名簿/433817

  • 焼却済み
  • 『思うだけで思考は纏まらない。書いてみる、口に出してみる、人に話す。
    万人に理解可能な言語化という作業を通じ、思考は明確に、明晰さを増していく。
    時には今まで見えてこなかった、新たな発見をすることもある。』
    • 『心情や状況に関して、あらゆる書き物を禁じられている現状だが、書いてすぐに燃やせば問題ないことに気がつく。
      燃やしてしまったら後で忘れてしまった時に思い出せなくなる? 忘れてしまうようなことなら大したことじゃないんだ。』
      • 『今の俺に必要なのは何か? 個の強さだの、知力だのといった部分は、生半なことでは身に付かない。時間を掛けていくしかない。
        幸い、時間は若い俺の味方だ。永遠に若いんだから永遠に味方で有り続ける。頼もしいな、時間。』
      • 『今の俺には経験が足りない。それは分かる。
        しかし何の経験が足りないのか? どうすればそれを補えるのか? それがどうにもハッキリしない。
        ハッキリ言語化出来ないのなら、それは万人の問題ではなく、個人に帰する部類だということになる。
        類例にあたる事は出来ない。テキスト無しだなんて全くクソッタレな問題だ。』
      • 『やはり外部刺激が有効か。さきの修道女から得られた意見は、中々に有益だった。
        いや彼女の意見そのものではなく、一見してその見識とは矛盾した状況に身を置く彼女が、どのような思考経路と心情を経て、ああした状況に落ち着いたのか?
        論理的な思考と、それを超越する感情のモデルケースとして、非常に興味深い材料であった。
        惜しむらくは、彼女自身からあれ以上の判断材料を得られそうに無い点か。非常に惜しい。』
      • 『当たりを引けば、思考のブレイクスルーを得られる機会に巡りあえると分かった以上、手当たり次第に人と会っていくのも、あながち無駄ではないように思う。こちらの面で世界の広さを感じることになるとは予想だにしていなかった。嬉しい誤算だ。』
      • 『キリク・ケマルとして、まぁそれなりに上手くやっていけると分かった時点で、人との関わりは不要なものだと思っていたが、それは性急に過ぎる結論だったようだ。
        しかしこうなってくると厄介なのは、キリク・ケマルというキャラ作りか。適当にやっていく分には便利だが、どうにも脇道から逸れ過ぎる。上手く調整できるほど、俺は器用じゃない。その気も無いのに女性を口説くというのも、なんだか最近は失礼であるような気がしてきた。失敗だったか? もう少しお堅い人物寄りへと、緩やかに路線変更を図るべきか?』
      • 『下らない。ラーラや先生相手ならともかく、余人に対して気を裂く余裕なんて俺には無いはずだ。
        目標をしっかり見据えていれば問題ない。
        ……目標とは別に、形に成っていない問題に対処するのが問題だった。クソ。』
      • 『まぁいいさ。今までどおりで問題は無いはずだ。後腐れのないように借りだけはキッチリ返しておいて、あとは適当に。
        キリク・ケマルの遣り方で、特に問題は無い。
        今までよりも少しだけ外部との接触を増やす。……ここ最近で借りも大分増えたんだ。どうせ返済で接触の回数も増える。
        必然と方針が噛み合う。素晴らしい。無駄が無いな。完璧だ。』
      • 『思考が纏まった。さて燃やそう。まさかこんなどうでもいいことにしか力が使われないとは、あの女も思うまい。ざまあみろだ。』




