ブラスト・アイディオール / クーファ・デルファーネス
- (数日が経った――)
(クーファの目の前でしゅる、と包帯を取り 白く透き通るような肌を露にして)
(しゅ、とシャツに袖を通し、ボタンを留め、スラックスを穿き、上着を羽織る きゅ、と髪の毛を纏め、眼鏡をかけた)
クーファ。(そうして、クーファの目を見据えた)かつて私は君と誓った。私の心と君の心は同じものであると。
(その目から、何故だか――ブラストの考えが伝わった いや……もう、既に知ってたような そして、もうクーファ自身、既に覚悟は決めていたような気がする)
巻き込んですまない等とはもう思わない。私が歩き始めたとき、君もまた歩き始めていたのだろうな……同じ道を。
(鼓動が同期しているのが分かる 鼓動だけでなく、互いの体を流れる違う色の血液の流れまでもが) --
- 机に腰かけて足をぶらぶらさせながら着替えを眺めていた。声をかけられると足を止めて机から降り
「教会で初めて会ったときからしたら、信じられねぇよな。まさかお前と本当の意味で組むことになるなんてなぁ……へへっ」ニヤリと笑う
お互いに同調するような、奇妙な感覚には慣れつつある。準備期間が終わったという事なのかもしれない
「…さて」携行用の武器がついたベルトを腰に巻き、ブラストの前に出る。まっすぐ目を見つめて
「行こうぜ。せっかく交わった道を、ここで途絶えさせるワケにはいかねぇだろ?」 -- デルファーネス
- 私もそう思うよ。君と仮契約をした時はこれでいいのかとずっと自問自答していた。私の気持ちを理解してくれるのだろうかと。
今になって思えば、君ほど私を理解してくれる者はいない。不思議なものだな……
(目の前に立つクーファの頭を、くしゃ、と撫でて)ああ、行こう……いや。(ふと、窓の方を見て)
多分……今日が行く日なんだろう。何かが起きる……そういう気がする。理由はないがね。
人間は君らよりずっと能力が劣るが、それゆえ「第六感」というのが発達している。危険を……嵐を察知する感覚というものかな。
今すぐ数式屋敷に乗り込むのではない……まず、様子を見よう。(そういいながら、窓の外を眺めた) --
- 「やーめろ。撫でるのはナシだ。俺はペットじゃ………?」ブラストにつられて窓を見る
「何も無いぞ…? ん、第六感? ふむ」
「……仕方ねぇなー。気乗りはしねぇけど、待つか」渋々といった足取りで、また机に腰かける -- デルファーネス
- ……!いや……待つ必要は……これっぽっちもなさそうだ。(街をこれでもかと長く見つめていたのだ 混乱にはいち早く気づいた)
(そして、その中で戦う住民にも気づく)……トーヤ君!(ば、と窓から振り返り)クーファ!!行くぞ!!(クーファに先駆けてドアまで駆ける) --
- 「…やっと来たか。暇すぎて化石になるところだったぜ」机から勢いよく降りるとブラストの後を追う
「準備万端。今度こそ失敗はできねぇ……気合い入れて行こうぜ相棒!」
二人は走る。この道の先がどこに通じているかはまだ分からないが…それでも、信じるものの為に…
やがて二人の姿は街中へと消えて行った -- デルファーネス
- ……うぅ。う……
(声が聞こえたのは――あの日以来だ バーンアウトの病院で緊急治療を受けてから随分経った)
(看病と、事務所の留守番もかねてクーファはずっとブラストの事務所で過ごしていた だがずっと意識は戻らないままだった)
(声のするほうを見れば、ベッドに寝かされていたブラストがうめき声を上げている)う、うう…… --
- 椅子に座って舟をこいでいたが、声に気付いてバッと立ち上がると駆け寄り
「……っ! 起きたか!? おい、ブラスト分かるか? 俺だ」頬を軽く叩いてみる -- デルファーネス
- う……ぁ。(頬を叩かれ、うっすらと目を開ける)……ここ……は……私の事務所……か?
