少女は、頷くと先導するように泳ぎ出した。
千歳もついていく。問題はない、ここは鮫電脳空間なのだ、戦い方はもう知っている。

根の間をすり抜けて、吸い込まれるように深く、さらに深く潜っていく。
無数の泡の横を通り過ぎる。一つ一つが白い少女に囚われた人々の意識で…。

「ちょっ!ちょっと待ってー!!」
千歳が急ブレーキ!
「ユーニス!」
千歳は一つの泡の前で止まると、叫んだ!
泡の膜を、両手で叩いても叫んでも、泡の中のユーニスは、見知らぬ女性に抱かれ、母に抱かれる赤子のように笑っていて…。

「…ってよくみたら、ユーニスが一緒にいるやつ、私に似てないか!?」

『アハハッ…』
その時だ、背後に殺気を感じて、千歳はすぐにその場を離れた。
だが…
『クスクス…』
白い少女が、笑いながら背後に現れる!
「くっ!」
即座に移動!
『フフッ…』
移動した先に白い少女の笑み!

「瞬間移動…ちがう!二人…三人…いや!いっぱいいる!?」
人形のような笑みを浮かべた白い少女達が、光る根の幹から、樹液のように
染み出して、ぽわり、またひとつ、ぽわり、と増えてくるではないか。

『マタ、拒ムノ?』
『サセナイヨ…』
『私ヲ、ミンナ ウケイレテ…』
『クスクス…』

周りをすっかり囲まれる、千歳は背後の泡の中をちらりと見る、そこには外の騒ぎなどまる
で無いかのように、制服を着たユーニスが楽し気に友人たちと笑っていて…。

「…鮫ちゃん、離れないでね」
白い少女達に視線を戻して、背中ごし千歳が言うと、鮫少女は小さく頷いた。

ゴォッ!!白い少女達が形を崩して変形!一斉に真っ白なアルビノ鮫となって突進!
千歳達の姿は、ピラニアに集られる獲物めいてアルビノ鮫達に覆い隠されてしまう!
凄まじい突進が!光の根を揺らし、海中を衝撃が走る!

「せぇぇぇやぁああああ!」
ドワッ!!アルビノ鮫達が蹴散らされた!
千歳は…鮫を模した帽子を被り、セーラー服モチーフな、ヒロイックな衣装に変身した!
オルカとの電脳ダイブで、オルカと合体した、千歳オルカの姿だが、今回は1人変身だ。
そして、アルビノ鮫達を睨みつける表情は殺気立っていて…。

「…悪いけど、ちょっと手荒にいくからな!」
鼻面をぶん殴られたアルビノ鮫が吹っ飛ぶ!つの字になってアルビノ鮫が蹴り飛ばされる!
尻尾を掴まれたアルビノ鮫が振り回されて、渦巻きを起こす!
「でぇぇぇやぁあああああああああ!!!!」
アルビノ鮫を振り回し、荒れ狂う渦巻と化して、当たるを幸いにすべて吹っ飛ばしていく!

「ととっ…ッシャァ!どうだこのやろー!」
ちょっとふらつきながら、ユーニスの泡の上に着地!

「!!」
「え、上?…!!」
クジラサイズのアルビノ鮫が直上!真っ逆さまに降り落ちてくる!

「ぐぅっ…あ、しまった…!!」
クジラ鮫の突進を受け止めたが、千歳は泡ごと、深海に向かって急速に沈んでいく!
鮫ちゃんは置いていかれまいとクジラ鮫の体にコバンザメのようにしがみつく!

根の森が遠ざかる、他の泡の光もみるみるうちに小さくなっていく。
そして、潜るほどに、体にかかる重圧が増していく…!

ビシリッ 足元から泡のひび割れる音がした。
「まさか…割れるのか!?うっぐぐ…!」
急にゾクリとした。さっきは思わず叩いてしまったけど。
この泡の中にはユーニスの、おそらく意識が囚われているのだ。
それが、こんな状況で割れたりしたら…。

「絶対不味いだろ…!そんな気がするぞ!?」
ビシ!ビシビシ!!非情にもひびは広がっていく!クジラ鮫が加速!
このまま圧壊深度まで叩きこもうというのだ!

「このままじゃ…!…光!?」
深海の闇の中に、突然陽光が差し込む、根の森の生物発光的な光ではない。
「鮫ちゃん!!」
「〜〜〜ッッ!!」
クジラ白鮫にしがみついた鮫少女が、眩く光輝いているのだ!光は急速に強まり弾けた!
『グォオオオオッ!!』
クジラ鮫のシルエットが光の中で、真っ二つに爆散する。
同時に足元の泡も限界を迎え、千歳の体は吸い込まれるように落ちた。

………
……


「……!?」
目の前をメイドさんが横切った。
4車線の道路は歩行者天国になっていて、沿道には赤い提灯が連なっている。

「えっ…中華街??」
青い屋根瓦のビルは、無理やりな日本っぽさのようで。ビルにつけられた大量の看板群は
日本というより、香港の大通りを思わせる。
しかし、屋上の大看板に美少女キャラが描かれて、ビル壁面の大型ディスプレイにゲームの
PVが流れ。看板に、ひらがなで『そふまっぷ』『あにめいと』等と書道されているのだから。
「あ、秋葉…??」
イミテーション感溢れているが、ここは日本の秋葉原…みたいな街らしい。
メイドや、コスプレしてる人だらけのおかげで、千歳の格好が悪目立ちしないのは幸いだ。

「うおっ?」
「イヨォ!ハッ!」
シャッシャッ!シャシャーシャシャッ!シャッ!
シャッシャッ!シャシャーシャシャッ!シャッ!
千歳の前を着物の集団が七色のペンライトを振り回しながら通り過ぎて行った。
あれは確か、オタ芸とか言う奴だったか?
しかし、こんな街中でする様な物では無かったはず。

「ここは本当に秋葉原なのか?」
風景を構成するパーツの一つ一つに注目すれば
それは確かに日本の…秋葉原の風景だ。
しかし、大きな視点で見ると何かがおかしい。

「…待て、私は根本的な何かを忘れている気がするぞ?」
この奇妙な光景に圧倒されてしまったが。
重要な何かを見落としている。
それは……

「ここはアイツ(ユーニス)の意識の世界
 つまり、これがアイツがイメージする日本なのか…!?」
気付きパンっと手を叩く千歳の前を
見栄を切る機動戦士なロボを乗せた山車が通り過ぎて行った。

