名簿/102606

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  • こんなトコロにボクら以外のニンゲンがいるヨ★ 珍しいネ?
    • 珍しいじゃん☆ クスクス、イタズラしちゃおっか?
      • アハ★ いいネ、どんなイタズラしちゃう?
      • ん〜〜〜コレひっぱってヨ(袖からニッポンの国旗をひらひら出して)
      • ハーイ 何が出るかな、何が出るかな〜〜♪(するすると引っ張ってく)
      • (するすると運動会で飾り付けられる国旗のロープが出てくる)いろいろ出るかナー☆ アハハッ
        ぐるぐる巻きにしちゃえっ(片方の端を持ってぐるぐる)
      • ぐるぐるー★(逆側を持ってぐるぐる。 旗は尽きること無く伸ばされ、どんどん『彼』を覆っていく)
      • 起きたらビックリだよネー(これは、彼らなりの手当てだったのかもしれない。『彼』は完全に旗に覆われた)
        おーい おっきろーーー☆
      • きっと飛び上がるネー
        おっきろーーー★ おきないと、こわ〜〜いあくまのトコロにつれてっちゃうヨ?
      • おきないと、みんなをかなしませるワル〜〜いコになっちゃうヨ?
        ♪おーきないんだ〜イケナイんだ〜 おーきないコはワルいコだ☆
      • ん……ぅ……う………………ぁ?(か細いうめき声を挙げ、死体のように動かなかった『彼』がうっすらと、瞼を開ける。) -- ジェイコブ
      • そのちょーし★そのちょーし★ でも、ボクらにできるのはこのくらいだネ?
      • なんにもできなさそーだネ
        つまんなーい ネー、どっかポイしちゃお おもしろそーなトコにサ
      • そだネ★ おもしろそーなトコ……アノ悪魔のトコにポイしちゃおうか?
      • ニンゲンだった悪魔に? ニンゲンをポイしちゃう? アハハッ、しーらないんだーしらないんだー☆
        (ちーーーー、と空間に、別の空間へのチャックを開ける。眠りの中ならば、なんだって自由にできる)
      • 悪魔になったニンゲンに? ニンゲンをポイしちゃう? クスクス、いーけないんだーいけないんだー★
        (開いた空間に、国旗に巻かれた『彼』をポイ)
  • ―――――
  • おんがくねずみ ジェラルディン
    • ある場所にジェラルディンというネズミがいました。
      彼は今まで音楽を聴いたことがありません。
      人間の声。扉がばたんと閉まる音。犬のわうわう、水のじゃあじゃあ、中庭にいる猫のにゃあにゃあ。
      もちろん仲間と自分、ネズミのちゅうちゅう。
      だけど音楽は一度も―― -- ????
      • ある朝、ジェラルディンは台所の隅で大きなパルメザン・チーズを見つけました。
        それはとってもとっても大きくて、自分だけでは運べそうにありません。
        ジェラルディンは友達の下へ走り、大きなチーズを運ぶのを手伝ってくれたらチーズをひとかけらあげると話しました。
        みんなは大喜び、チーズを押したり引いたり引っ張ったり。
        何とかジェラルディンの隠れ家にチーズを持ち帰りました。 -- ????
      • ジェラルディンは大きなチーズを小さな歯で削って友達に渡していきます。
        せっせ、せっせと削ります。友達はチーズのかけらを受け取ると嬉しそうに去っていきます。
        せっせ、せっせと削っていくうちにジェラルディンはパルメザン・チーズが何かの形に変わってきていることに気付きました。
        友達全てにチーズを分け与えると、ジェラルディンはその大きなチーズを噛み取り始めます。
        なんだか何かに似ている。何かの形になっている。そう、それは。 -- ????
      • それはまるでネズミのようでした。チーズを噛み取っていく間に現れたものはネズミの彫像。
        まるで自分の尻尾をフルートのようにくわえている、不思議な形の像でした。
        どうしてただチーズを削っただけなのにこんな形になったんだろう?
        ジェラルディンはその彫像をずっと眺めていました。
        そして夕暮れの中で眠りに落ちてしまいます。 -- ????
      • 突然、ジェラルディンは聞いた事もない音に目を覚ましました。
        ネズミの彫像がくわえた尻尾から不思議な音を出しているのです。
        暗くなるにつれて節がつき、金と銀の糸のように音が組み合わさり、周囲に広がります。
        ジェラルディンは気がつきました。「これだ! これこそがおんがくにちがいない!」
        ジェラルディンは夢中になって初めての音楽を聴きました。
        ネズミの彫像は夜明けと共に演奏を止め、また夜が来るたびに美しい音色を聴かせてくれます。
        ジェラルディンはチーズを齧りながら夢中になってその音楽に聴き入りました。 -- ????
      • ジェラルディンはある日、友達がみんな参ってしまっているところを見てしまいました。
        「ジェラルディン! たべるものがすっかりなくなってしまったんだ。あなたのチーズをわけておくれ。」
        「でも、そんなことできないわ!」
        ジェラルディンの言葉にみんな顔を見合わせて困ってしまいます。怒り出す友達もいました。
        「だって……あれは…あれはおんがくだもの!」
        「おんがくって、なにさ?」
        みんなが声を揃えてジェラルディンに聞きました。 -- ????
      • ジェラルディンは一歩下がり、おごそかに尻尾を持ち上げ、フルートのように持つと唇を当てました。
        深く息を吸い込み、吹いてみました。力いっぱい、吹いてみました。
        ふうふう、ぜいぜい、きいきい。
        友達はみんなぺこぺこのお腹が痛くなるまで笑いました。 -- ????
      • しかし、やがてジェラルディンの唇から口笛が音を出しました。
        ジェラルディンは尻尾を離し、今度は声であの音楽を再現しようとしてみました。
        声は歌になり、何度も聞いたフルートの音楽、その節をなぞってジェラルディンは歌い続けました。
        ネズミたちは驚いて息を凝らし、この奇跡を聴きにたくさんたくさん集まってきました。
        年寄りネズミのグレゴリーがジェラルディンの前に出ます。
        「もし、これがおんがくというものなら。ジェラルディン、おまえのいうとおりだ。あのチーズをたべるわけにはいかない。」 -- ????
      • 「いいえ。」
        ジェラルディンは嬉しそうに言います。
        「これでチーズをたべることができるわ。だって……もうおんがくはわたしのものになったんですもの」
        ジェラルディンの歌声についてみんなは納屋へ向かいました。
        そうしてジェラルディンが一番楽しい節を歌っている間、みんなはお腹一杯チーズを食べました。
        ネズミたちがジェラルディンに続くように歌い始めます。
        ネズミたちの楽しげな歌声はいつまでもいつまでも響いていました。 -- ????
      • ……音楽ネズミのジェラルディンか。
        いつも膝を抱えて泣いていると叔父がこの絵本を読んでくれた。
        (目の前にある過去の自分。少女時代のセルマは涙を拭って叔父夫婦に抱きついている)
        (眉根を顰めてその光景を眺めるセルマ。過去の残像は楽しげに愛してくれたヒトの手の温もりを求めていて)
        何故このような夢を見る……?
        私は戦うために悪夢を見続けていれば良かった。(無意識に握られた拳、ギュっと手袋が音を鳴らし) -- セルマ
      • (いつも見る夢のように楽園は切り替わり、地獄の光景に変わったりしない――)
        (ただ自分が幸せだった頃の景色が眼の前にある)
        私はこの絵本が大好きだった。どんな身分の者にも音楽と幻想が与えられる、小さなネズミの物語が。
        だが……だが、何故だ!! こんな……叔父たちが死んでから一度でもこんな夢を見ていたら…

        ……こんな夢を見られていたら、私は…

        (自分の唇から滑り落ちた言葉がただ、信じられなかった) -- セルマ
    • 純白のライラック
      • (唐突な場面転換。いつの間にか白いライラックが咲き乱れる花畑の上に立っている)
        白のライラック……紫色の花をつけるこの花に、例外的として白い花弁をつけるものがある。 -- セルマ
      • 貴族に騙され、純血を散らされた乙女が自ら命を断った。そしてその墓の周りには今も白いライラックが咲いている。
        純白のライラックは呪いだ。(黒いブーツで構わずライラックを踏み、歩く)
        これを男が贈られた場合、口にするのも憚られるような最期を迎えるという。
        ……く、くくく。(純白の花を見下ろし)ムラサメにも教えてやるべきだったか。 -- セルマ
      • だが……(空を見上げる)これは何だ…?
        (青い空の合間を薄く雲が流れ、鳥の囀りさえ聞こえてくる牧歌的な景色)
        白いライラックが咲く私の世界はもっと地獄のような場所だったはずだ。
        矛盾の魔力で作り出したとはいえ、完全に。完璧に。間違いなどない。
        (不意に心が粟立つ感触に襲われ、その場に膝を着く。柔らかい土とライラックの優しい香りに包み込まれ) -- セルマ
      • 何だ。一体何の意思が私にこんなものを見せている……?
        戦う力を削ぐためサーヴァントが行った精神汚染か? そうでなくては……なぜ… -- セルマ
    • 慈愛の御伽噺
      • ある日、ある場所、ある孤児院に事件が起こりました。
        孤児院の神父が逮捕されたのです。内容は孤児たちへの強姦・暴行容疑。
        子供たちはぞんざいな食事と生活環境の中、男の子も女の子もおぞましい本性を持つ神父に犯されていました。 -- ????
      • そして全てが明るみになった時、残されたのは十年に渡る負の遺産と傷ついた子供たちだけでした。
        神父が残していた写真を見たものは、大半が吐き気を堪えきれなかったほどです。 -- ????
      • 神父が逮捕された後、心に深い傷を負っていた子供たちはそのニュースを聞いた国中の人間に引き取られていきました。
        同情でも彼らにとっては確かな救いになるでしょう。
        しかし、彼らがちゃんと大人を信じられるようになるかはまた別の話になります。 -- ????
      • ある夫婦が少年を引き取りました。
        しかし少年は自分が孤児院という地獄から救われたことすら実感がないようでした。
        信じられるものがない少年は、未来を知りませんでした。
        夫婦は神に誓います。私たちは愛情を込めてこの少年に本来親が与えるべきだった温もりを教えます、と。
        少年が未来を信じられるようになるまで人の世の愛を教えます、と。 -- ????
      • 少年を夫婦が引き取った帰りの道。自分たちの村に帰る途中。
        先の森で悲鳴が聞こえたので夫が養子と妻を残して様子を見に行きます。
        しかし夫はなかなか帰ってきません。妻は強く、自分の子供となった少年を抱きしめます。 -- ????
      • 静寂。次に、音も無く森から歩いてきた少女は両手の指があちこち欠けています。
        そしてその歪な手の中にはなんと、先ほど森の中に入っていった夫の生首があるではありませんか。
        目玉は沸騰して破れ、焼き切られた首の断面には白い骨が一本、見えています。
        恐怖に震える妻と少年。そう、現れた少女は会えば命はないと噂されている魔人セルマ・レイネスでした。 -- ????
      • 妻は魔人に言います。
        「私はどうなってもいい、この子だけは助けて」と。
        魔人はその言葉が聞こえているのかいないのか、変わらずこちらへ向けて歩を進めながら手の中の最愛の人の生首を蒸発させました。
        妻は少年を庇って抱きしめたまま神に祈ります。
        『この子は今まで虐げられて生きてきました。この子に信じられるものを教えてあげたいのです。』
        『ああ、神様……どうかこの子から未来まで奪わないで』 -- ????
      • 魔人は口の端を吊り上げるように笑うと、炎を放ち二人仲良く炭クズにしてしまいましたとさ。 -- ????
    • 彼女の大世界
      • (何もない空間に膝をつき、震える肩を必死に押さえつけ)
        あの親子は…血が繋がっていなかった………? それなのに私から必死に子を守ろうと…

        セルマが生きた世界は広大だった。
        彼女が生きて感じたこと、それが憎悪であっても偽りではない。
        ただ殺してきた人間、その一人一人にもまた生きてきた時間と記憶が存在する……


        う、あ……ぁ…!(魔人の呻き声はただ虚空に響いて) -- セルマ
      • 私に……このような夢を見せて…ッ
        魔人でも英霊でもなく、人間としての苦しみを求めているのか!! 矛盾の魔王ヴァルキサス!!!
        (パチンと泡が弾けるように。女の叫びも懊悩も蝶の羽音にかき消されてしまう――パチン) -- セルマ
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  • (生まれる前の無限と死んだ後の永遠が横たわる場所。全ての時計の音で永遠の水底から一時掬い上げられる若い魂が一つ)
    • (その久遠の闇の淵を通りかかる影が1つ。それは菩薩か、はたまた煉獄の悪魔か――)
      ……あら?久々に冥府の夢に降りてきてみれば……くすくす……これはなかなかの拾い物かもしれないわねぇ……
      (悪魔的な鋭いフォルムの、ビキニにも似た法衣に身を包み、波打つ銀髪、深い藍の瞳の女が呟く)
      (そして「ふぅ」と妖艶に短く息を吹いて、指先から氷の鎖を編み上げると、永遠の水面から顔を出した若い魂目掛けそれを投げつけた)
      • ぱきり (金属よりもなお冷たい鎖に抱かれて、ふちの揺らぎは凍りつき魂は鎖に瘤のように貼り付いた)
        (水面から逆回しのようにぴとぴとと、鎖の瘤に水滴が滴り上っていく。一滴ごとに瘤は育ち、表面に隆起が生まれ、やがて人間ほどの大きさに)
        (いや大きさだけでなく形さえも人間のようになった。胎児のように体を丸めた氷塊は、内部に氷以外の物を閉じ込めている)
        (いつの間にか滴りは世の常と同じく人氷から水面へ滴り落ちていて、ある一点を超えたところで人氷の層は砕けて散った)
        … (どさりと、まるで磨き上げた石床のような水面に男が倒れ臥す。瞼を閉じた横顔はまだ少年といっていい若さで、冷たい首輪と鎖だけが身に纏う全てだった。)
      • (文字通りの死の淵から、現世に未練のある魂を見つけ、釣り上げる。いつもと変わらぬ彼女の暇潰しのはずだったが……)
        ……! …………ふふ……ふふふ……あははははっっ!! 「なかなか」どころじゃあないわ!!
        ここまでの上物には滅多にお目にかかれないわよ…………さてさて、どうやって遊ぼうかしらん?
        (端整、いや耽美とさえ言えるその顔を邪悪に歪めで笑い、長躯の女は呟く)
        おっと、どうするにしろ、反応がないんじゃつまらないわよね……ほらっ!起きなさい!!
        (そして女は鎖を持って、少年を荒々しく手前に――ちょうどその剥き出しの陰茎が石畳の如くなった水面と擦れながらになる様に――引き寄せた)
      • いッ (少し皮を被った陰茎は、吸い付くように滑らかな硬い水面と体の間で皮膚が引き合われて。急所を瞬間で駆け抜けた痛みで意識も蘇る)
        ………、?  う 冷た。? (半身を起こすと眠たげに重なった二重瞼で辺りを見回す。何も目に留まらない世界の中で一本の鎖だけがどこかへ伸びている)
        (その先にはやたらと背の高い、整っているのに妙に嫌悪感を抱かせる顔の女が立っていた) …おい (立ち上がろうとした瞬間)
        (女の手に握られている鎖、そして自分の肌色の下半身が間を置かずに目に入ってきた。そこは普段から肌色だろうに、思わず両手を見る) は?
      • ……気がついた?いえ、今まで貴方には、その「気」さえなかったのだから、そう問うのはおかしな話かもしれないけれど……
        (少年が意識を得たのを確認すると、先ほどよりは幾分柔らかな、しかし冷徹な微笑を浮かべ)
        状況が飲み込めていないようだわね。 でもそんなのは些細なこと。 貴方はこれから、私の快楽の糧となる。
        そしてその中で、貴方も刹那の快楽を得る…………それだけだわよ。(笑顔のまま、氷の鎖をしならせて、少年の胸元をぴしゃりと……)
        (否、「ばきり」に近い音を立てて打ち据えた)
      • ッぅぅッッ!?
        (無防備なところへもろに喰らい、肺がへしゃげたような呻きが漏れた。うずくまって声にならない悲鳴を喉から搾り出し、全身の筋肉を震えるほどに硬直させて痛みに耐えている)
        (白く薄い胸板には痛々しい赤いラインが走り、掠めたのか右の人差し指の先にも血が滲んで、爪が少し浮いていた)
        (骨の浮いた丸まった背の向こうで丸みの少ない痩せた尻が、これまた白さの際立つ双丘となって、痛みに耐える身のよじりも女の目を楽しませる)
        お前…!! (額に冷たい脂汗の雫が滲んだ顔で女を睨む。先ほどから意識を集中しているのだが、なぜか自分の魔法は兆しも見せなかった)
        ッざけんッなよッ クソババァッッ………!!
      • (少年が魔の法を振るえないのも無理はない。死の淵を支配するのは魂の力、精神の鼓動のみ)
        (そして女は死霊として長い時を過ごしたが故に、己が精神を律する力を身に付けており)
        (またそれだけでなく……無限にも等しい邪な妄想力がその魂を形作っていた)