ヴっ……!!(身体を動かそうとして、苦痛でうめく)……クー、ファ?(弱々しく、そっと手を伸ばす) --
- 「そうだ。バーンアウトの病院で治療してから、ずっと気を失ってたんだ」
「今は動くな。安静にしないと治るものも治らなくなる…水でも飲むか?」手を両手で握ると、ブラストの胸元に下ろす -- デルファーネス
- ……そう、か……(つ、と目から涙を一筋)……すまない。私がふがいないばかりに……
君との絆の力も使えずに……ロステも連れて行かれてしまった……(歯を食いしばり、ぼろぼろと涙がこぼれた) --
- 「ど、どうした!?どこか痛いのか!?」涙を見て一瞬誤解し
「あぁ…気にすんな。あの時はあれが精いっぱいだったんだし、悔しいのは俺も同じだ」
「倒すどころか、生きて帰るのがやっとだったからな……ロステには感謝しないと」ギリッと歯噛みする -- デルファーネス
- ……そう、だな。ロステがいなくては私達はやられていただろう……あの時、私達が消されなかったのはロステのおかげだ……
君は……無事、だったか……?怪我は……?いや……それよりも……先に……
生きて……また会えて……よかった……(きゅ、と弱々しく手を握り返す) --
- 「へっ、仮にも竜人だぜ?怪我なんて大したことねーよ」右手を離すと、ひらひらさせて笑いながら
「眼鏡スーツの誰かさんが必死に守ってくれたおかげで直撃は殆どしてねぇし……」ブラストの涙を拭くと
「おう。猶予がどれだけあるかわかんねーけど、ギリギリまで休め」再び両手で手を握る -- デルファーネス
- ……そう、か。あの後すぐに君は逃げたんだな……君が……無鉄砲に立ち向かっていく……んじゃないかと……思ったよ……
良かった……君に怪我が……なくて……(安心したように穏やかに笑う)
……いつまで、猶予があるんだろうな…… --
- 「どんな風に思われてたんだ俺…殺すつもりの攻撃が効かなかった時点で、如何にして時間稼ぎしつつ撤退するかを考えてたんだぜ?」
「実際行動に移そうとしたら、好き放題やられた挙句に、撤退もロステの助力が無けりゃ無理だったっていう散々な状況だったけどな…喧嘩担当が情けねぇ話だぜ」苦笑いしてみせる
「そりゃわかんねーよ。だから急ぎ過ぎない程度に急げ。とりあえず飯はしっかり喰えば何とかなる……そういやお前」思い出した様に呟いた
「数式卿の攻撃が直撃する前に、一瞬だけ動きが止まった時があったよな? ありゃ何だったんだ? 足が痛くて止まった風でもなかったぞ」 -- デルファーネス
- 飯……ああ、そうか。食事……気を失っている間、ずっと食べてなかったんだろうな……おなかが空いた……
君は……金貨はちゃんと……食べてるか?前に渡した……分が……そろそろ、なくなってるんじゃ……ないのか?