「なんてこった、ここまでやり方が違うなんて……」
やり方が違う。それはスマイルメイカーの手段の事だ。
威力ビルで千歳に圧倒的な力を見せつけたスマイルメイカーと
今のスマイルメイカーは完全に別物だ。

理想の世界で理想の母親と共に過ごす永遠の安息……
泡の外から見たユーニスの顔が思い浮かぶ。
甘美な時に浸る蕩けた表情……
「こんな所に居たらアイツが戻れなくなる!」
言うが早いが千歳は走り出した。

「急がないと!だがアイツはどこにいる?
 ううん、悩む必要なんてない、私ならわかるはずだ」
根拠の無い自信。
しかし、千歳には確かに確信としてあった。
走った先にアイツは…ユーニスは必ず居ると。

だから千歳は走る、デタラメな日本の風景の中を走る



ビルとビルの隙間を抜けた先にそこはあった
通路の薄暗い闇から光へと目が慣れると
秋葉原の混沌とは全く異なる世界が広がっていた

長閑な田園風景、金色の麦と麦の間に伸びる田舎の小道。
麦畑向こうの小高い丘には牛達が草を食む姿も見え。
遠くから近くに視線を戻すと地名を示す立て看板。
千歳は声に出しながらそこに書かれた文字を読み上げた

「…でんえんヒルズ…?」

そして暫し無言。
遠くでモォ〜と鳴く牛の声が聞こえた
「なんでもヒルズって付ければいいってもんじゃないぞ!」
言って看板に裏拳。

「…ふっ、落ち着いた。行くか…この先にアイツは居るはずだ」
呼吸を整えると千歳は歩き始めた。
走るべきところなのだが
この景色を見ているとなぜか歩きたい気持ちになってしまう

「本当に長閑な風景だな…これがアイツの理想の世界なのか…?」

そんなの事を想いながら、ユーニスの境遇の事を思い出す。
ユーニスが過去を話す事は少ないが
それでも断片的な情報を繋ぎ合わせれば、好ましい環境で無かったことくらい
平和ボケした国で生まれ育った千歳にだってわかる。わかるが……
「…だとしても、こんな虚構の世界はダメだ……」
拳を強く握りしめると、千歳は歩を早めた。


「あれか?」
麦畑の道を抜けると、それは姿を見せた
小高い丘に佇む一軒家。
赤い屋根に白い壁。赤白黄の花々が顔を見せる緑の垣根
屋根から生えた煉瓦の煙突からは呑気な煙が青空へと昇って行く。
子供向け文学の挿絵を思わせる愛らしい姿。

「ここがおまえの思い描く…理想の城なのか…?」
千歳は小さく呟くと、意を決し敷地内へと足を踏み入れた。
「罠は…無いな……」
スマイルメイカーが襲撃してくる可能性を予想していたが
今の所はその気配は無い様だ。
あるいは千歳を前へ進ませた自体が罠なのかもしれない。
「ま、どちらにしても進むけどな」


「…ドアノッカーか……」
木作りの扉に設置された銅製のシンプルなドアノッカー
普通ならこれを数度叩き、住人へ来訪を告げるのだが……
「まずは中を確認した方がいいよなぁ」
何が起こるかわからない状況
わざわざ自分の存在を知らせ、災いを招く理由は無い
扉から離れると、千歳は白い壁伝いに歩きながら
庭の方へ回り込む事にした。

「……泥棒にでもなった気分だ……ん…?」
歩き始めて直ぐに声が聞こえた。聞き覚えのある声。
千歳にとって聞き間違え様も無い声。
「ユーニス!?」
気付いた瞬間に千歳は走り出していた。
罠や危険への注意は消え失せ、壁を伝い一気に庭へ……

「ヤトセママ〜」
「うふふっ…ゆーちゃんはかわいいですね」

窓の向こうに見える光景を見て千歳はぽかーんとなった
そこにあったのは、
千歳そっくりな少女の胸に甘えるユーニスの姿
しかも、ドラッグでもやったかの様な緩み切った笑顔で
しかもしかも、フリルとレースで飾られたピンクのドレスまで着て
さらに、二人の周囲には赤や青や紫のユニコーンのヌイグルミの群れ


「…ヤトセってなんだよ…名前までパチモノ臭いぞ」

言いながら千歳は窓ガラスに爪を押し付けながら歯ぎしり
偽物に甘えるユーニスを見ていると胸の奥がざわざわとしてくる

「あー!むしょうに腹立ってきたぞー!」
叫ぶ様に言うがガラス向こうの二人はこちらに気付いた様子は全く無く
気付けば千歳は握り締めた拳を大きく後ろへ引いていた。


「ここはゆーにすママの心の奥の奥、深層意識の夢世界……
 ありきたりだけど、見える物はみんな、ゆーにすママの記憶からできてる
 思い出は人格の骨組み…乱暴な事をしたら大変な事になる
 …かも…?」

千歳の背後から声がした。
少女とわかる声だが聞こえる音色は無機質で冷たい。
振り向かずともわかる、スマイルメイカーの声。

「だから無茶はしない方がいいよ…?」
「…そうか……」
千歳は変わらず振り向かずに言葉を返す。
そして……

拳を窓ガラスへと叩きつけた!
窓ガラスは拳を打ち付けた中心から罅が蜘蛛の巣の様に広がり

ガシャーン!

一気に破砕しガラス窓だった物は微細な塵となり光の粒子となり宙へ消え去った
「…夢の世界…意識の世界でのやり方はもう知っている」
打ち付けた右手を軽く振ると、半分だけ振り向き
ニッと、一瞬だけスマイルメイカーへ不適な笑みを向けると
千歳は行動に移した。

「ユーニスぅぅぅ!歯を食いしばれぇぇぇ!」
「んあっ?」
そして、そのままユーニスの元へ歩み寄るとその襟首を掴み上げ
ビンタ!ビンタ!ビンタ!
頬に往復のビンタを放つ。

「こんな所で馬鹿やってる場合じゃないだろう!」
「んあああああ?」
千歳は涙混じりの声をユーニスへとぶつける。
「いつまで呆けて…あ…?」
「………」
千歳の腕を誰かが掴んだ。ヤトセだ!
ヤトセが慈母の様な笑みを浮かべながら千歳の顔を見詰めている。

(気持ち悪い……)
自分を、知らない自分が見詰めている。
これほどに気持ち悪い事があるだろうか?
しかも、その知らない自分は大切な物を奪おうとしている。
だから振り払おうとするのだが……

「この……ッ!?」
ヤトセに掴まれた腕が動かない!
コンクリート塊に固定されたかのようだ!

