IK/0007

  • 酷い臭いだ
    (西方領域より遥か離れた辺境。イムルトン王国)
    (その領土に足を踏み入れた眼鏡の小男……リオネール・ヴィーヴス・ド・アジャンクールの記念すべき最初の一言は、身も蓋もない文句から始まった) -- アジャンクール 2018-03-30 (金) 21:11:58
    • (乗合馬車からどうにかこうにか身をおろし、保温の術式が付与された水筒から清潔な水を呷る)
      (塵埃の吹き荒ぶ不整地道路は当然ながら埃臭く、土埃には微かに饐えた臭いも混じっている)
      (当然だ、此処はイムルトン王国……これから開拓が始まる、ドがつく辺境中の辺境であるのだから) -- アジャンクール 2018-03-30 (金) 21:19:57
      • (ずりおちた眼鏡をかけ直し、コートについた埃を払おうとしたが……やめた)
        (どうせまたすぐ埃塗れになるのだ。馬鹿馬鹿しい)
        (頭を振って、不整地の土道を歩く)
        (すぐさま、ブーツにも赤茶けた土がつく。なるほど、足を洗うという言葉の語源がわかった気がするなと、リオネール……彼はファーストネームで呼ばれる事を嫌うため、ここではアジャンクールと記そう……は苦笑を漏らした) -- アジャンクール 2018-03-30 (金) 21:31:49
      • (リオネールこと、アジャンクールは、元々は西方領域旧家の五男坊である。それなりの家柄に生まれた男であるが、それなりの家柄である以上、家督を継ぐのは当然長男であり、次男以下はその予備でしかない)
        (そして、幸か不幸かアジャンクール家は予備に御鉢が回る事もなく、食卓くらいでしか顔を合わせた事がない長男がそのまま家を継ぎ、次代のアジャンクール伯爵となった)
        (晴れて御役御免となった次男以下元予備の彼らは、良く言えば家の呪縛から解き放たれ、悪く言えば適当に放り出された)
        (西方領域では良くある話でしかない) -- アジャンクール 2018-03-30 (金) 21:51:27
      • (しかし、そこからまた己の身を立て、立身出世を目論むのもまた男子の誉れ、本懐よ! ……と、意気込める性質ならそれも悪くないのだろうが、骨の髄まで本の虫のアジャンクールにとっては面倒事でしかなく、どうせだったら、自分も家で資産を食いつぶす生活をしたかったというのが本音である)
        (もっとも、父も兄もそれを許すはずがないので、今こうなっているわけだが) -- アジャンクール 2018-03-30 (金) 22:10:09
      • 時間の無駄だな……
        (改めて、頭を振る。いまさら言ってどうなるわけでもない)
        (嘆くことで現状がどうにかなるなら、万でも億でも嘆くだろうが、生憎とこんな僻地で過去を嘆いたところで、何が始まるわけでもない)
        (外套の首紐を改めて締め直して、アジャンクールは歩き出した) -- アジャンクール 2018-03-30 (金) 23:05:33
  •   -- 2018-03-30 (金) 23:05:44
  • それが、今から三ヵ月ほど前の話だ。  -- 2018-03-30 (金) 23:05:48
  •   -- 2018-03-30 (金) 23:05:51
  • 受付
    • 雑用でもなんでも!…って潜りこんだはいいけど、何すりゃいいんだこれ。掃除でもしとくか…? -- アクティ 2018-03-30 (金) 22:50:38
      • (辺境の調査から戻った小男は、調査資料の束を受付に押し付けると、そのまま休憩所の丸テーブルに座って、眼鏡を直しながら、大声で言った)
        エールをくれ! ああ、そうだ、ぬるい奴でいい。冷えた奴は身体に悪い -- アジャンクール 2018-03-30 (金) 23:16:14
      • へ?俺?運ぶの?あ、いや、確かに雑用だとは言ったけど…えぇー…
        (大声で注文した男を改めて見て)…あ、あのー。はい、ぬるめのエール。おまちどう…さま?
        (おそるおそる、男のテーブルにエールの入ったジョッキを置いて)あの、俺、新人のアクティっての。よ、よろしく…な? -- アクティ 2018-03-30 (金) 23:23:29
      • あ?
        (小男はギロリと、アクティと名乗る新人を見て、ずり落ちた眼鏡を直す)
        なんだ? 新人? は、こんなところに新入りとは、物好きもいたものだな -- アジャンクール 2018-03-30 (金) 23:25:03
      • ―!(男の鋭い視線に思わず背筋が伸びる)
        あ、いや、そのな?来たばっかでさ、仕事とか色々探しててよ。雑用でもなんでもーっつってさ、無理行って転がり込んだんだ
        (男の鋭い視線に委縮しているのか、強張った笑顔で答える) -- アクティ 2018-03-30 (金) 23:30:19
      • 益々持って物好きだな。だが、仕事を選ばない勤勉さは褒められる部分と言えるな
        私には間違っても出来ない事だ
        (小男がエールを呷るが……体がそれほど大きくないせいもあり、ジョッキの中身はちびちびと減っていく)
        アクティ君といったか。私はリオネール・ヴィーヴス・ド・アジャンクール
        魔石学をやってる地質学者だ
        名乗られた手前、名乗り返すが……私はファーストネームで呼ばれる事は好まん。教授、もしくはアジャンクールとでも呼べ
        これでも博士号は持っている -- アジャンクール 2018-03-30 (金) 23:35:03
      • そ、そりゃどうも…へへ(褒められたのかどうなのか。とりあえず笑っておくのがこの青年の処世術である)
        は、博士号!?いやそりゃ、驚いたな。そんなお偉い教授サマがなんでまたこんなとこで調査なんか…?
        あれか?フィールドワークとか…そういうヤツかい? -- アクティ 2018-03-30 (金) 23:49:20
      • 不本意ながら、概ね、そんなところだ
        (ようやくエールを飲み終え、ジョッキをテーブルの隅に除ける)
        学術的かつ財政的かつ名声的に有益な新発見を期待して此処にいる。ようするに博打をうちに来ているということだ
        笑ってもいいぞ?
        君も似た境遇であるなら、笑えんかもしれんがな -- アジャンクール 2018-03-30 (金) 23:54:25
      • い、いや笑えっつったってよ。教授サマなんてのの考えは俺にはわかんねーからなぁ…
        それが笑えることなのかどうか、イマイチ判別つかねぇっつーか(困ったように苦笑いを浮かべながら空になったジョッキをトレイへと)
        ま、博打ってんなら俺も似たようなもんだけどね。特に目的や希望があるわけでもねーから此処に居る。要するに行き当たりばったりってわけよ。笑ってくれてもいいぜ? -- アクティ 2018-03-31 (土) 00:09:12
      • (アクティの自嘲気味な返答に、アジャンクールもまた苦笑を返す)
        なるほど、確かに似た者同士のようだな。君のジョークセンスには教養を感じる
        (外套を羽織りなおして席を立ち、眼鏡をかけ直す)
        私は文明人が好きだ。アクティ君、君の事は覚えておこう
        (そのまま、アジャンクールはアクティに背を向けて、受付と二言三言会話を交わしてから、また外に出て行った) -- アジャンクール 2018-03-31 (土) 00:20:05
      • はは、教授サマのお眼鏡に叶うたぁ光栄だね。雑用として所属はしてっからさ、また声かけてくれよな!
        ……教養、教養ねぇ。どっちかっつーと場当たり的なトークを繰り返してた結果って感じなんだがー…まぁいいか
        (苦笑しながらアジャンクールを見送り、テーブルを片付けて仕事に戻った) -- アクティ 2018-03-31 (土) 00:35:23
  •   -- 2018-03-31 (土) 00:42:51
  •   -- 2018-03-31 (土) 00:42:55
  •   -- 2018-03-31 (土) 00:42:59
  • 受付 -- 2018-03-31 (土) 00:52:48
    • (昼食を採っていたが、肘を当てたらしく、ガシャン!と皿が割れる音が響いた)
      む……。 -- クギナ 2018-03-31 (土) 01:13:17
      • (舌打ちが響く)
        自分の図体の程度すら把握できていないようだな、獣人
        (小言を垂れるのは、眼鏡をかけた小男。自称教授……リオネール・ヴィーヴス・ド・アジャンクール)
        さっさと片付けたらどうだ? -- アジャンクール 2018-03-31 (土) 01:28:36
      • (顔を上げる、小男と目が合った。人相――犬相の悪さが引き立つ)
        ああ、そうだな……考え事をしていた。
        (カチリ、カチリ、と陶器製の器を太い指先が一つずつ拾い上げ)
        ……隊属の器物を損壊したときの罰則などあったろうか、部隊には。
        (独り言と質問の中間のような声色で言った) -- クギナ 2018-03-31 (土) 01:33:57
      • 知らん。お前のように、私は食器を粗末に扱った事がないものでな
        (立ったまま、そう嫌味を続ける)
        (こうしていなければ、長躯の獣人とは視線が合わない)
        (首を上げる羽目になる)
        しかし、考え事か。お前のような獣人でも御大層にモノは考えるのだな
        隊がお前に期待しているのは、その頭よりも鼻と脚だと思うがね -- アジャンクール 2018-03-31 (土) 01:39:40
      • だろうな。故に鼻と脚が利く内は考え事も許されるわけだ。(カチリと破片を拾い上げる)
        ……。仮に、この食器が、お前の物だった場合。
        ……お前は私にどのような罰を課すだろうか、鼻と脚のない君よ。
        (皮肉を言って笑い、胡坐をかき改めて男に向き合う) -- クギナ 2018-03-31 (土) 01:45:15
      • ……野蛮な獣人風情がこの私に一丁前に皮肉とはな。全く不愉快な犬っころだ
