名簿/512845
- (本のある場所に迷いこみ、後からその城の主を知る。他の都市にいたときにも互いに散々繰り返してきたことだ)
おや教授、これは珍しい。どうしてこんなところに?…ダメだよ、僕が先に見つけたんだから。げらう。(出口を指さす不法侵入者) -- アマネ
- ふむ。(ゲットアウトと言われ指さされた出口を見つつ、男は顎をさする。)
確かに君がここを見つけたのならば、ここは君の本の城だ。私は泣く泣くこの場を去るほかないだろう。 しかしねアマネ君。ここが私の城であったならばどうだろう。 (摩天楼のように並び立つ本棚。まるで空間が歪んでいるかのように果てが見えない。) 残念ながら、ここは私の私設図書館でね。《アレキサンドリヤ》という不遜な名を冠した私の本の城だよ。 この城から零れ落ちた欠片の一つくらいならば、貸してあげてもいいがね? -- アルラート
- 僕に言わせれば、城は陥とされるためにあるものだ。どんなに優れた名城だって目まぐるしく主が変わる。
ある意味では避けがたい宿命だ。歴史の必然というべきかな。城は築かれたその時から、遅かれ早かれ陥ちる定めにあるわけだ。 そして、トロイの木馬はここにいる。まんまと入りおおせてしまったんだよ。その意味をよく考えてみるといい…。 (適当に穏やかならぬ相槌を打ちながら物色をはじめる)『アル・ムターシム』を読んだことは? 博覧強記なる東方の博士、もとい弁護士ミール・バハドゥール・アリの作品だ。高貴なる魂の探求。聖人の影を追う物語だ。 -- アマネ
- 成程、確かにそうだ。いずれ全てのものは移り変わり消滅する。仏陀もそういっているね。
私のバベルが君という天から使わされた雷によってバラバラにされてしまうのだろうかね。いやいや、あのバベルがあったからこそ、今このように数多の書物が生まれているともいえる。 随分と小さなトロイの木馬だ。だが、その力たるや放っておけば、本当に私の城は君に則られてしまうだろうな。気をつけねばね。 だが、さすがの君もこの本の摩天楼、洪水の中では溺れてしまうかもしれぬな。なにせ、我が図書館には地球外のものも……。 (そう言葉を続けつつ、物色するアマネの後に続く。) 『アル・ムターシム』? ああ、ボルヘスが言っていた本か。確かに読んだはずだが、今どこにあるかは覚えていないね。高貴なる魂の探求、聖人の影を追う物語……私のような人間にはとても似つかわしくないものだな。 私はただ本を集めるだけの男。自ら何かを追い、生産することはとても難しいことだ。 いずれは、この世界、宇宙の全ての本を取り揃えて、一つの作品としてまとめたいと考えているが……。 -- アルラート
- 『アル・ムターシム』は偽書かもしれない。世の中で知られてる本は後からでっち上げられたものだ。という説がある。
そもそもそんな本自体、はじめから存在しなかったのだと…あれはボルヘスお得意の、お決まりの手品だとまことしやかに囁かれてもいる。 かくしてアル・ムターシムは単なる本以上の存在になる。その名を誰もが知ってるけれど、実物を見たという者はどこにもいない。 教授。君の読んだものが真正なる『アル・ムターシム』かどうか、客観的な事実としてたしかめる術はない。 でも、このバベルの図書館のどこかにあるのなら…探してみるだけの価値はありそうだ。手伝ってくれるかい?(本の海へと分け入っていく) -- アマネ
- ……なるほど、ネクロノミコンのようだな。この世界では確実に存在はしているがね。
ある世界ではネクロノミコンというのはある作家の創作物だった。しかしその巧妙な記述からか、本当に実在すると信じた者たちもいたらしい。古本屋が遊びでネクロノミコンを入荷したと広告すれば、かなりの問い合わせがあったそうだ。 君の言う『アム・ムターシム』もそういう類かもしれないな。作家の虚構の物語のひとつやもしれない。 だが、それが実在する世界もまた存在するだろう。私は確かにそれを読んだ。だがそれが本当にこの世界に実在するかどうかは、わからないね。 (何やら謎めいたことをアルラートは言う。他の世界がなんだのと途端にSFじみてきた) そうだな、君の言うとおりだ。その作者もいないのだから、実物かどうかなど確認することはできまいよ。 しかし、君の鑑定は受けたいところだ。さて、どこにしまっただろうか。 (本の海を悠然と歩いていく。分類は図書館の方式に則ってある程度はなされているらしいが、それにしても膨大すぎて探すのは大変そうである。) 私は全ての宇宙の、存在する可能性のある書籍全てを集めたいと思っている。ここはそういう万有図書館になるべき場所だよ、わかるかねアマネ君。 おそらく、この辺だと思うがね。(小説群が並ぶ区画へとやってきた。) -- アルラート
- マスター・オブ・ネクロノミコンがこの街に来てるんだってね。そんな噂がある。何だかわくわくしてくるじゃないか…。