「無駄…ココでは意識の力…脳力がすべて…ちとせママの脳は一つ…
わたしはたーくさん…ふふっ」
迂闊であった。白い少女の言う通り、スマイルメイカーとは本来
人間の脳をハードウェアにして、クラウドシステム化する存在なのだ。

港に集まった群衆の脳を、支配している白い少女に対して、千歳が1人で
敵うわけがないのだ!

「ふっざける…な!!」
「どうして?…拒むの?
 私は、ずっと言ってるよ?願いを叶えてあげる…欲望を満たしてあげるって…」
身動きをとれない千歳の頬に、白い少女の手が這う。
無表情なままの顔が近づいて、唇に触れようとする。

「やっ…めろ!!!」
片腕が拘束からはずれた!白い少女を払いのける!

「やっぱり、ワタシじゃだめ…」
少女は殴られた頬を撫でる、無表情だが悲し気にもみえて…
少し悪いことした気もするが…。

「ふふ…分かってたよ?私じゃ、ちとせママは癒してあげられない…
 …だから、こうするね」
白い少女の手が無抵抗のユーニスの首を絞める。
前言撤回、こいつやっぱりロクでもない。

「止めろぉ!!」
ヤトセの拘束を振り解き、千歳は白い少女に連続攻撃を決めた!
吹っ飛ぶ白い少女の体を追って、千歳はさらに追撃!
ほとんど抵抗もせず、白い少女はドロリと溶けていく…。

「…しまった!?」
手ごたえの無さに、違和感を感じた時には遅い!
さっきまでヤトセだった物が、形を崩して白い少女となり、ユーニスを抱え込んでいた!

「こいつ…!ユーニスを放せ!!」
「いいよ」
「えっ…」

「私と…ずっと一緒に生きてくれるなら…」
白い少女は、裂けた三日月のような笑みを浮かべて言った。

「ちとせママだけは、私には書き換えができない…。最初の宿主だから…
 でもゆーにすママは違う…記憶を消して脳も壊して、廃人にだってできる…」
ユーニス頭を、スライム状の腕が鷲掴みにする。
腕は、白い少女の粘菌状の下半身から生えている。
本性を露わにした、怪物じみた姿…。

「…死んじゃう?かもね」
「やめろ!わかったからやめてくれ…!」
「ふふっ…」
抵抗をやめた千歳に粘菌が足元から這い上り飲み込んでいく…!

「なんで、お前はこんなことをするんだ…何が望みなんだ…
 やっぱり、ウォンみたいに人間を支配したいのか」
「何?ってなに…??
 私は、皆の側に居たいだけ。世界中の全員に求められたいの、側にいて。
 ずっと一緒に。もう私無しじゃ生きていけない…。
 誰も私から離れられないように、皆がずっと笑顔で居続ける夢を見せるの」

「…違うだろ!」
「…何が?」
「人が、誰かに側に居て欲しいって思うのは…そういうことじゃないだろ!」
粘菌に飲まれながら千歳は必死に意識を保とうとする。
変身が解除された。千歳はただの千歳の姿に戻ってしまう!

「私と居て、みんな幸せだよ?」
巨大な手が、ユーニスの顎を掴み上げた。

「いまユーニスママの脳は、人生で一番幸福な状態…。
 安心して、ちとせママも一緒にしてあげる。
 …特別に、こいつと二人きりの夢をみせてあげるから…」
生気を失った目のユーニスは、ただ、茫然としている…。

「ふざけるな!そんなの…そんな夢!私は欲しくない!!」
ユーニスとの今までを踏みにじるような言葉に、怒りを覚えた。
しかし、粘菌に包まれると、意識が朦朧としてくる…。
表皮と頭蓋を貫通して、直接脳を侵される嫌悪と浮遊感…。

「ちとせママ…私にはじまりをくれた人…、やっと一つになれる……嬉しい」
鈍る耳に歓喜にも似た恍惚とした声が聞こえる。
その声が脳へ染み込む様で……
飲み込まれる…このままでは…。

「ユーニス…!」
千歳は叫んだ。

「無駄…私と一緒にいよう?いつまでも、ずぅっとここに…」
その時だ。ペシッ。小さな音がした。
「?」
白い少女が、首を傾げる。ユーニスが、白い少女の頬を叩いた。
よわよわしく、何かの間違いかもしれないような動作だったが。

「ユーニス!!」
千歳が叫ぶ!
「……ユーニス!!!」
言葉にしたい思いは後から後から湧いてくるのに。いざという時に、何一つ言葉に
なってくれず。ただ名前を叫ぶことしかできない。



だが、それで十分だった。
ここは現実ではない、脳の力…思いの力だけがすべてなのだから!

二人で暮らした、不満だらけのボロアパートがあった。
海の見えるベランダだけは最高だった。

アメリカのジャンクフード文化に憧れていた千歳も、1週間でギブアップして。
ユーニスと釣りをして、焼魚を食べたこともあった。

危険な街の、本当に危ないから近寄ってはいけない地区の見分けなんて知りもしなかった。
ランニングの一番のモチベーションになったのは、走れないと死ぬって危機感だったかも。

それでも、世界一の歓楽街は、光も闇も、みんな規格外に魅力的で。
良い人も悪い人も、みんな極端で、普通がなく、普通を強要される日本とは違っていた。

最初は、慣れない生活で、メンタルをやられないか心配だったけど。
タフな生活力と裏腹に、心の方は、ユーニスの方がずっと繊細だった。

わけもなく泣きだして、1日中ずっと千歳が慰め続けた日も、1度や2度じゃない。
大抵翌日には、ケロっとしていたけど。

何度オーディションを受けてもダメで、割のいいバイトもできない。
挫けなかったのは1人じゃなかったからだ。

二人で暮らし始めて1年しか経っていない。
それで十分だ。言葉にできない程の思いが積もるには!



「…ぽっ!?」
ユーニスの拳が、白い少女の顔面を殴りつける!

「もう…動けないはず…!?」
「ユーニス…!」
「うぉあああああああああああああああああああああ!!!!!」
「…ポコォォォォォ!!!」
白い少女はスマメイめいた悲鳴をあげて殴り飛ばされる!

「うぉあああああああああああああああああああああ!!!!!」
駆け出したユーニスに気の利いたセリフはない。
ユーニスは、そのままの勢いで、千歳に絡みつく粘菌も引っぺがした!