        (眉間に皺を寄せて、殊更強く舌打ちを響かせる)
        (だが、問われれば、ほぼ即答で)
        たかが獣人のする事だ。それこそ、小言の一つも言うだろうがそれで終いだ
        人間相手なら、弁償を迫るだろうがな……ああ、しかし、そうだな、その程度の出来の食器なら、まぁ頭の一つも下がればそれで十分だろう
        罰は、受けるモノが戒めとして受け止めれば、私からすればそれで十分だからな
        ……それがどうした? まさか、その考え事のために食器を壊したとでも? -- アジャンクール 2018-03-31 (土) 01:53:09
      • ああ。(素直に首肯する)訪れた国で「罪と罰」に触れたんでな。
        (口調が目に見えて砕ける。何を原因としてか警戒も解かれている)
        戒めか。……ここからは思考の遊戯だ、いつ去っても構わんが。
        例えばこの皿が、二つとない、高価で、高級で、思い出の詰まった、お前の大切な皿だったら、与える罰はどうなる。
        それに応じて比例して増えるわけか? -- クギナ 2018-03-31 (土) 02:02:09
      • ああ……だと!? この獣人何をふざけて……!!
        (しかし、思考の遊戯、などと言われれば、一応は学者をやっているアジャンクールからすれば、決して退けない)
        (しかも、その言葉を発した相手は、獣人なのだ)
        (看過できようはずもない)
        その仮定に従うなら……感情で言えば。私はその相手を二度と許さないだろう
        当然だ。覆水盆に返らず。割れた皿は割れた皿だ。修復できるだのなんだのと謳われたところで、私は絶対に許さないだろう
        割ったというその行為が問題なのだ。私は決してその相手を許さない
        (断固とした口調でそう言い切り……一拍置いてから)
        だがな、獣人。それは感情の話だ
        法に従うならば、私はその相手に皿一枚分の謝辞を求めて終わりだ
        せいぜい賠償請求を求めて終わりだろう
        当然だ。いくら私にとって大切なものであろうと、その皿は所詮皿でしかないからだ
        それは私にとっては大事なものであろうが、他人からみればただの皿だ。それ以上でもそれ以下でもない
        故に、与えるべき罰も、ただその皿一枚分であるべきだ
        それが、理性ある法というものだ
        ……例え、どんなに私の感情がそれを許さないと叫んだところでな
        私個人は皿を割った者を憎むだろうし嫌うだろう
        だが、その憎悪がそのまま法に全て反映されては、法は成り立たん
        罪も罰も同じことだ。それはただの事象として扱うべきだ。それが如何に難しい事であろうとな -- アジャンクール 2018-03-31 (土) 02:16:14
      • 成程。じゃあ、ヒトの中では罰は二段構造ということか。
        (顎の下を撫ぜ、少し長めに考えてから、牙ある口を開く)
        面倒じゃあないか……? その言に従うとするなら、理性ある法とやらは、本来皿を割られたはずのお前をこそ罰しているように思える。
        事象として、感情を殺して受け入れることを、皿を割った俺を皿一枚分で許さざるを得ない。
        法に従ったときに傷つくのはなぜか、皿を割られたお前というのは、なんとも不自由な物に思うが。
        皿を割った俺を、感情で罰したいとは思わないのか? 事象と扱って納得できることばかりでもあるまい。
        (小男の熱ある弁に対して、子供のような疑問を投げた) -- クギナ 2018-03-31 (土) 02:23:15
      • (問い返された言葉に、アジャンクールは額に青筋を浮かべ、いかにも不愉快といった様子でまた舌打ちをする)
        全くその通りだ、面倒極まりないぞ獣人
        だがな、その面倒を省いた場合、まず、私の感情から言えば、お前のような獣人が……それも私からすれば害獣そのものの狼男が一丁前にそうベラベラと弁舌を回す事自体が不愉快極まりない
        感情に従って自由に生きて自由に法を解釈していいというのなら、私は「たかが獣人が、この私に対して知った口を利いた罪」を此処で罰してもいいということになる
        (そう、一気に捲くし立ててから……嘆息と共に肩を竦める)
        だが、それが理不尽なワガママでしかないことは、誰の眼にも明らかであり、仮に私がその罰を私なりに解釈した罪に応じて執行した場合……罰されるのはまぁ、順当に見て私だろう
        ……結局、それが答えといえるな
        いいか、獣人
        不自由の中にいてなお、その不自由を理性的に受け止められる知性こそが……人の秩序の誉れだ
        檻は何も内側を束縛するためだけにあるのではない。外側から内を守るためにも機能するからこそ、檻なのだ
        ……もっとも、根っから暴力で野に生きることも出来る獣人には、分からん感性かもしれんがな -- アジャンクール 2018-03-31 (土) 02:37:35
      • ああ。面倒極まりないな。理解も、出来ているようで出来ていないのだろう。
        (口の端を爪ある指で探った。まだ、人声の発音は慣れない)
        (そういう風に出来ていないにも関わらず、そういう風に生きていることは、面倒で不自由である)
        (そう言いかえられれば、非常に飲み込みやすい。「たかが獣人が、人語を介して物を尋ねること」をこそ、法と同じ防衛機能を有する不自由が齎す防壁だ)
        (立場と置かれている状況を示唆して振るった弁は、思った以上に自分に浸透した)
        ……お前は、物を知っているな。
        名は? お前という法廷では、誰何も罰されるか?
        (皮肉を交える) -- クギナ 2018-03-31 (土) 02:44:11
      • 理解出来ているようで出来ていないなど……知った口を!
        (一瞬頭に血が上りそうになるが、そこで、大きく一度深呼吸をして、頭を振る)
        ……お前のような獣人にそう言われる事は全く業腹だが、それを認めない程愚かであるつもりもない
        まぁ、それが事実だろう
        理解できないからこそ、無理矢理枠に放り込んで知った気になるのが、学問の本質だ
        (皮肉の回る獣人の舌に、思わずまた眉間に皺を寄せる)
        ……名を訪ねるなら自分からというのが人間の礼儀だが、獣人のお前にそれを求めるのは酷と言うものだな
        故に名乗ろう。我が名はリオネール・ヴィーヴス・ド・アジャンクール
        尋ねられた手前名乗りはするが、私はファーストネームを呼ばれるのは嫌いだ。獣人であるなら殊更だ
        教授、もしくはアジャンクールと呼べ -- アジャンクール 2018-03-31 (土) 02:54:33
      • 分からないことだらけだよ。この国の法も、そうやって良くわからない頭のいい誰かが作るんだろうなということだけはわかる。
        皿一つ割っただけで死罪になる国よりは、皿を割る俺は少しばかり住みやすいのかもしれん。
        名乗らずとも、ここでは他と混ざるまいと思ったが、そんな礼儀もあるのか……。
        キョウジュ、教授か。アジャンクール。……難しいな、呼び方としても長い名だ。努力はするが忘れるやもしれん。
        クギナ=ガリューカ。まあ、イヌでも獣人でもなんとでも呼ぶといい。
        (皮肉ではない様子で、呼称や蔑称をなんとも思っていないらしい)
        ……皿の報告をしてくる。括り首になったら笑ってくれ、人。
        (膝を叩いて立ち上がると、皿の欠片を手に持ったままのそりと巨体が歩いて行った) -- クギナ 2018-03-31 (土) 03:03:45
      • 忘れても構わん。獣人にそこまでは期待していない
        だが、私はお前の名は覚えているだろうが、それでも名は呼ばん
        (と、言い放ったところで、確かに名乗りを聞く必要もなかった事に気付き、思った以上に獣人の頭が回る事を認めざるを得なくなる)
        (それこそが、アジャンクールにとっては全く忌々しい話ではあったが)
        (苛立たし気に舌打ちをして、その背を見送ってから)
        ……ふん。皿一つで死罪に括り首だと?
        バカらしい。なら次は、皿に触れる事が罪になるにきまっている
        (そう、一人ごちた) -- アジャンクール 2018-03-31 (土) 03:16:30
  •   -- 2018-03-31 (土) 03:19:29
  •   -- 2018-03-31 (土) 03:19:33
  •   -- 2018-03-31 (土) 03:19:35
  • 不幸な国 -- 2018-03-31 (土) 23:57:56
    • 王国歴XXX年X月XX日 篠突く雨。
      イムルトン王国遠方斥候調査隊第七小隊は、不運にも糧食を失ってしまった。
      想定外の天候不良のせいだ。
      十分な事前調査はしていた。それでも、唐突な天候不良の全てまで見通せるわけではない。
      目下、アジャンクール達に出来る事は、自らの不幸を嘆くことだけだ。 -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 00:03:46
      • 都合、小隊丸一個分の濡鼠達は、せめてこの悪天候を乗り切れるだけの軒先を求めていた。
        具体的にいえば、洞穴や、大木の根元などだ。
        とりあえず、雨が過ぎ去るまで、多少の雨露を凌いで休めるならどこでもいい。
        この一時の不幸を凌ぐための、ささやかな幸運を、隊の誰もが望んでいた。 -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 00:09:34
      • 果たして、その願いが通じたのか。
        遥か、視界の東側。
        驟雨で煙る視界の果てに、確かにそれは見つかった。
        隊の誰とも言わず、声があがる。

