鶏鳴騎士団/書庫
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- (待ち人の姿を見止めると、にっこり笑顔で胸を張る。脚甲の先でアリーナの地面をトントンと打ちつけ)
無粋なお邪魔虫たちのせいで延び延びになっちゃってたけど、ようやくココ使えるわね。 じゃあシェレア。手加減はナシね♥ 私も手加減しない……っていうか出来ないから♥ 矢もバンバン撃ってだいじょーぶ。このマント、矢避けの加護も入ってるから直撃しても死なないわ。多分。 (黒いショートマントをひらりと舞わせ、軽い調子で物騒なことをのたまっているが、その目は真剣だった) (蛇の群れを連想させる対手の鞭を視界に収め、どんな仕掛けでも対応できるように) (身体を遊ばせるようにして、未だ佩刀には手を掛けず、眼を爛々と輝かせている) -- アルエット
- (何だか凄く嬉しそうな様子に息をついてコキコキ首を回す。今回は矢筒を。腰に下げるのはショートボウ、そして短剣…そして既に両手にはぎっちりと鞭を持ってる状態。)
無粋過ぎるよね、確かに。だけど大体片付いたからこそ憂いなくやりあえるって物だけども。 …やっぱ手加減無しでくるじゃないか!思った通りだけどさぁ!? …それ言わなかったら私が弓を主に使うことは無かったと思うんだけど、まあ良いけどね。(肩を竦めてポニテを揺らして) (乗り気ではない様子ではあるものの、やるのであれば真剣に。そういう風に育てられて…否、色々とあったからこそ僅かに気が張ってる部分もある) (左腕を回し持つ鞭はすべて腕に巻きつけて)行くよ、アルエット。 今の私は、シェレア…鶏鳴騎士団のシェレア!加護も何でも全部絡め取ってあげるよ…っ! (そうして右腕を振るい、四本の黒い尾がアルエットへと向かって振るわれる。…もっとも流石に4本同時に扱い切れない様で、その軌道はほぼ一定ではある。勿論それを何も考えず振るっている訳で無いのかもしれない) -- シェレア
- 目先の勝利は要らないの。欲しいのは強者との闘い。それを通じて得る強さ。負けても死ななきゃオールオッケー。
(目がすぅっと細まる。笑みを消し、長刀を抜き放った。刀身に映る碧い瞳は、狩人の空気を帯びている) ではサー・シェレア。アルエット・ラキーブ・ナイトライナー……、
(剣の切っ先を向けてから、言葉を中途で打ち切って駆け出した) (襲い来る鞭の軌道。避ける素振りは一切無い) (口上は剣で応えるとばかりに横薙ぎの一閃が放たれた) (得物を絡め取られる恐れなど感じていないような剣筋。鞭の軌道上へと長刀は振るわれる) -- アルエット
- 勝つのよりも戦うのが好きってこと…はは、どれだけ前のめりなのさ?
(そんな事を口にしながらも、目の前では帯びる空気に変化が生じて…呼吸を整え、深呼吸を一回。)
行くわよ、行くわよ…行くわ! (纏う空気がガラリと変わる、普段の少女からは想像以上に厚く感じられる…騎士として民の前に立つよりも、更に力強さを感じるのは騎士以上に背負う立場があるからだろうか) (こちらに駆け出すアルエット、そして軌道上へと振るわれる長刀の動きに合わせてその場で回転する) (振るわれる剣に切り落とされるのを避けたのだろうか?否、左腕に巻きつけた鞭も解いて合計で8本分の鞭が振るわれ刀身の反対から武器やアルエットに大して襲いかかる。) (1本、2本と増えて……7本、8本、9本。今度は左右の手を揺らし軌道をズラして) -- シェレア
- (剣の間からは一足、二足、まだまだ遠い)
(相手の利が最も活きる距離。こちらの利を活かせるのは接近するのみか?) 勝敗は走った道のあとからついてくるもの。私は闘う度に見えてくる新しい世界が好きなの。
(守りと攻めを兼ね備えた相手の動きを見るや否や、長刀の振りを止めることなく、勢いそのままに身体を反転させた) (鏡合わせのように身を翻す2人の少女) (迫り来る鞭の雨に背を向けて、相手とは反対方向に飛びのいて大きく距離を空けようとする) (転瞬、左で抜き放ったダガーを相手の足元に投げ放つ) (跳躍の最中、指に嵌めた光の指輪をダガーへ向けて囁いた)
光よ。 (指輪から迸る魔力の流れに、地に着き刺さったダガーが呼応する) (その瞬間、眩いばかりの閃光が短剣を中心とした範囲で炸裂する) -- アルエット
- (剣の間合いに入り込ませない、しかし今のままでは倒し切るには少々足りない。それをどうするか埋めるための時間稼ぎ)
そうなの、私も勝敗自体気にしないわ。ただ、私の場合は道を走るより誰も寄せ付けない事が重要なの。私が好きなのは、今ここにいる世界。それを護るためなら何だってするわ、そう…何でも!
