おうごんの 光り輝く昼さがり、
さらなるお話 夢多く。
なつの日の楽しき追憶――

きみょうみしんしん、
ひっそり身をよせあいて、
ノンセンスのお話、夢中で聞いて。

あきもせぬ三人の子は今はなく
りっぱに育って 家になく。
すっかり今は 大人の少女。

きみと過ごした 楽しき日々。
やさしい子らの 無垢なる笑顔。
ろうろう響く 少女の声。

れいのない ふしぎの国に どうぞおやすみ、
さまよい 夢見れば 日々は進み、
ようやく ふたたび めぐりあう。

うかんでただよう川面は広し――
なつかしき 黄金の陽をあび 心も軽し――
らくようのとき 人生は夢 まぼろし。



おさなきひの アリス・キャロレ さようなら



ロンドン Edit

お名前:
  • ――大英帝国、ロンドン -- 2014-03-03 (月) 01:55:31
    • キャロレ邸、木陰 -- 2014-03-03 (月) 01:55:43
      • 夢を見ていた。少女は、夢を見ていた。長い長い夢を。

        それは、迷子の少女の物語。数の魔法使いの物語。

        不思議な世界の話だった。アリスの世界だと物語の中にしか存在しないような不思議な魔法、生物、魔物、神――それらが実在している世界だった。

        召喚術という魔法で別の世界から様々なものを呼び出す人々。その人々と仲良く暮らしている不思議な存在たち。

        アリスとそっくりな少女がその世界を旅していた。とてもとても不思議な不思議な国を旅していた。

        ドラゴンの少女に出会ったり、魔法の力は持たないけれど、人を動かし導くことの出来る“声”をもつ人に出会ったり……

        とても面白く、楽しい旅を少女は行っていた。

        そして、その夢の中に、父とそっくりな容姿の数の魔法使いが現れた。

        数の魔法使いは不思議な数の魔法を使い、街を混乱に陥れていった。彼の世界は召喚師と召喚獣によって滅ぼされた。その復讐なのだという。

        さらに、少女は数の魔法によって造られた身体に、数の魔法使いの死んだ娘の魂を移した存在なのだった。

        真実に愕然とし、世界を滅ぼすために最後の魔法を行使する数の魔法使い。

        しかし、少女たちは立ち上がり、数の魔法使いを止めるために決戦の地へと向かい――


        そして最後には、数の魔法使いは優しい心を取り戻した。

        竜と人の意志の力によって。少女の父を思う心によって。

        黄金の午後が訪れた。

        そして夜は明け、黄金の夜明けが訪れた。

        数の魔法使いと少女は抱き合って―― -- 2014-03-03 (月) 02:33:06
      • 「アリスー! そろそろ行くよーっ!」

        その声で、少女は目を覚ました。
        キャロレ邸の庭にある大きな樹。その木陰でアリスは目を覚ました。
        長い夢を見ていた。不思議な夢を見ていた。父がかつて、多くの物語を語ってくれたこの場所で。

        「はーい!」

        姉のアリスを呼ぶ声に少女は元気に答えた。黒髪の少女、アリスが。
        「ううーん。変な夢だったの。でも、この本と同じ夢ね?」
        アリスが寝ているときに膝の上には一つの本があった。
        寝てしまう直前に読んでいた本がそれだった。それが夢に出てきたのだとアリスは思った。
        作者不明の奇妙な本。不思議なおとぎ話。少女ロステと数の魔法使いの物語。

        『ロステと数の魔法使い』

        不思議なことに、この物語に登場するロステと数の魔法使いは、アリスとその父にとてもよく似ていた。
        中々に悲しいお話だが、アリスはとても気に入っていた。
        何故か、読んでいると涙が出てしまうほどに。何かを、思い出してしまいそうになる。
        でも、それが何かわからない。まるで、この物語を自分が体験したかのように思えてしまうのだ。
        黄金の夜明けの中で、父と抱き合い泣いた記憶―― -- 2014-03-03 (月) 03:12:17

      • 本を抱えると、アリスはすくりと立ち上がり、家の玄関で待つ姉、妹、母のもとへと駆けていく。
        今日は、家族で父親の墓参りに行く日なのだ。
        この屋敷に住んでいた数学者、ラトウィッジ・キャロレの命日であるために。

        アリスたちは父の墓へとやってきた。墓前には花が添えられている。
        「パパ、来たよ。天国で元気にしてる?」
        墓の前でアリスは天を仰ぎ、言う。
        キャロレは一年前に天へと召された。今は三人の娘とその妻が屋敷で暮らしている。

        とても優しい父だった。
        三人の娘を愛し、物語を聞かせて。黄金の午後の日々を送った。
        その父は今、天国にて、アリスたちを眺めている。

        遥か遠い世界。界境街と呼ばれた街で起こった《夜明けの戦争》の後――アリスとキャロレは、新生したこのロンドンへと飛んだ。
        そこで、キャロレはわずかな期間ではあるが、幸せな時を過ごした。
        アリスが今の年齢に達するまで、彼は幸せを享受したのだ。
        あの恐ろしい召喚師たちが、この世界に来ることはなかった。
        キャロレが永遠に幸せになることは許されない。
        だが。
        彼の存在が消えることはなかった。彼が存在した事実が消えることはなかった。
        彼は確かに、この世界に在って。娘たちと、妻と、幸せに暮らしたのだ。
        あの理不尽だった過去を越えて、未来を作り上げたのだ。
        ブラストとデルファーネスの力によって。取り戻した絆と愛の力によって。

        キャロレは、幸せになれたのだ。遥かな輪廻の果てで、アリスと再び廻りあったのだった。

        「あれ? 何で? 涙、が……」
        自然と、アリスの頬を涙が濡らしていた。記憶は消えても、心は覚えている。
        ブラスト達とともに父と戦い、その心を取り戻したことを。
        父と廻りあい、やっと出会えたことを。
        もう一度、その幸せを享受したことを。
        覚えているのだった――

        ロンドンの空を風が吹き抜ける。

        二つの世界を巡るアリスとキャロレの物語は終わった。

        そして、これからもアリスの物語は続いていくのだ。

        墓の横におかれた、小さな写真立て。そこに写るキャロレの顔は。

        この上なく、幸せそうだった――

        http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp027932.jpg -- 2014-03-03 (月) 03:47:19

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+  少女と数の魔法使いの物語

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Last-modified: 2014-03-03 Mon 04:26:24 JST (2510d)