新米女医 サウス・ポーチ
恥ずかしがり屋で、南瓜のお面を被ってないと、患者とも上手く話せなかった女が居た。
しかし、その女はそれでも、死に行く者を守る為に、自らも死地に赴き戦った。
町のとある診療所の玄関には、今も南瓜のランタンの置物が置いてある。
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占い師 フィオレ・ポーチ
ジプシーとして生まれ、奴隷として売られ、娼婦として生きた薄幸の占い師が居た。
背に生えていた大きな翼は捥ぎ取られ、恐れと怯えで暗い人生を歩んでいた女はしかし、
ある男に買われた事により、代わりの翼を手に入れた。
その男と結ばれる約束をしたその月に死んだ女は、死する時まで薄幸であったのだろう。
しかし、その魂は神の御許で、愛する者といつまでも共に居ると言う。
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聖騎士 イムタット・アルチェット
養父を殺し、すべてを奪った仇への復讐。 ただ、その為だけに冒険者となったエルフの少年は、
死神に魅入られた運命を、自分を支えてくれる人々と共に打ち破った。
青年となり、救国の英雄として念願の受勲の日を迎えたその日にしかし、
彼は、今度は自分の意思ですべてを捨てて旅立った。
後の世に残るのは、ただ一文。
『その聖騎士は、天使を妻とし、今もこの世のどこかで静かに暮らしている。』
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外道 御蔭出・豆喜助
人の死を弄び、その屍で更に新しい屍を作り上げる、その為にならばどんな手も厭わない。
そうして、最後にはきっと、正義の徒を称する者に無残に殺されるのだろう。
そう、思っていた外道の男は、物好きな闇の精霊に愛された事で人生が変わることとなった。
冒険に飽きた男は、また風任せに街から消えて、消息はそのまま、知れぬ。
余談ではあるが、その数百年の後、ある山に夫婦の妖怪が出ると言う言い伝えが生まれたと言う。
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狐面のくノ一 平泉・菖蒲
愛する里を壊され、愛する者を奪われた少女は、仮面の奥に表情を隠して復讐に駆けた。
しかし、訪れた町で仇を探す間に、少女には新しい、様々な大切な者が寄り添っていた。
未熟ゆえに揺らいだその心は、どれほど慰められただろうか。
復讐を遂げられず、身を欠けさせた少女は、復讐の虚しさに咽び、故郷へ戻った。
全ての愛しい者を捨て、ただ、心静かに人々の供養に生を費やしたのであった。
しかし、ある静かな夜に孤独の庵に訪れた一人の女が居た事を、
そして、その女はきっと、孤独な女を幸せにしてくれたのだろう事を書き加える。
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騎士 クレイン・スアラ
戦とは、一部の貴族達の意地と自己愛を守る為の物でしかない。
そう思い、男は自らの手で弱き者を守る為に、冒険者となった。
しかし、男は斧を振るう生の中で、己一人で守れる者の少なさを知る。
『多くの人々を守る為には、国が必要だ。』
『そしてその国で起こる戦は、全て弱き人々のためでなくてはならない。』
十数年の後、ある国が滅び、新たに貴族を必要としない民主国家が興った。
その中央議会の正面には、不正を断つ意味を持つ大きな古い斧が飾ってある。
その斧は、初代の議長が戦で愛用したと言う物であると言う。
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飛空船船長 オウ・サックナー
力を欲した少年は、数奇な運命を辿る事となった。
愛する者を失い、その者が遺した大きすぎる遺品を背負う事となってから、
その身は闇へと変わり、その身は時を駆け抜け、そして、光へと生まれ変わる。
其処からの長い生は、人とは違う流れの中であったが、もう、一人ではなかった。
沢山の、奇妙な船員達と、そして、妻として寄り添うもう一つの光がそこにあったから。
数百年経った今も、風の凪いだ月の綺麗な夜には、空を行く船の姿を見る事があると言う。
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小悪魔 保志乃 香澄
人に在らざる姉を持った少女は、無垢な心のままに姉に憧れ、
そして、姉に追いつこうと冒険者になった。
しかし、姉が死に、目標を失ったその少女は当ても無い旅に出た。
とある地方の国々には、悪魔の翼とトカゲの尾を持つ謎の侍が、
ある時期頻繁に出てくるが、それはまた別の話である。
女神に愛された セントール・ウェンディアス
運命の女神の一柱に愛されたその人馬は、魔女の呪いにより本当の馬となってしまった。
しかし、加護はその身を守り、森の奥でその寿命を全うするまで、平和に暮らせたと言う。
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奴隷弓士 サディン・フランチェッテ
