すぐは先生は思いつきで登録された剣術の先生です。仲良くしてあげてくださいね Edit

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 状態/戦歴

  • 外見
    • 和装
    • 濡れた黒髪、白磁の肌、切れ長の眼 いつも穏やかに笑っている
    • 雰囲気で育ちがよさそうに見られるが普通
  • 二本差し
    • 二尺三寸五分の打刀『紅椿』一尺七寸の脇差『小彼岸』
    • それぞれ名にある花の意匠が鍔に彫られている
    • 稽古中はこれらとは異なるごく普通のものを使っている
  • 剣術の教師
    • 個別に稽古つける
    • 弟子募集中
  • 倫理観が一部ぶっこわれ気味
  • 好き
    • お茶・強い人・育て甲斐のある子・殺気
  • 嫌い
    • 脚のいっぱいある虫・弱虫
+  取扱説明

企画/冒険者養成校2期

静かな和室 Edit

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お名前:
  • (幾度訪れたかもう覚えていない和室へやってきて、いつもするように無造作に戸を開けるではなく、姿勢を正してその前に立ち)
    …すぐは殿、乱蔵じゃ。失礼しても宜しいか(声をかける。その背に背負った木刀は以前とは違い色が抜け、常の物へと戻っていて) -- 乱蔵 2012-04-26 (木) 21:55:03
    • 入りなさい(静かに声を返して、入室を促す)
      (部屋の中は常よりもさっぱりとしている。物が少ないのだ)
      -- すぐは 2012-04-26 (木) 22:00:53
      • (す、と丁寧に戸を開けて入室する。履物もきちんと揃えて脱ぎ、部屋へ入りその様子にある種の予感を感じ)
        どうじゃ、その後すぐは殿は大事ないか?ワシはほれ、この通りじゃが(自分の身体をぽんぽんと叩いて壮健を示す。右腕には包帯が巻かれているが、その傷も完治しかけている) -- 乱蔵 2012-04-26 (木) 22:09:40
      • 平気です。それが良いことかは、わかりませんけれど(翳りを浮かべながら、返す)
        でも、乱蔵くんは元気そうで、何より。(そういって、穏やかに笑う。ごく自然に)
        (以前より、表情が様々に、よく変わるようになった)
        -- すぐは 2012-04-26 (木) 22:16:13
      • (大木刀はすぐはの身体にそこまで深い傷を与えなかったのだろう、それもそうだ、あの時切ったのは、また違う物だったのだから)
        かかっ!綺麗に切れた分治りも早いというものよ!(作り物めいたものでない、温かさを感じさせる笑顔にこちらも自然、笑みが溢れる)
        (そして、一拍の時が経つ。部屋の光景を目に写しながら)…すぐは殿は、これからどうするのじゃ?(くるくると変わる表情に安心感を覚えながらも、問い掛ける) -- 乱蔵 2012-04-26 (木) 22:29:14
      • 故郷に帰ります。帰って兄と母に会い、あるがままを話します。……その先は、わかりません。
        (目を伏せる。いっそ剣妖たる自分ごと、命を絶たれようと思っていた)
        (でも、己の妖たる部分は祓われて、今こうして生きている)
        (されど、人を斬り、この身に背負った業は消えず)
        (そうであれば、今後の道を探す必要があった)
        (そのために一度、はじまりに戻る。きっと怒られてしまうだろうけれど、それも含めて、そのために)
        -- すぐは 2012-04-26 (木) 22:41:19
      • そうか…、里へ帰るか(以前聞いた故郷の話を思い出す。剣を教えることを拒んだという彼女の家族のことを)
        じゃが、今のすぐは殿ならその先の道も、迷ったとしてもきっと見つかる、そうワシは思うの(力強く、言う)
        (そう、今の彼女は迷い無くただ愉しみに人を切る、そんな彼女ではなくなったのだろうから)
        ワシも…しばらくしたら里に帰るでな、もしかしたら東国で会うこともあるかもしれんの(からからと笑いつつ) -- 乱蔵 2012-04-26 (木) 22:55:14
      • ありがとう。そうであればと思います(ふわりと笑って礼を返す)
        (その笑みは、柔和で静かだ。翳りこそあれ、混じっていた黒い微粒子が消えて、どこか薄明の空気のよう)
        そう、また会えればよいですね。どうか、健勝であってください
        これから先、生きていれば苦難もありましょう。けれど、乱蔵くんならきっと乗り越えられる
        私を救い、越えたのですから(また笑う。そこに、私の感謝と、師としての信頼を込めて、心から)
        -- すぐは 2012-04-26 (木) 23:16:28
      • (師の言葉に赤毛男が珍しく所在無さ気な笑みを浮かべ、頭をぼりぼりと掻いて)