力ある書が数多集まる中にはその手のものも紛れてるかもしれない…君にとっては千載一遇の大チャンスというわけさ! 僕はまた少し違った仮説を持ってるんだ。『アル・ムターシム』はたしかに実在する。けれど、実体を持ってはいない。 それは書物の新しい形かもしれない。人から人へ伝わることで読み継がれ、自律的な成長を遂げる物語だ。 伝言ゲームの末端で聞きえる話はおぼろげで、つかみどころが無い。その姿形は定まらず、アメーバみたいにぐにゃぐにゃとしてる。 『アル・ムターシム』の話を聞くたび…人の口を介して読むたびに内容がまるで違ってる。そんなものが書物といえるだろうか? 僕の答えはイエスだ。粘土板が本になったみたいに、本が仮想の概念として成り立ってもいいと思う。 そういう意味では教授、君がまみえた『アル・ムターシム』は本物で、数限りなく存在する聖人たちの一人かもしれない。 けれど、それが全てではない…。(見えざる手に導かれて目まぐるしく行き交う書物。紙使いの瞳は機械的に動き続けて) -- アマネ
- ……ああ、そうらしい。さて、本当に死霊秘法の持ち主なのかどうかは確認していないが……ようやく、出会ったようだ。持ち主と、魔導書がね。
(本に集中しているアマネにはわからないかもしれないが、実に邪悪な笑みを浮かべた。歓喜に打ち震えるような、神が被造物を憐れむような、そんな笑みを浮かべた。アマネに向けた笑みではない。この街にいるというマスターオブネクロノミコンに、だ。) そう、千載一遇のチャンス。めったにないことだ。だからこそ君の『翠玉碑文』も、と思ったが……やはり、ダメだったよ。 ほう、別の仮説……。 (彼女の言葉に耳を傾ける。) ……成程。面白い説だ。君が私の生徒なら良い成績を与えたいところだ。 人から人へ伝わることによって成長を遂げる……実体としては、物質としては存在していなくとも、確かに人々の頭の中にあり、そして伝わるもの。 ……確かに、新たな本の形式やもしれないな。その名を聞いて、何かを思い浮かべられるのならば、きっとそれは本なのだろう。 つまり、そんなことになれば、いよいよ全ての書物を集めるなどということは不可能になるということだ。(ハハハという哄笑が響く) ……おや、アマネ君。何か感じないかね。私は感じているよ。私の読んだ『アル・ムターシム』が君の近くに、我々の近くにあるということが。 そう、その右の本棚だ。そこに……ないかね? -- アルラート
- そう。憐れむべきことだ。君の望みは満たされない。教授、老いさらばえたその手はあまりに細くて弱弱しいから…。
すべてはこぼれ落ちていく。記憶にとどめる時間さえも与えられず、夕闇の向こう側へと消えていってしまう。 いまだ実体を得ない物語。世に現れないひそやかな稗史。奇矯なる口伝。奇習。因習。記録すべきでないものたちも。 気付いてるはずだよ。君は叶うはずのない願いを追いかけてる。この世は改版を繰り返して、少しずつ刷りかえられていく。 あらゆるテキスト、無限のヴァリアントが今この瞬間にも殖え続けてる。全てを手に入れたければ…君は世界そのものになるしかない。 忘れたって言ってたのに。とぼけてたんだ?(抜き取ったその書物。埃を払い、かすかな光の下で表題を読み取って) これ、借りていってもいいかい? 読み終わったら返しにくるから。 -- アマネ
- 遍くすべて。それらは皆物語、本になりうる。君と私との会話とて、その可能性があるわけだ。
そう、全てを手に入れることなど不可能だ。私の手は小さく、全てを掬い取り、救うようなことは、釈迦のような真似はとでもできまい。 ……そう、そうだとも。世界、そして神でもなければ、それらを全て手に入れることはできない。一瞬一瞬生まれ変わってしまう世界という本を手に入れることなどできはしない。 君の言うとおり、ただの人間であったならば、とても無理さ。わかっているとも。だがね、それでも私は求め続けるのだよ。今更諦めてしまえば、私は痴呆のようになるだろね。 (と少女に笑みを向ける。被造物を愛でるがごとき、超常めいた笑みだった。) さて、どうかな。君がこの場所に来たからこそ、その本が君の目の前に現れたのかもしれないよ。 私の目指すのは万有図書館。いつの間にか本が増えていることもあるだろう。今ここで、その本が生まれる事だってあるかもしれないことだ。 勿論……構わないとも。君と私の親愛の証だ。借りていってくれたまえ。別に何十年であろうと、返却は待っているから。 -- アルラート
- ……す、すいません(誰にとでもなくへこへこと頭を下げながら図書館へと入る小林 少年のようにも見えるが体つきから辛うじて女だとわかる
女はキョロキョロとしながら書架のあいだを子ネズミのように行き来するのだった) -- 小林
- (子ネズミのようにチョロチョロと《アレクサンドリヤ》の中を、女が一人歩いていた。)
(アレクサンドリヤの私設図書館の蔵書はあまりに膨大で、外見よりもはるかに多くの本を有しており、本の摩天楼が形成されていた。) ――やあお嬢さん。ようこそ、私の《アレクサンドリヤ》へ……何か、書をお探しかな。 (気配なく、小林の後ろからぬっ、と初老の男が姿を現した。上等なスーツに身を纏い、穏やかな笑みを浮かべている。) -- アルラート
- (女は困惑した様子で無数に重なる本をながめていた だがその目には輝きがあった
なんて素晴らしいんだろう こんなに沢山の本がある 魔術についての文献らしき棚を見つけた女は 一冊の本を手に取りかけたその時であった) !!!(不意に背後からかけられた声に分厚い本を取り落とし、爪先に食い込ませ、悶絶する小林であった) -- 小林
