名簿/496183
- (ある日の昼下がりの事である。)
(筋骨の隆々とした巨漢、生業は行商の類か……ここらではあまり見かけぬ顔だが背負った薬箱、売り歩いているのだろう) (道中の田畑を耕す農夫達とも陽気に声を交わして…やがて、はずれの藁葺き屋根の小屋へも訪ねて来たのだ) --
- あいあい、くすりーだかー♪
(すっかり気も抜けていたのかもしれない。怪しい職業としては上位に数えられる薬売りに、易易と面を晒すとは) 眼ぇ悪いかんな、効くのなんかあるけ (それでも偽装を欠かさないのは、染み付いた癖のようなもので) -- 甚伍
- おうよ!遠方より仕入れた丸薬軟膏…煎薬、数多!
(口上も様になっている、軒先で顔を見せた住人をみて) ……ふむ。眼とはまた、難儀であろうな……ちと拝見しても宜しいかな? (一拍、その後に緩やかに音を立てずに背負いを置けば…所見にか、大きな手の持ち主がゆったりと歩み寄り) -- イラクサ?
- おう、外さ薬なら効くかもしれね?(期待はことばにも現れるがしかし)
(じり、と身を引いて)やめとけやめとけ、伝染るといかん (あるいは、素直に見せたほうが良いのだろうか。もし本当に彼が腕利きの薬師で、この眼が治るのならば) (自分が闇に残した痕跡は、綺麗サッパリ消えてしまうのではないかと夢想する) -- 甚伍
- (疫の類をほのめかして身を退けば、多少なりともおののくのが自然であろうが)
…無論、無理にとはいわぬ。 直ほどはっきりせぬにせよ、問診で幾らか見当が付くやもしれんしな… (無理に詰める事もなく互いの間を保ったまま…迷いのみえる様子を見やり) -- イラクサ?
- …出来るだけ、離れてけろ?(迷った時間の長さは世俗に浸った期間の長さか)
(結局、信用することにした。するりとボロ布を外し…そこで、気付いた。気付いてしまった) (自らを射抜く視線。隙無く自らの所作を見る、対面の男の目運びがひとつ) (そしてもうひとつは同じく。忍びの眼で、遠く森の間より殺意も交える視線) (追手である。瞬時に判断を下し、巨漢の肩越しに飛んでくる手裏剣を躱し。) (心が冷えていく)黄泉路行きの薬は、頼んでねえぞ…! (重篤な斜視は明後日の方向、残りの眼で睨む) -- 甚伍
- ……やれやれ。気付かれるほど寄るでない
(後で仕置きだとぼやき…木々の間に潜めたせっかちな同胞を見やる事無く手を振り合図) 不幸な相対だ、言うても詮無き事だが…もはや確認するまでもない (互いに知らぬ存ぜぬでやり過ごせれば……このままひっそり余生を過ごせたか?)
(到底無理であろう。遅かれ早かれだ) 手配帳に記された抜け忍、ならば是非もなし… (男の裏切りに冷ややかな怒気の混ざった歪んだ視線、対して平然と睥睨して) -- イラクサ?
- (片目が悪い分、もう片目は良い。などという冗談を飛ばせる雰囲気ではもう無いが)
名乗る必要は無ぇ、か…薬売りよう (とうとうここまで追手が来たのだ。手配帳、と告げるからにはアシカゲの忍びではないのがまだしもの救いか。) (取引次第では…いや、それは思考の外に置くべき局面である 今はただ、切り抜けることに注力しなければならない―)
(掘っ建ての壁をぶちぬいて。いつの間に替わったか忍装束のジンゴが脱兎のごとく駆ける) (遮蔽物の多い場所こそが忍びの戦場であるためだ、室内は些か狭すぎる) -- 塵狐
- (おそらく追っ手に備えて想定はしていたのだろう…先の察知といい、抜かりがない)
今時分に狐猟とは、手間を掛けさせてくれるなァ… (早業と…思い切りよく飛び出す塵狐の後背を追い、鈍重にみえる巨体もまた疾る) -- イラクサ?
