旅立ち、物語のひと区切り Edit



三月の初めの、微風そよぐ暖かな日。
道場の外には春の日差しがやわらかに降り注いでいて、肌にあたる温もりが心地よい。
少年は、故郷への遥か遠い道のりを、一歩一歩、確かな足取りで進んでいく。

銀色の狼をその身に宿し、黄金の毛皮を求めた、一人の狼憑きの物語は、この街で無事に終焉を迎えた。
少年に獣の耳はなく、揺れる尾もない。一人の人間となった彼の物語は、まだ続いていく。

この先には依然数々の、未知の苦難が待ち受けている。
故郷に狼を届ける旅路にも、季節の再び廻る渓谷で、その荒廃を立て直す過程にも。


しかし、語られるのはここまでだ。
ただひとつ言えるのは――少年はもう、困難を乗り越える強さを持っている。
一人の人間として、運命を歩んでいく強さを。










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Last-modified: 2016-07-07 Thu 00:58:29 JST (1249d)