        「城壁だ!」

        そう、それは、多少様式は違えど、イムルトン王国でも見慣れた石造りの城壁。
        確かな文明の証だ。
        この際、廃墟だって構わない。
        雨露が凌げるのなら、なんだっていい。
        逸る隊員たちを戒めながら、アジャンクールも口端には僅かな笑みを浮かべて、その城壁へと歩き出した。 -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 00:14:32

      • 「おお、それは皆さん……なんと大変な不幸に……!」

        幸いにも、城壁は廃墟ではなく、そこにあったのは、一つの都市国家であった。
        物見塔からこちらを見ていた番兵は、我々が城壁前で、事のあらましを叫ぶなり、「それは何と不幸な!」と嘆いて、城門を開いてくれた。
        今は門の内側で、入国審査官にほとんど同じ言葉を投げかけられている。 -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 00:29:39

      • 「事情は把握しました。我が国は、皆さんの保護を約束しましょう。十分出立可能な状態に回復するまで、我が国に御滞在ください。無論、出立の際には、十分な糧食も準備させて頂きます」

        予想外の厚遇に、アジャンクールは流石に申し訳ない気持ちになった。
        隊員たちも同じ気持ちだったようで、皆を代表して、アジャンクールは西方領域式の礼節を尽くしながら、謝礼としての金品の供出を提案した。 -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 00:37:01
      • それでも、入国審査官は首を縦に振らなかった。
        むしろ、どこか満足そうに……いうなれば、誇らしげに……首を左右に振って、鷹揚に、慈しみに満ちた瞳で、アジャンクール達に視線を返した。

        「大丈夫です。なぜなら、皆さんは不幸な目にあったからです。それは、誰のせいでもなければ、誰の過失でもありません。ただ、皆さんは不幸だっただけなのです。その不幸に付け入って金品をせしめるなどと言う真似を、我が国はしません。ほら、困った時はお互い様と言う奴ですよ」

        そう、柔らかく、それでいて断固たる自信を持った余裕ある言葉に、隊の誰もが深い感銘と感謝の気持ちを抱いた。
        ああ、なんて高潔な精神を持った国なのだろうか
        アジャンクールでさえ、目頭を微かに熱くさせながら、そう思った。

        「さぁ、今日はお休みください。滞在に関する御話や諸手続きなどは、明日行いましょう」

        そう、入国審査官は締めくくり、その日、アジャンクール達は暖かい食事と寝所、さらには湯まで与えられ、斥候任務では誰もが期待していなかった、文化的な夜を過ごした。 -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 00:45:03


      • *************

        -- 2018-04-01 (日) 00:49:28

      • 「さて、みなさんの不幸レベルですが、概ね468レベル程であるという審査結果がでました」

        翌日。朝食を食べた後。
        入国審査官は、アジャンクール達に対して、開口一番、そう告げた。
        思わず、アジャンクールは「不幸レベル?」と、訝し気に首を傾げた。
        それに対しても、入国審査官は柔和な笑みを返しながら、話を続ける。

        「我々の国は、不幸な者達に対して慈愛と厚遇を与えることを是としています。だって、不幸なんですからね。どんな人間でも、理不尽な不幸の前には膝を折ります。そして、時には二度と立ち上がれなくなる……だからこそ、私たちの国では、研究の末に不幸指数を求める方程式を発明しました。これによって、誰もが平等に、己の不幸を明確に図示し、他者に示せるようになったのです」
        -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 00:56:47