        (少年の呻き、その身悶え、細い背や腰、尻のラインすべてが、穢れた魂魄を喜ばせ、女の笑みに再び邪悪さが浮かぶ)
        ごめんなさいねぇ。痛かったでしょう? (さも第三者が悪いかのように語りかけながら、少年に近づき身を屈め)
        (その手足に触れると、その両手と両足それぞれを、首輪と同様に氷でできた、短い鎖で繋がれた枷が拘束した)
        ふふ……素敵なピアスだわ……(呟きながら、少年の乳首についたピアスを、指先で弄び、ときに左右に動かし、爪で乳首と一緒に引っかいたりしてみる)
      • (猫なで声に寒気が走る。顔をしかめて背けようとした時、凍てつきが四肢を襲った) !?
        ッ、ッ、んんあぁッ!! (自分が非力とはいえ、たかが氷の拘束がまるで揺るがない事実に、ガチャガチャとパニックを起こしかけていた時)
        (氷とは違う、柔らかさを持った控えめな冷たさが胸の突起に触れて、思わず身がすくんだ。同時に縮こまっていた少年の、数少ない男を主張するものもピクリと揺れる)
        (痛みと緊張で尖っていたそこへの、猫が甘く鼠をいたぶるような卑しい手つき。意識しまいと思えば逆に意識してしまい、皮膚に無尽に走る神経は女の指の動きに一斉に耳を澄ます)
        ………、ゃ   さ わるな (隠そうと、内腿をすり合わせるのは逆効果。血が、巡ってきた)
      • (恐慌の叫びも、鎖を引く音も、弱弱しい抵抗の声さえも、女の耳には心地よく響き)
        怖がらないで……身を任せなさい…………痛みさえも……快感に変えてあげるわ……
        (少年の耳元に触れんばかりの近さへ、ピアスで飾られたその唇を近づけて呟くと、腐った果実のような蠱惑的な甘さが鼻腔に届くことだろう)
        (そして今度は、少年の胸板に片手を添え、先ほど鎖で打ち据えた傷痕に、ゆっくりと舌を這わせた)
        (傷の痛みと、その上を襲う舌の生温かい柔らかさと、舌についた小さなピアスや唇のリングピアスの刺激と……)
        (様々な感覚が少年の胸元に混沌となって押し寄せ、その精神を蝕もうとする)(そんな最中、女はもう一方の手を、少年の陰茎へ向けて伸ばし)
        (しかしそれを握ろうとはせず、内股に挟まれながら自己主張を始めたそこに、鳥の羽を落とすが如くそっと指を被せた)
      • ッ (華美すぎて鼻に付く香りに魅入られたように少年の言葉が減る。表情は怯えを露にして強張って)
        (傷を這う舌の未知の感触に喉を鳴らして視線を下ろせば、かすかに見えた舌とその側のピアスは、まるで卵を抱えた赤い軟体生物のようで鳥肌が立つ)
        (恐怖に支配されかけた心とは裏腹に浅ましく、あるいは身の危険を感じたからこそなのか、少年の白くて少し細い持ち物は完全にそそり勃っていた)
        (しとしとと先走った透明な粘液で女の指先を汚し、溺れる者が水面を目指すかのように、ほんのかすかな接触でももっともっとともがく陰茎)
        (ぴくぴくと細かく跳ね上がっては粘液の表面張力が指と隠れた亀頭に橋を渡す様は、力無くとも本能だけは威勢のいい、滑稽な雄だ)
        …、…、 (胸への這いずりが止まらない、少年は尻を少し浮かしだした。腰をよじり何とかもう少しでも陰茎を突き上げようとする) んっ
      • んふ……(少年の胸元を唾液で濡らしながら上目遣いに見上げると、無垢ゆえともとれる畏怖の表情と目が合い、自然と頬が歪む)
        (更にその男性自身の先端が、先走りが、小さく指先に絡みつくのを感じれば、腰を浮かし捩ってより刺激を求めて来るのに合わせて、腕を引き、焦らす)
        (そんな粘液の糸が織り成すマリオネットを暫し楽しんだ後、少年の胸に一際唾液を塗りたくって、胸板から舌を離した女)
        (唾液は薄い胸の筋肉と、少し浮き出た骨との間を流れて行き、少年が身を揺らすと、その一部が陰茎に滴り落ちて、慎ましやかな雨垂れの如くそれを打った)
        ん……その様子だと、私の舌はあまりお気に召さなかったようだわね? でもその分、こっちは正直に欲しがってて……くすくす。
        (少年の男根を見下ろしながら、嘲りと慈しみと情欲とが交じり合った笑い声を上げると)……じゃあ、これなら気に入ってくれるかしら…………
        (――今や無防備になった少年の股間に顔を埋め、その陰茎を一気に口に含んだ。そうして舌を、その上のピアスを、
         屹立しても決して大きいとは言えない少年自身の茎に強く絡みつかせ、喰らい尽くさんと言わんばかりに動かし、唇でも僅かに扱く)
        (先程胸の傷跡を襲った生温かさやピアスたちの異物感が、今度はより強く、股間を犯していた)
      • ッ――― (しゃぶりつかれた瞬間、喉から搾り出された引きつった声は、食いしばった歯に当たってただの呻きに)
        (柔らかさの中に固さの混じった熱い海に包まれ、生っちろい棒は蹂躙されていく。舌先が皮と亀頭の隙間に差し込まれる。そのまま横にこそげ取るように動いて)
        (ピアスをくりくりと押し付けながら丹念に一周する動きに、竿の付け根に力を込めて全力で感覚を受信した) ーーーっ、ふーーーっふうぅぅっ…
        (意識を集中するたびに何度でも浸りたい快感が押し寄せてきて、竿自身が女の舌と戦おうとするようにピンピンと跳ねる)
        (唇で根元を絞られれば、思わず女の頭を抱きこむように体を丸め、口の中ですでにどこまでが自分の液かわからないほどもみくちゃにされた陰茎はついに限界を迎えて…)
        ぅあぅっっ (太股を少し浮かせた瞬間、青臭い汁は狭い道を駆け上がって結ばれるもののいない場所に出された)
      • んく……ッ!!(勢いよく口腔を撃つ熱い雄の迸りに、女は刹那の間眉を顰めたが、そのまま全てを口内に吸い出さんと、少年の尻を抱くようにしながらより深く吸い付き)
        じゅるる……ちゅっ……(陰茎の脈動が治まったのを確認した後、淫猥な音を立ててそれを吸い上げつつ、股間から顔を離す)
        (萎えかけた少年のそれと女の唇との間に、粘液で作られた一筋の銀糸が現れるも、女が唇を歪めれば、それは消え)
        くちゅ……にちゅ(そして、わざとらしく大きな音を出し、見せ付けるように口の中で精液を転がしながら、ゆっくりと少年に顔を近付けて行く)
        (互いの前髪が触れ合うほどの距離まで来たとき、女はその片手で、未だ射精の放心から覚めやらぬ少年の顎を引いて、その唇に己の唇を重ね……) んふ……
        (そのまま舌で少年の唇を割ると、少年の精液と女の唾液とが混ざり合った淫液を、少年の口に流し込んだ)
      • (余すとこなく受け入れられて、尿道からも残らず吸い上げられては堪らず眉をハの字にぎゅっと目を瞑って)
        (呼吸を乱し、汗が滲んで髪が貼り付いた顔で惚けたように女の顔を見ていた。出したものを見せ付けられて顔が熱く、赤い)
        …ッッッ (意識が再びリアルタイムの速度になった時には、あっさりとそれを直に明け渡されていた。精液と唾液の匂いが口腔から鼻腔へ逆流する)
        (反射的に舌を引っ込めかけたが女の舌に絡み取られ、つい今しがた自分から出発していった物の残骸をなすり付けられる。引き際に歯の裏と歯茎にも)
        (ばっと顔を背け、えずきながらぺっぺっととにかく口の中のものを吐き出す。固い水面にはじけて広がる。ぴたたっと音がする程度の量は出していたことになる)
        ……… (怯えは薄れたが羞恥と、より大きくなった嫌悪を持って女を睨んだ。口元も胸も股間もまだてらてらと光っているが。一言だけ吐き捨てた)
        気 持ち 悪ィんだよ
      • 気持ち悪い、ですって? あなたはそんな気持ち悪いと思うようなものを、私に飲ませようとしたのかしら?
        (唾液と少年の精液とで一層妖艶になった唇を、にぃ、と音がしそうなほど禍々しく吊り上げて、女は微笑む)
        まぁ、それなら……その気持ち悪い体液を、もっと吐き出して貰うしかないわねぇ……くすくすくす……
        (嫌悪の表情で睨みつける少年とは対照的に、女は笑いながら少年を引き寄せて、その顔を己の胸元に無理矢理押し付けた)
        (やや小ぶりだが形の良い胸が少年の頬に当たる。そして衣服の上からでも確かにわかる、その先端の突起についた金属物の感触が、少年の記憶の戸を微かに叩く)
      • (枷で繋がった両手で口元を拭う。こいつの笑顔はぞっとしかしない、そうまた怯えがかすかに生まれて)
        (だから突然胸に抱かれたのは面食らった。こんな女でも優しい柔らかさに今度は甘い寒気が脊髄の中を駆け抜ける)
        (女の肌の匂いを吸い込む。こうして乳房のある胸に抱かれると、いつも反射的に安心を求めてしまうのだ)
        (そして下着ではありえない小さな固い感触がじくりと脳から言い知れぬ感覚を引っ張り出した。しどとに濡れて垂れ下がっていた陰茎がぴくりと少し持ち上がって)
        バリスタ…? (音が疑問の上がりをしたのは、その名前が何故今口を付いたのか自分が一番不思議だったから)
      • (にやにや笑いを浮かべながら少年の髪の毛を撫で、胸元で若く活きのいい魂の温かみを愉しんでいたところで、
         聞き慣れた名前を突然耳にして、今度は女が面食らった)……!? あなた今何て……
        (胸に埋めさせたままではあるが、少年の顔を己の顔の方に向かせ、見下げる形で思わず問いかける。その顔は、恐らく女の素のそれなのだろう。
         今までの狂喜と快楽に歪んだものではなく、攻撃的だが理性を感じさせる面立ちが、頭に疑問符を浮かべて少年を見つめていた)
        ……ふん、どちらにしろ、女の胸に抱かれながら、他の女のことを考える男なんて……碌なものじゃないのだわ!
        (むぅ、と短く声を上げて、怒りの……というよりは、むしろ拗ねたような表情になり、少年の頭を再び胸に強く押し付け)
        (空いているほうの手で、微かに再度の隆起を始めた少年のペニスを、力任せにぎゅうと握り締めた)
      • (やっとちゃんと目を合わせて顔を見たかもしれない。初めて余裕たっぷり以外の表情を見たが、その顔には呟いた相手の面影など無い)
        痛っがっ!? (怪訝そうに歪めた眉はすぐ跳ね上がった。急所を潰れんばかりに握られては、腰も引けず強く押すことも出来ない)
        (胸にべたりと顔を落とし痛みに耐える。薄い陰毛の茂みに爪が喰い込んでき) ……ぁあぅっ!
        や、 め… (枷が重い両手で弱々しく握り締めてくる女の手首を抑える。内股で、ふるふるとおっかなびっくりな手つき。切なそうに見上げて放してと訴えた)
      • (いらいらした感情に流され、暫し少年の男根を握り苦しめていたが、そのか弱い叫びと、切なげな表情とが、女に理性を取り戻させたようで)
        (――いや、正確には、憐憫の情と嗜虐心とが混ざった灰色の感情が、怒りを押し流したのかもしれない。兎角、股間を掴む手の力を緩めると)
        わかったわ、じゃあ……(呟いて、怯えた顔の少年の唇に短い口付けをした後)……あなたはどうしたいのかしら?どう気持ちよくなりたいの……?
        さあ……言ってごらんなさい!(そして、答えを促すように、少年の陰茎に、今度は血が出んばかりの強さでがりっと爪を立てた)
      • (重ねた唇から震えが伝わる。唾を飲み込んで喉を鳴らす) 何を 痛ぅッ ……!? っ、わ、
        (痛みに耐えかねた。本当に簡単に使い物にならなくされそうな気がした。仕方なく届かないが出来るだけ耳に口を寄せて呟く)
        (脇を見せて欲しいと。気まずそうに逸らす顔。向けられた青ざめていた頬に再び紅が注していく)
      • ふふ、安心して……ここは永遠の夢の中……何があっても、あなたの身体が壊れることはないわ…………
        (苦痛に身を捩る少年に、行為とは逆に優しい声色で語った。そうして少年の答えを聞くと、また先ほどのような、鋭いがしかしきょとんとした顔をして)
        腋……?腋って腕の付け根の……腋? ……くすっ、あははっ!面白いわねぇあなた……見かけによらず特殊な趣味……
        でもそういうの……嫌いじゃないわよ。(よくできました、と少年の頭と、少年の陰茎とを小さく撫でる) いいわ、見せてあげる……
        (少年から一旦身を離し、肩の鎧とマントを外せば、それはフッとかき消え、胸と股間を覆うだけのビキニのようなローブと、ブーツのみの姿となって)
        (少年の近く、しかし手の届かない距離で、ゆっくりと両腕を上げて行く。そして両手を頭の後ろにおいて、淫猥な微笑を浮かべながら、腋を少年に見せ付けた)
        (銀色の体毛のお陰もあってか剃り跡はまったく目立たず、そこは腕や胸と変わらぬ、いや、それ以上に透き通った肌をしていた)
        さあ、これで満足? それとも……まだ足りない? (腋を見せたまま、小悪魔、というより大悪魔のような笑みで、少年に意地悪く問いかける)
      • うっせ。死ね
        (ムカッとして憮然とした顔で見守っていた。しかし一辺に上がった露出に股間は雄弁に答える。みきりと力を取り戻し再び天を仰ぐ)
        (すっかり肉欲に塗れた目で膝立ちのまま、食い入るように普段は閉じられている部分を見つめている。その白さとポーズに欲情は止まらない)
        まだ。もっと近く来いよ さ わらせろ (下をひくつかせながらまた唾を飲み込んだ)
      • (「死ね」という言葉と、それとは裏腹にそそり立つものとで、思わず小さく吹き出し)
        くすっ……死んでるのに元気なあなたにそう言われると、何だか不思議だわね。
        (笑いながらも、少年の求めに応じて傍に近づく)(少年の唾を飲み込む音を聞くと、女も密かに興奮が高まる)
        もう、しょうがない子ねぇ……(ふっ、と手枷に息を吹きかけると、鎖はかき消え、少年の両腕が自由になった)
      • (シンデル。何言ってんだこいつ?と今の状況も自分の事も理解していない。ただ手が自由になれば、赤くなった手首をさすりじっと素直に近寄ってきた女を伺う)
        (無言でぴとりと抱きついた。手の平も広げてぴたりと背中に付ける。とにかく皮膚と皮膚を可能な限りくっつけ合わせて)
        (血の巡りが先ほどから激しい陰茎は熱く、それを太股にグリグリと押し付ける。新たな無色の汁が女の肌になめくじの這った跡を作った)
        (晒されている腋に顔を寄せる。すうすうと濃くなっている体臭を執拗に嗅ぎ、合間に漏れた吐息が湿った肌を撫でた)
        (依然抱き締めたままそこへ舌を這わせると濃い汗の味がした。ひとたび始めてしまえばもう躊躇いは無く、ひたすらそこの全てを舐め取ろうとする)
        (キスもした。舌と唇しかここに何か出来ないのがもどかしく、それでも太股と自分の腹でもまれている陰茎の摩擦は滴る汁でどんどん滑らかになっていく)
      • (少年が今の自分の状態を理解していないことについては、女もさほど気に留めない。ただ間違いなく性欲に流され始めているその様子にほくそ笑んで)
        ん……んふふ……あはぁっ……(腋の近くにぴったりと、文字通り一つになりそうなまで抱き付かれれば、その若い雄らしい大胆さに少し驚いたものの、
        美しい男の肢体が己が肌を温める喜びと、また張りの良い太腿へ無遠慮に押し付けられる男根の刺激とで、悦楽の吐息を漏らし始めた)
        (更には少年の欲望で湿った吐息が、次いで舌や唇が敏感な腋に触れ、そこを執拗に犯し始めると、頬を染め、嬌声をあげて)
        ……っっ……!……ふうくぅっ……!!……ああっ……っっ!!
        (女の興奮に比例するかの如く、先ほど少年の鼻腔を突いた、甘く腐った狂気の匂いが強まっていくのが感じられた)
        ……っっはあ……っ……はあぁ……っ……!もっと……激しく…………!!
        (そして僅かに舌を突き出して涎を垂らし、息を荒らげながら、女の方からも、少年へ腋と太腿を押し付け返して、互いに快楽の螺旋を高めていく)
      • (かくかくと腰を揺すりひたすら上ってくる快楽を貪る陰茎。自分より遥かに大きい体格にしがみつき、肌は肌を求めて這いまわり続ける)
        (腋はすっかり唾液の匂いに染まって、ほかほかと温まったそこを最後に思いっきり吸って鬱血した跡を残した。鼻と舌と唇は逆の腋へと移る)
        (最初の腋よりも濃い雌の匂いが待ち構えていた。それとは別の腐った果実の甘たるい匂いが着実に少年の理性の錠を解いていく)
        は うぅふ…っ! (汗が浮いたそこに鼻先を突っ込んでしゃにむに舐め、取っ掛かりが無くともしゃぶる。腋に顔を埋めたまま片手でこすこすと自分で竿を擦り出した)
        (手と亀頭が女の腹に時折当たる。乳房の上に滴り落ちた女のよだれを舐め降りながら、下ではまたどく、びゅるっと陰毛に精液を振り撒いた) ん、んッ ン゛ッッ!!
        はーーー…はーーー… (深く大きくつかの間忘れていた呼吸をして身を預けるように再び密着。半分垂れた陰茎が、もぞもぞと女の茂みで精液を和えていた)
      • ひぃっ!?ああ……っっ!!(ひたすら舐められ半ば感覚が麻痺しかけていた腋を、
        現実に引き戻すかの如く強く吸われ、痣ができると同時に、女は軽く達してしまう)
        ……っああ!そんな……そっちも……なんてぇ……凄……っぁ……っっ!!
        (しかし休む間もなくもう一方の腋を攻められると、快楽の曲線は否が応でも再び高まって行き、舌をだらしなく出し涎を垂れ流して乱れ)
        あ……ふぁっ…………っ!!(乳房に舌が這う感覚だけでなく、亀頭が腹部を押す感覚でさえ、今や女にとっては快感に変っていく)
        あうっ!? 熱い……い……いい……っっっ!!!(そして己が性器の周りを熱く濡らす少年の精液を感じれば、
        直に注がれたわけではないにも関わらず、女も一緒に絶頂したのであった)…………はぁっ……はぁ…………ふぅ…………
        (その後、暫しの余韻を楽しんだ後、少年と同様に大きく呼吸をして、硬い水面に倒れ込む女)
        (しかしその手は、己に身体を預ける少年を確りと抱き、永遠の闇からその身を守っているかのようでもある)
        あはっ……またこんなにたくさん、気持ち悪い液体を出して…………悪い子ね。 でも、いいわ、あなた……気に入ったわよ。
        (先刻の所有欲を剥き出しにした口調とは異なる、疲れが混じりながらも穏やかな口調で語りかけた)
      • (包まれるように抱かれて呼吸を整えていると、やっと酸素が巡り興奮が引いて女の声も耳に届くように)
        …そっちがやらせたんじゃん。腋でなんて、お互い様だろ (イってたくせに、と。腕の中で見上げながら初めて少し口角を上げた)
        (胸元に頬を当て、半眼で目の前のピアスで飾られた乳首を見つめながら聞いた) お前は誰だ?
        (片方の腕を伝ってその先の大きな手に辿りつく。静かに指を絡めた)
      • 私はきっかけを作ってあげただけだわよ? ここまで転げ落ちたのは……いえ、転げ上がったのかもしれないけれど、とにかくあなたの才能だわ。
        (見下ろす形で少年を見つめ、真似るように口の端を上げると、唇のピアスも小さく動く)
        (目つきの鋭さは生来のものらしく相変わらずだが、その語り口は今や穏やかで、どこか気の抜けている雰囲気さえあった)
        私?私は――この死の淵、久遠の闇で遊ぶ吹雪の死霊。(答えながら少年と手が触れ合うと、優しく包み込むようにそれを握り返す)
        (気がつくと少年の指先や胸の傷は消え、足かせも外れていた。そうして少年を抱いたまま、半身を起こし)
        それで、あなたは?こんなところに居る位だから、生きてる間よほど酷いことをしたか、あるいは現し世に何か未練があるかみたいだわねぇ……
        (つい、と顔を近づけて問い返す)
      • (寄せられた顔の先にはぽかんとした顔。目を瞬かせてふにふにと手を握る)
        あー… 俺 え? あれ (一瞬、姿が頭蓋が砕かれて血まみれの状態に。ゆっくりとまばたきして、遠い目)
        ここがあの世なのか。ひでえな、こんなのしかいねえ。なんだよ 母さんも叔母さんも、いねえじゃん。なんだァ…
        (茫洋として景色を眺めて、今たった一つ確かな女の体をギュッ掴む) なあ ねえ もう、帰れないのかな…?
        (正面から答えを求める顔は、悲しくて泣きそうだ。竿はもう力を取り戻さず女にすがる少年の肩越しに、足の先がまた水面に浸かりかけているのが見えた)
      • (久遠の闇から釣り上げた魂は、また久遠の闇に返す。一時戻った意識は仮初のものであり、また無意識に戻すのが自然)
        (ずっとそう考え、そうしてきた女だった) 仕方がないわ……(呟いて、寄りすがる少年の手を振りほどくかのように立ち上がると)
        (今までのまぐわいなど無かったかのように、女の身体は一切の汚れのない、元の露出の高い悪魔的な法衣とマント姿に戻る)
        (そのまま、水面に再び沈み行く少年に背を向け、立ち去って行く――)