        いやいや、ワシはただ必死だっただけじゃ、すぐは殿を止められればとの。…越えたなどとてもとても(と苦笑を見せ)
        (だが、こちらの心に溶け込むような笑みを見せられれば、身を正し、す、と両手を畳に揃えて伸ばし、置いて)
        じゃが…ワシは里でやらねばならぬことがある。ずっと、ずっと越えなければならぬ、祓わねばならぬモノがおる。
        今なら…あの学校で過ごし、出会い、そしてすぐは殿の教えを受けた今なら、出来ると、確信出来る。本当にありがとうの。…師よ。
        (そして、揃えた手の平に額をつけるように深い深い礼をする。一呼吸の間、感謝の想いを込めて身を折って)
        …では、またいつか!ワシはすぐは殿の弟子であったことを誇りに思うぞ!(上げた顔は涼風のように。快活な笑みを満面に浮かべて、笑った) -- 乱蔵 2012-04-26 (木) 23:34:07
      • (胸を張りなさいと、いうまでもなかった。強い言葉に、礼に、頷いて)
        礼をいうのは私の方です。乱蔵くんが祓ってくれなければ、どうなっていたことか
        (斬り続けた果てに、いつか斬られて死んでいたろう)
        (人ならぬ、血と剣に憑かれた一匹の妖として)
        本当に、弟子に恵まれました。私も、師として貴方を誇りに思います。
        正道を往きなさい。願わくは、その道の先で、再び交わらんことを
        (巣立つ弟子を送り出す、その笑みは、名の如く、真っ直ぐに凜として)
        (陽光を受け、彼の進む道を優しく暖かく、すうと照らすようだった)
        -- すぐは 2012-04-27 (金) 00:14:38
  • (今年の梅雨明けはやや早く、空は晴れて、月が円く浮かんでいる)
    (夏の気配は色濃く、湿った風の生温い夜であった)
    (窓辺に佇み、空を見る。雲が斑に浮かんでいる)
    (既に帯刀しているのは、そろそろだろうという予感がしたからだ)
    (だから、すぐはは「待っている」。彼を、待ち望んだその時を)
    -- すぐは 2012-04-22 (日) 21:24:09
    • (うだるような暑さではなく、包み込むような温かさでもない、そんな空気の中、緩やかに歩いて男が現れる)
      (背中に背負うは色黒濃く、沈んだ色に染まった大木刀。彼の師がずっと見ていた物よりどこか力強さを感じさせる刃)
      (見事な満月を目に収め、今夜はまたそれを穏やかな心持ちで見れぬことであろうことを確信しながら)
      …今夜は月が綺麗じゃの(空を見つめて一つ、静かに呟いた) -- 乱蔵 2012-04-22 (日) 21:45:01
      • ええ。とても(いつものように、ごく自然に答えを返す)
        (月から弟子へと視線を移し、真っ直ぐに彼を見る。その姿はやはり、期待通りの)
        ゆきましょうか。ここでは手狭ですから
        (幾度となく向けられた笑みで、戦いの場へと誘う)
        -- すぐは 2012-04-22 (日) 21:58:36
      • (いつもの和室、いつもの笑み。しかし視線の裏に感じる押し隠されたものが、いつも通りで無いことを教えてくれる)
        (頷きだけで彼女に返答しながら、すぐはと共に歩む。一足にて刃が届き、しかし弟子が師に失礼がない程の間を保つ。今はまだ、と)
        (これが見ることは最後かもしれない、師の細く小さい背中を見つめながら) -- 乱蔵 2012-04-22 (日) 22:09:30
      • (笑みを浮かべて、静々と歩を進める)
        (長くない道行きを経て、辿り着いたのは、学舎の跡地を望む丘である)
        (満月の煌々と照らす中、振り向くすぐはの背には、一本の椿の木)
        (夏の夜に咲き誇る花弁は白く、月光を照り返してしっとりと、冷ややかに艶めく)
        はじめましょうか、乱蔵くん
        (その貌は艶然としてしかし、幽明の狭間にあるかのように朧である)
        -- すぐは 2012-04-22 (日) 22:26:56
      • (横目で見ればそこはかつて彼の通った跡地、そして彼女が勤めた跡地。熱を持った日々が胸に去来し、過ぎ去っていく)
        (まるで昼間かと思えるように月光が全てを照らす中、美しくも不吉な花弁を背負ってすぐはが立つ)
        (その姿も美しくあり…そして不吉で。無言で、ぞろり、と大木刀を下ろす。彼女に教えられた通りに直した構えでもって、剣先を彼女へ向ける)
        (普段とは違う意味で何の感情も読めぬその表情を、しかと睨みながら、少しづつ間合いを詰めていく。ゆっくりと、時には大胆に) -- 乱蔵 2012-04-22 (日) 22:43:55
      • (己の育て上げた彼を見る。その構え、その歩み。ああ、待ち望んだ時が来た)

