イネス・ケンジントンは冒険者で栄える、とある街の出身である。
彼女もまた例に漏れず冒険者として活動していた。
そんなある日。
異国より武者修行に訪れ、冒険者となった青年ジョン・ケンジントンと同行することとなる。
若い二人が惹かれ合うのにさしたる時間は必要なかった。
ジョンが武者修行を終えたのを機に、イネスも冒険者を退く。そして二人はジョンの故郷であるグロム王国にて居を構えたのであった。
ジョンは騎士に、イネスはそれを支える妻として慎ましくも幸せな暮らしが始まったのだ。
──しかし、幸せは長くは続かなかった。
後に小鬼戦争と呼ばれる争いの、その端初となった衝突によりジョンは命を落とす。
遺体は無く、イネスには夫が戦場にて死亡した旨と諸々の補償を約束する、ただ一枚の羊皮紙のみが残ったきり。
斯くしてイネスは怨讐を胸に、再びその手に剣を取ったのである。
|