- ……失礼、驚かせてしまったようだな。大丈夫かね。
(分厚い本を足に落とし悶絶する女を見て男はそう言い、本を拾い上げる。) ほう……これは中世の魔術について詳しく研究された『中世魔術宝典』だな。作者のテオドール・ダレス伯爵もまた魔術の大家だったと噂されているが……。 その最後は行方不明だそうだ。さて、魔道の知識に飲まれたのか果たして―― いや失礼。話が反れたな。 お嬢さん、魔術に興味がおありなのかな? どうやら君は本が好きなようだからね、私と気が合いそうだ。 (静かに笑みを浮かべ、少女に拾った分厚い本を手渡す。) 私はこの私設図書館を運営しているアルラート・フィリップスという者だ。一応これらは全て私が私的に集めたものだが……借りたいなら自由に借りてくれたまえ。 無論、ちゃんと返してくれることが前提だがね。(と老人はウィンクした。) -- アルラート
- (しばらくの間、女はショックと痛みで動くことすらできずに口をパクパクさせていたがやがて、やや落ち着きを取り戻し
す、すいません、わた、わた、わ、わたし、ぼうっとしてまして……!だ、だまってはいる、つ、つも、つもりでは、その…… え、テオドール伯爵は… たしか、ご子孫が、い、いらっしゃって、お、お墓もあるはずじゃ …… ?? はい、そ、大したこと、無いですけと、本は大好きです…い、いい、いつも、本を読みすぎて、気がついた、あ、朝とか、アハハハ…は す、凄い図書館ですね!まるでアポクリファ(注知恵の魔王が住むと言われる伝説上の書庫)かと思っちゃいました…… あ、わた、わたしは、い、一応、こういう者で(おずおずと差し出される名刺【アーティファクト研究所 研究員 小林 八重子】) -- 小林
- ……おや、騙されなかったね? よく勉強している。感心だ。
(つまりは嘘であった。この男は時たま適当な話を吹聴するという悪い癖があった。) 本が大好きならばなおさら歓迎だ。ここは本を愛する者たちに許されたエデンだからね。 (薄く笑う。本心の見えない笑みである。常におどけたような口調のせいでもあるが。) ハハハ、面白い例えだ。だがあながち間違ってはいない……私は、本を手にれるために悪魔と取引したこともあるのでね……。 (突如おどろおどろしい口調を作って言うが、おそらくでたらめである。) 万有図書館を目指しているからね、いうなれば神の書庫……私はそこに到達することを目的としているのだよ。 図書館の名前も彼のアレクサンドリア大図書館より拝借している。ま、私はただの本好きの爺と覚えてもらえればいい。 (すると、少女はスイと名刺を差し出してきた。男はそれを受け取ると、ほうと感嘆の声を漏らす。) 君はあのアーティファクト研究所の所員かね。成程成程……私はあそこに出資している者の一人でね。『ネクロノミコン』の写本の一つを寄贈したこともあるのだよ。 君のような若い子も入ってくるとはいやはや、嬉しいものだ。あのような研究施設はきちんと続けていかなくてはならないからね。 ……これからも良い関係が築けていければと思っているよ、若き研究者君。 -- アルラート
- (他人を疑うという事を知らない小林はアルラートの微笑に安堵し、ほっと息を吐く)あ、あh、あはは・・・ あ、ありがとうございます、(自分が受け入れられた そう彼女は思ったのだ)
万有図書館・・・(小林は何かにひっかかったように小首をかしげながら男の言葉を反芻する)…(一瞬だけアルラートの顔を見て即座に頭を下げる なにか言葉を飲み込むように) ぇ、け、研究所の・・・? こ、これは、その、し、失礼をいたしましたっ、わ、わた、ら、し、ぜ、ぜんぜんその、下っ端でっgも、もうしわけありませんっ・・・(へこへこ) は、はひ・・・け、けんけんきゅうしゃ、だ、だなんて、そんなたいしたものじゃ・・・ -- 小林
- そう、万有図書館だ。世界のあらゆる書物を所蔵するのだよ。蒐集癖が嵩じた結果だ。
ワハハ、そうかしこまる必要などないよ。研究所に顔などほとんど出していないものだからね。それにパトロンの数は多い。私などその一つに過ぎない。 彼らには、いや、君達には解き明かしてほしいのだよ……宇宙の深淵、その果てにあるもの、原初の混沌……神々の遺物を研究し、原罪の彼方……そう、それらを解き明かしてほしいのだよ。 「世界を守るために」ね……。(一瞬だが、男の口元に嘲笑めいた笑みが浮かべられた。八重子はそれに気づいただろうか……。) だからこそ私は君達を応援しているんだ。君は未来ある若者、研究者に相違ない。ならば期待するのも当然だ……そうだろう? (スッ、と八重子の肩に手を載せ、笑みを浮かべた。) 君の研究のためならば、百冊でも千冊でも本を貸してあげよう。きっと役立つものがあるはずだ。 ああ……ところで。 君は、「魔導書」の類は所持しているかね? (脈絡のない唐突な質問が飛んだ。) //すみません、もう寝るので続きは明日お願いします!! -- アルラート
- あ、あの、もしかして、ももしかしてなのですが・・・ あ、アルラート、さ、さまは、もしかして、あの、《大司書》・・さま?