        ―――貴方が祓師であるのなら、私を祓ってゆきなさい

        (中天高く浮かぶ月は、初夏だというのに青ざめて、刃のように澄み徹る)
        (その無機質で底冷えのする光を受けて、黒い刀が艶やかに、それを紅に照り返す)
        (『紅椿』が、鞘を離れて天を衝く。狂気の滴る大上段)
        (その妖気にあてられるかのように、椿の花がぼとぼとと落ちる)
        (西洋椿の大ぶりな花弁は、地に落ち土に汚れて、刎ねたる首の朽ちたる髑髏を思わせる)
        (『紅椿』。それはもともと打ち首に用いられたもの。百の首を刎ねて魔性を得て、妖刀と化した)
        (それを持つのは剣鬼である)
        (殺意が広がり、夜闇に溶けて)
        (丘の上、吹き下ろす風が吹いた)

        (突如として飛び込み、間合を殺すは、加速する歩法)
        (一陣の黒い風となって迫る、斬り下ろしの一刀。いつかのように、狙いは拳)
        -- すぐは 2012-04-22 (日) 23:07:57
      • (師の何処か歓喜滲んだその声に、堅く閉じていた弟子の口が開かれる)

        …すぐは殿が抱えてしまった穢れ。秋津の名にかけて引き受けた。

        (意念込めて静かに、強く答える。それは約定、人の身を持ってして妖かしと化した師への誓いの言葉)
        (いつかのように月を貫くように掲げられた闇夜にあってなお暗い漆黒の刃)
        (それはあの時と同じくとてつもない殺気と妖気ともつかぬ尋常でない穢れとなって椿を落とす)
        (人を切るだけであれば、いい。戦において人を殺せば殺すだけその者は功となり英雄となる。それは戦の理)
        (日常においてそれは悪だが、それは場が違うだけ。それだけなのであればその場違いをわざわざ自分が正す必要はない)
        (そう、それは黒眼鏡をかけた鋼鉄の教諭が生きていた場所が少々違うだけだったように)
        (しかし、彼女は違う。彼女があの時見せた何もかもを殺し尽くすような殺気はもはや自分自身をも蝕み切り、妖かしと変わりない)
        (剣を極めたが故か普段は抑えられようとも…、遠くない将来、目に映るもの全てを分かつ真の鬼となろう)
        (ならば、その前に。彼女が人の意思残る内に。祓う。それが自分のするべきことだ)
        (視界の中のすぐはが揺らぐ、初めて会った時であれば直ぐに見失ったであろうその姿も、今では)
        (彼女に教えられた目付けの機微を用いて、一点を見るように、だが全体を見ていた男の意識にしかと有りて)
        (『葵乃形』<御紋>。立てた大木刀をくるりと返して剣先と石突きで円を描くがように。拳を狙っていた刃は柄に弾かれて)
        (半円を描いた先端が軌跡を保って倍する速度で下方斜めからの切り上げとなってすぐはの脇腹を狙い空気を裂く) -- 乱蔵 2012-04-22 (日) 23:41:21
      • (約定に、言葉は返らない。それには、ただ笑みだけが)
        (殺意に狂った歪な笑み。されど、奥底に僅か一瞬、覗いたのは信頼か)
        (剣戟が始まれば、それは既に消え失せて、表情は殺意と喜びに塗り潰される)
        翻颯
        (弾かれた刀は、瞬時に引き戻されて、同じ軌道の切り上げが相打つ)
        (一瞬の鍔迫り、即座に弾けて後方へ跳んだ)
        (開いた間合。僅かに滴る脇腹の血を、指で掬って舐め味わう)
        (狂気に濡れた視線を向けて、構えは再び上段へ)
        (月下に生温い風が戦いでいる。殺意は風に散らず、視線に乗って纏い付く)
        -- すぐは 2012-04-23 (月) 00:08:05
      • (噛み合った漆黒の刃と己が手に持つ常より鈍黒い刃が金属音を立てて、弾かれる)
