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- ☆
- 暑……あっつ……(説明しよう!夏場結構平気そうな顔していたが実は暑いのが苦手だ!)
(そして唯一の冷房設備だった扇風機は故障中である!5月の偶々暑い一日でしかないのでクーラー設置の申請はもう少し先!) (故に──ダレている!ソファにもたれてダレている!) --
- (そしてこちらはタンクトップに短パン。陸上選手めいたラフな服装でミルクバーをぱくつく…ポルカの姿だ!)
(例により表情にこそ出さないものの、できうる限りの方策でもって熱さを乗り切ろうという意思が、外見から見て取れる) (ぼんやり虚空を眺めてアイスを口に、空いた手をぱたぱたと、ノールックでシストをうちわで扇いでいる) がふぁん……がふぁんしようね……ひーくん…… --
- (だらり。うちわの風が心地よいものの、それ以上に蒸した暑さが不快である。汗で制服のシャツが張り付いて透けるほど。)
ま、まあ……暑さは一日だけって予報でも言ってましたし、ね……がまんがまん…… (ソファに体温が移り始めて、そこから逃れたくなって。とりあえず寝返りをうつ) (そして改めてポルカの姿を見て──目の毒というか、なんというか。むしろ保養というべきなのかな、とかとりとめなく思う) (思うところが無いわけではないが、暑さで思考にモヤが掛かっていると切れ味も酷く鈍ってしまっていた) --
- (さて、そんなシストの様子を見止めるポルカ。数瞬の後に取り出したるは清潔なハンカチである)
(白い肌に浮き出た珠に、ポフポフと当てるようにハンカチを置いていく。自然、ポルカの身体はシストに覆うような形にもなる。) 今日はゆっくりしようねー……はふ…ーん…… (今やアイスも細長い木片を残すのみとなり。口先でアイスの棒を加えたまま、ポルカはシストを扇ぎ、また汗を拭ってゆく) --
- ふぇっ、あ、どうも……
(思わず妙な礼。こうして人にハンカチで汗を拭われるの初めてだが、なかなか悪くない。というか、一緒にいるとちょくちょく初めての瞬間が訪れ、その度にこれは悪くない……と思うのだ) (悪くない、というのはその実かなり抑えめな表現で、本当は嬉しくて仕方がなかったりする) (……なんてぼんやりした思考から我に戻ってみれば、とても目のやり場に困る感じであった。タンクトップに包まれた胸元と、鎖骨、首のライン……そして顔) (いい匂いもすして、思わずごっくんと喉が鳴る。そう言えば喉も乾いた。顔の熱は暑さのせいばかりではないだろうが。) ええ、ゆっくり……とりあえず、飲み物とか…… --
- ん……(シストが口を開いたのとほぼ同時、内容は既にわかっているとばかり、ポルカは立ち上がって流しの方へ)
(無駄のない省エネ動作。ほどなく氷の浮かんだ2色のコップが用意される。) (ひとつはじっくり抽出の水出しコーヒー。もう一つは希釈して飲むという甘い乳酸菌飲料。) (白黒のコントラスト、甘みと苦み。ソファになおり、「どっちにする?」とばかりに首を傾げる。) (首の動きに合わせて、長く垂れたポニーテールと横髪が揺れる。) (汗をかかないポルカの代わりのように、二つのコップには早くも水滴が浮かび…カラン、と氷が音を立てた。) --
- (ポルカが流しの方へ行ってしまうと、ホッとする。同時にちょっと残念でもあったりして)
(やがて運ばれて来る飲み物。気怠げに体を起こし二色の飲み物を見比べつつ、釣られるように一緒に首を傾げて、熱っぽい頭で悩む) (コーヒーのキリリとした苦味が気を引き締めてくれそうな気もするし、白い方の甘味と酸味がバテ気味の体に有難いだろう) (……僕達に似ているかも。先輩はコーヒーで、僕はカ……白いの。でも僕はコーヒーみたいな先輩の、本当はシロップ沢山入れたみたいな甘い所を知ってる) (そんなちょっとした妄想にでれっと、ふやけた笑みを浮かべながら) じゃあ……コーヒーで。 (僕が先輩を、先輩が僕を。そんな、ちょっと浮かれた妄想) --
- (そんな男心を知る由もなく、アイスコーヒーを両手でそっと差し出す。シストが飲み始めるのを待って、自分もストローに口を付ける。)