「ユーニス…」
千歳が見たユーニスの瞳は、力強く輝いていた。

いつかのとき、輝く無数の星空を見上げて。
いつか私達もあの星のように、きっと成れると言った夜のように…。

簡単には、言葉にできない2人の時間があった。
今は、言葉にせずとも、全てが伝えられるのだから。
千歳とユーニスが、手を取り合った。

「………」
殴り飛ばされた頬をさすりながら、白い少女はスマイルメイカーの笑みで消えた。
直後に光が湧きおこり、3人の姿は光に飲まれて消えた。

………
……


「(この場面転換もなんか慣れてき……)グエーッ!?」
「ボサっとしてんじゃねぇ!」

千歳は、突然首根っこを引っ掴まれて振り回される!
顔の横を暗闇に閃いて弾丸めいたビームが掠めた!

「ウィーゾル…!?…ッ!ユーニス!」
「ひゃぁぁ!!」
場面転換後、いきなりの猛攻撃に晒されている!
パターンに慣れてきた時が危ないのだ!

暗い…身を隠せそうな場所も無い。濛々と立ち昇る白い砂ぼこりで視界は悪い。
陸上のように動けるが、まるで海底のような場所である。

「何!?何ここ!?私死んじゃったの!?」
「おちつけユーニス!スマイルメイカーの鮫電脳空間の深奥だ!」
「鮫!?電脳空間!?」
説明してる暇はないので、千歳は目の前の状況把握に務める。
覚醒した感覚はない、まだ鮫電脳空間だ。
ウィーゾルの意識体がここにいるということは、スマメイに喰われたオルカの意識が
囚われているのも、ここに間違いない……。

「あぶねぇ!」
「えっ…うわっ!?」
ビュンッ!砂ぼこりの中からビーム!
千歳を庇ったウィーゾルの体を貫く!

「ウィウィ!」
「Gu…ゥゥ…」
手で抑えたウィーゾルの腹から、血が漂いだして赤い霧となる…。
よく見れば全身傷だらけだ、2人が来る前から戦っていたらしい。

「…クスクス…」
海底を舞う砂塵が薄れて、闇の中で、白い少女が笑った。

玉座に座している。玉座は深海のクジラの躯である。
手には錫杖。幽霊めいた深海性肉食珊瑚。
頭に冠を戴く。古代鮫の巨大な頭蓋骨だ…。

クゥゥォォォォ……ォぉォぉッッ………………

遠く聞こえる残響は、海獣のエコーロケーション。
背後の闇より、白と黒の亡霊めいた巨大な獣が現れる。シャチだ!
シャチは白い少女の周りを回遊し始める。

「…チトセ…あれ…」
愛らしさと底知れない不気味さを併せ持つ白い少女の姿を見て
ユーニスは怪訝そうな顔をしている。

「ああ…オルカちゃんを乗っ取ったスマイルメイカーだよ…」
「えっ?」
「………grrrrrrrr」

白い少女は、対峙する3人に対してうすら笑いを浮かべるばかりである。
目が笑っていない、まるで無表情にも見える。
攻撃の手も止まり、意図が読めなくて不気味だ…。

回遊するシャチも水族館でみるやつよりずっと大きくて、隔てるガラスも無い。
相手が、クジラや巨大鮫ですら捕食する、自分より何倍も重たい猛獣だということを。
生き物としての恐怖で理解する…。

それでも、千歳は気配に飲まれまいと声をあげた。

「おまえ!私達は誘惑で取り込めないから、ここに閉じ込めておこう
 っていうんだろ!そうはいかないからな!絶対にオルカちゃんを助けだs……」

ッッコォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!

超音波の咆哮!吹き飛ばされまいと踏みとどまるが…

ゴォッ!!

「うわぁぁぁ!」
「ひゃぁああああ!!」
「ぐっがぁあああああ!!」

白黒の巨体の突進!全力疾走するタンクローリーのような重圧!
頭上に天井がおちてくるかと思ったら、ヒレだ!
ユーニスを引っ張ってとっさに飛びのくが、掠めただけで全身の骨が揺さぶられる!

「ウィウィー!」
「GUAAAAAAAAAA!!」
ガヅンッ!!削岩杭めいた牙の並んだ顎が、水中で火花を散らす!
とっさに身を捩ったウィーゾルの横っ腹に尾びれが叩きつけられる!!
ただの一撃で、鮫幼女最強のウィーゾルが脱力した。

「んっふ…くくっ…ふふふ…!何一つ、合ってないよ…。
 人間を取り込んだのは、欲望を吸って強くなるスマイルメイカーの餌にするため…」
白い少女が立ち上がると、クジラの躯からふわりと浮き上がる。

「何だって…」
「ウィウィーしっかり…!」
ユーニスがウィーゾルの体を抱きとめるのも、白い少女はただ笑って見過ごす。

「私がお姉ちゃんにも、特別にもなれないのなら…千歳もユーニスも…
 存在させておく意味が無いもの…。私の欲望を叶えるついでに殺すよ」

「…私、の…?」
千歳は、白い少女の言葉が、ひっかかった。

「やっと気付いた…?
 私は、スマイルメイカーに乗っ取られてなんかない、操られてるんじゃない…!」

「アア…やっぱりそうかよクソガッ」
「ウィウィ…大丈夫?」
「じゃあ…そんなまさか…」

「ワタシは…オルカ!スマイルメイカーを!私が!受け入れ!取り込んだのよ!!」

クォォォォォッッッ……!!

巨大な海獣が吠える。

「ウィーゾルお姉ちゃん…。私は…あなたが憎くてたまらない…
この手で殺してしまいたい…!それが…私の欲望よ!!」
白い少女、スマイルメイカー・オルカは、シャチの頭にふわりと立ち。
海底に咆哮が響き渡った。



「なんで!?」
叫んだのはユーニスだ。

「2人は姉妹なんでしょ!?ウィウィはあなたのことを大切に思って…」

ッッゥゥuuggGYeッゥッッッッギャガァァッッ!!!!!!

凄まじい超音波の衝撃波!地面を抉って3人諸共吹き飛ばさんとする!
割って入ったのは千歳だ!
ファンシーなパステルカラー障壁を展開して衝撃波を防ぐ!

「…ッゥゥ!…スマメイに侵食されてるんだ!ウォンの時と同じだ…
 スマメイのせいで精神も狂わされてるんだよ!」

「………」
スマイルメイカー・オルカが睨むと、シャチが突進して障壁に食らいつく!
バキバキバキバキバキ!!障壁は一瞬にしてひび割れる!

