アリューシャ フィニス
- (少女二人の契約通り1年が経過して、魔剣同士の戦いは終わる)
(陽の当たる窓辺の安楽椅子に寛いで、紅い少女は不満げに言葉を漏らす) 終わってみれば、あんなものが至上とは。努めて好意的に捉えれば、 「お前らは所詮その程度なのだから楽に生きよ」と、親父殿は仰せなのかな? -- フィニス
- もしかしたら…創作者の例に漏れず、「作りたいから作っただけで出来なんか興味ない」…なのかも
(無事闘いを終えた安堵感からか、クスリと笑う) -- アリューシャ
- さて。何にせよ、今となっては確かめようがあるまい。
この戦いが終わったからといって、我らが消えて無くなるわけでなし。 所詮は幕間が来たに過ぎぬな。Finem lauda……『終わりを称えよ』、だ (椅子の上、うんと伸びをして)これからどうするか、考えねばなるまい -- フィニス
- そうだね…フィニスは、なにか見つけられた?
(陽の当たらない部屋の奥、佇む少女の表情はよく見えない) どこか、行っちゃうの…かな? (1年前。出会った頃のように相変わらず弱々しい声) …せっかく、友達になれたと思ったのに… (いや、今の声はそのせいではないだろう。共に過ごしてきたなら解るはずだ) -- アリューシャ
- 我々もつくづくいろいろだ、ということくらいか。さておき
(暗がりで、主は何を思っているのか。照らすこともできようが、敢えてせず) 旅か、悪くない。なにより私は、つまらぬのが嫌いだ。 支度せよ、主よ (その言葉は、さも当然のように) -- フィニス
- そっか…そうだよね
(旅に出る。そう言うだろうと予想はしていた。何より一所でじっとしているような性分でないのはこの1年で嫌と言うほど思い知らされている) (彼女がそう言うなら、自分は笑顔で送り出すのが務めであろう。それが、自分のマスターとしての最後の務め…) …って、え?支度?わたし…も? (続けられた言葉に目を丸くするのだった) -- アリューシャ
- 何を驚いている?主なのだから当然だろうに。
嫌というなら一人で行くが、路銀は毟るぞ。 さあどうする、我が主殿 (窓から差し込む日射しを背後に、紅の少女が尾を揺らす) -- フィニス
- ふえええぇぇ…ちょ、ちょっと待ってー!?今支度するから!
爺やー!旅行鞄と着替えとタオルと枕と爺やとおやつとお鍋と… あ、あ、あ、あと何がいるかな…!? (あたふたと部屋の中を右往左往し始める。しかしその表情はとても明るい) -- アリューシャ
- 慌てずともよい。時間はいくらでもあるのだから
(くすくすと笑いながら、慌てる様子のマスターを見やる) (彼女たちの物語は、始まったばかりだ) -- フィニス
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- 発情薬が撒かれた --
- (有害物質が発生しない程度の高温で焼却) -- フィニス
- (穏やかな昼下がり。剣でいたり人でいたりとまちまちなこの少女だが、今は人間体である)
食事はまだか、主よ(剣のくせに飯をねだり、エンゲル係数を引き上げる) (我が物顔でベッドの上で寝転がり、うつぶせに頬杖をついてふてぶてしく、真上に伸びた尾が揺れる) -- フィニス
- あ、うん…いま用意するね…。
今日は、朝市で良い卵が買えたから…オムレツでいい、かな? (いそいそと家事に適した服装へと整えながら、ベッドの主に話しかける。) (まだお互いの関係に慣れていないのか、たどたどしく遠慮がちだ) -- アリューシャ
- 半熟でな。チーズも入れよ。
(我が物顔で注文をつける。わりとお構いなしだ、図々しいといってもいい) 美味い飯でも食わねばやっていられん。朽ち果てそうな爺のほうがましだったか (ぶつくさと寝返りを打つ。今のペースでは、至上の剣の座は難しい手応えだ) -- フィニス
- は、はい…半熟チーズ入り、ね?