(喉元を一時の清涼感が滑り落ちていく。実にあまうまである。ポルカは目を閉じ、むふうとその甘味に浸る。) (……が、二口三口と飲み進めるうち、くどさが先に立つようになってきた。どうやら原液を多くしすぎてしまったようだ。) (喉の奥で固まったたんぱく質の白い塊、舌の動きと唾液で飲みこむと、ポルカはおもむろにシストの方へ寄りかかる。) ん……………ゅる…ちゅる……ぢゅるる…ー…… (シストがストローから口を離した一瞬の隙。紅い瞳はそれを見逃さず、唇でもってストローを奪い去ったのだ。)
(その行為にどこまでの意図が含まれているか。少なくとも甘くなった口内を苦味で持って中和しようとしたのは間違いないだろう。) (そして、誰彼構わずこのような行為には及ばないこともまた事実だろう。) (あるいは、どこか心に子供っぽさを残すポルカの、悪戯心の発露かもしれないし、ただ単純に……甘えたい気分だったのかもしれない。) --
- はふ……
(かたや冷たくすっきりとした苦味を堪能していた所を──) えっ、あっ。 (飲まれた、というかむしろ間接キスが気になる。直接キスも経験しておいて今更ではあるが) むー…えいっ! (逆襲!先輩のグラスから目分量で同じくらいをちうちうと吸い取る!そしてえへっと笑って) これでおあいこ、なーんて。 (今度一緒に出かける時はどこかに寄って、カップルサイズの飲み物でも頼んでみようかな、なんて思いながら) --
- (真正面から回避不能の微笑みを向けられて、思わずポルカは一瞬瞳を丸くさせる。)
(環境、空気、あるいは雰囲気。季節を先取りしたかのような蒸し暑さは、アイスだけでなく、理性やモラルをも加速度的に溶かしてゆく。) (咥内に残っていた一口ぶんのコーヒー。喉を鳴らしてごくりと飲み込む。連鎖するように心臓が一際高く鼓動する。再び氷がカラン、と崩れて―)
………っ…
(そうして次の瞬間には、二人の顔は鼻先をぶつけ合うほどの距離にあった。) (正対する格好。ポルカが寄りかかった状態から身を横に反転させたのだ。) (ソファに掛けてやや開かれたシストの両腿に、己の膝裏を引っ掛けるようにしてポルカは腰を落とす。) (足を開き、両手を腰に回したその姿勢はあからさまにこの場に相応しくなかった。) …………… (ポルカの視線の先には薄く液体を纏わせてきらめく唇。背筋がぞくりとわななく。) (ポルカはシストの目を見る。紅い瞳の奥で、残された理性が声無き許可を求めている。) --
- え──うぁっ!?
(瞬く間に変わる姿勢。他に見る者が居れば今まさに襲われんとする姿にも見えたであろう) (実際、唐突な行為と息の吹きかかる位置の相乗効果で心臓はバクバクだ。グラスを取り落とさなかったのが幸いである) (一瞬、意図を汲み兼ねて瞳を見つめ返した。視線が絡み、なんとなく、段々と、読めてくる。勘違いかもしれないけれど──) ん…… (目を、閉じる。閉じて、待つ。それが許可の印。男女逆のような気もするけど、この際気にしても仕方あるまい。ゴクリ、と喉が鳴った) --
- (まず最初、舌先に仄かな塩気。シストの汗。そして甘み。シストが奪って唇につけた、ポルカの乳酸飲料。)
(上下の柔らかな突起を尖らせた舌で掻き分けていく。半開きの歯を越えた先に、飲み物で冷たくなった口内。暖かな唾液。幾つもの味。) (舌を動かすほどに、脳に直接電極を差し込んだようなびりびりとした刺激が全身爪先までを駆け巡る。) (そのたび喉がしゃくり上がり、さらに強く、もっと強くと、望むがままに力が篭る。) (より深く意識を埋没させる。ほんの少しの隙間すら許さぬほどに密着を増していく。) (呼吸も忘れ、半眼の蕩けた瞳で見つめたまま…ポルカは甘さでも苦さでもそのほかでもない、純粋濾過の幸せと快楽の味を隅々までなぞってゆく。) --
- (唇が触れて、その柔らかさにどきどきと胸が高鳴る。こちらからも唇を押し付けようとして──)
んっ──!? (別の、ぬるりとした感触がその間を割って、入ってくる。初めての、知らない感触。それが舌だと気がついたのは口内を這いまわり始めた時) ふぁっ、ん、むぅ……! (ゾクリと震える背筋。驚きに上ずった声が隙間から漏れる。勿論、嫌ではないけれどどうして良いのか分からない) (しっかりと押さえ込まれた身体は、体格差もあって逃げられそうにない。尤も逃げるつもりもないが。とにかく、されるがままではいけない) ──っは、ん……ちゅ…ぅ (いつだってそうだ。同じ事を、同じようにして返す。その中にある違いが、それを埋める行為が、二人を前進させていくのだ) (口内を半ば蹂躙するように舐めまわすポルカの舌を、おずおずと突き、動きに合わせて絡めようとする──) (──初々しく、たどたどしい、ディープキス) --