        ……はぁ、やれやれだわ。 うろたえたり悪態ついたり怖がったり興奮したり射精したり笑ったり、そして泣きそうになったり……忙しい子だわねぇ。
        ………………そぉ…………れえぇえいっ!!! (――かに見えたが、少年の体に残った、女の作り上げた刻印……首輪。そこに繋がれた鎖を、
        一本背負いか一本釣りか、兎に角、その長躯の、腕と肩にすべての力を注ぎ込むかのような掛け声を上げて、思い切り引っ張った!)
        (そして「シュポーン」と文字通りの死の淵から引き上げられ、びたーんと硬い水面に叩きつけられた少年)
        (見れば、その姿は、女と同じ無意味に露出度の高いローブに包まれていた)
      • ぴょっ゛ (動いていないのに沈んでいくパントマイム入水自殺っぽく消えていくところだったが、首吊りバンジーに変化して顔面とチンを強打した)
        ………っ! (内股でよろよろと身を起こすと鼻血を垂らしながら) てめえほんといいかげんにしろよ!?ってギャー! んだコレ! えー、えええぇー
        (自分の姿を見下ろしてぺたぺた。首輪を引かれてつんのめる) 百歩譲って服はともかくこれはなんだこ・れ・は・! グエッ
      • あらあら、服は気に入ってくれたみたいだわねー。(「百歩譲って」を最大限に都合よく拡大解釈した女。満足げににっこり笑う)
        ほーら、帰りたいんでしょ、あなた。(再度少年に顔を近づけて問い) さあ、きりきり歩きなさい!
        (答えも聞かず、鎖を引くたび少年が雨蛙の様に呻くのも気に留めず、闇の中何処かへと歩を進めて行くと)
        (2人の眼前に現れたのは、段状に積み重なった墓石の山。その頂近くからは、微かに陽の光が差し込んでいた)
        ……はい、ここが出口だわよ。あなた一人じゃ無理だけど、私と一緒なら出られるはずだわ。 それじゃ、ついてらっしゃーい!
        墓石の階段上る〜♪君はまだアンデッドさ〜♪(そうして、陽気に奇妙な歌を口ずさみ、そのリズムに合わせて少年の首輪を引きながら、現世を目指して登り始めたのだった――)
  • ――――――――――――
  • ――――――――――――
  • ああ……これは、夢だ…随分と久しぶりに見る………
    ラグのない大魔術を使う男、雷光の銃弾を使う女、符で魔術を連続で扱う青年、そして……ブレイブアーク。
    私はその全てを討てなかった。大魔術を扱う銀の英霊に明確な形で敗北した日から、脳の裏側にちりちりと熱を感じている。
    勝てないのなら…奪えないのなら……私は… -- セルマ
    • 客観的に見えている。わかっているんだ、自分には……ここは私が生まれたレイネスの家。
      レイネスは代々闇と影の魔術を扱う。根差すものは邪悪、命を奪うための術。
      私は……あそこにいる、私は。