      • 恍惚とした表情で語る入国審査官を後目に、アジャンクール達はどこか鼻白みながらも、話を聞く。

        「そして、みなさんの不幸レベルは、一日あたりだいたい100程さがっていく計算ですので、この調子でいけば、三日後には晴れて幸福な身となって、出国が可能となるでしょう。いや、羨ましい」

        そう、締め括る入国審査官の最後の言葉に、アジャンクールは「羨ましい……ですか?」と、問い返した。
        故郷を出ざるを得なかったアジャンクールからすれば、国から出ること……その上、こんな衣食住の行き届いた文明的な国で、しかも生まれ育った者からすれば故郷だ……から出る事が「羨ましい」などとは、どうにも理解しがたい話であった。 -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 01:10:30


      • 「当然ですよ! ここは、不幸指数が最低でもレベル100以上なければ暮らすことが出来ない、不幸な者達のための国なのです。幸福な人間はここにはいませんし、幸福であるのなら、一人で、その幸せを噛み締めながら、しっかりと歩む事が出来る筈なのです。そして、一人で歩めるのなら、こんな不幸な国にいる必要はありません……それだけの強さを持っている方の事を、幸福で良いと羨む事は、全く当然の事ではありませんか!」

        全く自信に満ちた、とても誇らしげで恍惚とした表情で、そう入国審査官は締め括った。
        反論や質問を返すものは、隊には一人もいなかった。
        -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 01:27:56


      • *************

        -- 2018-04-01 (日) 01:46:03
      • 三日後。晴れて、イムルトン王国遠方斥候調査隊第七小隊は十分な糧食と物資の提供を受けて、その国から出立する事となった。
        隊員とそれぞれ出立の準備を進めている最中……突如、一人の男と女、そして子供が、城門の外に放り出された。
        放り出された男はいった。

        「ま、まってくれ! 私たちはまだ不幸だ! だから、国の中に戻してくれ! せめて、せめてこの子だけでも!」

        女は叫んだ。

        「そう、そうよ! 両親と離れて暮らすなんてとても不幸だわ! だから、不幸になってしまうこの子だけでも!」

        しかし、子供は泣き叫んだ。

        「やだよぉ……パパとママと離れるなんて、やだよぉ……!」

        城門の内側にいる入国審査官は、柔和な声で答えた。

        -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 01:50:51

      • 「幸福な家庭。相思相愛で見目麗しい伴侶。家族思いの両親。そして、十分な資産。アナタ達の不幸指数はどこをどう数えてもレベル50にもなりません。そんな幸福な貴方達から、まさに幸福の権化でもある子宝を奪い去るなんてそんな不幸な真似が、どうして私達に出来るでしょうか? どうか、その幸福を胸に外の世界へと一歩足を踏み出してください。ああ、羨ましい! ……というか」

        そこで、入国審査官が、汚物を見るような目で。

        「……幸せで一杯の連中が下手な不幸自慢とかしないでくださいよ。反吐がでる。アンタ達みたいな連中が、私達をもっともっと不幸にするんだ。苛立たしい」

        そう、城門の外の家族に言い放った。
        まるで、親の仇でも見るかのように。
        最後に、いかにも重そうな袋……恐らく、金貨か何かの詰まった袋が、投げつけるように家族の元に放り投げられた。 -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 02:06:20

      • その後、出立の準備が整ったアジャンクール達は、そのまま、森の中を彷徨っていた先ほどの家族を保護し、その足で王国への帰路についた。
        保護された三人は皆、口々に小隊の面々に謝辞を述べ、涙ながらにこう語った。

        「ああ、自分達は……なんて幸運なんだろう!」

        -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 02:10:44


      • 危険度――20。難民流出の恐れあり。リオネール・ヴィーヴス・ド・アジャンクール。 -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 02:13:12
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:24:02
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:24:05
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:24:08
  • 受付 -- 2018-03-31 (土) 23:34:20
    • チッ……
      (受付から戻り、椅子に座ったところで、丁度、靴紐が切れた)
      (忌々しげに、応急処置として、千切れた靴紐を結び直している) -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 02:17:31
      • いつも思うんですが、どうして教授はそんなに世界全てに恨みを持ったような顔つきと舌打ちするんです?
        (そう言いながら自分の席で書類をまとめている女。顔を見ればからかい半分と書いているのが見て取れる)
        それとも、この職場自体になにかご不満でも? -- アレックス 2018-04-01 (日) 02:25:14
      • あ?
        (そういって、アジャンクールが顔を上げた先にいたのは、桃色の髪と、碧の大きな瞳が特徴的な同僚……アレクシア・メイフィールドであった)
        (顔に書かれたからかい半分という意図を見て取って、アジャンクールは更に顔を顰めながら、吐き捨てるように呟いた)
        そりゃ私がこの職場の低賃金どころか、この世界全てに不満を抱いているからだ。でなけりゃ、学者なんて世界の不満を暴こうなんて生業はやらない
        気に入らないものを気に入る枠に納める事が私の仕事だ
        その上、この善良な私に対して、神が与える事といえばこの靴紐が千切れるハプニング程度のものだ
        エンターテイメントを提供してやったんだから、何かしら見返りを寄越せと、天にむかって嘯きたくもなるというものだ -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 02:32:50
      • ははあ。でもそれなら良かったですよ。私の顔見て更にしかめっ面するから、お前と仕事すること自体をゴメンだ、とでも言い出すかと思いましたからね
        (皮肉、というよりは冗談だと言いたげな声色だ)
        確かに、分からないことをわかるように言語化し、分類し、理解し。それにより恐怖を取り除く。私は教授みたいに明晰ではないけれど、素晴らしい仕事だと思いますよ
        ただ、神様はそれらを自分で作ったのにお前らは今更何を? とでも思っているのでしょう。なので褒美もくれないんですよ。きっと、ね -- アレックス 2018-04-01 (日) 02:42:42
      • どこかの獣人と組むよりは幾分かマシとは思っている。私は文明人なんでな
        (荒く鼻息を吐いて、眼鏡をなおす)
        (しかし、続けてアレックスの言った事に何か思う所があったのか、アジャンクールは更に眉間の皺を深くした)
        なぁ、アレックス君。君は、神が全ての尺度を……例えば、人間の幸・不幸を決めるような尺度などを、神が事前に作っていると思うかね? -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 02:50:39
      • みなさんそんなに悪い方ではないんですよ? ただ文化的な違いとか……はい?
        (そう問われると、顎に指を当てたまま一点を見つめ)
        …あまりこんなことは言いたくはないですが、私は不信神なほうですし…そうは思いませんね
        少なくとも、この世界に誰か設計者がいたとしても、人、あるいは動物でもいいですが、幸福かどうかは自分が感じるかどうか、だと思います。
        どうしたんです? 急に -- アレックス 2018-04-01 (日) 02:58:47
      • (アレックスの回答を静かに聞いて、一度唸ってから、アジャンクールは大儀そうに頷いた)
        ……まぁ、確かにそれが全てだな
        私もそう思う。君の言う通り、所詮、個人の幸福度など、個人の感性に依るものだな
        では、こう聞こう、アレックス君
        仮に、君がとても不幸な目に合っているとしよう
        周囲の人間も……まぁ過半数以上くらいは、君の境遇が不幸であると認めたとする
        その場合、君は……君よりも幸福な人間達には、何を求めるかね? その幸福な人間たちが「自分も不幸だ」と嘆いたら、どう思うかね? -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 03:05:01
      • それは、ノプリス・オブリージュ的な義務に対しての話ですか? だとすれば、私が求めずとも何かしらの援助が行われるのかも知れないです
        そうではなく、私自身が能動的に何かを求める、のであれば……まず境遇を、その状態を、抜け出すためのきっかけになる仕事や、あるいは…そこから離れることもあるのかも知れません
        その人たちが自分も不幸だ、と嘆くのであれば…私には、話を聞くことくらいしか出来ませんね。人が求めるものは百人居れば百通りあるのでしょうし。私は商家に居ましたから、人の欲望は際限もないのかも知れません -- アレックス 2018-04-01 (日) 03:13:53
      • ノブレス・オブリージュ、か……
        (高貴なるものの義務)
        (元が貴族であるアジャンクールにとっても、馴染の深い言葉だ。親族……特に父と兄が、何かにつけて語った言葉でもある)
        (富める者の義務を果たせ)
        (その富は無から湧いて出たものではない)
        (生きるに困らない以上の富を持つからこその義務。言い換えればそれは……幸福である事には責任が伴うと、言い換えることもできるのではなかろうか?)
        しかし、人の欲望には際限がない、か…ははは、全くそうだ。君の言う通りだなアレックス君
        せいぜい、際限のない欲望に対してしてやれることなど、確かにそれを見聞きしてやることくらいなものだな
        (幸福を指数化したのなら、それは富を指数化した貨幣のようになるのだろうか)
        ありがとう、アレックス君。参考になる意見だった
        しかし、そういう事なら、神は存外にこの世界を愛しているのだろうな -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 03:21:39
      • …しかし、不思議な質問をされますね。あまり考えたことは無かったですが…
        (言われてみれば、自分もそうなのだろう。元いた場所は不自由はないかもしれない。けれど、それは幸福ではない、と、感じてしまった。だから、私はここに居るのだろう)
        いいえ、少しは役に立ったのなら幸いですが…
        どうしてです? さっきまでは神を呪い殺してもおかしくなさそうな顔付きでしたけど -- アレックス 2018-04-01 (日) 03:36:25
      • 何、少し思う所があってな
        (そういって、立ち上がり、外套の裾を翻す)
        まぁ、これは私の見解でしかないんだがな
        (そう、一言添えてから、アジャンクールは眼鏡をかけ直し)
        もし、私が神であるなら……自分の尺度で作りだした不幸で勝手に絶望している人間とやらを眺めるのは、中々愛すべきエンターテイメントだと認識するであろうからな
        (それだけ言って、また、受付と二、三話をして、外に出て行った) -- アジャンクール 2018-04-01 (日) 03:55:31
      • (その後ろ姿を見送る、頬杖をつき)
        …でも、その自由さにこそ、人間が人間である意味が埋もれてると思うんだけどなぁ…、というか
        (そこまで世界は穿った見方をせずとも、十分面白いと思う。それは、自分の見識の浅さからだろうか?)
        (あるいは、初対面で教授と呼べ!と嘯いた、アジャンクールというあの男がペシミストすぎるのか)
        私も最終的にああなるってこと? 人生って大変なんだなぁ……
        (不幸の国と書かれた書類をファイルし、日付順最後に並べると、彼女もその場を後にした) -- アレックス 2018-04-01 (日) 13:23:57
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:24:57
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:25:00
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:25:03
  • グリフォン討伐 -- 2018-04-02 (月) 22:09:18
    • 王国歴XXX年X月XX日 鬱陶しい程の快晴。