(空気の流れを感じ取る、勢いそのままに身を翻す二人。それは舞台で踊り明かしている様にも感じられて) (思考以上に肌で感じられる動き、足の爪先から頭の頂点まで回転の最中でも集中しているとアルエットが動き出す) く…っ(投げ放たれるダガー、それは魔力を向けられて…足元に刺さったダガーを中心に眩く光りを放つ) (回転を止めて思わず腕で防ごうとして、鞭が動きを止めて生じる隙。右足も上げて攻撃に備え様としているのだろうか。) (光の中、周囲の空気が冷え始める…果たしてそれは張り詰めた意識が暑さを忘れどこまでも冷静になっているからか。) (それとも…思えばトーナメントの時、4戦中3戦は氷系統の魔法を扱っていた。注意は怠らない方が良いだろう) -- シェレア
- (光を背に中空を舞う。鞭の暴風圏から脱すると、ゆっくりと相手に向き直り……)
(立ち止まった)
(生じた隙に乗じて接近することもなく、シェレアを見据え、何事かを囁き続けている) (空気の凍りつく気配。視界を遮られれば、そうくるだろうと踏んでいた。なにせこちらはシェレアの戦い方を良く観察していた) (程無くして夏の暑気が戻り始める。その熱源は長刀に渦巻く炎) (革の止め具で腰にマウントしていた炎の魔道書が魔光を放っている) (『蛇の舌』──炎魔術を刀身に纏わせる魔法剣術。これを発動するための、目晦ましであった)
シェレア……それって出会いを逃す彼氏居ない暦=年齢女子の典型的な考えだって、ノウノウの9月号に載ってたよ? (割と真剣な顔で言い放つと、炎が揺らめく刀を手に間を詰める。先刻よりも剣の間は遥かに長い) (シェレアの振るう鞭と比肩しうる間合い。だがその刃は未だ振るわることはない。既に間合いの内だというのに) -- アルエット
- (閃光が晴れる、上げていた右足は氷で覆われ縁を広げて氷で光を遮る。それは以前にも見せた光景…左足も氷で靴を型取ってまるでガラスの靴の様に見える)
(そうして閃光が晴れる中、詠唱を続けるアルエットの姿が目に飛び込んでくる。しくった…手を読まれていた) (目に見えての動揺はしないものの、その熱量は正面からやりあうには少々分が悪いのは明らかで)
そんなの知らないわよ、そもそも彼氏作るつもり無いもの。…王子様を待つってつもりも無いのだけれどねっ! (そっちこそ彼氏はいるの?と、氷の靴を履いたまま…真正面から滑って接近する) (腕に再び、今度は両腕に鞭を巻きつけてその上から氷を纏わせて防御しながらの正面突撃。間合いの内なら更に密着をして組み合い勝負を決めに) -- シェレア
- えっ? そうなの? 勿体無い。シェレア可愛いんだから、恋も愉しめばいいのに。
私が男だったら放っておかないわよ? こんなふうに情熱的に迫っちゃうのに。 (迎え撃つ炎の刃が舞い踊る。しかしその火勢は発動当初に比べ明らかに衰えている) (慣れぬ術技ゆえにか。砦を奪還した連戦ゆえにか。あるいはシェレアが生み出す冷気ゆえにか) (軽口とは裏腹に、炎に照らされたアルエットの顔色は疲労が濃いように見える)
彼氏? 私に? あはっ。 (一笑に付すが、その笑みは振るわれる炎刃と呼応するように弱々しい) (蛇の舌が狙うは、シェレアの両腕を覆う氷の防御) (だが渦巻く火は氷を溶かすのが精々で、血の代わりとでもいうように溶け出した水が宙に散らされた) (額を伝う冷や汗の雫。視線の先は舞い散る水飛沫の向こう。その瞳にはまだ奥の手を潜ませている輝きがあった) -- アルエット
- そう?立場的に気軽に恋人作れたりしないのだけども…強いて言うなら皆の恋人かしら?