- (返答の代わりか、三本の棒手裏剣がイラクサめがけて飛んでくる)
(嫌に正確な投擲。潜んで、狙い澄ましたかのような…否、敵と己の立ち位置を完璧に理解しているかのような) (昼なお暗い雑木林を、音も立てず駆ける、駆ける 一説には一夜にて千里を駆けると言われる忍びの者の本領発揮である) (追っ手は二人。当然、先に狙うのは…仕掛けてきた、森に潜むおそらくは下忍!) (忍法藪雨、今持つ視界は三人分。自分と、薬売りと、下忍。像を結ぶ脳は、その光景を捉え得る距離をはじき出す) -- 塵狐
- // --
- (見掛けとは裏腹に軽々と疾駆する巨魁、付かず離れずの間合いを保って追跡は続く)
(詰めれなくもないが、如何にも二忍相手に逃げ切れぬと遠からず悟るであろう) (無論、易々狩られる殊勝さは毛頭あるまい。単に逃げ惑うのではなく、塵狐が目指すは刺草達を仕留め得る狩場になる筈である) (駆けたまま羽蟲でも払うように三度閃く掌…刃金が地面へ打落とされる) ふむ、近頃の狐は剣呑だのう…… (避けるでもなく易々と迎撃したかにも見えるが、刺草の胸中はいよいよ警戒を深めていた) (牽制にしては殊更正確無比……まるで後ろに眼があるのか) (先の察知の鋭さからすれば元より知覚に長けた手練れともいえようが…早々に詰めるべきと意を切り替え、踏み込みを増す) -- イラクサ?
- 音は、二秒後…(投げてから迎撃され、その音がこちらの耳に届くまで。先ほどの投擲は、測量を補強する意味もある)
(忍びの戦は情報戦である。それは直接戦闘に及ぶ場合にも例外ではなく、一合一合が情報のやり取りなのだ) (さながら潜水艦戦のように。敵との距離と、相対速度を得た代わりにこちらの手の内を一つ悟られる) 南無!(頭の中の地図上を動く的の一つが、木立と木立の間、渓流に出た瞬間。岩の陰から飛び出し、完全なる不意打ちを決める。小さな鉈でも、首を落とすには充分) (抜刀も納刀も無い、殺すためだけの剣を水に下ろし、血を流す。その背中に追いつく気配は…巨漢の忍者のはずだ) -- 塵狐
- (木立の視界が開け、水の流れる音。そして血飛沫)
(背に追い付きはしたが、塵狐の獲物は己ではなく…下忍の首) (遁走から一転、身を潜めての逆襲…他方から回り込んで迫った彼奴にはまるで見えていなかっただろう) (得物は山刀…大地にしかと根を張る草木を刈るのである、小振りながらも首落とすは容易い) (付き添った同胞を落命させる失策…だが。忍びの者の命など元より軽い) (そこに唯一重みを持たせ得る手段は…務めを全うする事) (代償に知れた幾つかの事実を旨に、舞い転がる首を意に介さず地を掬うような拳打) -- イラクサ?
- 見えている、ぞ(視界はひとつ減って。自分の背から迫り来る拳は、冷静に急所を狙う軌道…その先までもが見える)
(軽業!宙を錐揉みに舞って、高く跳んだ膝が頚椎を狙う!) -- 塵狐
- (振り抜く拳は盛大、音を鳴らすが所詮は虚空)
(直撃必壊は疑いの余地なく、掠めても肉を削ぐであろう威圧感…) (それも…無論当たらなければ何ら脅威もあるまい) (背後の死角すら気取って対応してみせた…ならば) 見えておる、のだろう?…だが (塵狐に言葉を被せる。看破した訳でもないが刺草に揺らぎはない) (軽やかに舞っての反撃…鋭い蹴打、身を沈めても頬を裂くが) (男の突き上げた拳は止まらず…その先で同胞の屍が爆ぜた) (血肉と骨片を撒き散らし、礫と化すのも見えよう…自在には逃れえぬ宙空で) -- イラクサ?