ち、ちがってたら、ご、ごめんなさい・・・き、聞き覚えがあ、あり、あ、ありまして・・・ す、すいません・・・ (上目遣いに、小林はアルラートの表情を伺っていた これは彼女の特技のようなものだ 顔を合わせるよう様子もなく、しかし常に相手の表情を伺う、そうやって小林は脆弱な自己を世界から護ってきたのだ だからアルラートの含みのある笑みにも気付いていた だが不安な気持ちを噛み殺し、それを悟られない術を心得ていた 自分は弱い、ただの女であることをわきまえていた) は、はい・・・ え、えと。。が、がんばります・・・ ふぇ・・・?まどうしょ・・・? け、研究所にいけば・・・い、いくつもあるとお、、おおもいますけどぉ・・・ 、私は、ただの研究員で、し、しか、しかも下っ端ですので・・・ -- 小林
- //明日は霊圧ないかもしれませぬー ごめんねごめんね --
- //いいんだ(いいいんだ) -- アルラート
- //ばっちこい! --
- //昨日は帰宅したらいつの間にか寝落ちしてましたすみません! 還ったら返信します! -- アルラート
- ほう! 私のことを知っていてくれたとは嬉しいね。(表情をほころばせて言う。)
如何にも……《大司書》だとか《全科博士》であるとか、不遜に過ぎる称号を賜ってはいるよ。私はそれほど大した人間ではない。ただの蒐集狂の男だ。 気にしなくていい。ただの本集めが好きな爺とでも覚えておくれ。 (自分の顔色をうかがう少女を見て、あの笑みがより一層深まる。彼女の不安に気づいているのかいないのか……。) ふむ、そうか。君は持ってはいないか。 いや、最近「意志を持った魔導書」なるものの噂を良く聞いていてね。人の言葉を解し、人の言葉を話すそうだ。 何とも面白いではないか。そういうものが実在するのならば、私も所持したいし、君達も研究の対象とするだろうとは思っていたが。 なるほど、まだ若手の研究者までには広まってはいないということか。 もしそういうものの話を聞いたらば、私に教えてはくれないかね? 教えてくれたらお礼はするとも。 今、私は魔導書を集めているところでね。そこにさらにそんな不可思議な本まで加わるとなると……実に、楽しいだろう? -- アルラート
- や、やっぱり・・・ 《全科博士》アルラート・フィリップス様で、い、いらっしゃるっ(緊張のあまり口調がおかしくなってしまう小林)ど、ど、どうしよう、わ、私、こんな格好で・・・あわわ・・・
ほ、本当でしたら、その、きちんとしたご、ご挨拶をしなくちゃなら、らな、なら、ならないところで、ですが、も、申し訳ございません・・・ (上目遣いにアルラートを一瞥する またあの笑みだ 胸につかえるような不安をかみ殺し、また視線を地面に向ける) は、はぁ、、すいません、し、したっぱな、も、もので・・・ 人型の形態変化をする、ま、魔導書は、研究所にもあると、お、思うのですが、私の権限では・・・ す、すいませんっ。今度、上のものに話をしますので・・・ 私も、い、一応話しは聞いたこと、あ、あります・・・ まだ、見たことはないんですけど、私のし、知り合いにそういった本を持ってる方が・・・ -- 小林
- いや、いや、そう緊張されては私も困ってしまうな。君のそういう泣きそうな顔は嫌いじゃあないが。
(冗談めかして言いつつ、笑みを浮かべる。彼女を不安にさせるあの笑みを向ける。) ほう、研究所にあるのかね、それは僥倖……いやいや、そんな大事にはしなくていい。聞くなら私が直接聞くとしよう。君に迷惑をかけてもいけない。 ほう、ほうほう……知り合いに彼の魔導書を持っている者がいるのかね? 差支えなければ是非教えてほしいのだが……。 譲ってくれと言ってもそうやすやすとは渡してはくれないだろう。複写を頼むつもりでね。私の蒐集物の一つとしたいのだよ。 -- アルラート
- は、はぐぅ、、な泣いてとか、そ、そんなことは・・・ちょ、ちょっと、その。き、緊張しすぎたちゃって、そ、それだけです、ほ、ほんとに・・・
は、はいムァンさんという、け、ケン、ケンタウロスの女性の方で・・・ ど、どんな魔導書なのかは、私もわからないのですがぁ・・・ すいいません・・・ やっぱりアルラートさまともなれば、魔導書の複写なんて、高度なこともできるのですね・・・ -- 小林
- やあすまない。少しからかいすぎたようだ。許してくれるかな、小林君。
ケンタウロスの女性か、それだけで面白そうだが……いやいや、いいのだよ。それは私自身が聞きに行くべきことだからね。 (複写などもできるのかと感心したようなことを言われると、少し眉を動かす。) ……うむ。そう言うこともできる。無論完全な複写などはすぐに出来るようなものではないがね。 私は魔術師ではないが、少し魔術的な事をするわけだ。本の中身に干渉すると言えばいいか。 無論、相手がそれを許してくれなければ、手書きということにはなるがね。(あまりこれは言いふらさないでくれたまえよ、と片目を閉じ、指を立てて唇に当てた。) -- アルラート