「まずい!このままじゃ…」
急に、千歳は後ろに引っ張られた、そのままぽーんと投げ出される
宙を舞う途中で、同じように放り出されたユーニスと目があった。

バッッギンン!!!障壁が砕かれる!

凶悪な牙を剥きだしたシャチの前に、ウィーゾルが一人残されて…!

「やめろぉ!!」
「ウィウィ!!」
2人が叫ぶ!

ゴォォォォォォォォォォォォオォォォォォッォオ!!!!!!!!!

シャチの牙がウィーゾルを噛みつぶそうと…

「…ふぅぅ………………ッ!
 ッシャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

ゴベッッ!!??

鮫も喰らう海のギャングは、ウィーゾルの拳一発で背骨が潰れて、頭から尻尾まで圧縮
されてぐしゃぐしゃになった。

「俺を殺してぇだ?やっと本音が出たなオルカ…。上等だ!強い奴が強い!!
 てめぇもやっとサメの流儀が分かったようだな!半端もんの稚魚ちゃんがよぉ!!」
「ぐぅぅ…ッ!SHAAAAAAAAAAARR!!」
錫杖を膝でへし折ってスマイルメイカー・オルカがウィーゾルに殴りかかる!

「えっ…なんで?」
「鮫は病気や怪我に強い、脅威の回復力をもってるんだ!!アニマルプラネットでみた!」
「いや、そういうことでなく…」

千歳とユーニスの前で、スマメイ・オルカとウィーゾルがどったんばったんと
つかみ合いの大げんかを繰り広げている。
シャチの死体は、なんか深海棲のうなぎとか鮫とかダイオウグソクムシとかに喰われてる。

「私が!がんばって考えても!いつも!考えなしで!ダメにして!!」
スマメイ・オルカがウィーゾルを殴る!

「ごちゃごちゃ小賢しいんだよ!俺らは鮫だ!ニンゲンじゃねぇ!」
ウィーゾルがスマメイ・オルカを殴る!殴る!

「みんなが怪我したり!死んだりしないためでしょ!!
 いつもいつもいつも!私の言う事なんかお構いなしで!私が!どんだけ…ねぇ!!!」
スマメイ・オルカがウィーゾルを殴る!殴る!殴る!殴る!
一方的に殴られ続けて、頬で拳を受け止めたウィーゾルが、まっすぐにオルカの瞳を見つめていた。

「なんかしなきゃ、伝わらないって……」
「……!」
オルカの拳を握って、ウィーゾルはまっすぐにオルカを見て、そして…

「……思ってるからお前はバカなんだよ!」
「ごっはぁ!?」

ボガァァァァアアアアアッッッ!!!

「うわー!?」
「背後の岩ごと顔面パンチで砕いたー!?」
驚愕する千歳とユーニス!

濛々と立ち込める砂塵の中から、ぐったりしたスマメイ・オルカを肩に担いだウィーゾルが
出てくる。

「お前は他の何でもねぇ、サメだ。俺もサメだ。最強の鮫幼女だ。
 殺したきゃ何度でも殺しに来い。オレが死ぬまで返り討ちにしてやる。
 俺は最強の、お前の姉ちゃんだからな。…だから」
「……」
「ニンゲンかぶれはいい加減にしとけ」
「ぎゃん!?」
ウィーゾルの拳が、肩越しにスマメイ・オルカにめり込む!
スマメイ・オルカの頭から、スマイルメイカーの亡霊がヒョンッと飛び出た!

「これは……」
「キテル…ネ!」
「ええ……」
なんだか楽しそうなユーニスと困惑する千歳の周りに、雪のようなものが降る。
マリンスノーだ。降り積もるプランクトンや生物の白い死骸は、無と終焉の象徴である。
人間の感性で言えばである。

白く降り積もるマリンスノーの中で、ウィーゾルとオルカはまた喧嘩を初めていた。
両者ともにいい勝負なのだから、戦いに終わりはないだろう。
それは不毛ではないのだ、人のする争いのような醜さは微塵もない、戦い合うことで
紡がれていく、何よりも尊きもののための賛美のようですらある。

その証拠に、2人が合い争うほどに、マリンスノーは輝きを増して。
暗闇の深海は、光に満ちていくのだから…。

………
……


「げっほ!おっ…うぼぇぇ!」
千歳はゲロった。
胃の内容物っというより、食道や気道といった人体のあらゆる穴という穴に入り込んだ
粘液を追い出すために、体が反応したので、なんか透明なものをゲロった。

「ゥォロロロ……ゲホッ」
横でユーニスも嘔吐していた。

頭はくらくらしていて、空は真っ暗で、港湾の照明は痛いくらい眩しい。
全身のだるさ・鉛のような疲労感。

「現実に戻った…」
「オロロロロ」
千歳は確信して、ユーニスは吐いた。

「GAッ…!ハァ…!HA…あああGぁ…!!!!!」
顔面を手で覆った白い少女が、玉座から転げ落ちる。

「あ…Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」
両手を離したその顔は半分がくずれかかり酷いありさまだ。
それでも、悪あがきのように気絶したオルカの方へ、這って近づいていく…。
体が崩れていく…宿主のオルカからはじき出されたスマイルメイカーは、存在を維持できな
いのだ。

「させる…かぁ!!」
千歳は起き上がり、駆け出そうとして…つんのめって倒れた!
鮫電脳空間での戦闘は、千歳を思った以上に疲弊させていたのだ。

スマイルメイカーに囚われた人々の意識は今だ戻らず
オルカ、ウィーゾルは手をつないだまま気絶、ユーニスは寝ゲロしている!

ずるっズル…とナメクジのような速度で、スマイルメイカーは必死の形相で這いずる!

「…げほっ…!おまえ…お前なー!!」
その必死な様子は、僅かだけ哀れであったが…。

「いいかげんに、しろ!バカー!!
 誰かに必要とされたいからって!弱みに付け込んだり!欲望を煽ったりするからなー!
 お前は誰からも求められないんだよ!!」
「グッ…!!なに…を言ってる…オマエ…」
スマイルメイカーが、目を見開き千歳を睨む!

「ゼェー…はぁー…ハッ!!だってそうだろ…?
 私も!オルカちゃんも!お前なんかより、もっと大切なものの方を選んだぞ」
不敵に笑ってみせる千歳の顔を見るや、スマイルメイカーは絶叫しながら頭を掻きむしり
立ち上がった!!
「あ、あああああAAAAAAAgAAAAAAA!!!アト少し……Dぁった・に…
 more良い…いしki・コロす 脳…kil 殺す…!ワタシがaaahhh……!!」
「(やっば、ユーニスの真似して、煽ってみたけど逆効果だったか!?)」
「死ぃiiiiiiiiiiiiii!!!!!」
スマイルメイカーが千歳に向けて触手を突き刺そうとしたその瞬間だった。

「あっぐ…!?」
触手が千歳の目の前で、落ちた。白い少女は体をガクガクと痙攣させながら硬直している!