        (後の先を取るその業も、瞬きの間を持ってして翻る刃に食い止められて)
        (しかし、届く。彼女の教えは、自分の業は彼女に届きうる。裂かれた脇をその証として一歩を踏み込み)
        (踏み込みの勢いを利用しながら身を捩り、それをまた開放し、螺旋の乗った突きを繰り出す)
        (『薊乃形』<荊棘>。しかしその突きは後ろ手に持った左手のみにて放たれて)
        (当たろうと避けられようと身を押し込み、続く右腕が本命の一撃。鋭い棘とならんと手刀が間をおかず繰り出される) -- 乱蔵 2012-04-23 (月) 00:29:16
      • (大木刀による突きを、直前まで棒立ちに、しかし紙一重にて回避する)
        (己の姿を、揺らぐ陽炎の如く錯覚させる体技であった)
        (続く詐術の右の手刀を迷いなく、一歩進みつ、右手を鎬に添えて受ける)
        (眼前で拝み受けにした刀をそのまま擦り込んで、添え手突きにて水月を狙う)
        (添えられたその手は手刀である。例え刀が止められようと、勢いのままに突き込まれる)
        (手刀の技に、手刀で返す。諧謔味すら感じさせる技選びは、やはり愉しんでいるのだろう)
        (嬉々として笑って、その殺意は剣を合わせる度に強まってゆく)
        -- すぐは 2012-04-23 (月) 00:51:55
      • (彼女の姿が霞む、脱力から緊張へ一瞬で移行したその光景は幻に向かって突き込んだかのよう)
        (その速さそのものではなく、力の流れの流麗さに舌を巻く。つまりは、狙いの手刀も)
        (いとも容易く防がれる。先の突きでまったく姿勢が崩れていない証拠だ)
        (合わせて襲い来る刀と手刀、その選択にほんの僅か迷うも…片腕で引き戻し切れていない大木刀の柄を右手で掴み直し)
        (強引に柄を寄せて刃を受ける。ぎり、と鳴る黒刃。そして残る手刀は身を捩りつつむしろ、前へ)
        (速度が乗り切る前の手刀が水月から逸れた脇腹を掠める、それにして着物を切り裂き、脇を裂いて血を散らして)
        (そのまま脇を通り過ぎるように駆け抜け、すぐさま反転し振り向かんとする) -- 乱蔵 2012-04-23 (月) 01:17:01
      • (右手に浅く、肉を抉る感触。血の温かさが指先に残る)
        (くは、と思わず、笑声じみた呼気を漏らした)
        (凌がれたことも愉しいが、それ以上に、飛び散った血液に心が躍った)
        (交錯し、擦れ違って、対手は後方にある)
        (居合にある、背後の敵に応ずる技法、その足捌きは)
        (位置も重心も変化させずに、その場での反転を可能にする)
        (鏡映しに裏返りながら、構えは三度上段となる)
        (血潮に狂気を掻き立てられて、おぞましい殺気が急激に膨れ上がった)
        (物質感すら備えた殺意が場に満ちる中、黒々と響くはあの唱え)
        刃名と刃金を以て、世に遍く万物を絶つ
        (殺気が塗り変わり、剣質が変貌する)
        (これより先、放たれる剣閃は悉く、彼の魔剣―――遍絶と同質である)
        疾雷
        (その剣閃は黒い閃光の如く、踏み込みと共に、袈裟懸けに振り下ろされる)
        (『應雷』の剣、その崩し。速きものに応じるための迅き剣にて先の先を取り、迅速に敵を殺さんとする)
        -- すぐは 2012-04-23 (月) 01:43:08
      • (反転し、構えを戻す間に既にすぐはがその面を見せている。手品のように表裏が入れ替わったその表情は愉悦に濡れ)
        (刃がまたもや天を突く。ぬるりと喉を刃物で撫でられるような煮詰められた殺意が空間を塗り替える)