ん……?止まった……とき?……(目を閉じて思い出して)……ああ、あのときか。ええと……実際にパニックになってたところに……
数式卿が言ったんだ。「この響命石は解読できない」って……だから、数式卿にもわからないのに……私にどうにかできるのか?ってさらに混乱してしまってね……
………………どうして……使えなかったんだろうな……響命召喚術…… --
- 「いきなり固形物入れると胃がビックリするだろうからなー、何か適当に見繕うか」
「自分の稼ぎと、後は備蓄してた金貨、予備の武器も喰って足しにしながら…って感じだな。飢餓ってほどじゃねーよ。気にすんな」刃の部分が喰われて無くなった短剣の柄を振りながら
「あの野郎そんなことを……」敗北した時を思い出したのか、歯噛みする
「響命術に関しては俺も使った事ないからなー。ブラストが回復したら練習?でもしてみるしかねぇな…じゃぁ、ちょっと食い物持ってくるぞ」
――――
お盆片手に部屋に入ってくる竜人
「オカユ?とかいう白い食い物持ってきたぞー。胃に優しい定番料理らしいんだが…これ、うまいのか?」
ベッドテーブルの上にお盆ごと置いて、ころころとブラストの目の前にお椀に入ったおかゆを運ぶ。梅干しの入った小皿も付いていた -- デルファーネス
- ありがとう、クーファ。苦労をかける……な。(ぐぐ、と身体を起こそうとするが)痛っ……ぅ……
(うめき声を上げながら、なんとか座った状態に)……はぁー、はぁー……やれやれ……手ひどくやられた。
いまさらながら……自分の無力さを痛感するな。私には言葉しかない……(震える手でおかゆをすする)……うん……おいしい。
ああ、見た目はあまり良くは見えないだろうが……米をとろとろにしてあるから胃壁にダメージが行かないんだよ。のども通りやすいしね。味も言うなれば米のままだから、そこにかるく味付けがしてある……
……君も食べたまえ。……あ、いや。このおかゆじゃなくて……そこの、金庫。ダイヤルは4983201608347291だ。
開けて食べるといい……いや、食べつくすなよ?一応……全財産だからな。(長いダイヤルに苦労しつつ開ければ、金貨がたんまりと入っている 冒険で稼いだ金を殆ど使ってなかったのが伺える) --
- 「いいってことよー。痛み止めも既に貰ってるから欲しくなったら言え」
「相手を金で釣ったり、殴って従わせるのは簡単だ。表面上はな。でもお前は金でもなく、暴力でもない手段で賛同者を集めたんだろ?」
「”言葉しか”なんて、そんなつまんねぇ言い方すんな」短剣の刃があった方を向けて、やや不機嫌そうに
「なるほどなーいや、なんか正直●ロみたいで喰えんのか?って思ってな。なら問題なさそうだ」
食事中によろしくない表現をしながら、金庫前に移動する
「これか。49832…………お、開いた。さて中身は…マジかよ、どんだけ貯めてんだこれ。まぁ、お前らしいっちゃらしいけど」苦笑いしながら
金貨を片手で掴めるだけ掴んで皮袋に入れると、金庫を閉めた。ベッドの傍の椅子に座って早速1枚喰いながら
「それにしても、あれだな。何でも解読して思うまま操作できる数式卿にも、出来ないコトがあるんだな」 -- デルファーネス
- ……ん、そうだな。……私が弱気になると君が正してくれる。いつも感謝しているよ。(もう一口食べて)
……(食事中に……と思うが、見たことない食事なら仕方ないなと思いつつ)嘔吐物に似ているのは当たり前なんだよ。嘔吐物はそもそも胃の中で消化したものが口から吐き出された物だが……
つまり最初から嘔吐物に似てるということは、消化の手間がいらないんだ。だから、疲れきった胃にはやさしいんだよ。
(金貨を食べるクーファを見て少し笑う)すまないな。おなか、空かせてただろう?……君は人間以上にエネルギー源として金貨を必要とする。その……もう少し、欲張ってもいいんだぞ?
(最初のころに比べて、金貨を寄越せ寄越せと言わなくなったから……とは思うが、口には出さない)
……そうだな。知らないものはその場で解読しなくてはならないようだからそのタイムラグはあるようだが……まったく解読できないというのは聞いたことがない。
(そっと響命石に触れる)……(目を閉じて少し念じれば、先日と同じように光を放つ)……やはり。「何か」を待っている様子なのは間違いない。この響命石は……
だが、何なのだろうな。響命召喚術は響友を武器にしたり鎧にしたり、そういった使い方が多いようなのだが……少なくとも私とクーファではその類は無理なようだ。
……(考え込みながら、おかゆを口に入れて けほ、とむせた)ごほっ、ごほっ……(思わず、手に持っていた匙を布団の上、微妙に手の届かない位置に落としてしまう)
あ……すまない。拾ってくれないか? --
- 「へぇ、人間ってのは食い物に色んな役割を持たせてるんだな。生きるために喰うのは俺と同じとはいえ……ん?」笑ったブラストを見て不思議そうに
「ホントか!? あー……いや、やっぱヤメ止め。祝杯をあげるのは、数式卿と決着をつけてからだ」
「解読できないんなら、この前みたいに反射されないかもしれない…ってことか。やり方さえ分かれば突破口になりそうなモンだがなー」当然そんな方法は知らないので苦い顔
「響命術がどういうタイプかは組んだ相手と、術者の素質によるってのは聞いたことがあるなー。数種類あるヤツも……お、おい大丈夫か?」
椅子から立ち上がると匙を手に取り、ブラストに持たせる。背中をさすりながら
「この話はまた後でやろうぜ。ながら喰いで変なトコに入って、肺炎になったら笑えないしな」 -- デルファーネス
- あ、ああ、すまない。確かに、今は食事が先決―――
ズズズッ
――ッ!!?