敗北の記録 Edit

黄金暦179年6月  甘き死の誘い Edit

  • 時期はいつだったか。梅雨の頃だったかもしれないし、初夏のにわか雨の頃だったかもしれない
    空気が湿り、潤っていた日のことなのは間違いない
    キリクは酒場の隅でリザードマン数名と話し、間も無くその場を後にした女とすれ違い・・・
    その際に少し、体がぶつかった
    「あら。ごめんなさい」
    彼女は愛想の良い笑顔とは裏腹に、どこか冷たい声で詫びるとすぐに出口へ向かっていった -- 珍しい髪色の女魔導師 2011-02-13 (日) 20:33:27
  • ぶつかった女の笑顔を見ると、キリクは何を思ったか、急に転げまわって奇声を発した。
    「ぐわぁあぁぁ! 古傷が、古傷が疼く……! 今の接触で、今の接触で……!」
    そのままゴロゴロ転げ廻り、彼女と出口の間に立ち塞がる。いや、転がり塞がる。
    「とんでもない……とんでもないことをしてくれたなァ、アンタ! まさか、このままタダで帰れると思ってないよなァ!」
    鋭い眼差しとは裏腹に、キリクの脳裏には如何にして彼女とお近づきになるかの方法について占められていた。
    面倒くさいナンパであった。 -- キリク 2011-02-13 (日) 21:52:45
    • そのまま歩いてうっかり彼を踏みそうになり、すらりとした長い脚を引っ込める
      面倒なのに絡まれた。内心きっとこう思っていることだろう。笑顔が少し、引きつったように見えた
      「余程ひどい傷なんでしょうね。どうすれば許してもらえる?」 -- 珍しい髪色の女魔導師 2011-02-13 (日) 22:27:42
    • 「そりゃあもう、貴女を見た瞬間に心の傷口ばっくり開いて、恋の大出血がエライことになってるよ!」
      感覚のままに吐き出した要領得ない口説き文句を口走って、片膝ついて彼女にすっと手を差し伸べる。
      「この心に穿たれた厄介な穴……貴女の事をより知って埋めるより他に無し! まずは貴女の御名前をお聞かせ願えませんか?」
      真剣な表情でフザケタことを大仰にさえずる。 -- キリク 2011-02-13 (日) 22:46:57
    • 「セレナ。ウィトゥルス半島パヴィーアの生まれ。故郷で婚約者が待ってる。これで埋まった?シニョール?」
      間断なく続ける
      「そう。治って良かった。これからは貴方のような怪我人にぶつからないよう、気をつけます」
      冷たい声に優しい笑顔。シトリンとは名乗らなかった。出身地も嘘だ
      とはいえ確かに、彼女の言葉には長靴半島とも呼ばれるウィトゥルスの訛りがある
      よくよく聞けば、所々違和感があるかもしれないが -- セレナと名乗った女 2011-02-13 (日) 23:11:31
    • 「おぉシニョリーナ。パヴィーアの生まれなら、それくらいでこのテの傷が治る筈も無い事をご存知でしょう?
      同様に、たとえ貴女に婚約者がいたとしても何の躊躇う理由にならぬことも、貴女の故郷にある恋患いの処方箋には記しておりましょう」
      ぶった切られても怯むことなく、口元には若干の微笑を湛えてセレナを見る。手持ち無沙汰の手をヒラヒラと舞わせ。
      「キリク・ケマル。レオスタン連邦ナジャの生まれ。婚約者は無し。いや、目の前にいる貴女……であればいいなと」
      別段、彼女に何らかの疑念を抱いたわけでも無いが、偽りの出身地を口にする。
      件の調査を依頼されてから、出身地を告げる必要のある時は誰にでもそう答えていた。
      答えた相手、若しくはそれを知った誰かに、何らかの反応があれば僥倖、くらいにしか告げた本人は考えていない。
      「セレナさん……もっと貴女のことが知りたいな。好きな男性のタイプとか、好きな男性のタイプとか、好きな男性のタイプとか」 -- キリク 2011-02-14 (月) 01:18:38
    • 「キリクさんはよくご存知のよう。勉強家か仕事熱心か。それとも旅行家?
      もし貴方がパヴィーアを訪れることがあったら、私が案内して差し上げます」
      めげないことと、顔立ちが少々良いことだけが取り柄な軽薄男。そう評価していたが、ここで彼女に警戒心が芽生えた
      ナジャの名を聞くと、憐れむような、憂うような色をその表情に一瞬だけ帯びたのだ~「そう、ナジャの。あそこは今、大変でしょう?
      好きなタイプは・・・」
      そこまで言って、視線の先がキリクを外れる。先ほど彼女が話していたリザードマンが2人、キリクに寄ってきたためだ
      「(ナジャの人間だと?拙いぞ、奴の差し金かもしれん)」
      片方の蜥蜴人が聞き取り難い言葉で話せば、セレナ、いやシトリンが呆れ返ったように答える
      「(うろたえるなお前達、戻りなさい。ただの引っ掛けだから、問題ない)」
      複雑な韻を踏む、不思議な言葉
      今でも一部リザードマンの間で使われている竜語で制すと、彼らは大人しく席へ戻る
      ・・・こんな言語を操ることのできる人間はそう多くは無い。が、翻訳は十分に可能だ
      「キリクさん。貴方のような男性も嫌いじゃない
      でも私を娶るのはきっと大変。お勧めはしません」
      すっ、と彼の横をすり抜ける女。甘い香水の匂いに隠れて、死霊やレイスとよく似た臭いが微かに、キリクの鼻をくすぐった -- セレナと名乗った女 2011-02-14 (月) 02:14:46
    • 「ある国を知る一番の近道はその国の人を愛すこと、って成句によりゃ確かに俺ァ勉強熱心でしょうねェ」
      ヘラヘラと軽口叩くキリクは、彼女の微妙な態度の変化、蜥蜴人の闖入を経るにつれて、より相好を崩してニヘラニヘラと軽薄な笑いを顔に貼り付けた。
      故郷の教育の賜物か、蜥蜴人とセレナの間で交わされた言葉の意味を大まかに理解することは出来た。
      剣呑さを含んだ彼女らの台詞。竜言語を操る西方出身と思しき女。ナジャに過剰な反応を見せた蜥蜴人。
      西方出身の女、レオスタンに多い蜥蜴人、ナジャへの反応。
      確信は持てないし、論理的な裏打ちがあるわけでもない。
      しかしキリクの勘は、彼女らがナジャの政変に関して何らかの形で関わっている、と告げていた。
      涼しく丁重な拒絶の言葉と共に、往き過ぎようとした女。仄かに感ずる死の匂い。
      「大変なことほど」
      少し慌てて彼女の腕を掴む。折角掴んだ機会を逃すまいかとするように。
      「燃えるタチでして。……シニョリーナ、貴女のお時間を幾許か頂けませんか?」 -- キリク 2011-02-14 (月) 20:58:52
    • キリクが掴んだ腕は華奢で、繊細で・・・しかし、あまり温もりを感じなかった。まるで夜の闇に揺れる樹木のように
      それに振り返り、見上げる女の瞳には、先程までの余裕と柔和さが薄らいでいる
      「・・・それでは少しだけ。一体何処で?シニョール?」
      薄ら笑いが癇に障った、などという訳ではなさそうだ -- 疑惑の女 2011-02-14 (月) 21:54:07
    • 「失礼。急に女性の体に触れるのはマナー違反でしたね」
      キリクはパッと手を離して面目無さそうに頭を掻いた。彼女に触れた手から、ゾッとするような怖気を感じつつも。
      「ここは少し賑やか過ぎますし、もう少し静かな場所へ……良い店知ってますから。あ、お連れの方も来ますゥ?」
      相も変わらず軽い調子で蜥蜴人に訊ねる。が、その内心は表面上の面構えと裏腹に余裕が無い。
      こうした手合いから確度の高い情報を得るには、ただ普通に話していたってどうにもならないことを、キリクは知っていた。
      誘いの言葉をかけつつも、こりゃ手詰まりかな、と心の内では諦観の念を抱いていた。 -- キリク 2011-02-14 (月) 23:17:00
    • 蜥蜴人たちは間延びしたキリクの言葉に一瞬だけ視線を集中させるが、興味なし、といった風に 仲間内での密談に戻った
      「彼らとの仕事の話、もう終わりましたから。さあ行きましょうか、もっと静かな処」
      エスコートを待たず、先に酒場を出る後姿。開いた扉から、外の新鮮な空気が店の中に入り込む
      店内の喧騒、外の静寂。扉一枚隔てて、まるで別世界のようだ
      疑惑の女は数歩進んで振り返り、キリクを待つ。その表情には再び余裕がみられた -- 疑惑の女 2011-02-15 (火) 07:45:09
    • 彼女の待つ酒場の外へとゆっくり歩を進める。空気はじっとりと湿っていて重く、キリクの足取りを鈍らせた。
      驟雨のあとだったからか? 今ひとつ冴えない表情で彼女を見る男には、それだけでないように感じられた。
      「どうにも雨ばっかりで嫌な季節ですけど、貴女のような女性と連れ立てば艶のある空気と思えるもんですから、不思議なこってすねェ」
      キリクは水気をたっぷり含んだ空気を掻き混ぜるように右手を舞わせ、覇気の無い笑いを見せる。
      当たり障りの無い会話を交えて、目指す店……裏路地に存在する人通りの少ない一角を目指す。
      昼間でも人気の少ない通りに足を踏み入れる頃には、空が夕闇の色へと転じつつある時間帯へとなっていた。 -- キリク 2011-02-15 (火) 19:12:57
    • 「雨は全てを覆い尽くしてくれる。全て。・・・私、雨女なんですよキリクさん」
      笑って冗談を言うが・・・鈴を転がしたような声は美しく、優しいのに、その笑みはどこか冷たい
      「此処ですか。あぁ、確かに静か」
      月の上る位置と、人通りの無さをすばやく、ごく自然に確認する仕草
      魔導師がその力を最大限に発揮するための予備動作、ともとれようか
      キリクのエスコートを待つ -- 疑惑の女 2011-02-15 (火) 20:02:17
    • 「水も滴るイイ女との最強タッグじゃないですかそりゃ。いやァ参っちゃうなこりゃ」
      女に合わせて空々しく笑う。薄暗い路地が空虚な台詞と笑い声で満ちる。
      キリクは耳朶を弄る涼やかな笑い声を通じて、あぁここには嘘しか無いなァ、とぼんやり思った。
      「そこの角を曲がれば店に……っと、足元回りが濡れてますんで、どうぞお手を」
      僅かばかりの光が差し、ぷっつりと人気の絶えた通りを見れば、恭しく手を差し出した。 -- キリク 2011-02-15 (火) 21:34:18
    • 「キリクさん」
      歩みが止まる。男の手に触れ、絡ませてくる女の指。
      「あなたは私と寝たいだけ?」
      この男は我々にとって何か都合の悪いことを探っているのではないか。誰かに入れ知恵されて。あるいは・・・と警戒心を滲ませ
      「それとも。私を誰かと、何かと間違えている?」
      霧雨が降ってきた -- 疑惑の女 2011-02-16 (水) 08:22:42
    • 細くしなやかで華奢な指。普段ならずっと触れていたいと思う類の物であったが、不思議とそれを感じさせない。
      「わぁ直截な言い方。そういうコトを否定は出来ませんが、も少しソフトに言い換えれば貴女をより知りたいんです」
      ヘラヘラ笑いに含みを持たせた言い方。言葉面では本心である。
      「誰かと勘違いしないように、もっと知りたいんです。そう、例えば……」
      これから口にするのはただの勘。確信なんて何一つ無い。けれど凪いだ水面揺らす一石くらいにはなるだろう、と投げつける。
      「貴女の本当の故郷、ベルチアのこととか」 -- キリク 2011-02-17 (木) 00:15:57
    • 投じられた石は大きく、小さく。波紋を広げた
      ベルチアの名が出るとほんの僅かの間、女の表情が凍る。不自然すぎたか。我ながら迂闊、そんな自嘲をしているようにもみえる
      「キリクさん。・・・・・・シッ。静かに。このまま御帰りなさい」
      否定も、肯定もしない。人差し指をキリクの唇に当てて、彼のこれ以上の発声を制する
      「あなたほどのヒトなら判るでしょう?数えて御覧なさい」
      建物の陰、屋上、暗い道の奥。シトリンたちから見えない位置。殺意を放つ集団がいる
      敏感な人間なら。いや敏感でなくとも。異様な気配と、霧に混じる爬虫類のにおいで
      自分が取り囲まれていることが判るはずだ。その数およそ10 -- シトリン 2011-02-17 (木) 00:49:43
    • 当たりを引いた。しかし肝心なのはその当たりの中身なのだ。
      (マズったな。結局大したことも知れず、警戒させてしまっただけ……しかも)
      藪を突付いて蛇を出してしまった、とキリクは唇に封をした指を見つつ、心の内で嘆息した。
      (どうにも買被られてるのか、それともこんな状況になるまで気付かなかった事への皮肉か)
      眉根を寄せて、闇と迷霧、死角の向こうに感覚の目を向ければ、無意識に腰に帯びた短剣へとキリクの手が伸びた。
      「セレナさん。どうも五体満足で帰れそうに無い、数と雰囲気なんですが」 -- キリク 2011-02-17 (木) 17:48:59
    • あなたは鈍感、という皮肉かもしれない
      しかし──おそらくナジャの──蜥蜴人たちも修練を積んだ暗殺者である。気配を消すことなど容易い
      それがキリクたちによく判る様に存在を匂わせたのは、女魔導師の合図で一斉に襲い掛かることができる、という威嚇なのだ
      『剣の名手』と謳われるまでに生き抜いた、キリクの力を賞賛している・・・と、とれなくもない
      「それを抜いてはいけない。収めて、今来た道をそのまま、お戻りなさい
      まだ引き返せますよ。シニョール」
      女の指に嵌っている指輪には、悪魔の瞳のような宝石が付いていた。それが瞬きする。まるで生きているかのようだ
      ベルチアには生物を器物に変える呪法があるというが、果たしてその犠牲者か
      「さあ、手を短剣から離して。回れ右」
      取り囲む者全てを倒すのは、さすがに難しいだろう。仮に、うまく倒せたとしても、目の前の女は、より危険な香りがする
      女魔導師は男に身体を寄せ、睦言のように囁いて、含みのある笑顔を向けた
      見逃してあげます。今なら、とでも言わんばかりに -- シトリン 2011-02-18 (金) 01:41:39
    • 脳髄の底まで侵食してくる女の甘やかな声に、キリクの心臓は早鐘を打つ。
      女の指元でおぞましい輝きを湛える、物言わぬ瞳に魅入られたかのように、身体から抗う意思と力が萎え凋んでいく。
      今ここに至って、目の前の女との歴然たる力の差に気が付き、初めて額に汗が浮かんだ。
      間近で艶然と笑う女の顔を、視線のみで追えば、まるで心の臓を素手で掴まれるが如き恐怖に囚われた。
      ここで自分を見逃す道理があるのか? 心の内に湧いた疑問に、手も足も金縛りにあったように動けない。
      しかし、程無くしてその呪縛も、聞き覚えのある声によって打ち破られた。 -- キリク 2011-02-18 (金) 21:29:43
    • 「その御婦人の仰る通り、ご温情に与ろうじゃないか。なあキリク・ケマル?」
      当たり前のような面構えで、当たり前のようにキリクの頭をペシペシと叩く青年が、そこにいた。
      キリクと女魔導師の周囲を取り囲んでいた、蜥蜴人の凶手と殺気の障壁など、まるで存在しなかったように平然と。
      いつの間にか二人の間近に立っていた男は、闇で寸断された路地裏に翠眼を煌かせて女魔導師を見た。
      「この場は穏便に……ということで宜しいんでしょう、シニョーラ?」
      呆けているキリクの首根っこを引っ掴むと、男は濃紺のマフラーを揺らして、無防備にシトリンへ背を向けた。 -- 2011-02-18 (金) 21:30:38
    • 青い舌を出し入れして、驚愕しているのは蜥蜴人たち。動揺が広がっている
      「・・・ええ・・・シニョール」
      驚いたのは女とて同じこと。彼女もやはり、男の接近に気付かなかったのだ
      (ケマル?・・・とすればこの男は・・・漆黒のネモか)
      北西の魔導王国の情報網は なかなか、緻密に張り巡らされているらしい
      逆に、男も女の顔を世界のどこかで見たことがあるかもしれない
      突然現れたこの男。ベルチアの階位でいえば、大魔導師(グランドメイガス)以上に当たる存在で、女より数段上を行く
      シトリンは余裕のある貌を取り繕うが、内心はその限りでない。その胸に去来するものは、興味と、不安と・・・
      「また会いましょう。キリクさん。ネモさんも」
      退路にあった複数の殺気が退いていくのが判る。蜥蜴人たちが道を空けたのだ -- シトリン 2011-02-19 (土) 21:21:47
    • 名を呼ばれれば、くるりと振り返ってしっかりとシトリンの姿をその目に映す。
      微妙な表情を浮かべて口を開きかけては閉ざし、少しの間を置いてから彼女に語り掛けた。
      「そうならないことが、お互いにとって最良でしょうよ」
      それだけ言い置いて、またキリクの首根っこを掴み、すたすたと歩き去っていく。 -- ネモ 2011-02-19 (土) 23:38:57
    • ネモに引き摺られながら、何度も何度も彼とシトリンの間で視線を行ったり来たり。
      また会いましょう、と言いかけては先程の師の言葉を思い返し、口を噤む。
      「セレナさん…………あー……さよなら」
      つい今しがた感じた彼女への恐怖もどこへやら。実に軽い素振りで手を振って、引き摺られていった。 -- キリク 2011-02-19 (土) 23:39:40