        (逢魔が時が訪れる、そこに有るのは、既に人ではなく)
        (もはや人が放つものではなくなったその妖気に、がり、と歯を噛み締める。これが、祓うべき者だと)
        (直刃の唱えに一本の妖刀と化した女を目を細め、射抜くようにその相貌を見やり)
        (精神を研ぎ澄まし落としていく。彼女の全てを見、彼女の全てを読む)
        (自らを包む殺気の渦さえ、彼女に繋がっている。死線に立った己にはそれが分かる)
        (肌を舐める死の風が、ほんの少し強まった)
        (時を引き伸ばしたような感覚の中、僅か、六徳の時がその時だと伝え来て)
        (『薄乃形』<雷鳴>。師の教えを持って至った音を置き去りにする神速の撃ち込みが、黒き雷と虚空にて激突せんと)
        (赤黒い木製の刃は、するり抜けたかつての禍々しき刃と、しかし、噛み合いて弾かれる)
        (だが魔性の絶技にその刃欠け、逸らされた妖刃は右手をかすめ、血の華をまた咲かせた)
        (血滴が幾つか木刀へと降り落ち、静かに染みこんでいく)
        (血は穢れ、忌むべき物。だが神木と秋津の者に関してだけはその理が入れ替わる)
        (御神木にとって秋津は共にある者、そして秋津にとっても御神木は共にある物。しかしてその血肉は力となる)
        (続けざまに横薙ぎに振るれる大木刀の刃。欠けたその箇所は蠢くように、盛り上がるように再生を初めていた) -- 乱蔵 2012-04-23 (月) 02:26:09
      • (千代に一たる妖刀も、彼女にとってはよく斬れるだけの刃に過ぎない)
        (何故なら、剣の魔性にあてられるまでもなく、既に彼女は狂っているから)
        (肉体それ自体は人であっても、ただその心根によって妖であった)
        (祓師たる乱蔵の前で、その妖性の全てを晒してけらけらと笑う)
        (そうして、神速の太刀が中空に合わさって)
        (紅椿がその名の如くに、返り血を浴びてぬらりと光る)
        (それは、血の悦びに身悶えするかのような、鮮やかな紅であった)
        (血を己が生命に変えるかの大木刀とは対照に、妖刀は対手の生命を欲して禍々しく)
        (狂ったすぐはと想いを重ねて、万物を絶つ魔剣を顕現させる)
        迦陵頻伽
        (ひゅんと高い音を立てながら、横薙ぎの一閃を紙一重の跳躍で躱し)
        (落ち来る勢いの乗る、澄んだ樋音を伴った一撃が月光を翳らせて舞う)
        (風を切る二つの音は、浄土に響く妙音鳥の鳴声の如く)
        (されど、すぐはの奏でるそれは矢張り不吉で、あるいは姑獲鳥の啼く声か)
        -- すぐは 2012-04-24 (火) 00:15:01
      • (楽しそうに、愉しそうに、狂しそうに。師は…いや直刃は笑う。命切り裂く喜びに満ち満ちて)
        (かつて彼が狩ったどの物の怪よりも生きる者を害する念に満ちた笑い声に眉を顰め)
        (止めねばならない、この狂気をここで終わらせねばならない。そんな想いに狩られる)
        (彼女の教えは…その為にあったのだ)
        (空を切った大木刀にも心は平静に、焦りを覚えず。目で見る、耳で聞く、肌に感ずる。いつか聞いた教えに忠実に)
        (感覚を総動員して彼女の動きを読み、身を引くが…三度、紅き花弁が散る)
        (恐るべきは剣妖の業。痛みを堪え、身を縮み上がらせるような音に心胆強く持ち気合を入れて)
        (剛力招来。めきり、と赤毛男の体躯が一回りも大きくなったように…いや、実際上半身が一回りほども膨れ上がり)
        (全身の筋肉を膨張させ内側から着物を押し上げた肉の肌に血筋浮き上がり、切られた身体からの出血が一層強くなる)