(さすられた背中に、何かが入り込む感覚 そして、響命石がさらに光を輝き始めた)
な……何だ?何が起きている……?クーファ!?何をしているんだ!?一体ッ!?
(背が見えず、困惑するブラスト だがその問いにはクーファも答えられないだろう なぜなら――そのさすった背中の「中」に自分の手が入り込んでいっているのだから)
(そして互いに感覚で分かることがある ……差し込んだ「手」が、「背中の中」に「混ざり溶ける」ような感覚)
クーファッ!!何かが私の中で「溶け」ているッ!!すぐに中断しろ!!放っておくと「元に戻らない」かもしれないッ!!! --
- 「いや、その…なんつーか……ただ背中をさすってただけ、なんだが……」
手首まで完全に吸い込まれた状態を理解できず、どうすればいいのかも分からぬままソレを見つめて
「…っ!」ブラストの声にハッとし、左手に力をこめて引き抜く
「一体何が…これ、夢じゃないよな?」左手を右手で触って無事かどうか確認しながらブラストに問う -- デルファーネス
- 夢……いや、そんな不安定なものじゃあない。確実な……いや、詳細はわからないが……とにかく、何かが確実に起こっていたのは間違いない。
さすってた……だけ?じゃあ、まさか……背中に何か入り込んだように感じたのは……君の、「手」なのか……?
(どくん、どくんと動悸が治まらない クーファも同じだろう そして何故か――互いの「心音」がぴたりと一致しているのを互いに感じるだろう)
(そして、響命石の光は収まっていた)……何か……何かは分からないが……わかりかけてきた気がする……
だが……まさか……いや……(しばらく考え込み、さっとおかゆを食べてしまうと布団にもう一度横になる)
……すまない。今はこの事を考えるのは……やめよう。(どくん、どくんと互いの心臓が同時に鳴る感覚 まだ――それが残っている)
今度、バーン君に相談して……みる。 --
- 「そう、触っただけだ。この手で。もちろん、そんな術は習得してねぇし、見たことも…ぅ?」鼓動が一致する妙な感覚に、右手を胸に当てて
「いったい何が起こってんだ……シルターンの妖怪にでも騙されてる気分だぜ」2枚目を口に放りこもうとして
「なに、分かったのか…!? お、おい言いかけておいてそりゃないだろー! 余計不安に……」
「……わかったよ」不満そうに息を吐いて、ベッドテーブルに乗った容器を盆に載せて片付ける
「俺はこっちにいるから、用があったら呼べ。……おやすみ」部屋のドアを静かに閉めた -- デルファーネス
- 判ったわけじゃないんだ……ただ、疑問というか……なにか引っかかるような……ともかく今は確信が持てない。
すまないな……不安にさせるつもりはないんだ。……ああ、ありがとう。君も良く休んでくれ、クーファ。私はもう大丈夫だから……
(ドアが閉まったのを見て、ふう、と息を吐く)……響命召喚術……響命石……響友……界境街………………
…………………………響融化……?(響命石に触れながら、つぶやいた) --
- 「違うな…コレでもねぇ」珍しく本棚の前に立って、本を片手に唸っている -- デルファーネス
- ただいm……(買い物袋をどさ、と落として硬直する)……どうした?熱でもあるのか?気の迷いか? --
- 「……人が真面目に調べものしてる時に、帰宅早々喧嘩売るとはなかなかやるじゃねーか」露骨に舌打ちしてから本の表紙を片手で叩き
「古い本ってのは皮脂やら何やらで汚れてて、よく燃えるらしいって話だぜ? 今ここで試してみるか」チリチリと火の粉がいくつか空中に舞う -- デルファーネス
- ややや、やめたまえ!その本は貴重なんだ、もう絶版になっているから燃えたらもう手に入らないんだ!!(慌てて本を取り上げて)
いや、私は喧嘩を売ってるつもりは無いが……君は本は嫌いだと言ってたじゃあないか。それに調べものも普段私に聞いて調べさせるだろう?
