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止め処無く押し寄せる帝国の小鬼と、それを押し止める人類軍の兵士達。
屍山血河の戦場で、闘争は昼夜の別なく続いている……

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企画/小鬼戦争
黄金歴
435年7月(西暦 2019-08-23)

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  • 戦場 -- 2019-07-02 (火) 23:30:20
    • グロム王国近海 -- 2019-07-04 (木) 21:43:45
      • 「嵐は完全に通り過ぎたようですな」
        艦長は軍帽を脱いで額の汗を拭う。朝から続いていた強風と豪雨は完全に鳴りを潜め、嵐の残滓が厚い雲と霧のような小雨となって視界を塞いでいる。
        嵐の中、密かに出港した御召艦『ゴブリニア』は大きな損傷もなく航行を続けている。艦長の言葉に「うむ」と小さく頷いた現第1皇子ゴブ=ライアスはちらと傍らに付き従う近衛隊長を見る。
        航海の目的地はグロム王国の港町サヴェーダ。前線にほど近い場所にある。 -- 2019-07-04 (木) 21:44:12
      • 「私は、人間たちと和平を結ぼうと思う」
        行動に移す時が来た。皇子はその決意とともに近衛隊長ドランに告げる。周りには他の誰もいないにもかかわらず、慌てた様子で「しっ!滅多なことを口にされるな!」とドランが周囲を伺う。
        「大丈夫だドラン、ここには我々だけだ」「しかし、要塞内には多数のゴブリンが詰めています。………本気ですか?」
        決意に満ちた皇子の目にゴクリと生唾を飲みこむ。
        「しかし、陛下のお許しもなく勝手にそのようなことを……」
        ドランの反応は何度も考えたとおりだった。ゴブ=ライアスはなんと答えるかも決めている。
        「人間たちの抵抗は我らの予想を遥かに超え、もたらした被害もあまりに多い。マガフ将軍も戦死してしまった。このまま戦を続けることはゴブリンに破滅的な未来を及ぼしかねない」
        ぎゅっとドランの唇が引き結ばれる。マガフ将軍は今は改革により冷遇されていたとはいえ、ゴブリン一の勇者と誉れ高い武神でありドランの剣の師匠であった。
        ドランより剣を習ったゴブ=ライアスは孫弟子に当たる。
        「和平がなれば第3軍のバルド将軍、5軍のゾラーグ将軍、8軍のグラーガン将軍が私に呼応してくれることになっている。12軍のガグリ将軍はバルド将軍の弟だ。兵たちの間にももはや人間は襲って奪う対象ではなく強力な敵であり、故郷に帰りたいという思いが広がっている。勝算は十分にある」
        ドランは瞳を閉じ、熟考する。ゴブ=ライアスは静かに、じっとドランの答えを待つ。
        「わかりました……。近衛師団の中から選りすぐりの信頼できるものを集めましょう。」
        皇子は昔からこうと決めたら引かないところがあった。自分の仕事は最後まで皇子をお守りすることだ。
        「ゴブリニアの出港準備をします。演習ということにしておきましょう。予報官の話では週末に嵐になると聞いています。嵐に紛れて出港し、そのまま人間たちの港町を目指しましょう。そうですね……奴らがサヴェーダと呼んでいる港がいいでしょう。あの周辺の海域については調査済みです。ゴブリニアでも十分入港できるでしょう。」
        「感謝する。」短く礼の言葉を述べ、皇子は何事もなかったかのように軽い挨拶とともにドランとすれ違うように背を向けた。 -- 2019-07-04 (木) 21:45:22
      • 「うまくいきます、皇子。全てはゴブリンの未来のためです。」
        「ああ……」
        深い罪悪感とともに、ゴブ=ライアスは目をそらした。
        「すまない……」
        「殿下のお考えには私も賛同しています。お気を煩わせることはありません」
        もう一度、ゴブ=ライアスは心中でドランに謝罪した。
        自分が人間たちと和平を決心したのは、ゴブリンのため以上の誰にも言っていない理由があった。
        時折報告書に現れる人間の女戦士。
        いつも一人で現れ、剣と盾を以てゴブリンの最精鋭たちを全滅し、我々に致命的な打撃を与える者。
        心のうちに秘めたる思い。
        ゴブ=ライアスは彼女に恋をしていた。
        どんな顔をしているのだろう?髪は薄い赤毛だと聞いている。
        何度も何度も彼女との出会いを夢想していた。
        和平が成立すれば、彼女に出会うことはできるだろうか?豪奢な軍服の下の胸は高鳴る。
        「報告、なにかが上空を飛んでいます……」「何かではわからん!」「しかし、この天気で視界が……」
        嵐が通過し、落ち着いた空気に包まれていた艦橋がやにわに慌ただしくなる。
        「あ……あれは!」
        直後、耳をつんざく破裂音とともにゴブリニアに雷が落ちる。
        同時に艦橋が大きく傾斜していく。
        「あれ……?そんな……」
        必死に手すりにつかまりながら監視員が言葉を失う。ゴブリニアの後部1/3が存在しない。
        落雷した場所から2つに割れ、後部はバラバラに第1艦橋を有する前部はゆっくりと直立しようとしている。
        「皇子、手を…皇子!」
        床を滑り落ちていくゴブ=ライアスにドランが手を伸ばす。
        「ゴブリニアにはられた障壁は砲弾ですら跳ね返すんだぞ……落雷ごときで……」
        皇子の手を掴み、引き上げて手すりに捕まらせる。
        「くそっ……こんなところで死ぬわけにはい」
        壁の救命胴衣に手を伸ばした皇子を、窓から投げ飛ばされていく乗組員たちを、悲鳴に包まれた艦橋を、塔のように直立したゴブリニアを直下から伸びる光が貫く。
        次の瞬間にはもう、この海域にゴブリンは存在しなくなっていた。 -- 2019-07-04 (木) 21:45:38

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Last-modified: 2019-06-13 Thu 21:09:33 JST (70d)