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- 砂の囁き声が聞こえる・・・これがきっと自分の幻聴だ、そう呟く
ぽつりと行き場を失い立ち尽くす木が一本もはや自分が何処へ向かえばいいのかもわからない
側にはズタズタに朽ちた馬車の残骸と荷物がいくらか・・・砂嵐に襲われ同行していた人達は皆どこかへ消えてしまった --
- 「はぁ・・・本当にどうしよう・・・」
(樽の上に地図を広げる、ちょうど砂漠を横断する中腹で砂嵐に襲われた)
(そう言えば何故この砂漠に来たのだろう・・・たしか鍛冶師ギルドの・・・あぁ、こんな事になるなら止めておけば良かった・・・)
(頭を抱えて深いため息をつく、不幸中の幸いと言えば水と食料が十分に残っているといったところ。)
(2,3日は持つだろうけど・・・どうしたものか) --
- はぁ・・・こう言う時に空飛ぶ箒があればなぁ・・・(ボロ布で作った日陰に身を隠し水を飲む)
・・・ここで文句を言ってても仕方ないし、そろそろ行動を起こしますか。(砂を噛んで上手く動かな右足を無理やり動かす)
(食料と多めに水を持ち、すっぽりとローブを囲い口の周りにも布を撒く)
(ガリガリと樽にメッセージを残しナイフを突き刺した)さてと!・・・・・・・・やっぱり救助、待ったほうが良いかな? --
- (僕の足で砂漠渡るとか無理だもんなぁ・・・皆が今頃救助を・・・救助・・・・・・・・・・・・・・)
回想
「おぅ、ゼット!遭難したら諦めろ、救助は無いぞ」
えぇ?!な、なんでですか!
「なんでって・・・そりゃぁ二次災害を塞ぐためだ、まぁベテランさんの商人と一緒なんだ!そうなんなんてする訳無いって!」
で、ですよねぇ・・・!
「HAHAHAHAHAHAHA」
回想終わり
あぁ、もぅ!行くしかないじゃないですか!!(ぎこちなく片足を動かしながら砂漠を歩き始めた) --
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・
(じりじり照りつける灼熱の太陽の火を浴びながら前へ進む)
はぁ っ はぁ・・・ (ざくりざくりと土の上を歩く、足が砂に取られて重たい。)
(ただ歩いているだけ、それだけなのに酷く疲れる。もうどれ位歩いただろう)
こんな事考えてるときは・・・大抵そんなに歩いてないんですよね・・・
(水を口に含みよーく馴染ませる様に飲む)・・・はぁ・・・進もうガムシャラに・・・それしかない・・・
(再び足を進める。ガリガリと右足が嫌な音を立てている。大丈夫だろうか・・・・) --
- ・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(すっかり日が沈んでしまう、肌寒い・・・息が白くなる。偶然持っていた太陽の首お飾りのお陰で寒さは防げている)
(服を煽ると入り込んでくる外気が涼しくって気持ちい・・・・早めに寝よう。今日は物凄く疲れた・・・・) --
- (眩い光を目蓋の向こう側から感じて目が覚める)
・・・ん・・・朝・・・(じゃりっと口の中で砂を噛む)
東があっちだから・・・こっちに進めば良いんだよね・・・(干し肉を口に含む。唾液でふやけさせながらゆっくりと齧る)
(ついでにニンニクを一粒、口に放り込んで租借する)普通に行ってあと二日・・・行ければ・・・だけど、大丈夫、大丈夫・・・
(ゆっくりと立ち上がって砂を払い歩き始める)
(360度見渡すが何も見つからない、砂、砂、砂・・・気が触れそうだ) --
- (360度、何もない場所を歩くのは目を閉じて歩いているに等しい)
(人の体は左右、完璧にバランスが取れている訳ではない。片足が無ければなおさらだ)
(右利きの人は右腕が、左腕の人は左腕が筋肉が発達いしていて重量が変わり、微妙に傾いてしまう)
(本人はまっすぐ進んでいるつもりでも・・・一歩一歩微妙に利き腕側へ傾いて行く)
(この時ゼットは既に大きくルートを外れていたのだ)
ぜぇっ ぜぇ (昼頃、日差しが一日で一番強くなる・・・あまりの熱気に立っている事も困難になり堪らず横穴を掘ってその中へ身を隠す)
(カチカチに固まったパンと干し肉を食べた。ニンニクを二粒租借する・・・日差しが弱くなるまで待とう) --
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
(オレンジ色と群青色が混ざる空を見上げる・・・良かった、まだこの景色を綺麗だと思える余裕はある)
(空になった水筒を放り投げる。昼に動くよりは夜に動いたほうがいいのかもしれない)
(太陽の首飾りがあるし、月が出ていれば迷う事も無いだろう)・・・ははは・・・もう十分迷ってるのに・・・
(ゆっくり足を動かしながら前へ進もうとする。ゴリッと嫌な音が義足からした。足首のバネが一本壊れたようだ)
(思えば随分頑張ってくれたほうかもしれない。ごろりと横になる・・・今日はもう休もう・・)
明日・・・・街につけばいいな・・・・ --
- (三日目の朝・・・無性に寂しくなる、誰かと話がしたい)
(日が昇り切らない前に歩かないと・・・そろそろ、そろそろ街が見えてくるかもしれない)
(先へ進もう、浴びるほど水を飲みたい。今酷い匂いをしてるんだろうなぁ・・・)
(カチンカチンと義足の足首が音を立てる。もう完全にバカになってる・・・) --
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
(無言でひたすら足を進める、右・左・右・左・・・風が出てきた。眩暈がするほどの熱風)
(喉が渇く、水もあと一本・・・どうしよう、そろそろ・・・そろそろなんだ・・・)
(日が昇りきってしまう。その前にまた、横穴を掘って強い日差しを避ける)
(ぼんやり日差しが弱まるのを待つ、鼻の奥が痛くなる。あぁ、今泣いてるんだ・・・) --
- 君を見て酷い有様ではないと言える者がどれだけ居るだろうか。
(熱線に眩む意識の中、暗がりにかかる声が 蜃気楼?幻? とにかく視線の先には全身切手柄の紳士が一人 砂漠を背に苦も無く立っている)
久し振りと挨拶を申し上げる余裕が見て取れないと判断した。手短に行くが了承いただけるだろうか?