- は、っいえ、そんな、わ、わたしなどに、、お、お気遣いなど、か、かたじけない・・・(さらに緊張が増して口調がめちゃくちゃになる小林 わきの下まで汗びっしょりだ)
魔書の複製は、と、とても高度だと、聞きます・・・け、研究所でもそれができるか、方は、ほんの、何人か程度だと、お、思います・・・ ア、ハイ、誰にもいいません・・ あ、あの、その、きょ、今日はこのあたりで、し、失礼レイします・・あ、せ、せっかくなので、何かおすすめの、本とか・・ございますか? -- 小林
- さて、どうかな。勉強すれば誰だって出来るさ。私の場合は趣味が高じて、だがね、
相手が普通の人間なら魔導書も複製させてくれるだろうが、魔術師相手となると少々面倒な事にはなるな……まずは君の紹介してくれたムァンという人に話を聞いてみるとしよう、ありがとう小林君。 ああ、帰るのかい。お茶の一つも、と思ったのだがね。ほう、おすすめの本か、そうだね……。 (そういうと、男は本の摩天楼の中をテクテクと歩きだし、ほどなく一つの本棚の前に留まり、一冊の本を抜き出す。) 魔術に興味があるようだったからね、これなどはどうだろう。他では中々見れないものと思うよ。 (差し出したのは黒い書物だった。ギリシャ語で『ネクロノミコン』と書かれている。) 『ネクロノミコン』のギリシャ語版だ。焚書などにあって中々残ってはいないが一応は本物だ。ミスカトニック大学にいた友人から譲り受けたものでね。 普通の魔導書には載っていない様々な魔術が記されているよ。これを持って行きたまえ。何、返すのはいつでもいいよ。 (静かに笑みを浮かべて、どこか禍々しささえ放つその書を、小林の手に渡した。) -- アルラート
- はい…私のも、べ、勉強は、一応し、してるつもりなのですが…な、なかなかうまくいかなくて…
(小走りにアルラートの後ろをついて回る) え、こ、これは…こ、これってげ、現存してたのですか!?すごいジョンディーンの暗号も、儀式もちゃんと載って…ネットのフォーラムでも、都市伝説扱いなんですよこれ! ほ、ほんとにいいんですか…わ、わたしなんかに…… ありがとうございます!た、大切にいたします! (両手でしっかりと本を抱きしめ、) -- 小林
- ほう、そうかね。これも一応は魔導書の類だが、人型の精霊などは有していなくてね、寂しくは思っていたところなのだがね。
確かに伝説級のものではあるが……私にとっては等価値だよ。どの本も、全ては本に過ぎないのだからね。 ああ、持って行ってくれたまえ。おそらくよい研究材料になるだろう。だが気をつけ給えよ。異形の知識について書かれたものだ。あまり魅入られぬようにな。 (忠告する。だが男からそれ以上の感慨は感じられないだろう。ネクロノミコンに書いてあることなど当然知っていると言わんばかりだ。) 君が良い研究者になることを祈っているよ、可愛らしいお嬢さん。 -- アルラート
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- (―宵闇が訪れ始める、街の一角。『全科博士』の歩くその後ろ、雑踏にまぎれ、微妙な距離を保って着いてくる人影がある)
(偶然か、それとも必然か。その気配に気づくことになるだろう) --
- (今日も魔導書を求めて男は古書市を巡っていた。既に日は落ち、夜が迫るころであった。)
(何かが自分の背後をつけてくるのを感じた。秘匿しているとはいえ魔術師である。気配の察知はたやすい。そして、奇妙にも薄い笑いを浮かべた。) ……私の老人に何の用だろう? さて、危うげな婦女子の類ならまだしも、私のような者を狙う暴漢などはいないと思うのだがね。 (おどけた調子でいいながら、背後の闇を振り返る。) -- アルラート
- (立ち止まり、振り返れば、十数歩の距離を置いて、それも足を止めていた)
(第一印象は、不吉な黒。ツバ広の帽子や、コート、顔を覆うゴーグルすら黒でまとめ上げたその気配の主が、口を開く) …『全科博士』、アルラート・フィリップス、だな(おどけ、余裕を持つ老人とは対照的に、張り詰めた声音。まだ若い男のものだが、昏いものを漂わせてもいる。肩に負う長物、それを包む布が、僅かに衣擦れの音を立てた) -- 黒尽くめ
- ああ、そうだとも。私がアルラート・フィリップス。君も《全科博士》の名で呼ぶとは、いやはや。私の名も広まったものだ。
(明らかに通常の雰囲気ではない男を見ても、動じた様子はない。恐怖という感情を持ち合わせていないような笑みを、現れた黒づくめの男に向ける。) ……さて、私をどういった目的でつけていたのかは知らないがね、金めのものなどは持ち合わせてはいないよ。それとも私の体が目当てか? ハハ、残念ながら私にはその趣味はない。 (肩を竦めて笑う。嗤う。) ……魔導書ならば、持ってはいないよ?(嘲るような笑みを浮かべた後に、男の方に近づきながらそう言った。) -- アルラート
- …魔導の書を探し、それを蒐集しようとする、司書協会大司書。それだけ知れれば十分だ(闇が、揺らぐ。肩に担いでいた長物を、脇の下を通して提げ持つ。布が解ければ、そこに在るのは、黒い長杖だ)