「ウォン!?」
スマイルメイカーの首筋にウォンがクナイダートを突き立てていた!
ウィーゾル達との戦いに破れたあと、ウォンは持前のアサシン能力で
すぐそばに隠れて機をうかがっていたのだろう。なんという執念か!

「私こそが…ちきゅう…始皇帝たる器!おまえ!おまえは!わたし…わた…
 あああああああああああああああ!私のモノだ!私の!私の!わたしの!わた!!!!」
「Ga…ッ!!ああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
片腕を失くしたウォンは、皮膚も剥げて全身改造されつくした体を晒しながら
何度も何度も、スマイルメイカーにクナイダートを突き立てる。
クナイダートが折れた。
折れたクナイダートを絶叫しながら、ウォンは何度も叩きつけた。

「がっぅ…ぶっ…」
先に限界が来たのはスマイルメイカーの方だった。
構造が機能を保てなくなった瞬間に、スマイルメイカーは停止した。

「はっは!ハハハハ!はぁああああああああああ!!!!!」
それでもウォンは、少女を破壊するのを止めなかった。
取りつかれたように、スマイルメイカーの死骸を叩き続け…ボンッ!!死骸が爆発した。

ウォンの体は吹っ飛ばされて海へ落ちていく。
そこへ、無数の背びれが海面につきでて泳ぎ寄る…。
激しく海面の荒れる音がして、すぐに静かになった。

「………ユーニス」
しばらく唖然としていた千歳は、体を起こすと側にいたユーニスの頬をたたく。

「ん…うぅ…げほっ」
ユーニスは寝言みたいにふにゃふにゃいってまだ目を覚まさない。

「うーちょっと頭痛い…」
「寝起き最悪だナ…」
けだるそうに、オルカとユーニスが体を起こし、それから鮫幼女達が目を覚ます。
洗脳された人達は、まだ倒れて気絶中だ。
すごく見入っていた映画が終わって、映画館から外へ出た時のような。
酷く世界が非現実的に見える時の感覚がした。

「ふぁー…私どのぐらい寝てたんー?」
「アー…ヒドイ目ニアッタ?気がすル???」
「はっ!?艦長!とオルカもいるニャー!みんなもいるにゃー!」
ハンマー・ソウ・キャットも正気を取り戻して無事だ。
ブルーは、フリーズしたモルモットみたいな顔してる。

「おい、オマエら、大丈夫か?どうやら、俺らの勝ちみてぇだが…
 白いオルカのニセ者はどうした」
さすがに、鮫幼女の回復力はすごい。ウィーゾルは目を覚ますとすぐに
千歳達を助け起こすのだが、脆弱な人間には、もうちょっと優しくしてほしい。

「……ここに居るよ」
オルカが、スマホの画面を見せる。
その中に、小さなカートゥーンキャラみたいになった、白い少女が閉じ込められて
右往左往していた。

「元々、スマメイの開発のために使ってたのがこのマシンだから、もう逃げ出せないよ」

「ホントカー?お前いろいろうっかりが過ぎるからな…」
ウィーゾルにめっちゃ疑いの目を向けられる、しでかしたことを考えると無理もない。

「こ、今度は大丈夫だって!」
「なぁ、ユーニスがまだ目を覚まさないんだけど…」
千歳はなんとか動けるようになったが、ユーニスはまだだらしない顔で気絶している。

「体に問題はないわ…スマイルメイカー…というか一つになってた時の私は、
 人々の精神を閉じ込めるのに執着してたから、精神と直結してる肉体を
 傷つけないよう注意はしていたわ…でも、ごめんなさい…」
申し訳なさそうにオルカがそう言った。
素直じゃないオルカが、素直に謝るのはなんだか意外だった。
そして、コートから痛み止めのアンプルを出すと、ユーニスの口に突っ込む。

「んっ…っっっくっはぁああああ!!!……あ、チトセおっはよー!!!
 あの白いやつは!?ッシャー!なんか今ならヤれる気がする…あれぇ!?みんな倒れて
 んじゃん!っていうかここマスオネフの港じゃん!どうなってん?????????」
「うわぁ!?急に元気になったぁ!?大丈夫なのかこれぇ!?」
スイッチが入ったように突然動き出すユーニス、むしろ倒れる前より元気になってるんじゃ
なかろうか。千歳も飲んでおけというので、半口だけ貰った。

「他の人達もしばらくしたら目を覚ますはずよ……」
「おーウィウィもおっはーよ!…あれ?サメちゃん玉はまだ寝てんのかな??」
ユーニスは、鮫玉を拾い上げて、激しく振り回すが、電源が切れたように無反応だ。
不意に、足元が揺れる。あたりが俄かに明るくなって揺れは激しくなり、瓦礫の玉座が、
歪なジグラットが、振り落とされて海に落ちた。

地震かと思ったが、それは巨大な鮫潜水艦が身震いする振動だ。
鮫灰色の髪の少女が、AIとして艦に復帰したのだ。

「よかった、あの子も無事だったんだ…。じゃあこれで、オルカちゃん達は
 海に帰れるね…」
巻き込んでしまった人達には申し訳ないが、千歳とユーニスも長居は無用だ。
スマメイによる支配が消えた今、ここにはもうじき警察がくるだろう。
正直言って、まともに状況を説明しきれる自信がない。

「そう、ね…私達もこれ以上人前に姿を見られるのも良くないと思うわ…」
「えーウィウィもう帰っちゃうのー?なんだよ折角楽しくなってきたとこなのにさー」
「お前は…酔っ払いか!」
「いや、まだ帰らねぇ…」
有無を言わさず、ウィーゾルがオルカからスマホをひったくる。
そして、止める間もなくスマイルメイカーを開放!閃光がほとばしる!