- (忍法藪雨、その脅威は能力そのものよりも運用にある)
(3眼球以上の情報を統合して作り出す完全空間把握。生来斜視によりその能力に欠けたが故か、因果な術だ) (河原石と死体の混じった散弾の分布。速度、未来位置…そう、全て見えている) (軽く腰を捻ると幻のように凶弾をすり抜けて。血の洗い流された鉈を砂利から引き抜き様、岩を蹴って距離を取る) 骸ば、残さぬは慈悲か (完璧な回避であったはずであるが。向こうも忍び、罠の一つや二つはあって当然) (差し当たっては、死体の持ち物に紛れていたのだろう。気化毒が肌に食い込み溶かす) (焼けるような感触。見えるあまりに、目に見えぬものを侮ったとは思いたくはないが) -- 塵狐
- (追い縋る刺草は藪雨の術理を看破していたか?否…俯瞰する類と誤認していた節すらある)
慈悲なぞ無縁よ…おぬしも俺も、忍びの生き死になど塵芥より軽い。だが… 彼奴、京菜も無念であろうさ。一矢も報いずとあっては……赤子に顔向け出来まい (京菜とは討たれた忍びの名か。異名、蟒草…名に纏わる秘伝か、宿す強烈な酒精) (塵狐に焼け付くような痛みを遺した産物であろう) (超常の秘伝を持つ忍、それすら何処迄行っても人を外れ足りえぬ) (それが刺草の理…ならば例え万物見えようと躱し切れぬを用いればよいと。) -- イラクサ?
- 抜け忍など、放っておけば…無念など(生まれ得ぬ、と言い訳染みた弁舌を振るいかけて止める)
(感傷的になる暇など無い。症状に覚えのない毒、時が経つほどに悪化する可能性は…高い) 元より、お天道さまにも…向けられる顔でなし! (そう断じて、沢の水面に映る姿が跳ねる。骸と、骸であったものは水に浸かっているのだ、もはや流水すらも危険!) (体格面で力比べは無謀。ならばと棒手裏剣を投げ、加えて鉈すら投げ放つ)
(夕刻に差し掛かり、鴉が鳴き始める。獣にすら気取られぬ、忍闘は静かに進行する) -- 塵狐
- 務めは果たすが忍びぞ……半端者が言うてくれるなよ
(半身を傾け、片腕をだらりとのばしたままカカと笑う…追われた仔細など知りはしないが) (ある種構えのようにも見受けるが、本来型など刺草に無い…塵狐が浴びたとは別に、骸を爆ぜさせた腕も当然直に被り沁みたのだ) 日輪に恥じ入るほど悪くなかろうがな……半端なのだ。 (軽口。小屋で見た僅か張りだが、その異貌は見目が悪いとはまた異なる。奇異に陰を落としているのは…見えぬものだ) (一方が跳ね投げるならば、他方は身を沈ませ…下駄を飛ばす事で迎えて) -- イラクサ?
- (下駄に突き立ち止まる手裏剣と、それごと断ち割り止まらぬ鉈。二段構えの飛来する隙に、三段目の矢と化した忍が迫る!)
(一直線上の三連撃、手数の多いほうが押し切れる公算だ) (減った視界により低下した距離把握は、軸を減らすことで解決する) (男の片腕に動きは見えない。この肌よりも傷は深いと見ていいが…体格が違えば、当然毒の回りも違う 警戒を解いてはならない) たわけた務めで、骸さ転がして何が忍びかよ! (如何に軽い命とて、やはり死にたくはなかった。その怒りが、理不尽さへの葛藤がつい言葉に出てしまったのだ) (手刀が肩の付け根を狙う。もう片腕も潰せば、少なくとも逃げる隙くらいは得られるはずだ) (鴉が鳴く。木々の隙間に、無数の瞳が潜む) -- 塵狐
- 皮肉なものよな……身内の俺より、彼奴を討ったおぬしが激昂するとは
(減速による僅かな間隙…依然伸びきったままの腕の具合を確かめる為か、指先を微かに蠢かせ) (四方の夕闇に潜む鳥獣の眼は捉えていた、刺草の後背に現れた白い塊) (……四つの鞠球如き一つから白い腕が伸びるのを) (飛来した刃が白腕を裂くが、血飛沫く事もなく……断ち切れぬまま、絡まり止まり) (痛みを知らぬようにそのまま、間髪入れずに襲い来る塵狐へ掴みかからんと…) -- イラクサ?
