─ 黄金暦223年3月 西ローディア北東難民キャンプ ─
ウラスエダールを震源地とする大規模地震があった。
その余波は震源地西方にあるバルバランドはおろか、南の西ローディアを跨いだスリュヘイムにも甚大な被害を齎した。
私は今、西ローディア北東にある難民キャンプに居た。
ここは此度の震災で、北方、主にバルバランドからの難民への支援を行っている。酒場に救援活動の依頼があったので進んでそれを受けたのだった。
そして数日、その報せは届いた。
『……こんな馬鹿な事があるか』
新聞を広げてまず目についたのがこの【 蛮族襲来 】という見出し。
内容は簡潔に言えば…『北方からバルバランドの民が襲来、そしてこれを鎮圧』というものだった。
何故、今この時期に……最初に抱いた疑問がそれだ。
交易で西ローディアとの関係は良好、こうして難民キャンプが設立されたのがその証拠でもあるのに…
この出来事でこれから支援者や救援物資は減ると予想された。
災害による食料危機、困窮する生活、モラルの低下、原因を色々考えるが……
『……エルフ』
この無為な戦いを引き起こした者の姿を想像した。人を惑わし、その心までを操る者達…
私は奴らが………
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