……実際のところ、どうしたんだ?何を調べていたんだね? --
- 「へへ、冗談だよ。冗談」竜人が小さく息をすると、舞っていた火の粉が小さくなり、やがて消えた
「ん? いや、まぁ……響融化前の記憶が無いっつー奴にこの前会ってな。パッと見人間っぽいんだが、妙な術を使うんだ」
「ありえねぇスピードで逃げ回ったり、分身したり、何もない所からこんなモノ出したりな」1枚の金貨をブラストに渡す
「こっちがホンモノだ。区別できねーだろ?」もう一枚、皮袋から1枚金貨を取り出してブラストに見せながら
「葉っぱになるならメイトルパにそういう術を使う奴が居る。でも、これはそうじゃない……ってんで、調べてたんだよ」 -- デルファーネス
- 君の場合は冗談に聞こえないから怖いんだ……(ふうとため息)
響融化以前の記憶が無い?妙な……術?……(顔色が変わる)
……それは……(二つの金貨を手にしながら、目を細める)少女じゃなかったか?蒼いエプロンドレスの…… --
- 「あぁそうだ。これぐらいの身長の……って何で知ってるんだ。ブラストの知り合いか? 隠し子か?」その辺に置いてある本を本棚に戻しつつ -- デルファーネス
- 面白くない冗談だな。私が出産を経験した女に見えるか?(ふう、とため息をつき)
……簡単なことだ。私も会った。ちょうど昨日……事務所を訪ねてきたんだ。
(金貨を見ながら)間違いなく、これは本物の金貨だろう。……数式をコピーした、まったくの同一品なのだからな。 --
- 「あぁ、それでか。あんな術使える奴なら、前居た場所でも目立ってたハズだ。そういう情報が何かに載ってれば辿れるんだけどな…」
「コピーって……なんか知ってる風だな。もったいぶってないで教えろよ。手がかりは多い方がいい」 -- デルファーネス
- ……単刀直入に言おう。あの少女は数式卿の関係者だ。確定はしてないが……おそらく、数式卿の娘……だ。
彼女の話す内容、それに君が言ったようなその術……私も見たが、あれは数式卿が使っていた「数式」によるものだ。
無から有を生み出し、有を無に変える……数式卿によれば、この世のすべては数式の塊なのだそうだ。その数式を解読すれば、この世の摂理を思うがままに操れる。
おそらくその少女……ロステは、魔法と思い込んでいるようだがその数式を無意識に理解している。このコインも、コインが成り立つ数式を理解し、まったく同じ数式を現出させたのだろう。
……おそらく、経年劣化も、ついた手の皮脂の量も、何もかもが同じだ。このコインは…… --
- 「娘…!? マジかよ…全然似てねーぞ」顔を思い出しているのか、視線を上にやって
「うへぇ……仮にその数式が本当だとすれば、俺とかブラストがどんどん増えたりもすんのか…どっちにしろロクなことにならねーな」
「……そういや、数式卿は何でロステを探さねーんだ? 仮にも父親なら、娘が戻ってこなかったら探すだろうに」 -- デルファーネス
- いや……それは可能だろうが、そこまで複雑だとそう簡単には彼女にも難しいんじゃあないかな……いや、分からないが。
だが数式卿はその逆だ。方法も知っているし、増やすことより……消す事を先にするだろうな……
いや、探しているらしい。先日情報屋が数式卿の情報を調べてくれた……どうやらあの男は娘を探している。
だが、黄金の数式使い同士……簡単には見つからないのかもしれない。私達には分からないような力が働いて…… --
- 「複製できるかは今度あたり…親父の方は無理か、ロステあたりに頼めば試せそうだぜ。やってみるか?」
「なるほど…その情報屋の情報が正しいって仮定すると、何でも万能にこなせる力って訳でもなさそうだな」
「黄金の数式についても調べてみるかー。ブラスト、ここにソレ関連の本って…あったらもう調べてるよな。他を当たるか〜」椅子に座って背もたれに寄りかかりながら -- デルファーネス
