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嘗て、一匹の兎の騎士が居た。 彼の者は、既にこの世ならざる者である己の主を、そうとは知らず救う為、唯の野兎の身を半獣の身へと転じ旅に出た。 長きに渡る孤独。長きに渡る苦難。その末に、彼はこの街へと辿り着く。 半獣である己を受け入れてくれたこの街の、何と暖かだった事か……。 取り分け、この街にて彼が身を預けた騎士団は、彼にとって特別な居場所となっていた。 月日は流れ、団での勤めを終えた後、再び主を探す旅路へと戻るが、その結末は、言うまでも無く悲哀に満ち満ちた物であった。 やがて再び団へと復職し、その生涯を閉じるまで、騎士として勤め続ける事となる。 それが、嘗ての話。 彼の兎の騎士が倒れ、在るべき所へと帰ってより、幾星霜。 彼の故郷であるヴァレンシュタイン領、その領主に二人目の男児が誕生する。 名はニコラウス。 何時の頃からか、領内で語られ始めた童話、『ヴァレンシュタインの兎』の登場人物に因んで名付けられた。 ニコラウスはすくすくと成長し、年頃を迎えれば、剣術に精通し、その精進に勤めた。 次男故に家督は継げなかったが、その剣の腕を買われ、若くして衛兵隊の一部隊を任されるまでとなり 領内に跋扈する盗賊山賊相手取り、宛ら件の童謡の如き活躍を見せていた。 さて、そんなある日の事。 衛兵の勤務を終えて、一人帰路につけば、不意に路傍にて意識を失う。 はたと気が付けば、煌々と照らす満月と、月明かりを受けて淡い光漏らす不思議な花々が目に入った。 はて、己の身に何事ぞ合ったのかと、その月明かりの中、己の身を省みた時、彼は異変に気付く事となる。 人で合った筈の己の身が、まるで童話の登場人物の如き、兎の半獣の姿と化している事に。 驚きの余り言葉を失うが、兎にも角にも、一先ず屋敷に戻らねばと、一目散に領家へと舞い戻る。 そこで見たのは、既に晩餐の席に加わっている自分の姿。己以外の何者かが、己に化けている事は明白であった。 その何者かが一人になるのを待てば、剣を突き付け何者ぞと問う。 答えは意外にもあっさりと帰って来た。曰く、過去のお前に因縁ある者の使いだと。 過去の因縁と言われても、さっぱり見当付かぬ。兎も角、姿を戻せと喚き散らすが、衛兵を呼ばれれば、退散せざるを得なかった。 何しろ、この姿のままでは、どちらが侵入者かは火を見るより明らかであったから。 さて、辛くも衛兵から逃れ、秣の中に隠れて、これからどうした物かと思案していた頃。 不意に声をかけられ跳び上がる。剣を手に振り返れば、其処に居たのは衛兵では無く。 今の己と同じ様な背格好で、また同じ様な甲冑を身に着けた兎の半獣の姿。 何者かと問えば、それには答えず、此処より南の黄金伝承の地へと赴き、機が熟すまで其処で凌げと彼に告げた。 どう云うつもりか、そして何者なのかともう一度問おうとした時、その半獣の姿は既に何処にも無く。 彼は虚空を見詰めて途方に暮れるより他無かった。 さて、他に当ても無い彼は、件の半獣の言葉通り、黄金伝承の地へと赴く。 己の姿に化けた者が、何かを企んでいる事は明白。それを早々に阻止せねばならぬという焦りを抱えながら。
・兎の半獣の身に、半身だけの甲冑と剣を帯びた姿 ・身長は子供の背丈 ・嘗ての兎騎士とは違い、人から半獣へと化している ・性格は温厚ではあるが、熱し易く、また若さゆえの青臭い部分も ・幼い頃、気が付けば手中にあった、鳳凰を象った勲章と、兎を象った手作りと思しき勲章を、今も肌身離さず身に付けている ・剣術の他、暇さえあれば横笛も修練しているが、レパートリーは一曲のみ ・その他は追々