黄金暦182年12月  快然たる敗北 Edit

  • あ、生きてた。暫く帰ってきてなかったみたいだったから気にしてたぞ、オイ -- カウェント 2011-03-21 (月) 22:51:49
    • 暫く帰ってきてない? 俺達住んでいる所はみんな同じ、宇宙船地球号の仲間じゃないかHAHAHA!
      僕たちはこの大地でいつでもいつまでも繋がっているんだヨ! ゆえに心配は無用サ! -- キリク 2011-03-21 (月) 23:07:18
      • ・・・まあ、無事ならそれでいいけどさ
        暇なんで遊べ!博打でも戦いでも!退屈凌ぎが出来ればいい! -- カウェント 2011-03-21 (月) 23:09:35
      • 退屈しのぎねェ……ふゥむ。そういやこの前はこっちの流儀に付き合って貰っただろォ?
        そんじゃ今度は俺がそっちの流儀に合わせるってェのは……どうヨ? -- キリク 2011-03-21 (月) 23:18:38
      • マジで?いいのか?(背の大剣に手をかける) -- カウェント 2011-03-21 (月) 23:25:00
      • や、やだ……アタイ、そんな大きいの入らない、入らないよぉ……! (冗談交じりに腰の短剣に手を伸ばす) -- キリク 2011-03-21 (月) 23:47:18
      • よっし・・・って、ここでいいのか? -- カウェント 2011-03-21 (月) 23:48:28
      • ここじゃ物が壊れる。屋上に行こうぜ……あ、ここ屋上無いからそこら辺で (部屋の窓から、外の暗い路地裏を指で示す) -- キリク 2011-03-21 (月) 23:51:59
      • 了解。トァァァァ!!(窓を破って路地裏に移動する)
        さあこい!! -- カウェント 2011-03-21 (月) 23:55:13
      • ……よし、この宿は引き払って暫くトンズラさせてもらおう! (飛び散る窓の木枠を横目に、カウェントに続く)
        宿代踏み倒し成功! よし、行くぞォ! (遊びだと思っているようで、抜き放った短剣を、半端な振りでカウェントに見舞う) -- キリク 2011-03-22 (火) 00:01:54
      • 最低だこれ!?よし、成敗!!(振られた短剣に思い切り大剣を叩きつける)
        (勿論こちらは全力で振っている。戦いにおいて気を抜くような性格ではない) -- カウェント 2011-03-22 (火) 00:07:48
      • っ! (相対する大剣の振り。速い、重い、受けきれぬだろう──と頭で認識する前に身体は反射的に動く)
        (つんのめるように身を投げ出してゴロゴロと地を転がり、振りかぶった一撃からほうほうのていで逃れる)
        ……なァ? これってレクリエーションの域を超えてないかい? (立ち上がり、短剣をゆらり構えて、刃先の相手を見遣った) -- キリク 2011-03-22 (火) 00:19:19
      • ・・・え?本気でやってるんだけど(剣を中段に構え殺気を放つ) -- カウェント 2011-03-22 (火) 00:21:03
      • おいおい本気かよ……本気の遊び? それとも……ええいくそっ、良くわかんねぇな! (揺らした短剣を手に、地を這うように低く駆ける)
        いっぺんはそっちの流儀に付き合うって言ったもんなァ! (深く相手の懐に潜り込み、下からの斬り上げで大剣の手元を狙う) -- キリク 2011-03-22 (火) 00:34:04
      • んじゃ・・・Show timeだ!!(指先を切り落とそうと振られる短剣。回避するべく両手で持つ柄から片方を離し、両手を上下に広げる)
        かっっ!(何も無い空間を短剣が通過したのを確認すると剣を握った右手だけで相手の肩口目掛け袈裟切りを振り下ろす) -- カウェント 2011-03-22 (火) 00:44:36
      • っとォ! (空を切った一撃。踏みとどまって身を一回転。その回転力をもって次の一撃を放つ)
      • 大そうな膂力で……! (狙うは振り下ろされた大剣の根元。切り結ぶつもりで、左手添えて右の剣を振るう) -- キリク 2011-03-22 (火) 00:58:43
      • (ガチリと噛みあった剣を見て)へぇ・・・やるじゃねーの(感心の声をあげる)
        (幾ら両手で抑えているとは言え大剣を短剣で受け止めるのはかなりの技量は要する)
        (剣が交わった状態から、ならば、と言わんばかりに両手で剣を握りなおし)
        フッッッ!!(鋭い呼吸音。両腕の筋力が盛り上がりキリクを地面に縫いとめようとその圧力を強めていく) -- カウェント 2011-03-22 (火) 01:20:06
      • ……くぅっ! 手ェ痺れるゥ! (大剣での袈裟切り。作用点から遠い、相手の剣の根元で受けても、恐ろしく重い一撃)
        おっ、おぉぉぉ……! (鍔迫り合いから徐々に増してくる上からの圧。押し負けぬように力を込めていたが……)
        ひゅう! (打ち合わせていた短剣の切っ先を引く様にして力を逸らし、瞬時にして相手の右側面を駆け抜けつつ、脇腹目掛けて斬撃を放つ) -- キリク 2011-03-23 (水) 22:42:08
      • おっ・・・!(完全に抑えたと思っていた所を神妙な技巧により力の方向をそらされあえなく踏鞴を踏む。無防備に近い右脇腹に感じる殺気)
        (瞬間的に柄から手を離した右手を伸ばす。肉に金属がぶつかる音)ッッー・・・(見れば脇腹に切りつけられる前に短剣の柄頭に掌をぶつけてそこで止めている)
        (短剣の振りは長剣より長い剣に比べ遥かに早いが、それゆえリーチが短いという欠点がある)
        (必然四肢以外の身体に刃が触れる範囲は柄に手が届くわけだが。それでも驚異的なスピードで振られる剣の柄だけに触れ止めるなど普通は出来る事ではない)
        (しかし後ろ手に短剣を止めた男は当然とばかりに不敵に笑い)
        お返しッッ!!(身体を捻りつつ左のハイキックを放った) -- カウェント 2011-03-23 (水) 23:08:31
      • 止めたァ!? (そのまま斬り抜けるつもりが、意外な手で止められて、思わず素っ頓狂な声を上げる)
        (生まれる逡巡。相手の笑みが視界に入り──) くそっ!!
        (短剣から手を離して頭を庇いつつ後方に跳ぶ。ガードの上から突き刺さる蹴り。大きく吹き飛ばされて地に転がる)
        ……おぉー痛ェー痛ェー。丸太に突き飛ばされたみてぇだ (ゆらり立ち上がって、自身の腰に佩いた長剣に手を伸ばす) -- キリク 2011-03-23 (水) 23:23:05
      • (奪った短剣を手の中で弄んで)なんだ、いらねーのか(コートの中に短剣を収める)
        こっからが本番ってか(唇をひと舐めして相手が剣を抜くのを待ちつつ、剣を中段から右八双へ。左脇腹を無防備に相手の攻撃を誘う) -- カウェント 2011-03-23 (水) 23:29:18
      • いらねーワケねーだろ命削って手に入れた貴重品だってェーのに。すーぐ返してもらうかんな。すぐに。
        (歪曲した長剣を右手で抜き放つ。半身を引き、持ち手を蛇のようにうねらせて、相手に向けた剣の切っ先をゆらゆらと揺らす)
        (摺足でじりじりと間合いを詰める最中、ふとある事を思い出し) ……いつだったかの心臓賭け。アレ、今、やってみるかい? -- キリク 2011-03-23 (水) 23:37:55
      • 自信満々だなオイ(口笛を鳴らして)いいぜ?その賭け乗った(考えもせず即答し)
        んじゃ、さっさとベットしてくれ。ゲームがはじまらねーぜ(シニカルに笑って相手が飛び込んでくるのを待つ) -- カウェント 2011-03-23 (水) 23:43:08
      • ふへっへ、言ってくれるぜ。こちとらこんなデカくて緊張感のある賭けは初めてでさァ、手も震えちまうヨ。
        (より間合いを詰め、片刃の剣の切っ先は、相手を眩惑するかのように、複雑に不規則に揺れ動く)
        (そして得物の間合いに一歩踏み入れた瞬転……)
        ふっ! (浮動していた剣先が、鋭い殺意を纏って、一直線にカウェントの胸元目掛けて突きこまれる) -- キリク 2011-03-23 (水) 23:56:19
      • (蛇のようにうねりながら蜂の様に鋭く襲い掛かるキリクの必殺の突き)Yeeeeaaaah!!(気合一閃あげた大剣を下に振り下ろす。鈍い金属音)
        (心臓の鼓動を奪うべく飛んで来た長剣の腹に大剣の柄頭をブチ当て軌道を反らそうと試みるが、僅かに損ない脾臓部に深々と剣が突き刺さる)
        (歯を食いしばり苦鳴がもれるのを押し殺す。そして突きを放ったキリクの胸に右掌を静かに当て)
        俺の勝ち。貰うぜ心臓『ハート』(脂汗を流しながらもシニカルに笑った) -- カウェント 2011-03-24 (木) 00:15:06
      • ……! (放った突き。本気ではあった。が、今までの立ち合いから見て、相手に凌がれるだろうと踏んでいた。意外な結果に、一瞬言葉を失う)
        ば……バカ言ってんじゃねぇよ! 勝ち負け言ってる場合か! 動くんじゃねぇ、下手すりゃ死んじまうぞ!?
        (笑みを見せるカウェントとは裏腹に、いつもの余裕は吹き飛んで、色を失い焦る。胸に当てられた相手の手と言葉の意味に、少しも気付かず) -- キリク 2011-03-24 (木) 00:31:55
      • ・・・あん?(突き刺さったままの長剣を掴んで)ッッ・・・!(そのまま引き抜くと)
        ぷぅ(深々と息を吐いてその剣を地面に放った)
        安心しろ、このぐらいで死にゃしねーから。勝てる見込みがあるからやったんだぜ(シニカルに笑って刺された箇所に手を当てる) -- カウェント 2011-03-24 (木) 00:37:19
      • (常人なら致命傷であろうに、意にも介さず壮健な様子を見せる男を前にして、目を点にしてぽかんと口を開ける)
        ふ、ふっふっふ……あっはっはっはは! いやァ〜〜〜まいったまいったァ。こりゃ完全に俺の負けだわ!
        (頭に手を置き) いや、しかし困ったな。負けた俺が払う釣り合い取れそうなモンがねぇや……さっき旦那に取られた短剣じゃダメ? -- キリク 2011-03-24 (木) 00:47:33
      • (コートからキリクの短剣を取り出し柄を向けて返す)生憎だが俺にも愛用の短剣がある。それにこいつはアンタが使うべきだろ
        ん・・・?そうだな、俺が真に困った時に力を貸してもらうさ。命懸けになるだろうが心臓が賭けの対象だからな -- カウェント 2011-03-24 (木) 00:53:40
      • (笑顔で短剣を受け取り、地面に転がった剣を拾って、二刀を高々と天に掲げる)
        この剣に誓おう。キリク・ケマルはカウェント・ロッソの求めに応じ、身の危険も顧みず助力を惜しまない……と。
        (真剣な顔つきから、また締りの無い顔に戻り) ま、俺に出来る範囲でネ。命削ってもやれることには限りがあらぁねぇ。 -- キリク 2011-03-24 (木) 01:05:15
      • (剣を一振りして背に戻す)当たり前だ。ちなみに死ぬのはゆるさねーからそのつもりでな。ハハハ
        それと別に主従って訳じゃねーから堅苦しいのも辞めてくれ。ガラじゃねぇ(大仰な誓いの動作に肩をすくめ)
        んじゃ、賭けにも勝ったこったし気分良く帰らせてもらうかね(笑って腹部に手を当てたまま意気揚々と帰って行った) -- カウェント 2011-03-24 (木) 01:09:52
      • りょーかい、了ー解。お気に召すまま、あず ゆー らいく いっと。ふっへっへっへへ (上機嫌に笑って、偉丈夫の背に手を振る)
        いやァーーー (彼の姿が見えなくなると気の抜けた顔で路地裏に腰を落とす) ホントもう参っちゃうね。世界は広いわァー、はっは。
        ……一振りの剣は一つの持ち手に、ってのが原則だけど……。なんせ心臓奪われちゃったからなあ、ハハハ。
        浮気許してね、先生(ラーラ) (笑う。甘やかな目を空に向けて、快い笑いを、長いこと長いこと続けた) -- キリク 2011-03-24 (木) 01:25:15