魔導の書を蒐集するもの―その脳髄、燃やし尽くす(厳かに告げた、その直後。宵闇を切り裂いて、杖から炎が噴き上がった) -- 《ブレイズ》
- ああ……《黒山羊》か。(思い出したかのように言う。その口は嘲りの形に歪んでいる。)
知っているよ、知っているとも。そんな「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」のような名前であるのにもかかわらず、魔導書を焚書して回っているとか。 蒐集しようとするだけでこれとは、いささか強引にすぎないかね?(ブレイズの持つ長い杖がアルラートに向けられる。それと同時に、宵闇に人主光が燃え上がり、先端から炎が噴き出した。) それで、君のそれは、魔術に依拠するものではないのかね? 魔を狩るには魔か? (アルラートの体は炎に包まれた――はずである。しかし、彼の焼死体はそこにはない。ブレイズの耳元で、不気味にアルラートと同じ声がささやきかける。禍々しい気配が一気に膨れ上がる。) 私は別に君を害するつもりはない。魔導書も今は持っていない。どうかな、許してはくれないだろうか。 (どこかおどけたような口調で言う。禍々しい気配はすぐに消えていた。) -- アルラート
- (業火の生み出す熱気と揺らめき、そして赤の色彩は、恐慌を作りだす。叫び逃げ惑う周囲の人々には目もくれず、杖を構え腰を落としたそのままで、襲撃者は辺りを睥睨するのみだ)
…魔書は読み手を魅入らせる。狂気を植え付ける。正常な思考を奪っていく…誰一人として、例外ではない。 (だから、その前に燃やすのだと、無言のうちに言い切る。魔の気配を纏うその不吉な長杖を油断なく構えたまま、聞こえてくる囁きに耳を傾け、その位置を限定しようと、集中していく―) …蒐集を止めるつもりは? ないのだろう?(提案に、こちらからの疑問を返す。疑問というよりは、確認に近い問いかけだった) -- 《ブレイズ》
- なんというひどいお人だ。君のせいでここは恐怖の巷と化してしまった。
(逃げ惑う人々を見ながらあるラートは言う。) ……そうだな、魔導書とはそういうものだ。いや、力ある書物とはみな、そういうものだ。魔術とはそういうものだ。そう、その持ち主が人、であるならばね。 (まるで自分は人ではないから大丈夫だとでも言いたげである。) 無論やめるつもりはないさ。これは私の生きがいでね。勘違いしてもらっては困るが、魔導書は私のコレクションの一つにすぎない……私は、世界のあらゆるすべての書物を集めようとしているのだよ。 高尚なもの、卑俗なもの、学術書、魔導書、小説……そのどれもかもを、私は集めるのだよ。魔導書など、その一つに過ぎない。 だから、その私の蒐集を止めようと言うのならば、それは私の生き方を否定するのと同じことだよ。全くひどいことだ。 (闇の中で声が響く。四方八方から声が響く。) 私は魔導書も持っていないし、魔術師でもない。だが、君にこのまま殺されるというのもつまらない。だから、返礼しよう。 私は魔術師ではないが、彼女ならそうしてくれるだろう。 (アルラートがそう言ったかと思うと、ブレイズの目の前の世界が突如異界と化した。本、m本、本、全てをうめつくす本の海、本の山、それがブレイズの前に現れた。) さあ、一つ私を守ってくれ。マアナ。 (どこかにいるらしいアルラートの声がしたかと思うと、本の山の頂上にいつの間にか座っていた王冠を被った少女がゆっくりと立ち上がり、ブレイズの方へと降りて行き、右手をブレイズに掲げる。 (刹那、周囲の本が一斉にめくられ始め、その本たちからブライズに向けて、何かが飛び出していった。) (それは本の内容が具現化したものだった。動物、人、ドラゴン、想像上の生物、火、水、金、禍々しい呪い、神の祝福……そんなものがめちゃくちゃに入り混じり、ひとつの強烈な力となったものがブレイズへと襲いかかる。) 安心し給え、退路は作ってある。君は後ろへ逃げればいい。命を取ろうとは思わないよ。ただ、君たちに燃やされた本の怨嗟の声を聞いてほしい。そう思っただけでね。 (アルラートの哄笑が響いた。) -- アルラート
- ――!(例えるならば、それは世界を、頁をめくるかのように。炎に包まれた世界が、異世界へと切り替わる)
(本に包まれた異世界、その中に佇む少女の姿を真っ向から見据えることが、果たしてできたかどうか) (知識の奔流を、現実にするならば、まさしくこのようになるのだろう。荒れ狂う現実、非現実を問わぬ暴力に、しかし一瞬だけ、男は抗った。風圧に、圧力に、身を軽く裂かれ、血を噴き出しつつもなお、男は少女を見据え、一歩を―) (踏み出そうとして、しかし、のけぞった。一度姿勢を狂わされれば、洪水に身を立てる術はなく―) アルラートォ…ッ!!(淀んだ怨嗟の声を残し。男は、世界から弾き出されるのだった) -- 《ブレイズ》
- おー……格好いい! はじめましてこんにちは! 次回ご一緒ですねー。 -- ナヴィ
- どうやらそのようだね、可愛らしいお嬢さん。ナヴィガトリア君、だったかな?