「「なにしてんのー!?」」
オルカと千歳がハモる!
「今度はウィウィが乗っ取られたー!?」
ユーニスは頭を抱えてOMG!
暗闇が戻る、ウィーゾルがゆっくりと目を開くと…不気味に金色に輝いていて…。

「…ハンマー、ソウ」
「あ、あい!」
「アイサー…」
ゆっくりとウィーゾルが鮫牙の並んだ口を開いて呼ぶと、副官コンビは緊張したように
返事をする。

「……’’俺様のとっておきプロトコル’’だ」
「…!あっは!了解ボス!」
「アイアイキャプテン!」
2人は、あわただしく他の鮫幼女たちと艦内に飛び込んでいく

「ティティ!」
「ア?」
「人間共を叩き起こせ!」
「オッホーゥ!イェア!イェエ!!」
返事をするが早いか、ティティは両手マシンガンを取り出して乱射!
スポスポスポスポスポスポスポ!倒れた人々の口にアンプルがぶち込まれる!

「YEAH!目がさめたぜ!」
「フォーゥ!なんだかわからないけど最高の気分よ!」
「イイェァアアアッハー!!」

倒れていた人々が次々に立ち上がる!クレオペのフランクやドレッドヘアのマーヴィンも
元気に跳ね起きてくる。

「なっ!?一体何する気なのお姉ちゃん!」
「気を付けてオルカちゃん!スマメイが今度はウィーゾルを乗っ取って…」
「ねぇよ」
慌てる千歳とオルカに、目を光らせながらウィーゾルは平然と言った。

「俺が洗脳されるわけねぇだろ。オルカに任せておけねーから、スマメイ
 の奴は俺の頭ん中に閉じ込めてやったんだよ!」
「え…」
「できんの…?そんなこと…」
「ったりめーだろ、俺は最強だ、つまり!脳みそだって最強だ!!!」
「ぶっはっはっはっはっは!」
千歳とオルカはそろって唖然として、ユーニスはなんかツボって爆笑してる。

「それに、スマイルメイカーは、元々俺が人間を操るために作らせたもんだしなぁ…」
目を光らせたウィーゾルが牙を見せつけるように笑うと、流石に3人とも息を呑む。

「そう…最近調子こいて俺らの縄張りを荒らす人間共をなぁ…
 俺の手で躍らせてやるためになぁ!!」
その言葉を合図に、鮫潜水艦が突然巨大な口を開く、タンカーが垂直に立ち上がるような
圧倒的質量感でもって、頭上に影を落とす物体に、ハイになった群衆も思わず息をのむ。

「うわぁあ!?」
「きゃぁ!?」
「ああああああ!!」
たまらないのは鮫潜水艦の上に居た千歳達だ、わけのわからないまま空中に放り出されて
落下!地面に激突……しない!
いつの間にか戻って来たハンマーやソウ達の大きな鮫尾びれに受け止められた。

その瞬間、眩いばかりのステージライトが灯り、ネオンが輝き、ステージもビッカビカに
光りだす!
鮫幼女たちを従えたウィーゾルが両腕を広げ吠える!

「さあああああ!パーティのはじまりだあああああああああああああああああああ!!」

ミュージックが流れ出す、DJブースの鮫幼女に、生バンド鮫幼女のグルーブに合せて
鮫幼女とウィーゾルも踊りだす。

「踊らせるって…」
「もしかして…」
呆気にとられる千歳の手をユーニスが引いた。

「あっ…お、おい!!」
「アッハハ!!」
ユーニスに引っ張られてステージ中央まで引きずり出されてしまった。
ふと、ステージの下を見れば、そこにはたくさん人々がステージ上を見上げている。

その一瞬、千歳は、ニンジャやウォン達と戦った時よりも、スマイルメイカーと
対峙した時よりも、緊張で体がすくむ。

「(なんで、急にオーディションの事を思い出すんだわたし!)」
この二日で何度も死線を潜り抜け、普通なら一生することのない経験しかない
という、レアリティの異常事態みたいな体験をしたのに。
思い出すのは、ユーニスと一緒に受けて、失敗を味わったオーディションのことだった。

「チトセ!」
時間の静止したような一瞬を破って、ユーニスの声がした。

ユーニスは踊っていた、いつも2人で練習していたステップと振りつけを
音楽に合せて、ユーニスらしい適当さでアレンジして

「(ああ、あの薬のせいで、こいつ酔ってんな)」
そうしたら急に、クリスマスにスコッチ入りエッグノック飲んで夜通し踊ったことや
バイトの合間に、こっそりサボって階段の踊り場で練習をしたこととか
あるいはバズり狙いで、街中の名所でゲリラダンスする動画撮影をしたことなんか
そんなことばかりを思い出してきて。

その瞬間に、観客の前でステージに立つ自分じゃなくて。
2人で踊っている自分だけが、全てになった気がしてくる。

「(もしかして、私も酔ってるのか?)」
そう思ったけど、踊りだしたら止まらなかった。
そうしたら視界の端で、まだ立ちすくんでるオルカがいたのだから。

「オルカちゃん」
呼ばれても、オルカはまだ戸惑っている、けど、すぐにハンマーやソウ、
キャットやブルー達に突き飛ばされて、ステージに出てきて、
オルカの手を引いて、ウィーゾルが踊りだす。

気が付けば、誰も彼もが踊っていた。

巻き込まれて連れてこられた人達も
フランクおじさんとドレッドヘアも
警察官たちも。
鮫幼女も

これもスマイルメイカーの洗脳なのか?
もうそんなこともどうでもよかった。

鮫潜水艦からミサイルが発射されて、夜空を花火で埋め尽くす。
鮫ちゃんもノリノリだ。

「ねぇチトセ!」
「なんだ」
「このステージ、最高だね!」
シンクロするダンスの最中にユーニスが赤い顔で急にそんなことを言って来たものだから。
相手の姿が見えない場所からの、ノールックターンをぴたりと決めると。
「ああ!最高だな!」
はっきりとそう言ってやった。

◆9 Edit

………
……


『……一昨日から、市街各地で散発的、かつ大規模に起こっていた破壊事件は
 一夜空けてから急に沈静化しましたが。
 その幕切れは、平穏とはほど遠く、ポートマフオネスに集結した群衆が三々五々
 帰路につく行進が、ラッシュアワーの交通渋滞に拍車を掛けています……』

モーニング目当ての客で、ぼちぼち席が埋まっているヘブンダイナーに、
ニュースのアナウンスが流れる。

『…群衆は、観光客・ビジネスマン・ショーガール・警察官・港湾労働者と
 まったく社会的関係性の無い人々達、まるでサンアッシュクロス市民が
 こぞって集まったとでもいう様子で…』