      開拓範囲外縁ギリギリの開拓拠点にて。
      今年の春からグリフォンが頻出するという通報を受け、事実確認のため、アジャンクール等、イムルトン王国遠方斥候調査隊第七小隊は、丘陵上に作られた開拓村に訪れていた。

      このあたりは一応はイムルトン王国領ではあるが、厳密に言えば大昔に打ち捨てられた名もなき国の成れの果てであり、本来で言えば他に正当な領有権を主張する何者かが現れてもおかしくないのだが……幸いにも、今日まで、そう言った主張を行う輩は、王国に現れていない。 -- アジャンクール 2018-04-02 (月) 22:20:55
      • まぁ、しかし、長い歴史の流れで見れば、良くある話でしかない。

        こういった如何にも人が住みやすい土地は、古来より何者かがとっかえひっかえ住み着いているものであり、お陰様で完全な未開地より遥かに開拓がしやすい。
        そして、それは人間以外の生物にとっても住み心地が良いという事でもあるため、害獣被害に晒されるというのも、そう珍しい話ではなかった。

        だからこそ、適当に調査を済ませたら、アジャンクール達もさっさと引き上げ、入れ替わりに現れるだろう王都進駐軍に調査資料だけ渡して、そのまま王都に帰る予定であった。 -- アジャンクール 2018-04-02 (月) 22:28:55
      • ところが、そんなアジャンクール達の目論見は脆くも崩れ去った。

        連日連夜グリフォンは昼夜問わず出没し、その余りの頻度に斥候部隊も応戦と見張りに駆り出され続け、王都進駐軍が到着した後も、調査どころか休む暇もロクに無かったのである。
        更に言えば、グリフォンは非常に狡猾な個体のようで、矢傷を少し受けるだけでさっさと飛び去って逃げてしまうのである。

        いかに強大なグリフォンといえど、一体きりでは無勢も良い所であるが……こうも徹底的な消耗戦を強いられては、如何にイムルトン王国軍が多勢と言えど、状況は芳しいと言い難い。
        幸いにも、徹底した集団行動のお陰で目立った負傷者はこちらにもいないが、こうも気を張り続けては、体力より先に気が滅入ってしまう。 -- アジャンクール 2018-04-02 (月) 22:48:00
      • そうこうしている内に、二週間が過ぎた頃。
        その日は、朝から激しい横風が吹いていた。

        こういう強風が吹き荒ぶ日は、如何にグリフォンと言えど飛行は容易ではない。その翼と巨体がたっぷりと風を受け止めてしまうためだ。

        今日ならば、地を這う人間でも、ある程度安全に周囲を哨戒出来る。
        絶対安全と言うわけでは無論ないが、それでもようやく出来た好機である。アジャンクール等、斥候部隊の面々は、戦々恐々としつつも、外套をはためかせて、周囲の警戒と調査に向った。
        もし、グリフォンの巣が近くにあるのだとしたら、こちらから夜襲を仕掛ける事も出来る。
        仮に巣がなくても、痕跡を辿ればどこから現れているのか、調べる程度は出来る筈だ。 -- アジャンクール 2018-04-02 (月) 23:12:53

      • 強風に曝され、激しく枝葉を揺らす針葉樹の森を、アジャンクール達は歩き続けた。

        幸いにも、目印となるグリフォンの足跡は点々と続いていた。
        飛行せず歩いているということは、このあたりに巣がある証拠だ。

        針葉樹の激しい葉音に眉を顰めつつ、アジャンクール達は必死にグリフォンの足跡を辿った。 -- アジャンクール 2018-04-02 (月) 23:35:29

      • 半日程、時折途切れる足跡を何とか辿り、グリフォンの巣と思しき森の調査を続けた所……唐突に、開けた場所に出た。
        すわ、グリフォンの寝床かと一行は警戒を強めたが、そこにあったのは、何の事は無い、ただの廃村であった。

        放置された家屋の状態と、土の状態を見るに、ゆうに数十年は人の手が入っていないようである。
        恐らく、丘陵の開拓拠点と似たような境遇の村なのであろう。
        あちらにも、最初はいくらか廃墟の名残があったと聞く。 -- アジャンクール 2018-04-02 (月) 23:45:13

