名簿/502215
- キャメロット。中央に位置する旗艦・＜円卓＞とその周囲に連結された13の随伴艦からなる超大型の要塞艦群である。
その名が指す通り、キャメロットは旗騎アーサーと、従騎士12騎を運用するためのものである。
がしかし、現状、従騎士は1騎制作されたきり、残りの11騎はペンディングの状態。
最終的に王が死を迎え瓦解する騎士団をなぞらえるのは不吉である、という世論が高まったためである。
従って2号機に関しても便宜上ガーウェインと呼ばれているものの、最終的に名前が変更される事になっているのだ。 -- アレクサンダー
- そのキャメロットが本陣近くの陸港に停泊している。
本国へ帰還するにせよ、続投するにせよ、一先ずの区切りを迎えた旗騎・アーサーをオーバーホールするためである。
そのついでに、建造されたばかりのワイバーン型バイアフや2号機のテストをする目的もあった。 -- アレクサンダー
- そんなわけで、出来る範囲の手伝いを終えたアレクサンダーは、キャメロットに用意された自室にて休憩を取っていたのだった。
「3年、早いものだ……」
その間、質素な宿に逗留していたせいもあって、キャメロットの王族用の部屋はなんだか落ち着かない。
外で素振りでもしようか、そう思った時だ。ノック三回、その後に女性の声が続く。
「アレクサンダー。今、大丈夫ですか？」
このタイミングで自分を訪ねてくる女性など居ただろうか。疑問しつつもドアを開けて出迎える。そこに居たのは──
否、ドアが開くや否や飛びかかってきた。よろめきつつも、どうにか受け止めて、彼は戸惑いの声を上げるが、飛びついてきた人物はお構いなしだ。
「アレクサンダー、アレク。久し振り！」
痛いくらいに抱きついてくる腕。懐かしい匂い。
「……あ、姉上……？」 -- アレクサンダー
- 「しばらく見ない内に大きくなってー！お姉ちゃん感激！」
とりあえず落ち着かせて、椅子や紅茶を勧めたりなどして。先程のドアの向こうでの態度とはまるで違う。
「いえその、3年前お会いした時と変わっておりませんが……」
ふるふると首を振る姉。ともすれば泣いてしまいそうなほどの感激ぶりである。
「3年、3年だよ？バイアフ乗って、騎士として戦って。大きくなったよ、アレクは」
ほう、とため息までついて。そして時折思い出したように紅茶を口に運ぶ。
「でも気になるなー、姉上とか。昔みたいにおねーちゃんって呼んでいいんだよ？」
ほれほれ、呼んでみなさい。と言わんばかりである。
「い、いえ、その……えーと」
沈黙。それに対してじっと、期待の眼差しを向ける姉。いたたまれず、ぼそりと
「リズお姉ちゃん」
照れくささにそっぽを向いてしまうアレクサンダー。ちなみに姉の名前はエリザベスである。 -- アレクサンダー
- ＜冒険を始めたい人も冒険を続けてる人も出会いは冒険者ギルド！冒険者たちよ、集え！＞
（……というチラシが届いている） -- チラシ
- 出会い、なぁ……（あまり興味を惹かれない様子でチラシを畳んで置いておいた） -- アレクサンダー
- 「三位……上出来だな」
今日も整備を終え、白亜の騎体を見上げアレクサンダーが呟く。今月で遠征の一年目が終了である。
騎士としては無論、トップを狙いたいものである。しかしながら、外交上の、王子としての建前は他国の顔も立てねばならない。
故に三位という順位は、『騎士としての満足感』と『外交上のとりあえずの安心』を得るのに妥当な順位と言えるだろう。
とは言え──まだ一年目。各国共本気を出してくるのはこれから……かもしれない。 -- アレクサンダー
- 尤も、そこまで小難しいことを考えているのは自分だけ、のような気もしてくる。
先程から、金属同士をぶつけ合わせる轟音が鳴り響いている。恐らくは──
「決闘、か」
またもボソリ。騎士の集まりである以上、避け得ぬ事ではある。むしろ約一年随分と耐え忍んだものだ、とさえ思う。 -- アレクサンダー
- イデオロギーのぶつけあいか、はたまた矜持の鍔迫り合いか。もしくはもっとしょうもない理由か。
古来より騎士はあらゆる理由をつけて刃を交えてきた。決闘せずにはいられない、そういう生き物である。
そんなことを思うアレクサンダーもまた騎士であるが、自分の事は思い切り棚上げであった。 -- アレクサンダー
- 思索に耽る内、決闘が終わったようだ。静けさの後、次第に街の雑踏が息を吹き返していく。
「決闘での勝利もまた、騎士の矜持を慰めるものとなりうる、か……」
中々乗り気にはなれないな、と小さく呟いて自室に戻っていった。 -- アレクサンダー
- 今日もまた清掃、整備。もはやアレクサンダーがそれに参加するのは日常となっており、誰も口出しするものは居ない。
「ところで──アーサーは水中に入ることが出来るのだろうか」
血糊を洗い流し終えて、真白な騎体を見上げながらアレクサンダーがボソリとつぶやいた。それに整備員が答える。
「一応、全天候型っスけど腰までが限界じゃないっスかね。胸より上まで入るとアウトっス」
「確かに、キャビンは密閉されてるわけじゃないからな……海中に潜るのは流石に無理か……」
胸、騎士の収まるキャビンまでは流石に防水も完璧ではない。雨が降っても騎士が濡れない、という程度では土台無理な話ではあった。