- (丁寧な塗り絵のような、あるいは潔癖症を患った者の掃除のような。)
(ポルカの舌は独立意志を持つ軟体の動きで、丹念に丹念に気持ちよくなるための場所を探し求め続ける) …………っ…ッ!? (不意に舌の横腹が突かれ、鼻息がふうっと漏れ出る。いや、それだけではない。眼の裏、脳の奥。腰の付け根。心の底。) (とろとろとした蜜めく何かが溢れて止まらない。まるで、まるで制御ができず、内側からのその感覚にポルカは首まで浸かっていって…)
……っは…あ………ぁ………………ぁ……
(…望んでポルカは、溺れていった。) (ゆっくりと接合が解かれる。かっくりとだらしなく開いた口から舌が垂れている。) (その舌先に未だ絡む津液はいまだ名残惜しく、透明なきらめく糸になってふたりの間を繋いでいた) --
- ──っは、あぁ……は、ぁ……はぁ……
(何時間もそうしていたんじゃないかと思う程の長い口吻。上手い呼吸の仕方が見つからず、息を止めて泳いだ後のような荒げた吐息が、半開きの口から余韻として溢れた) (熱に浮かされ紅潮した肌に、髪やシャツが汗で張り付く。潤み、蕩けた紫の眼差しが、眼前の紅色を絡めとるように見つめて)
(──また、ゴクリと、喉が鳴った) --
- (まるで単なる呼吸のための一段落であったように、離れた頭が再び距離を近づけてゆく。)
(薄涙越しにぼやけた視界の向こうに愛しい色の眼差し、光。) (求められるまま求めるまま、光に誘われる自分は蟲だ。もっとたくさん密を解き、より甘い蜜を舌に欲する―) (硬質な10本の指先がシストの体をゆるゆると登る。両頬を通過し、大きな杯を抱えるように支える。) (右も左も向けなくなって、そしてまた吐息のかかる距離……)
きーんこー…ん… きーんこー……ん…
(……いつのまにやら時刻は正午。大鐘楼が学園中に鳴り響く。きんこん、かんこん。) (ポルカは音が鳴ると同時に静止していた。鼻先のすれ合う距離、唇に届かない位置。) (そのままの状態で遠ざかっていく鐘の音を耳に聴く。視界がだんだん鮮明になる。)
(鐘が鳴り終え、余韻も引いたその後、ポルカはゆっくりと手を解き、顔を引いてシストから降りた。)
…汗、かいちゃった。 …から。 …きがえてくるね。
(棒立ちになり、座るシストを見下ろしながらポルカは言った。言葉の通り、珠にならない汗が被膜のようにその身をしっとりと湿らせている。) (そうしてポルカはシストの返答も待たず、ややおぼつかない足取りで私室として使用されている内扉の向こう…資料室へと消えていった) --
- はぁ──はぁ っん……
(頬をロックされ、逃げ場を失う。観念したように再び瞼を閉じて、邂逅の時を待つ) (吐息が口の辺りを擽って、心臓が口から飛び出てしまいそうなほどに高鳴る。遠くの方でチャイムが聞こえて、しかし待ち望む瞬間は訪れなかった) (遠ざかる気配、恐る恐る薄めを開ければ見下ろすポルカの姿。五月蝿い程の鼓動の音に紛れて聞こえた言葉の切れ端) 着替えって、え?あ、はい。 (言うなればおあずけ。ステイ。ちょっと恥ずかしくなるくらいに期待していた分逆に清々しい程の肩透かし)
え、えぇー…なんかもう、もう…… (疲れた。というのに体の一部は元気になっていて。どろりとソファに身を沈め直すと、そのまま溶けてシミになってしまいたい衝動に駆られた) --
- (かちゃ…と僅かに聞こえたドアノブの音にソファのシストは気付くだろうか。)
(何食わぬ顔。自然体の動作。手早くすすがれた二つのコップ。保冷ルーンの貼られた箱から取り出すのは、きりりと冷えた天然水。) (だらんと垂れたシストの隣、すっかり空いた定位置にポルカはぽすん、と行儀よく着席。) (汗を拭い下着から何から取り替えたポルカの顔は実に涼しいものだ。膝上に置かれた手に持つのは木綿の手拭。シストの汗拭き用に準備したものだ。) (手拭をぽんぽんと、汗が溜まりそうな場所を軽く叩きながら吸い取っていく。)
しーくーん… んー… 少し…つかれちゃったかな…?