- やめてくれないか。仮に私やクーファが複製できてしまったら、魂までも複製できてしまうだろう。そうなったらもう片方の気持ちはどうなる?……私だったら、嫌だな。自分が複製品だと知ることは。
いや……おそらく本当に万能なのだろう。突き詰めればな。どちらかと言えば……恐らく数式卿も完全に黄金の数式を理解しているわけではないのだろう。
もしそうであれば、君の言うとおりすぐにロステを見つけ出すだろうし、その後ためらい無くこの街を消しているはずだ。それができていないのは……まだ、彼自身が解明中という証拠だろう。
黄金の数式についての情報が書かれたものは無いんじゃないかな……私も探したが、この世の摂理まで数式で解読し自由に出来る理論など聞いたことも無い。
……いや、だが……うむ、確かに。もう少し詳しく……知る必要はあるのだが。(参ったな、といったようにこちらも椅子に座る)
はぁーっ……(連日の疲れが目に見えている クーファの隣で深いため息をついた)……疲れた。……!(思わず、弱音が出てしまい、慌てて口を押さえる) --
- 「それもそうだな…悪かったよ。この話はナシだ」
「後はどこで習得したのかも気になるしなぁ…わかんねーことだらけだぜ」短剣を片手で上に投げてキャッチする遊びをしながら
その時、ブラストの左頬を掠める様に何かが飛んできた。直後に後ろの壁に刺さる音。気付けば竜人の手の中にあった短剣が消えている
「おっと手が滑ったな…悪い悪い」椅子から立ち上がると、短剣を回収するためにブラストの背後に周って
「弱音を吐くな、とは言わねぇよ。街中駆けまわってんのは知ってる。ただな…口に出すと更に疲れるモンだ……よっ」壁から投げたモノを引き抜いて
「あー…なんか説教くさくなってきたな。よし、何か喰いに行こうぜ!」肩を叩きながら -- デルファーネス
- うっ!?(かすめたナイフに体が固まる)……て、手が滑ったって……君は……
……はぁ。君だけだよそんな事を言うのは。他のみんなは、もっと休めとか言うのにな。……フフッ。
君らしいけどな……けど、刃物を振り回すのは止めて欲しいな。(隙を突いてナイフを取り上げ)壁の修理費もタダじゃないぞ?
……食いに、といっても君は金貨だろ?私はいいよ、軽く料理でも作るさ……それより……
……少し…………眠る……30分、だけ……(そのまま、クーファに身体を預けるように、気を失うように眠ってしまった) --
- 「そりゃなぁ、他の奴になら言うかもな。でも、お前は休めっつっても休まないタイプだろ? ぶっ倒れるまで走り続けるというか…」そういう所は嫌いじゃねーけど、とは言わなかった
「なっ…後で返せよ? また一人で背負い込みそうなオーラ出してたからな。気付け薬みたいなモンだ。意味も無く振り回したわけじゃねぇよ」
「はは、ちげーねぇ。まぁ…人間の食い物が喰えねーこともないからな。ちょっとぐらい我慢しても…………ん?」いつの間にか寝ているブラストを見て小さく笑う
「まったく、しょうがねー奴だな…」暫くの間、動く事もせずに、じっとブラストに寄り添っていた --
- --
- --
- --
- ……よ、いしょ。っと。
(新しく新設した事務所 少々の冒険家業でも事務所ひとつをまかなえる程度の稼ぎはできた)
(その事務所への、引越し作業 ブラストにとってはここが家になるのだから、物も結構多い ダンボールを抱えて、荷馬車との往復を繰り返す)
……………………
クーファ。……少しは手伝いたまえ。君の事務所でもあるのだぞ。(半分ぐらいやったあたりで、汗だくになりながら言う) --
- 「君の事務所でもあるつったって、ここは座り仕事やる場所だろ? 俺の専門外だ」
「大体、搬入も業者に頼めばいいじゃねーか。なんでわざわざ自分でやるんだよ」荷馬車の上に寝転んであくびをしながらブラストを横目に見ている -- デルファーネス
- それは君が暴食だからだ!私にだって金の限度はある、業者に頼む余裕などないのだ!