…み、みんなの恋人かし、ら…?(言ってからやらかした感を察して照れが見え隠れする。…冷気を纏い、熱気を纏い、お互いがぶつかり合って蒸発して陽炎を立ち上らせる) (疲労の色が色濃く見えるのはお互い様。受け身に回っていた分消耗はこちらも激しくなっていて)
(ギャリッギャリッと音を立てて氷が削られ飛沫が飛ぶ、そうして熱を感じているうちに右腕の氷の塊が鞭ごと腕から抜け落ち…否、抜け落ちる事も考えていた様で…手には鞭の持ち手が一本) 私が男で、しがらみが無ければ思い切りアタックしたかもしれないわね。こんな風、に…!(十分な突破力が無いと見越して左腕だけで防御しながら渾身の力で氷の鞭手甲ハンマーを振り上げる。) (何らかの狙いがあるのは分かるが、本命は左腕。避け様とするところを叩き込む為に渦巻く火を左腕で跳ね除けながら遠心力で叩き込もうと) -- シェレア
- で、でた……! みんなの恋人……いわゆる姫発言!
(偶さか真実を衝いた言葉が口を出る。無論の事、シェレアの正体は知る由も無い) (炎と氷の鍔迫り合い。蒸散しきらぬ氷が二人の足元を濡らし、水溜りが形づくられていた)
シェレア。しがらみなんて心の鎖よ。その気になれば簡単に飛べるの。『こんな風に』ね! (にやりと笑って長刀を手放す。同時、地で弧を描くように足は滑り、溜まった水が宙に跳ね上げられた) (次いで繰り出されるシェレアの右の腕。その氷の鉄槌から逃れるように……上空へと駆け上がった)
飛べ (紡いだコマンドワードで瞬時に脚甲が淡い光を放つ。水面歩行を可能とするエンチャントが施されたグリーブ) (上空に巻き上げられた即席の『足場』により、跳躍では到底不可能な高度へと飛んだ)
でも……シェレアは重荷じゃなくて、大切にしたいと思っているから捨てられないのよね? (その呟きが相手に届くかすらも分からぬ懸崖の高みから、振り下ろしの斬撃が繰り出された) (手に持つのは常に紐で吊るしていた長刀の鞘。夜明けの光が黒塗りの鞘に照らされていた) (だがこれだけでは相手に届かぬだろう。瞬間的に次の一手が身体に奔った) (シェレアの頭上を狙って高みから繰り出される一撃が届こうとする刹那、鞘塗りの光は地へと滑った) (空に残っていた水面を蹴り出し、地を擦るように低く走り抜ける) (後の太刀に必殺の技を秘める騙し剣『かげろう』) (高所の振り下ろしから、横合いに殴りつける変化を付けた鞘での打撃。防がれれば後は無い) -- アルエット
- その呼び方はやめてよぅ!?(人から言われるのは慣れてないのか思わず反応してしまう、そうして動揺が動作を鈍らせてしまうのだろうか)
(熱気と冷気で滴るのは互いの汗も同様、どちらにしても水たまりが出来上がって足場の状態は良くない。)
……っ!(得物を自ら手放し、足で水たまりを跳ね上げていく動き。それ自体は攻撃への予備動作) (こちらの攻撃を避けられる距離に離れ、上を取られる…地の利を得て、尚空へと駆け上がる姿に対峙してなければ見惚れてしまうかもしれない) (事実、アルエットの姿から視界が離せない…離しては間違いなくその隙に倒されるであろう)