(貴方はついに自分の正気が失われた可能性を重視するかもしれない まるで場違いな、幻想じみた光景) -- ヴィットー
- (目の前に現れた見覚えのある男を見て・・・目を擦る、幻覚だろうか)
(とりあえず手を伸ばしてよく手入れされた髭を摘む、砂ではない、実物らしい)
〜〜〜〜〜〜〜ッ!!
(がばっと起き上がって抱きつくとぼろぼろ泣き出す。嗚咽とよく分からない言葉が口からこぼれたが自分でもよく分からない)
(ただ三日ぶりに人に会えたのが嬉しかった) --
- (黙って髭を抓まれ抱きつかれてもまるで顔色が変わらない、作り物のような男)
鍛冶屋のゼット君、に相違ないのであろう。大の男が易々と涙を流すものではないと考える。
(くいと顎を取り顔を改める、どうやら無駄足ではなかったようだ 懐から剃刀のようなキレで封書を一枚取り出して)
郵便である。君の登録住所から此処までの追跡調査には日数を要したのだ。遅延料金は勘弁していただきたい。 -- ヴィットー
- だって しかたないじゃない ですか! しぬ、死ぬかと おもったんですよ !
誰も居ない ひっく 砂漠に一人ぼっちで・・・!
(ぐしぐし涙を流しながら顔を拭いた)
へ・・・?(ぽかんと手紙を受け取る、裏と表を見た、手紙だ)あ、えっと・・・あの、どうしましょう
(違和感バリバリの男に目をぱちくりさせて)
じゃあ・・・遅延料金の変わりに私を街まで運んでください・・・(なんだかよく分からないままそんな事を口にした) --
- 死に際には微笑むものだ。(平然と言い放ち)では確かにお届けした。あまり無理な寄り道は慎む事を提案したい。
(貴方の手元の封書の中身は「鍛冶ギルド月報特別付録 ダウジング・マップ」 後から書かれたのだろう ご丁寧に現在地に赤丸が付き、裏には天体図が)
流通に影響を与え社会の運行に異常を来たすのだ。我輩らも今回中々の出張となっている。
(どうやら死に瀕した状況とそこからの脱出を手伝う意図は僅かながら感じられた、が貴方の言葉を聞くと微妙に嫌そうな表情をして)
……定型外小包一つならばともかくだ。君を入れて二人分では足が出るが宜しいだろうか?
(良く見ると紳士の後ろ、砂漠に阿呆のような冬物のコートを着込んでぶっ倒れている少女が 制服から見て髭紳士の部下らしい) -- ヴィットー
- お金払うんでお願いします!55kgの郵便物はいくらですか?!お願いします!
片足完全に壊れちゃってて一人で帰れないんです!
(必死、そりゃ必死だ、だってここで置いてかれたら道具はあるけど確実に死ぬもん)
帰り道の途中の村でかまわないんでおねがいしますーーー!!! --
- 一律100G。料金表は嘘を吐かないのが美点である。
(そう言って貴方を肩に担ぎ、しばらく歩いて―郵便物を載せている―簡単なソリに乗せ)
ライトレイト君。道案内で業務が終了しなかった。大変遺憾ではあるがもう一頑張りだ。
(ぴくっと肩が動き、完全に死んだ眼で何とか立ち上がる少女 ソリの後ろに陣取り、押していく構えだ)
では最寄の街まで暫しの荷旅となる。ゼット君。休むと良い。
(ステッキを紐にかけ、幌のついたソリを曳き歩く老紳士 程なくして少女がソリの後ろに引っかかって曳かれるだけの錘と化していた) -- ヴィットー
- こうして僕の砂漠での遭難事件は意外な形で終わりを告げた
終わってみれば良い思い出だった、と笑って済ませれる程度の被害で良かった
ヴィットーさんには一つ大きな借りができてしまったけど、何らかの形で恩返しをしたいと思っている
追記:
鍛冶ギルドから届けられた郵便物をギルドの長に叩き返したのは言うまでも無い
まうまう(・ω・) --