食ってばかりで仕事もしないで寝転がって……太るぞ……クーファ。(ジト目でクーファをにらんで) --
- 「必要経費だよ必要経費。それに、国を変えようとする奴が搬入代をケチるようじゃぁ……」
「あぁ? 聞き捨てならねー台詞だな。響友である時点で俺の仕事は9割がた終わってる様なモンだろーに」渋々、といった態度で馬車から降りる
「よっ…ん、見た目より重量あるな。何入れてんだこれ」片手でダンボールを軽々持ち上げると、どこに置くんだ?とブラストに聞いた -- デルファーネス
- 国をまかなう者だからこそ無駄遣いはせず自分でできることは自分でやるものだ。
……苦労する響友をほっとくのが響友のすべきこととは思わないがな。(ぜいぜい言いながらダンボールを抱える)
大半は……書籍だな。政治学や、召喚術、それぞれの世界についての文献……人間の知識には限りがある。だからこそ人は本を記し、残すのだ。
君も少しは……ふうっ。……読んでみたらどうだね? --
- 「ふーん…そんなもんかねぇ」すごく不服そう
「あー、悪いが遠慮しとく。読んでると歯がムズムズして噛み千切るか、寝ちまうかのどっちかだからなー」
「読むぐらいなら、体を動かして覚える方が分かりやすくて俺は好きだな………鍛えるついでに今度手合せでもしてみるか?」
とりあえず荷馬車から荷物を取り出し、ブラストが置いたあたりにテキトーに並べて置く -- デルファーネス
- 体を動かすのが好き……君が?普段から寝てるだけじゃないか……よいしょ、っと。
そもそも、体を動かして覚えることだけでなく、書物を読み、書き写し、音読することで覚えることも多いのだ。
手合わせは遠慮しておこう……正直、私は戦いは苦手だからな……(ぱん、ぱんと手をたたく)これで全部か、ふう…… --
- 「てめぇ!名誉棄損も大概にしろよ! ……必要なとき以外は節制してるんだよ。動けば腹が減るのが早くなる」
「無駄使いを抑えてるんだから、むしろ感謝してもらいたいね」肩をすくめて
窓を開けて風を通すと、椅子の上であぐらをかいて
「ふむ……ブラストは戦闘が苦手で事務が得意、俺は事務が苦手で戦闘は得意。偶然とはいえ、組んで正解だったかもな?」ニヤリと笑った -- デルファーネス
- ほう、君も名誉毀損という言葉を知っているのだね。思ったより博識だ、フフッ。
分かった、そういうことにしておこう。……うん、風が気持ちいいな。(すう、と外の空気を吸い込んで)
ああ、私もそう思う。前も言ったが、君とのめぐり合わせは神の思し召しだと思っているよ。きっとこうなる運命だったのだろう。
さてと……(ダンボールから本を出しては、ちまちまきちきちっとサイズやら著者名やら巻数やらを揃えてこまごまと並べ始める) --
- 「言葉の端々に刺がある言い方だな…。政治家なら敵を作らねー様に、もっと無難な言い回しにするべきなんじゃねーのか?」
「そうだなー、神やら運命やらに興味はねーけど、今の生活はそれなりに面白…………」ブラストの整理整頓を見ていると段々と険しい表情になる竜人
「あ゛ぁー、もうイライラする! 何なんだよちまちちまちまましやがって! もっとざっくりでいいだろ! 今日中に終わらねーぞ!?」 -- デルファーネス
- そうだな。君にしか使わないが、君で練習させてもらうよ。フフッ。(意図的なものだったようだが、楽しそうに)