千歳とユーニスは、ボックス席に座って、放心していた。

『ライブフェスだよ!今世紀最大のゲリラフェスだ!』
『テロ?知らないねニンジャなら見たよ、捕まえたから確かだ』
『違うって!だから鮫だよ!鮫の幼女とデカイ鮫とメカシャークが…』
『お姉ちゃんっていいよね』
『現代のウッドストックだ!』
『…この奇妙な群衆たちの証言は現実味を欠き、とりとめがないため
 集団的な薬物使用の疑いもありましたが、現在はいっている当局からの情報では
 薬物の使用された痕跡は今のところ誰からもみつけられないとして…』

「2人とも随分疲れてるけど大丈夫?」

ウェイトレスのベティ姉さんが、千歳とユーニスの所へアイスサンデーを持ってくると。
ユーニスは、何も言わずアイスサンデーを引っ掴み、体に放り込むように
バクバクッと放り込んでから

「天国サイコー……」
そう言った。
「ヘブンダイナーだけにか?」
千歳は、あむっとアイスを食んだ。

「死んでよかったー」
「死んでねーよ」
アイスサンデーを補給しながら言うふたりに、ベティは首を傾げながらサービスのコーヒー
を注いで戻っていく。

鮫幼女達のダンスパーティーは、明方まで続いた。途中からは観客たちもステージに上がっ
てしっちゃかめっちゃかだったけど、ただただ、底抜けに愉快だった。

空が朝焼けに染まる頃、ポートマフオネスで…。

「お姉ちゃん、そろそろみんな返さないと…」
「ハァ!?やっと盛り上がって来たとこだろうが!パーティーはこれからダ!!」
「人間は、鮫ほど強くないから…体力尽きて死んじゃうよ」
「ユーニスー!?しっかりしろー!?」
「あはは…私は舞台に生き…舞台に死ぬ…」
「はぁ…しょうがねぇなぁ…」

で、ウィーゾルのスマメイを使って、全員無事に家まで帰れ!鮫幼女と千歳とユーニスのこ
とは他言無用!
という洗脳を施して大群衆を解散させたのだ。

分かれ際、鮫潜水艦の甲板で、ウィーゾルは千歳とユーニスに言った。

「お前ら、俺の艦(フネ)に乗せてやってもいいぜ」
「私達が…鮫潜水艦のクルーに?」
「ああ、人間にしとくには惜しい強さだ」
屈託なく笑うウィーゾルの横で、オルカは

「…好きにすればいいわ」
そういいながら、ちらちらと千歳の方を見ている。

「おおー、いいじゃんー人間よりすげー鮫の仲間になったらー
 わたしたち大統領よりビルゲイツよりすごい人間になーるぞー」
ユーニスは千歳の方にもたれかかって完全に酔いつぶれてるみたいになってて。



千歳は冷たいアイスとすげぇ甘いフレークをスプーン一杯頬張る。
結局千歳は、申し出を断った。
まだ私達は、この街でやりたいことがあるから。そういったらウィーゾルは

『じゃあ俺達と来たくなったら呼びな、いつでも迎えに来てやる』

どうやって…って思ったらWhatsAppとかtwitterにオルカからフォローが飛んできた。
どうやら鮫幼女は思ったより人間社会になじんでるらしい。

「でも惜しかったねー」
「何がだ?」
「スタジアム一杯ぐらいの人達の前で踊ったんだよ?
 SNSとかさーyoutubeとかにさー動画アップして宣伝しておけばよかったって」
「ああ、そのことか…ダメだろう」
「なんでー!?」
「私達が悪のニンジャと戦うために軍隊ハッキングして、戦闘機をビルに突っ込ませたり。
 街をめちゃくちゃにした鮫男の仲間ですって、公表するつもりか?」
「ぐぬぅ…」

正直責任取れる範囲を越え過ぎてるし、鮫幼女たちも人間のルールには無頓着なもので…。
結局、ネットから、千歳とユーニスの痕跡を消してもらうのが精一杯だった。

「でも、ウィウィはスマメイを完璧に使いこなしてたし…うまくやれたんじゃないかなー。
 っていうかオルカもいるしさー。ウォンみたいな悪い奴の欲望はともかくー
 私達の有名になってダンサーとして成功したいってお願いぐらいならー…」
「…あの子らにお願いして私たちを有名人にして貰いたい?」
「あー……」
「私は、オルカちゃんにこれ以上面倒をかけたくはないよ」

「むー……」
「なんだよ」
「千歳はやけにオルカと仲がいいなって、今回の事件中ずっと思ってたんですけど」
「なんだよぉ…」
「むぅー…」
机に身を乗り出してユーニスがじっと睨んでくるものだから。

「…朝飯おごってやるから…」
「ハムとベーコンエッグ、パンケーキのセットのやつ」
「一番高いのかよ!くっそぅ…いいよ」
「やったー☆」

溜息しながら、千歳はスマホを見ようとして…やめた。
スマホがちゃんと自分のやつだと確認してから、ポケットに突っ込んで。
ベティに、一番高い朝食セットを2人前頼んでるユーニスを眺めることにした。

『…昨夜の港での騒動の渦中を撮影したと思われる動画が、話題を集め
 はやくも再生数10億回に達しています。
 映っているのは踊り狂う群衆、そして奇妙なステージ、そしてその上で
 ダンスをする少女達で…』

ユーニスもよほど腹が減ってたのか、待てを喰らってる最中の犬みたくなってたし。
おなかが減っていたのは千歳もだったから。ニュースやネットのトレンドなんか、
もう、どうでもよくて。

ヘブンの客達も、この2人がニュースに出てる少女達だとは誰も気付かなかったが。
この日の夕方には、ネットの暇人たちの手によって映像の中の少女が、千歳と
ユーニスであることがつきとめられ。2人のyoutubeチャンネルがエグいバズり方をして
それが、一昨日受けたオーディションの審査員達の目にもとまることになるのだが。

今の2人には、ダイナーの最高級メニューのほうが大事で。

「帰ったらすぐ寝たいねーあ、夜バイトだ…」
「寝過ごさないといいな…」
「無理でしょ」
「無理だな」
そんな事を言い合ってるうちにいい匂いのする、分厚いハムと焼き立ての
パンケーキの皿が運ばれてきて。

『NO MUSIC、NO LIFE!
 ここからは朝のゴキゲンなナンバーの時間だ!
 ふぁぁ…オットソーリー!なぜか寝不足気味な俺だ!
 しかしテンションは上げていくゼ!
 最初のナンバーはコイツだ!ネットでも話題になってる……』
 
 流れはじめるポップなミュージック
 ユーニスと千歳にとってはダンスの練習曲としてお馴染みの曲
 今日も愉快で厄介な一日が始まる。

Last-modified: 2021-09-04 Sat 05:12:59 JST (49d)