- (今殺った誰かになりたくないから、その手を血に染める。因果の順が絡まって、忍びの業を紡ぎだす)
(妖しい気配の高まりに、止まれる勢いでは既に無い) (視界はたった二つ。交錯する片側が、両の腕の他に動かせる器官を備えていたとしても、敵を見る視界には何の影響も無い!) (そう、一対一のこの状況では。自分を見る敵と、敵を見る自分の他に情報は無し) (だから、手刀が突き刺さるゼロ距離で。粘糸のごとき腕に、絡め取られていた) 妖怪…いや、これは忍法?! (視点が、近すぎて用を為さない。情報を把握するのだ!掴まれたまま丸裸も同然!) -- 塵狐
- 少々動きが重いな……おうよ、ご明察…
(呟きは際どかった、と言う意味か) 俺の秘術、見た者も数えるばかりだが…知る者は皆無でな (使わずにも大概は事足り、見れば死ぬ…必殺の業とも受け取れる物言い) (しかし、塵狐としては然程圧倒的で致命的な術とも思い悪いだろうか) (…とはいえ、存外柔らかな白い腕) (表面は絡まるような格子状、内は粘つき…身動きが儘ならぬ) (完全に埋もれ、抜けれないならなぶり殺しか…生け捕られ、里へ引き渡しか)
(微かに指先に当たるのは、同じく埋まり込んだままの柄…) -- イラクサ?
- この日の暗闘、その決着を知るは二忍のみ…
…ただ。穏の里にては、還り戻った刺草より忍務失敗の報と記録がなされている。 その重く閉ざした口からは終生、塵狐との術比べの子細を語る事はなかったという。 --
- (かつて毛羽毛現が現れた例の夜道、あれから暫らく経ち、恐怖も薄れた頃…悲劇は再び訪れたのだ)
(以前よりもより静かに、より気づかれぬように……甚伍に足元に、黒い糸状のものがまとわりつかんと…) -- ひかれ?
- (今日は薪がことさら安く買えた。そんな何気ない幸せに、カンが鈍ったというわけでもないが)
(足取りは軽く、闇の中に潜む髪には気づかない) -- 甚伍
- (気づかぬ甚伍の足に、突如強い力が加わり引きずられる!更には手に向かって束ねた髪を打ち、提灯を落としにかかる)
みーつー……けーたー……(夜目が聞けば、はたまた提灯の明かりで見ることが出来れば……恐怖の再来である、それも、今回は逃れることの出来ぬ) -- ひかれ?
- ぎゃっ?!(警戒していたといえば嘘になる。むざむざと囚われて、近づく顔に見覚えは…ある)
けっ毛羽毛現!(引きずられるままに、心が冷えていく) -- 甚伍
- (ずる、ずる…と近づくにつれ、その顔は以前と同じものであったことが明らかに、こいつは人の皮を剥いで仮面にするのか、否…)
毛羽毛現じゃー……ないってばー ちょーっと、傷ついちゃうー…なー…(間の抜けた声が響き、毛羽毛現であることを否定する…会話する知性は持ち合わせているのだ) -- ひかれ?
- (殺るしかない。そう結論づける二歩手前、辛うじて踏み止まった)
…なんじゃ、別の妖怪け?(片方の目を白黒させつつも、ソレ以上何もしてこない相手に会話を試みる) -- 甚伍
- ……うーんー……妖怪から離れてみてほしいなー、なんてー?(頭を髪の毛でかく、という人間らしからぬ技を見せながら、困ったような表情で)
私はー、滅の里のーにんじゃだー(うおー、と髪の毛をうねらせて威嚇のポーズ)……この前ー、里の近くを通りかかってたからー…警戒してたんだけどー 今回はー…私怨でーす? -- ひかれ?
- なお悪い…!(どこからどう見ても今の自分は農民である。忍者に因縁をつけられる覚えは…あった、こないだの妖怪扱いか)
したっけ、おらぁ何も悪いことしとらんべ?はなしてけろ? (期待はせずに言ってみる。忍者と名乗る忍者には付け入る隙がある、ちょっとしたジンクスだ) -- 甚伍
- 自業自得ってやつだよねー、髪を伸ばしてるだけの女の子にー、妖怪はー…失礼だー
うーん、謝ってくれたらー離してもー……あー、でもー…初めて会った時ー、一応忍者な私の髪をかわしたりー足がはやかったりー、を説明してくれるとー、嬉しいなー?なんてー? (ジンクスは中々叶うことが無いのか、キュウキュウとより強く髪の毛が食い込みはじめる、少し痛い) -- ひかれ?