そうか、君もそう思えるか……私も充実した日々だと思……うおっ!?(急に怒鳴られて思わず本を落とす)
ああ、貴重な本が!(角に傷がついてないかを確かめ、改めてしまいなおす)
た……確かにそう意味があるわけではないが、私はきちんと並んでないと気がすまないんだ!ざっくり入れたらどこに何があるか分からないだろう! --
- 「うわ、ウゼー。こいつウゼー」と言いつつ、あまり怒っている様子でもない
「脳みそついてんだったら、本の中身も頭ん中に大体入ってるだろ! すぐ必要なモノ以外は大雑把でいいんだよ、こういうのは!」
「大体、この量整理整頓とか、休憩もせず徹夜するつもりか!? また倒れたらどうすんだよお前、馬鹿か!」 -- デルファーネス
- ええい、私だって天才じゃないんだ!この量を一字一句覚えてるわけがないだろう!それにもちろん必要度に応じて順番を決めて並べてるのだ!
別に徹夜くらいは余裕だ、私は大学を主席卒業するために一週間徹夜したことも……(はっとした表情で言葉を止め、近づいてぎゅっと手を握る)
心配してくれてるのか?君にも気遣いや思いやりが芽生えたのか!嬉しいぞ、ちゃんと心配してくれてるんだな!(心底嬉しそうな表情で詰め寄る) --
- 「一週間徹夜とかお前、それ、どう考えても日中眠すぎて効率悪いパターンだろ! 頭いいのか悪いのかどっちかにしろよ!」
「は? いや、別に……な、なんだよ大袈裟な奴だな! 近っ!? 近いんだっつーの!おい、笑顔で距離詰めるな!」無意識に構えてブラストの腹部に軽く拳を入れた -- デルファーネス
- (当たり所が悪かった)
う、うぅ、気持ち悪い……(げっそりした表情で、布団も敷いていない置いたばかりのベッドで横たわるブラスト)
君はどうしてそうグーがすぐ出るのかね……うっぷ……(痛みには強いようだが……さすがに吐き気とかには素直にぐったりしてしまうようだ) --
- 「あ、あー…いや、何となく命の危険を感じたっつーか…………あぁ、もう」
部屋を出てまた戻ってくると、片手に持った紙袋を差し出す「ほい、これ使え………悪かったな」 -- デルファーネス
- い……いや……吐かないぞ私は……もったいない……(ぐおおおと唸りながら我慢する 一応紙袋は受け取りつつ)
命の危険って……私は君を褒めただけじゃないか……(はぁ、とため息)いいさ。『響友』のよしみだ……はは。 --
- 「もったいないって…………まぁ、いいや。とりあえず、そこで休んどけ。後は俺がやる。整理整頓は明日だ」
「最初の頃の眉間に皺寄せてるイメージと乖離してて、逆に威圧感があるんだよ。慣れないっつーか…」
ダンボールを手で破いて中身を取り出すと、特に整頓せず本棚にどんどん詰め込む -- デルファーネス
- ……威圧感がある笑顔はいかんな。鏡を見て練習しなくては……はぁー……
ああっおいなんて事してくれているんだ!?せっかくそこまで揃えて入れたのに!あっ逆さまに入れるんじゃあない!ちゃんと上下正しく入れてくれせめて!!
違う、それは向こうの大きい本棚に入れるんだ、無理やり入れたら……あああ本の上がこすれてるじゃないか!おい!!人の話を聞きたまえクーファ!! --
- 「……ったく、めんどくせぇ奴だなー。本の整頓ぐらいならできるか? それ以外は俺がやるよ」
そんなこんなで言い合いをしながら、事務所へ荷物を全て収められたのは夜も遅くなってからだった -- デルファーネス