(「あれ…なんだか立場…が…?」) (当然の疑問も催促に追われ思考の隅へと片付けられてしまった。それでも) (「なんだか、最近…ちょっと、楽しい」) (爺やが柱の影で嬉し涙を流すくらいには、少女に笑顔が戻ってきていた) -- アリューシャ
- どうした、手を動かさんか、手を
(彼女の変化を知ってか知らずか、枕を弄びながらもうひと催促) まったく……主よ。闘争心が足りんぞ闘争心が。 剣にこれだけ言われておるのだ、口答えのひとつもしたらどうだ(どうやら不満の焦点はそこらしい) -- フィニス
- そんなに、お腹…すいてるの、かな…?先に、パンだけでも…食べて、待ってて、ね
(サイドテーブルにバゲットやクロワッサンの入った籠を置くとキッチンへと。) (慣れた手つきで卵を割り、ボウルの中で軽くかき混ぜるとフライパンへ。香ばしい油の匂いが辺りに漂い始める。) 闘争心、かぁ…あんまり、得意じゃない…かな。 (皿を二つ用意し、綺麗に焼けたオムレツが載せられる。) 口答えなんて…私が、力不足なのは…事実、だし (食卓の準備をしながら思う。初めての戦いを。怪物というよりは害獣というべき最初の相手。) (それでも、油断すれば死ぬこともあるという。冒険者ギルドにもごく少数だがそんな事例があったらしい。) (そんな仕事を無事終えられたのは、やはり彼女の力によるところが大きかった。) -- アリューシャ
- (もっそりと起き上がって、バゲットを拾いあげると、尾の先端で削ぎ、囓る)
私の炎は心の炎。主がそんなことでは火力も上がらん。 (もう一切れ、戯れに焦げ目をつける。空腹を誘う匂いがもうひとつ) 先の子鬼も、炎だけでは殺れなくて、結局は直接斬ったほうが早かったではないか。 炎の剣として私は恥ずかしい。……一度死ぬ目に遭わなければわからんかな (あまり己を当てにされては、緊張感が薄れる。戦いの危機感が失せる) (千住の谷に突き落とすように、冒険中になまくらのふりでもしてやろうか) (そう思案しながら、焼いたバゲットを囓る。小気味よい音がして、気持ちが少し慰められた) -- フィニス
- (テーブルクロスの上に皿を並べ終える。オムレツにサラダ、そしてスープ。2セットづつ並べられたそれは、片方がもう一方の倍近い量あった。)
はい。準備、出来たよ…? (最後にパン籠を食卓へ移すと、量の少ない皿が並ぶ方の席へつく。) こ、怖い事、言わないで…私も、もっと努力…するから…。 (彼女の力を引き出すのは自分次第、それはよく解っている。どんなに切れ味の良い包丁も、使い手が料理下手ならば宝の持ち腐れだ。) (しかも彼女は伝説に語られるレベルの魔剣である。持ち手の精神を焔へと変え、全てを焼き切る紅蓮の刃だ。) (それを生かすも殺すも自分次第。ならば…) …いいわ、フィニス。私は…一度、死んでいる…のよ (その目は強く、相手を見据えていた。両親を、両腕を失った彼女の心が、弱い訳はないのだ) -- アリューシャ
- (迷い無く量の多い方の席へ。なかなかの健啖ぶりで食が進む)
(食べながら、雰囲気の変化に上げた視線が、アリューシャのそれと真正面から交錯し) ほう? (受け止めて、超然と笑う。なるほど、恐らくは彼女のあやしげな両腕に関わること) (しかしそれも僅かな間。すぐに食事に戻る、挑発するように) なれば死の恐怖は知っていよう。 いくら私を手にしていようと、油断すれば今度は両腕では済まぬだろうよ。 (パンを噛み千切って、紅く光る尾を向ける)自覚しろ。memento moriだ -- フィニス
- (黙々と食事を口へと運ぶ。それもこれも、自分が生きるためだ。自分は生きているのだ。)
(全てを失ったあの日以降、死のうと思ったことが無いわけではない。それでも、自分は生きてきた。) (ならば、この先生き続ける為にも、心が折れてはならない。たとえこの身はか細くとも、心は強く太く持てるはずだ。) そう…ね。いずれ、貴女の兄弟姉妹とも…出会うので、しょう? (全てを語らない彼女だったが、それだけは聞き及んでいた。魔剣たちのバトルロワイヤル。) (ならば何時か…死を賭する時は来るのだろう。それまでに、強くあらねば。そう誓う) いいわ…残りの、肢体を賭けて、でも。きっと…勝って、みせる。 死の…伴わない、生なんて…ない、から -- アリューシャ
- 出会うだろうな。
此度の争いは魔物を狩ることで競うとなっているが…… 他の剣を潰してしまった方が早いと考える輩もいるだろう。 私の兄弟剣は何万本とある。人間とて、それだけ集まれば気違いなどいくらもいよう? (肯定しながら、続く言葉を聞く。そうして笑う、くつくつと、満足げに) その意気よ。想いがある限り、私はそれに応えよう。 私はそういう剣だから――(すっと尾を戻して)ところでこのオムレツ、少し甘いな -- フィニス
- 討伐数勝負…なんて、随分…回りくどいこと、するのね。
(クロワッサンを千切り、口へと運ぶ。) んっ…そういう、フィニスは…どっち派、なのか、な? (オムレツにナイフを入れると、とろりといい具合いに半熟な中味が零れ出す。) そう…そして、私が、主…だから。勤めは、果たす…よ。 …あれ?そんなに…甘かった…? -- アリューシャ
- 何故そうなのかは我々も知らん。ただ創られているのだ、「汝ら斯く争うべし」とな。
ま、我々が直接壊り合って頂点を決めるとすれば、この惑星がいくらあっても足りんだろうな (文句をいいつつも、しっかりと食は進め) 私か?そうだな……主がそのように創ったのなら、それはもう人間にとっての本能と同じこと。 まして狂ってもいないのだ、逆らうまいよ。そうせぬのは、人が飯を食わぬようなものだ。 (そういって、また一口、オムレツを放り込み) ……もっとも、襲ってくれば抗うが(そうしてまた、やはり甘いぞと) -- フィニス
- なんだか、剣らしい…といえば、らしい…の、かな?
