昔々、未だ人間が文字すら手に入れずに居た頃。 今や禁術とされ歴史に埋没し消え去ったとある術を、日々生業として行う一族が居た。 一族は術によって日々の食を得、文化を得、国を得、栄華を極め、周囲の民族を圧倒するほどの力を得た。
初めの頃、一族は力に奢ることも溺れることなく、その術を持ってあらゆる生物たちを助けた。 一族の国は術により長く栄え、周囲の部族が国や文化を得たのちも、やはり強い力を保ち続けていた。 だが、ある頃を境に一族はその術を、その力を人としての範疇を超えて使うようになってしまった。 …神の怒りに触れたか、人としての理を超えた因果か…… ある時、術を研究していたとある者が反動を受け、そしてその身体に異変が起きた。 一族が総力を挙げてもその異変の謎を掴むことが出来ない。 一族は皆、今までにない異常に恐れ、危惧し、ほとんどの者が強い術を扱うのをやめ、一部の者は完全に術を封印した。 だが…彼らは既に遅かった。手遅れだった。 異変は爆発的に広がっていく、術の使用を続けた者にもやめた者にも平等に…。 もはや誰もが術を使わなくなり、封印しても異変は流行病の様に広がり続ける。 術を封印する前は国で最も術に優れたある男がいた。まだ無事であった男のところにもやはり異変は訪れた。 男は意を決し、自らの命を持って『最後の術』を使い、異変を…その解決策を求めた。 命を棄てた術を終えたとき、彼は息も絶え絶えに答えを待つ国の長へとこう述べた。 『この一族は…呪われている…世界そのものに…呪われている…』
その時より、彼らは国を棄て、闇に消え、自らの栄枯の歴史を全て葬った。
後に遺された唯一の文献にはこう記される。
彼らの血には魔が混じる。 彼らの血には"ムシ"が混じる。 |
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