      • 廃村を調べてみると、どうやら元は一般的な農村の一種であったらしく、放置された畑やら、牧草地の跡と思しき、柵に囲われた広い庭を見つけた。
        おそらく、この針葉樹の森も、あとから防風林として植林したものなのであろう。

        他にも、廃屋から手記と思しきスクロールやら本やらを見つけもしたが、腐食が酷過ぎてどれも読む事はできなかった。
        まぁ、仮に無事な物が見つかったとしても、異文化圏の文字では、速やかな解読は不可能だったろうが。 -- アジャンクール 2018-04-02 (月) 23:56:14

      • 小一時間ほど、廃村を散策した頃、突如、廃村の奥から隊員の声があがった。
        何か見つかったらしい。

        疲労で震える脚に喝を入れ、アジャンクールも声を上げた隊員の元に向う。

        向かった先にあったのは……巨大な牛舎のような廃屋と、乾燥しきって崩れ始めている干し藁の上にならんだ、巨大な卵の殻……グリフォンの卵の殻だった。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 00:01:56

      • やはり、ここがグリフォンの巣で間違いない。
        何故、新しい卵ではなく、古い卵しかないのかはわからないが……まぁ、グリフォンに限らず、超大型の魔鳥類は、長ければ八十年から百年は生きる。
        古巣にずっといる事もそう珍しい事ではない。

        ともかく、巣の所在がわかった以上、長居は無用。
        すぐにでも拠点に引き返そう。そう、一行が帰り仕度を始めた時……それは、現れた。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 00:06:35

      • 針葉樹林に吹き荒ぶ強風がそよ風に思えるような颶風を纏って、巣の主……グリフォンが戻ってきた。
        一般的に、巣を荒らされた猛獣の取る行動は、概ね一つしかない。

        斥候小隊一行は、それこそ蜘蛛の子を散らす様に、森の中へとバラバラに逃げていく。
        成体のグリフォンの相手は、完全武装の軍隊一個小隊でも苦戦は必至。

        任務の特色上、基本的に軽装の斥候小隊では、万に一つも勝ち目はない。
        今出来ることは、一刻も早く、森に身を隠す事だけだ。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 00:13:41

      • 息を切らし、他の隊員の安否確認もロクに出来ないまま、アジャンクールは森の中を走る。
        恐らく、斥候部隊の中で一番足が遅いのはアジャンクールである。
        学者である彼は鉱脈や、有毒な動植物を見分ける為の知識要員なのだから、当然である。

        普段なら誰かが撤退支援やら何やらしてくれるところだが、こんな緊急時ではそんなものは望めない。
        万事休したかと、逃走を諦め、目くらましにでもなればと外套の内側に仕込んだ、マジックスクロールに手を伸ばしたが。

        「……?」

        追撃の足音も、激しい羽音も、何より……同じ小隊の誰かの悲鳴も、森には響いていなかった。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 00:28:22

      • 理由は不明だが、グリフォンは巣に無遠慮に踏み入った闖入者への追撃より、巣にとどまる事を選んだらしい。
        もしかしたら、見逃していただけで、巣には、まだ孵化していない卵があったのかもしれない。

        いずれにせよ、この好機を見逃す手はない。
        アジャンクール達は一目散に丘陵の拠点へと帰還して、これまでの一部始終を主力の王都進駐軍へと報告した。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 00:32:44


      • ***************

        -- 2018-04-03 (火) 00:37:35


      • 何とか拠点に戻ったところ、幸いにも、死傷者は一人もいなかった。
        何にせよ、無事、グリフォンの巣を発見し、任務を果たした斥候部隊は、あとの事を王都進駐軍に任せ、極一部の案内役だけを残して、他の隊員は補給と休養のため、王都へと戻る事になった。

        無論、アジャンクールもそこで王都に戻ってこの話は終わる予定だったのだが……グリフォンの巣とは逆方向の森にあった廃墟から古文書が見つかってしまったため、その解読のために残る羽目になった。
        アジャンクールとしても、本当は一刻も早く王都に戻りたかったのだが、解読できる人間が現場にアジャンクールしかいない以上、断る事も出来ない。これも知識要員としての仕事だ。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 00:42:36

      • ぶちぶちと文句を垂れながら、全く不承不承といった体で、古文書の解読にあたるアジャンクール。
        時折、汗でずり落ちる眼鏡を、舌打ちと共に直しながら、静かに古文書の解読を続ける。

        そして、半日程経った頃だろうか。

        どうにか、内容をおぼろげながら解読したアジャンクールは……またしても苛立たしげに、大きく舌打ちを一つ漏らした。

        まだ完全解読には至っていないが、この古文書の内容がアジャンクールの予想通りだとすれば、全く今回の任務は無駄骨だったという事になる。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 00:50:46

      • 思えば、いくつもヒントは散りばめられていた。
        点々と配置されている廃墟。
        丘陵や植林地に設えられた、無暗に広い牧草地。
        わざわざこんな、ややこしい異言語を使う、イムルトン王国とは違う文化圏の廃墟。

        夕刻過ぎ、暗くなり皆が眠りにつく前に、アジャンクールが、古文書の内容を報告すべく、王都進駐軍の兵士達の元に向ったところ。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 00:57:24

      • 夕闇を切り裂き、空に挙がったのは……兵士達の鬨の声。
        思わず、アジャンクールは駈ける。
        駈けたその先にあったのは……兵士達の人だかり。
        そして、その中心にいたのは……ここ数日、一行を悩ませ続けた、あのグリフォンだった。

        あんなにも皆が畏れていたグリフォンは、弩砲(バリスタ)の太矢を心臓に受けて、あっさりと事切れていた。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 01:02:32

      • 「今まではちょっと弓を射かければすぐ逃げてたのに、今日は突然、こっちに向かってきたんです」

        説明を求めてもいないのに、得意気に兵士が話す。
        まぁ、無理もない。王国を脅かす魔獣を退治したのだ。大手柄だろう。

        「でも、わざわざ門前に着地しやがったんですよ、アイツ! いくら広くておりやすいからって、あんなところに降りたんじゃあねぇ! 所詮は鳥頭ってところですかね!」

        確かに、あの開けた門前に着地すれば、周囲に危険はないだろう。
        いざという時は何かと周囲から介入する事も容易だ。

        「……そういえば、先日、廃村で遭遇した時は、誰もコイツと目も合わせずに、ただただ逃げてしまったな」

        誰にともなく、アジャンクールはそう呟いた。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 01:09:01


      • 「そういえば、あの古文書の解読おわったんですか? 教授?」

        古文書の解読を頼んできた兵士にそう尋ねられ、アジャンクールは小さく笑った。

        「無論だとも。あの程度の古文書、私に掛かれば何でもない」

        「へぇ、それは頼もしい。じゃあ、早速、どんな内容だったのか、教えて下さいよ」

        「いや、内容を聞くのはやめておいた方がいい。無理に解読して読むのもやめておけ」

        「そりゃまた、なんで、ですか?」

        アジャンクールは、一度嘆息してから、静かに答えた。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 01:12:59

      • 「あれは、呪いのスクロールだ。無理に読むと、気分が悪くなるぞ」

        それだけ言い残して、アジャンクールは喧騒から背を向けた。
        事切れたグリフォンの瞳は、ただ門の先へと向いていた。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 01:17:14