スリとかっぱらいで生き延びてきたただのストリートチルドレンは、
ある日、盗みに入ったところで捕まり、奴隷商人に売られた。
その後、冒険で金を稼ぐ事になり、買い手が着かないのならばそのまま死ぬまで冒険の生活を過ごす筈だった。
しかし、不思議な運で戻って来た故郷の街で、男はある女に買われ、自由の身を得る。
その後、その主人とは別れ、冒険の地で一人果てた。
…とある隻腕の男の物語が始まるのは、丁度その頃からだが、
その物語がどう言う物かは、また別の書で語る事にする。
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女形 大和 小太郎
少年は旅の一座の女形であった。 芸を磨く為に訪れたその町で果てる。
しかし、その少年と共に冒険した冒険者達は、
暗い旅先の地で様々な芸を見せて無聊を慰めた一人の少年のことを、
長く忘れなかったと言う。
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素浪人 鳴鉈 明乃
主君を守れなかった女の侍は、その自責を抱え、死地を探していた。
名も知らぬ国で出会った人の縁により、そ
名も知らぬ国で出会った人の縁により、その国の騎士として戦の生を全うする事となる。
人生の中で唯一の親友は、蒼い髪の女騎士であったらしい。
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あざとインプ タロウ・サラダ ハナコ・サラダ
人の為に、魔物の身でありながら魔物を討つ冒険者となった。
その兄妹は、共にワザと間違った萌を追求し、人々に少しの笑いを提供した。
それだけで、十分に幸せであったと言う。
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シノンデル リ・ユエ・ティエンファ
口減らしに売られた少女は、人殺しの兵士となるべく、暗殺の技術を教え込まれた。
しかし、その心の光は闇に塗り潰される事は無かった。
魔物にぼろぼろにされた身体で、自分を連れて来た教官を襲撃し、復讐を遂げようとした。
しかし、虚しく。
栄養と、なった。
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狼王 ロボ
山々を統括する程の力を持った誇り高き狼王は、ある魔術師に魔法をかけられた。
その身は弱弱しい女となり、人の世界で生きることを強要されたのであった。
しかし、その生活の中で、翼を持ったか弱い少女と出会い、少しずつその心に優しさが芽生えた。
冒険の地で人の生を終える事となったが、死ぬその瞬間まで、巨大な魔物に一歩も退かず、
逃げる冒険者を背に庇い、凛として戦い続けたと言う。
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透明人間 マンクー・マンクーサ
魔術師の薬の実験体として生まれた少女は、その薬の成功と共に養父から捨てられた。
魔物紛いの生き方をし、好き勝手に生きていた少女は、天罰を受けたか、
冒険地で死に、その身体は誰にも見つからずに朽ちていった。
…ここで、まったく関係の無い話をしよう。
とある町に、元冒険者の、女好きで助平な男が住んでいた。
その隣には、数人の子供に囲まれ、その男と幸せそうに笑いあう女の姿があった。
そう、まったく関係の無い話、であるが。
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剣士 フローライト・エンシュ・エファンス
ある国の貴族の跡取り娘は、大変なお転婆であり、女だてらに剣を振るっていた。
その剣の腕は鋭く、冒険者の町の闘技場でもそれなりに名の知れるほどであった。
数年の冒険生活の間に、美麗であったその顔に、身体に様々な傷を負い、
醜く、生き汚く生き抜くその少女は、その内に、愛する男と、倒すべき敵を得ることになる。
愛する男とは死に別れ、そして、天敵はその腕の中で看取った。
その後、女は国に戻り家督を継ぎ、生涯王を守り続けたと言う。
生涯夫を迎える事も無かったが、『傷顔の螢石』の名はその後、
国の歴史に多く残される事と成る。
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異国の少女 モュク・ラムピリカ
一夜の内に滅ぼされた、ある集落の生き残りの少女は、一人で生き延びていた。
しかし、流れ流れたある国で、ある男と出会う。
泊まる屋根を捜していた男に、少女は父の面影を見、快く寝床を貸した。
それからの日々は、暖かく、楽しい、優しい日々であったと言う。
もう一人の父の誕生日に渡そうと描き続けていた一枚の絵は、
その男の部屋にずっと飾られていたと言う。
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辻斬り 山田 蜥蜴左右衛門
人間の妻を娶る為、そして己の剣を磨き上げる為。
その生は道の途中、ふいに途切れることとなる。
人切りの人外に関する記録は、あまりにも少ない。