黄金暦185年6月  果てしなき壁 Edit

  • オイ、キリク。甘いのよこせよ
    ・・・じゃなかった、暇してるか? -- カウェント 2011-04-21 (木) 21:35:41
    • 俺的には人生でもトップクラスの暇具合だけど、深遠な世界の意思は超忙しくて今にも気絶しそうな状態だって。
      何を言ってるかわからねーと思うが、つまり『俺』は暇な状態ヨ (へらっと笑って)
      何か用? IKEMEN2人でスゥイーツでも喰いに行く? -- キリク 2011-04-21 (木) 21:53:06
      • 構わんけど。女がよってきて鬱陶しくなっても知らんぞ・・・ま、冗談だが
        どっか遊びに行くっていう案は悪くはねーな -- カウェント 2011-04-21 (木) 22:05:24
      • 女が寄って来て鬱陶しくなっても知らんぞ??? ……お、女が寄って来て鬱陶しいィ!?
        な、何を言ってるのかサッパリ分からねェぜ……俺には高度過ぎて理解できないジョークだぜ……。 -- キリク 2011-04-23 (土) 21:24:39
      • ま、それはそれとしてアレよ。スゥイーツって人によって違うじゃん?
        そこらにいる女の子のスゥイーツと、俺が思うスゥイーツと、旦那の中のスゥイーツじゃさ。 -- キリク 2011-04-23 (土) 21:26:18
      • 色目使ってくるようなのは苦手でねぇ・・・ん、どんな甘味が好みなんだ? -- カウェント 2011-04-23 (土) 23:14:00
      • 苦手ってこたァ、何度か色目使われたことあるんだな、あるんだよな!? クソっ、モテオーラがハンパない言動だぜクソっ!
        俺の好きな甘味はあれね、とにかく脳にガツンとくるの。こんな凄いの初めて! ってくらいのヤツ。
        んで余韻がいつまでもジワーってくりゃ、もう最高。 カウェントの旦那が好きなのはどんなのォ? -- キリク 2011-04-24 (日) 18:27:29
      • (苦笑いで答えて)
        基本的に甘いものであれば大丈夫だけど・・・あまり趣がないものは好みではないかもな。砂糖だけ舐めてればいいではないか。ってなってしまうし -- カウェント 2011-04-24 (日) 18:43:42
      • ふっへっへ……いやいやァ (不敵に笑って頭をボリボリ掻き) 旦那にとっての『甘いの』(スゥイーツ)ってさあ……
        (不意に腰に差した短刀を抜打ち。カウェントの眼前で刃を止める) 『こういうの』でないの? -- キリク 2011-04-25 (月) 22:01:46
      • あ〜なるほど・・・そっちが好みなら拒否する理由はどこにもねーけど。やるかい?(ニヤリと笑って) -- カウェント 2011-04-25 (月) 22:18:51
      • (その問いに対して言葉で答えることはなかった。静かに笑って短刀を鞘に収める)
        (と同時に、腰に佩いた長剣を瞬時に抜き付け、横凪ぎの一閃をカウェントの首めがけて放った) -- キリク 2011-04-25 (月) 22:34:31
      • (ぴしりと乾き何かが巻きつく音がする。挨拶代わりに振られた長剣が狩人の両掌に挟み込まれその動きを阻まれていた)
        流石に二度目は無い(不敵に笑ってキリクを写す紫水晶の瞳の中に自身の足が映りこむ。蹴り足がキリクの顔へ飛んでいるのだ) -- カウェント 2011-04-25 (月) 23:36:31
      • (初撃が防がれるのを確信していたようで、右で振りぬいた長剣が止められれば、即座に左で短剣を抜き放つ)
        (再び鞘から解放された刃の切っ先は、迷うことなく、狩人の蹴り足の軌道上へと突きつけられる) -- キリク 2011-04-25 (月) 23:54:09
      • やべっ!(瞬間的に膝から先を動かし蹴り脚の起動を変えるが間に合わずにふくらはぎを深く抉り取る刃)
        っつ〜食えねぇ奴・・・(長剣から手を離し残る片足でバックステップ距離を取って体勢を立て直す。深く抉れた左足のふくらはぎからゆっくりと血液が地面へと流れていく) -- カウェント 2011-04-26 (火) 00:09:03
      • (血を払い落とすように短刀を振って、ふっと息を吐く。距離を開けた相手に対して、呆れた調子で口を開いた)
        何言ってんだァ〜? 俺ちゃんの神速必殺居合い抜きを素手で受け止めておいて『食えねぇ奴』ゥ? そりゃこっちの台詞だっての。
        (二刀構えて苦く笑う。逆手に持った左の短刃ゆらゆら蠢かし、右の長剣は相対する狩人に真っ直ぐ向けられる)
        今度はハンデ無しだ。試してぇこともあるし、前みてぇに手ェ抜くのはご勘弁願いたいねェ。 -- キリク 2011-04-26 (火) 01:03:17
      • 随分と自信があるみたいだが・・・(剣に手をかけ抜き放つ)
        もっと速い奴だっている。キリク・・・世界は広いぜ、俺達が思っているよりずっとだ(刃を相手に向ける、変形の右八双に構え)
        手なんて抜いてねーよ。アレが俺のスタイルだ。骨を断たせて命を頂くってね(シニカルに笑って相手の出方を待つ) -- カウェント 2011-04-26 (火) 01:14:41
      • 自信、か……(目を伏せて自嘲気味に笑う)
        世界は広い。だが俺の世界は狭い。それは何故か? (一足、ゆっくりと歩を進める)
        いつも俺の周りにゃ壁がある。高く高く聳え立つ、見上げることしか出来ない壁が (二足目。目を見開いて、大きく踏み出す)
        今日ここで俺は、その壁の一つを…… (跳躍。構える相手に向かって、身体を捻りこみながら猛然と飛掛かる)
        ……超えてやるっ! (落下速度と回転の力を乗せて、二刀の斬撃は同時に狩人の剣目掛けて放たれる) -- キリク 2011-04-27 (水) 00:19:25
      • ガッッ!(剣に来るならと避ける事もせずに大剣を双剣に叩き付けた)
        (押され僅かに後方にずれた自らの身体から勢いを逃すように独楽の様に横に回転し返し双剣を受け流す)
        いよっっ!(そのまま真横に見えるキリクに向け返した剣の柄頭を振りぬいた) -- カウェント 2011-04-27 (水) 00:29:34
      • (確かな手ごたえの後に、ぬるりと空気を打つ様な感覚。流される力の方向へ逆らうことなく、むしろ逆に動きを加速させ更に回転)
        ふっ! (迫り来る柄頭に、同じく双剣の把頭を打ち合わせて迎撃。その反動を利用して不安定な体勢を立て直すべく後方に跳ぶ)
        (地に足が付けば、すぐさま距離を詰め、左の短剣で上・中・下段に流れるような刻みの連撃を放つ)
        (空いた右の長剣は、隙あらば狩人を抉らんかと、獲物を狙う蛇のように揺らめいている) -- キリク 2011-04-27 (水) 23:26:46
      • (繰り出される短剣による連撃を切が浅いと見て僅かに後ろに下がるだけでやり過ごす)
        (短剣の攻撃で黒いスーツが切り裂かれ僅かに肉を抉り取っていく、顔を掠める剣だけは胸を反らし完全に避けたのは血が目に入るのを避けた為だ)
        (避けながらもその大剣の動きは止まらず相手の間合いの外から右胴に向けて淀みなく横薙ぎを振り出す) -- カウェント 2011-04-28 (木) 00:35:37
      • (紙一重で避けられる牽制の連激を繰り出しながら、機を待つ右の腕が狙う獲物に意識を注力)
        (標的が射程内に近づいてきたのを感じ取れば、揺らめく長剣が予備動作から攻撃動作へと瞬時に切り替わる)
        (相対する狩人は長剣の間に居ない。しかし間合いに近づくモノはあった。右腕の剣が狙うは、横薙ぎに振るわれた大剣)
        上手く当たれよ! (巻き上げるように地面スレスレの低さから放たれた斬り上げは、狩人の大剣の腹へと目掛けて孤を描く)
        (その一撃に、相手の剣筋を変えるのは元より、腕一本持っていく位の気迫を込めて膂力を振るう) -- キリク 2011-05-01 (日) 22:40:48
      • (キリクの一撃に対して舌を出して返す男。大剣の腹に剣が触れると横薙ぎに振られていた大剣の軌道が回転するように代わる)
        (何かしてくるのを待っていた。と言うことだろう。起動を変えた大剣がキリクの剣を剣道の巻き上げのように絡め跳ねあげるた)
        (僅かに頬を剣先が掠める、その後に続くようにキリクの右脇から肩を狙うように大剣が後を追う) -- カウェント 2011-05-02 (月) 20:02:21
      • (やはり相手のほうが一枚も二枚も上手か、と跳ね上げられた剣と右半身に強烈な痺れを感じながら、苦みばしった笑いを広げる)
        (掬い上げるように迫る大剣の軌跡を見つつ、どこか醒めた頭で考える。試すならここか、と。)
        (食らえばタダでは済まぬであろう一撃を前に、一切の動きを止めた。そのまま受ける腹積もりのようである) -- キリク 2011-05-02 (月) 20:36:48
      • (一切の澱みなく振り切られた剣は正しく右脇から肩へと白い軌道を描いて振り切られた)
        オイ・・・(一瞬後に相手が動いていなかった事に気づいて大剣を下ろすがその剣にはべっとりと血糊が付いていた) -- カウェント 2011-05-02 (月) 20:51:16
      • (剣筋に沿うようにキリクの右腕だったモノが宙を舞う。カランと乾いた音を立てて長剣が地面に転がった)
        っ痛ってってってェ、いやァお見事! ……痛っっっっぅぅぅううう! 痛ぇ痛ぇ想像してたより痛ぇぇぇぇ!!!
        (喚きながら右肩から先が無くなった血の吹き出る箇所を押さえ、斬り飛ばされた右腕と長剣、そしてカウェントを交互に見遣る)
        いやもうホント参っちゃうねこりゃ。旦那はいつも俺の想像の斜め上を行っちまうわァ……(尋常ではない油汗を噴出しつつも、薄っすらと笑いを浮かべ、何か期待するように己の斬り飛ばされた腕を注視する) -- キリク 2011-05-02 (月) 21:06:35
      • 何故避けなかった・・・(とんだ腕を拾い上げキリクを見る)
        俺だったら治るが・・・お前は・・・(険しい顔でキリクの傍へ) -- カウェント 2011-05-02 (月) 21:15:28
      • 賭けさ。ハイリスクハイリターンのね…… (流れ出る血が止まらない。徐々に青みが増していく顔で、カウェントに鋭い視線を向ける)
        (とその時突如として、カウェントが拾い上げたキリクの右腕が炎を吹いて燃え始める。熱の無い奇妙な蒼炎が、ただ右腕だったモノだけを燃やす)
        (それがすっかり燃え尽きてしまうと……キリクの右腕が何事も無かったように再生していた )