…しがらみね、一度離れて何もかも忘れてしまおうと思ったわ。けれど…それこそが私の強さの源(空を駆ける相手を見据え、一度深呼吸してから) 全部…全部抱えた上で空でも何でも飛んでやる!(でも今は飛べないので、迎撃に全力を込める。……捨て身にも思える鞘で行われる振り下ろしの斬撃、黒塗りの鞘が夜明けに照らされ…先程までの得物は?) (鞘での攻撃は左腕を掲げ、アルエット自身を見つめる。先程見せたられたアルエットの動き、それは目くらましの為でも何でもない…必要なことだと悟り) (ピキ、ピキ…と限界に近い氷魔法を発現。地面の水たまりを凍らせて…腕の一本くれてやる。) (見て、調べて、思考して、対応する。…それは戦いの前だけでなく戦いの最中、その刹那ですら行う事を止めない) (反応が遅れればそのまま吹き飛ばされるであろう、攻撃の軌道変化…片足立ちで軸を作り、左腕を鞘に沿わせて動かし防ぎきろうとする。左腕は防御越しでも犠牲にするつもり。) ぐぐ…っ!あ…アルエットは、私の王子様だったのかも、ね…ッ!!(攻撃の決定打をそれで防ぎつつ、威力をそのまま回転に変えて軸足でない側の足をアルエットへとお返しするつもりのようで。) -- シェレア
- (そのまま胴撃ちで斬り抜ける……儚くもそれは泡と消えた)
(手応えは有った。有りすぎたといったほうが適切か。みしりと重い感触が鞘の先を伝って手に残った) (一手及ばずか。地に転がる長刀とダガーが目の端に映る。炎がもっと使えれば──) (勝負に『もし』は無い。有りもしないものに思いを馳せる。そこは既に敗北の淵だった)
王子様を、足蹴にする、お姫様……ねえ? (我が身を穿つ蹴り足。紛れも無い勝負を分ける一撃を視界に捉え、衝撃と共に前のめりに崩れ落ちる) ……じゃあ、今日のところは、私を抱えて (言葉と意識は同時に途切れた) (シェレアに凭れ掛かり、程無くして穏やかな寝息が聞こえてくる) (全てを出し切った敗北の後。場違いなほど安らかな顔で勝利者に身を預けている) (夜明けの決闘を締めくくるように、地平線から顔を出した陽光が、勝者と敗者を照らしていた) -- アルエット
- が…ぐ…っ(左腕を犠牲にする、低いうめき声を上げながらも…崩れ落ちないで立ち続けるのは意地か、それとも…)
(死力を尽くして、と言った表現が適切な程消耗しているのはお互い様。普段から使い続けていた為か、それとも攻撃に使う分が少なかった為か…維持に使う魔力が少なかった分も関係しているのかもしれない。) (疲労が無ければ、もっと細やかな動きも出来たかもしれない。それはアルエットも同じであろうことは明白で…万全な状態でやりあえば決して勝負はわからなかっただろう)
…私の居た国は今治めてるのが女王だからね。それくらい苛烈な事は……いや、事あるごとにラブラブだわ… (と、何を思い返したのか肩をすくめて笑って。…腕の痛みのおかげか意識を失うまで至ってないのは幸か不幸か) (崩れ落ちたアルエットを抱え起こそうとして、言葉と共に意識を手放したのを目の当たりにしてから) ……左腕すっごい痛いんだけど。両腕じゃ抱えられそうにないかな…はは、は…(そうして凭れかかって寝息を立てるアルエットに肩を竦め) …この顔じゃどっちが勝者だか分からないじゃない、の……(と、抱えながらこちらも限界とばかりに糸が切れた人形の様にガクンと意識を落とす) (鮮烈なまでに踊り明かした舞台には二人の主役、満足そうな寝顔と共に夜が明けていく…そう、決して明けない夜は無いのだから) -- シェレア
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- 張り詰めた空気に満ちた決闘場 --
- (相手を待つ間、治ったばかりの左手の調子を確かめるように何度も握りなおす。相手を見止めると場違いに暢気な笑顔を見せる)