- (髪を伸ばしているだけの女の子は髪を操って大人を締めあげたりしない、という言葉は飲み込んで)
いだだ、謝るべ、謝るべよ…こう見えても元猟師じゃけえ、獣の動きには敏感だっぺよ (今度は獣呼ばわりであるが、まあ納得のいく説明のはず。) -- 甚伍
- むー……今度は獣ー……まぁ、妖怪よりはいーかなー…見た目のことじゃないしー(少し不満げながらも、髪の毛による拘束を解き、そこらに落ちた薪などもついでに拾い上げる)
一応言っとくけどー、あの辺りはー見まわってる人も居るからーあまり遅くに出歩かないほうがいーよー? 私なんかはー、めんどくさいから拷問まではなしけどー、他の人は分からないしー、ね?(髪で締めあげるのは拷問に含まれないのか、呑気な説得) まー一応…提灯二個壊した責任もあるからー…後髪ひかれの知り合いって言えばー、少しは大丈夫かなー?駄目かなー?どっちかなー…… -- ひかれ?
- 助かっぺよ…(後髪、ひかれ。名字持ち、それ即ち家柄のある忍びということだ。思いの外、命拾いしたのかもしれない)
んだども、あすこら辺は街との近道じゃあ おらみたいなの、一々締め上げとったら大変だべ? …この道、妖怪が出るって噂しとぐか?(まったくの善意である) -- 甚伍
- んー、参っちゃうなー……確かにここらへんから街に行くのって楽なんだよねー(納得がわりにふぅとため息)
妖怪の噂……ねー(少し、目を閉じ思案顔、静かに怒っているのかそうでないのか) ……そだねー、いいと思うよー一つ目小僧のうわさー、ありがとうねー一つ目小僧さんー(甚伍に向き直って笑顔、悪気はない) -- ひかれ?
- えっ(ぴょいんと飛び上がる 後ろを見て、一つ目小僧が居ないことを確認して)
恐ろし事言うべな、おめ…ひかれどん?おらぁジンゴじゃ なるたけ、急いだ時しか通らんようにすっべさ、おめに用がないときゃ -- 甚伍
- ……えー?だってそっちから噂を流すってー……(なんで恐ろしいことを、と言い出すのか不思議そうに)
うんー、まー分かったよ甚伍くんー、私に用があるってこともそうそうないとはー、おもうけどー? それじゃー私ー、すっきりしたから帰るねー、暗い夜道に気をつけてー妖怪さんにも気をつけてー(するすると帰る毛羽毛現もどき、あたりは虫の声につつまれ、提灯もない暗闇であった) -- ひかれ?
- 女の髪じゃ、大事にすんじゃっぞー(ひらひら手を振って、何とか友好的な関係?を築けたことに感謝して) -- 甚伍
- アシカゲ忍軍ではない。であれば、余程裏稼業には縁があるか…因果なことよ
(ある里の存在を知った。農民への慈悲だとしても、貴重な情報には変わりない) (森に木霊する虫の合唱。繰り返し響くソレは、過去からの呼び声か) -- 塵狐
- (風采の上がらない男がふらりと現れたひと月かそこらあとのこと、藁葺き屋根の家に小さな狼が現れるようになった)
(さりとてその狼は作物を荒らすでもなく、あくびをしながら甚伍を眺めるのみ。そんな日々が数日続いたある日のことである) (普段は遠巻きに見ているだけの狼が、甚伍の足元まで寄ってきた。じっ、と隻眼を見上げ、何かを値踏みしているように感じられる) -- 繰刀
- (多少の警戒もする。するにもしかし、忍犬の類であればいっそここまで人間的な怠惰を見せなどしない)
んお?はぐれもんか、おめさ(人里に迷い込んだ狼の子であろうか?ひとなつこい動物を無碍に追い立てるのも不自然か、と) -- 甚伍
- (はぐれものか、と問われれば、その姿がどろんと人に化けて変わった)お! おまえ"はぐれもの"しってるのかー?
