俺が最年少で、周りの人からはガキ扱いだった。実際ガキだけどさ
遺跡自体は何と言うか、ありがちな普通の遺跡だった
落とし穴なんて古典的なトラップに引っ掛かりもしたけど…問題はその後に起こった
不定形の怪物…スライムがそこに居た
今の俺達には歯が立つ筈もなくて、逃げる事にする
命あっての物種だし、冒険者は自分の命を安く売らない
だから、俺はわざと、少しだけ遅く走る事にした
少しでも自分の生存率を下げて、他を上げる選択をしたんだ
でも、結局は裏目に出て…俺は腹を貫かれ、俺の考えを読んでた同行のおっさんに庇われた物の意識は白んでいった
その時だった。俺は、どこからか聞こえる声を聞いた
幻聴だと思われたそれは俺に質問を…当然の事を聞いてきた
生きたいか、と。当然答えは決まっていた。ここでNOを選択するほど俺は何かを成してはいない
変化は一瞬だった。白んでいた意識は瞬く間にクリアになり、手に握る得物の感触は固かった
思ったままに剣を振り、敵を倒し、敵に倒された者の為に頽れた
声は告げる。これでいづれお前の体は私のもの、と
そんな事はどうでも良かった
拾ったこの命、どう使うか…考えないと
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| | 黄金歴163年 7月 守護獣を身に宿す者との握手にて
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俺の体に魔族が入り込んで約半年。まだ整理がついてないのはやっぱりガキだからだろう
あの時の依頼で俺を庇って死んだおっさんに合わせる顔がないにも程がある…しっかりしなくては
ちょっとでも人に話したら楽になるかな、なんて簡単に考えて、久しぶりにリルカの姉さんに会って来た
あの人はガーディアンを身に宿してる。俺とは逆だが、事情は似てるように思えたから
話を聞いて貰うだけになってしまったけど、楽にはなった。感謝がちゃんと伝わっていたら良いんだけど…
問題は、握手をしたこの右手。やっぱり、魔族と守護獣は相性が悪いんだろう、あの人の手の形に、軽く痣が出来てしまったようだ
気付かれてなければ、それで良い。俺が我慢すれば、このままいつも通りでいられる筈だから
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