        さて…… (カウェントの横をすり抜けて、地に転がった長剣を右手で拾い上げ、その切っ先を再び狩人に向ける)
        続けようか。 -- キリク 2011-05-02 (月) 21:26:56
      • 試したのか・・・(手の中で幻のように消えた腕を確認すると静かに唇を歪め)
        (血の一滴も付いていない大剣を一振りして構えなおす)高くつくぜ -- カウェント 2011-05-02 (月) 21:31:03
      • (カウェントの顔を見れば、すまなそうに眉を曇らせ) ……悪いね。こんなこと試せる相手はアンタしか思いつかなかった。
        おかげでこれから多少の無茶してリターンも期待出来る。その分アンタに返すつもり……さ!
        (右腕の調子を確かめるように、長剣を左から右に払い、返す刃で袈裟斬り放って、狩人の左肩口を狙う) -- キリク 2011-05-02 (月) 21:44:52
      • (立てた大剣にぶつかった長剣がそのまま左肩口に軌道を変えて襲ってくる)
        ガッ!(牙を剥きその長剣を叩きつけるように大剣で弾き返すと、こちらも流れるように右脇腹へ大剣を流して切り払った) -- カウェント 2011-05-02 (月) 21:54:10
      • (弾き返される反動を生かして右回転に身体を畳み込む。迫る大剣の軌道から逃れつつも、今までより深く相手の懐に潜り、踏み込む)
        (左の短剣で、相手の背から右側面を抉りこむように斬り付けながら、飛んで来る大剣に向けて長剣打ちつけ相手の間合いから逃れようと跳ぶ) -- キリク 2011-05-02 (月) 22:13:28
      • くっ!(短剣の斬撃を避けきれないと知ると、僅かに半歩キリクに踏み込む。肉が切り裂かれ痛みが背中を襲う)
        (僅かに顔をゆがめつつも剣の射程から飛び退いたキリクを影のように追いかけ、大剣を胸元に引きなおし)
        Sting!(気合と共に喉、胸、腹へと突きを連続で放った) -- カウェント 2011-05-02 (月) 22:30:49
      • まずいっ! (予測よりずっと速い追撃に、未だ宙に浮いたままの不安定な姿勢では完全に捌ききれぬと直感)
        (強引に長剣を地面に擦らせて着地点を変更。三連突きの一手、二手目を寸でのところで避ける)
        ぐっ! (が、腹への三手目は避けられない。それでも中心ずらして右の脇腹に貫通させ……)
        ……捕まえたァ! (そのまま逆手で持った左の短剣を相手の胸元目掛けて振り下ろした) -- キリク 2011-05-02 (月) 22:46:17
      • (突きを放って崩れた体、余裕を持って避けるには難しすぎる。振り下ろされる短剣をさらに前に出て右の肩口で受け止める)
        (鎖骨を断たれるもその動きは止まらず左手がキリクの服を掴みに行き)
        頂くっ!(左足が地面を抉り跳ねあがってその膝が腹部に赤い毒針となって襲い掛かる、これが骨を断たせて命を取りに行く。まさしく先ほど彼が言った戦い方の体現だ) -- カウェント 2011-05-02 (月) 22:56:18 がふっ! (狩人の蹴りが脾腹に突き刺さる。強烈な衝撃が身体を衝き抜け、肺から空気が一滴残らず搾り取られる)
        (ぐらりと身体が揺れて、直近に出来た腹の傷から血を垂れ流しつつ、くずおれる様に地面に倒れ伏す)
        ……立てねぇ (仰向けの体勢から見上げる赤い狩人が、やけに大きく見える。壁は、やはり高かった)
        あーあ、負けちまったい……へっへ (全身から感じる激しい痛みも虚脱感も、まるで無いことのように、快い笑いが漏れた) -- キリク 2011-05-03 (火) 22:15:54
      • 人間の技はやはり素晴らしい・・・(大きく切り裂かれた右肩に手を当て止血代わりにしつつ)
        俺が人だったら勝てなかったろうな(何とか肩に剣を戻してシニカルに笑った) -- カウェント 2011-05-03 (火) 22:58:02
      • 俺も人じゃ無ぇみてぇだけどネー (急速に塞がっていく腹の傷を撫でながら、夜空を見る)
        純粋な力量の差だー…… (夜空を飾る煌く光に手を伸ばし、笑う)
        あぁ、空が高い。星に手は届かない。世界は広い、っと。 -- キリク 2011-05-03 (火) 23:22:41
      • へぇ・・・だったら俺と同じ方法を取ればいいんじゃねえか?・・・あはは、冗談だ。かなり痛いからなこれ
        (ようやく勢いの衰えた出欠部位から手を離し)一応これでも、強くなるために色々してるからなぁ、そう簡単に負けるわけもいかん
        ま、今日はこの辺でな・・・また気が向いたら遊んでくれよ、Sweetな時間をサンキューな(手を一振りして立ち去った) -- カウェント 2011-05-03 (火) 23:27:15
      • (倒れたまま手をヒラヒラと) こちらこそ、あんがとね。色々と、サ。ホントに。
        (去り行く背を見ず手を振り続ける)
        ……くっあ〜、脳にガツンときたァ〜〜〜。余韻も堪んねぇ〜〜〜。ビター、スイート、フーーール……へっへ。
        (何ともいえない表情で、また夜空に向かって手を伸ばし) ……いつか、いつか飛び越えて掴んでやるさ。 -- キリク 2011-05-04 (水) 23:14:04

黄金暦189年8月  忌避した力を Edit

  • (この街の冒険者としては別段珍しくない全身甲冑姿の人物が舞台の中央に無言で立っている。目を引くのはむしろ背負った巨大な十字架だろう そして舞台に立った目的は言わずもがな。「戦い」である) -- イルムガルト 2011-06-10 (金) 21:07:59
    • …… (背負った十字架を剣のように抜き、地面に突き立てて仁王立ちを続ける。必要ならば何時間でも立ち続ける、そんな雰囲気だ) -- イルムガルト 2011-06-10 (金) 21:32:57
      • (長短二本差しの男がぶらりと全身甲冑の前に立つ)
        お相手願おうか。 -- キリク 2011-06-10 (金) 21:44:17
      • ……貴殿が相手をしてくれるのか (直立不動のまま喋る鎧。その声は鎧越しのため、くぐもっていて本来の声質が不明瞭だ)
        腕試しに協力して頂き感謝する。どこからでもかかってきてくれ (鎧は十字架の短い方を持ち、それを大剣のようにずっしり構える) -- イルムガルト 2011-06-10 (金) 21:48:44
      • こちらこそ。甲冑被りと闘り合う経験が是非とも欲しかったところだ。んじゃ、ま、一手目は遠慮無く……。
        (歪曲した長剣を抜き放つと、ゆらゆら不規則に揺らめかしながらジリジリ間を詰める)
        (一定の距離まで詰めると……まずは試しとばかりに、速さに重きを置いた上・中・下の三連突きを繰り出した) -- キリク 2011-06-10 (金) 21:56:23
      • 三日月、異教徒の蛮刀……シミターか (その剣をシャムシールかと取りあえず判断したが、それに意味は無く――)
        ガキィンッ! (避ける、という行動を取らなかった鎧から小気味良いその金属音が3連続で闘技場に響く!)
        ……速いな。流石だ
        (甲冑の人物は悠然と十字架を振りかぶり、間合いに入ったキリクへと振り下ろす!!) -- イルムガルト 2011-06-10 (金) 22:05:35
      • (軽い音たてあっけなく弾かれる剣の先から、手にビリビリと伝わる振動に、平素のニヤニヤ笑いは微塵も無い)
        流石に固い……! (迫り来る十字を、相手の右側面に潜り込む様にして避け、すり抜けざまに手首の回転だけで斬り上げを放つ)
        (狙うは手元。甲冑に覆われぬ部分に当たれば御の字、といった感で右の長剣を振るう) -- キリク 2011-06-10 (金) 22:19:18
      • (鎧と言えど、その衝撃は中に響くハズなのだが……まるで堪えていないようだ。仮に堪えていたとしても表情が見えず確認できない
        一方、振り下ろした十字架は暴風を纏って舞台の石畳へ落ちる。打ちつけられた部分がひび割れ、刃物ではないが当たりたくはないだろう)
        身のこなしもいい……まるでネズミかと思ったぞ。だが――
        (キリクの剣はしなやかに鎧の隙間へと忍び寄るが、「ガキィッ」と鳴ったのは金属音。確かにその隙間を運良くとは言え捉えたのだが……)
        魂の篭らぬ攻撃が我が聖銀の加護を破れるものか……!
        (十字架は間に合わない。鎧の人物が咄嗟にキリクへ向けたのは鎧に纏われた脚での蹴りだ!) -- イルムガルト 2011-06-10 (金) 22:30:16
      • !? (明らかに先程とは異なる手応えに一瞬動きが止まる。迫る蹴りに対応が遅れた)
        チッ、くそっ! (咄嗟に後ろに跳んで蹴りの威力を殺しつつも、鈍器に殴られたような重い衝撃で、軽々身体は吹っ飛ばされる)
        ……おー、痛ェ痛ェ。丸太の罠で吹っ飛ばされたみてェだ (ゆらり立ち上がって剣を握りなおす)
        ただ物理的に固いだけ、じゃないみたいだねアンタ。そんじゃこっちもそれなりの手を使わせてもらおうか。
        (構えなおした長剣の切っ先を真っ直ぐ相手に向ける。その刀身からは魔力を帯びた炎が揺らめき、剣全体を覆った) -- キリク 2011-06-10 (金) 22:45:44
      • ……ふむ、存外に骨はあるようだ。――いや、その涼しい顔はただ「暑さ」に鈍感なだけか
        (キリクが向けた紅蓮の切っ先を見てそう訂正する。鎧の人物もその程度では動じない程度に鈍感であるらしい)
        面白い。遠路はるばるこの街に来た甲斐があると言うものだ……是非見せていただこう、貴殿の力を
        (ゆっくりと向き直り、十字架を高く振り上げた構えを取って悠然と待ち受ける……) -- イルムガルト 2011-06-10 (金) 22:54:24
      • 表面からは中々見えないこともあるもんヨ。アンタの甲冑下の面と同じくネ。……さて。
        (軽口叩いて息一つ吐き、剣の切っ先と共に鋭い眼差しを相手に向ける。一刀で切り伏せる強い意思を乗せて)
        この剣、どこまで其方の鉄壁の防御を穿てるか…………行くぞ。
        (駆ける。一直線に相手に向けて疾く駆ける。携える刀身の炎の軌跡を引き摺り、一瞬の内に剣の間合いまで詰める)
        (剣に乗せる膂力と共に炎も一段膨れ上がる。神速で放った右の袈裟切りが、炎のうねりを伴って、イルムガルトに襲い掛かった) -- キリク 2011-06-10 (金) 23:16:42
      • (内面、それは神にのみ見せるもの……戦いに於いては露呈させる必要の無いモノ。これでいい……)
        来るか?それも正面から……! 見上げた気迫だ。申し分ない――ッ!!
        (キリクが間合いへと侵入し、イルムガルトの鎧へ炎刀が袈裟に迸る! 一際激しい金属音が響き、熱が鎧を襲う!
        だが、彼の目算通りこの鎧は物理的に固いだけではない。信仰心により魔力等の超常の力をも遮る筈なのだが……)
        クッ!この熱量は……!?
        (イルムガルトは驚嘆した。何物をも通さぬと自負する鎧にギリギリと拮抗するキリクの剣が帯びる熱を感じ取れた)
        馬鹿な……その剣、何の手品だッ……!? -- イルムガルト 2011-06-10 (金) 23:38:35
      • 剣には何の仕掛けも種もありゃしねぇよ……っと! (全身の力を乗せて、剣の押し込みをさらに強める)
        さぁ! 力比べだ! (何の動作も無く、詠唱も無く、剣に纏った炎が激しさを増す)
        (燃やす。ただ相手を燃やし尽くすというキリクの意思に応じ、刀身から甲冑へ炎が波をうってうねる様に噴出し、イルムガルトの全身を焼きつくさんと侵食を始める。同時に剣の圧も徐々に徐々に、増していく) -- キリク 2011-06-10 (金) 23:59:15
      • この猛る焔……これが貴殿の「内面」だとでも言うのか? だが私も負けぬ、譲れぬ志ならば私とて……あるッ!!
        十字架はその身を以ってヴィルヴェアの火を鎮めることを願う燔祭の象徴である……
        (炎に身を包まれた鎧の人物が、魔術師が詠唱を紡ぐように十字教の聖書の一節を呟く……すると、鎧を包む火の勢いをみるみる弱めていく!)
        あらゆる災厄、あらゆる暴虐、あらゆる悪心を遠ざけ、その身を神に捧げる燔祭の象徴である…… -- イルムガルト 2011-06-11 (土) 00:16:18
      • む (甲冑男の詠唱で炎が弱まったのをみれば、すぐさま剣に掛ける力を緩める。猛る炎も一瞬で失せた)
        ……ふっ! (素早く甲冑目掛けて蹴り放ち、その反動で大きく後ろに跳ぶ。間合い離れれば嘆息一つ)
        ……参ったなァ。結構強めにヤったんだけど、どうにもアンタ自身には通用しないみてェだ。いやァ、困ったなこりゃ。 -- キリク 2011-06-11 (土) 00:30:02
      • よって神の子たる我々の祈りはヴィルヴェアの麓から神の御光を受けることに他ならず――
        (ドンッ!とそこで腹部を蹴られ、遅れて十字架を振り下ろすも既にキリクは間合いの外)
        ……何故退いた? 力比べと言ったのは貴殿だぞ。あまり失望させてくれるな
        (その結果が不服なのか、キリクに対して刺々しく告げる。だが、自分では気付いていない……紅蓮の曲刀が宛がわれた部分だ
        絶対の防御を誇る聖銀の鎧に、僅かなヒビが走ったのだ……外から見ても判別できるか分からないほどだが、一滴の水は岩を穿つ) -- イルムガルト 2011-06-11 (土) 00:42:41
      • 何で退いたって、そりゃアンタ、俺が力比べで負けたからだヨ。そも真剣勝負なら一太刀目を止められた時点で俺、死んでたしネ。
        オマケに…… (手から僅かに出現させた火を、忌々しげに見遣る) こんな外法に頼っても装甲一枚抜けないときた。全く情けねぇったらありゃしねぇ。
        負け、負け。俺の完敗だよ、もう。立合ってくれてアンガトねー (剣を収めると頭をボリボリ掻いて、舞台上から去っていった) -- キリク 2011-06-11 (土) 00:52:40
      • つまり貴殿は、先程の一太刀が己の全力だと言うのか? あれ以上は無いと言うのか? ……承知した。終わりにしよう
        (鎧の人物も十字架を収めてその背中を見送る) ……外法か。当然だ、異端の力など我が鎧の前では―― -- イルムガルト 2011-06-11 (土) 00:58:38
      • あらあら、でもイルム? 折角の鎧に傷がついてございますけど……?
        (「無駄だ」とでも言おうとしたイルムガルトの隣に、翼も無いのにふんわり鳥のように降りてきたシスター服の女が告げる) -- バーバラ 2011-06-11 (土) 01:00:39
      • ッ!? なん、だと……あの男、それを分かっていて退いたのか? 舐めた真似を……! -- イルムガルト 2011-06-11 (土) 01:02:50
      • ああいえ、それは正直計りかねますが……(相変わらず思い込みの激しい子……) とにかく今日のところは帰りましょう?
        (シスターは鎧を説得して連れ帰っていった) -- バーバラ 2011-06-11 (土) 01:05:00