        (『櫻乃形』<七分咲>。緩急付いた太刀振るいが七本の幻の刃纏いて広がるように唐竹割りにて襲い来る。それは舞い来る桜のように)
          -接技-
        (『櫻乃形』<華満開>。そして振り切った刃を持つ腕が、更なる起こりを見せる。間を置かず切り上げて繰り出されるは)
        (剛力を持って繰り出される幻を伴わぬ真なる一の刃。受ければ幾重もの爆発的な衝撃の華散らす、豪の一刀) -- 乱蔵 2012-04-24 (火) 00:40:21
      • (紅い、熱い、血潮が舞う)
        (嗚呼、嗚呼、愉しい、とても愉しい)
        (すぐはの愉悦は臨界を知らず、底抜けに狂喜して剣戟が加熱する)
        桜花
        (桜の技には桜の技を。七本の幻その全てに、七つの剣閃を合わせ弾くは瞬きの間に)
        (重ねられる度加速する剣閃もまた、その迅きの限界を知らず)
        八重桜
        (翻る剛なる一刀、咲き誇る衝撃には、更なる無数の剣閃を合わせ、その暴威を削ぐ、削ぐ、削ぐ)
        (桜吹雪の代わりに舞い散るのは、大木刀の削れた屑である)
        (ついにはそれを凌ぎきり、再びの交錯を経て、始めの如くに位置が入れ替わる)
        (落椿を背に、動きを止める。恐らく、止まるはお互いに)
        (諸技を重ねど、決着は着かず)
        (加熱する狂気を秘めて、冷めざめとした月天を仰ぐ)
        (場を満たすのは、大禍の前の不気味な静寂)
        (次の業にて最期(おわり)を齎す。必殺たる奥義を以て生命を絶つ)
        (その意を伝えるのは言葉でも笑みでもなく、ただ彼女の内で禍々しく膨れ上がる殺意、その気配であった)
        -- すぐは 2012-04-24 (火) 01:18:40
      • (無数の黒き桜が月下に舞い咲く。その花弁は赤黒く舞い散りて渦を巻き)
        (もはや幾合打ち合ったかも分からぬお互いの刃の音が死地を彩る調べとなりて奏でられ)
        (その狂曲が終わった時、二人が居たのは丘に臨んだそのままで)
        (目が眩み、意識が微かに遠のくのが分かる。痛みではない、恐らくは血を失い過ぎている)
        (場を満たす濃厚な邪気に歯を食いしばり意識を張り直す、まだだ、秋津の祓師として彼女を止めなければならない)
        (一つ息を吸い調息し、意を決め、大木刀から右手を離し、振る。切られた傷から流れる血は自然、手を濡らし)
        (幾多の剣閃に傷ついた大木刀を自らの前に横たえて持ち、そこに右手を添え僅かに頭を下げる)
        (それは祈りの形。己が持つ大木刀に捧げる、祈念の形)
        る───
        (朗々と響く力ある言葉が、空気を揺らす。それは言霊、畏れ多き神への祈りの言葉)
        れのまりす けまくも禍布都神に みもさく
        (故郷の神木の分御霊である、彼の奉る神へ願う切なる願い)
        御霧 御霧を 朝風夕風
        (師を救うためにと、人であって人でなくなった彼女を鎮めんと)
        彼方繁木を 焼鎌利鎌 
        (強く響きながらも、ささやくように、歌うように独特の抑揚を持って唱える)
         らじをと を 聞食せと
        (ありとあらゆる穢れを切り払う力を求め敬虔なる祈りを捧げ)
        荒振神をば 神掃へにへと みもす───
        (自らの血に濡れた右掌を根本から先端へと刀身をなぞり、滑らせるように曳いた)
        (大木刀が僅か、脈動したかのように震える。秋津の血に濡れた刀身が震えと共にそれを吸い)
        (樹脈が鮮血の色そのままに浮き出る。赤黒く染まった大木刀の表面に紅く、朱く)