      (セルマの視線の先には小さな子供がエメラルドグリーンの瞳に涙を一杯に湛えている)
      あの日、言われる通りに捕えた兎を殺すことができなかったんだ。
      可哀想だから、捕まえたことも兎に謝りながら。 -- セルマ
      • (涙を手の甲で拭い、足に血の滲んだ兎を抱いたまま必死に周囲の大人に訴えている)
        ちゃんとウサギさんをつかまえました……殺せなんて、私はぁ……っ
        (周囲の大人が顔を見合わせている。自分に失望していることがわかっても、少女はその手の中の命を生かしたいと願った)
        -- 少女
      • それはそうだろう。(遠くの景色、記憶の中の自分に語りかける)
        どれだけ偉大な魔術師であっても兎一匹殺せないなら使い道がないなァ……?
        (自嘲的に笑って見せても、記憶は記憶。周囲の誰もがその姿を見つめる英霊に気付いたりはしない)
        子供は、弱い。子供というだけで理不尽や屈辱や不満や無気力感や……あるいは暴力に耐えなければならない。
        子供に与えられた環境、それは選びようがない。レイネスの長女にあって優しすぎた娘。
        (それは自らに対する褒め言葉ではなく、表情は苦痛に耐えるかのように歪んでいて)
        母親と父親と、親戚と……周囲を取り巻く全ての大人の溜息を聞くのが日課。
        ……それが彼女の大世界(ダスカ)というわけだ。 -- セルマ
      • ねぇ、どうして? 私の妹…目が赤い! 髪も黒くて……どうしてなの!? -- 少女
      • (急に切り替わる場面、幼い頃の自分はある日、唐突に黒い髪に赤い瞳へと変わった妹を抱きしめている)
        そして私はレイネスの家を放逐されることになった。
        私は長女ではなくなる。生まれなかったことに、なかったことにされた。
        私の妹……エストがこれから先、レイネスの長女だ。(目を凝らしても小さな自分に抱きしめられる、さらに小さな妹の顔は見えない)
        私の妹は私と同じようにはならないために、呪われた名前を受けた。
        名前を変えられると同時に妹の眼は赤く、髪は黒くなっていた…名前は、魔術そのものだ。 -- セルマ
      • ごめんね……ごめんね…エスト…私のせいで……
        (泣きながら、自らの身に起きたことを何も理解していない妹を抱きしめる)
        (きっと妹は泣けない。自分が何をされたのかがわからない。それが余計に罪悪感を重いものにしていて)
        -- 少女
      • 妹は今も生きているのだろう。トライアンフ・カレイドスコープで妹の記憶が入ってきたことがある。
        投影できるほど確かなものではない。それでも、私が英霊として現世にいる今も赤い瞳と黒い髪を持って、どこかに―― -- セルマ
    • こうして私はレイネスの家を出た。叔父のマーレン一家に預けられたんだ。
      萎縮する私に彼らは優しくしてくれた…… -- セルマ
      • いいんです。学校に行かなくても友達から使い終わった教科書をもらっていますし。
        それにおじさんやおばさんの手伝いをして少しでも家を助けたいんですよ。
        ……この上でスクールにまで通わせようとして。義理の娘なんですよ? これが絵本だったら奉公人のようにこき使う場面ですからね?
        ううん、嘘! 冗談ですよ! 私はおじさんもおばさんも大好きですから。
        -- 少女
      • マーレン夫妻の養子、セルマは決して豊かではない暮らしを精一杯助けましたとさ。
        (分厚い装丁の本を閉じて)ここで終わるわけもないんだけどなァ…
        ある日、戦争が起きた。ありふれた理由、何てことはないどこにでもある争い。
        その戦火に巻き込まれ、逃げる途中でマーレン夫妻は崩れた石垣に足を挟まれ……生きたまま燃え尽きた。
        無力な女だった私は、逃げることもできずに徐々に炎に包まれる養父と養母の姿をただ見ていることしかできなかった。
        ……そして私は戦災孤児になった。暮らしていた街だったもの、その瓦礫の山を見ながら朝日を見たんだ。 -- セルマ
      • (煤のついた顔には憔悴しきった表情が浮かび、昇る朝日を呆然と眺めていて)
        (その光に、枯れるほどに泣いた瞳からは再び涙が溢れてきて)
        (これから目覚める度に朝日を見て、大切な人がいないことを確認するんだと思うと、悲しみと絶望はより深いものになった)
        -- 少女
      • そして……私は国の義勇兵が人々を助けていることを聞いて彼らの好意に甘えた。
        しかしそいつらは義勇兵に変装した盗賊紛いのチンピラどもだった。
        (顔を歪め、両腕を強く引かれる過去の自分の姿を見て) -- セルマ
      • 「おい、そっちを押さえろよ」「おほっ。ガキの割に結構胸でかいじゃねぇか」「高く売れるねぇ」
        「今のうちに仕込んどきゃあ…おい、暴れるんじゃねぇ!!」「濡れてねーぞ」「当ッたり前だろバカ」
        「唾でも吐きかけとけ」「適当なところで終わっとけよ、お前のは長いンだよ」「へへへ、りょうかいりょうかーい」
      • こうして人を疑うことを知らない少女はあっさりと畜生道に落とされましたとさ。
        だが異常なことに陵辱されながらもその娘は人を憎むことをしなかった。
        養父の形見の十字架を手に、じっと耐えていた。
        自分を放逐したレイネスの家も、自分の身も心も犯しつくした盗賊どもでさえ誰一人憎んではいなかったんだ。
        彼らにも理由があります、ってな。 -- セルマ
      • 痛い…痛い……痛い…………痛い……痛みが消えない…
        死ねば痛みは消える? 嫌……死ぬのは嫌。きっとどこかで助かる。解放される……死ぬのは、怖い。
        痛い……痛いよぉ…痛い、痛い……
        -- 少女
      • 死ぬのは嫌だ。人を憎むのは怖い。
        …甘っちょろいことだ。こんな女、苦界に落とされても当然だと思うだろう?
        私は何をされても生きていた。反応が鈍くなったからと人差し指を切り取られたことがある。
        あの痛みは筆舌にし難い……切った直後からいつまでもいつまでも激痛に苛まれる。
        それでも。ああ、それでも。
        体はどれほど痛めつけられても心臓は動き続けた……生きることを願い続けたのさ。 -- セルマ
      • 売り物にされる時に渡される、玩具みたいな装飾品…これで着飾る時は悲しい。
        でもある日、その中に指輪の魔導器が混じっていることに気付いた。
        魔術の知識がなければ価値のない石が入った野暮ったい指輪に見えるかもしれない。
        でもこれは……ううん。使うことはない。これで人を傷つけて手に入れた自由なんて…
        -- 少女
      • ボロボロにされてもまだ、憎しみを持つことができない。
        歪な。壊れた。泣くことしかできない愚かな娘……その力を使うことをまだ躊躇っている。
        そうしている間に、処分の日がやってきた。言葉通りの意味さ。 -- セルマ
      • 「反応が鈍くなってきたな。また指の一本でも切り落とすか?」「これ以上切ったら畸形扱いだぜ」
        「あーあ。じゃあ処分だな処分。じゃあな可愛いセルマちゃん?」
        「そうそう。ちゃんと二本の足で歩ける奴じゃねーと運ぶのが面倒だ。ここで殺しちまえよ」
        「飯を食う前にぱっぱと済ませておくか」
      • とうとう殺される段階だ。死にたくない、傷つけたくない。
        二律背反の命題、ジレンマと緊張に鼓動が高まる。 -- セルマ
      • あ、あああ……嫌ぁ…や、やめて………いや……ぁ…
        あああああああああぁぁぁぁぁ!! うわあああああああああああああああぁぁあぁあああ!!!
        (盗賊の持つナイフが振り上げられた瞬間、ようやく私は感じ取ることができた。心も記憶も焼き尽くす――憎悪の炎を)
        -- 少女
      • それから先は簡単な話だ。複雑なものなんて何もない。
        手の中の指輪は熱を持ち、炎を放って目の前の盗賊を焼き尽くした。
        人差し指がなかったから薬指に指輪を嵌めると、騒ぎを聞きつけてやってきた盗賊を焼き殺した。
        逃げ出そうとする盗賊もいた。その足は炭になった。そしてゆっくりと焼かれて死んだ。
        確か私と同じように捕えられていた娘たちもいた。が、よくは思い出せない……騒乱の中で全て焼け死んだだろう。 -- セルマ
      • おおおおお……おお、ああああ……(魔導器を使い、炎を放つ)
        うああああああああああああああああああぁぁ!!(それだけのことを憎悪に任せて繰り返し)
        -- 少女
      • 炎の中に揺らめく姿、口はその狂った笑顔に端まで持ち上がり赤い三日月のように裂けて見える。
        その手から炎を放ち目に付く人間全てを灰にする……魔人セルマ・レイネスの誕生だ。 -- セルマ
    • はっきりと思い出せる……自分は狂っていたはずなのに。
      不思議と記憶は客観的なものだ。全ての命が…いや。全ての人間が憎い。
      たまたま会った行商人を殺した。樵の家を見つけたので殺した。帰ってくる樵の家族を見つけたので全員殺した。
      殺して、殺して、殺して、殺して、殺して……四つの村と一つの町を焼き潰した時に蒼ざめた奇妙な馬を見た。
      それは私に付き従い、意のままに操ることができた……死を運ぶ幻獣、ペイルホース。 -- セルマ
      • くっくくくくくひっひひひひひひひひひひひゃっひゃひゃっはっははははーっははっはっはっはっはっはっはッ!!! -- 魔人
      • 自我もなく。目的もない。ただ殺したいがためにペイルホースを駆り、人間を殺しまわった。
        その指輪は本当になんてことのない、ちっぽけな魔導器だった。
        しかしレイネスの血は、確かな魔術の才能として女に根付いていた……ただ生き物を焼いて殺す分には十分すぎるほどに。
        くっくくくくく……ふふふ、はははははは……
        魔人セルマの恐怖は人の間で膨れ上がっていった。ある農婦が子供を抱きしめたまま言ったさ。
        「私はどうなってもいい、この子だけは助けて」と。 -- セルマ
      • この人は何を言っているんだろう。でも、私は何を言っても聞いてはもらえなかった。
        やめてと言ったのに。嫌だと言ったのに。だから私も聞く必要なんかない。
        仕方がないよね。きひっ……キヒヒヒヒヒヒヒヒッ ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!
        -- 魔人
      • そうだ…殺すべきだ。皆、死ぬべきだ!!
        全ての人間を殺せばその中にレイネスの人間も妹も含まれているだろう!
        私は差別も区別もしないでおいてやる! ひゃはははははははははははははははッ!!
        そしてある国を襲い、人口が何割か減った頃……私は討たれた。その時の記憶は不思議と曖昧だ。
        くくく、懐かしい夢だ。覚めてしまうのが惜しい悪夢だ! これを忘れない限りッ私は全ての命を憎み続けることができる!!
        キヒヒヒヒヒヒ……ヒャハハハハハハハハハハハハハハハッ!!
        (二つの狂った笑い声が重なる。煉獄がそこにある、そこにしか根付かない感情が確かにこの心臓の中ある――) -- セルマ
  • ――――――――――――
  • 夜の路地裏を歩く道化の面を被った奇妙な人影) -- 仮面を着けた影
    • (路地裏から夜の街を眺める影はかなり目立つ。しかしその存在に目を向ける者はいない)
      (月の下に歩みを進めるように街道へ出る仮面の影)やぁやぁ紳士淑女の諸君。
      夢のような世界へようこそ。今宵、一時、この幕間を楽しんでいただければ幸いです。
      (声自体は女、それも少女と呼べる年齢のものであった) -- 仮面を着けた影
      • よく見れば。(わざとらしく周囲を見渡し)ここは闘技場のシミュレーターで出る街に似ていますねぇ。
        (身振り手振り、派手に動く影を通りかかる人は気付きもしない)シミュレーターで作り出された仮想の街。
        そこで戦い、観客を楽しませる。言ってみれば闘技場の戦いは巡回動物園(メナジェリィ)のような趣向が凝らされている。
        (通りすがる際に露天商の若者が吸っている短くなった煙草をひょいと摘む)出演者は禁煙でお願いしたいものですね?
        劇場で煙草を吸うことはできないものです。(煙草を取り上げられた若者は急に煙草が消えたかのように驚き、慌てている) -- 仮面を着けた影
      • ここは闘技場のシミュレーターとほとんど同じです。違うことは生き物が辺りにいることだけ。
        そして彼らは限定された空間の中で、限定されていない存在を認識できない。
        (神に祈るように煙草を両手で包み込み、手を開くと火のついたままだった煙草は影も形もない)
        種も仕掛けもない手品。本当に魔法であればつまらないものかも知れません。 -- 仮面を着けた影
      • (絹を裂くような悲鳴、仮面の影の見える位置で騒ぎがあり)行ってみましょう。
        (人ごみをすり抜けるように騒動の中央へ)ああ、ひどい! なんてことでしょう。
        娼婦が殺されています。いえいえ、痴情の縺れと肝の病は娼婦には避けられないものですが。
        悲しい出来事です、実に正統派の悲劇。(血の海に沈む年若い娼婦、血塗れの刃物を持って戦慄く壮年の男) -- 仮面を着けた影
      • (自身の衝動から生まれた惨劇に恐怖し、逃げ出そうとする男の足を爪先で軽く引っ掛けて転倒させる)
        花の命は短いもの。泰西という国では恋煩いを「緑の病」と言うのです。
        (周囲の人間に押さえつけられ、絶叫する男を尻目に観客席に向かって語りかけ続ける)
        昼も夜も想い人のことばかり考え続け、食事も喉を通らず水も飲めず。
        最後には顔が緑色になって死んでしまうのです。(なんと恐ろしいと両手を広げて肩を竦める)
        この話を踏まえるとオペラにおける悲劇は真紅か深緑に終わるというわけですね。
        (人影が話す間も娼婦の血は石畳を流れ続ける) -- 仮面を着けた影
      • 死は怖い、死は悲しい。(自分の悩みであるかのように大仰に頭を抱えて右往左往)
        しかし!(娼婦の死体と観客の間に立つかのように移動し)この世界では重く受け止める必要はないのです。
        僭越ながら私が早い段階で言わせてもらいました。そう、ここはシミュレーターなのです。
        仮想世界にあって死は結果の一つに過ぎません。パチン!(指を鳴らし)スイッチ一つで全てはなかったことに。
        あの娼婦は再びこの世界でこの世の悲しみの二割ほどを背負ったような表情で客を取りますし、
        あの男性は平々凡々とした人生の刺激に彼女の声を、肌を、髪を、爪を、唇を求め続けるでしょう。
        (指を鳴らした後からゆったりと暗くなる夜の街)――嗚呼。 -- 仮面を着けた影
      • これではあまりに救いがないではありませんか。
        あの娼婦は性質上主に『人間性』よりも『淫靡さ』や『都合のよさ』を女性表現の常としてきたモデル。
        つまりは全ての男性に対し純真で、従順で、十全とした愛を注ぎ何の見返りも要求せぬ存在…
        (再び明かりが点るように視界が開けるとそこには陰気な路地裏でありながらも血の匂いなどどこにもない)
        愛を注ぐ対象、つまり男性の前にあって適度に頭が悪く、彼らを想定範囲以上に不安に、不快に、不幸にさせる事が無く、
        問題が起こればスイッチを落とすだけで無に還るという
        現実の対人関係では決して持つことの出来ぬ万能感を持たせてくれる完全の母性。
        (早口に捲くし立てると拍手をするように、あるいは影絵をするように手を組み)まさに女神(ミューズ)。 -- 仮面を着けた影
      • 差別を。(観客席へ鋭く人差し指を向け)否定を。(白い手袋をした長い指で首を横に掻き切る動き)
        攻撃をしない。(人差し指と中指を刃物のように立てると腰を入れて刺し貫くようなジェスチャー)
        永遠無害の存在……彼女こそ自分が、自分しか、自分でしか満たせない運命の相手だと誰かが考えた時。
        (これこそが悲劇と言わんばかりに神に祈るように両手を高く掲げ)彼女の命運は尽きる… -- 仮面を着けた影
      • 悪意と対峙して尚、優しい彼女は人間のコミュニティに置いて春先の雪より儚い存在でしょう……
        (舞台の隅にスポットライトが当たるとマネキンのようにその場に立ち尽くす先ほどの娼婦)
        彼女にはモチーフとなった存在がいます。その名はセルマ・レイネス。とある冒険者エスターク・レイネスの姉に当たりますか?
        セルマ・レイネスはその気性を親が知った時、どれほど困惑したでしょう……彼女は闇魔術の家系にあって優しすぎた。
        (憐憫を誘う旋律を奏でるヴァイオリン)セルマを里子に出し、生まれたばかりの次女を長女の宿命に据えた。
        なんと陳腐な!(怒りを露にした声音、当然ながら仮面に隠れ表情は伺えない) -- 仮面を着けた影
      • こうしてレイネスの長女には絶大な力と無邪気な邪悪を示す破壊神の名がつけられた。
        (微動だにしない娼婦の顔を手の甲で撫でる)
        破壊へ主眼を据えた魔術の後継者がセルマのように人畜無害では困りますからね。
        両親の思惑通りエスターク・レイネスはセルマとは真逆の性質を示すようになりました。
        名前とは本当に恐ろしい力を秘めたものです……つまり! 優しき女神(ミューズ)の正反対の気質を備えた娘!
        どれほど凶悪な性質を秘めているか想像もつきません。(再び指を鳴らすとスポットライトは仮面の影にのみ当たる) -- 仮面を着けた影
      • 生命活動を維持できなくなるまで体を破壊されれば死ぬ世界に彼女はいるのです。
        これからどれほどの命を奪うようになるか……
        もしくは、本人が知ってか知らずかエストと名乗っているように己の心根の醜悪さを否定するに至るか。
        (仮面を外すとその下には不敵に笑うエストの顔)やれやれ、長い話の幕間も本当に長いものです。
        では閉幕とし、戻りましょう。何てことはない日常へ。(エストとは違う深緑の瞳を歪めて微笑み)ぱちん。
        (再び鳴らされる指、彼女へ向けられるスポットライトも夜の街も全て闇に溶けて消える) -- 少女
  • ――――――――――――
  • 修羅……、修羅っ(霞の先に、薄っすらと見える黒のポニーテール)
    探したよ、こんな奥んとこにいるなんてさっ(駆け寄って手を取った)
    -- アンジェラ
    • ! っ、お、お前か・・・・なんだァここは?(霞が遮らないほど近くにいるにも関わらず、その姿はぼんやりと薄まっているようだ) -- 修羅
      • 修羅? どうしたんだいアンタ薄い………(言いかけて、自分がそうだったことが思い出された。頭が理解するより早く、修羅の両手を取る)
        修羅……薄くなってる……(つないだ二人の手を、修羅に見せるように持ち上げる)
        -- アンジェラ
      • !? こりゃあ・・・こりゃあ、・・・・・・俺もしめェってこったな -- 修羅
      • イヤだよ!修羅だって、まださんちゃんと仲良くなってないじゃないか!
        ミネルヴァとだって会ってないし、ノーラン待ってるよっ?オルツ肉いっぱいくれるって言ってたよっ、帰ろうよ……!
        -- アンジェラ
      • ・・・そりゃ無理だな ちゃんと見ろ、どんどん薄くなってら ま・・・消えるんなら消えるで、スッパリ終われていいだろ -- 修羅
      • そんな………そんな、終わっちゃヤだよ!修羅、修羅……っ(片手だけ離し、片手はしっかりつないだまま、抱きついた) -- アンジェラ
      • ぅおァ!? おまっ、・・・イヤだっつったってなァっ! いいか、このまま消えねェで外にも出れねェで、
        ずっとなんも考えずにここにいろってか? ざけんじゃねェッ!(もぞもぞと離れようと)
        -- 修羅
      • わとと……でも、でも消えるなんてイヤだよ、修羅!アタシ修羅大好きさ!消えて欲しくなんてないよ!!(一層、しっかりと抱きしめて) -- アンジェラ
      • だから残りたくねェっつってんだろうが!! テメ、俺が残ってたらこの先どうすっかなんて目に見えてんだろ!?
        ざけんなッ、俺ァ足枷か! 俺ァ人間以下に成り下がるつもりなんざねェよ!! 離せッ
        -- 修羅
      • ッ……(答えに窮する。しかし、離さない。離せない。修羅の答えに、胸が詰まって、修羅に泣きついた) -- アンジェラ
      • ・・・・・・・お前・・・っ、どこまで自分勝手なんだ・・・ッ(それでも、否応無しに流れ込んでくる相手の感情)
        (悲惨な感謝。自分の無力さに打ちひしがれている)・・・・・・チッ(頭を抱きとめてやる)
        -- 修羅
      • 修羅、修羅……ごめんねぇ……。アタシ結局、なんもできなかったぁ……… -- アンジェラ
      • 別にいい ・・・・返せねェな俺も一緒な気ィするしな(どうしても構ってしまうのは、こんなに好かれているからなんだろう)
        (ここまで思ってくれる相手は、おそらく彼女だけだ。ふと、変な案が浮かんだが、自分の中で却下した)
        -- 修羅
      • (その案はもちろん、こちらにも筒抜けだ)え……?い、いいよ!いいよ、ぜんぜんっ!
        でも修羅いいのかいっ?だってクロア、鬼の女って意味だって言ってたよ?
        -- アンジェラ
      • な、くそッ!? バレんのかこれ、っあーーーっ・・・(あまりの気恥ずかしさに、かなり力を入れて腕から逃げ出そうとした)
        (が、力を入れたはずの腕が、アンジェラをすり抜けた)
        -- 修羅
      • 修羅! そんな……っ! ねえ修羅、修羅さえよかったら、呼ぶから!!教えて、修羅ァ…ッ!
        (まるで零れないようにするかのように、同じ背丈、同じ見た目の相手をかき抱く)
        -- アンジェラ
      • 鬼だのなんだのもういいッ!! 呼びたきゃ呼べよクソァ!! -- 修羅
      • シュラ!! シュラ・オーグリス!! シュラと、これで家族だよね……ッ
        大好き、大好きだよシュラ!アタシの、妹……っ
        -- アンジェラ
      • ッ・・・・・、・・・・・・はは、はははっ・・・(家族?大好き?「妹」……っ?)
        ぅくっ・・(大き過ぎる、胸の奥から不意打ちのように、ガッと涙が襲った)くそ・・・ッ、ああ満足だ!!
        じゃあなッ、テメェはテメェでちゃんと幸せになれよッ、姉貴!!!(泣き笑いの顔が、溶けるように霧に消えた)
        -- シュラ
  • ――――――――――――――
  • (暗闇の中―――机と椅子がある ミサはその暗い部屋にいた)
    • (どこか頭がぼやけている。果たして、自分はいつからここに居たのかもよく分からない。見覚えのない部屋、いや、もしかしたらただ忘れてしまっているだけなのかもしれない。今はっきりとしているのは、自分の目の前に机と椅子があり、そして、この部屋がとても静かだということだ。耳の奥で、キーンという甲高い音が響いているのではないかと錯覚するほどに、ここは静寂に支配されていた) -- ミサ?
      • ぺたり(机の向かい側の闇の中からゆらりと手が伸び、机に裏返しのトランプを並べだした)
        (暗くてどう目を凝らしても見えないが、机の向かい側の椅子に誰かが座っているようだ)
      • (静かな部屋をその音が一瞬にして支配した。ミサは机の上に並べだされたトランプを見れば、その向こうにいるであろう人物へと目を凝らす。しかし、よく見えない。それよりも机の上にその数を増やしつつあるトランプの方が気になってきた。普通なら、見知らぬ部屋、何者かも分からぬ人の気配を感じれば警戒でもするはずなのだが、不思議と危険を感じなかった。ミサは静かに何者かの向かい側に腰を下ろし、じっとトランプを眺めていた) -- ミサ?
      • (ゆっくりと、トランプを並べていく やがてお互いの手元に五枚ずつカードを置くと闇の向こうから声がした)
        アー………お前、知ってるか?ン?何の事か、というと、ポーカーのルールのことだ。知ってるか、ンン?
        (人を食ったようなしゃべり方と声だ どこかで聞いた様な気がする声だが良く思い出せない)
      • (当たり前のように配られた手札。それをなんの疑問もなく手に取った)
        それは、少し馬鹿にした言いようですね。わたくしでも、ポーカーくらいなら存じています(相手は知った人物のような気がしたが、誰かははっきりと分からない。でも、今はそれで十分だった。相手が誰かは関係ない、目の前にある手札を確認する方が先決だった。3と5のツーペア) -- ミサ?
      • (闇から伸びた手が、しゃらりとカードを手に取り確認すると からんと机の上に何かを置いた………一枚のポーカーチップだ)
        ………ベットだ。お前はどうする、ミサ。お前が同じ枚数を払ってコールすれば、カードチェンジに移る。
        (どこか生ぬるさを感じるような声 だがその声には背筋に寒気を感じそうになるような何かが宿っている)
      • (呼びかける声に、背筋の上を何かがずるりと這い上がる。それまでには感じられなかった恐怖が急激に湧き上がってくる。さっきまではなんとも思わなかったこの部屋の暗さと静けさ、それが刃のように肌を突き刺しているのかとさえ錯覚しそうだった。しかし、それを顔にはまだ出さない。出してはいけないのだ。今ここでそれを出すことは、敗北を意味し、敗北は死を意味する。ミサはそう教えられてきた。そうやって、今まで生きてきた。だから、他の手立てなど、思いつくはずもない)
        ……ここで退くわけには…まいりません…(何故か、手の中にはポーカーチップが当り前のように握られていた。それを一枚机の上に置いた。机の上に見える、相手の手が、やけに白く見えた) -- ミサ?
      • ………そう深刻になるな、ン?たかだかゲームさ、ほんのちょっとした、な。さて、二枚チェンジだ。
        (手札から二枚を裏向きにしたまま、机の空きスペースに置く ついでに山札から二枚を取った)
        アァ。そうそう、カードチェンジはおれがやろう。お前は………何枚チェンジするか、おれに言え。理解してるか?フンン?
      • 貴方にしてみれば、どのようなことでもゲームになってしまいそう…(貴方?それは誰?霞の向こうに何か見えそうでいて、見えない。そんなもどかしさを覚えた。目の前の相手を知っている。そう感じているのに誰かは分からない。知っていると言う感覚だけが、ぎりぎりと頭の中でとぐろを巻いている)
        (手札を一枚捨てようとしていた手が止まる。「俺がやる」その意味が分からず、暗闇の向こう、見えぬ影をじっと見た)…少し、変わったポーカー、なのですね……一枚…(おかしなルールだ。何をしようとしているのだろう。何をされるのだろう。手札の5枚、それを相手の取り易い場所で持ちながら、息を飲んだ。相手が勝手に捨て札を選んで交換するとなれば、ルールも何もあったものではない。けれど、例えそうであったとしても、ここのルールはそうなんだ、そう酷く冷静に考えている自分がいた。そう、世の中なんてそんなものだ。ルールなどあるようでない。理不尽なことなど、どれだけ溢れていることか) -- ミサ?
      • ………フゥム。(ぴん、とミサの持つ一枚のカードを弾いて、ミサの背後に飛ばす)変えたいカードはこれだろ?
        (シュ、と一枚山札からカードを取り、ミサの手札に混ぜる―――ハートの5 フルハウスだ)
        では、ベッティングタイムだ。さて………おれはどうしようか………ンン?フーム………(わざとらしい思案する声)決めた。
        上乗せ(レイズ)だ。………おれを賭けよう(・・・・・・・)。おれをお前のモノにしてもいい。奴隷でも、道具でも、殺したければそれもよし。
        だが、勝負をするなら―――ンン。………お前もな。同じものを、賭けることになる。(白い指が、ミサをすっと指差した)
      • (手札は本来捨てるべき札が捨てられ、そして、願っても無い札が入ってきた。ここで勝負をしない手はない。だが、どこからともなく不安が湧いてくる。そもそも、何故交換したい手札が分かったのか。もうすでに自分は相手の術中に嵌ってしまっているのではないか。そんな疑念さえ浮かんでくる。そんな自分が情けなくもあり、自嘲めいた笑みが小さく漏れた)
        ……上乗せ、うけましょう……(その手が震える。怖いのだ。自分が勝つということをイメージできない。このままでは負ける、負ける負ける負ける負ける……だが、逃げるのも怖かった。結局、勝負から逃げるということから「逃げ」、そして、負けるということからも逃げようとしている。自分はどうしてこうも弱いのか。誰かに隷属しなければ生きていけないのか。ポーカーの勝負からは離れたところへと、思考が逃げていた) -- ミサ?
      • ………フゥン。(ミサの不安とは裏腹に、さも楽しげにその相手は笑った)ショウダウンだ。
        (互いに、手札を見せる―――ミサのフルハウスに対し、相手は―――なんとAの4枚とジョーカーからなるファイブカード おそらく最高の手だ)
        圧倒的だな。―――思い出さないか、この感覚。ンン?お前もそこそこに力があるのに、それをねじ伏せられ、今、お前はおびえきっている。
        恐怖と、そして―――これからお前がおれの「もの」になってしまう期待(・・)。懐かしくは無いか、ンーン?
        それとも、お前は、アレかな。過去はいつでも捨てることが出来る、そういういかにも暗殺者向きの奴か?どうだったかな…
      • (手札が手から机の上へとパラパラ落ちていった。負けるかもしれない、そういう予感はあった。だが、ここまで圧倒的に負けるとは思えなかったし、予感はあくまで予感であって、現実ではない。目の前に突きつけられた覆しようのない現実に、ただ飲み込まれるしかなかった。手が震え、体が震える。それでも必死に気丈な顔を見せようとするが、相手の言葉からしてもそれがどれだけな無駄なことなのかは明白だ。自分がどれだけ臆病で弱い人間なのかを相手は十二分に知っている。そして、とても自分が敵う相手でないことも、心のずっと奥底、深淵部で理解していた。ミサは口にする「助けて」と。か細く弱々しい声で。怖い。とてつもなく恐ろしい。その一方で、気持の昂ぶりも感じていた。この強い方になら、どのように扱われてもいい、と。全てを捧げてもいいと。相手のことはまだ思い出せはしない。けれど、理解した。今感じている気持は、初めてではない。そう、か、戻ってきたんだ、と) -- ミサ?
      • 助けるさ、勿論助けるとも。ハ、ハ、ハ、アハ、ハハ。(響く、どこか懐かしい、嫌悪感を感じる笑い声)
        せっかくおれの「もの」になったのに、ここで壊しちゃったらもったいないだろ、ン?
        玩具を買ってもらったらまあ、面白いかどうかはともかく遊ぶだけは遊んどくだろ。壁に叩きつけて壊す前に、な?
        (手をゆらり、と伸ばすとミサの顎に指を添える)なあ。おれと離れてしばらくぶりじゃあないか、ン?
        ええと………どれくらいだろうな。(少し思案して)忘れた。まあ、とにかく長い時間だ。コーヒーを一杯淹れる時間よりは長いのは確かだろ?
        どうだ、その間にいい主は見つかったか?お前の所有者だよ。前の所有者として、他のやり方ってもんを参考にしとくのはいいことだろ。ンン?どうだ?
      • (「助ける」、その言葉は最上級の甘みをもってミサの心を包んでいく。たとえ、それがほんのひと時のものであったとしても、今はそれでいい。少なくとも、その間は生きられるのだから。何者かの手に生死をすべて握られることを、果たして生きていると言えるかどうかは分からない。けれど、ミサにとってみれば、人生とはそういうものだった。目の前の男は恐ろしい、しかし、助けてくれる、だから、付き従う。それでよかった)
        (顎を引かれるような形で、媚びるような視線を送る。そうか、知っていると思っていたが、この男はかつての主だったのか。名前は、さて、なんだったろう。いや、それはいい。主である、その事実があればいい)………いえ、貴方様のあとに、主はいません。見つからなかったのか、見つけようとしなかったのか、それはよく覚えていませんが……(そういえば、何故、この男と離れていたのだろうか、そんな疑問が湧く。主であったのに、なぜ。そこはとても大事なことなのに、やはり思い出せない。どこかに、記憶を忘れてきたかのように、ぽっかりと抜け落ちている。けれど、今また、自分はこの男の所有物となったはず。だったら、それでいいではないか。また、この主の下で命ぜられるがままに生きればいい) -- ミサ?
      • そうか………まあ、それはいい。(興味がなくなったのか、さも、どうでもよさげに)
        さて、だ。(とんとんと指で机を叩く フワフワとカードが浮き上がり空中でダンスを踊った)
        おれは今、実に壮大で、壮大すぎて―――そうだな。ジョークのような計画を立てている。その計画は、実に、有意義だ。
        どのくらい有意義か知りたいか?ン?教えてやろう、ン、ックック。大統領選挙で誰も選んで無いようなクズの男に紙くずを投げつける事ぐらいだ!
        笑える話だろう、ンックフフッフッフ。………で、だ。やるにはやるんだが………おれ一人じゃどうも、力不足だ。実に残念な話だが。
        手品には協力者が必要なものも数多いが、そういう類の話だな。さて………?どうしたものかなぁ………?(わざとらしく、思案するように、ミサに聞こえるように)
      • (主が考えていること、それを推察することは難しい。どのようなことを画策しているのか、そのことよりも大切なのは、自分が必要とされるかどうかだ。主のもったいつけるような言い方に、まるで焦らされているかのような感覚を覚え落ち着き無い素振りを見せる。もちろん、どんな些細なことであろうとも、何か任されたい、やらせて欲しい。だが、その言葉を自ら口にしてしまうのが良いのかどうか、迷ってしまう。名乗りをあげるなど、そんな出すぎたことをしてしまっていいものか、頭の中で思考が鬩ぎ合う。しかし、だ。何も行動を起こさずに、最悪の結果、すなわち不必要だとばかりに扱われてしまうことのほうが恐ろしい。今ふたたび手にした居場所。それを失うことだけは避けなければならない。なれば、今ここで何かを成さなければならないではないか。ミサは口を開いた。はっきりと声にしたつもりだったが、不安に声がやはり震えてしまっていた)
        わ、わたくし、に…何か、させていただけませんで、しょうか……… -- ミサ?
  • ――――――――――――――
  • (微塵の関連性もなく唐突に思いつきで誰かの夢をジャックしにきた幽霊) -- 幽霊球
    • (ジャックしようとした相手が起きててしかも不在だったのでこの後どうしたものか身の振り方に悩む球) -- 幽霊球
      • (せっかく来たんだしとりあえず歌い出す球) -- 幽霊球
      • <<このまちのどこかーくらいちーかーのーかーたすーみでーましんがーめをさますー>>
        <<ほしぼしのひかりーすーぽーっとらーいとみーたいーにーぐりーんあーいずしゃーくまーうすぼーる♪>> -- 幽霊球
      • <<たいくつなーどっく− ぬけだーしたーなーらー もうだれーもーきょーひーできーなーいー♪>> -- 幽霊球
      • <<つくられたものたちにすべーてーしめいがあるとしたならー♪たたーかうーぷろーぐらーむしたがうだけさそるじゃー>>
        <<きばをむいてたちかまえーるーさめのすがたをみたならー♪たたーかいーのひーびがーおわりをつげるのさーしゃーくいんざすぺーすだ〜いぶ♪>> -- 幽霊球
      • <<ばーにあがーほーえーるーせいじゃくーにーつーつーまれーたーこのせーかーいーをーゆーらーすー>> -- 幽霊球
      • <<まちなみにーあかりーいっつごーなーめいくあせっだーうん♪ぐりーんあーいずしゃーくまーうすぼーる♪>> -- 幽霊球
      • <<ともとかーたーらーうーじかんはーおーわーりーかけつけーるーせーんじょーおーまーでー♪>>
        <<からみついたいとのよーおーにーうんめいがこうさくするー♪たたーかうーじぶーんをー しんじつづけるそるじゃー>> -- 幽霊球
      • <<かくれてもにげたとしてーもーかずにまかせおいつめるー♪つめーたくーかがーやくーかめらがみつめてるーしゃーくいんざすぺーすだ〜いぶ>> -- 幽霊球
      • <<きょうもーほしのーなーがーれーるーそらにーはがねーのふーねーがーゆきーそしてーあすもーまたーだ〜れ〜かが〜♪あいわーなーがーっちゃーば〜に〜んは〜と クッ!>> -- 幽霊球
      • <<たいくつーなーどーおっくーぬけだーしたーなーらーこばむことーなーどーできはーしなーいー>>
        <<ともとかーたーらーうーじかんはーおーわーりーかけつけーるーせーんじょーおーまーでー♪>> -- 幽霊球
      • <<つくられたものたちにすべーてーしめいがあるとしたならー♪たたーかうーぷろーぐらーむしたがうだけさそるじゃー>>
        <<いずれはごうかにきえゆーくーそのさだめのはてならばーたたーかいーのひーびのーこたえがみえるかもしれないー>>
        <<からみついたいとのよーおーにー うんめいがこうさくするー♪たたーかうーじぶーんをーしんじつづけるそるじゃー>> -- 幽霊球
      • <<いずれはごうかにきえてーもーぼくはひとりじゃないのさー♪つめーたくーかがーやくーかめらがおいつめるー>>
        <<しゃーくいんざすぺーすだ〜いぶ♪しゃーくいんざすぺーすだ〜いぶ♪>> -- 幽霊球
      • <<……一曲できてしまった>>(概ね満足しつつ自分何やってるんだろうとも思いながらまた何処へ消える何しに来たか分からない幽霊) -- 幽霊球
  • ――――――――――――――
  • 一面のにんじん畑 あっちもにんじんこっちもにんじん
    • まだ畑に埋まっている新鮮なにんじんから 今すぐ食べられるように洗っておいてあるものまである
      • なんだここ… -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • こんなに食べてくださいといわんばかりににんじんが積んであったら 食うしかないよな(ぽりぽり) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • っていうか、俺、確か死んだんだよな…
        うーむ、なんだここ…全然ワカラン…(言いつつも口はもぐもぐ) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • ……砂綾君……(茹でたグリンピースの入った器を持っている) -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • ウワァァァァァっっっ!?!?!
        誰だ!?って、センセ・・・・?! -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • ……久しいな……、……あまり……喜ばしい…再会では……ないが…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • アハ、あはは………死んだら全部終わりだと思ってたけど…こうして、再開できるんだな…
        久しぶり、センセ!変わりないようで…いや、むしろ変われない、のか?まぁどちらにしても、よかった! -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • (砂綾を撫でながら、頷く) ………座るか……? -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • ん、そうだな!座ってゆっくりニンジンを堪能しよう…
        こんなにいっぱいあることだし!!!(おもむろに近くにあったニンジンを1本抜いた)
        あ、れ、思ったより軽く抜けた…(不審がってニンジンが抜けた穴を覗いた)
        …………なんじゃこりゃぁぁぁぁ -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • ……? ……どうした……、…砂綾君…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • せんせ!センセセンセ!!!地面ガナイっっっ何かどこかに繋がってる!っていうか…誰かいる??何かやってる?? -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • ……そうか…。……砂綾君が……砂綾君の場所…だと…
        …思っている…空間が…そこまでだと……いう…ことだろう… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • あ、あれ…? なんか、妙なとこに……(にんじん畑の中から急に起き上がる人影) -- トビー(半透明じゃない上にバニー)?
      • ふーむ、ってことは誰かの夢にでも繋がってんのか…どことなくナルシーヤロウに似てる気がするような
        ってトビィィィ!?トビーは、しんでないよな、ないよな!? -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • え……なんで、サアヤが…っていうか、そっちのお方もなんだか透け気味で……
        僕は死んでなんかいないですよ、多分! …っていうことは、やっぱり サアヤは……(ようやく状況が飲み込めたのか、がっくり肩を落とした) -- トビー(半透明じゃない上にバニー)?
      • ……トビー君…、……君は…砂綾君の……よい…友人…なのだな…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • あ、はい…はじめまして。サアヤは、大事な友達です……これからも、ずっと。 名前、ご存知だったんですね…(オルクスへと一礼して) -- トビー(ばにぃ)?
      • (がっくり落としたトビーに向き合って、少し悲しげに笑った)
        あぁ…ごめんな……
        おっと、センセはトビーのこと知らないよな。トビーにはずっと良くしてもらってたんだ。
        で、トビーも当然だけどセンセのこと知らないよな。昔面白い実験とかしてた先生で、オルクス先生って言うんだ -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • (小さく礼をして)……君の名は…砂綾君が…先程……叫んだ……。
        ……ここへは…、…生者は……迷い来るか…、……強い思いを…持ち……それを辿り来るか…しなくては……ならない…。
        ……どうやら…知り合いの……ようだからな…、……後者だろう…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • トビー、酒のもうっていう約束も守れなかったし、バニーの話もかなえられそうにないし……
        本当にごめんな…俺も、もっと生きてたかった、な。うん、やっぱり生きて……… -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • 僕の方こそ、何もできなくて…ごめんなさい。 ま、まさかとは思いますけど…あれ、聞かれてないですよね!?
        オルクス先生……サアヤの先生だったんですか。半透明っていうことは、先生も…その。 -- トビー(ばにぃ)?
      • (沈黙の後、明後日の方を見る) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • (頷く)……6年以上…前に……死んでいる… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • うーん、サアヤの部屋でお酒飲んでたとこまでは覚えてるんですけど……気がついたらこんな場所に。(ぐるり、見回し)
        ……んー、どうせですから、ここで今かなえちゃいましょうよ! なんだか都合よくお酒の瓶とグラスまで持ち込んじゃったみたいですし
        先生もご一緒にどうですか? 僕、酒場でバニーやってますから、お酌できますよー。(にこ) -- トビー(ばにぃ)?
      • うー……やっぱり、聞かれちゃってました… で、でもっ!あの気持ちは嘘じゃないですっ…
        ずっと言おうか言うまいか悩んでたんですから……(ぺたん、その場に座り込み) -- トビー(ばにぃ)?
      • (砂綾のほうを向いて)……砂綾君……、……君も……二十を…過ぎたのだったな……早いものだ…。
        …共に……酒を飲むのも…よかろう……、…トビー君……ついで…貰えるか……? -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • えっと、その…(うっすら顔が赤くなる)
        こんな透明な身だし…こんなこというのは、…えっとえっと…(さらに赤くなる)
        うぅぅ、そうだ、飲もう!酒、ついでもらってもいいか? -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • 僕も一応、20過ぎてますから問題なしです!というか、既に飲んできちゃいましたしね…
        はい!それではー…(グラスにお酒を注ぎ、オルクスへと差し出した)どうぞ、ごゆっくりです! …って、酒場じゃないんでしたね、ここ。
        …サアヤ、やっぱりあんな事言われたら…困っちゃいますよね。 とりあえず、サアヤの分も…(グラスに注ぎ)
        はい、どうぞ。 こぼさないようにですよ? -- トビー(ばにぃ)?
      • (グラスを受け取って)ち、違う!困ってない!
        酒の力を借りて言おうと思ったけど、飲む前に言ってやる!!!!
        大好きって言われて嬉しかった!すごく嬉しかったんだ!
        トビー、大好きだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
        (言い終わるなりなんなり、グラスを一気に空けた) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • (静かに頷くと、人参の穴を調べ始めた) -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • え、えぇっ……!?(恐らくは拒絶されると思っていた矢先、予想外の返答に目を丸くして)
        だ、だからってそんな叫ぶことないじゃないですかー!? う、嬉しくてしかたないですけど!(真っ赤になりながら)
        もうお約束すぎるかもしれませんけどあえて言いますよ!? 僕男の子だよ、それでもいいの!? -- トビー(ばにぃ)?
      • そんなこと嫌ってくらい分かってるよ!でも、仕方ないだろー!わかってたってどうしようもないものはどうしようもない!
        そ、それにそっちだって……俺だって男だし…その、なぁ? -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • 先生も、何かツッコミ入れるかと思いきや不思議なとこ調べてますし…! 何か見えますかー…?
        うーん、確かにどうしようもないですよね、これは… けど、ありがとです!
        こんな形ででも…いい返事が聞けて、もう一度、サアヤと話すことができて… 僕は、幸せです。 -- トビー(ばにぃ)?
      • (グラスに酒を注ぎ、また飲み干した)
        俺だって…生きてた時に…言っておけばよかったと…でもそんなことよりも…こんな風に死んでから…言うなんて俺、最低だ……(酒が回り始めて泣き出した 泣き上戸) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • 生きてる間に言えなかったのは、お互い様です…それに、このまま答えを聞かずにいるより、ずっと僕は救われましたよー。
        サアヤはサアヤなりに、僕の気持ちに精一杯答えてくれたじゃないですか。泣かないで…?(隣に寄り添うように座り) -- トビー(ばにぃ)?
      • え、俺泣いてなんか…泣いて…かっこわりぃ……
        ………(暫くの間、静かに涙を落とした) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • もー、サアヤが泣くとこなんて初めて見ましたよ… 僕は泣くとこ見られちゃいましたよね、きっと…。
        今だけは、僕…サアヤの奥さんですから、存分に甘えちゃっていいんですよー(そっと、横から抱きついた)
        サアヤが笑えるようになるまで、こうしててあげますから…… -- トビー(ばにぃ)?
      • (ぬくもりに気付いて、ふと顔を上げた)最後の、最後の…泣き言だ、聞き流してくれ…
        意地なんて張るんじゃなかった、もっと早く言えばよかった、もっと一緒に………

