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とある世界のとある星、とある陸地のとある山国。そんなところにあるとある集落。 ふらりと訪れた旅人の若者が訊ねました。 「山から聞こえてくる声のような音は何ですか?」 村の人は答えました。 「山には鬼が住んでいてな、やつは何年もかけて生きたまま人を喰らうんじゃ。その悲鳴じゃよ」 旅人は流石に驚いて都に助けを求めないのかと続けて訊きますが、村人は曖昧に首を振ります。 彼が言うにはこの山は地獄の蓋が開いており、小鬼や豚人をはじめとした伝承にも無い物の怪が時折こちらにやってくると言うのです。 しかしこの山の鬼はナワバリ意識が強いのか、それらの物の怪を退治してくれるとか。 「数年に一度一人が生贄になるだけで、この山は他の土地よりもずっと安全で恵みの多い山なんじゃよ」 話を聞いた旅の若者はそれもまた仕方の無い事かと思い旅を続けました。 数年後、旅人が再びこの山を訪れた時、大きな違和感に襲われました。 「今は悲鳴が聞こえていませんね?」 今回も疑問を投げかけると、村人も首をひねっています。 「今年は生贄に選ばれた男とは違う娘っこが一人神隠しにあったけんども、声は聞こえてこねぇんだ」 しかし物の怪退治はしてくれていると言うのです。 二人は山の頂の方を見て首を傾げました。 二つの世界の隙間で 「俺ぁ死体を食うような悪趣味をする気は無くてなぁ」 鎧を着込んだ巨大な人のような形をした生き物がぼやく。 胡坐をかいたその膝には少女が一人横たわっていた。ぴくりとも動かない。 「このまま死なれちゃ困るんだが…ったく無謀な事しやがって」 少女は喋る元気も無いため口は開かないが、その目に非難の色を浮かべた。 それに気付いた巨大な人は額に手を当て、鋭い爪でこめかみをかくとため息をついた。 「しばらくは飯抜きか……腹減ったなぁオイ」