        ───その威、示し給え『大祓乃太刀』。

        (言霊が終わる。捧げた祝詞に、血に答え、彼の神はその威を示す)
        (内側から染み出すが如く仄かに白く光輝く大木刀。黒から白へ、裏返るように色を変じる刀身)
        (中でも樹脈は強く輝き、光の線が表面に引かれたように煌めき。神なる刃を携えて、男は禍つ剣妖へと立ち向かう) -- 乱蔵 2012-04-24 (火) 01:45:32
      • (朗々と響く祝詞、清廉に清浄に輝く大木刀)
        (散り敷いた椿が白く照らされる。それは骸だ。これまで斬ってきた者達の無残な骸)
        (刎ねた首共が骨と化しても、尚新しい血を受け続け、昂然と黒紅に輝く魔剣一振り)
        (それと心を一にして、剣妖は艶やかに笑う。己を、対手を、世界を嗤う)
        (黒刀を携えた妖と、白刀を構えた祓師が、月下に照らされ対峙する)

        (刹那、怒濤のように黒々と、白い清浄を喰い荒らすかのように、場を責め満たすのは殺意である)
        (これまで放ったいずれのそれより深淵で、殺意を煮詰めて凝らせたかに密であるそれ)
        (月無き夜の海底の如き漆黒が、白も黒も月光も塗り潰す)
        (対手を殺意の大海に飲込んで、その五感を奪い去る)
        (斯くの如く、暗黒の内に攻撃の出を悟らせぬ、歪な無拍子が顕現する)

        海柘榴(つばき)

        (海柘榴とは、柘榴と似た紅い花を海辺に咲かすに由来する、椿の異表記)
        (それに擬え、名付けられたこの剣は)
        (殺意の海に沈め盲と為した対手の首を音もなく)
        (椿が如くに刎ね落し、その血で柘榴に染め上げる、横一文字の首刈りの剣)
        (その仕儀は、斬首刀たる紅椿に染みついて)
        (放たれるは黒き一閃、呼吸するより鮮やかに)

        (されど、最期の瞬間になって)
        (血に狂った悦びのむこうから、静かな青い哀しみが流れ出す)
        (直羽は、直刃。歪な生まれの子であれど、真っ直ぐに清らかに生きよと、願いを込めて母のくれた名だ)
        (母の想いを無碍にして、歪んでしまった我が身を厭うように)
        (いっそ命ごと擲つような横一文字が、乱蔵の首目掛けて哀切に奔る)
        -- すぐは 2012-04-24 (火) 02:24:11
      • (直刃へと白刃を構えて間を詰める赤毛男、だが総身傷つき、幾度も漆黒の刃を通した身体は血を流し過ぎている)
        (ひたひたと、死の影が自らへと迫っているのが分かる。それはあの時知った、死線の狭間)
        (師に引き上げられ、極限の際で辿り着いた生と死が同居した瞬間)
        (だがそれを、嘲笑うかのように光届かぬ深海の如く殺す意思が周囲を埋め尽くす)
        (もはやそれは異界とも呼んで過言ではない穢れに沈んだ領域)
        (見えているはずなのに、見えない、聞こえているはずなのに、聞こえない)
        (気を緩めれば発狂しそうな真の暗闇に落ち込み、凍てつく身を震わせようとした時)
        (右腕の腕輪だけが僅か、暖かな生を感じさせて)
        (少女の微笑みが浮かぶ)
        (血を失ったからの混濁ではない、奇妙な感覚によって意識が徐々に揺れていく)
        (ぶれながらも研ぎ澄まされるような不思議な感覚)
        (身を寄せた少女の温もりが胸に蘇る)
        (心が澄んでいく。限りなく透明に近づいていく心身。全てと自分との境目が無くなっていき)
        (初夏の生温い空気、剣妖が創りだした異界、そんなものさえ自分と同一に融け合い、混ざり合い)
        (至る。無我の境地へと)
        (神宿る刀さえその域では世界に溶け存在を掻き消し、身、刃、意、全てを穏やかな風として異界の中に有る)
        (そよ風が吹いたとて人はそれを払おうか、虚空がもし動いたとして人はそれを認識しようか)
        (だが異界と融け合うは直刃も同じ、五感にあらぬ感覚にてその姿探るもたどり着けぬ)

        (刹那、闇の中の篝火のように黒塗られた世界に青い光を感じて)
        (白刃を袈裟懸けに振り下ろす。穢れ祓うべきはそれだと。祓うべき悲しみはそれだと)
        (打つべき意識、倒すべき意思、殺すべき意思、そんなあらゆる意思が微塵にも存在しない)
        (しかし救うべき意思だけは湛える、そんな矛盾さえ一つとして無拍子の一刀が放たれる)
        (無為自然のまま、そう、あるべきように)
        (清め祓う神威纒った刃が、歪み狂った真黒の刃と交錯し───) -- 乱蔵 2012-04-24 (火) 03:05:13
      • (すぐはの兄が使う無拍子の剣は、名を沙羅双樹という)

