この街で過ごした時期 | 生まれいずる日より | その頃どんな子だったか | 生来、厠へも鉄の兜は肌身離さず。騎士風の態度は育ての親が死亡してからの事。 | その他知っておいて欲しい事一つか二つ | 素顔は親も知りません |
ひとりぐらし †
設定 †
- 身長148cm体重56kg(鉄兜も含む)
- ああああ・ヴィルヘルムは普通の女の子であり、幼馴染である。
- 出生届の名前は都合により変更する事ができませんでした。
- お役所を呪っている
- 親はある国の上級騎士であったが、戦争で失っている。兜はその形見の一つである。
- 言葉遣いがえらそう
- 騎士を目指してるらしい
- 声はこもって聞こえるだろうが、とてもぷりてぃそのもの。
- 育ての親が街で鍛冶屋を営んでいた経歴もあり、その技術は子供にも多少は引き継がれている。
- 趣味は甲冑収集で、骨董品には目がないとかで家には様々な歴戦の騎士の兜などの装備が飾られている。
- 彼女の兜の下について、色々な噂が飛び交うがどれも支離滅裂な話であることが多い
- 小さい頃はお転婆さが目立っていた
- お風呂に入る時も兜は外さない
○戦闘
- 戦闘スタイルは上級騎士である父直伝のものだが、軽量級である彼女には扱いきれていない。
- なので平凡な戦闘しか出来ないのが現状。あくまでも人間の範疇である。
- 『混沌』に人間としての『顔』を食われている。
- 『顔』は個人を確立させる概念全般を示し、認識そのものである。実際には顔が存在しているが、他人には認識する事が出来ない。
- 『顔』を見続けると、彼女そのものを認識することが出来なくなる。記憶そのものにある『顔』までも食われてしまう。
- 彼女も忘れられるのを恐れるが故に、兜の中を覗き込まれることを嫌う。
- だが認識されたいと言う葛藤も有る。兜を被り続ける理由はそれを顔にするためでもあるのだろう
- ナナメからピントが合わないよう彼女を認識せずに捉えるのであれば、顔も普通に見ることは出来る模様。
- 育ての親も数年前に彼女を彼女として認識することが出来なくなっている
とある騎士の昔話 †
戦場の中に生まれた命があった。
その赤ん坊は瓦礫の中で息をしない母に、兜の中で護られる様に抱かれていた。
戦場音楽に似つかわしくない無邪気な声に引き寄せられ、その赤子を取り上げたのは騎士ヴィルヘルム。
この戦争の侵略者であり、勝者、指揮官。この赤子の父をも剣に掛けた男。
赤子は戦の最中に生まれた、男は戦争への罪の意識、そして重責を感じ、赤子をマントに包め国に持ち帰った。
不思議な事に、赤子は一切の泣き声を上げることはなく、ただ無邪気な声ばかりを男に聞かせた。
「この子は……一体どうしたと言うのだ」
ヴィルヘルムに抱かれ、彼の家でマントから姿を露わにした赤子の顔は存在を失っていた。
いや、確かに顔は実在する。言葉にならぬ声もあり、触れば生まれたばかりの柔らかい肌が有った。
妻は言葉も無く夫を見つめ、ヴィルヘルムはこの子供は果たして人間であるのかと逡巡した。
自らが殺した男の子供、絶命し最後の遺言により確かに託された悲劇の顛末。
男は迷い、国で随一の魔女に赤子を見せた。
魔女は言う。
「この赤子は食われてしまったのかもしれぬ。混沌に存在の本質を食われたのだ。
誰もこの子の本当の姿を見る事は出来ないだろう。この存在の無い顔を見続ければ見る者もまた、空虚に取り殺されてしまうよ……」
「何か、術はないのですか」
「一生、顔を隠してひっそりと闇に生きるのだね。それが運命、定めよの」
しかし騎士ヴィルヘルムは赤子を立派に育てる事を誓った。
これは神の与えた自らへの試練なのかもしれぬ、と。ヴィルヘルムは騎士を辞め、国を出てとある街に帰郷する。
それから彼と妻は赤子に名前を付けようとした。
赤子は女の子らしく、華やかな名前がよいか、それとも運命に打ち克つ勇ましい戦士の名がよいか。
だが、困った事が起こる。彼女の名前をこうと決めて、いざ文字にしようとすればそれが名前にならないのだ。
ペンを走らせる手は勝手に動き、名を「ああああ」と意味をなさない文字列を作る。ならば、と人に頼み名を書いて貰っても同じ様になる。
名前は必ず存在しなくてはならないというのに。それは個人を認識するものなのだから、誰しにも必ず必要なものだ。
『あ、あ、あ、あ』
それは赤子が最初に口にした言葉だった。そして誰かが彼女を認識した最初の言葉。
彼女の存在はそれが誰のモノであっても常に食われ続けているのだ。誰も彼女を認識し捉える事のないように━━
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