TOP 携帯用 FAQ 質問箱
&size(){}; &br;
編集
最新の22件を表示しています。 コメントページを参照
日差しの弱まった秋空の下を、頭と右腕の無い人間が歩いていた 太陽が真上にあるのを確認すると、それは近くの木の根元に腰を下ろした それは左肩に担いでいた荷物の中からカチカチになったパンを取り出した チチチ、と小さな鳴声と共に鳥が一匹、それの近く降りてきた 「やぁ、こんにちは。君も食べるかい」 それは鳥に向かって挨拶をすると、パンを砕いて鳥の近くに転がした 「ヘッドレスさんね、これから故郷の山に帰るんだよ」 鳥は用心深く転がってきたパンを突付くと、小さな欠片を口に入れた 「ヘッドレスさんね、ちょっと前まで冒険者だったんだよ」 鳥は一心不乱にパンの欠片を啄ばんでいった 「ヘッドレスさんね、人間の友達がたくさんできたんだ。すごいでしょ」 鳥は一旦食べることを止めると、それの方を見て首を傾げた それは荷物の中に片腕を入れて中身を漁った 取り出した小さな袋を苦労して開けて中身を鳥に見せた 「これはね、ネモっていう冒険者の先輩にもらった花の球根なんだよ」 「ヘッドレスさん山に帰ったらこれでお花畑を作るんだ」 それは球根を袋に戻し、しまいこむと今度は自分の腹を指し示した それの腹部には腹巻きが巻かれており、脇の部分からじんわりと血が滲んでいた 「これはね、シクラっていう雪女にもらったんだよ」 「汚れちゃったけど、これを付けてるとすっごく暖かいんだ」 再びパンを食べ始めた鳥に向かって、それは自分のもらった物を説明していった この眼帯はね…………この十字架はね……………… それは一通り説明した後、残りのパンを鳥に向かって放り投げた 「ヘッドレスさんちょっと食欲が無いから全部あげるね」 それは荷物を脇に寄せると、仰向けにごろんと寝転がった 「今日は暖かいね。ヘッドレスさん眠くなっちゃった」 鳥は、動かなくなったそれに向かって一声鳴くと、大き目のパンの欠片を銜えて飛び去った 秋空の下、頭と右腕の無い人間が横たわっている その後、それがどうなったのかは誰も知らない 頭を無くした少年の物語はこれにておしまい