うーん…さすが、伝説の剣、だね。 (ナイフとフォークを一度置き、クスリと笑う) 本能、ね。 (殺すことが本能の剣と、生きることが本能の人。だからこその組み合わせなのだろうか。) (だとしたら、この知性ある剣たちを生み出した者は…そのどちらでもない、第3の存在なのだろうか。) そう、ね。降りかかる火の粉、くらいは…。うーん?そんなに、甘いかな? -- アリューシャ
- 甘い。塩と砂糖を間違えた、というほどではないな。
卵が違うのもあろうが……チーズも違うな。塩気が薄いのか? (どうなんだと問えば、買ってきたのは爺やであるという) (そうして彼に水を向ければ、食材の話が続いてゆく) (役者は奇妙ではあれど、闘争の匂いをいっとき忘れる、穏やかな日常がそこにあった) -- フィニス
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- (開け放たれた窓から吹き込む風は初夏の香りに満ちていた。
冒険者たちの拠点として有名なこの街に移り住んでもう6年。ここでの暮らしにも、この鋼の義手にも慣れてきた。 両親を失い、思い出の土地屋敷を引き払って来たのだが、つい先日旧邸に買い手がついたそうで屋敷に残されていたという荷物がいくつか送られてきた。 父が買い集めたであろう骨董がいくつか収められた行李は、現在隣室で爺やが検分の真っ最中だ) -- アリューシャ
- (しかし、既に作業を始めてから随分と経つ。傍らの時計に目をやると、昼はとうに過ぎている。
爺やは昔から骨董に目がないようで、よく街で変なものを見つけてきては私に見せてくれた。今思えば、私がさみしくないよう気を使っていてくれたのだろうか。 ちょっと様子を見に行こうと、腰掛けていたベットから立ち上がる。疲れているだろうから、昼食当番は私が変わると言っておこう。外に行くのもいいだろうか、そんなことを考えながら作業場となっている空部屋へと向かう) -- アリューシャ
- (アリューシャが部屋に入ると、作業を続けて乾いた喉でも潤しに行ったものであろうか、老爺は部屋に居なかった)
(代わりに目に入るのは、燃えるような紅い剣) (外骨格めいた装飾を持つそれが一振り、行李の底に横たえられて) (骨董品の中でも一際浮いているのも成る程、古色が一切感じられない) (剣身は昨日打たれたかのように瑞々しく、揺らめく燭火にひかめいて、少女の瞳を捉え込む) (艶めく無機物は、されど静かに鎮座して―――) (少女の目に、違和感。動かぬはず、生命ならぬ物質であるはずのその剣が、確かにひとつ脈打った) (そんなはずは。蝋燭が風で揺れただけ、目の錯覚だ) (あるいはそんな思考を浮かべるであろう少女を嘲笑うかのように、剣の外殻が激しく、甲虫めいて蠢いた) (刹那。太陽の如く眩い光が、部屋を白く染め上げる) (視覚が消え、それ故にまざまざと、感じるのは強い熱) (次にアリューシャの目に入るのは、いままさにみたばかり、そんな既視感を感じる紅い少女) (欠伸混じりに身体を伸ばして、それはさも寝起きの人間のようで、しかし人にあるまじき特徴、蠍めいた尾を揺らして) (ふ、と、少女の燃える瞳が、アリューシャのそれと交錯する。一瞬の間隙、時間の空白) -- フィニス
- (それを目にして最初に感じたのは、恐怖でもなく、違和感でもなく。まるでこの出会いを毎晩夢に見ていたかのような、不思議な安堵感。
吸い込まれるように手を伸ばす。何も感じぬ筈のその偽りの指先に、チリチリと熱が伝わる錯覚。ハッとしてその手を胸元へと引き戻す) あなたは…誰…? (か細い声が小さな口から漏れるように聞こえる。しかし、その目はしっかりと紅蓮の少女を見つめていた) -- アリューシャ
- (問われれば、口角を上げて笑う。僅かに頷いたのは、錯覚か否か)
剣。 (端的な答え。間を与えずに、続ける) 名の語られぬ彼の鍛師の手になる、世に数多ある意志持つ剣が一振り。 (好事家が周囲に多いのであればあるいは、インテリジェンスソードとその鍛冶師のことを耳にしたことがあるかもしれない) 『おわりの剣』。銘をフィニス。 (名乗れば、尾の先端で、アリューシャを指す。眉間に、まっすぐと) 名は。 -- フィニス
- (脳裏に浮かぶのはかつて父から聞いた御伽噺か、部屋に篭るようになってから読み漁った本に書かれた物語か。知性を持つという伝承の剣。
既に自分はこの魔性の剣に魅入られているのだろうか。鼓動はどんどん高鳴ってゆく。終わりの意を持つ彼女の名前を反芻するように心の中で呟く) わたし…私は、アリューシャ。トリアドール家当主、アリューシャ・トリアドール。 -- アリューシャ
- アリューシャよ。つまらんとは思わんか?