「ま、入られたとしても運動性はガタ落ちでしょうねー…装甲がそういう形してないっスから。来月は雨中、再来月は海中でしたっけ？水っぽいっスねー…」
季節柄しょうがないっスかね、などと言いながら整備員が笑う。ここ数ヶ月で随分と打ち解けてきたものである。
「雨中はともかく、海中は浜辺で眺めていることになりそうだ……」 -- アレクサンダー
- 「なんて話をしてたら中止になったっぽいっスね？」
整備班としては一安心。腰まで浸かってOKだとしても、その前後の処理がなくなるわけではないのだ。
「渇水では仕方ないが……残念だな」
アレクサンダーは苦笑を浮かべつつ、呟いた。それを聞いた整備員が意外そうな顔で、
「残念って、王子結構楽しみにしてた系っス？」
などと問う。王子はそれにまあな、と笑って、
「腰辺りまで浸かった場合どれだけ負荷がかかるか、とかそういった所はテストしておきたい項目ではあったな」
と答えた。経験は多ければ多いほど良い。建前でも、本音でも。二人はそう思いながら初夏の青空を見上げた。 -- アレクサンダー
- して来月は……（依頼書を見て、苦笑い）帝国3に教会1、か……田舎騎士としては肩身が狭いな -- アレクサンダー
- お陰で良い物が見られたが──更に肩身が狭くなってしまったような気がする…… -- アレクサンダー
- 「うーわ……これは骨が折れるなぁ……」
バケツにモップを担いだ整備員が目の前の巨人、アーサーを見上げぼやいた。
何故ならば、白を基調とした装甲は返り血で酷く汚れ、乾き始めた部分が赤茶けており、かの整備員はそれを磨く役目を仰せつかったためである。
「──確かに、これは骨が折れる」
背後からの声に飛び上がらんばかりに整備員は驚き振り向いた。そして振り向いて二度驚いた。
「お、おおお王子！？いい、今のは聞かなかったことに！」
愚痴を、それも雲の上とも言えるような相手に聞かれてしまった。慌てないわけがない。
「いや、構わない。楽にしてくれ」
そう言われても、下っ端も下っ端な整備員は到底楽に出来そうもなかった。 -- アレクサンダー
- 「といいますか王子、何故ここに？お休みになられたほうが良いのでは……」
二ヶ月目にして6の戦果。長丁場で疲れているであろう事は想像に難くない。それは血に染まった騎体も物語っている。
よく見れば王子──アレクサンダーは、ラフな格好にバケツとモップを下げている。そこから推測するのは簡単だ。
「まさか……ああいえそんな。王子にそんなことは」
悟り、恐縮する整備員。対するアレクサンダーは微笑んで、言った。
「私が汚したものだからな。私が磨きをかけるのは道理だろう？それに、君たちばかりに苦労は掛けられない」
その言葉に、整備員はますます恐縮する。恐れ多いにもほどがあった。
「で、ですが役目といいますか、役割というものが……僭越ながら、王子は今、お休みになられるのが」
アレクサンダーは片手を上げて制し、静かに横に首を振った。
曰く、休養が役目ならば、気分転換もまた休養の内であろう、と。上司に咎められたなら、私が直接話をする、とまで言った。 -- アレクサンダー
- という訳で整備員も渋々、足回りだけという条件を付けて手伝って貰うこととした。
白は汚れが目立つ。それ故に象徴としてはうってつけの色であるが、こうした整備の現場では大変やりづらい。
ましてバイアフのような隙間の多い構造では、完全に清掃するには分解もやむを得ない。
──はずだったのだが。
「なんか、面白いくらい汚れ落ちますねこれ」
そう、ざっと水で流しただけなのに血も泥も不思議なほどに落ちてしまった。拍子抜けである。
「まあ、楽なのは助かるが。素材か塗料かは分からないが、これが色々なものに使えれば良さそうだな」
ですねぇ、などと。作業が終わる頃には多少は打ち解けられたらしく、談笑を交えるくらいにはなっていた。 -- アレクサンダー
- 「さて、と。これで整備に移れますね……ああ王子、もののついでではありますが、何かお気づきになられた点は？」
何しろ騎体・騎士ともに長時間の戦闘は初めてである。不具合が出ていてもおかしくはない。
「戦い通しで疲れはしたが、特に調子が悪くなったりはしていない。良い騎体だな、アーサーは」
アレクサンダーは搭乗口前面に配置された整備用のキャットウオークから、真っ白な胸部装甲の優美な曲面を撫でた。
金属の冷たさと、細やかなレリーフの凹凸がなんとなく、手指に心地よい。
「外装はともかく、中身は稼働実績ありますからねー…まあ、作業用として、ですけど」
「しかし、作業用としての実績があるというのは、裏を返せばそれだけ信頼性が高いという事であるとも言えよう。やはり、良い騎体だ」 -- アレクサンダー
- 心なしか、白亜の巨人のその顔が、喜んでいるようにも見えた──否、喜んでいるのだろう。
バイアフに種々あれど、少なくともこのアーサーは、ただのマシーンではない。バイアサイトに宿る妖精が息づいているのだ。
「次回も、宜しく頼むぞ、我が愛騎よ」
その言葉に応えるように、瞳のバイアサイトが淡く明滅した──ように見えた。 -- アレクサンダー
- つ、つかれた…… -- アレクサンダー
- ダッシュビートルックス！ --
- �兇忙�てるだの一部の性癖を歪ませただのそんな話は知らんな。 -- アレクサンダー
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