      • 危険度――0。特筆すべき項目なし。リオネール・ヴィーヴス・ド・アジャンクール。 -- アジャンクール 2018-04-03 (火) 01:20:08
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:25:47
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:25:50
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:25:54
  • 仕事先 
    • あー、そうだ、それはこっち。そっちのは……おい、気を付けろ! その魔石は貴重なものなんだからな!
      (露天掘りの鉱床で、ああだこうだと支持を出す)
      (鉱脈から、多少魔石が出土したらしい) -- アジャンクール 2018-04-06 (金) 21:16:34
      • ほらほら、そんなに怒声ばかり張り上げてたら、またしかめっ面になっちゃいますよ
        (そう言いながら後ろから来た彼女はアジャンクールの足元にしゃがみこむ、砕かれた石の欠片を摘むと、光に空かした)
        なるほど? さっぱり何なのか、私には分かりはしませんね? -- アレックス 2018-04-06 (金) 22:04:57
      • 生憎と生まれつきでな……
        (仏頂面でまた眼鏡をかけ直し、適当に部下に指示を出してから、折り畳み式の椅子に座る)
        素人にもあっさり違いが判るなら、我々魔石学者は揃って商売あがったりだ
        ちなみに、今君が持っている奴はただの石灰岩だ -- アジャンクール 2018-04-06 (金) 22:13:28
      • そうですか? たまに自分の席で口の端だけを釣り上げて、こんな顔してる時も見ますけど
        (そう言うと彼女は石を放り出し、両手の人差し指で唇を半月のような形にする)
        まあ、でもどちらかと言うと仏頂面の方が、まだ受けは良さそうですね
        (そう言うとまた、足元の小石を拾う)
        それで、今回は何が見つかったんですか? 屯所の食事が基本、蒸した芋と謎の酸っぱい野菜の漬けた奴から私たちを救ってくれますか? -- アレックス 2018-04-06 (金) 22:24:27
      • 人の笑顔をそんな飲みのネタのように……!
        ふんっ! 人受けの良い顔などしったことか! 顔芸も腹芸も苦手なお陰で此処にいるのだからな!
        (膝で頬杖を突きながら、忌々しそうに舌打ちをする)
        ……今回見つかったのは、石英が多く含まれた花崗岩だ。君らにもわかるようにいえば、水晶の原石のまた原石みたいなものだ
        生憎と、大した量ではない。屯所の台所事情に変わりはないだろうな
        まぁ、運が良ければ、干し肉の一欠もつくようになるかもしれんがな -- アジャンクール 2018-04-06 (金) 22:31:25
      • 冗談ですよ。でもそれ、人に笑顔を向けながら、心の底では何考えてるか分からない。っていうのは、結構見ましたからね
        それに比べれば、私としては親近感は持ちやすいですが
        (いや失礼を、すいませんと笑顔で謝る彼女)
        要は、クォーツになり切れなかったただの石ですよね? そんなでも魔石、なんて言うんですか?
        (再び手元の石を投げる、多少白濁した石の欠片をつかむと、再び光に晒した)
        多少ピンクが見えなくもないけど、濁りすぎですね。宝飾品としての価値は限りなくゼロです -- アレックス 2018-04-06 (金) 22:40:39
      • 褒め言葉として受け取っておこう。で、石についてだが、まさにその通り。ようするにこいつはクォーツの成りそこないで、宝石としての価値は無いも同然だ。
        だが、屑石の原石でも石英は石英だ
        使いようではどうとでもなる
        (そういって、適当にその辺に転がっている石を手に取って、何やら文字を書き込む)
        (すると、途端に石がさらさらと砂になり、そのまま地面に落ちると……液状に広がり、小さな水たまりとなった後……そのまま蒸発して消えた)
        (水溜りがあった場所は、不思議と地面の色が鮮やかで綺麗になっている)
        見ての通り、きちんと魔術式を書きこめば、聖水の代わり程度にはなる -- アジャンクール 2018-04-06 (金) 22:58:43
      • お? おおー……おお?
        (その一連の作業を注視し終えると、色が変わった辺りを摩る。アジャンクールに視線を戻すと)
        凄いですね! じゃあ、これをある程度市街地なんかに施せば、魔物避けにはなる、と?
        そして余った分をどこかしらに輸出すれば…、って、大した量じゃないんでしたっけ。じゃあ、干し肉は夢のまた夢ですね… -- アレックス 2018-04-06 (金) 23:18:15
      • 私のように熟練した魔石学者や、魔石術に長けた魔術師がいればの話だがな
        いずれにせよ、きちんと加工すれば魔物避けや、アンデッド退治程度には使える
        もっとも、こんなに純度の低い屑石では、余程数を集めなければ不可能だがな
        少ない量では、せいぜい、見ての通り漂白剤に少し使える程度だ
        これだって、地面が元々汚れていないから出来たのだ
        先程程度の量では、ぬかるんだ泥などに使ったらほとんど意味がない
        まぁ、そんなわけで、干し肉についてはアレックス君の予想通りと言う事だ
        むしろ、肉をくいたいなら、自前で喰えそうな害獣でも退治したほうが早いだろうな -- アジャンクール 2018-04-06 (金) 23:24:59
      • 魔石、という単語は聞いたことはあっても、それを扱えるって人は、教授を見るまでは知りませんでしたよ
        なるほど、安易に商売になりそうなものではありませんね。仕方ない…
        いえ、肉でなくてもいいんです。とにかく、あのパサパサと酸味だけの生活には飽きた、というか。教授は大丈夫なんですか。あんな食事で -- アレックス 2018-04-06 (金) 23:33:03
      • ……まぁ、魔石や宝石を扱う魔術は金ばかり掛かる上に、最近では少しばかり時代遅れだからな
        (そういって、自嘲気味に笑う)
        私も家柄の問題で修めただけだ。まるで興味がなかったわけではない事は、幸いだったといえるがね
        (組み立て式の椅子に深く腰を落ち着けて、溜息を吐く)
        無論、食生活には大いに不満があるとも
        だが、改善策があるわけでもないのでな
        あと、炊事係の連中に下手に文句を言ってにらまれたら、ただでさえ碌でもない食事事情がさらに碌でもないものになる -- アジャンクール 2018-04-06 (金) 23:42:06
      • 私が、覚える気は無くとも実家の仕事を分かっているのと同じ、という事ですか
        最も、商売自体に興味は無かったですが…、貴石や宝飾品を見る分には、楽しかったですけどね
        (摘んだ石を遠くに放り投げると立ち上がり、お尻を払う)
        でしょう!? なら、文句じゃなく私が勝手に差し入れすればいいわけですもんね
        先ほどの話じゃないですけど、何か捕まえてみせますよ。それなら炊事場の人も納得するでしょうし! -- アレックス 2018-04-06 (金) 23:50:18
      • そんなところだ
        見ている分には面白かったものを改めて学ぶというのは、そう悪いものでもないからな
        (立ちあがるアレックスにあわせて立ち上がり、腰を軽くたたく)
        そういう事なら、ぼちぼち仕事も切り上げだ
        私も同行しよう
        折角肉が届いても、取り分が少なくては肩透かしも良い所だからな -- アジャンクール 2018-04-06 (金) 23:57:42
      • 大丈夫ですか? この間、教授のよく組む小隊の人から、運動場を3周するくらいで、顔を真っ青をしていた、と聞きましたけど…
        二人居るなら、追い込み猟がやれますね。教授が吠える、犬の係になりますが…… -- アレックス 2018-04-07 (土) 00:03:24
      • 誰が運動要員でついていくといった! 獣相手なら遠距離観測やら足跡の調査やら色々あるだろうが! 猟犬ならむしろ、隊に丁度いいやつがいるだろが! そっちに頼め!
        もっとも、単独行動が許されたアレが、今いるか知らんがな
        それはそうと、善は急げだ。いくぞアレックス君
        夕飯までには戻らねばならんからな
        (いうが早いか、アジャンクールは外套を翻して、さっさと現場を後にした)
        (これから行う狩猟の成否については、今は語るまい) -- アジャンクール 2018-04-07 (土) 00:14:19
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:25:47
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:25:50
  •   -- 2018-04-03 (火) 01:25:54
  • 封書類を持参した。(のそりと現れる灰色獣人)
    こちらの宛先は正しいか……?(封書類の裏面を指さして言う) -- クギナ 2018-04-05 (木) 23:19:18
    • あ?
      (同じく、書類整理をしている最中。クギナを見上げるように、大きく首をあげる)
      (身長差の関係で、どうしてもこうなる)
      見せてみろ
      (そういって、眼鏡をかけ直して、封書類の宛名を確認し)
      ……ここと、ここのスペルが微妙に違う
      正しくはこうだ
      (そういって、手元のメモに書いてみせてから、ペンを渡す)
      私が直すと筆跡が違うものになる
      自分で直せ -- アジャンクール 2018-04-06 (金) 21:20:04
      • (あからさまに面倒な渋面を作る)
        ……なぜこうも報告書の流れは煩雑になるんだ。
        せめて小隊長以上の合意やサインは不要としたほうがいいんじゃないか……?
        仮にこれを直しても今度は中隊長の閲覧がある。頭が痛い。もう少し自由に回らせてくれ。
        (どかりと座り込み、指摘された部分を不器用にペンを持ち直している) -- クギナ 2018-04-06 (金) 23:25:04
      • いくつか理由はあるが、最大の理由はお前が隊でも数少ない、単独行動での長距離視察を行う隊員であるからだ
        もっとも、私の故郷なら、獣人であるという時点でさらに三枚は審査書類が増える所だがな! しかも、審査そのものに高額が掛かる
        (喋りながら、書類整理を続ける。これもまた、だいたいは報告書の類だ)
        単独行動する一匹狼の獣人には知れん事かもしれんが、我々人間は社会生活を営む事を是とする文化を築いている
        同じ文化圏にいる以上、それはせいぜい甘んじて受け入れる事だな
        自由にはリスクが伴うというのが、組織からみた概ねの見解だ -- アジャンクール 2018-04-06 (金) 23:37:06
      • リスクにしては無駄事に思える。
        他者の報告書など、読んでいる物好きなどいるものか。
        二度と閲覧されぬ資料の更生など、時間を無駄にしているように思うがな。

