洋上学園都市より船で2ヶ月ほどもかかる東の果ての小さな村
決して裕福とは言えませんがそこかしこで笑顔が見受けられる、幸せそうな村でした それはきっと村の入り口を守る道祖神様のご加護があったのでしょう 旅立つものの無事を願い、訪れる旅人を受け入れ、村を守る、そんなご利益があったに違いありません ある日近くの山に都の方面から逃れてきた山賊が住み着きました ほとぼりが冷めるまで潜むつもりだったようで村を襲う事はなく 村人たちが山賊の事を知らずに過ごせていたのも幸せな事であったのかもしれません ですがその時間も長くは続きませんでした 山賊の一人が若き山の神の宝に手をつけてしまったのです 怒った山の神は火を噴き出し、地面は割れ山賊達は全て地の底へと消えて行きました 山の神の怒りは村にまでおよび、裂けた大地は全てを飲み込んでいったのです 村を守っていた道祖神は神格が山の神に遠く及ばず力も太刀打ちできません せめて…と、人々を避難させる事が精いっぱいでした その甲斐あって村の人に犠牲者が出る事は無かったのです 山の神の怒りが収まった頃、そこにもう村はありませんでした 大地に大きな穴が開いて漆黒の闇を湛えているではありませんか 命の助かった元村人たちもこれでは村を再建する事などかないません 一人また一人と土地を去り、別の土地へと移って行きました 後には村を守れなかった道祖神だけが残されたのです それから何十から何百年もの月日が流れ、村の跡地がただの穴から湖になった頃 山の神は自分の若気の至りによる軽率な怒りの爪痕を眺め反省していました するとそこでぽつんと残された道祖神を見つけたのです 既に信仰するものはおらず、朽ち果てるのを待つだけの石くれに等しい状態でしたが せめてものお詫びに、と山の神は慈悲と人の姿を与えました こうして道祖神は一人の少女になったのです 少女には何が起きたのか分かりません 村の跡地にたたずんでいましたがそこに居ると悲しくなってくるばかり そこへ湖の魚を釣りに来たおじいさんがやってきました おじいさんは裸身の少女の身を案じましたが怪我は無い様子 そこへ置いて行く事も出来ずに自分の家へ連れて行く事にしました おじいさんの家にはもう一人、おばあさんが住んでいました 子供を授かることのなかった二人は少女をたいそう可愛がり、カオルと名付け本当の娘のように扱ったのです またたく間に二年の歳月が流れ、その間に老夫婦はカオルが道祖神であった事を聞きました 老夫婦はこのまま一緒に暮らしたい気持ちもあったのですが、それではカオルのためにならないと判断したのでしょう 二人はある場所へ行く事を勧めます…それが不思議な能力を持つものが居ると噂される洋上学園都市 そこに行けばもしかしたら、人の身を授かった理由も分かるかもしれません 人間修業も兼ねて、自分の将来の事を学びに老夫婦に別れを告げてカオルは旅立って行きました それからはみなさんご存知の通り 洋上学園都市で時には楽しく、時には悲しく、いろいろな経験を積みました 自分が人の身を授かった理由も、きっと新しい地に生きるためであると見つける事が出来ました 学園を卒業したら老夫婦に挨拶をして、それから新しい永住の土地を探そうと考えていました 残念ながら志半ばで命を落としてしまい、その願いがかなう事はありませんでした それでも、石のまま朽ち果てるよりは沢山の友人達が居た彼女はきっと幸せだったに違いありません どっとはらい もふもふ毛玉のバーニィがその辺りをうろついています †最新の6件を表示しています。 コメントページを参照 バーニィ †// † |