過去の記録 Edit

黄金歴186年8月 Edit

  • 夕暮れに差し掛かり、じりじりと照りつけるような暑さが収まってきた墓地では、生温い風に吹かれて色とりどりの花が花弁を揺らしていた。
    西日を反射して煌く豪奢な墓石。極めて簡素だが良く手入れの行き届いた墓標。ただ冒険者証の番号が刻まれただけの名も無き墓標。
    生前の個性が反映されるかのように様々な形態で林立する冒険者たちの墓の中を、紙巻煙草を吹かしながら花を捧げ持って歩く一人の男が居た。
    男は特定の墓の前に立つと花を供え、一言二言呟き、一つ煙を吹かすと、また別の墓へと向かって、そこでも同じことを繰り返す。
    違いがあるとすれば、呟く言葉の内容と、捧げる花の種類、そして男が僅かに浮かべる表情の色くらいであっただろうか。
    • 空の色が茜色から深い藍色に転じようとしていたころ、ようやく男は最後の一本になった花を手にして、一つの墓の前に立った。
      相当古い墓標であるらしく、作りが簡素なのも相まって、見る者にとっては非常にみずぼらしい印象を与える。墓碑銘も無く、ただ冒険者番号のみが刻まれているのも、そうした印象に寄与するところであろう。
      男はそのみずぼらしい墓の前に、既に花が供えられているのを見ると、表情に複雑な色を湛えて、自分が持参した分の花も供えた。
    • そんな様子の墓参りの男を、醒めた眼差しで見つめる者がいた。
      キリク・ケマルには意味が分からなかった。
      「センセー、この街に来るたび、こんなことしてんの?」
      一応は師と仰ぐ者が、何故にこのようなことをしているのか?
      眉根を寄せながらも、口元には微笑を湛え、慈しみをもった視線を向ける先が、名も無きみずぼらしい墓標。
      師がこうした手合いの表情を、生者に……そして自分に向けたのを、見たことが無いキリク・ケマルは、憮然とした面持ちで疑問の言葉を投げかけていた。 -- キリク
    • 男は墓碑銘の代わりに刻まれた番号『15149』を、そっと指で撫で、自分が供える前にあった花に視線を転じた。
      「一回で全部の墓まわるのは大変だけどさ、そうちょくちょく来れるとは限らなくなったしね。やれる内に、どばーっと纏めてやっておきたいんだ」
      墓守の人に任せっきりってわけにもイカンよ、とキリク・ケマルに平時の気だるげな表情を向けて、男は年季の入った墓標に手を置いた。
    • 「俺が聞きたいのはそういうことじゃない」
      玄妙な輝きを放つ男の翠眼に鋭い視線を飛ばし、キリクは腕組みをして首を捻る。
      「なんでそんなしち面倒臭いことを続けてるのかって聞いてんだよ。意味だよ、意味」 -- キリク
    • 「本気でその質問をしてるんなら、俺がいくら言葉で説明してもお前には絶対に分からない」
      男は表情を変えずに紙巻煙草の煙を空に吹き上げて、歯噛みしたキリクから、つと視線を外す。
      「そもそも言葉で説明しても伝わることじゃない。俺は未だにそういう質問をお前がしてくることに、残念な気持ちでいっぱいだよ。本気の質問じゃなかったとしても、さ。10年間、この街で何をしていたんだ?」
      男の喫煙ペースが僅かに速まった。
    • 「年を取らない、死にもしない男が、死者を悼む気持ちなんて分かるわけないだろう」
      論理だった道筋など放棄して、キリク・ケマルはただ感情のままに言葉を吐き出す。
      「だからさあ、センセーの気持ちを知りたいんだよ。センセーはどう思ってんだよ。俺はどう思えばいいんだよ。教えてくれよ。なあ? 俺も、センセーも、同じなんだろう? なあ?」 -- キリク
    • 「ああ、気付いちゃった?」
      弟子の縋るような目付きを見て、ふと男は思う。
      こんな光景をいつだったか、自分と師匠も展開していたんだろうな、と。
      男は一瞬過去に想いを馳せてから、現在に、キリク・ケマルに目を向ける。
    • 「気付くさ。気付かないのは余程のボンクラだ」
      己の早熟な身体が成長を止めたのはいつだったか?
      「俺が『キリク・ケマル』と自分で名付ける契機になったあの日から、俺とラーラとセンセーの身長差が縮まることも離れることも無くなっちまった」
      15歳になったあの日。下らない慣習を破っただけで、周りが大騒ぎし、今までに見たことの無い深刻な顔つきしていたラーラが印象的だった、あの日から。
      「それにラーラとセンセーは出会って今に至るまで何一つ変わって無い。テュケー……領主サマも、あの女だってそうだ。あの村で他に類例が無い特別な名前を持つ……いや、命名の儀から外れた名も無きものだけが、加齢した様子の無い事実。そんだけ材料が揃ってりゃ、薄々は気付く。誰でも」
      それに、と言い加えつつ、キリクは右手を握ったり開いたりを繰り返した。
      「試しもした。普通の人間なら、切断された腕が勝手に元通りになるわけが無い」 -- キリク
    • 「試した!? お前そんなバカな真似したのか!」
      キリクが訥々と語るのを無表情で聞いていた男だったが、最後の件へ話が及ぶと、余裕ぶった態度を急変させて咥えていた煙草を地面に落としてしまった。
    • 「剣と剣を交えれば、腕の一本や二本が飛ぶなんて、日常茶飯事だろ?」
      こみ上げる笑いをこらえるように、キリクは口元に手を遣って眉を顰めさせる。
      狼狽した様子の師を見、右腕を切り飛ばした赤い狩人へと想いを馳せれば、自然と甘やかな笑いが沸き起こってくる。
      隠した口元の笑みを鎮ませ、一つ息を吸ってから、キリクは師に向かってまた訊ねる。
      「……マジで年取らないし、死なないの?」 -- キリク
    • キリクに問われ、男は懐から新しい煙草を取り出してゆっくりと点ける。星が瞬き始めた空に向けて煙を一つ吹き上げてから口を開く。
      「マジ」
    • 「マジかよ」
      キリクは上擦った声を上げて、天を仰ぎ見た。
      その表情に、険は無い。 -- キリク
    • 男はキリクの語感から、ある一つの感情を読み取ると、露骨に胡乱気な表情を浮かべて紙巻煙草を軽く咬んだ。
      「……なんでオマエそんな嬉しそうなの?」
    • 「ラーラとずっと一緒にいられるだろ」
      キリクは大真面目な表情でもって、大真面目に断言した。 -- キリク
    • 男は五秒ほどキリクの顔を凝視し、そこに諧謔や偽りの色が無いのを見て取ると、大きく大きく溜息を吐いた。
      「羨ましいヤツ。マジで羨ましいよ。俺の半生がバカバカしく思えてくるわ」
    • 「バカバカしいだろ。今日半分を墓参りに費やすなんてよ。そんな名前すら刻まれてないボロボロの墓に花を供えたところで……」
      一つのことが引っ掛かりキリクは言葉を詰まらせる。直前までの話の流れから、目の前の墓に欠けている一つのものに。
      「墓碑銘が、無い?」 -- キリク
    • 愛しさすら感じさせる手付きで、男は墓碑銘の無い墓をそっと撫でる。
      「俺の従姉妹殿の墓」
      続けて男が来る前から供えられていた花に目を移し、ふっと穏やかに微笑む。
      「その花を供えたのは、この人の母親……俺の伯母さん」
    • キリクの心が、ひどく揺れた。
      何に対して、どのように心が動いたのかは、良く分からなかった。
      墓の主、供えられた花、師の言葉と表情、彼と彼女らの間にたゆたう何か。
      それらのことが全て綯い交ぜになって、キリクの心を乱した。 -- キリク
    • 「キリク・ケマル。お前は死を知らない。だから今は俺の気持ちが分かる事は無い。分かった気にすらなれない」
      男は墓地全体にぐるりと視線を巡らす。幾つかの花の芳香が、ふわりと夜風に運ばれて鼻腔を擽った。
      「まだお前は本当に大事な人を失ったことが無いんだろうな。良い事さ。失う前に大事だって気付いていれば、さ」
    • 「……本当に大事にするためには相手を必要としてはならない。必要としていないからこそ、相手を本当に好きでいて、本当に守ることが出来る。だから……」
      キリクは両の手に力を篭めて肩を振るわせる。腰に佩いた二振りの剣が揺れ、軽く音を立てた。
      「だから、いま、俺はこの街にいるんだ」 -- キリク
    • 「なんだ、お前も師匠に同じこと言われたのか?」
      男は軽く笑って東の空に翠眼を向ける。想いも視線と同じ方角に向けば、自然と男の口元が綻んだ。
      「目指すところにはまだまだ遠いなあ。お互い、頑張るとしようぜ。はっはっはっはっはっ」
      キリクの肩にポンと手を置くと、男は、ネモ・ダカールは軽やかに墓地を立ち去っていく。
      夜の帳が下りてひっそりとした静けさの霊園に、場違いな明るい笑い声を残して。
    • ひとり残されたキリク・ケマルは、言語化できない己の胸の内をただ茫洋と見つめていた。ハッキリと形にはならない、何かを。
      「……くそ。まだまだ全然だ。全然駄目だ。何だ。何が足りないんだ。くそ、ちくしょう」
      苛立たしげに頭を掻き毟り、厭わしい心を振り払うように、墓石の間にぼうぼうと生えている下草の上へ寝転ぶ。
      「……月が綺麗だな。……こうして見上げる空は、誰もが等しく見えているっつーのに」
      どう見えているかは一人一人違うか、とぼそり呟くキリク・ケマルの目に、風に吹かれて漂う花びらの影が過ぎていく。
      キリク・ケマルは目を閉じて、風に流れてくる花の芳香に暫し身を任せた。
      秋の匂いを含み始めた晩夏の風が、静かにゆったりと、無数の墓標の間を舞う夜だった。 -- キリク