(膨大な本の壁を背に、初老の男が優しげな笑みを少女に向ける。) 私はアルラート・フィリップス……一応、学者のようなことをやっている。《全科博士》などと、不遜にすぎる名で呼ばれることもあるね。 肉体的にはただの老人だ。君の足をひっぱらぬよう、せいぜい頑張るとしよう。私は学者だが、その本業は書物の蒐集だと自分で考えているわけだ。 君も、何か良さそうな本があったら教えてくれたまえ。 -- アルラート
- はーい、ナヴィガトリアです。ナヴィでもいいですよ、アルラートおじさま。(にっこり)
へー、本を集めるのがご趣味なんですか……でも、なんだか難しい本とかお好きそうですね。私が出てる本とかはあまり買わないタイプかも……? おすすめと言ったらもうその、私のグラビアが載ってる本なんかオススメですけれど。おじさまみたいな人には、本のほうが分不相応かなあ……きっとおモテになるでしょうし。 -- ナヴィ
- ふむ、ならばそう言おう。君の期待通りに、ナヴィ。
さて、人は見た目では判断できないという言葉はよくいわれることだ。見た目は人間であっても、中身は化物だ、などということはよくあることだ。(そう言うと、僅かに薄い笑いを浮かべる。) まあ、それは別として……私は学術書の蒐集が目的とは限定などしてはいないよ。私はね、全てを集めるわけだ。 だから、君の乗っている本もその対象だ。どんなジャンルの本でも集めるのが私だ。学術書から通俗小説。たとえいかがわしい内容でもね。 まだ最新のものまでには手を伸ばしていないが……なるほど、君はモデルかな。まだ確認できていなかったとは不覚だ。 私は書が恋人と言ったところだ、残念ながらね。若い子のそういう写真を見るのも老後の楽しみの一つだ。 -- アルラート
- ありがとうございます、おじさま。ふふっ、私も人は見かけによらないってたまに言われちゃいます。そのグラビアなんか見た人は特に。
だから是非共目を通してみてください。でもおじさまみたいな格好いい人に見られるなんて、ちょっと恥ずかしいかも……なーんて、それじゃグラビアモデルなんて出来ませんよね。 それにしてもなるほど……なんでも。でしたら見慣れたものだと思います。おじさまも本当見かけによりません。 でも蒐集が目的なら、それも当たり前なのかなー……えへへ、楽しんじゃってくださいね。本が恋人なら、一夜のお供くらいにはなったら嬉しいです。 -- ナヴィ
- なるほど、それならば楽しみだ。ではその姿を拝ませてもらうとしよう。
(好色めいたことは言うのだが、そこに性欲の発露などは感じられない。そう言ったものが初めからないかのごとく。) 何、そういう恥じらいがあればこそ、男は喜ぶものだ。是非ともその精神は忘れないでほしいものだ。 ハハ、私は《全科博士》と呼ばれている。つまりなんでも博士というわけだ。そのなんでもには、確かになんでも含まれているわけだよ。 ああ、そうさせてもらおう。楽しませてもらうよ。さっそく書店に向かうとしよう……うむ、きっと一晩以上かもしれないがね? -- アルラート
- そう呼ばれるのにはきちんと理由があるわけですね。納得しました、おじさま。それだけに、アハッ、そんな人から楽しみにしてもらえるなんてウキウキしてきちゃうかも!
人に体を見せるときは手抜きなんてしないから、恥ずかしいなんてことはありません。(男の様子を観察して見るに、人間らしい欲望のゆらぎは見えない。老成とは、また違うかなと思いつつ) ご忠告感謝します。初心忘れるべからずですね! それでは、お買い物へ向かうのを邪魔するわけには行きません。まして私のグラビア買いに行くんだもん。 それじゃあおじさま、これくらいで。また冒険の時に会いましょう。 -- ナヴィ
- 「ねぇ、見ず知らずのおじさんに身体を開いてみせるってエロティックだと思わない?」
眼前の大画面タブレットのような本が声を発する。恐竜族の言葉を使っていない事から、 それが彼女の相方である半恐竜人の少年に向けられたものでない事が理解できる。
エリーと呼ばれたこの魔導書娘に記されている文字は、奇妙だった。 南方の聖刻文字のに酷似し、それでいて東国の漢文字の特徴も備え、一文字一文字に強く意味が与えられている。 なんといっても、刻々と形を変えていくその姿…この変化パターンにすらも言葉としての要素が篭っていることがアルラートには理解出来た。
本を譲る事は断られたものの、写本をする事についてはある条件付きで承諾が降りた。 即ち、恐竜少年に山盛りのパフェを振舞う事、彼がそれを食べてしまうまでの間のみ写本作業をしても良い事。
文字形状が複雑な上次々と変化をしていくそれらをも写し取らねばならない為、作業は捗らなかった。 いやまて、今画面後ろを通り過ぎたあの斜線、あれも文章構成にかかわっているとしたら? 明らかに異質な文明の片鱗に、知的好奇心が刺激されていく。 -- エリブロル&カロン
- 「やあそこ行く少年。私に――その魔導書を、譲ってはくれまいか。私は学者でね……」