(眉間を離れて、ゆらゆらと猫の如くの尾の動きは、いかにもらしく無聊を伝える) 久方ぶりに目覚めてみれば、埃臭い行李の中に押し込められて、 漸く明るい所に来たとみれば、見下ろしてくるのは黴臭い爺だ。 (剣の面影残す尾の先端を、右に左に揺らしながら、狭い部屋をゆるゆると歩きつ、大仰に肩を竦める) お前もそうだろう、アリューシャよ。 (くるり、唐突に向き直り、つくりものの少女は、少女のつくりものの手をとる) つまらんとは思わんか? (それを互いの鼻先まで持ち上げながら、意味深に瞳を覗き込む) -- フィニス
- (つまらないもの。巷で噂だと言われて買った小説。代わり映えのしない流行りの歌唱曲。爺やの聞かせる昔話。
いや、そんなものなど目ではない。自分の周りに山のように積み上がる何もかもがつまらない。そして、何より自分自身が。) そうだ…ね。 (触れ合う手に感じる熱。両親を亡くした時に凍りついたと思っていた心に火が灯る。彼女の言葉には不思議な力を感じる。 何か出来そうな、何でも出来そうな。そんな想いが湧き上がってくる。この歪な腕でも、何かを掴めるのだろうか。 いや、もう掴んでいるのだ。世界を変えられるかも知れない鍵を。) どうしたら…いいかな? -- アリューシャ
- 私を振るえ。
(瞳を覗いて、囁くように。しかし熱を込めて語る) 私を振るって魔物を狩れ。 (熱を持って少女の心に火を灯す) 此処はそういう街なのだろう? だれもかれもが剣を取り魔物を殺す、冒険者たちの集う街。 私は知っている。刻まれているから知っている。 何も躊躇うことはない。私は力ある剣だ。 何も怖がることはない。お前は燐寸を擦るように。 私を使って敵を燃やせ。魔物を殺せ。季節がひとつ巡る間、皆がするのと同じように、冒険者たちと同じように。 お前がそうするならば、彼らが得るものをお前も得るだろう (それは、例えば金であり、名誉であり、欺瞞であり、恐怖であり、成長である) 是とするならば柄を取れ。契約はそれで成る。 (アリューシャの心に点った火をやがて燃え盛らせる、彼女の言葉は鞴であった) (少女の胸の中心から、ずるりと生えた紅い柄、それをアリューシャは取るや否や) -- フィニス
- (予想はしていた、彼女は剣なのだ。空を焦がすような紅の刀身を持つ剣。その生きる道といえば戦い、殺戮の道。
もちろん相手は人に仇成す魔物、人の道を外れた外道たち。躊躇いが無いとまではいかないが、無辜の命を奪うわけではない。 だが、ただの少女である自分にそんな事ができるのだろうか。争いなどと無縁だった自分に。 しかし不思議と不安はない。彼女の瞳が語りかけてくる。全ては自分に任せよと、ただ共にあればいいと。) …契約。 (彼女の胸に現れた柄に手を伸ばす。鈍い銀色した腕に赤い光が照り返し、血を通わすかのごとく揺らめく。) うん…共に行きましょう (その柄を、力強く、掴んだ) -- アリューシャ
- (アリューシャが柄を取れば、触れた部分から激しい光が漏れる) 『成った』
(声が早いか、目を眩ます劫火が燃えて、紅の少女の姿は還元される) (収まれば、少女の姿は幻のように消え去って、静寂とともに残るは一振りの紅い剣) (失ったはず、感じることのないはずの掌に、ただじんわりと熱が残る) (夢現の静けさを破るように、アリューシャの頭の中に声が響いた) (「ではよろしく、主よ」と、不敵に笑う彼女の声が) (義手の少女と炎の剣の物語は、斯くしてここから始まった) -- フィニス
- セックス! --
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