        (ぐしぐしと涙をぬぐって)ん、もう大丈夫だ!!! -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • それでも、いつかはお別れがきちゃいます…こうして伝えられて、本当によかったです。
        …もちろん、僕だって悔しいですけど せめて最後ぐらい、笑顔で送ってあげたいですもん。
        ん、もうだいじょぶですか? …じゃあ、あの…ひとつだけ、お願いがあるんですけど…。 -- トビー(ばにぃ)?
      • ん、お願い…?なんだ??
        出来る限りのことは…するぜ -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • えと、あの……(散々迷ってから、意を決して)…キス、して欲しいんです…。
        多分、これからもずっと…サアヤのこと、忘れることは無いと思います…けど、それでも…。
        (抱きついたまま、見上げた) -- トビー(ばにぃ)?
      • (見上げてくる顔を見て、微笑んだ)そんな不安そうな顔するなよ、願ったりかなったりなんだからな、断ったりするわけないだろ…
        (おでこ、ほっぺにキスをした) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • う、うぅ……やっぱり未知なことだらけで動揺しちゃいますよ、冒険とは違った意味で…!
        (唇の当たる感触に、くすぐったそうに目を細め…)……って、嬉しいですけどそれ違いますよー… 唇にです、唇に! -- トビー(ばにぃ)?
      • はは、わかってるわかってるってー!(すこし意地悪そうに 照れ隠ししながら)
        (今度こそ、唇にキスをした) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • ん……(流石に恥ずかしいのか、目を閉じて 唇を重ね…)
        …もう、サアヤは意地悪なんですからー。 でも、本当に…ありがとう。
        僕、そろそろ行かないと。 ずっと、ここでサアヤと一緒にいたいけど…そうもいかないみたいです。 -- トビー(ばにぃ)?
      • そ………そっか、そうだよな…こんなところ、長くいるもんじゃない……トビーは、生きてるから…
        すごく惜しいけど…でも、生きて欲しい。どうか、どうか幸せに… -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • (ぎゅっと、強く抱きしめた) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • (本当は離れたくなどない、それでもうっすら分かる…自分が、目を覚ましそうだという事実。)
        サアヤ……僕、サアヤがいなくても幸せになれるか、自信ないです…でも 頑張ってみますから……
        だから、見守っていてくださいね……(精一杯の笑顔で、一度だけ強く抱きしめた)
        またね、サアヤ……僕の大好きな、旦那様…。(無意識のうちに、涙が溢れていた。 目から零れ落ちたその一滴がにんじん畑の土に染み込む頃には…その姿はうっすら消えて) -- トビー(ばにぃ)?
      • (さようならはいわないよ きっと、また会えますもん…いつか。  そんな言葉と、砂綾の手の中に確かなぬくもりを残して) -- トビー(ばにぃ)?
      • あぁ、ああ!絶対、ずっと、見守ってる!!
        またいつか…いつか必ず会おう!!!
        それまで、暫しの………(もうほとんど見えないトビーに向かって笑おうとしたが、その顔は笑えているとはとてもいえないような顔だった) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • ……行った、か。いや、むしろ帰ったというべきか………
        ずっと、見守ってる…今度こそ、守るよ。