黄金歴179年6月 課題その2の反省会 Edit

「この……馬鹿がっ!!」
「っっっっ痛ってぇ〜……あにすんのさセンセー」
解かれた包囲の中を悠然と、少しばかり足早に歩いて抜けていったキリクと『センセー』の二人。
人通りの見える路地までやってくると、『センセー』はキリクを思いっきり張り飛ばした。
「言いたいことは山ほどあるが、まず今お前が住んでる宿に行くぞ。なるべく急いで」
「なんでっすか?」
「なんでっすか? だって? アホかお前は。あの女、お前の名前知ったんだぜ? 冒険者登録してる名前をだぞ?」
「……あ」
キリクは『センセー』の危惧するところに思い至ったようで、顔色に険を浮かべた。
名前を知っていれば、住処を探り当てるのはそう難しいことではない。
そうそう頻繁に宿を変えているか、逗留の際に偽名でも使っていない限り、ギルドに問い合わせれば一発で分かることである。
未だに背後と周囲への警戒を滲ませつつ、『センセー』は苛立たしげに紙巻煙草を咥えた。
「お前どうせ後生大事に送られてきた手紙、保管してんだろ?」
「アレ見られるわけにゃ、いかないっすよね……」
「物証になるからな。そういうワケだから……あの通り抜けたら走るぞ」

+  長いので格納

黄金歴179年6月 Edit

『さてセンセーから貰った課題その1の状況をお知らせしようと思います。

 パーヴェル・ロージン。女性。冒険者。魔法使い。年齢20前後。

 センセーに事前に知らされた情報は、彼女自身が語ったこと、あるいは見たままと合致していました。
 さて、肝心のそれ以外の部分。要点にして抜き出してみます。

 金髪碧眼。細身の麗人。何らかの神に仕える聖職者。雰囲気はカワイイ系。
 冒険の動機は魔物討伐の助けとする為。細身であるが出てるところは出ている。
 そんでお隣の北の雪国出身。

 容姿以外の情報については彼女の口から語られたものですから、真偽のほどは確かではありません。
 しかし、嘘をつくような状況でもありませんでした。
 本当のことを言わなきゃならない状況でもありませんでしたけど。』

大して分かってること無いなァ、と思いつつ、キリクは筆休めにパーヴェルから貰った花束に目を移す。
青い花一輪、そっと手に取り匂いを嗅げば、瞼の裏に彼女の清楚な笑顔が浮かんだ。

『北の雪国より持ってきたという青い花を、彼女から貰いました。
 何かの参考になるかもしれませんので、押し花にして同封しておきます。
 それと彼女直筆の端書も手に入れましたので、それも送っておきます。

 現状では、そちらのご期待に沿えるような情報は、何一つ得られていませんので、今後も接触を続けてみることにします。』

黄金歴179年4月 Edit

「よう。卒業おめでとう、不肖の弟子」
「うっげ、センセー空気読んでよ。ここはラーラが来るとこだろ?」
キリクはこの街の知己に対するものとは、少し違った馴れ馴れしさで対面の男に愚痴を零した。
キリクに『センセー』と呼ばれた男は、気にするふうでもなく紙巻煙草に火を点けて、鼻を鳴らす。

「そんじゃ俺からの卒業試験に正解出来たら、あのメスブタに会わせてやるよ」
「へぇへぇ、お手柔らかに頼みますよっと」
「問題。人を一番成長させる要素は何か?」
「うわ、サービス問題じゃん。答えはカンタン、『出会い』だ」
合ってるっしょ? と自信満々に即答したキリクに対し、『センセー』は紫煙を空に一つ吹かして、
「ブブー。不正解」
と、指を十字に交差させて皮肉気に眉を形作った。

「ええ〜、なんでよ!? あってるだろコレで!?」
「それが違うんだなー。惜しいっちゃ惜しいけど。正解は……」
「正解は?」
「別れさ」

キリクは動揺した。
発表された答えにではなく、『センセー』が見せた表情に。
飄々と笑っていた目の奥が、一瞬にして此処ではない何処か……彼岸を臨む果てしない色を帯びていた。
キリクは彼のそんな瞳を、今まで一度たりとも目にしたことはなかった。

「答えの解説はしない」
「……」
「お前がソレを分かるまで、卒業は無ーし」
「……」
「キリク・ケマル。完全なる剣、だっけ? 至るには、まだまだ遠いねえ」
「……うっせ」
拗ねたように顔を逸らすキリクに、『センセー』は笑って彼の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。

「そこで未熟なキリク・ケマルがいち早く成長するために、ジョン先生は直々に課題を出すことにした」
「課題ぃ〜? なんですか? 面倒くさい系?」
「飲みながら話そう。奢らせろよ、バカ弟子」
「……ラーラと飲みたいー! ラーラにお酌されたいー!! ラーラにイイコイイコされたいー!!!」
「課題一つ、こなしたらなー」

黄金歴178年11月 Edit

『かねがねラーラより御要望のあった件の黒い刀の女についてですが……
 ラーラが言っていた【ちょっと変わり者のハズ】というレベルを遥かに超越していました。
 まず初っ端から宗教の勧誘です。変な頭巾被ってます。口調は、というか彼女ら単語でしか喋りません。
 もうこの時点で三倍満確定なんですが、その喋る内容がまたアレなものでして、
 我らが大導師の10倍は唐突で難解な言語群が、リズミカルに彼女らの口から飛び出してくるのです。
 とまあ、そんな次第でありましたから、ロクに彼女らと意思疎通が取れなかったもので、
 もしかしたら件の黒い刀の女と彼女らは、全く関係が無いのかもしれません。
 そこいらへんは次に彼女らと会った時に、黒い刀について詳しく訊ねてみようと思いますが、
 なにぶん言葉のドッジボール状態なものですから、あんまり期待せんといてください。』

そこで一旦筆をおき、キリクは傍らにある頭巾を手にとって弄繰り回してみる。

『入信記念として、いえ俺は入信したわけではありませんが、彼女達から頭巾を貰いました。
 二つ貰ったので、一つはそちらに送っておきます。多分、そちらの正装とはマッチするんじゃないでしょうか。』
正装したラーラと頭巾の取り合わせを脳裏で思い描き、キリクは少しだけ口元緩ませる。
正装の師は腰に手をあて胸張って、顔布の下では満面笑顔で得意気な顔をしているのだろうなあ、と用意に想像がついた。
実に微笑ましい、とキリクは思う。

『さて、彼女らの信仰する宗教についてですが、俺が思うに……』
一息ついて筆は続く。
正体定かならぬ女達と、その背後に窺える茫漠とした観念について、予断含みにつらつらと。

黄金歴178年3月 Edit

『春は出会いと別れの季節。今月は学園の卒業式がありました。
 俺が所属する科にも卒業生が一人。入学以来、二年間お世話になった先輩です。』

ふとキリクの筆が止まる。
お世話?
ただの一度でも、お世話になっただろうか?

『この街は変わり者が多く、ちょっとやそっとじゃ個性的なんて思われませんが、
 その卒業生は俺が今まで出会った中でも、とびきりカワリもの……と言いますか、
 ファニーというか、クレイジーというか、頭おかしいというか、COOLというか……、
 何とも形容し難い存在でした。
 自称芸術家の彼女ですが、彼女そのものが現代アートのような有様であったので……』

つらつらと頭に浮かぶがままに、彼女の印象を書き連ねる。
世話になった例は無いが、楽しませてもらったことには間違いない。
狂おしく騒がしかった教室の風景を思い返しながら、愉快そうにキリクは筆を運ぶ。

「いやいやいやァー、もぉ退屈感じる暇なんてありゃしないほど騒がしかったねぇ」
その呟きには少しだけ、もう戻ってはこない時への寂寥が滲んでいた。

黄金歴177年11月 Edit

『わざと馴れ馴れしく接して相手との距離を一定に保つ、貴方の遣り方。感心しません。』

うへぇ、とキリクは呻く。
こちらの本心見透かされた、ラーラからの手紙を見て、キリクは誰に見せたことも無い苦い顔をする。

『そうした手段は大人の手口であり、技であって、お友達づきあいに使うのは甚だ失礼なこと。
貴方はまだ若いのです。失敗を恐れてはなりません。自ら失態を演じるような、小癪な計算は不要です。
青春の蹉跌も無しに、真の成長を遂げた人間はおりません。飾りも偽りも無い貴方を見せてください。』

「……つってもねぇ」
キリク・ケマルは、明るく、楽しく、不真面目なキャラですヨ?
四六時中つまらなそうにして、冷笑ばかり振り撒いてるよか、ずっとマシでしょうに?
ラーラの綴る文面に内心で反駁しつつ、キリクの眉間に刻まれた皺はより深くなる。

『……そうした行いを改めない限り、私の水着写真は絶対に送りません。』
声にならない叫びとはまさにこのことか。
「が」だの「ぐ」だの濁音をやたらと伴う、短い息の切らしが、間断なくキリクの口から漏れた。
キリクは悩んだ。大いに悩んだ。

『とにかく心配なんだから一度は帰ってきて』
との文面を見て、ほっこりした気持ちになるまで、キリクは無言のうちに煩悶を続けた。

黄金歴177年8月 Edit

『ラーラも既にご存知のとおり、4月になって俺にも後輩ができました。』
同じ科の後輩へ筆が及ぶに至って、キリクが彼女との記憶を思い起こしていると、体の節々が疼いた。