        (白く咲くその姿が、沙羅双樹に似るが故に)
        (夏に咲く椿は、沙羅の樹とも呼ばれる)

        (けれどもそれは真物ではなく、沙羅双樹ではあり得ない)
        (すぐはの海柘榴(つばき)は、真の無拍子ではあり得ない)

        (兄の遣う清廉な剣に憧れて、求めても)
        (狂ってしまったこの身では、歪んでしまった心では)
        (その写しは、似ても似つかぬものにしかならなかった)

        (一方、あるがままの世界と調和し和合する剣)
        (他方、己が殺意で世界を染め上げ侵食する剣)

        (彼の沙羅双樹と同質の、魔を祓うについてはより清廉な、真の無拍子の前では)
        (傲岸な、贋物の無拍子は、傷一つ付けるも能わなかった)

        (殺気が晴れて、舞い散るのは、祓われ砕けた紅椿、すぐはの血、そして涙)
        (彼女は、哀しみに満ちて泣いていた)
        (そうして、己の血を掬って月光に照らし、その紅を双眸に映すと)
        (満足げに、初めて見せる、真に心からの笑みを浮かべる)
        (そして、呟く)
        ありがとう
        (その一言を最後に、崩れ落ちる)
        (血によって白と紅が斑となった、散り敷いた椿の上に)

        (己が弟子が正道を歩み、剣妖たる己を打ち破る。それは、禊)
        (歪みを抱えた己でも、人を正しく導くことは出来たのだと)
        (もはや妖ではなくなった女の、涙に濡れたその笑みはとてもとても穏やかだった)
        -- すぐは 2012-04-24 (火) 21:58:12
      • (月が、ゆるゆると月光を注ぎ落としている)
        (穢は祓われ、天上に有る月は何もかもを包み込むように冷たく、温かい光で照らしている)
        (その中にあって輝きを湛えていた大木刀が音も立てずに色を失っていく)
        (禍布都神は還られたのだ。もう、その役目は充分に果たしたと)

        (身を折る直刃の…師の細い華奢な身体。優美なる白磁のその肌は、常よりもなお白く、白く)
        (小袖汚す血の朱のなんと映えることか。舞う妖刃の欠片のなんと不吉なことか)
        (何よりも、月光の光浴び哀しげに輝く涙の…切なきことか)

        (思わず伸ばした手が、微笑みによって僅か止まる)
        礼など…、礼など…!(今まで一度たりとも見たことのない、本当に穏やかな満ち足りた笑顔に胸が震える)
        (止めたかったのだ、だが止まれなかった。どれほど、作り物の笑の仮面の裏で、邪気狂い咲いた殺気の奥で苦しんだのだろう)
        (想像を絶する悲しみと、それが払われたが故の笑み。思わず、拳を握り締め)

        (駆け寄る。師の元へ。起こしたその身は初夏の空気の中で温かさを失いつつありて)
        (眠るように穏やかなその笑みを見つめながら彼女を優しく両手に抱え上げる) -- 乱蔵 2012-04-24 (火) 22:50:10
      • (妖気が去れば、その身は驚くほどに小さく儚い)
        (ひゅうひゅうとか細い呼吸、声は幽かに澄み通る)
        よいのです。立派に、育ちましたね
        (震える手、細く白い指で、乱蔵の頬を淡く撫でて嬉しげに)
        貴方は、正しき道を往きなさい
        鳳釵さんを、大事にして……守るべきものを、失わないように……
        (添えられた手が、力を失ってはたりと落ちる)
        (笑みに細められた目は閉じられて)
        (その貌は青白く、死に顔のように穏やかであった)
        (しかし、薄く静かに呼吸は保たれて)

        (見れば、椿の白の中に、朧な白が混じっている。柔らかに月光を散らし光る白)
        (脇差、『小彼岸』。兄が秘かに託したそれは護刀)
        (抜かせたのは彼の想いか、禍祓いの一撃を受けて砕け散り、すぐはの命だけは繋ぎ止めた)
        (生ある限り禊を続けよとでもいうかのように)

        (満月の煌々と照らす中、初夏の風が一陣、涼やかに)
        (白と紅、斑に染まった椿の花弁を吹き散らしていった)
        -- すぐは 2012-04-24 (火) 23:37:41
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Last-modified: 2012-04-27 Fri 00:27:12 JST (4813d)