        また、な。 -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
    • (穴から下をジーーッと覗いてみる。…三つ目をシパシパ瞬かせた)
      ……誰か…居る…、…他の者の……領域……? -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • ………クロア君……? -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • お知り合い、ですか…? 知ってる人の夢の中って、案外近いところに…あるものなんでしょうか。 -- トビー(ばにぃ)?
      • (頷く)………思いが……引き合う…力となる……、……考え得る…ことだ…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • もしかすると、そのまま隣へ…行けたりするのかもしれませんね。 なんだか不思議です…とっても。 -- トビー(ばにぃ)?
      • ……恐らく…行けよう…。……しかし…君も……信じるより…なかろう……。
        …今…現に…、…生きている…君が……私達と…ここに居る…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • そう、ですよね……もしこれが、僕だけの…都合のいい夢なら、初対面の先生とは会えるはずが無いですし…。
        せっかく知り合ったのに、これでお別れっていうのも…ちょっと悲しいですけど。 -- トビー(ばにぃ)?
      • ……いつかは…誰もが…別れる……。……別れは…避けられないが…出会いは…私達…次第だ……。
        ……こうして…出会えた事を……喜ぼう…。
        (トビーの頭を撫でて)……君は…いい子だ……。…会えて……良かった… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • そう言ってもらえると、嬉しいです…オルクス先生。(撫でられ、嬉しそうに笑った)
        もし僕が死んだら、また会えるでしょうし…そうでなくても、今日みたいに会えるチャンスも…きっとありますよ!
        その時はまた、一緒にお酒飲んだり話したり、色々しましょう? -- トビー(ばにぃ)?
      • (ゆっくりと頷いた)……ああ……、…約束だ…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • ………良く考えたら、ずっとセンセいたんだよな…
        ま、まぁ、センセはからかったりしないだろうし………そ、その、聞いてなかったことにしてくれると、嬉しい… -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • (小さく首を横に振る)……恥じる……べきでは…ない……。
        ……それは……彼と……君自身に…対して……不誠実な……事だ…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • はははっさすがセンセ、言うことが違うな…そして、尤もだ。
        ………で、穴について、何かわかったのか? -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • ………クロア君が……居る…ようだった……。
        ……トビー君が…居たように……、…クロア君も……そこに…居るのだろう…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • クロアが…?夢の中に?
        何でまた夢なんかに??? -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • …………。(口に手をあて、少し考える) -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • ん〜、よくわからん……
        でもこれって、もしかして見えるだけじゃなくて向こうに繋がってたりするのか? -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • ……繋がるか否か…は……、…繋げたいと……思うか否か……。(頷く)……繋がるとも……。 -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • 意思次第、か…
        (そこらに生えているニンジンを1本引き抜き、ぽいっと穴へ投げた) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • ……届いた……ようだな… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • うわっっホントに繋がってるし!!!
        これは面白いかも。(2本、3本と引き抜き次々と投げ入れた) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • …………。(止めたそうな手) -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • ちっもうばれたか……こういうときだけはするどいな!
        ニンジンがいけるなら俺もいけるだろ!!!(手掘りで穴を広げ、自分も穴に入った) -- 砂綾(半透明というか幽霊)?
      • ……砂綾君…、…………。(止めたそうな手を下ろし、下を覗いた)
        …………。……トビー君は……ここに……来るために来た…。……しかし…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • ……迷い…来た…のだろうか……、…クロア君…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • !(砂綾とクロアの喧嘩を見て、腰の鞭に手を伸ばした) -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • (鞭を穴に向かって打ちつけた) -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • (消える砂綾を見て)……他人の……生ける者の…夢の中…では……、……長居は…出来ない…か…… -- オルクス(半透明というか幽霊)?
      • (小さくため息をつくと、穴に飛び降りた) -- オルクス(半透明というか幽霊)?
  • ――――――――――――――
  • (真っ白い世界。死んだ者の世界なのか、生きてる者の世界なのか。ただそこには何もなく、白い色だけが広がっている。)
    (その中に眠っている眼帯の少女と、横に同じ眼帯をした青年が一人)
    ……クレアちゃん。クレアちゃん。おーい…
    -- ????
    • わぅー………?(むくりと起き上がり)
      ぅ………あれ……隊長……さん?(眠たげに目をごしごし) -- クレア?
      • やーやっと起きた。なかなか起きないから冷や冷やしたよ。
        久しぶり、クレアちゃん。(そう言って笑って頭をなでる。手には温度があってあたたかい。昔のままの手の温度)
        …何でここにいるか自分でわかるか?(心配そうな顔で覗き込む)
        -- マリヤン隊長?
      • わふ…お久しぶりなのですー……あれ…でも隊長さん数年前に…(撫でられてるのは嬉しいらしく 尻尾ぱたぱた)
        ……ぇ?あれ……ここ、どこです、か……?(周りを見回すも、白しか存在しない世界 見覚えなんてあるはずもなく) -- クレア?
      • …ん、やっぱりわかってないか…そうだよな。俺もそんな感じだったよ(一人で納得したように頷いて)
        ここはーまあ、あの世とこの世の境目みたいなものだ。(手を軽く広げた後、しばらくの沈黙。とても言い難そうに)
        ……迎えに来たんだ、クレアちゃん。君は…オークチーフにやられて死んだんだ。
        -- マリヤン隊長?
      • 死……?ぁ……僕、今度こそ、死んだのですか……(腹部に手をやり、服を握り締める。思い出すのは、深々と食い込むオークチーフの腕。)
        ぅー……長生きするお約束、守れなくて申し訳ないのです……(沈んだ表情をするが、其の表情はどこか、安心したような顔で)
        お迎えっていうことは、僕はこのまま、皆さんのとこに逝くのですか…? -- クレア?
      • 約束……ああ、いいんだ(死んだというのに、安堵の入り混じる表情を見て、悲しそうな顔)
        …まあ、仕方ないさ、俺たちは騎士であり、冒険者だ。クレアちゃんは十分すぎるほど頑張って生きてくれた。
        さ、行こう。マリアノ、リヒト、エリーちゃん、…皆待ってる。(ぽんぽんと軽く頭に触れて)
        あ、そうだ、おんぶしてってやるよ。疲れたもんな。(跪いて、背を向ける)
        -- マリヤン隊長?
      • それでも、やっぱりちょっと申し訳ないのです。(よいしょっ…と、立ち上がり)
        ………ぁ、ありがとうございますです………エリーさん、に…会えます、ですか…?(隊長さんの背中におぶさりながら、声を抑えて、尋ねる。表情は見えない) -- クレア?
      • はは、あいかわらずいい子だな…あんな、当時はみ出し者しかいなかった所にホントよく来てくれたよ。…よっ…と。(背負って、立ち上がる。)
        …ああ、会えるよ。ホントは彼女が迎えに来るはずだったんだけどな、俺に譲ってもらった。…ごめんな、俺で。連れて行く前に少し聞きたい事があってさ。
        ……なあ、クレアちゃん、今の赤羊の皆や、冒険者の皆…弟は、好きか?(ゆっくり白い空間の中を歩きながら、尋ねた)
        -- マリヤン隊長?
      • ………(予想してなかった質問に、少し沈黙し)
        ……僕は、みんなの事は好きですよ、居なくなった人も、出会った人も全て。(やや震えた声で、答えた)
        僕が嫌いなのは………自分、自身、だけ、です。(隊長さんの服を、感情を抑えるために 強く握り締める) -- クレア?
      • …自分だけ?驚いたな…どうして…(自分が嫌い、という言葉に少し振り向くが、表情は見えないのでまた向き直る)
        (落ち着くように少し体を揺らしながらゆっくり歩いて)…クレアちゃんの好きな人は、皆クレアちゃんが好きだと思うよ。何でそんな風に思うのか…聞いてもいいか?
        -- マリヤン隊長?
      • …僕は……人の為でないと動けない人間です。逆に言えば、僕は人が居ないと、駄目な事でもあります。…そんな、自分の弱さや(さらに力を込めて、服を握る)
        ………自分の、為に、戻ってきてくれてたのに、頑張って、伝えようと、してくれてたのに、エリーさんを、傷つけた、自分が、許せないのです。(搾り出すように発する声は 振るえ)
        自身、どこかで気づいていたかもしれないのに、ありえないなんて、そんな事思って、一番、護りたかった人を、傷つ…・・・ぅ……… -- クレア?
      • …エリーちゃんも器用な方じゃないからな…あれは…わからなくてもしょうがない気もする…。それに好きな人の前では臆病な気持ちになるからな。
        傷ついては、いないんじゃないかな。むしろ傷つけたと思ってそうだけど……よっ…なあ、クレアちゃん、(背負い直して、少し明るい声で)
        弱くても、いいじゃないか。一人で生きていける人なんていないんだ。足りないとこ補い合って生きていくんだ皆。
        君が誰かのために動いて安心するように、君に助けられてその誰かも安心してるんだ。とても優しくて幸せなことだと俺は思う。
        もう一度…今度はさ、自分を好きになるように、自分のために、生きてみる気はないかな?
        ああ、…君を心配する人のためでいいんだ。その人達のためにもう一度笑顔を見せてくれないか?
        -- マリヤン隊長?
      • …エリーさんは、何も、悪いことしてないのです…(グスッっと、鼻を少しすすり)
        ……自分の為に動くことや、前の様に笑うのは、無理だと思います。(寂しげな表情で それでも笑おうとして)
        ……笑おうとしても、……思い出して、泣きそうに、なります、から(あふれる涙がこぼれぬように、上を向いた)
        ………でも、もし、僕を一人でも必要としてくれる人がいるなら、僕はまだ、生きて頑張れるのかも、しれませんです。(上を向いたまま、目を閉じた。堪え切れず頬を流れる涙) -- クレア?
      • …無理、かー…ん、今はそれでもいい。生きてさえいれば変わる事だってあるかもしれない。
        クレアちゃんを必要としてる人なら沢山いるさ。赤羊の仲間も、騎士や、冒険者…そしてあの弟。あんなに泣いて呼んでいたじゃないか。
        …よし、ついた。(いつの間に現れたのか大きな扉の前で立ち止まって、そっと背中から下ろして…抱きしめる)
        ほれ、涙は俺の服で拭いちまえ。泣くな、とは言わないよ。泣くことで気持ちは癒されるからな。
        …泣きたい時は我慢しないで、俺の部屋でも使って泣いていいから。無理に笑おうとしなくてもいいから…
        …生きてくれ、クレアちゃん。
        -- マリヤン隊長?
      • 僕を必要としてくれる人が居るのかは、僕には分からないですけど……アスは元々泣き虫ですからー……(扉の前にたどり着き 背中から下りながら)
        ……途中から、気づいては居ましたです。お迎えでは無いなって……わぷ!?(抱きしめられて、ちょっと驚くが そのまま体重を預ける)
        そんなこと言われたら、毎日隊長さんの部屋お借りしなくちゃならなくなるですよ…流石に、それは駄目なのです。
        …あの時も、…こんなに素直に泣けたら、僕は、あの人に逝かないで…って我侭を、言えたのでしょうか。
        …隊長さんのご希望なら、僕もう少しだけ、頑張って、生きてみるです。直ぐ戻ってくるかもですけどっ(ぐしぐしと、涙を拭いて、顔を上げる) -- クレア?
      • (抱きしめながら頭をなでて)…はは、俺がクレアちゃんを連れて行けるわけないだろう。…あの部屋はもうクレアちゃん位しか来ないから…遠慮しなくて良いよ。使われた方が本望さ。
        …あの時…そうだな、もう少しわがままでも良かったと思う。クレアちゃんは我慢しすぎだ。今度はもっとわがままに生きるといい…可愛いんだから許される。俺が許す。
        (少し離れて顔を見つめて、微笑む)…さ、この扉を開けたら君は自分の体に戻れる。ちょっと…というかだいぶ、痛い。でも生きてる証拠だ。
        …俺のわがままで、エリーちゃんとの再会を伸ばしてしまってごめんな…でも、死んで幸せになるよりも、生きて幸せになるほうがきっといいから。
        (扉を片手で開けて促すように手を引く)なるべく、遅く戻ってきてくれよ?じゃあ、またなー(軽く言い、いつものように頭をなでると、扉のむこうへと背中を押した)
        -- マリヤン隊長?
      • わふ…じゃぁ、時たまにお借りするかもです。あ、ちゃんとお供え物は持っていきます。(両手を合わせて、隊長さんに合掌)
        僕は相手の事を考えすぎて動けなくなるのが、駄目なのかも知れませんです…あの時言えなかったのだけは、後悔してます。それと…僕は可愛くないです。目指せ格好良い人です。
        僕は、皆が幸せに笑うほうが良いです。僕のはもうー…(言いかけて、首を振った)なんでも、ないのです。(背中を押されて そのまま扉へと歩む)
        痛いのは、ちょっと嫌ですけど頑張ります、わふ。簡単に追いかけても、きっとエリーさんに怒られますですし……(扉をくぐる前に、一度振り返り)
        こんなときまでご迷惑をおかけしまして、本当に、ありがとうございました隊長さん!皆に、もう少しかかるってお伝えくださいです(丁寧に、礼)
        隊長さんはエリーさんの次に大好きですよっ(そういうと、扉の向こうへと 走り去った) -- クレア?
      • …さりげなく振られた俺。まあ、これはきっと家族に抱く感情なんだろう…うん。家族なんてものろくに知らないからわかんねーや…
        (扉のむこうを少し眺めてから閉じる。そのまま背中でもたれかかって)…こっちこそ、ありがとうクレアちゃん。俺なんかに今まで付き合ってくれて…面と向かって言うのは恥ずかしい俺。
        さて、あの世に帰るか……
        (満足そうに笑って伸びをして…消えた)
        -- マリヤン隊長?
  • ――――――――――――――
  • (暗く、沈んでいく。どこまでも沈みこんでいく。
    足元が弛んで、泥に変わり、際限なく私の体を飲み込んでいった)