あ、クロトだ。やっほー。貰った薬のおかげで思ったよりも早く治ったみたい! さっそく『お礼』が出来そうね! 私、多分左手の動きがまだ鈍いだろうからガンガン狙ってきてね! 当然殺す気でねー? (物騒なことを笑顔で語りながら、左でダガーを抜き放つ。順手、逆手、順手と交互に組み替えながら、その間に右の長刀も抜き放ち、左右二振り構えた。その切っ先は相手の動きを誘うようにゆらゆらと揺らめく) -- アルエット
- くっくっくっ……これが"お礼"たぁ、アルエットも思ったよか血の気があるんだな?大いに結構、血が多けりゃ治りも早い(明るい笑顔のアルエットにへらっ、と笑いを返す)
…殺す、気か(若干の躊躇。鞘付きで戦うことも一瞬考えたが…すらりとショートソードを抜く。対者の長刀よりは短く、ダガーよりも長い刀身には所々錆が浮き、切れ味も鈍かろうことが分かるそれはそれでも凶器だ) (これは決闘。文字通り名誉の賭けられた戦い。であっても己の名誉には固執しないが…アルエットのその心意気を無にすることは出来ない。なぜならそれはアルエットの名誉に泥を塗る行為なのだから) 治したのにまた壊す…因果な商売だねぇ騎士ってのも(二人が立つのは一足一刀の間合いより僅かに広い間合い、だらり、と両手のショートソードを垂らしたままアルエットの切っ先では無く青い瞳を見つめたまま…3つ、呼吸をし) そんじゃ、ま、鶏鳴騎士団が一人、寝ぼけ眼のクロト…参る!(静から動、バネのように弾け一気に間を詰める。長刀の間合いを即座に踏み抜き、振るわれるは右のショートソード) (風に吹かれた柳が溜めた力を放つように弧を描いて鈍い刃が彼女の左肘へと迫り来る。先の彼女の発言がブラフであろう可能性などは考えもしない。何故なら怪我を見ていた自分とってそれはただの事実、そしてそれを突かぬは騎士の…戦士の恥なのだから) -- クロト
- 知らなかった? 女は毎月血が流れる分、血の気も多いのよ?
(いつもの笑顔は崩さず、左の切っ先を忙しなく動かす。奇しくも相対するクロトも二刀。小回りはこちらより上か、と当りをつける) 上手く治れば壊れる前より丈夫になるんだから遠慮は無用、無用! (一定の間合いを保ったまま互いの言葉と視線が交錯する。左のダガーの柄に指を掛け、クルクルと指先の動きで回転させながら、相手の足運びと腕の動きを注視し──)
あはっ♪ さっすがクロト! (相手の刃が左を狙って来たのを見て取った瞬間、手首の動きのみで左のダガーをクロトの右半身へと向けて投擲する) (投擲から間を置かず、右の長刀を横薙ぎに振るい、彼の胴目掛けて剣閃を放つ) (手加減など微塵も無い。長刀の間合いの利を生かし、懐に入られる前に斬り伏せんと、青い目は爛々と輝く) -- アルエット
- っとぉ!!(市販品らしからぬ装いの手甲を警戒し円を描いた軌道で肘を狙ったのが仇となった。腕の振りを使わぬ最小限の手首だけのスナップで放たれたそれは最速)
だがな…軽いぜ!(迫るダガーに肩を捻りこむように角度を付ける。手首だけで放たれたということは…威力も低い。僅かに付けられた角度で革鎧に傷を残し弾かれたそれは一瞬の間を作ったに過ぎず) (しかし、その一瞬の間に長刀の刃が滑り込む。惚れ惚れするような迷いのない連携。訓練されたそれはまるで一つの動きの如く組まれ、結果として) ぬ…!(左のショートソードの刀身を反転。切っ先を下に胴に添えるようにして防御せざるを得ず。重さの乗ったそれをどうにか食い止め) ったく、剣もじゃじゃ馬だな!大人しくしろってんだ!(即座に右の剣を打ち下ろした。ただしそれはアルエットの身体ではなく、長刀へ。二刀で長刀を押さえ込む形を狙ったもの) (そうして続けざまに彼女の空いた左腕を中心とした左半身へムチのような右蹴りを放つ。先程は上手く腕を使わずに済ませたが…今度はどうだ、とそんな意地の悪い思いを込めて) -- クロト