        嗚呼。ただ。
        アンタの報告書は面白いな。たまに遠征先で閲覧する。
        (不承不承書き直した報告書を爪二つで挟んで渡す) -- クギナ 2018-04-06 (金) 23:41:41
      • それでも、決まりは決まり。法は法だ
        例え死蔵される報告書でも、蔵に収まる以上は体裁が必要ということだ
        ……まぁ、書類仕事に関わる連中に、無駄事を尊ぶ阿呆共が多い事は全くの事実だがな
        (どこか自嘲気味に嘆息を漏らして、眼鏡を掛け直し……眉間に皺を寄せて、報告書を受け取る)
        ふん。お前の言う所の物好きが、早速いるようだな
        世辞か? -- アジャンクール 2018-04-06 (金) 23:51:08
      • 世事の言える顎に見えるか? なら今日を以って爪も牙も抜こう。
        手慰みにな。単独行軍は時に10日以上何も見つからない時もある。哨戒が居ないから四方を探れない。
        故に、たまに持参するのだ。言う通り、物好きにな。
        その中でもアンタの報告書は、面白い、ただそれだけのことだ。絵が浮かぶ。(それだけ言うとかちりと牙を鳴らし)
        (何かを思い出すように太い指を立てて爪先を回し)……あの……葦毛と白金の間の髪の女はなんという名前だったか。ここで切りそろえた。(首の辺りを指す) -- クギナ 2018-04-06 (金) 23:56:37
      • ふん……相変わらず、獣人らしからぬ皮肉の減らん口だな
        (忌々しげに舌打ちをする)
        まぁ、数少ない単独行動を許可された斥候様の御口にあったのなら、ただただ無意味に死蔵されるよりはマシだったとは、言っておこう
        読まれない書物は不憫だ
        その不憫を取り払ってくれたことには、まぁ……癪だが、礼をいう
        癪だがな
        (眉間に皺を寄せながら、書類を端をテーブルで叩いて揃えていたが……妙な事を尋ねられ、さらに眉間の皺を深くする)
        葦毛と白金の間の髪の女……? ああ、アレックス君の事か?
        いや、正しくはアレクシア君だったかな? -- アジャンクール 2018-04-07 (土) 00:07:04
      • それだ。(それだ、ではない。獣人は他人の名前を本当に覚えない。アレクシアというのかと脳内で反芻する)
        あれの報告書も面白い。自由閲覧が許されている物については全てに目を通した。
        一度閲覧してみるといい、暇はいつの間にか潰れる。
        だが……人間は書物にも不憫を感じるか。難儀だな。
        (とにもかくにも自分もその不憫な書物の一つを無事完成させた。素直にここから先通れば、だが)
        最後に一つ聞かせてほしいが、いいか。
        「呪いのスクロール」とやらは、今手元にまだ残っているのか? -- クギナ 2018-04-07 (土) 00:22:18
      • (何が、それだ、だ。と、溜息をつく)
        それは私も分かっている。報告書には……お前のものも含めて、全て後で目は通しているからな
        何にせよ、アレックス君にも褒め言葉は後で直接いってやれ
        多分喜ぶだろう
        (と、言ったところで……例の、先日発見した「呪いのスクロール」について聞かれ……眼鏡を掛け直す)
        ……生憎と、手元にはない
        報告書と一緒に提出したが、今は閲覧制限の棚に放り込まれたそうだ
        ……読みたければ、申請を出して勝手に読むんだな
        お勧めはしないがね -- アジャンクール 2018-04-07 (土) 00:32:05
      • 報告書を褒められたところで嬉しくもあるまい。ましてや一調査員でしかない俺が褒めようが意味はないだろう。
        (その男の返答にしばり顎に手をやり)
        (かつん、かつんと牙を鳴らして考え込み)
        いや。やめておこう。(あっさりと結論を出した)
        アンタの報告書は、アンタの目を通して見た方が、面白そうだ。
        (それだけ言い残すと書類を次の担当に回すべくドアをくぐり帰っていった) -- クギナ 2018-04-07 (土) 00:36:57
      • アレックス君は、それでも喜ぶと思うがね……まぁ、呪いのスクロールについてはそうして……
        (と、いいかけた所で、また思わぬ言葉を掛けられ、眉をしかめる)
        チッ……まぁいい
        お前もさっさと報告書を盥回しにして、せいぜい私の暇潰しを棚に増やすことだな!
        (背に叩き付けるようにそれだけ声をかけて、また、書類整理に戻った) -- アジャンクール 2018-04-07 (土) 00:42:31
  •   -- 2018-04-07 (土) 10:08:31
  •   -- 2018-04-07 (土) 10:08:34
  •   -- 2018-04-07 (土) 10:08:37

Last-modified: 2018-04-07 Sat 10:08:37 JST (2218d)