『まぁ何と言いますか、後輩ちゃんは実にホットなアンチクショウでありまして、相手が先輩といえども容赦しません。
彼女からの残虐行為手当てが支給されるとすれば、僅か4ヶ月の間ですが、もう既に老練冒険者の稼ぎ1か月分に相当しているかと思われます。』
といったことを書きながら、実に楽しそうにキリクは笑っていた。

『俺は実に良い後輩に恵まれてると思います。
こうも律儀にツッコミを入れてくれる娘は、そうそう見つかるもんじゃありません。』

「いやもうホント、有難いやねェ」
思わず口に出し、苦笑に染まった頬を空いた左手で撫で摩るキリク。

『そんなこんなで学園生活は順調であります。
さて話変わって、現在は夏の盛りの真っ最中ですが、ラーラの水着姿などを納めたものなど御座いましたら是非とも…………』

黄金歴177年6月 Edit

『しかしこちらの夏の暑さには辟易させられます。』

去年も体験したことである。
故郷と此方では、そう然して外気温も変わらぬのだが、石畳の多いこの街では、土と違って太陽の照り返しが猛然と体に浴びせられる。
特に都会の中心地、人工的な建築物が軒を連ねる場所では、それが顕著であった。

『あんまりにも暑いから特別夏服デー開催しました。』
キリクはちょっと考えてから、女子制服を着た記述は一切書かず、写真の類も同封しないことに決めた。

黄金歴177年4月 Edit

『春眠暁を覚えず。眠いのです。とても眠いのです。ねm』
翌朝、めちゃくちゃになっていた手紙を丸めてポイするキリク。
いつも以上に目は細まり、眠そうというか、さらに眼つきが悪くなっているというか。

黄金歴177年1月 Edit

キリク・ケマルとなってから一年が経った。
自ら選び取った名。自ら選び取った人生。
キリクはじっくりと、ここ一年を振り返ってみる。
「……特に変わんねぇなァ」
山暮らしから一転、都会に出て冒険者になったのだから、勿論環境の変化はある。
今まで出会ったこともないタイプの人間とも幾人か知り合えた。
が、主体である自分はどうか?
一年前と然して変わりは無いな、とキリクは思った。
第一目標である腕磨きのほうは全然まだまだ。
到底、ラーラの『剣』足りえる存在とはいえず、いまだその道程は遠い。
「まァ、焦ってもしゃあねェしな」
鼻歌交じりに新年の挨拶を手紙に綴り始める。
その様子は一年前と少しも変わらず……恐らくこれからもずっと。

黄金歴176年10月 Edit

キリクの許に一通の手紙が届いた。
すわ、ラーラからの手紙か、と喜色満面で封を切ったが、署名を見たところで露骨に落胆した。
「なァ〜んだ、大導師からかよ」
溜息混じりで文面に目を通す。中身はキリクが先月問い合わせた件についてだった。

『ギスヤンキについて分かっていることは非常に少ない。
 彼らは本来、此方とは次元の異なる神々の領界に住まう者である。
 高い技術力を擁し、手製の武具で身を固める。
 サイオニクスと呼ばれる、魔法とは異なる技術体系の超常力を有している。
 ’’こちら側’’では、どれほど力を揮えるか不明であるが、人間などとは比較にならぬ力を持った種族である。
 また、他種族に対して異常なまでの攻撃性を示す。
 何でも彼に対して失言に及んだらしいが、殺されなかっただけ幸運というもの。
 とはいえ人界で冒険者をやっているくらいだから人間に対して友好的な個体なのでしょうけれど。』

後半部分に差し掛かったところで、キリクの背に一瞬冷たいものが走ったが、直後の記述でホッと一息。
にしても、ラーラに比べて何と味も素っ気も無い手紙であるか、とキリクは嘆いた。
が、そんな感慨も、最後に付け加えられた追伸で、どこかに吹き飛んだ。

『アレの水着写真を御所望のようだけど、私が握りつぶしておいた。
 本当に見たければ、一度は此方に帰ってきなさい。』

「ちっくしょ〜〜〜う!!」
キリクは口惜しげに筆記台へ拳を打ち据える。
本当に悔しそうに、何度も何度も。

黄金歴176年9月 Edit

『今月はアルゲントゥムというデミヒューマンと共に依頼へと赴きました。
 彼の容貌については同封したものを御参照ください。
 

 精緻な細工の施された鎧に身を包み、超常の力を揮う、彼のような異種族の存在は十分驚きに値するものでしたが、
 それよりも、彼を見て特段の反応を示さない同行者への驚きが勝りました。
 まったく、この街の冒険者における異形への許容と適応力に、改めて気が付かされました。』

と、ここまで書いてキリクはペンを動かす手を止める。
暫し考え込んだ後に、また利き手で文字を綴り始めた。

『アルゲントゥムは何という種族であるのか?
 直截に聞いてみたところ、ギスヤンキである、という答えが返ってきました。
 初めて聞く種族名です。街にある記録を浚ってみても、該当する記述を見つけることは出来ませんでした。
 彼自身に詳しく問い質そうと思いましたが、カドの立ちそうな話題であったもので自重した次第です。
 ラーラは、このギスヤンキについて何かご存知でしょうか?』

またキリクの手が止まった。
今度は長い間、唸ったあとに手紙の続きを再開する。

『ギスヤンキについての文献など御座いましたら、是非送ってください。
 未だ送られてきていない、ラーラの水着写真と一緒に是非送ってきてください。』

黄金歴176年8月 Edit

『夏ですので至急ラーラの水着姿の写真を送ってください。今月、俺に言えるのはそれだけです』

黄金歴176年7月 Edit

『最初は、いきなり毒を食らわせやがってこの平たいの! と思っていました。
 ですが、治療をしている間に悠然と泳いでいるシンジクンを眺めてるうちに、
 俺の心の中で、彼に対する友誼のようなものが芽生えているのに気が付いたのです。
 一時は手酷い目に合わされたのですが、自らを死地に追い遣ったモノに対する敬意とでもいいましょうか、
 河原で殴りあった相手と友情が生まれる類の現象とでもいいましょうか。
 とにかくシンジクンは学び舎を共にする俺の友達となりました。
 あ、ちなみにシンジクンはA科の教室で飼っているミニエイの名前です。

 新たな友が増えたのですが、厄介な問題があるのです。
 シンジクンは狙われています。暴虐な食欲によって命を付け狙われています。
 そんな危機的状況にあるとは露知らず、水槽の中をスイスイと快適そうに泳ぎ、
 円らな瞳をこちらに向けてくるシンジクンを見ていると、
 何としても俺が守らねば、という気持ちになってきます。
 エイは可愛いです。エイは愛らしいです。でも毒持ってるから気をつけて下さい。』

沸いているとしか思えない文章を平然と綴っていくキリク。
正気と狂気、どちらの光を宿しているかは、その極小の瞳からは窺い知ることは出来ない。
ただ一つ平時と違う点があった。文章綴りながら呟く文言である。
「いあいあ」

 

黄金歴176年6月 Edit

今月、キリクがラーラに宛てた手紙は書き出しからして間抜けなものであった。
エイの毒で死に掛けました
キリクは思う。
これを目にした時、ラーラはどんな反応をするであろうか、と。
「笑うのかな? 死ななくて良かったねぇ、って安堵すんのかな?」
或いは両方か。ラーラの性格なら十分にありえる。

書き出しはマヌケな話で始まったが、キリクにとって今月は大いに実のある月であった。
先月、闘技場である試合を観戦したこと。
その試合中にある点で違和感を覚えたこと。
今月になって闘技者の一方に思い切って疑問点を訊ねてみたこと。
返ってきた答えの実に痛快であったこと。
これを詳細に長々と綴った。
事細かに描写するつもりは無かったのだが、心に燻る高揚からか、意図せずして筆が走ってしまったのであった。
『ラーラ。いま俺は世界の広さを初めて実感したと思います。
 世界を形作っているのは、まさにそこに住まう人達なのですね。』
結びを終えた手紙を前に、キリクは大層満足気に息を吐いた。

黄金歴176年5月 Edit

書いては手が止まり、読み返しては丸めて捨てる。
キリクの足元には紙くずの山が築かれていた。
「……どー書いたらいいもんか。いんや、そもそも書くべきか」
キリクは今月の冒険で同行者一人を亡くしていた。
それどころか危うく自身もその仲間入りするところだったのである。
このことをラーラへの手紙にどう書いたらよいか?
先程からキリクの頭は、この問題で占められていた。
「書かない……でも何かの拍子で俺の依頼書をチェックされたらバレるしなァー」
出来れば貴方の感じたことを率直に知らせて欲しい、とラーラは言ったのだ。
嘘を書くのは元より、今月の冒険の事を『書かない』のも、ラーラに対する裏切りであるようにキリクは感じていた。
「つってもホントのこと書いたら、ラーラ心配しそうだしなァ」
参ったねー、と繰り返し呟きながら、ダイスを手と宙の間で何度も往復させる。
10面ダイスが角度を変えて映し出す数字をボンヤリ眺めているうちに、とある考えが脳裏に閃いた。
「書いても書かなくても心配されんなら、正直に書いたほうが良いジャン。それも全部」
うっへっへっー、とご機嫌に笑ってキリクは筆を走らす。
手紙には、今この考えに到るまでの思考経路を丸々描いた文面が綴られようとしていた。

黄金歴176年4月 Edit

『親愛なるラーラへ

 4月になりましたので当初の予定通り学園のA科に入学しました。
 これから学び舎を共にする人達ですが・・・…あー、まぁ、何と言いますか、この街の冒険者連中と同じく形容し難い人々であります。
 言葉で説明するのは難しいので、教室で出会った人との写真を同封しておきます。
 

 それと俺の故郷について訊ねてきた旅行者?と出会いました。
 ざっと差障りの無い範囲内で説明すると、どうやら彼女の旅の次の目的地は我らが故郷となったようです。
 この手紙が着く頃には、もう滞在していないかもしれませんし、彼女がシュラインに立ち寄るとは限りませんが、
 もし金の瞳に空色の髪をしたジャコモという名の少女に出会いましたら、ラーラ特製の兎料理を振舞って頂ければ幸いです。

 冒険の方は順調そのものです。ラーラが心配するようなことは今のところ何もありません。
 季節の変わり目ですのでお体には気をつけて。  それでは、また。

                                      あなたのキリクより』

黄金歴176年3月 Edit

「親愛なるラーラへ……」
書き出しの一文でキリクの筆が止まった。
何を書いたらいいか。
いや、どう表現していいものか。
自身の知る範疇の語彙では、ここ2ヶ月の体験を記すことが非常に難儀であると、キリクには思えた。
見るもの聞くもの全てが新鮮。
根城にする冒険者の街。其処に住まう奇異な人物達。彼らが繰り広げる珍妙な光景。
未だその輪に加わらず遠巻きに見ているだけだが、それでもキリクには十分に心の内を刺激するものであった。
比べてしまうと、モンスターとの命の遣り取りですら霞んでしまう『それら』を、到底言葉で表すことが不可能に思える。
「……あー」
眉根を寄せて天を仰いだキリクは、暫し口をポカンと開けて羽ペンを弄り回す。
書き出しの一文を眺めているうちに脳裏にある考えが閃いた。
「俺は元気です」
と、書き出しの一文から大きく余白を取って、キリクはそう書き付けた。
ラーラならこれで分かってくれる。
愉しげに笑いながら、キリクは手紙に丁寧な封をした。


Last-modified: 2011-05-30 Mon 01:17:14 JST (4715d)