町の一角で初老の男が、有角の少年に声をかけた。 しかし、返ってきた。言葉は男の使用する言語とは異なっていた。別の地方の言葉とも違う。 発声器官そのものの違いから生まれる言語の差異のように思われた。 男が、少年をいきなり魔導書の所持者だと断定したことも、あまり気にしているようには見受けられない。 「ふむ……これはいささか困るね」 そう呟いていると、もう一つの声が少年のほうから聞こえてきた―― ―――――――――――――――― 「まあそう言わないでくれお嬢さん。これも学術的な調査のためでね」 大きめのタブレットのような形状の本の声に応えつつ、アルラートは写本作業を行う。 羊皮紙に筆写しているようだが、これもまたマジックアイテムらしく、一枚の紙であるにもかかわらず、膨大な文字を記録できるようだった。 アルラートの視界の先では、恐竜少年が山盛りのパフェを美味しそうに貪っていた。 譲渡することは断られたが、条件付きで写本することを許された。それは少年がパフェを食べ終わるまでという、奇妙な条件だったが……。 「成る程……これは面白い」 男は感嘆の声を上げた。「ある遠方の一族の聖典にこのようなものがあったとは聞くが…」と声を漏らす。 男は博識である。異様なほどに博識である。この書物についても、断片的な情報は知っていたようだ。 しかし、いざその実物を目にすると、なるほど完全な写本はおよそ無理そうであった。 読むたびに文字が変化する。南方の聖刻文字からいわゆる漢字、非常に強い言霊を込められたそれらが画面上で暴れている。 「まさに彼のユークリッド幾何学を無視して作られた海底遺跡の如き複雑さだ」 そういいながら、凄まじいスピードで書写を行う。読解には非常に時間がかかりそうであるが、男は現れた文字を“そのまま”書き写していた。 「まさにこれこそ魔導書! 外道の書物! 素晴らしい、素晴らしい! 人知を超えた書物……これは科学か? 魔術のたまものか?」 いささか興奮した様子で男は言う。人の造った文明とはかけ離れた文明、それに男は今触れているのだ。 -- アルラート
「凄い勢いね、神殿の書神官達よりよっぽど早いわ。あらカロン、もうごちそうさま?」 <ごちそうさまー!> けふ、と小さくげっぷを吐き出し少年がパフェを食べ終える。 その後きりの良さそうな所まで動かずに居たのは彼女なりのサービスだろうか。
表現しがたい複雑な機械音とともに、魔導書が人型へとトランスフォームする。 「はい、おしまい。ヒントもおまけする?読み解けてしまったら案外、がっかりするかもだけど。」 深紅のゴーグルの奥の瞳がアルラートの顔をみつめ、小首をかしげた。 -- エリブロル&カロン
- 「何、仮にも《大司書》の称号を賜った身だよ。これくらいはね」
薄く笑いながらアルラートは言う。どこか人ならざる気配すら漂わせながら、ペンを髪の上に滑らせる。 「……ふむ、時間切れか」 恐竜少年はパフェを食べ終わったようだ。おそらくは「ごちそうさま」と言っているのだと思われる。 それと同じくして、どこか名状しがたい、形容しがたい音を立てて、タブレッド状だった魔導書が人型に変わる。 断片的に判明した情報からすれば、この書物は聖典のようなものであるらしい。それもおそらく、膨大な巻数があるはずだ。 目の前の魔導書は一部に過ぎないのだろう。だがその内容と機械の少女とはどうにも結びつけるのが難しかった。 「おまけしてもらえるのならぜひ貰い所だ。本当ならば、君をどうしても欲しい所だが、仕方がない。私を哀れと思うのならば、教えてくれたまえ」 どこか芝居がかった調子で良い、薄く笑う。 「……いや、いや。人、否、この星の存在が記したものが、面白くないわけがない。それがたとえ、どのような内容でもね」 -- アルラート
「んー、これ、この文字」エリブロルがアルラートのつづった写しを覗き込み、指差す。カロンも覗き込み、声を発した。 <エナージョン!>「そう、エナージョン。エネルギー。私たちが必要とするもの。これを求めて私たちの遠い先祖は争いあったの。」
「気づいているでしょうけれど、この文字が繰り返し出てくるわ、とても重要だから。たとえば貴方たちで云えば…」 少し間を置き、続ける。「貴方たちで言えば…そう、パンとワイン。もちろん『それだけ』じゃないけれど。んふふ、普通すぎてがっかりしたかしら?」
「それじゃまたね、なんでもはかせ!また何処かで会うかもね?」<ごちそうさま!ありがとう!> 小さな二人組みはアルラートに別れを告げ退室していく。 -- エリブロル&カロン
- 「……成程。これは大きなヒントだ」
エナージョンという言葉を彼らは男に教える。この文字列がそれを示すようだ。 「パンとワイン。神から与えられた人の糧か。君達の遠い祖はそれを求めて争った」 がっかりしたかと聞かれれば静かに首を横に振る。 「いいや、そのようなキーワードが判明すれば、あとはもう早い。私は読解を進めるだけだよ。……まあ、私が写したのは君のほんの一部だ」 男は羊皮紙を懐にしまい、二人を静かに見据える。 「いずれ、君の全てを見せてほしいものだな」 「ああ、さようなら。恐竜の少年に、機械の魔導書。またいずれ合うだろう」 「そう、いずれ……」 くるりと踵を返して男は雑踏に消える。 「“彼ら”に伝わる聖典の一部を写し取れるとは、実に僥倖だ。では読み取らせてもらうとしよう。その知識の源、それを解き明かそうではないか――」 -- アルラート
- さて、蒐集を始めるとしよう。 -- アルラート
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- 順番が逆ですが挨拶しにきてみんとす(土下座スライディング) -- 《ブレイズ》
- いいんだ。ネタバレするとこのおっさんは人外の化物だよ! -- アルラート
- うわぁ今ひどいネタバレを喰らったぞぉ! 化物に生贄に捧げられてしまうんだ…黒山羊だけに
今回は顔見せ程度に済ませますので、好きにあしらってくだされば…! -- 《ブレイズ》
- なんかすごいことになりましたがこれでとりあえずあしらった的な…! -- アルラート
- 何この異世界の魔王っぽい…!(お付き合いありがとうございましたのポーズ) -- 《ブレイズ》
- 悪いおじさんだよ! 魔導書持ってないとか行っちゃった割に普通に自分からばらした感がある -- アルラート
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