そーだぞ、くるとーははぐれものだ! ……あ(一拍遅れて自分の様子に気づいた) -- 繰刀
- (ぼふん 煙の向こうに男児がひとり)…妖怪っ?!(が、毛羽毛現よりは人よりな姿が幸いしたか)
や、化かし…狐狗狸のどれにもあではまらねが?なんだおめ!なんだおめ! (辛うじて平静さを保ちつつも後ずさる足は不自然に早い) -- 甚伍
- あーばれたー(牛乳こぼした子供みたいな声で)くるとーはなー、くるとーだ! おーかみで、にんじゃだぞー! ……あ、いっちゃだめだった。
(音なくすり足で下がるのを見て)おまえもにんじゃだなー? ふっふっふ、くるとーはみはっていたのだ! -- 繰刀
- (追手?!と一瞬だけ心が冷える)
(しかし冷やし続けるのにも体力がいるのだ。) おめ”みたいな忍者がいるけ…(小さく呟くと、わっぱの戯言に大騒ぎしてはそれこそ怪しい、と思い直し) んだべな、ばれっちまっちゃしがたね。おらぁムラで一番の忍者よ、襲い来る熊をちぎっては投げ千切ってはなげ したっけ、人の目を憚るのも忍者じゃ。おらもおめえが忍者なこと黙っとぐ、おめもおらが忍者なこと黙っとぐ、わがるな? -- 甚伍
- お! やっぱりにんじゃだなー!(ふふん、と胸を張る。しかし続く搦め手に対しては大きなはてなを頭の上に浮かべて)
う? ……えーと、にんじゃはいっちゃだめだから、えーと……おー、"きょーうん"もそういってたな! じゃーにんじゃらしくかくれないとなー……くるとーかえるね! にんじゃのことはひみつにしとくからだいじょうぶだぞ! (何も考えていなさそうな笑顔で言えば、手を振り狼の姿になって帰っていった。聞き覚えのある名前を一つ残して) -- 繰刀
- んだー、おめの言うことばアブねかんな、気ぃつけんだぞ(ばれたら犬鍋にばすんぞ、と冗談じみた脅しも込めて)
(しかし、やはりその名と存在感は小骨のように刺さる。) 変なアヤカシ、飼ってるのけ…?(罠と思うには、不可解な点が多すぎるから。今のところはそう結論づけるしか無く、見送った) -- 甚伍
- いえーい!アンタがジンゴでしょう?来月同行よろしくー -- キサラ
- まんずまんず、派手なぁわりにまめなこって(お辞儀でかえした) -- 甚伍
- ようご同輩……いや、それにゃあ若すぎるか、初めての冒険じゃ世話になったなあ、へへへへ。
(以前の冒険で同行した風采の上がらない男だ)そのナリ、お百姓さんの出かいね? 畑耕して武器握って、大変なこったよな。生まれた頃からそうなのかい? ま、俺にゃーあどうでもいいがねえ。見知った顔になったんだ、せいぜい死なんでくれよ。そんじゃあなあ。 -- 凶運
- 今じゃあ、食うにも困っちからよ
(やはり「におい」のようなものは隠せないのだろうか。眼を誤魔化せそうにもない男に、早速出会ってしまった) おっとうもおっかあも、草鞋は一足だったあ。おらがやっ始めっちことだべ、死ぬ気もねえよ (出来れば、全てを嗅ぎつけられ追手に繋ぎを付けられませんように。出来れば冒険の中で死にますように。暗い感情とともに見送ったのだった) -- 甚伍
- (ある春の日の事である。この地に流れ着き、親切な―食い扶持よりも、労働力を期待されてか―農村で、ボロとはいえ小屋まで貸し与えられたのは僥倖であった) -- 甚伍
- んだば、恩さ返さねばなんね(農具は…錆びて、それでも研げば使えそうな程度のもの。誰かに頼れば、即ちこの共同体に溶け込みさえすれば充分やっていける)
(余所者を身内に変える周到さというよりも、これは恩情であると感じなければならない) (忍びの心はいらないのだ) -- 甚伍
- したっけ、挨拶ば行ごかね
(ムラの仲間に面通りもしなければならないし、街との距離を知ることだって必要だ。流れ者に、土地勘は無い) (だから、よく晴れたこの日に。出来るだけ、歩きまわることにした) -- 甚伍
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