    ここはどこだ? 私は何をしていたんだろう…
    (辺りを見渡すと様々な色の体毛を持った獣が青々と茂る牧草を食んでいた。
    黒、とび色、白、赤みのかかった茶色。
    それぞれが違った体毛を持っている。彼らの額から突き出た一本の長い角だけが白で統一されている)
    角を持った……獣…? -- アセルス?
    • (眺めていて、ふと何かを思いついたような表情。するとアセルスはさも可笑しそうに笑う)
      あははははは! これ、夢かい? それにしてもストレートだね
      この角を持った獣は昨日読んでいた本に出てきた獣じゃないか。「世界の終わり」だったかな…?
      (立ち上がり、群れの中に入っても獣たちは何も反応せず牧草を食んでいる)
      私が存在していないみたいだね。現実感がないのが「夢」ってもんだろうけどさ。
      (遠くをふと見ると、群れから離れて金雀児(えにしだ)の葉を一匹で噛んでいる獣が見えた
      他の獣は骨がそのまま突き破っているんじゃないか、というくらい立派な角を持っているのに
      その獣は角が短く、よく見ると毛色も他の獣とは違う――どこか色褪せたものだった) -- アセルス?
      • (短い角の獣へ近寄る。私がいてもいなくても同じように金雀児(えにしだ)を咀嚼する。
        視線はしっかりと私を見ているのに、「自分にはそんなことは関係ない、放っておけ」とでも言いたげだ)
        ……君は、私に似てるよ。一人だと信じて強がって、自分が特殊だってことを他者を遠ざける言い訳にしてる。
        (角の短い獣は黙々と葉を噛んでいたが、その口が唐突に言葉を紡いだ)
        君みたいな奴と一緒にするなよ、不愉快だ -- アセルス?
      • (心臓が跳ね上がった。目の前の短い角の獣は、確かに今、声を発した。女の声で。それは――)
        私の声……!?(後退りをする私を二つの目で見つめたまま、どこかで空気が移動する音がする。
        例えるなら火山活動が活発な地域で、泥の中を天然ガスが廻っているかのような粘着質の音が)
        随分趣味の悪い夢だな。目覚めたらきっと寝癖で苦労するんだ。
        セリーヌからもらったシャンプーのおかげで綺麗になった髪が台無しだね。
        (虚勢を張って肩を竦めて笑うと、粘着質の音は大きくなり――爆ぜた。
        目の前の短い角の獣の体が大きく膨れ上がり、その肉を裂いて中から人が出てきたのだ)
        君が趣味の悪さを口に出来るのかい?(私の喉を掴むその女は――間違いなく私自身だった) -- アセルス?
      • 私の偽者。私によく似た違う存在。君には私の苦しみは分からないだろう。
        妖魔の血と人間の心の狭間で苦しんでいる私の気持ちは。