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お針子 夕顔 葵
東洋には無い色の目をした少女は苛められて育った。
しかし、それでも歪まず真っ直ぐに性根を貫き通した。
大好きな親友に、恥ずかしい自分じゃ嫌だから。
死する瞬間まで諦めず、真っ直ぐ前を睨んで逝ったと言う。
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薬売り ミドリ・ジュウジ
幼き頃、その身に魔獣を宿した少年が居た。
その少年は自らを鍛え、自らでそれを抑える薬を練り上げ、自らに与えていた。
青年となり、自らの力を試した青年は、しかし、その身に宿した魔獣に食われた。
その魔獣が暴れる中、青年は内からその力を抑えようと気を練り上げ。
しかし、それを為せずして、冒険の地にて果てた。
そのごどこかでまた、ある女性とであったと言う話も聞こえるが、
それは、この世の話ではない。
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剣使い パト・ラッシュ
ある奇術使いの女が居た。
その女は戦を好み、ただただ、強くあれと自分に使命を課した。
酒と煙草と、戦の事を一生の楽しみとして思い続けていた女が、
折れた剣の陣の中で、死ぬ瞬間に思ったのは、
一人の男の優しい笑顔だった。
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教官姉弟 キョウ・カンティエル フェル・カンティエル
「フハハハハ! 女とて、大ムカデの一体や二体一人で倒せるようになれ!」
「ガハハハハ! 私達が捕まえた魔物の数々を、倒してコインを手に入れろ!」
「「ハンター訓練所は、諸君らの挑戦を待っているぞ!!」」
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義賊 カッシェ・タッシェ
その男は、酒を好み、義を立て、喧騒を好んだ。
死してその男の魂は戦の野に迎え入れられ、神々の戦いに身を投じる事となった。
獅子奮迅の働きをした賊上がりの男を仲間が最後に見たのは、
敵陣に取り残された戦友を単身助けに向かう、刺青を刻んだ背中だったと言う。
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蒼と翠の双子 ランク・クラウディ パッセ・クラウディ
酒場で生まれた双子は、酒場にいつも居た
二人はいつも一緒で、一緒に「ただいま」を言うのが毎月の楽しみだった
しかし、姉が先に倒れ、残った弟は何も喋れなくなり
狼男に囲まれた時、最後に 姉の名前を呼んだ
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剣豪神官 アイシャ・プラチナ
その少女は一人だった。 誰にも知られず、ちんけな罪で縛り首が関の山。
そう思っていた彼女が、ある日スリ損ねた一つの財布。
それが、兄を呼び、姉を呼び、家族を呼んだ。
冒険者として、聖女として、彼女の魂は天に昇った。
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死霊 カシィル・ロックフィールド
英雄に憧れ、強さに憧れた少年は、しかし、その光を死の闇に包まれた。
死者に操られた肉体の中で壊れかけていた少年の魂を救ったのは、生前の友。
同じ正義を、熱い想いを持つ同胞に礼を伝え、少年は冒険者として逝った。
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酒場の子 クルルク・ウォーカー
少女は旅人であった。 風の吹くまま、気ままに世界を歩いていた。
そんな少女が長居したのは、ある国の酒場。 賑やかで、乱暴で、暖かい酒場。
からかわれたり、可愛がられたりするその期間は、少女に根をはらせるには充分だった。
かくして酒場の子となった少女は、きっと、今も酒場をうろついていることだろう。
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格闘兎 高浜 千夏
武門の家を継ぐための武者修行から帰った少女は、親に決められた婿を貰った。
子は無かったが、それなりに幸せに生きていた。 しかし、その日々は唐突に終わる。
夫と出かけた海、そこで、村を襲う魔物の噂を聞いた少女は、冒険者として立ち向かった。
勝てる、そう思った時、魔物が捕らえたのは、妻を心配して着いてきた夫。
それを逃がすその隙は、少女の命を取るには充分な隙だった。
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おばけ蜘蛛 アレイスタ・ローズ
冒険者の宿に、一匹の蜘蛛が住み着いていた。 その蜘蛛には、夢があった。
「ああ、人間になりたい そして、あの賑やかな冒険者達と共に生きてみたい」
それを叶えたのは神。 蜘蛛を受け入れたのは子鬼。
小さくて優しい冒険者の父に恥じぬ、冒険者としての最後であったという。
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ごろつき英雄 ユーウェン・クラスト
