黄昏歴1000年３月 † 
目が覚めたら、見たこともない小屋に寝かされてた。
旧ナエド付近の海岸に漂着してたところを親切な漁師に拾われたようだ。
また死に損なっちまったらしい。代償は左腕。無いはずの腕が痛むってのはどういう了見なんだが。
航海日誌を付けてた癖で、毎日何か書いてないと落ち着かない。
なので、漁師の親父に紙とペンを買ってきてもらった。
金目の物を身に着けとくとこういうとき役に立つ。
黄昏歴1000年４月 †
体も治ってきたし、冒険者ってもんを始めてみることにした。何しろ生きていくには金がいる。
持ってた金品は漁師の親父とかみさんにみんなくれちまった。
命の礼には安いもんだろう。このまま文無しだと飢え死にしちまうが。
残したのは剣と銃。こればっかりは手放せない。
貰っちまった呪いのせいでどうせ海には出れやしない。
飯の種を稼ぎがてら、しばらくは陸のロマンを楽しむことにする。
呪いを解く手掛かりもひょっこり見つかればいいんだが。
団子屋のササキってのが声をかけてきた。
ダンゴってもんを久しぶりに食べた。東国の港街で食ってからもう何年経ったか覚えていない。
ショーユとノリの風味が旅愁を誘った。あれだけ散々な目にあっても懲りないもんで、また海に出たくなってる。
団子に飽きちゃ団子屋はやってられないそうだが、海に飽きたらやってられないのが海賊だ。
そういう意味じゃアタシは骨の髄まで海賊らしい。
#7 蠍火 （怪盗の正体を暴け！） †
この街には怪盗ってのが出るって聞いた。
盗賊のなかでも予告状を出してからお宝を盗み出してくのを怪盗っていうらしい。
こっそりやるなら気に食わないが、予告状を出すってのが気に入った。
正面から略奪するのが海賊の流儀だ。コイツも自分の欲に従って堂々と勝負してるし、やり方が大胆だ。
羨ましいから邪魔しに行く。ってことで依頼を受けた。
他の連中と協力して捕まえようとしたんだが、結果からいうと上手くいかなかった。
お仲間のご活躍で目くらましが全部剥げたのが窓から出てきたとこを狙ったんだが、
片腕なりにいい感じの射撃が出来たと思ったら魔法の壁でみんな防がれちまった。
どうやら狙いを誘導されてた感じがある。銃ってもんをそれなりによく知ってるらしい。
ちょいと悔しい思いをしたから、また邪魔しに行ってやりたいね。
コボルド討伐依頼 †
コボルドでもロードって尻につくのは、どうやら厄介な奴らしい。
ロードってのは君主って意味だ。権力者が厄介なのはどの種族も変わらないってわけだ。
コボルドどもの反政府レジスタンスに雇われたわけじゃあないが、ひとつ王様退治に赴いてみることにした。
群れがデカいからまとめて消そうってんで範囲攻撃が得意な連中が集まったんだが、
自分がまじめに爆薬買ってったのがアホらしくなるくらい過激な光景にお目にかかれた。
遺物の自動車ってやつに、見えないほど速い石礫、炎の竜巻、呪いの歌、異国の剣術。
なんか気温を上げるだけの奴を見て、安心するやらニトロが溶けるのを心配するやら。
特にあの呪いの歌はいけない。セイレーンを思い出す。
乱杭歯のブルガジャって、バカみたいに強いだけが取り柄の野蛮なアホ海賊に追い掛けられて、未踏海域に踏み込んだ時のことだ。
夕暮れの何にもない海原で、果てしない波音に紛れて遠くから綺麗な歌声が聞こえてきた。
後から聞いた話だが、そこはアグラオペメってセイレーンの縄張りだったらしい。
セイレーンだって気付くまでに、仲間がふらふらと５人は海に飛び込んだ。そのうち４人は助けたが、１人は助からなかった。
それが水夫長だってんだから笑わせる。確かに音楽に目がない奴だった。
アイツがあんまり嘆願するんで乗せてやってた音楽家のおかげでアタシも含めて後の連中は難を逃れたんだから、感謝しなくっちゃいけない。
……話が逸れた。
思いっきり爆薬を投げまくるのはまあ楽しかった。
楽しかったんだが、あまりにも一方的過ぎて、途中から正直ちょいと心が痛んだのも確かだった。
アタシも甘っちょろくなったもんだ。
黄昏歴1000年５月 †
洞窟探険依頼 †
お宝が眠ってると聞いちゃ黙ってられないのが海賊の性ってもんだ。
そういう洞窟に挑んで欲しいって依頼があったんで飛びついた。
見つけるだけ見つけて活躍したヤツから持ってくってルールで競争したんだが……
自慢じゃないが、こういう時に貧乏クジを引いてきたのがアタシってもんだ。
ぶん殴る土方だのぶん殴る魔女だのが9匹10匹と魔物を蹴散らす中、どうにか追いすがって8匹で、あわやと思ったが今回に限ればどうにかなった。
あんまり言い訳はしたかないがやっぱり左が無いってのは不便で仕方ない。
もともとアタシの得物は片手用なんだが、だからって右手だけありゃ十分ってわけじゃない。
反対の腕がなきゃ重心も崩れるし、選択肢だって狭くなる。相手を掴んだり出来ないし、鍔迫り合いだって不利だからね。
……書けば書くほど言い訳か愚痴って感じだ。思考が後ろ向きになりがちになってるのは歳のせいか？嫌だ嫌だ。
ともかく。アタシが選んだ宝箱の中身は……残り物には福があるっていうが、別に面白いもんじゃなかった。
金貨が幾らかと、魔力も籠ってない装飾品の指輪がひとつきり。
全部その日の飲み代に消えちまった。冒険者稼業ってのも、現実けっこう地味なもんだ。その辺は海賊と同じだね。
総力戦・巨大な怪物迎撃依頼 †
この街に来て初めて空を見たとき、どでかい魔法陣が空に蓋をするみたいに覆い被さっていた。
アレから馬鹿でかい古代種のトカゲが出てくるってんで、みんなでぶち殺そうってことになった。
それがこの依頼なんだが……正直蜥蜴人間の陰謀だのなんだのは興味が無い。
この街のためだとか、誰かを守るためだとか、そんな理由は知ったことじゃない。
アタシがトカゲ退治に参加するのは、折角の異国の空にあんなもんをひっ被せてやがった腹いせだ。
腹が立ったから一発ぶち込む。たったそれだけのシンプルな理屈だ。
実物は案の定クソデカくて、ちょっとしたドラゴンかヴァーサ号かってくらいのサイズだった。
ブレスみたいな光の弾を吐きやがって、ぶっとばされてる奴も何人かはいたが、アタシは無事だった。自慢じゃないが大砲には当たったことが無いんだ。直接はね。
的がデカけりゃ狙いやすい。あのデカい口に爆薬を放り込んでやった。
ほかの連中の無茶な攻撃に比べれば豆鉄砲みたいなもんだったが、爽快で口笛吹きたいくらいだった。
結局は大した被害も出ず、殺し切った後にはかなりのオーバーキルだったことが分かった。めでたしめでたしだ。
黄昏歴1000年６月 †
#9 トキメキストリーム （予告の成功阻止と捕獲依頼） †
（執筆中……短期間に依頼を受けすぎだよ！）
| ![[PukiWiki]](image/pukiwiki.png "[PukiWiki]")