- (初撃の投擲が弾かれるのは織り込み済み。それを見越した二の太刀であった)
お生憎様! 元気と向こう見ずだけが取り得って良く褒められるの! 大人しくなんてとんでもない! (だが、相手の迅さは予想を超えている。右の払いを止められて、思考に僅かな逡巡が生まれた) (しかし身体は無意識に反応し、過去の教えが瞬間的に総身を駆け巡る) (押さえ込まれようとした反動で身体を半回転。視界の端に蹴りが映れば半身を深く沈みこませ、ひらりと舞った金髪が蹴撃に散らされる) (道具に使われるから、しょうもない怪我をする……せせら笑う師の姿が脳裏に浮かべば、意地でも手甲は使うかと、両手で長刀の柄を握る)
(『双燕』──横薙ぎから身体を反転させて、下段からの切り上げ) (地上すれすれに飛び違って空に駆け上がる、2羽の燕の軌跡を思わせる斬撃) (相手の見事な連携に、無理な体勢で打った3の太刀。もとより次の太刀は無い。防がれれば無防備な隙を晒す捨て身の剣である) -- アルエット
- (足刀には何の感触もなかった。それはすなわち、彼女が三番目の刃を見事に凌いだということ。判断が早い、これも彼女が積んだ鍛錬の結晶か、と内心口笛を吹き)
(宙に逃げるには時間が足りない、横へ逃げたにしては蹴りに何も引っ駆らなかった、奥へ逃げるのなら…それこそ思考せずとも目の前に退いたアルエットが居るはずだ) (それならば、必然、取る行動は狭まる) そう来るよなぁッ! (雨上がりの日の朝、地を駆けるように飛ぶ対の燕。それが雨雲去った空へと舞い上がるかのような速く鋭く緩やかな曲線を描き下から迫り来る) (だが、読んでいた。足を狙われたならばもっと簡単に事は終わっていたろう。残る左足で飛び、彼女の煌めく金髪の頭に一撃を打ち下ろすだけで全てが終わっていた) (だからこそ、そう、血の気が多く、元気で向こう見ずで…危なかっしい彼女なら、一発逆転の手を打つだろうと) (燕の嘴は必殺の意を持って飛翔する。しかし…惜しかった。崩れた体勢から放たれたそれは…十全の彼女が放ったであろうそれより…"よく見えた") (そのままであれば股を割るか、太ももの重要な血管を裂いたであろうそれは、ハサミのように交差され下段に構えられた男の両手の剣の交差点と接触し…) (次の瞬間、アルエットの身体は、空を舞った) ………『グロスペ』 (彼女のよく手入れされた金髪がふわりと宙空に輝けるヴェールを作り出す。いつの間にか両手を上げたクロトの両剣の延長線上に浮くアルエット) (アルエットはクロトと交錯した瞬間、感じたろう。伸び上がる身体の力が、病み上がりの左手と右手で刀に込めた力が、全て逸らされ、倍化し、上方へと持っていかれたことに) (僅かな時間…彼女の身体はそれこそ空を飛ぶ鳥のように空にあったが…地面に強かに叩きつけられ……燕は地に落ちた) -- クロト
- 互いが間合いに入って数合の内に勝敗は決した
得物を手に悠然と立つ男と、力なく地に倒れ伏す少女 その光景が決闘の顛末を如実に表していた
勝者──寝ぼけ眼のクロト
鶏鳴騎士団決闘場の緒戦は、その一文を以って締めくくられることとなる --
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