奪い、殺し、盗む山賊として生まれた男は、ひょんなことから冒険者の道へ
まぁ、遊ぶ金を稼ぎながら、そのうち豚の餌にでもなるだろうと思っていた男は、
しかし、予想を外れて、歴史に名を残す剣の使い手になった。
男の墓は、男の妻によって長く守られていた。
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聖杯を求める者 アイオライト・エファンス
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居合い脱衣の未亡人 タチ・オオウミ
夫に先立たれて失意に流れた女は、
魔物の下着を盗んで、
社会的に死んだ。
…今もどこかで元気に下着を集めているだろう。
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踊り山猫 シュレイン・シェラハレーゼ・アパーチカ
芸人一座の黒猫は、不幸が元で家族と別れ、やがて寂しい一人ぼち。
しかし1人の気弱な男は、孤独な女を救い上げ、
やがて黒猫、愛を知る。
死したか生くか、人は知らぬが、
1人の男の心の中に、永久の輝き残し行く。
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深紅の拳 シュプレンゲン・プルプルファオスト
出来損ないのマムクートの子供は、ただただ、力を求めて冒険者への未知へと足を踏み入れた。
そこで出会った人達は、多くを望めなかった少年に様々な幸せを与えた。
兄弟に頼る安心。 友と語らう楽しさ。 師弟として磨き合う高揚。 そして、人を愛する幸せ。
少年の魂は竜となり、その力は宝石となって愛する人と今もある。
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宿の総括 フィーナル・コクジョクヤド ラスト・コクジョクヤド
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悪魔で執事 コルネーユ・ヒュエット
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囚人騎士 テュージュ・ダルジャン
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西の魔王 ネスラティーナ・ドルム
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六代目の猫 テイルス・ヌーコ
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居合い任侠 日之出 夕暮
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異世界のヤンキー 高橋 薫
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砂漠の傷顔 アラーウッディーン・バースィル
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ここから始まる リスティア・ザウラス
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竜騎士 バルフレア・ベッドストン
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ヤンキー教師 ククルヴィータ・オリジン
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酔いどれ退魔士 愛染院 吉正
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雷操る烏天狗 武蔵国の伊東天狗
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男娼エルフ ソル・デ・メディアノチェ
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吟遊娼婦 ニィニ・ポロン
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冒険者死スベシ 遠野 香澄
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古き吸血鬼 アウグスティン・ベールヴァルド
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星明りの剣 アベレンティーナ・カサンドラ・レッドフィールド
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倒されし砂賊 アラム・ディーン
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冒険者の街の錬金術師 イプキス・コルテナ