        (ギリギリと力を込めて私の喉を掴む「もう一人の私」。その力は凄まじく、このまま喉を握りつぶされそうだ)
        君は何だ? 神姫の体を受け入れ、安穏と暮らす君が。私と同じ名前を名乗っているなんて反吐が出る。
        (腰から剣を抜くと、自分の喉を掴む手を斬りつけた。相手から離れると、激しく咳き込む)
        ごほっ ゴボッ…! ふん、私が偽者…だって…? 私は私だ! お前こそ私の夢の中の幻、偽者だ!!

        (アセルスが咳き込み、吐いた血。もう一人のアセルスの腕から流れる血。どちらも、変わらぬ紫だった) -- アセルス?
      • 「君は何者だい?」「私はアセルス」「奇遇だね、私もだ」
        「君はなんで私と同じ姿をしているんだい?」「こっちが聞きたいところだね」「結局、分からないんだよ」
        (二つの同じ声がステレオに聞こえて少し気分が悪くなる。自分の声は録音して聞くと違う声に聞こえるというけど、この声は変わらない。
        そう、まるで自分の頭の中で会話をしているような。
        そこまで考えた時、いつの間にか呼吸がかかるくらい近くにもう一人の私が立っていた)
        もっと深くでまた会おう。君が正気でいられたらね。(ドン、と突き飛ばされる私、
        世界の横糸は解れ、高速で移動する乗り物の中から外を見たかのように――私は遠くへ「吹き飛んで」いた) -- アセルス?
    • (ふと、気がつくと周りは木造の二階だった。ビーカーのようなものが並んでいる。
      自分が居たリージョン、シュライクの小学校によく似ていた)さしづめここは理科室ってところかな…?
      (夢だ。これは夢だ。分かっている。だったら、自分の目を覚まさせる出来るはずだ)
      マルコム・ゴドウィンの「THE LUCID DREAMER」だったかな。
      あの本にある通りだったら自分が夢だと自覚している夢は、操れる…明晰夢(覚醒後の夢)は、私の世界だ!

      (一人で叫ぶ私の視界の隅、ほんの5%のところを。小さな何かが駆け抜けた) -- アセルス?
      • ふ…ふふ。ドッペルゲンガーの次は小人かい……?
        知っているよ、リリパット幻覚やリープマン現象と呼ばれるものだ。
        アルコール中毒や脳脚幻覚症、あるいは想像力豊かな子供が見る幻。
        暴走した想像力の塊である夢の中なら、小人くらい(そこまで言うと、鋭い痛みに顔をしかめた
        手をゆっくり上げると、左手の薬指に5センチメートルほどの小人が噛み付いている。私は悲鳴を上げて「それ」を地面に叩きつけた)
        この……私の夢の産物め! 痛いじゃな――(そこまで叫んで気がついた。「痛い」…?)
        そ、そんな……(夢だから痛いはずがない。しかし私の薬指は実感を持ち、リアルに紫の血を流していた
        私が軽い恐慌状態に陥り、ドアから逃げようとすると既にドアの取っ手からビーカーの中まで小人の群れで埋め尽くされていた)
        私をどうするつもりだ……私は、どうなるんだ…!?(私は恐怖心にかられて、右腕に妖魔の小手を呼び出した) -- アセルス?
      • (小人たちは私を見ると一斉に口を開いた。
        その小さな丸い口の円周上にびっちりと二列に並んだ鋭い牙。
        二列の牙は互いに逆方向に回転している。
        ちょうど、電動鋸の刃を内側に向けたような――)

        これに一斉に噛み付かれたら、痛みで死ぬだろうね。
        認めたくはないけど、これは力を持った夢だ。ここで死んだら、きっと現実世界の私も心臓麻痺で死んでいる。
        (小人たちがそれぞれがキシキシと不快な笑い声を上げた。無言で窓側の壁に妖魔の小手を叩きつける)
        私はよく夢を見るんだ。それも悪夢を。その対処法くらい、十分に知ってるつもりさ!
        (大きな穴から身を乗り出すと、二階から地面に向けて私は身を投げた。
        高所から落ちる感覚、それはいつも私を夢から現実へ引き戻してくれた確かな方法だった) -- アセルス?

      •          ゴスッ

        (目は、覚めなかった。コンクリートの恐ろしいほどリアルな感触と、挫いた足の痛み。
        顔を撫でると鼻血も流れていた)どうして……? 夢、夢なのに! どうして覚めないんだ――!!
        (私が絶叫すると、周囲が夕暮れになり、凄いスピードで学校は夜の闇に染まり、消えた) -- アセルス?
    • (気がつくと、そこは暗い解剖室の中だった。いや、解剖室なのかどうかも分からない。
      浅い溝が何本も彫り込まれたコンクリートの床、薬品と血の匂い。
      部屋の中央にあるベッドには大男が縛り付けられていて、その側で老人が医療器具とも拷問具ともつかない機材を弄っていた)
      もう……やめて…もうやめてぇぇぇぇ!!
      私が何かした!? 悪いことをしたなら、謝るから! ここから出して!! 現実に戻してぇ……!
      (最後のほうは、涙声の哀願になっていた。草原、理科室、解剖室。
      どんどん暗く、陰惨な場面へと切り替わる夢。あと数場面続けば、私は狂ってしまう――)
      君…静かにしたまえ。ワシは今、虐殺を楽しんでいるのだからの。
      (虐殺を、楽しむ。安っぽいヒロイック・サーガの悪役のような陳腐な台詞。
      しかし――周囲に転がる水死体のように膨らんだ女の上半身。
      着ぐるみのチャックのようにごつごつとした醜い縫合跡が見える男の死体。
      そして、部屋の角で怯えた小動物のように蹲って震えている裸の少女。
      その少女が呻く。小さな声で、「やめさせて…」と。
      台詞がどんなに陳腐で、老人がどんなに弱い存在であろうと。私を恐怖させるには十分すぎるシチュエーションだった)

      君は、埋葬されたことはあるかの?(自分の鼓動の音が、聞こえたように感じた) -- アセルス?
      • ワシは手違いで生きたまま埋葬されたことがあっての。棺の中で生き返った、というのかね。
        確率でいうとそんなに珍しいことじゃない。医療が不確かな時代に土葬された棺の蓋の裏には引っ掻き傷がある。
        死んで、生き返って、酸欠や衰弱死で二度死ぬわけだな。
        確率がどの程度か? それは分からんよ。そもそも確率というものを定義しようとするとトートロジーに陥る。


        (話しながら、老人は何らかの作業をし続けた。私は目を背け、行為を見ないようにしていた。
        だが……匂い。悲鳴。音。そして…私の足元のコンクリートの溝を流れる血。
        それらを否応なく知ると、喉の奥から嗚咽が漏れた)
        そう、その床の溝は「血流し」なんだよ。考えられているだろう?

        (老人の品の良い笑い声が、ゆっくりと私の意識を深く深く突き沈めていった――) -- アセルス?
    • (ふと、気付くと今度は巨大なサイロの中にいた。飼料としてよく出来た牧草はオレンジの匂いがする。暗く、視界はないに等しかった)
      はぁ……はぁ…リョウ…セリーヌ…エロ、ラウ、芽衣瑠…
      くれあ、サラ、アルマ、ガオ姉! イルドゥン!! 助けて……!
      (蹲って子供のように泣きじゃくる。しかし、泣き止んだ。泣き止まざるを得なかった。
      暗闇に目が慣れると、目の前に巨大な赤子が眠っていることに気付いたからだ)
      もう……やめて…帰りたい、帰りたいよぉ……
      (心の強さや、普段の強がりは消えてなくなっていた。今の私は半妖でも血を求める狂戦士でもない。
      ただ、目の前の恐怖に歯を噛み鳴らすだけの…ただの女の子になっていた) -- アセルス?
      • (巨大な赤ん坊がぐるぐると喉を鳴らして寝返りを打つ。産毛が生えた背中には剣竜のような背骨が見える。
        見た目は生後6週間ほどだというのに、全体は象の頭ほどの大きさだ)
        っぐ……(私は涙を拭うと、その場から逃げ出そうとした。しかし、どこから入ったのか―サイロには出入り口がない)
        ゴゥン…(後ろを振り向くと、いつの間にか起き上がった赤ん坊が大きな黒目で私を見つめていた。
        大きくあくびをすると、その口の中には赤い歯茎にサメのように鋭い歯がびっしりと生えていた) -- アセルス?
      • (叫び声が聞こえた。悲鳴というより、絶叫だった。
        それが私の口から発せられていると気付くまで、しばらくかかった)

        も、もう嫌だ! 死ぬのはいい…リーンの仇をとるためにワイバーンに殺されるなら構わない
        怪物の討伐で死んでも、人と戦って死んでも、罠にかかって死ぬのも覚悟してるッ!!
        でも…これは嫌だぁ! 赤子や小人に食い尽くされるなんて死に方は…
        そんな死に方をするために生き返ったわけじゃないんだよォ!!

        (その時、私はサイロの天井に巨大な目があることに気付いた。
        その目を見た時、私は意識が覚醒していくのを感じた――) -- アセルス?
    • (朝日の眩しさに目が覚めた。今日もしっかり眠って、良い気持ちだ)
      ん〜! なんか変な夢を見た気がする……でも、覚えてないや。
      (洗面所で歯を磨くと、頬がこけていることに気付いた。痩せた、というにはあまりに病的な…)
      ……? ダイエットなんてしたっけ? そもそもこの神姫の体って太ったり痩せたりするのかな
      (私は大きく伸びをすると、歯磨きを続けた。疲れが溜まっているんだろう。そう考えると気にならなかった。
      だから、私は気付けなかった。壁の一部が開き、目のように瞬いたことに)


      ――人はそれを、夢魔と呼んで怖れている -- アセルス?
  • ――――――――――――――
  • …ああ、そうか。死んじゃったんだ、私。…みんなと海、行きたかったな -- ジュン?
    • 夢の中だからアピールしても仕方ないか…(ごろごろごろ) -- ジュン?
      • なんだこれは……夢、なのか……? -- ケイタ
      • …ケイタ、会いに来てくれたんだ。でもあんたは、こっち来ちゃ駄目だよ。
        ここは、死者が次の段階へ進む場所、魂の待合室。…もうすぐ、私も行かなきゃ -- ジュン?
      • ……おれは、君のかたきをうつ。やつらをうちほろぼしてやる……。
        だから、安心してほしい……。……ほんとうは君をおいかけたいけれど、おれは……おれは君をまもれなかった……。
        君にたいせつなものをもらったのに、おれは守れなかったんだ……! ゆう者、しっかくだよな……。
        なぁ、ジュン。おれをゆるしてくれ……それと、だきしめてもいいかい……? -- ケイタ
      • あんたは、あんたの役目があるでしょ? 勇者なんでしょ?
        だったら、憎しみに身を任せちゃ駄目だよ。
        常に正しく、強い正義の心を持って、これから進んでいかないと。
        私は自業自得なんだから、そんなに気に病むことも…ね?

        …いいよ、抱きしめて。私のことを、忘れないように… -- ジュン?
      • ああ、おれはゆう者だ。世界をすくい、ま王をほろぼすんだ……。
        でもおれは正義のみかたじゃない。にくしみにかられることもあるんだ……でも、君が、ゆう者であるおれをのぞむなら……おれはま王にはならない。
        ……今までありがとう。あいしているよジュン……。わすれないから……(ジュンを抱きしめると、唇にを塞ぎ、深いキスをする。 -- ケイタ
      • (キスを受け入れ、二人の恋人は長い間抱擁を続けた)
        私こそありがとう。もう行くね。…さよなら、ケイタ。
        (ジュンの姿は泡となり消えて、そこでケイタの夢は終わった) -- ジュン?
      • (ゆっくりと目を開ける。)……もうおしまいかい。やっぱり、おれはもっと君といたかったよ……さようなら。ジュン……いとしい人。天で、おれをみていてくれ…… -- ケイタ
  • ――――――――――――――
  • (3時をおしらせします)

     ぽ
      ぽ
    ぽひぃ〜 -- 名簿/50810?

Last-modified: 2011-05-14 Sat 18:03:05 JST (4730d)