(ポルカの身を包むもの。今は薄いタンクトップではなく、丁寧にアイロンがけされた純然たる学園指定シャツ。) (大きく突き出した胸先の辺りでは、シャツと同じ色の下着のレース地がが胸部のふくらみに僅かな凹凸を生み出し、凹凸は影を映す。) (他の部分、特にシャツと肌が密着するところで、ポルカの肌がうっすら透けている。) (真っ白い紙に一滴の桃色を垂らし、それを薄く薄く水で伸ばしたような淡い色味だ。) (下半身は先ほどの短パンの色違い。ただしシャツがポルカ用の大きめサイズのため、見た目上はシャツ1枚しか着用していないように見える。)
ね…………喉…乾いちゃってない……?
(汗拭きの手をいったん止めて、二つのコップを順繰りに水が注がれる。中の氷がパキパキとひび割れて浮かんでゆく。) (ポルカは自らのコップを手に取ると一息で飲み干す。僅かに口の端から水が垂れ、顎を伝って胸元に落ちた。) (そしてもう一度水を注いだ。 …シストを見る。見上げる。背を丸め、じっと。)
つかれちゃったのか・なー………?
(いつも通りのトーンの声のはずなのに、どこか挑発的な含みを持たせたポルカの言葉。そして瞳。じっとじっと返答を待つ) --
- (悶々としたまま、扉の向こうに意識を集中していたので当然ながら気付いた。気付きはしたが──)
(腕を目の上に乗せて、寝てるフリ。フリをしながら腕と顔の隙間からポルカが出てきて、座るのを見ていた) (チラ見のつもりがガン見である。何しろシャツ一枚しか着ていないように見えるのだから無理もない) (折角静まってきたというのにまた刺激されてしまいそう。しかも、挑発してる。ような気がする) (現金というか単純というか。先ほどの肩透かしの分余計に、胸の内に期待が高まっていく。否が応にも。)
(やがて、観念したようにだらりと腕を降ろし首を持ち上げて) ──喉、乾きました……よ? (挑発に乗った、なんて素振りを見せずに、しかしどこか期待するような流し目を送る) --
- そっか…ー…… …だったら…しーくん……
(昼休みの学園。窓ガラス、あるいはドア越しに棟内棟外、至る所で賑やかな声。) (研究室内にもそれは届いているはずなのに―全てがシャットアウトされたようで。) (ただ、ただ目の前の対象にすべてが注がれ、脳と肉体の全機能がナイズドされていく。) (そうして必要のないものが切り捨てられていって…心の形を露わにした。) (ポルカは確信し、得心した。)
「…おかわり、あるよ。」
(これが好きだという気持ちだと。)
(太陽が頂点を越し、やや遅れて暑さが増して。)
(やがて空は赤く染まり、昼間の熱気も嘘のように引いて。)
(夜がふたりを包んでも、シストとポルカはいまだ研究の途にあった。) (灯りも点けないままの部屋に、星と月の光だけが差し込んでいる。)
(…それからまたたっぷり時間をかけ。ずっとからっぽだった胃がついに悲鳴を上げてはじめて。)
(そこでようやく「中断」された。)
(―本日の実験これにて終了。 それではまた明日も、今日と同じ時間、この場所で。) --
- ……よし --
- (内装に手を入れ、机や棚の配置を変えただけの模様替え。小さな研究室とはいえど、それなりに時間も手間もかかった。)
(ソファーにもたれて一息ついたシストの前でポルカは膝をつき、そっと茶と菓子を差し出す。) (おろしたてのカップは同デザインの色違いであり、模様替えに先んじて購入してきたものだ。湯気と香りが立ち上り、疲れた身体を憩わせる。) ん…おつかれさまー、しーくん。 はい、どうぞ… (いつもと違うポルカの服装。いわゆる和装と割烹着に良く似た装いは、蟲人にとって伝統的な普段着だ。) (動きやすいよう、髪型もポニーテールの垂れた房を折りたたむように根元で止められている。) (膝をついたままの姿勢で顔を上げれば、不意に目と目が合って、ポルカの表情から僅かにはにかみ笑顔が漏れる。) -- ポルカ
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